連載小説
[TOP][目次]
大地の恵みと命の源
『今日も各所では猛暑が続き都心部などでは36℃を超える気温となるでしょう。お出掛けの際には熱中症対策などの御用意を・・・』

  -プツン-

天気予報を確認し、今日は妻であるツララと共に社に向かう。連日の猛暑により作物の成長が著しく下がり、このままだと収穫時期を迎える頃には今育っている作物の半分は枯れてしまうだろう。だが俺はそんな天気予報なんて気にせず、二人手を取り合ってのんびりと歩く。

「今日は御互い頑張ろうな」

「ええ、もちろんですわ。だ・か・ら…今回は明日の明け方まで頑張ってくださいね、ア・ナ・タ♥」

「ああ、もちろんだ。今頑張らないと今年の収穫がダメになってしまう。やっと潤った大地なんだ、ここで前のように干乾びさせる訳にはいかないしな」

俺と並んで歩く妻は水の神様である龍神。器量良しで性格もおっとりしてて、俺には勿体無いほどの美人だ。おっぱいなんて何を食ったらあれだけでかくなるんだろうかというほどの大きさだったりする。間違いなくEはあるだろう。歩きながら、つい胸のほうに視線が移ってしまいそうになる。

「どうかしました?・・・やだ、もぅ・・おっぱいばかり見つめないでください・・」

「あぁ、いや・・なんていうかさ。何を食えば此処まで育つんだろうな、と考えてさ・・」

俺は妻のおっぱいを下から掬い上げるようにしてタプタプと持ち上げてみる。手が下乳に埋もれるほどの柔らかさだというのに芯のあたりはしっかりとした弾力がある。御椀型でふっくらしたおっぱいは見る人全てに母性を見い出させる。あまりの気持ち良さに俺は何度も下乳を持ち上げては軽く揉み、揉んでは手を柔らかい乳に押し込んで眼福を味わっていた。

「もぅ・・社に着くまでは我慢してくださいね♪」

「…うっ・・わかった。それはそうと、・・・あの社って最近まで使われてなかったから結構汚れが溜まっているんじゃないか?」

「そうですわね〜、まだ日も高い事ですし夕刻までは御掃除しましょうか」

「そうだな、これから何度も御世話になるかもしれないしな。まさか、あんなぼろい社にこれから本物の龍神様が住まう事になるとは夢にも思わんかったけど」

「うふふ・・・、そうは言っても普段はアナタの家で一緒に暮らしてますけどね。ここに来るのは雨乞いの儀式の時だけですからね」

そう、今から訪れる社は雨乞いの儀式を行う時にだけ使用させてもらうのだ。家で雨乞いの儀式を行ってもいいのだが、妻が言うには社の地下奥底には龍脈があるらしい、と。俺にはよくわからないが龍脈の上で儀式を行えば普段の倍以上の力を操れるらしい。つくづく、本当にあの伝説の龍なんだな、と驚いてしまう。そんな伝説の龍に出逢えた俺もすごいけど・・・。

「さ、旦那様。張り切って御掃除しましょうね」

妻は社に着くなり魔力とやらで社の壁にこびりついた苔や黴などを綺麗に剥がしていく。あれ?俺の出番無いんじゃないか?

「なぁ、それだと俺のする仕事がほとんど無いんだが・・」

「いえいえ、こうやって魔力を使いながらの御掃除は結構疲れますので・・、後で沢山栄養をくださいね♥」

妻が魔力を使い綺麗にしていく。減った魔力を俺が満たしていく。もしかしてこれって、雨乞いの儀式をする前からエンドレスじゃないのか?

