連載小説
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(119)グラキエス
ダッハラト山脈の一角、山肌によって雪と風からかろうじて守られている吹き溜まりに、小さな町があった。ダッハラト山脈を越える数少ない道の一本にできた、宿場町だ。
しかし夜毎町をおそう吹雪により、この季節に町を訪れるものなどいない。
「…異常なし」
吹雪に乗って町の上空を舞いながら、私は呟いた。
私はシェス。氷雪の精霊グラキエスで、氷の女王の命によりこの宿場町と、その近辺の監視をしていた。
遭難者の救出はもちろん、雪崩の前兆の発見を行い、いち早く宿場町に伝えるためだ。
だが、今日も何の変わりもなく、吹雪が町の上空で渦巻いていた。私は宿場町に戻ろうと、吹雪の中で体の向きを変えた。
すると小さな音が、私の耳を叩いた気がした。
「…?」
ゴウゴウと耳をなでる風音に紛れそうな小さな音に、私は動きを止めた。まるで、雪を踏みしめるような小さな音だった。だがこんな吹雪の中、歩き回る人間や動物はいないはずだ。
可能性としては、山肌から浮かび上がった雪塊がたてるひび割れの音。つまりは雪崩の前兆だ。
私の体に緊張が走る。
どのあたりの雪がどの方向に崩れるのか。宿場町に被害はあるのか。どのぐらいの余裕があるのか。そして、雪崩が起こるまでに町の人々を避難させられるのか。
私の頭の中で、いくつもの考えが浮かんだ。だが、まず最初にすべきことは、音の源を探ることだ。
耳に意識を集中させると、また音がした。
だが、音の出元は町を囲む山肌ではなく、麓に近い方向だった。あのあたりには人里がないから、雪崩が生じても問題ないだろう。
「とりあえず、町の人には伝えておかないと…」
私が胸をなで下ろした瞬間、ひときわ大きな音が響いた。降り積もった雪の上に何かが落ちるような、人が雪の上に倒れ込むような音。少なくとも、雪崩の前兆の類ではない。
だとすると、これまで私が聞いていたのは本当に人が雪を踏む音で、今し方届いた音は…
「大変…!」
私は風の中で向きを変え、舞う雪氷を全身に浴びながら飛んだ。
徐々に地面が近づき、私は徐々に雪に埋まりつつある足跡と、その先で倒れ伏す人影を見つけた。
「大丈夫!?」
人影の傍らに舞い降りると、私は雪の中から遭難者を助け起こした。
防寒・雪避けの為のすべすべとしたマントを羽織った男で、背中には大きな包みを背負っていた。
「うぅ…」
男が小さく呻く。幸い、息はまだあるようだ。
「もう少しがんばって。今、暖かいところに…」
私は彼を抱えると、吹雪の空に向けて浮かんだ。



宿場町の一角、この季節はほぼ休業している宿屋の一階に私はいた。
遭難者の男は二階の客室で、医者の診察を受けている。
「全く、この季節に珍しいもんだねえ」
宿屋の女将が、お盆を手にやってきた。
「お疲れシェスちゃん、はいお冷や」
「ありがとう…」
差し出されたコップを受け取り、私はその縁に唇をつけた。ひんやりとした水が、私の体に染み込んでいく。
「それで、どんな様子だい?」
「とりあえず、一通り荷物は確かめた」
私はテーブルの上に広げられた、遭難者の男が持っていた荷物を示した。
「衣服や鞄の中身に、特に異常はなかった」
携帯食料に、地図に着替えに財布。衣服は造りはしっかりしてるけどどこでも手に入りそうな旅装束だ。
「でも、これだけがよく分からない」
ただ一つだけ紛れていた品物を、私は手に取った。それは男が背負っていた荷物だった。布をほどいてみると、中から出てきたのは細長い首をはやした楕円形の箱だった。
楕円形の箱は中が空洞で、中程がくびれて8の字の形をしている。箱から伸びる首からは六本の糸が張っていた。
依然宿場町を訪れた吟遊詩人が持っていた竪琴にもにた糸なので、おそらく楽器なのだろう。
「うーん、楽器かしらねえ?」
「それは分かる。ただ、この楽器を持って何をしようとしていたのかが分からない」
この季節、雪でダッハラト山脈が閉ざされるのは太陽が昇る方向より明らかだ。単に山脈の向こうを目指すだけなら、ほかにもルートは存在する。だというのになぜわざわざ山を越えようとしたのか。持ち物から何か分かればと思ったが、楽器の存在はますます謎を深めるばかりだった。
遭難者を助けるという役目は果たしたのだ。次は、この宿場町に災厄が及ばぬよう男を調べなければ。
