読切小説
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貴方の街にもバフォメット田中!
最近、このあたりで不審者が出没すると聞いて、俺は金属バット片手に夜の公園に来ていた。

別にお化けが怖いとかじゃない、ただ明るい場所なら不審者を見つけやすいからだ、怖いとかは全くない、本当にないって、マジで。

でもそれらしき影は見当たらないし、アホみたいにカップルの喘ぎ声が聞こえるだけだ、うわー、爆発しねえかな。

もうこれ以上いても収穫なさそうだし、帰ろうかな……と、した時だった。



パァアアアアン!!!



「うわぁ!?」



突然、俺の後ろで爆発が起こった。

もしかしてカップルが爆発しちまったのか!?



「ゲホッゲホッ!! ま、魔王様、相変わらずテレポートの座標指定下手くそなのじゃ!!」

「うぇ!?」



思わず某ンドゥル声を出してしまう俺。

だって煙の中で聞こえてきたのは、まだ小さな女の子の声。

で、だんだん煙が晴れていくと見えてきた姿に、俺は言葉を失った。

ビキニより面積が少ないっつか、布の細切れを付けたような格好で、可愛らしいツインテールの髪の間にはヤギの骸骨二つ……さらには角二本!

ヤバイ、この子電波だ、つか不審者ってこの子かよ、逃げとこ……。



「おー、ちょうどいいところに。のう、ここはどこじゃ?」

「え?」

「……ここはどこじゃ?」



ギン――と、右側の骸骨の目が光って……。



「あ、ヤムァナスです」

「ほう、どうやらシュランテルインとは別の場所に送られたか……。あの婆も災難じゃな、馬鹿広いナガーノに送り込まれて」

「はあ」



あれ、俺何しようとしてたんだっけか?

……ま、いいか、子の子なんか困ってるっぽいし。



「おお、すまぬ、自己紹介が遅れたのう。儂はこういう者じゃ」



と、名刺を差し出された。

ふむ……。





















【魔界通信販売会社バフォメット田中 代表取締り役 山羊崎田中】





















「いやおかしいだろぉおおおおおおおおおおお!?」

「なぬっ!? 洗脳が解けたじゃと……!?」

「なんで苗字の後に苗字がきてんの!? 苗字丼!?」

「何を言われようが儂は田中じゃ!」

「いや、親が付けたにしてもこれはヒデえよ!」



何なの子の子!?

親もアレだけど、田中でここまでぐれなかったこの子もこの子だよ!



「この名前は父上と母上が付けてくれたもの……。馬鹿にはしないでほしいのじゃ!」

「どんな親だよ」

「……物心ついた頃から儂の目の前でセックスしておった……儂なんか、目もくれずっ、ぐずっ……」

「最低な親だったぁー!?」



田中ちゃん泣き出しちゃったけど!



「んむ、でも二人は仲良しなのじゃ」

「子を放る親はどうかと思うけど……」

「でも魔物の一人立ちは早いのじゃ」

「魔物ぉ?」

「おっと……」



口滑らしちゃった☆みたいに肉球グローブ(だと思いたい)で口を塞ぐ田中ちゃん。



「と、兎に角じゃ。お主、儂に出会ったのは何かの縁、ここで何でも売って……いや! 何でも一つやるから儂がここに来たことは内緒にしてもらえんか?」

「えぇ〜……」

「儂は魔界屈指の通信販売会社の取り締まりじゃぞ、全てにおいて安心せい」



そう言いながら、何故か自分のパンツ(黒のレザー)を脱いで差し出してきた。



「今の若者は何がいいのかのう? やはりギャルのパンティーか?」

「ウーロンじゃねえよ! あと田中ちゃんはギャルに見えない!」

「じゃあこのエロ本、快楽て……」

「まだ17だからいいです! つか実用的な物くれよ、どうせなら!」



田中ちゃんは「何じゃお主……」と呟いて、パンツを穿いた後にウィ○ードの如く魔法陣みたいなやつからいろいろ取り出す。

いやこっちがなんだよ……。



「これはどうじゃ? あまりの可愛さに男どもは狂ったように争って、全員相打ちで気絶した挙句、いつのまにか結婚していたことで有名な幼女ファラオのブロマイドじゃ」

「確かに可愛いけど結婚していたって何!? これ曰く付なの!?」

「このブロマイドを手に入れる為に王国が四つほど滅んだぞ、王まで争いに参加してな」

「怖いわぁー!! もっと他のは!?」

「意外に強欲じゃのう……。うむ、ならばこれはどうじゃ?」



田中ちゃんが取り出したのは、男は反応するであろう、黒い鉄の剣。

もしかしてこれって……ラグナロク!?