「・・・え〜、ツララさん・・。もしかしてもしかすると俺の出番は・・」

「はい!もちろん御掃除の御褒美が欲しくて!」

言いきっちゃったよ。

「では、これを後で御飲みくださいね」

社の縁にコトンと静かに置かれた小さな瓶が10本。どこから出したのか不思議だがこの際気にしない。

「・・・やっぱり全部精力剤なんだな」

俺を他所に妻は嬉しそうに社を綺麗にしていく作業に戻る。時々チラリとこちらを窺うのは、いつ俺が飲んでくれるか気になっているのだろう。頑張り屋な妻の為にも先に一本だけ飲んでおくか。

「んぐ・・んぐ・・んんっ・・・ぷはっ・・」

俺が一本飲んだ事を確認した妻がそっと近づいてくる。

「もぅ・・旦那様ったら・・。私はまだ疲れてはいませんよ?」

「そういう割には嬉しそうだけど?それに、俺もちょっとだけ・・」

「んんん〜〜♥嬉しいです!旦那様に逢えて本当にツララは幸せです!」

感激のあまり尾をくるくると回しながら抱きついてくるツララ。俺はツララを抱き寄せ臨戦状態である事を気付かせる為に腰を少しだけ押し付けた。

「ぁ、・・・旦那様のが大きく・・・」

「もう我慢出来ないんだ・・。ツララ・・いいか?」

「はい!」

「・・・・って・・・ツララ!魔力が漏れて小雨が降ってきてるよ!」

「あらら・・・、やっぱり龍脈の上だと抱き合うだけでも雨雲を呼んでしまうのですね」

「しょうがないな・・、俺も手伝うから早く終わらせよう。早く終わればそれだけ長く・・・その、まぁ、なんだ。楽しめるじゃないか・・」

「はい!頑張って綺麗にして子作りしましょうね!」

本来の主旨とはかなり離れてしまったが、雨乞いの儀式と同時に子作りも兼ねてだからいいか、と納得した。

「だんなさま〜、早く手伝ってくださいな〜」

「はいはい、すぐに終わらせような!」




---------------------------------------


今日も雨が振らない。家の前に耕してる田畑は後数日もすれば乾燥土になってしまうだろう。そうならないように毎日大量の水を与えているが、最近の猛暑続きに加え降水量が過去最悪という現実が日に日に田畑を蝕んでいく。所詮、人の手で与えた水では全ての土を潤わせる事なんて不可能だ。自然の水でなければ全ての田畑が潤う事なんて出来ない。そんな現実を目の前にしても俺は諦めず必死に水を撒く。

「雨さえ降ってくれれば・・。半日・・・いや、せめて1時間でもいいから降ってくれ・・」

俺は猛暑の中、憎らしいほどに晴れ渡った空を見上げ誰に聞こえるわけでもなく呟く。もうこれこれ二ヶ月も雨が降ってない。全ての田畑に水を撒いた俺は家の縁側に座り溜息を吐く。親から受け継いだ土地を守るというのがこれほど厳しいとは思ってなかった。そして肝心の親はというと。

「ワシらもそろそろ都心部で住んでみたくなっての〜・・。後の事はお前に全て譲るわい」

そう言って田舎を離れ都心部へと行ってしまった。普通は逆だろと言いたかった。お袋も一緒に行ってしまったので飯関係もかなり厳しい。今まで自炊経験が無かったのでほとんどがインスタントに頼る生活になっている。せめて男臭い料理の一つでも覚えておけば良かったと後悔したが後の祭りだ。縁側から田畑を眺め今年の収穫を想像してみたがあまり良い光景が浮かんでこない。俺は再度溜息を漏らすと縁側から居間へと移りゴロリと横たわる。