私はピンと張った弦の一本に指をかけ、軽く弾いてみた。するとビィンという音が響いた。
「うーい、終わった終わった」
ばたん、とドアの開閉する音が響き、医者が階段を降りてきた。
「アラ先生、お疲れさま」
「ああ、疲れた疲れた。これが若い娘さんなら、喜んで診てやったんだがのう」
初老の医者は階段を下りると、まっすぐにカウンター席に着いた。
「はい、どうぞ」
女将は医者にホカホカと湯気の立つ煮込み料理を出した。簡単なものではあるが、この吹雪の中往診してもらったお礼だ。
「ああ、相変わらずうまそうだ…」
「先生」
「なんだ、シェス?」
呼び止めた私の声に、医者はスプーンを手にしたままやや不満そうに顔をこちらに向けた。
「遭難者の男はどうなった?意識は取り戻したか?」
「いんや。ぐっすり眠っとるよ。だが、心配はない」
「そうか…」
私はいくらかの落胆を言葉に滲ませた。
「なんだ?お話したかったのか?」
「いや、そういうわけではない」
「そうかそうか。確かに若い頃のワシには負けるが、なかなかいい男だったからなあ」
「だからそういうわけではない」
私は荷物を示しながら、医者に向けて続けた。
「この季節、あの男が何の目的でダッハラトを歩いていたのか問いただしたかったのだ」
「そうだなそうだな。あー、それよりシェス」
医者はふと思い出したように私に呼びかける。
「特に怪しいものがでなかったのなら、荷物は彼の部屋においてやってくれ」
「何でだ?」
「彼にしてみれば、雪の中で寝て起きたら見知らぬ場所にいるわけだ。ある程度なじみのある荷物でも側に置いておいてやらないと、心臓に悪い」
「ふむ…」
私は少し考えた。確かに、これから聴取をしようというところで死なれたら困る。それに、間接的とはいえ遭難して死んだことになるから、氷の女王もいい顔をしないだろう。
「分かった。後で運んでおこう」
「頼む…っと、お?」
医者が食事に戻ろうとしたところで、驚いたような声を漏らした。
「何か?」
「そのギターは、彼の荷物に入ってたのか?」
「ぎたー?」
耳慣れぬ単語にいったい何のことだろうと思ったが、私はすぐにその正体に至った。テーブルの上の楽器のことだ。
「この楽器なら、あの男が後生大切そうに抱えていたが…これはギターというのか」
「ああ。南方に伝わる楽器だ」
「南の方からきた楽士さんかしらねえ?」
「いや、楽士とも限らんな」
女将の言葉に、医者は顔を左右に振る。
「ワシが昔南の方を旅した時、だいたいの村にギターがあった。酒を飲んでいい気分になったところで、ボロンボロンとかき鳴らして歌うんだ」
それだけ身近な楽器というわけか。
「先生はギターを弾けるのか?」
「いんや。でも弾くところを見たことはある。左手で細長い部分をつかんで、穴が外を向くようにヒョウタンの部分を右手で抱えるんだ」
「こ、こうか?」
医者の言うまま、私はギターを抱えた。
「確か、右手は穴の上のあたりにやって…そう、そんな感じだ」
「これでいいのか?」
とりあえずギターを抱えてみたが、本当にこれで演奏できるのだろうか?私は左手にかかる楽器全体の重みにいぶかしんだ。
「そう、それだ。そのまま右手で弦をジャンジャンジャーンと」
「ふむ…」
重みに耐えながら右手の指で弦に触れるが、ビンビィンビンといった途切れ途切れの音しかでなかった。
「うーむ…ホセの奴が弾いたときは、もっといろんな音がでたんだが…」
医者は一つ呻いてから、ぽんと手を打った。
「そうだシェス。あの男が起きたら、どうやって演奏するのか教えてもらえ。あの男が目を覚ますまで、演奏の研究をしつつ側にいるんだ」
「私が?」
「お前はギターに興味津々じゃないか」
なぜ、という問いを発する間もなく、医者が告げる。
「しかし、山の見張りが…」
「シェスちゃんが忙しいのは、夜だけじゃない。シェスちゃんが出かけている間は、あたしが見ておいてあげるわよ」
「うむ…」
女将にそこまで言われては仕方がない。
「わかった。男の見張りをしよう」
「うむ、頼んだぞ」
医者は一つ頷くと、少しだけ冷めてしまった煮込み料理に顔を向けた。


男の荷物を手に、私は客室に入った。
ベッドには男が横たわっており、静かに寝息を立てている。
「……」
私はちらりと男を見てから、彼の荷物を部屋の各所に並べた。
