連載小説
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TAKE13 巨・根・暴・発!
「全くエライ目に遭ってしまったな……」

 克己に"剝かれて"全裸になった雄喜は、手ぶらのまま広大な浴室内を進んでいた。
 その股座では未だ勃起状態にある巨根が不規則に揺れ動く。
 ぶるん、ぐおん、ぬわん……正直前を隠したくて仕方なかったが、生憎と隠すものを持っていない。
 手で隠そうにも中々上手くできないし、何より絵面が余計みっともなくなるので諦めるしかなかった。

「とにかく早い所身体を洗って湯に浸かろう……」

 そうでもしないとどんな目に遭うかわかったものではない。
 というより"どういう目に遭うのか"はある程度具体的に想像できるのだ……"それら"を思い浮かべればこそ余計青年は焦り、早足になる。

(急げ、急げ、急げっ……洗い場、タオル、石鹸っ……!)

 冷静さを欠いて風呂場を歩く雄喜を待ち受けるのは必然――

(いそgぁっ!?」

――"転倒"に他ならず。

(しまったっ! 走らなければ大丈夫と思っていたが迂闊だったか!)

 前のめりに倒れながら、青年は思案する。
 足裏から伝わる感触からして床のタイルはかなり硬いタイプだろう。ともすれば転倒して身体を打つのは避けたい。
 その程度の打撲など造作もないとは言え、痛いものは痛いからである。

(そうなると最適解は受け身……幾らかのタイルは犠牲になってしまうだろうが、ここは館を用意してくれたボスとチーフの厚意に甘えるしかない!)

 かくして雄喜は受け身を取るべく身構えた――ので、あるが……

「むぷっ!?」
「んっ♥」

 受け身を取るより前に、彼の視界は暗転する。
 顔面を覆い尽くすのは人肌程度の温もりと湿気、柔らかくも弾力のある感触に、微かな乳製品の如き甘い芳香……。
 序でに聞き慣れた声まで聞こえたものだから、雄喜は状況を瞬く間に理解した。

(感触と声からして、紛れもなく小田井さんのっっっ……!)

 彼の置かれている状況とは即ち、
『転んだ拍子に浴室へ居合わせた真希奈の胸元に顔面から飛び込んでは谷間に顔を埋めてしまっている』ということ。
 インターネットミームめいて言い表すならばまさしく『ぱふぱふ』の四字が相応しかろう。
 しかもこちらは男側の勃起しきった巨根が曝け出されているものだから、推測するに絵面の過激さは同ミームを元にした創作物の中でもそれなりと思いたい。

 志賀雄喜は思う。このようなこと、正直偶然にしてはあまりにも出来過ぎている。なればその実、あたかも緻密な計算に基づいて何者かが意図的に引き起こした出来事なのではないかと。
 だが現状の彼にとって一連の出来事が偶然の事故か人為的に仕組まれたモノかなど些事に過ぎないのは言うまでもない。
(とにかくこの状況を脱しないと……!)
 雄喜は両足裏にぐんと力を込める。すると今にも滑りそうだった両足はまるで吸盤か趾下薄板(しかはくばん)で張り付いたかのように固定され、彼はそのまま足の力のみで垂直に立ち上がって見せる。手を使わなかったのは、不用意に真希奈の身体へ触れまいと配慮した結果であった。

 そうして前方に視線をやれば、そこには予想通り真希奈の姿があった。しかも当初の予想に反して白い湯着を着ており全裸ではない。ならば雄喜の下半身も多少は落ち着くか……というとそうも行かないようであった。

 というのも彼女の湯着は全体こそ比較的厚手の、塗れようとも透けない素材で作られてはいたのだが、問題はデザインにあった。湯着らしく袖がないのはまだ納得がいく。だが加えて裾部分もギリギリ股が隠れる程度に短く、よって尻が丸出しなのは想像に難くない。

 何より問題なのは大きく開けた胸元であり、谷間を強調するようなデザインは激しく動けば零れ落ちそうな危うさがあり、激しく動かずとも乳輪くらいは見えそうである。というか、布がこれでもかと――まるでそう設計されたかのように――乳房へ密着しているため所謂"乳袋"めいた有様になっており、仮に谷間が隠れていたとしても煽情的なことに変わりはない。