「はぁ・・あっちぃな〜・・・。・・・・なんで降らないんかねぇ・・」

自然相手に愚痴を零すがこれだけはどんな事が起ころうともひっくり返る事は無い。

「ああ〜、そうだ。昨日の晩に素麺湯掻いたんだった・・。ちょっとだけ食うか」

台所にふらふら歩く俺。連日続く猛暑のせいか動くのもダルイ。少しばかりひんやりと涼しい台所に入ると僅かだが気が楽になる。

「そうめん、そうめん〜・・」

昨日の晩に少し多めに湯掻いてしまった素麺を冷蔵庫から出し、軽く水に晒してから器に盛る。

「おっと、おツユはどこかな〜♪」

冷蔵庫の奥にあった缶入りつゆを取り出し小鉢に注ぐ。

「よし、いっただきます、と」

飾り具一つ無い素麺だったが暑い時のキンキンに冷えた素麺は具が無くても美味い。ズルズルと音を立てながら冷えた素麺を啜り暑さで呆けた頭をスッキリさせる。

「あ〜・・・うめぇ!やっぱ夏は素麺だな!」

食い終わった器を流しに置き再度居間で横たわる。横たわりながら縁側のほうを眺めると強すぎる陽射しに負けた植物達が力無く枝や幹を垂らしている。このまま雨が降らなければ来月の今頃には田畑の植物は全滅するかもしれない。自然には勝てないと理解していてもあまりにも酷過ぎる現実だ。連日放送される猛暑記録に最高気温の更新。考えるだけで鬱になりそうだ。こんな時、神様が居たら雨を降らせてくれるんだろうが所詮は御伽噺。地元に伝わる御伽噺を思い出してみたが虚しくなってくる。

「水神様なんて居るわけねえっての・・」

この付近一体は、昔は水神様を崇めていたが人口の減少や農業の引退を機にほとんどの人が関らなくなった。水神様を崇めていた社が、すぐ近くの小さな山の中にあるがここ数年は誰も近寄らない。きっと社は苔や枯れ葉、もしくは黴やゴミなどで汚くなっているかもしれない。そんな事を思いつつも俺も社には行こうとしない。社に行く暇があるのなら田畑をなんとかして活性化させないと生きていけないからだ。

「後でもう一度水を撒かないとな・・」

猛暑の中、元気なのは蝉だけ。忙しなく鳴く姿を見てるとイライラしてやつあたりしてしまう。

「そんなに元気なら畑仕事手伝ってくれよ!!」

大声で叫んだ瞬間、蝉が驚いて飛び去ってしまう。

「ぁ・・・、蝉に怒鳴ってもしょうがないよな・・」

少しばかりの寂しさと後悔を憶えもう一度だけ畑を眺める。先ほど水を撒いた時より土が乾燥しているのがわかる。だが、今すぐ水を撒いても効果は無い。地表には水分が無くても地中では残っている可能性があるので無闇に水を撒く事は出来ない。

「後1時間ほどしたらもう一度撒くか・・」

のんびり待つ事1時間。再度、畑に水を撒き縁側に腰を下ろし畑を眺める。

「今日はこれぐらいにしておくか・・。後は何するかな・・」

新聞を眺め適当に内容を読み放り投げる。ゴロリと仰向けになり先ほど投げ捨てた新聞を見るとチラシが一枚下敷きになってるのが見えた。俺はなんとなく下敷きにされたチラシが気になり新聞の下から抜いてみた。

「ん〜・・、パチンコ開店のチラシか。こんな田舎にパチンコ店を出すなんて物好きな・・・。行った所でじいさんばあさんばかりが打ってるんだろうしな」

・・・・・・・・

「どうせ今から暇だし・・・。俺も打ちに行くかな・・。暇だし・・・」

俺はチラシに書かれた地図を頼りにパチンコ店を探す。

「あ〜・・暑いなぁ。店探す前に帰りたくなってくる・・」

それでも暑さを我慢し、地図に書かれた通りに歩いていくとパチンコ店の看板が見えてくる。

「お?本当にあった。・・って、ここ・・道の駅じゃなかったっけ?あんまり売れないから売却したんかな?」

俺は暑さから早く逃れたくて何も疑わずに入ってしまう。店内は結構ひんやりしていて気持ちいい。夏の間は暇な時は此処でずっと過ごしていたいとも思ってしまう。

「はぁ〜・・、快適だな〜♪・・・って、誰も居ないな」

「本日のお忙しい中、パーラーDE☆A☆Iに御越し頂きありがとうございます」

突然背後から声を掛けられた俺は体を硬直させてしまう。いつの間に後ろに居たのだろうか。

「ぁ、いやいや・・どうせ暇だった・・・か・ら・・」

振り向いた先にはスラリとした長身の女性が立っていた。慈愛に満ちた優しそうな目、瑞々しく映える唇は触れればツルリと柔らかそうに見える。さらに腰まで伸ばした美しい銀髪。スタイルは言うに及ばずボンキュッボンだ。出てる所は出て引っ込む所は引っ込んでいる。まさに男が理想とする女性像そのものだ。