マントは外套掛けへ。鞄は中身の着替えごとベッド側のイスの上へ。そして私はギターを手に、壁沿いにおかれたイスに座った。
男が目覚めるのを待つついでに、演奏の仕方を調査するのだ。
立っているときは左手にかかる重みが尋常ではなかったが、こうして腿の上にギターを乗せると安定する。もしかしたら、座って使う楽器なのかもしれない。
右手を穴の上に乗せ、張られた弦に指先を引っかける。太さの異なる六本の弦が撓められ、指先をはずれて音を立てる。
旋律にはほど遠い、弦のふるえる音が響いた。六つの音だけで演奏などできるのだろうか。
もしかしたら、竪琴を操っていた吟遊詩人がやっていたように、左手で弦を押さえて音を変えるのかもしれない。ただ首を握っていた左手を持ち変え、指先で弦を押さえてみた。そして再び右手で弦を弾くと、少しだけ音が高くなった。
「ふむ…こうやるのか…」
誰にともなくつぶやきながら、持ち方を変えて弦を鳴らす。自在な音色、というわけではないが、それでも六本の弦から何十もの音が紡ぎ出されることがわかった。
あとは、どのように音階にあわせるかだ。
「ここをいじればいいのか?」
ギターの首の先端、六本の弦を巻きとる六本のねじに私は触れようとした。
その瞬間、私の背中をぞくりと冷たいモノがなで上げた。
「ふぁぅっ!?」
直後に響いた素っ頓狂な声に、私は思わず飛び上がった。
「な、何だ!?」
声の源に目を向けると、そこにいたのはベッドから起きあがりあちこちに目を向けている男だった。
「目が覚めたのか?」
「あ、あぁ…あぁ…」
返事にもならぬ音を数度繰り返してから、彼はようやく頷いた。
混乱しているようだ。無理もない。彼にしてみれば、雪の中をさまよい歩いていたと思ったら、ベッドに寝かせられているのだ。しかも同じ部屋には私という異形のモノがいる。
「名前は?」
「ら…ラドック…」
「ラドック、ここはダッハラト第四街道沿いの宿場町だ。お前はここから北に少し行った場所で倒れていた」
「そ、そうなのか…」
魔物に対する恐怖よりも先に驚きの方が大きかったためか、彼は大して取り乱すこともなく私の説明を受け入れた。
「とりあえず、医者を呼んでくる。しばらく横になっていてくれ」
私はギターを傍らに置いて立ち上がると、部屋の戸口に歩み寄った。
「なあ」
ドアノブに触れた瞬間、男が声をかける。
「俺を助けてくれたのは、あんたか?」
「ああ」
「そうか。だったら雪の中で太陽をみたのは、夢じゃなかったんだな」
太陽。何のことだろう。
「勝手に出歩くなよ」
ラドックの言葉は気になるが、私はとりあえず部屋を後にした。



医師の診察の結果、男の体力は割と回復しており、夕刻にはベッドから起きあがれるほどになっていた。
そして、季節はずれの来客が命を取り留めたということで、宿屋の一階では祝宴が開かれることとなった。
積み上げられていたテーブルを広げ、料理と酒を並べ、雪の中を出歩ける住民だけが集まった。
祝宴とは言っても、雪が降る前に余らせていた食材や酒を出すだけだ。
どうせ春が来るまでに住民たちで消費してしまうものである。
しかしそれでも、寒く暗い季節の間こもりきりである日々に比べれば、にぎやかなモノだった。
テーブルを寄せてスペースを造り、男女が踊る。
普段なら歌や笛の拍子にあわせるのだが、今回は様子が違った。
「うっさぎが ピョンと 飛んで 月が でーた ホイ ホイ!」
ラドックがギターを抱え、珍妙な歌とともに演奏しているのだ。
彼の手が踊る度に軽快な音色が紡ぎ出され、彼の歌声が酒で酩酊した住民たちの笑顔を誘った。
歌で笑い、踊りで笑い、ステップを間違えては笑いと、笑うのが楽しくて笑っていると言ってもいいほどであった。
「うっさぎが ぴょんと 飛んで 丸くなって むーん!」
ぼろん、と一際強くギターをかき鳴らしてから、彼は歌い終えた。
「さーて、そろそろ腕が疲れてきたから、やすませてくれ」
「えー?」
「おい、ラドック!まだ踊り足りねえよ!」
「一曲だ、一曲だけ誰か歌ってくれりゃいい!」
「だったら俺が」
住民の一人が、笛を手にやってきた。
ラドックは彼に場所を譲ると、住民たちの輪を離れた。遅れて酒場に、軽快でテンポのよい笛の音が響く。
聞き慣れた笛の奏でる旋律に、住民たちは調子を合わせて再び踊り始めた。