 そしてそんな煽情的な姿の美女が目の前にいる。対する自分は全裸であるというのは、志賀雄喜という男にとってとても対処に困る状況であり、

「あれぇ〜? ご主人様、よろしいんですかぁ? もう少し堪能して下さっても良かったんですよ〜?」

 だからこそ彼女の方から話を切り出してくれたのが、この場に於けるせめてもの救いでもあった。

「……ええ、まあその、十分というか、あのままでは思わぬ事故に繋がりかねませんでしたからね。ところで小田井さん、何故ここに?」
 聞くまでもなく察しはついているが、とりあえず聞いておく。
「はい、それはもう……ご主人様のお世話をさせて頂くべく馳せ参じた次第で」
「つまり?」
「お背中流させて下さいっ♥」
 やはりそう来たか。正直勘弁してくれ――雄喜は心底そう思っていた。
 だが悲しいかな、しつこいようだが"不死身の最強スタントマン"兼"無敵の天才スーツアクター"得刃リンこと志賀雄喜もこの場では"精を持て余した童貞"に過ぎず、『従者の前で醜態を晒すわけにはいかない。しっかり断らねば』と考える反面『射精ぐらい何だ、どうせ死ぬなら構うものか』とも思っていた。
(理性と煩悩の拮抗……シチュエーションで例えるなら『天使と悪魔』ってヤツか。
 つまり今僕の脳内ではエンジェルとデビルが……――なんか想像し辛いな。デーモン……対の天使が思い浮かばない。ヴァルキリーとダークヴァルキリーだって会ったことないし、エルフとダークエルフにしても正直ろくな思い出がない)
 思考を脇道に逸らせば性的興奮も収まるかと考えた雄喜は、今も忘れない"ろくでもない思い出"を反芻してみた……が、その程度でどうにかできるわけもない。
(……断った所で面倒なことになりそうだし、甘んじて受け入れるしかない……か)
 雄喜は覚悟を決めた。こうなればもう、開き直っていた方がいっそ楽だろう。
「ほう、それは実に素晴らしい。是非お願いしますよ、小田井さん」
「はい、畏まりましたぁ」
 無論不安はある。だが何とか乗り越えるしかないし、もし仮に"しくじって"しまったならその時は潔く何かしらの形で対処するだけのことだ。
 雄喜は数多の魔物を妻とした性豪の如き堂々とした態度で壁際へ置かれた椅子へ腰掛ける。壁には大きめの鏡が備わり、腰掛けた青年のほぼ全身を映している。
 自覚は無いものの周囲からしばしば男前と評される顔、細身乍ら確かに鍛え上げられた肉体、下半身で雄々しくそそり立つ巨根とその根元で確かな存在感を放つ玉袋……湯気が立ち込める中微塵も曇らない鏡面に映るそれらが例外なく自分自身のモノだと認識して雄喜はこっ恥ずかしいような気分になったが決してそれを表には出さず、あくまでも魔物を従える権力者然とした振る舞いを崩さない。
(不安になるな、堂々としていろ……例えるならデストロだ。彼を演じた時のことを思い出せ……)
 傍らで身体を洗う道具等の準備を進める真希奈を待ちつつ、雄喜は己に言い聞かせる。

 "デストロ・バッスール教頭"
 学園ドラマ風の特撮番組『魔界學園』にて雄喜が演じた、怪物じみた風貌のキャラクターである。

(デストロは厳つい風貌に違わぬ武闘派だが、断じて暴れるしか能のない蛮人じゃない。
 高学歴の頭脳派かつ社会経験豊富な彼は大勢に慕われる人格者で冷静沈着、何事にも動じず持ち前の武力と頭脳で何度も学園を危機から救ってきた……と言って、コミカルな場面も少なくはなかったが)
 もし彼が今のような状況にあればどうするだろうかと、雄喜は考える。
(似た状況と言えば二十八話……新任養護教諭オギャルマンマ・バブーミィの回か)
 確か内容があらゆる意味でセンシティブ過ぎた所為で各所から抗議が殺到し炎上騒ぎに陥ったのではなかったかと、雄喜は思い返す。
(あの時は僕まで炎上したっけな……ま、特に問題視されたのがデストロの発言な上にその辺りの脚本は僕の意見も参考に書かれたから仕方ないんだが――「ご主人様ぁ、準備が整いました〜」

 独白を遮って耳へ入るは真希奈の甘ったるい声。いよいよ来たかと覚悟を決めつつ、雄喜は魔界學園第二十八話の回想を続けようとしたのだが……

(確かバブーミィを演じたのは――はおっ!?」

 無理だった。

「っ、ぁ、は、ぁぁ……!」

 遮られる思考。
 背中に伝わるは暖かく柔らかい極上の感触。
 それは紛れもなく真希奈の乳房であり、かけ湯により水気を帯びては不意打ち気味に雄喜の背へ押し当てられたのだった。

(ま……まさかっ、これほどとは……!)