「外は暑かったでしょう?ハイ、おしぼりをどうぞ」

俺はあまりの美しさに呆けたままおしぼりを受け取り汗を拭う。全ての汗を拭き取った俺はおしぼりを返却箱に入れようとカウンターまで持っていこうとしたが目の前の女性が俺の手からおしぼりを取りカウンターへと持っていってしまった。

「あれだけ気が利く女性って・・いいなぁ」

少しだけ嬉しさを噛み締めながら俺は台選びに没頭する。そしてカウンターでは・・。

「はい♪今日のオヤツですよ〜♪」

カウンターの内側に置かれた箱の中に汗まみれのおしぼりを入れてるオーナーが居た。おしぼりを入れた箱からピンク色の湯気のような物が溢れてくる。

「今日は誰が選ばれるのかしらね♪・・って、あら・・?もう食べちゃったの?」

箱の中に入れたおしぼりは綺麗に純白になっていた。汗の匂いも無く、新品のように綺麗になっている。




俺は台選びに没頭しながらも今日の事を考えていた。

「今頃畑は暑くなってるのに、俺は涼しいとこでパチンコか・・」

そう思うと申し訳ないと思ってしまう。だけど、俺だって生き物だから少しだけでもいいから休息が欲しい。そんな身勝手な事を考えてしまうがやはり心の休憩がどうしても欲しかった。暑い炎天下の中、畑仕事に没頭しているとどうしても娯楽が欲しくなってしまう。心の中で悪いな、と謝罪しながら台を選んでいく。

「これ打ってみるか。なんか涼しそうだし」

選んだ台の名は『水の都と氷の宮殿』

どうやらステージを選べるタイプの台のようだ。水の都にはなんだか水っぽい女性がこちらに手を振っている。氷の宮殿では無表情の女性が腕を組みながらこちらを見つめている。両者共かなりの美人だが俺は迷わず水の都を選んだ。

「さて、打ってみるか」

俺は千円札を玉貸し機に入れジャラジャラと小気味いい音を立たせながら打ち始める。

「ん、天釘の調整がなかなかいいな。これなら結構回せそうかな」

予想通りにすぐにスタート口にカツンカツンと音を立てながら連続して入っていく。出だしはいい感じだ。噴水をバックにキャラクター達が回りだす。

「さっきの水っぽい女性に・・本当に水みたいな女性に・・真っ黒い水の女性・・後は・・下半身が・・蛇・・?それと植物みたいな女性か・・・、と人魚まで居るな」

よくわからない組み合わせだな、と思いながらも打ち続ける。打つ事数分、リーチが飛び込んでくる。

「あ、さっきの水っぽいのが来た・・。水瓶みたいなの持ってるな」

水っぽい女性は持っている水瓶をアタリ桝目に傾け水を流しこんでいる。だけど、止まったのは水みたいにプルプルした女性だった。ちょっと残念だ。

「あれは水壷だったんだな。・・・なんか今の水壷・・神話か何かで見たような気がするが・・?」

思い出せないまま打ち続ける。初めのリーチから結構時間が経ったがなかなか来ない。こんなもんかと諦めかけた頃にもう一度リーチが掛かる。

「・・・人魚?・・あぁ、タイトルが水の都だもんな、居てもおかしくないわ」

噴水の中を優雅に泳ぐ姿は童話に出てくる人魚姫のように美しい。だけど何かが違うような気がする。妙な違和感を持ったまま眺めているとはずれてしまった。心なしか人魚も悲しい顔をしている。