だが、ラドックは踊りに加わることなく、酒場の隅に向かって歩いてきた。
そして壁際に並べられたイスの一つ、私の隣に腰を下ろす。
「やあ、楽しんでるかい?」
氷水の入ったコップを握る私に、ラドックは問いかける。
「そこそこ、な。お前は?」
私は短く返答してから、問い返した。
「もちろん楽しんでるさ。あんたみたいな美人に命を救われた上、宴会まで開いてくれて、俺はうれしいよ」
「そう」
美人、と言われたが私は軽く受け流した。
「ところで、何であんな雪の中にいた?」
住民の奏でる曲はもう少しかかるようだ。私は前々から問いただそうとしていたことを訪ねた。
「道に迷ったんだ」
「どこを目指していた?」
「ファレンゲーヘだよ」
間髪入れず、彼は答える。
「職を探していてね。あそこなら人手が必要らしいと聞いたから」
「人手が必要な町ならほかにもいくらでもあるだろう」
「ああ…その、前住んでいたところが居づらくなってね…」
お茶を濁すような彼の言葉に、私は何かを感じた。
だが、それ以上私が問いかけようとしたところで、笛の音が止んだ。
「あーっはっはっは!」
「相変わらずいい笛だ!」
「おーい、ラドック!お前の出番だ!」
「ああ、わかった!」
住民たちの言葉に応じ、彼は軽く手を挙げた。しかしそのまま住民の輪に加わる訳ではなく、一度私の方を見て問いかけた。
「美人さん、みんなと踊らないかい?」
「遠慮しておく。私は足が、こうだからな」
鋭く尖った氷の足を示すと、彼は残念そうに肩をすくめた。
「そうか。美人さんなら、それこそ晴れた日に舞う雪みたいにきれいに踊れそうなのにな」
「お世辞はいいから行ってやれ。みんな待っている」
そこまで言ってから、ラドックはようやく私のそばを離れていった。
「……」
「何か話していたようだな」
ギターを演奏し始めた男を無言で見ていると、医者が私の側に立った。
「早速仲良くなったのか?」
「違う。探りを入れただけだ」
医者の問いに、私は返答を続けた。
「ラドックはファレンゲーヘを目指していて、道に迷ったと言っていた」
「ああ、この季節なら街道から外れちまうだろうな」
「確かにそうだ。だが、あまりにもできすぎた答えだ」
「と、言うと?」
「あらかじめ、そう答えるつもりだったのかもしれない」
私の推測に、医者が息を吹き出した。
「ははは、シェス…いくら何でもそれは…」
「考えても見ろ、迷ったら命を失いかねない冬のダッハラトに、ギターのようなよけいな荷物を抱えてやってきたんだ。ファレンゲーヘに仕事を探しにきた、と言っていたが実際は潜伏するつもりで、この町にきたのかもしれない」
「潜伏?何のために」
「奴が…何かの罪を犯したとか…」
「んなこたぁない」
医者は笑いながら否定した。
「人はおおむね、自分と少しでもつながりのあるところへ逃げるもんだ。それに官憲の目から逃れるのなら、もっと楽な方法がいくらでもある」
「その楽な方法に追っ手の目を向けるために、あえてこの町を選んだとしたら?」
「その可能性を考えるなら、『ファレンゲーヘを目指そうとして迷った』って方が何倍もありうるな」
「だが…いや、いい…」
私はなおも言葉をつなごうとしてあきらめた。
「とにかく、彼は春頃までこの町に留まるつもりらしい」
「当たり前だ。この季節に町を離れたら、また遭難する」
「それもそうだが、こっちとしても男手は必要だからな。ラドックがどういう素性であれ、雪下ろしの人手はありがたい」
医者はギターを奏でるラドックを見ながら言った。
「奴が何も騒ぎを起こさなければいいが…」
「起こらんさ…さって、ワシは飲みなおしてくるとしよう」
医者はそう言い残してから、私の側を離れた。
私は医者の背中を見送ってから、ギターを抱える男に目を向けた。
荷物の中にあったベルトをギターに掛け、肩から下げて演奏する男。
彼の陽気な歌声や笑顔に、暗いモノは感じられなかった。
だが、私は確信していた。奴は何か後ろぐらいモノを抱えている。
奴が宿屋の一室で目を覚ました瞬間、ギターに触れていた私が感じた寒気は殺気だった。だが、今となってはそのことを示す証拠はない。
だが、ギターに触れて殺気を放ったということは、何か知られたくないことがあのギターにあるのだろう。
ギターを調べなければ。
私は氷水の入ったコップに、唇をつけた。



昼間。