 背を離れて尚、記憶に残り続ける感触。それこそはまさに未知なる衝撃であった。
 然しそれも当然。何せ今に至るまで人並みの性欲こそあれ色恋や性に無縁の雄喜である。
 風俗店に行ったことなど当然ない彼が女体、もとい女子の乳房、所謂おっぱいなんてものに触れたことなどある筈がなく。
 否、触れたことならばあった。一応は。嘗て『呪卍』スピンオフの撮影では脚本の都合上散々真希奈と密着していたし、スピンオフの撮影が終わった辺りからは現場でやたら真希奈(と克己)から抱き着かれることもあった。

(あとついさっきもプロデューサー……じゃなかった渡部さんに抱き着かれたりもしたし)

 なので乳房に触れた経験はある……が、前者の場合は諸事情から投与していた薬の影響で一時的に性欲が消えており真希奈の乳房が触れていても、殊更特別何かを感じたりはしなかった。
 薬の効果が切れて性欲が戻った後にしても今思えばそれなりに過去。満に抱き着かれた件にしても立て続けに衝撃的な出来事が相次いでいたのでつい先ほどまでほぼ忘れていた。
 即ち何れも確かな経験として身についているかというと、答えは否である。
 
 よってほぼ実質、雄喜が女人の乳房に触れるのはこれが初と言えた。

「あっ、すみませんご主人様。私ったらついうっかり」
「い、いえ、大丈夫です……続けて……」
「はいっ」
(何がうっかりだこの乳デカ白黒偶蹄類がっ! どうせ狙ってやったんだろう!?
 誰の指示だ! ええ言ってみろ、誰の指示なんだよ!? どうせ角の生えた変なチビとか白人ぽいモヤシ男とかの指示なんだろうが!)
 雄喜は内心突っ込まずにいられなかった。当然、口汚く脅すように罵るつもりなど毛頭ないのだが、然しなんというのであろう、どうにも勢いがつきすぎて独白の語気が普段の彼からすると在り得ない程に強まってしまう。然しそこは流石芸の世界に身を置く公人、すぐにも落ち着きを取り戻し攻撃的な独白を撤回する。
(落ち着け、落ち着くんだ……これは彼女の善意なんだ、無下にするような言動は控えないと……)
「では、始めますね〜」
 かくして真希奈は泡立てたスポンジで雄喜の身体を洗い始める。肩、腕、背中……その手つきは優しく丁寧で、彼女の人柄を表すかのようだった。
 だから雄喜は安心していた。安心しきっていた。最初こそ胸を押し当てられたが、それ以後は何もないだろう。勃起も収まりつつある。これなら"懸念"もただの"杞憂"に終わるに違いない。
(そうだ、彼女を信じるんだっ。信じて身を任せていればいい、そうすれば全ては無事に終わる!)
 雄喜は確信していた……が、それが単なる状況の楽観視に過ぎないのは火を見るよりも明らかであった。
 その証拠と言うべきか、真希奈の穏やかさはあくまで上辺だけの演技であり、内心では雄喜を淫らに弄んでやろうと企んでいたのであった。

「ではご主人様、お背中の方仕上げに入らせて頂きますね〜」
「仕上げ……? ええ、お願いします……」
 雄喜は"仕上げ"という言葉に若干の違和感を覚えつつも、安心から『きっと肌を整えるだとかそういう、専門的な何かだろう』ぐらいにしか思っていなかったが――