「斬った相手をロリコンにする、シュランテルインと儂の世紀の大発明!! その名もラグナロリじゃぁあああああ!!」

「すっげえ下らねえぇええええ!!」

「え〜? いらぬのか?」

「いらねえよ! いつ何時使うんだよ!?」

「今じゃろ!」

「ロリの田中ちゃんがロリコンになってどうすんの!?」

「ふむう、注文の多いお兄さんじゃの。ではこれはどうじゃ?」



田中ちゃんが差し出してきたのは、結構カッコいいドクロマークの付いた着物だった。



「これは? けっこう重いね、服にしては」

「石ころから嫁の交換にまで発展したとある二酸化という男が一時間だけ着ていた服での、稲荷と青年の結婚式を開かせる為にその結婚式の招待状との交換で、それを差し出したのじゃ」

「重いよ! 別の意味でも! てかなんで田中ちゃんが持ってるの!?」

「よく見たらダサいからと売ってくれたぞ」

「二酸化って人いろいろ不憫すぎる!」



きっとどこかの町で泣いているに違いない。

俺が何を言葉にしようか悩んでいると、田中ちゃんは首を傾げ、ため息をついた。



「ここまで強情な男とは思わなかったのじゃ」

「田中ちゃんが使えない物ばかり出すからだと思うけど……」

「……ふむ、今度こそお主はうんと言うぞ。なんせ儂の会社で一つしかないからのう。それと、これはちいとばかし高く付くぞ」

「ん? 何?」



すると田中ちゃんはムギュっと――俺に抱き付いてきた。

女の子の匂いって言うのか、田中ちゃんからはすごい甘ったるい匂いがして。











「可愛い妹を一人、どうじゃ? む、代金はお主の人生じゃ」











俺の顔を見上げ、微笑んでくる。

んまあ、これは言わざる負えないよね……。

断ったら多分ヌッコロされるか、通報されるからね。









「……買ったよ、俺の人生で」











***











――その日から俺には家族が増えた。



まあ、新しく弟ができたとかじゃなくて、ただ単に妹でもあるし……その……嫁が来たから、か?



「お兄様!」

「ん、何?」

「ラグナロリの改良が済んだのじゃ! 斬られてくれ!」

「嫌だよ!」

「あら、賑やかねー」

「どこがだあああ! 止めろよこのクソババア!」

「ママをババア呼ばわりするんじゃありません!」

「魔女だっけ!? 永遠の若さとか言ってただ幼女になっただけじゃねえか!」

「隙ありじゃぁあああああ!!」

「うわぁああああああああ!!」



騒がしくなった我が家。



田中ちゃん、もといバフォメットのテニアちゃん(流石に田中は偽名だった、当たり前か)が魔界の通信販売で売る商品の試作の効果を俺に試して。



そんなのを幼女と化した母親と、少し若返った感じのする親父が笑って見ていて(助けろよ)。



俺がそんな中で逃げ惑っていて。



「のう、お兄様」

「何!?」

「お兄様の人生で買った妹は――どうじゃ?」

「うーん……」



ラグナロリの攻撃を避けてから、俺はテニアちゃんをお姫様抱っこの形で抱き上げる。









「クーリングオフはかんがえてない、かな」









とりあえず、これからのことはゆっくり考えていこう。
13/08/01 01:56更新 / 二酸化O2

■作者メッセージ
シュランテルイン「へくちへくちっ!! ……今、魔王様とか誰かにに馬鹿にされた気がする」
ダーリン「風邪じゃない?」

もう少ししたら何か連載書きたいです……五話完結くらいの

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