連載小説
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現在1
 リビングドールのイレットと交わることが、ぼくの生活の大半を占めていた。彼女はドール――人形に魂が宿った存在で、美しい少女の形をしていた。カールした髪は薄紫で、幼めの顔にはあどけなさと艶めかしさが混じり合っている。華奢な体躯はほどよく肉がついていて、肌はきめ細やかだ。
 今は夕方だった。ごくごく普通の住宅街の、ごくごく普通の一軒家の、ごくごく普通の部屋の、ごくごく普通のベッドの上で、ぼくはその人形と一緒にお互いの身体を触って、夕焼けの中、恋人のように戯れている。
 そう、人形と。

「お兄様、わたし、キスがしたい」

 まるで秘密を共有するように、布団の中でひそひそとイレットが囁いた。
 イレットに乞われるままに、ぼくは唇を重ねた。イレットは瞼を閉じて、気持ちよさそうにしていて、それが愛おしくてたまらない。唇を離して、イレットの薄紫色の髪を梳いて、柔らかい頬を撫でた。イレットははにかんで、

「わたしのこと、好き?」
「うん、もちろん」
「ふふっ、ねえ、お兄様のおちんちんがおっきくなって、わたしの足に当たってる」

 イレットは言うと同時に、手を伸ばして下着越しにぼくの性器に触れた。淡くもどかしい刺激に、少し声が漏れた。

「えっちなお兄様。わたしのこと好きだなんて言って、欲情してる。女なら誰でもいいんじゃないの?」
「違うよ」
「ほんとう? お兄様はとってもえっちだから、信じられないなあ」

 イレットは喉を鳴らして笑いながら、ぼくの下着の中に手を入れて、性器をしごいた。汗ばんだ性器を、イレットのひんやりした手が冷ます。しかし性器は、また熱を帯び始める。

「気持ちいいのよね、お兄様。ここがいいんでしょ?」

 イレットはカリと裏筋を指で引っ掻いた。そのたびに、ぼくの口からだらしなく喘ぎ声が漏れた。イレットはそんなだらしない喘ぎ声を楽しんでいるようだった。

「お兄様の声、大好き。もっといっぱい聞きたいな」
「それより、イレットの声も聞かせてよ」
「えー。……いいけど」

 イレットは名残惜しそうに性器から手を離して、そそくさとドレスを脱ぎ始めた。そんなことせずとも魔法で一瞬で消せるのに、そうとわかってあえてそうしなかったようだ。
 イレットは下着だけになった。
 ブラジャーが落ちると、なだらかな肌色に桜色の乳首が浮いている。パンツが脱げると、そこから綺麗な割れ目が覗いた。すでに濡れて、夕日を反射している。
 綺麗だ。作り物染みた恐ろしい美しさがそこにあった。

「触っても良い?」
「うん。たくさん触って」

 イレットの身体に手を伸ばして、崩れかけの砂山に触れるようにそっと肌を撫でた。作り物染みた美しい肌は、しかし人間らしく柔らかい。全身を焦らすように触ると、イレットは、ん、んと喘ぎ声を堪えた。
 乳首に手を伸ばして、擦ったり、つまんだりした。

「ぁ、お兄様……んっ」

 イレットは目を閉じて耐えている。
 右手を下に落として、性器に指を沿わせた。何時間もベッドの中で戯れていたので、イレットの入り口はすでに濡れており、すんなり指が入った。

「――んっ!」

 イレットは固く口を引き結んだ。それでもぼくが中で指を動かすと、その口がほころんで、喘ぎ声がそこから漏れた。

「あっ、はあっ、んっ、お、お兄様っ、ぁあ……」

 イレットの切なげな表情には、すぐ壊れるガラス細工みたいな、儚い美しさがあった。少女特有の可愛らしさもあって、ぼくの心をざわつかせた。
 イレットの桜色の乳首に口づけし、控えめなふくらみを舌で転がした。イレットの身体が震えた。何時間もベッドの上でいちゃいちゃし続けていたので、イレットの身体は感じる準備が整っていた。

「お兄様っ、あっ、だ、だめっ……んっ、も、もうっこのままじゃ、いっちゃ、ぁ、ああっ」
「なに?」
「は、早くっ、い、入れっ、て、お、お兄様の、はあっ、はあっ」
「何言ってるか聞こえない」

 と嘘をついて、右手の指を速くした。右の乳首は舌で転がしたまま、左手を左の乳首に持っていって弄った。
 イレットの喘ぎ声が大きくなり、部屋の外まで漏れそうなほどだった。