 むにょんっ

「っぅぉあっ!?」
 再び背に伝わる、暖かく柔らかな感触。
 反射的に興奮し、萎みかけていた男根が瞬く間にそそり立つ。
 身に覚えがあり、雄喜は確信する。これは真希奈の乳房だ、彼女が押し当ててきたのだと。
「お、小田井、さんっ……一体、何をっ……!?」
 必死に声を絞り出し、雄喜は問い掛ける。仕上げをすると言ったのに、全く話が違うじゃないか。
 すると侍女を演じる乳牛の女優は、彼の耳元へ顔を寄せては甘ったるい声で囁く。
「何って、"仕上げ"に決まってるじゃないですかぁ。ご主人様の逞しいお背中を、私のおっぱいで優しく真心を込めて洗わせて頂くんですよぉ〜」
 そう言って真希奈は雄喜の背に乳房を押し当てたまま、身体を上下に動かし始める。
 一メートルを余裕で超える爆乳は石鹸の泡を纏い、ふにっ、ぐにぅ、むゅん、という具合に形を変えながら、雄喜の逞しい背中を、にぅるん……すりゅっ……まれぅ……なんて調子で滑っては上下に往復する。
 それだけでも雄喜にしてみればたまらない快感なのであるが……
「ごーしごーしっ、むにゅむにゅーっ」
「っ、ぉ、ぅ……!」
 それをより濃厚、かつ上質に仕立て上げている要因があった。真希奈の独特な采配である。
 彼女の"仕上げ"もとい乳房による愛撫、所謂『おっぱいスポンジ』の動きと力加減は決してワンパターンでなく、絶妙な緩急のもと実に不規則かつ変幻自在……ただでさえ強烈な興奮と快感はより洗練され、雄喜の潜在的な欲望を刺激する。
「っ、ぁは……ぅぉ、ふ……!」
「んっふふー♪ どうですかご主人様ぁ? 私のおっぱい、気持ちいいですかぁ?」
 耳元から脳を刺激する甘い問いかけに、然し雄喜は答えられない。
 返答ならば決まっている。『とても気持ちいい』ことの旨を伝える一言でいい。
 そう答えるのが不本意、なんてこともない。寧ろ彼女のことを思うなら積極的に答えるべきとさえ思っている。
 然し答えられない。何故か。理由は至極単純、言葉を発する余裕がないのである。
(お、抑えろ……抑えるんだっ……! このままでは色々と"出て"しまうっ……!)
 既にカウパー腺液ダラダラと垂れ流してる奴が何を抜かすかという話ではあるが、ともあれ射精は罪悪感があり恥ずかしいので避けたかった。また彼から"出てしまいそう"になっているのは何も精液だけではなく……ともかく雄喜は内で湧き上がる劣情を抑え込まんと必死であった。
「んん〜? あっれぇ〜? どうしたんですかぁ、ご主人様っ? ずっと震えてますけど……まさかまだ物足りなかったり? 申し訳ございませぇん……なにぶんこういったことは初めてなもので、見様見真似手探りでやっていく他なくっ」
 からかうような、弄ぶような、普段の彼女らしからぬ態度で滑らかに口走りながら、乳牛メイドは尚も乳房で背を擦る。相も変わらずの絶妙な力加減……雄喜の精神は快楽に浸食され、脳内で理性と欲望の争いが始まる。
(tっ……たっ、助けてくれっ……!)
 必死に助けを求めるが、所詮独白。誰に届くわけもなく……
「……っっ、っ……ぉ、ぅ……」
 それでも青年は必死に抗う。抗い続ける。内心負け戦と悟って尚、無理を押し通す。
 だが一方乳牛も、そんな彼の心情を知ってか知らずか乳房を離そうとはせず……
「へへっ……むっぎゅぅぅぅ〜〜」
 寧ろより密着しようと抱き着いてくる。
「っっん゛ん゛っ゛!?」
 強く伝わる感触と心地よい圧迫感、胸板に異性の指が触れる感触……
 何が決定打になったかは不確かながら、ともかくとして……

「っんぁはへぅぅぅっ!」

 情けない声を上げ絶頂した彼は、虚空へその子種を解き放ち――要するに、射精してしまうのだった。




(――――)

 "頭が真っ白になる"とはまさにこんな感じなんだろうな。
 飛びかける意識の中で、青年はそんなことを想う。

(やってしまった……)

 程なく、少し落ち着きを取り戻して感じたのは射精に対する罪悪感。
 主だというのになんと情けない。
 共演者の目の前で射精するなんて最低だ。
 この程度も我慢できないなんて公人失格じゃないのか。
 そんなようなことを、思う。

(……いや、待て……)

 だが同時に彼は"それでもいいんじゃないのか?"とも思い始める。

(……そうだ、別に構わんじゃないか。言ってしまえば事故のようなものだし、彼女も魔物なんだからこの程度は望むところ……というのは偏見としても、こうなることは想定できていて、覚悟の上だった筈だ……ああ、そうだ……そうだろうさ……。
 何よりどうやら、運が良かったせいか僕が想定していた最悪の事態には陥っちゃいないようだしな……ならもう、いいんじゃないのか?)

