連載小説
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2.1 Feel me
「森に人間が来たわ」

「厄介なのも連れてます」

「護衛かしら?」

耳の尖った彼女達が話をする。
一人は弓に弦を張り、一人は矢を揃えている。
小さな焚火を囲むように4人のエルフが話している。

「どう……する……?」

4人の中で一番背の小さいエルフが口を開いた。
その言葉はたどたどしく、時折途切れている。

「しばらくは様子見よ。荒らすようなら許さないわ」

***************

「のう、お前様」

背に乗ったままのマリーが尋ねる。
リラックスしているのかカインの肩に顎を乗せている。

「なんで他の魔物娘がいないんじゃ?」

しばらくといっても1時間以上、森を歩いているのに他の魔物娘と出会っていない。
出会ったものとしたら野鳥、虫くらいだった。

「こんなものじゃないの?」

静かな森をただ進み、最奥を目指す。
明緑魔界に属するこの森は、見てくれは人間の世界となんら変わらずとも、中身は魔界である。
空気中に漂う魔力は人間界よりも濃く、人間の女性であれば魔物化もする。

「ん。お客様じゃぞ」

マリーが空を見上げると翼を生やした少女がいた。
スリムな少女の体躯に、大きく広げられた二枚の翼。
ハーピーである。

「あらら?珍しいのがいるね!」

特に大きな音もたてず地に落ち立った彼女は、快活に言った。
後ろ手に回し、首をかしげながらカインを眺めている。

「おぉ!誰かと思えばマリエの所の小娘じゃな!」

「ぶー!小娘に小娘とか言われたくないしー!」

「な、なんじゃと……」

がっくりとカインの背中でうなだれるマリー。
小娘と言われたことにショックを受けたのか小さな手でカインの背中を弄っている。

「で!で!貴方のお名前は?」

興味津々と言った様子でカインを見つめている。
その視線は頭の先から足の先まで見まわし、何かを値踏みするように見まわしている。

「カーマインだよ。カインでもいいよ」

勢いに負け、棒読みになってしまっている。
渇いた笑いを浮かべ、内心苦手なタイプなのではないか、と考え始めながら、自己紹介をした。
目の前の少女を見て見ればひたすらにカインを見ている。
下から眺め、横から眺め、外套を少しめくって中を覗いてみたり。

「あ、私はルリエだよー!よろしくね!」

勢い良く広げられた翼に驚いて、カインの背中から何かが落ちる音がした。

「今はお祭りだからね!」

宙を舞う羽は淡いピンク色をしており、ヒラ、ヒラ、と風に漂いながら地面に着地する。
木々が鳴けば呼応するように羽も舞って、森の奥へと誘われてゆく。


*************

「おぉ!ここが目的地か!」

ルリエによって運んでもらった二人は瞬く間に木々を飛び越え、ものの数分で目的地へとたどり着けた。
地面に降り立ってみれば辺り一面魔物娘だらけとなっている。
そんな中にも人間の男性がちらほらと見受けられ、多くは魔物娘と一緒に楽しんでいる。

「た、たす━━」

「あらぁ?3Pしたいのかしら?野暮なのねぇ」

人間の男が叫んだかと思うと黒い紐の様な物が飛び出し、男の足を捕えた。
引っ張られた勢いで無残に倒れた男はずるずると引っ張られ、藪に飲み込まれるように消えていく。

「さぁさぁ!観念なさいな!」

「━━っ!!━━」

藪の奥から声にならない声が聞こえたかと思うと、すぐに静かになった。
その後は特に大きい声が出るわけではなく、藪がリズミカルに動いたかと思うと急に動いたりしてせわしなく動いている。

「おぉう……」

「気をつけるのじゃぞ。気を抜いたらお前様も慰み者じゃ」

ふふん、と忠告をしたはいいものの、背中におぶられたままのマリー。
カインの隣にはルリエがついて歩いている。

広場は本当に広く、ウッドハウスのような建物があちらこちらに建ちなみ、中央の道の路肩には屋台が軒並み並んで、様々な種族の魔物娘達が商売をしている。
森の最奥とは思えないほど人に溢れているこの広場は、明らかに異質だった。

「なぁ、マリー。ここは何なんだい?」

「お前様は知らんのか?ここは定例祭の会場じゃ」

「定例際?」

定例際と言われてもう一度辺りを見渡してみる。
確かに一目見て祭りと分かるが、出店で売られている物が怪しすぎている。

二つの果物が合わさったような果物。
バナナのようだが何かが違う果物。
何故あるのか分からない牛乳。
無造作に置かれた水。
キノコ。

「うちの支部も屋台を出しているんじゃがのー。ちょっと見て回るかの」

飛び降りるようにしてカインの背から降りたマリーは、するすると人ごみを潜り抜けながらどこかへと向かっていった。
ふと隣を向くと、さっきまでいたルリエはいなくなり、結果として一人になってしまったカイン。




「あら、黒いの。話したいことがあるんだが?」




肌の露出が多く、胸と腰に布を巻き、大きな剣を携えた女性が声を掛けてきた。



14/08/27 00:21更新 / つくね
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