「んー、当たって欲しいとは思うんだが・・何か・・こう・・違うような気がするなー・・」

本当なら当たって欲しいとも思っていたが何かが違うと俺の心が拒否していた。贅沢な事を言ってるつもりは無いのだが俺は他の何かに当たって欲しいと願っている。画面の景色が噴水広場から花畑へと変化する。

「色々なパターンがあるんだな」

背景が花畑になってすぐにリーチが掛かる。リーチが掛かったのは下半身が大きな花に包まれている女性。すごく綺麗だ。大きな一輪の美しい花から現れる美女。肌の色も植物らしく緑色だ。

「可愛いよな・・。ぅん・・いいよな・・」

でもアタリ絵柄はスルーしてしまう。少し残念だと思ったが次の回転で画面が真っ暗になり花畑に雷雲が立ち込めて花を枯らしてしまう。

「ええーー・・・、何だよこれ・・。演出にしてもちょっと勘弁してほしかったなぁ・・」

雷雲の画面の中に揃いだす下半身が蛇のような女性。温和そうな顔付きとは逆に瞳は紅く輝いている。怖いけど美しく感じる、そして愛しいとも。

「まさかなぁ・・確かに好みだが・・怒らせるとなんか怖そうだよな・・」

下半身が蛇のような女性が瞳を閉じると大きな一匹の龍になり暗雲に飛び込んだ。

「なっ!・・・これって龍だったのか・・」

地元に伝わってるような伝説の龍になった女性が激しく唸る雷雲を取り払い、時には手の鈎爪で切り裂いていく。その演出を見ていた俺の心はもう彼女しか見えない。龍が全ての雷雲を切り裂くと一滴の雨が枯れていた花を再び咲かせる。

「すげぇ・・、って・・当たってるじゃないか!!」

花が咲いたと同時に龍だった女性が微笑みながら揃っていた。俺は感動しながら入賞口に次々と玉を注ぎ込んでいくが出玉が無い。

「あっ!ちょ・・パンクしちまうよ!」

とうとう最後の一玉も飲み込まれてしまった。

 カチャン♪

「・・・何これ・・?」

受け皿に飛び出てきた一枚の金貨。そっと摘んでみたが別に何の変哲も無い。

「・・・なんで玉じゃなくてコインなんだ?…あ、もしかしてこれで交換出来るのかも」

俺はコインを摘みながらカウンターへ持っていこうとしたが、あの美人な店員に声を掛けられた。

「本日のご来店、誠にありがとうございます。当店はこれをもちまして閉店とさせていただきます。ご了承のほどを・・」

「え、ちょっと待ってよ!このコインどうすればいいの!?」

「その金貨は貴方様を幸せに導く金貨、大事になさってくださいね」

店員が指を鳴らすと一瞬にして視界が変わる。そして俺は・・・道の駅の売店の中で突っ立っていた。

「あんれぇ〜・・?兄ちゃん何してっぺ〜〜?」

店番をしていた婆ちゃんに声を掛けられた。

「へ!?え?・・あ、いや!なんでもない!」


どうなっているんだろうか、俺は確かにパチンコ店に居たはず。それなのに気が付けば道の駅の売店で突っ立っていたし。あれは一体なんだったんだろう。夢だったんだろうか。いや、あれは夢じゃない。現に今、俺の左手は金貨らしき物を握っている。俺はそっと左手を開いてみた。

「やっぱり・・あれは夢じゃないんだ・・」

左手に握られていた金貨には、あの龍の女性が彫られている。なんて美しいんだろうか、俺は道の駅からの帰り道ずっと金貨を眺めていた。

「はぁ〜・・、なんだか夢を見てた感じだったな・・・。誰も信じてくれそうに無いが・・」

俺は居間で金貨を眺めながら先ほどの出来事を思い返していた。パチンコ店のチラシがありました、気になって店に行きました、打ったら金貨が出てきました、だけど気付いたら道の駅の中でした。なんて誰が信用してくれるんだか。これじゃあまるで小学生の作文みたいな出来事じゃないか。俺は肩をすくめ金貨をテーブルの上に置く。