「やだっ、お兄様っ……! んっ、あっ!」

 もうすぐ限界だな、と思った。最近はずっとイレットとこんなことばかりしているから、そのことが良く分かった。
 イレットの表情が見たくて、目だけ上に向けた。イレットは目を固く閉じて、必死に声が漏れるのを抑えていた。
 そのイレットの目が、少しだけ開いた。アメジストのような妖しい紫色の瞳が、ぼくを見ている。しまった、と思った時にはもう遅かった。
 イレットの瞳から視線を逸らせなくなってしまう。
 ぼくは、動けなくなってしまった。脳からの命令が、目と口以外のどこにも届かなくなってしまう。
 魔力を流し込まれて身体の自由を奪われたのだ。イレットの得意技だった。

「……はあ、はあ……はあ」

 イレットは息を整えながら、恨めしげにぼくを見ている。
 少したって息が整うと、イレットは、動けないぼくの背後に回り、ぼくのシャツの中に手を入れて、指先で上半身をさわさわと撫でながら、

「お兄様の癖に、わたしのこと苛めようなんて百年早いんだから」
「……卑怯だぞ」
「しーらない……ねえ、さっきの仕返しに、お兄様の乳首も触ってあげよっか?」

 疑問形で言いつつも、イレットの両手の指はすでにぼくの乳首を弄んでいた。つまんだり弾いたり撫でたりする。甘くとろけそうな刺激がじわじわと脳を犯し、思考が霧散していく。それでも悔しいので、声だけは出さないように堪えた。

「男なのに、乳首が気持ちいいの? お兄様ってもしかして、変態さん?」

 黙れ、と言いたくても、喋った瞬間喘ぎ声が漏れそうで怖くて迂闊に喋れない。イレットはそのことをよく心得ていて、一方的に囁きかけてくる。

「女の子みたいだね、お兄様」
「――るさい」
「んー? 何言ってるかぜーんぜん、聞・こ・え・な・い」

 ふうー、と耳に息を吹きかけられ、少し声が漏れてしまった。後ろを振り返らずとも、イレットがニヤニヤ笑っているのが分かった。
 イレットは満足して、両手をシャツから引き抜き、ぼくのシャツを脱がせ、ズボンも脱がせ、下着も取ってしまった。
 イレットは唾を垂らし、それをぼくの性器に塗りたくっている。先走り汁と混ざって、卑猥な水音がした。

「お人形さんに脱がされるなんて変なの。普通逆だよね?」
「……」
「またおちんちんがおっきくなった」

 イレットは嬉しそうに舌なめずりし、立ち上がってぼくの身体を跨いだ。目の前に割れ目がある。その下に、屹立したぼくの性器があった。

「お兄様、わたしの中でたくさん苛めてあげる。きっと、耐えられなくてすぐにイっちゃうわ」

 調子のいいことを言いながら、イレットは腰を落とし、ずぶずぶとぼくの性器が飲みこまれていった。お互い性器がすでに濡れていたので、滞ることなく繋がれた。

「ぁ、あっ、んんっ――、はあ、はあ……」

 イレットは、ぼくの性器を咥えただけで今にも絶頂を迎えそうなのに、必死にそれを堪え、はあはあと息を乱している。無理してぼくを苛めようとするイレットのいじらしさが、ぼくの心を揺さぶった。
 暫しの休憩をはさんで、イレットはなんとかもとの調子を取り戻した。額に汗がたくさん浮いていた。
 
「お、お兄様……ふふっ……どう? こうやって、ちょっとずつ締め付けるの」

 もともと狭かったイレットの中が、ぎゅっ、ぎゅっ、とぼくの性器を締め付けた。上下には動かず、緩めたり締め付けたりを繰り返して、その刺激はたまらなかった。
 
「ねえ、わたし初めての時よりずっと上手になったわ。経験を積んだ、ってやつ?」
「な、何が経験だよ。ぺたんこの癖に」
「……ふふっ」

 火がついた。イレットは怒っていた。
 イレットは唐突にブツブツとなにか呟き始めた。初めは恨み言でも言っているのかと思ったが、どうも違う。様子がおかしい。
 何故だろう? 肌が粟立つような威圧感を感じる。これは――イレットが魔力を使ってぼくの身体の自由を奪う時の、あの感覚だ。