 真希奈によって射精させられ、雄として快楽に浸り精を放つ悦びを知った為なのか、彼の内側にあった性への抵抗感や罪悪感は確かに薄れつつあった。或いは消耗によって"どうせ死ぬんだから"の想いが強まったとも考えられるが……。


「あららぁ〜……ご主人様ったら、おもらしなんてしちゃって……♥
 私のおっぱい、そんなに気持ち良かったんですかぁ?」
「……ええ。仰る通り、言葉にできないほどの夢心地でしたもので……主たるものがこんな情けない姿を見せてしまうなど言語道断、というか風呂場で漏らして汚すなんて大の大人が何をやってんだという話ですが……」
 悪戯っぽく煽るような真希奈の問いかけに、雄喜は照れながら自嘲気味に答える。
「いえいえっ、そんなことないですよ〜。お射精しちゃうくらい気持ち良かったんなら仕方ないですよ。それにご主人様にご満足頂けたのならそれに越したことはなくて、従者冥利に尽きるっていうか、魔物として誇らしいくらいですし?
 それにご主人様のさっきのお射精、迫力満点で勢いがあって私は好きですし、おっぱい気持ちよくておちんちん限界、ガマンできなくて最後にぴゅーって出しちゃう所、正直可愛いなぁって思っちゃいましたしぃ……」
「ほう、可愛いとはまた……恥ずかしくも何故か悪い気はしませんね」
「そうですかぁ? 怒られたらどうしようって不安だったんですけど」
「僕と貴女の場合に限れば杞憂ってもんですよ。さて、小田井さん……」
「はい、何でしょうご主人様ぁ?」
 唐突にぬっと立ち上がった雄喜は、射精して尚鎮まる様子のない巨根を見せつけながら真希奈と向かい合うように椅子へ腰掛ける。

「……そんな僕の可愛い姿、もっと見たくはありませんか?」

 その問いかけはつまり『前も洗ってくれ』と同義……よって真希奈の答えも決まっている。

「はい、喜んでっ♥」





「はぁーいっ。ごしごしー♪ にゅるにゅる〜♪」
「んっ、ぉ、ほあっは……ぬっふっへ……♥」
「んふふー……えいっ♪ しこしこぴゅっぴゅー♪」
「ぬっ!? お、っ、はンンンっ!」
「ひゃんっ♪ いっぱい出ましたねーご主人様っ♥」

 その後、真希奈は雄喜の"前"をも隅々まで丹念に洗い、それに乗じての手コキで彼を何度も射精に導いた。
 途中、勢い余って湯着が脱げたので真希奈も全裸になり、雄喜もスポンジを手に真希奈を洗う所謂『洗いっこ』の流れになったことで状況はより淫靡さを増し、ともすればそこから"本番"に至り二人は互いの童貞と処女を散らす……ような展開となっても何ら違和感はなかった筈であった。
 事実、そうして衝動と欲望のままに交わりなし崩し的に結婚した人魔の夫婦たるや有史以来星の数ほども存在するのは最早読者諸氏にしてみれば周知の事実であろう。
 然しこの役者たち、志賀雄喜と小田井真希奈の両名による一連の行為はあくまでも股を繋がない前戯のまま進行していく。
 何故そうなったのか、その理由を部外者らが知り得ることはなく、また当人たちさえ的確に説明することはできないのではないだろうか。

 ただ作者なりに述べさせて頂くとするなら、この役者たちの間に純然たる愛と欲望、そして幾らかの無意識下での躊躇いがあったことは恐らく間違いない。
 それと、これは完全な余談になるが……


「湯船に浮かんで自己主張とは……全く、これは躾が必要か……」
「あっ♥ やっ♥ ご主人様ったらぁ♥ そんなに強く揉んだら、ミルク出ちゃうぅぅっ♥」
「何の、どうせこの湯とて白いんです。構やせんでしょう」
「んあっ♥ はっ♥ んもっ♥ んもっほぉぉおおおおおぉぉぉっ♥」


 股こそ繋がらないものの二人の昂りは凄まじく『洗いっこ』を終え浴槽に移って尚――どころか浴槽から上がり脱衣所へ入る手前まで――青年主君と乳牛メイドの乳繰り合いは延々と、それはもう濃厚に続いたそうである。
21/07/29 21:56更新 / 蠱毒成長中
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