「・・・?あれ?確か俺がパチンコに行ったのが昼に素麺を食って1時間ちょい後だったはず・・」

ここで奇妙な事に気付いた。俺がパチンコに行ったのは遅くても昼の2時頃のはずなのに今の時刻は3時ちょうどだ。あれだけ長い間パチンコを打ってたはずなのに1時間も経っていない。

「本当に・・どういう事なんだ?」

顎に手を当て悩んでみるがわかってるのは目の前に金貨があるという事実だけ。俺は金貨を摘み問いただしてみた。

「なぁ、・・あんたが本当に幸せに導いてくれるのか?」

金貨に訊ねた所で返事が返ってくる訳がない。

「…さてと、最後の水撒きにでも行ってくるか・・」

金貨をテーブルの上に置き、俺は今日最後の水撒きを始める。水撒きの最中にどこからか視線を感じたが俺は気にせず作業を終わらせた。

「ふぁ〜・・、ただいまっと・・・」

誰も居ないのに癖で言ってしまう。つい最近まで両親が居たからか、癖が抜けないままだった。

(おかえりなさい、旦那様♪)

「ふぇっ!?」

辺りを見回すが誰も居ない。居るとしたら野生の動物ぐらいなもんだ。

「幻聴かよ・・。暑さにちょいやられたかな・・。こういう時は水風呂に入ってすっきりしてから寝るのがいい」

俺は居間で素っ裸になり風呂へと入る。暑い日に温めの風呂に入るのが健康にいいんだが今日ばかりは水風呂に入る。幻聴が聞こえるほど暑さにやられたんだと思っていた俺は水風呂の冷たさと気持ち良さに体を震わせながら汗を流した。


「は〜、さっぱりした・・。たまには水風呂もいいな〜」

俺は下着一枚のまま居間でTVを見る。今日もいつものように猛暑記録の発表と最高温度地点の発表がメインのニュースばかりだ。もう少しましなニュースを流してくれよ。田舎なんだから見れる局が搾られるんだぞ。地デジになったからって恩恵が増える訳じゃないんだぞ。ただ少しだけチャンネルが増えた程度なんだぞ。とTV相手に愚痴ってみる。

「あ〜・・、見る番組も無いし寝ちまうか・・」

うとうとしながら瞳を閉じると、俺の意識はゆっくりと夢の世界へと落ちていく。









「旦那様・・起きて・・」

「ん〜・・?まだ深夜だろぅ・・。朝早いんだから・・・寝かせて・・」

「旦那様・・、起きてくださいまし・・」

「・・・だん・・な?・・・・ふぉっぉおおおおおおおおお!!」

「ひゃん!いきなり驚かさないでください・・旦那様・・」

「だだだだ・・・誰だ!・・・えっ?・・・・え?え?・・・」

俺は物盗りかと思って急ぎ覚醒したが目の前に居るのは女性。それもパチンコ台で見た、あの龍の女性が三つ指ついて(?)頭を下げている。

「不束者ですが、旦那様の期待に応えるよう誠心誠意励みます。これから一生私の愛は旦那様だけの物と誓います」

「ちょ、ちょっと待ってくれないか・・、今ちょっと頭ん中が混乱して・・」

「もしかして・・旦那様は私の事が・・・」

今目の前で起きてる事は現実だ。夢でも妄想でも無い。俺は大きく息を吸ってから吐き出し冷静に女性を見る。あのパチンコ台で見た通り、温和そうな顔立ちに大きなおっぱい(ここ重要)、それに腰のくびれなんて抱き寄せたくなるような細さだ。だが俺は人とは違う下半身に注目している。この下半身があの伝説の龍と同じかと思うだけで興奮してしまう。