吹雪が止み、雲が消え去り、積もった雪が燦々と太陽の光を照り返す頃、町の住民は表にでていた。
屋根に降り積もった雪を下ろし、通りを埋める雪をよけるためだ。
吹雪の度にうず高く降り積もる雪は、放置していれば家屋を押しつぶしかねない。だからこうして、吹雪の止んだ間に雪を下ろす必要があるのだ。
そして、建物の屋根に登った人々の中に、ラドックの姿があった。
「おろすぞー!」
春から秋にかけて雑貨屋を営んでいる建物の上で、ラドックは家主の男とともに雪をスコップで掬っては落としていた。
土よりは軽いものの、それでも全身を使う雪下ろしの作業はきついはずだが、ラドックは涼しい顔でスコップを操っている。
「ラドック、お前さんすげえな…」
「いやー、昔は大きな町で土木工事だとかをしていて…」
雑貨屋の主の問いに、ラドックは答えた。
「それに、春まで置いてもらえるってなら、おやすいご用だ」
白々しい嘘を。
私は通りを挟んだ雑貨屋の向かいの建物の屋上から、ラドックの返答に顔をしかめた。
私とラドックの距離は道幅ほどだが、奴に私が気が付かれる心配はない。屋根に降り積もった雪の下に隠れているからだ。
完全に気配を絶って奴を見張り、ラドックの悪行の証拠を押さえる。奴が町に災厄をもたらす前にしっぽを掴まねば。
「シェスちゃんよ、そろそろでてきてくれねえか?」
「シッ、静かに…!」
雪下ろしをしていたこの建物の主人の言葉に、私は短く応じた。
「しかし、もうここの雪を下ろせば終わりなんだが…」
「ここは私が雪を下ろす。下に戻ってゆっくりしていてほしい」
「そうかい…」
彼はそう頷くと、私の隠れる雪の塊から離れていった。
一瞬集中を乱されたが、このやりとりの間も私の目はラドックをとらえていた。奴は時折こちらを見ていたが、私の姿を捉えるには至らなかったらしく、作業を再開していた。
「さあ、どう動く…?」
雪の中、口から溢れぬ程度の低い囁きで、私は自問した。
奴が私の狙い通りの人間なら、事故を装って町の住人を怪我させ、その代理を務めようとするだろう。そうなればこの町に居座ることができる。
私は奴の不振な動きを見逃さぬよう、ラドックの一挙一足に目を光らせていた。奴は真面目を装いながらスコップを操り、積み上がった雪を下ろしていった。
やがて屋根の上の雪がなくなったところで、雑貨屋の主人に向けて声を上げる。
「上、全部片づきましたー」
「おう、お疲れさん。下で休憩してくれ。その後は道を頼むぜ」
「りょーかい」
ラドックはそうやりとりを交わすと、スコップを脇に抱えて屋根から降りていった。
けが人一人出なかった。
「なるほど…もう少し溶け込んでから、悪さをするつもりだな」
「シェスちゃんよ。そろそろ降りてくれねえか?道の片づけが始まっちまう」
推理を組み立てる私の耳を、下からの声が打った。
仕方ない。ラドックも下に降りたことだし、私も降りよう。
私は覆い被さる雪ごと屋根の上を滑ると、道に積もる雪へと落ちていった。



結論から言うと、ラドックは尻尾を出さなかった。
日中、一日奴の追跡を続けたが、彼は雪下ろしといった雑用を積極的に行うばかりだった。
そして日が傾き、風が強まってきた頃に私の追跡は終わった。
日課の、近辺の雪山の探索のためだ。この任務を氷の女王から賜ることがなければ、私はまだ奴を追い続けたであろう。
だが、任務を終えて村に戻れば追跡再開だ。善良で陽気な青年みたいな顔をして雪下ろしを手伝う奴を、私は様々な角度から追跡した。
ある時は隣の屋根から。
ある時は遙か上空から。
ある時は煙突の陰から。
ある時は単に雪下ろしの手伝いをする振りをして、同じ屋根に登った。
だが、奴は悪事の片鱗はおろか、殺気のかけらも見せる気配はなかった。
そうこうしているうちに夕刻が近づき、吹雪の荒れ狂う夜が訪れる。そうなれば私はただ一人任務をこなしながら、今日の反省をするのだった。
「くぅ…ラドックめ…必ず尻尾を掴んでやる…!」
土地によっては白竜の吠え声とも表現される豪風の中を滑るように舞いながら、私はそう漏らしていた。
独り言がでるほどに、つまりは意識の半分近くを私は今日のラドックに向けていた。
ラドックの一日の行動を思い返すが、今日もただ雪下ろしをしていただけだった。
何の問題もない。もしかしたら、あのとき自分が感じた殺気が何かの錯覚ではないのかと…