「い、イレット、何してるの?」

 怖くなった。でもイレットはぼくを無視して呟き続ける。
 ぼくの身体が、芯から熱くなっていく。何もされていないのに息が乱れ始めた。風邪でもひいたように意識が朦朧としてくる。
 何かされている。もしかして――何かの呪文?
 イレットが呟くのを止めた時、ぼくは自分の体温に身体が溶かされそうになっていた。焼けるように熱い。

「お兄様、気分はどう?」
「……なに、こ、れ……?」声が掠れて上手く出てこない。
「気持ち良すぎて死んじゃいそうでしょ? お兄様の身体にいっぱい染み込んだ魔力が暴走してるの。あははっ、お兄様、何もしてないのにイキそうになってて面白い」

 イレットの中に性器を入れているだけなのに、物凄い快感だった。繋がった性器を中心に、熱と快感が全身に広がっている。声を我慢することは到底できなかった。何もしてないのに情けなく喘いでいる。

「ねえ、わたしも気持ちよくなりたい。……動いていい?」
「それはっ――」
「えい」

 イレットは無邪気な掛け声とともに、容赦なく腰を上下に動かした。たった一回ピストンしただけなのに、ぼくの性器から今までにないくらいたくさん精液が出た。我慢することは不可能だった。
 性器がどくどく脈打つたび、イレットはうっとりとする。

「はあ、お兄様の、おいしい……」
「はあ、はあ、はあ……ちょっと、休憩を――」
「もっといっぱい食べたいな。ねえ、お兄様も気持ちよくなりたいもんね?」

 やめろ、という間もなく、イレットは腰を上下に動かした。今度は一回じゃなく、何度も何度もピストンする。射精したばかりの敏感な性器に、まるで神経を直接金づちで打ったような強烈な快感が走った。ぼくはまた射精した。射精しているのにイレットはピストンを続け、射精がまったく止まらない。こんなに出して萎えないなんて、明らかに身体の調子がおかしい。

「はあっ、はあっ……ほうら、お兄様、ぎゅっ、ぎゅっ、ぎゅ〜」

 イレットはピストンを止め、中でぼくの性器を締め付ける。ただ締め付けられただけで一瞬のうちにぼくは射精した。気持ち良すぎて頭がおかしくなりそうだった。

「いい顔、お兄様、ふふっ、だーいすき」

 イレットは性器を膣から引き抜いた。抜いた瞬間射精してしまい、イレットの背中と長い髪に精液がかかっている。でもイレットはまったくそれを意に介さず、小さな口でぼくの口を貪った。
 
「んむっ、――ん、じゅる、んん」

 そのキスはとても甘くて切なくて、愛おしさがこみあげてくる。イレットはこうしてぼくの身体に卑怯な細工をして、ぼくの心を作り変えているのだ。でもそれも嬉しかった。イレットのことが好きで仕方なくなってしまう。

「――ぷはっ」イレットは唇を離した。ぼくの頭を撫でながら、「……お兄様、それじゃ、干からびるまでわたしに御馳走してね。ここからはずっと、ノンストップだから」

 イレットはぼくの両足の間に移動した。屈んで、精液まみれの性器を矯めつ眇めつしている。さらに、性器にふーっと息を吹きかけたり、指でつついたりし、ぼくのほうをちらっと見て、くくくっと悪戯するみたいに笑う。
 何をされるか分かってしまい、期待が高まってそれだけでイキそうだった。
 
「精々頑張ってね、お兄様」

 イレットはぼくの性器を口に含んだ。舌で裏筋を舐めたり、頬で亀頭を擦ったり、じゅるじゅる音をたてて吸ったりする。精液が下腹部からこみあげて、もう何度目かも分からない射精をした。イレットはそれを飲みこみ。休憩なしでまたフェラを続けた。
 僕はその後、イレットにされるがままに精液を吸い取られ続けた。ぼくの身体のどこにこんな量がしまってあったのか不思議なほど、大量の精液をイレットの口にぶちまけた。後半の記憶は殆どない。いつの間にかぼくは、眠ってしまっていた。





 こういうふしだらな生活をずっと続けているんだけど、ぼくがイレットと出会ってから、いったいどれくらいの時が経っただろう?
 眠っているぼくの夢の中に、過去の記憶が浮かび上がってくる。
 一か月前だったか、それとも一年前だったか、もっとずっと前だったか、判然としない。

 イレットと、初めて出会った時のこと―― 
14/10/23 14:39更新 / おじゃま姫
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■作者メッセージ
明日には続きを上げる予定です(10/11)

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