「・・コホン。ちょっと・・だけ、聞いていいかな・・」

「はい!旦那様の御言葉でしたらいくらでも!」

「あ〜・・え〜・・・・。その、なんだ・・・・」

「なんでしょうか・・?もしかして私に至らぬ点が・・」

「い、いや・・違うんだが・・。あのさ、・・その下半身ってさ・・」

「!!・・・旦那様は・・人とは違う体は・・御嫌いだったのですか・・」

「いやいやそうじゃないってば!・・・あのさ・・、その下半身ってさ・・、もしかして・・龍・・なのか?」

「はい、もちろんです!」

その返事を聞いた途端、俺は女性の下半身に飛びつく。

「おおおおおおおお・・・・・、これが本物の・・龍の尾なんだ・・」

「ひゃぁぁぁぁーーー!旦那様、いきなりそんなに撫でないでください〜〜・・・」

「あ、ごめん!」

俺は伝説の龍を目の前にして少し興奮してしまったみたいだ。すぐに体を離し女性の前に座る。

「えと、それで旦那様って・・俺の事?」

「もちろんです。・・・もしかして旦那様は・・御嫌でしたか・・?」

「そうじゃない!そうじゃないけど・・・いまいち現実味が無くて・・その・・。これが夢なんじゃないだろうかと・・」

「夢ではありませんわ。それと、・・・私の名はツララと申します。」

ツララがすっと近づき、自らの唇を俺の唇に重ねる。美しいピンク色の柔らかい唇が俺の唇に重なっている。重ねるだけのキスを済ますとツララは一歩下がる。

「これでも、夢と仰いますか・・・?」

俺は自分の唇に指を当て先ほどの感触を反芻させる。唇に残るツララの柔らかい感触。まぎれもなくこれは現実であると俺に実感させてくれる。

「旦那様、もし宜しければ・・こんな私ですが旦那様との契りを・・」

そういうとツララはブラのような胸当てを外し、たわわに実ったふくよかな乳房を曝け出す。乳房の頂点にはピンク色をした小さな豆が自己主張するかのようにピンと立っている。俺は自己主張の激しいピンク色した2つの小さな豆を親指と人差し指で摘みコリコリと揉み解していく。