「っ!いけないいけない!」
無害そうに見える奴の行動に影響されつつあったことに、私は気が付いた。こうして自分に向けられる疑いの目がなくなったところで、奴は好きなように暴れ回るのだ。
たとえ宿場町の住民全員が奴を受け入れたとしても、私が奴に注意を払っていなければ。
意識の半ばを耳に傾け、雪崩の前兆を逃すまいとあちこちを飛び回る。
しかし今日も聞こえてくるのは、雪と風が山肌をなでる音ばかりだ。
「今日も異常なし…」
その一言と同時に、私は耳に向けていた意識を脳裏のラドックに向けた。
奴の一挙手一投足を思い返し、そこに怪しいところがなかったか省みる。
不審な点はなにもない。しかしなにもないことが返って不振だった。
だからといって、不審な点がないのが怪しいと奴を取り押さえることはできない。私にできるのは、奴を監視して悪事を犯す前に捕らえることだった。
そう、雪崩の起こる前の小さな軋み。それさえ見つけることができればいいのだ。
そんなことを考えているうちに、私は宿場町の広場に降り立っていた。
日中に雪をどかして通り道を造ったはずだが、すでに物陰に雪がたまりつつある。
強風のおかげで降ってきた雪の大部分は吹き飛ばされているが、一晩かければそこそこの量になる。
私は無言で吹雪の中を進み、いつもの食堂を目指そうとした。だが、私は吹雪に紛れて響く音に、思わず足を止めていた。
「…音楽?」
通りや建物の合間を風が吹き抜ける、甲高い叫び声のような音に紛れて、私の耳は確かに旋律を捕らえていた。
ギターの音色だ。しかし、なぜ?宴会が開かれたのは、ラドックを迎えるためだ。後は年明けまで宴会を開くような出来事はないはずだ。
私が音の源を探りながら夜空を進むと、次第にラドックが部屋を借りている宿屋へと近づいていった。
そして私が待ちに降り立つ頃には、宿屋の中でラドックがギターを奏でていると確信していた。
扉に手をかけ、雪があまり入らぬよう手早く開閉する。すると、私の確信は現実となった。
「〜〜♪〜〜〜♪〜〜♪」
食堂の一角に、ラドックがギターを抱えながら歌っていた。ただ、彼がなにを言っているのかはわからない。異国の歌だろうか?
しかし、歌がわからずとも彼の演奏する姿と音色に、私の目と耳は釘付けになった。
左手の指は一本一本が別の生き物のように柔軟に屈伸を繰り返し、右手は素早く上下に動いていた。
弦が震え、いくつもの音を紡ぎ出す。その音色は、六本の弦と十本の指が作り出しているとは思えぬほど、多彩であった。
「〜〜♪〜アァ〜〜♪〜〜♪〜〜…っと」
彼は歌を断ち切り、演奏の余韻の残る弦を指で押さえて止めた。
「やあ美人さん、お帰り」
「あ…ただいま…」
私は演奏に聴き入っていたためか、ラドックの迎えの言葉にそう当たり前の返事しかできなかった。
「あら、シェスちゃん帰ってたの?」
いつからそこにいたのか、食堂の一角にいた女将が、私の言葉に驚いた。
「いや、さっきからだが…」
「あらそう?私気が付かなかったわー」
私と全く同じ感想を彼女は口にした。それだけラドックの演奏が、私と女将の意識を捕らえていたということだろうか。
「しかし…なぜギターを?」
「いやあ、あまり長いこと弾かないと指が動かなくなるからねえ」
私の問いかけに、ラドックはイスから立ち上がりつつ答えた。
「誰かに聞かせるための演奏じゃないけど、美人さんに聞いてもらえたならうれしいや」
また白々しい嘘を。
私は、胸の奥にわき起こる『もう一度聞きたい』という衝動を、そう内心の言葉で押さえ込んだ。
「ああそうだった、シェスちゃん。氷水だね」
「ああ、頼む」
私も忘れかけていたが、女将が私のいつもの注文を思い出し、厨房へと向かっていった。
「さーて、演奏が終わったら寝るつもりだったけど、美人さんが来てくれたのならもう少し起きてようか」
「そうか、私も聞きたいことがある」
都合がいい。それとなくいろいろなことを聞き出してやろう。
私はいつものカウンターの席に着くと、ラドックを招いた。
「隣いいのかい?」
「話をするのだろう。近い方がいい」
ひゃっほー、と声に出していいながら、彼はイスに腰掛けた。
「さて…よく考えてみれば、こうして腰を落ち着けて話すことは初めてだな」
起きた直後はすぐに医者を呼びに行ったし、宴会の時は彼は演奏に専念していた。