「んっ、旦那様・・。もう少し激しくても・・大丈夫ですから」

「そ、そうか・・・。それじゃ、こういうのは」

俺は両手を使って乳首を中心に全体を揉み解す。掌で乳首を転がすように揉んでいると時折、ツララの甘い嬌声が聞こえてくる。

「ぁん、・・それ・・いいです。もっと・・乳首を弄ってください・・」

俺は期待に応えるように乳首を重点に置いて乳房全体を丁寧に揉む。時々、乳首を吸ってあげると体を痙攣させながらも俺の体に少しずつ尻尾を巻き付けてくる。

「ん、ちゅ・・。なぁ・・さっきから尻尾が少しずつ巻き付いているんだけど?」

「はぁぁ・・、はぃ〜・・。もう我慢出来なくて・・、早く処女膜を破ってもらいたくて・・」

「処女膜って・・・ちょっとぉー!尻尾が両足に巻き付いてきたんだけど!」

少しずつ俺の体を拘束していく尻尾。だが本人はお構いなしに俺の体に巻き付けていく。

「ツララさん、もしかして俺を拘束したままヤっちゃうのですか・・?」

「ああっ!・・申し訳ありません旦那様!」

スルリと解ける尻尾だったがツララは悲しそうに俯いている。

「どうしたんだ・・?なんでそんな泣きそうな顔を・・」

「申し訳ありません・・旦那様。旦那様の事を考えず私だけが欲情のままに・・」

「・・・はぁ。そんな事で落ち込んでいたのか?」

「そ、そんな事だなんて!」

俺はツララの前で下着を脱ぎ自らの興奮をツララに見せ付ける。パンツ一枚しか穿いてなかったけどな。

「あ・・、旦那様のが・・すごく大きく・・」

「俺だってな、今すぐにでもヤりたかったけどさ・・。やっぱ雰囲気は必要・・かなぁ、って思ってさ・・」

俺の言葉に瞳を輝かせ嬉しそうに微笑むツララ。俺はこういうキャラじゃないんだけどな、と思いながらもツララの細い腰に腕を回し抱き寄せる。

「ツララ・・。俺なんかで良かったら・・一生一緒に・・生きてくれないか」

「はい!私は旦那様だけを一生涯愛し続けます♪」

「それで・・ツララ、悪いんだが・・俺もう我慢出来ないんだ・・」

俺が我慢出来ずにそう答えるとツララは人と龍の境目に着けてた布のような物をそっと静かに剥がした。

「旦那様・・、ここが・・私の・・オ・・オマン・・コ・・です・・」

顔を真っ赤にしながらも正直に教えてくれるツララが可愛くて愛しい。俺は出来るだけ優しく入れようとチンコを女陰に軽く宛がったがツララのオマンコは既に大量の愛液で濡れていた。

「ツララって、・・・結構エロいんだね」

「いゃぁ〜・・、言わないでください〜・・」

「これならすんなり入ってしまう・・・かな?」

軽く腰を突き出すとゆっくりではあるがツララのオマンコに亀頭が沈んでいくのがわかる。亀頭がすっぽりと膣に包まれた瞬間、なんとも言えない快感が俺の体全てを突き抜けていく。

「うっ・・、まだ全部入れてないのに・・」

「ふぁぁ〜・・♪このまま・・・一気に処女膜を破いてください・・・」

俺はツララの言う通りに腰を一気に突き出し処女膜を破り子宮口までチンコを沈めた。だが、俺はあまりの快感に僅か一突きで子宮に大量の精液を吐き出してしまう。

「ふんんんん〜〜♥濃厚な精液が子宮に入ってます〜♥♥」

ドクドクと長い射精感を味わいながらツララの胸に顔を埋める俺だったが、どこからともなく涼しい風が入ってくるのが感じ取れた。

「・・・?なんでこんなに涼しいんだ?」

俺はツララに抱きつきながらも、そっと居間の襖を開けてみた。

「!!!あ・・雨が・・、雨が降ってる!何故急に雨が・・」

「ん〜・・、旦那様から頂きました精で雨を降らせてみました♪」

繋がったままのツララが嬉しそうに説明してくれる。そうだった、龍であるツララの本来の姿は水神様だ。これぐらいなら簡単に奇跡を起こせるのだろう。

「ツララ・・、ありがとう・・」

俺は繋がったままのツララに感謝の言葉を送るが、ツララは少しばかり不満顔だった。

「旦那様・・。申し訳ありませんが・・あの精液の量ですと・・もうすぐ雨は止んでしまいます、・・ですので・・もう少し雨が必要でしたら・・」

「わかってる!必要に応じてツララを愛したらいいんだな!」

「・・・必要じゃなくても・・愛してくださいね。旦那様♥」

「もちろんだ、ツララは・・ツララは一生俺だけの奇跡の龍で最愛の女なんだからな!」





俺は雨を求める事よりもツララを愛する事だけに集中し、ツララも俺だけを愛する事に集中してくれている。俺達は何度も体を絡ませ御互いの吐息が御互いの耳をくすぐるほどに抱き合い愛を確かめ合う。外ではかなりの雨が降っているが俺はその事を気にせずツララを抱き締める。ツララも俺に抱き寄せられる度に俺ごと尻尾でくるんで一生離さないと言わんばかりに愛を示してくれる。そして俺はツララを抱きしめたまま眠りの世界へと誘われる。そんな俺を見たツララも俺を抱きしめたまま瞳を閉じていく。




朝、目が覚めたら、・・・きっとパチンコ台で見たような景色が待っているんだろうな。





13/08/16 12:48更新 / ぷいぷい
戻る 次へ

■作者メッセージ
ヒバゴン様からのリクエスト『龍』を題材に書いてみました。

最近の猛暑続き・・本当に辛いですね。

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33