そしてここ数日は、若干私が彼を避けていた(実際は監視していた)。
「ああ、そうだな。じゃあこうしよう。互いに聞きたいことがあるだろうから、交互に質問して答えあうとかは?」
「いいだろう。では私からだ」
私は奴の本心を聞き出すため、まずは軽い質問から始めた。
「どこから来た?」
「ダッハラト手前の小さな宿場町だね。出身だったら南の方だよ」
奴は私の質問に、二つも返答してくれた。
「俺の番だ。ええと、美人さんはなんて魔物?」
「グラキエスだ。」
「へえ、『ありがとう』か!」
「違う、グラキエスだ。シア、ではなくてキエだ」
わざとなのか、私は彼の間違いを訂正した。
「では次は私の番だ」
彼の間違い程度で腹を立ててはいけない。私は心を落ち着けると、二問目を尋ねた。
「この町に来る前、なにをしていた?」
「見ての通り、ギター演奏をしながら町から町へと流れてたんだ。本当は音楽家にでもなりたかったんだけどね…そこまでの才能はなかったよ」
音楽家の夢をあきらめきれず、ギターを大事に抱えているということか。
私は一瞬納得しそうになったが、あわてて彼の返答がそういう設定だと思いこむことにした。
だが、音楽家を目指した努力の証は、確かに彼の演奏に滲んでいた。
「今度は俺。『ありがとう』さんは毎晩どこかに出かけてるの?」
「だからグラシアスじゃなくて、グラキエスだ」
私は返答より先にそう彼の誤りを訂正した。
「ごめんごめん、故郷の言葉に似てるから…」
「全く。種族を間違えるぐらいなら私のことは名前で呼べ」
「いやあ、それがねぇ…俺、美人さんの名前を教えてもらってなくて」
「なに?」
予想から外れた男の言葉に、私は思わず聞き返していた。
「いや、美人さんの名前は何度か聞いたことあるよ?でも名前教えてもらってないのに、名前呼んだら若干変じゃない?」
「うむ…」
そういえばそうだ。私はラドックに対し一度も名乗ったことがない。
「私はシェスだ。名字はない」
「シェスさんね。『ありがとう』シェスさん」
「だからグラシアスではなく、グラキエスだ」
「今のは名前を教えてくれてありがとう、って意味だよ」
「うぐぐ…」
言葉を弄して弄ばれているような気分に、私はうなった。
「それでシェスさん。夜はなにしてるの?」
「何をって…」
私はようやく思いだした。この男の質問に、まだ答えていなかったのだ。
「この近辺を巡回して、雪崩が起こらないか見て回ったり、おまえのような遭難者がいないか捜索したりしている」
「それで俺を見つけてくれたのか!ありがとう」
今度のありがとうは、私にもわかる言葉だった。
「次は私の番だ。ファレンゲーヘに行くつもりだったと以前に聞いたが、何が目的だ?」
「次の仕事を探して、だね。ギターを弾いても文句を言われない場所ががあるともっといい」
「ギターを弾く場所?」
「昼間は仕事で忙しいから、夜ぐらいにしか演奏できないんだ。でもたまにうるさいとか怒鳴られてね…ギターをやめるつもりはないから、町の中で何度か転々として、また次の町へ…だよ」
彼は肩をすくめつつ続けた。
「ギターがうるさい…」
あの演奏を聴いて、そんなことを思う者がいるのだろうか。私は彼の言葉が信じられなかった。
だが、私の単なる驚きはすぐに疑念へとつながった。
「本当にギターがうるさいと言われたのか?」
「うん。俺なんて下から数えた方がいいぐらいの弾き手だからね」
「本当は、あまり長い期間同じ場所に行られない理由があるんじゃないのか?」
「…ははは、確かにそうだね」
彼は一瞬の間をおいてから、笑った。私の発した言葉に反応した。ようやく尻尾を掴んだのだ。
だが、私の内心を裏切るような言葉が、彼の口から続いた。
「疲れた人々には、俺のギターは騒音らしいからね。あまり長い期間同じ場所にいたら、騒音を止めようとする人たちに袋叩きにされるよ」
そういうことか。
別に何かに追われているとか、そういう理由ではないようだ。
私は彼の返答に、内心ため息を付いた。
「他に聞きたいこと、ある?」
「いや…もう…」
今夜はいくら揺さぶりをかけても何も出ないようだ。あまり続けていたら、逆にラドックに私の腹を探らせることになりかねない。
「じゃあ、最後に一つだけ聞いていい?」
私は逡巡した。こちらの本心や疑念を嗅ぎとられてしまうのは困る。だが、ここで無碍に断っても彼に疑いを抱かせるのではないのか?
「質問によるな」
私はとりあえず、ラドックの出方を見ることにした。
「明日も演奏するけど、聞きに来てくれる?」
私の耳元に、彼のギターの音色が響いたような気がした。
「雪崩や遭難者が見つからなかったら、な」
「よーし、じゃあ俺もこの時間に演奏するとしよう」
私の返答に、彼はうれしそうに言った。
またギターの音色を聞かせてくれるのか。私の胸に、小さな期待が宿った。




それから、私の夜の日課にラドックのギターを聞くことが加わった。
吹雪の中の巡視を終えて宿屋に戻ると、食堂でラドックが待っている。
そして彼はギターを鳴らしながら、異国の歌を歌うのだ。彼の故郷の言葉はわからないが、その心地よい響きはいつまでも聞いていたいものだった。
「〜〜♪〜〜〜♪」
演奏に合わせて響く彼の声は、ラドックに対する疑念を忘れさせるようだった。
「〜〜〜♪……はい、おしまい」
ギターの弦の震えが弱まるのに任せて、彼は歌を締めくくる。
ギターの音色と歌声の余韻が耳に残っており、もう少しだけ聞きたいという衝動が芽生える。
「どうだった?」
「うむ…今日もよかった」
もう一曲、と返答したくなるのを押さえ込んで、私は彼にそう返事をした。
「今日も指の調子がよかったよ。つきあってくれてありがとう」
彼はにこにこと笑みを浮かべながら立ち上がると、ギターを携えた。
部屋に戻るつもりなのだ。
「あ、待ってくれ」
いつもならばこのまま見送るのだが、私は思わず彼を呼び止めてしまっていた。
「何?」
「いや、その…少し話をしないか?」
呼び止めてしまってから、何の目的もなかったことに気が付き、私はとりあえずそう言った。
「いいね」
ラドックは私の苦し紛れの言葉に笑みを浮かべると、私のそばに歩み寄って、イスに腰を下ろした。
「それでだ、ええと…」
「シェスさんは最近どう?夜の巡視とか、順調?」
話を切り出しかねて困っていると、彼の方から問いかけた。
「いつも通り、といったところだな。雪崩の予兆もなし、遭難者もいない」
「変わりがないって退屈じゃない?」
「いや、雪崩が起きたり、遭難者が気がつかない間に氷付けになっていたりするよりはずっとましだ」
「へえ…シェスさんは優しいね」
優しい?私が?
彼の言葉に、私は胸中で聞き返してしまった。
「その…私は氷の女王より賜った任務を、ただ毎日こなしているだけだ。優しいとかそういう訳じゃ…」
「シェスさん。俺の故郷には『太陽のような』ってほめ言葉があるんだ」
彼の賞賛を筋違いだと説明すると、彼は何かを説明し始めた。
「太陽は昼間光を降り注がせるだろ?砂漠にも、雪山にもどこにもだ。でも、その光と温もりで作物は育つし、人々は暖まるんだ。太陽は人を暖めてやろうとか、そういうつもりはないだろうに」
「つまり…お前が勝手に私のことを優しいと思っている、と?」
「違うよ。シェスさんは自分が気がついていないだけで、誰よりも優しいんだよ」
その一言は私の胸を突くようだった。
「シェスさんは氷の精霊だけど、俺にとっては太陽なんだ」
「いや、しかし…」
「『この町には太陽がいる 夜でも輝く俺の太陽だよ』」
突然彼が、そう紡いだ。
「それは?」
「いつもシェスさんに聞いてもらっている歌だよ。俺の故郷の言葉だから、意味は通じなかったかもしれないけど」
彼の言葉に、私の胸の奥が軋む。
みしみしと、かきむしりたくなるような痛みが生じる。
「シェスさん。太陽には声は届かないかもしれないけど、感謝してることは知っていてほしいんだ」
「そうか…」
ラドックが目覚めた頃から積み重ね続けていた疑念が、悲鳴を上げる。
ラドックは危険だ。ラドックは嘘をついている。ラドックにだまされるな。
しかし、本当にそうだろうか?
ラドックに対する疑い自体に、私は疑いを抱いていた。
「さて、つまらない話を聞かせてごめんね」
何も言えず、疑念と疑念を脳裏でぶつけ合ううち、彼がそう口を開いた。
ラドックは立ち上がると、ギターを手に席を離れていった。
「お休み、シェスさん」
「ああ…いや、待ってくれラドック」
私は、彼に一つだけ問いかけた。
「明日も…歌を聴かせてくれるか?」
「シェスさんが来てくれるのなら」
「わかった。引き留めてすまなかった…お休み」
「お休み」
彼は食堂の片隅の階段を上って、借りている部屋へと引き上げていった。
彼の背中を見送りながら、私は腹を決めていた。
もう、ラドックの来歴が何でもいい。彼の歌を聴きたい。
ただそれだけだった。
13/05/29 21:07更新 / 十二屋月蝕
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■作者メッセージ
「グラキエス、セニョリタ!ハッハー!」
「あらシニョール、お礼より先に私の名前を呼ぶのかしら?」
「こいつは失礼セニョリタ、君のような美人(ムーチョス)の名前こそが、この世で最高の賛辞だと思っちまったよ!」
「うれしいこと言ってくれるじゃないの、シニョール!」
「さあ、今夜は二人で楽しもうじゃないか、セニョリタ!」
そして愛の宴が始まった。愛の睦言に異国の言葉が混じる。
タコス、テキーラ、ナチョス、タバスコ、トルティーヤ、チワワ、メキシコ、メキシコシティ。
そしてグラシアス。
グラキエスにも似たその言葉は幾度となく繰り返され、彼女の意識に染み入るのであった。
<バク仮面・モーターバク共著「魔物娘との交際」より抜粋>
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