2.2 Boom
目の前の女性は堂々と立っていた。
腰につけた剣の柄に手を置き、まっすぐに目の前のカーマインを見て。
「三度目はない、聞きたいことがある」
言葉を返す暇もなく、まくしたてる。
カーマインは無言の圧力に驚き、一言も喋っていない。
「お前、嫁はいるのか?」
「え……?」
普通に想像する内容よりも斜め上の質問だった。
その内容にカーマインは完全に止まり、頭の中で何度も繰り返している。
(嫁?いないけどこんなときって普通は”誰だお前は”的な内容じゃないの?!)
「い、いや、嫁は居ないというかそんなの━━」
「ほう、嫁はいない、か。良いことを聞いた」
金属の擦れる音を響かせながら、腰の剣をゆっくりと抜いている。
あまりにも当たり前に、自然に抜くものでカーマインはただ見ている。
抜き放った剣を何度か振りながら、目の前の女剣士はニヤリと口角を上げる。
「では始めよう。お前が負けたら私に婿入りしてもらう。私に勝てたら嫁入りしてやる」
フフ、と一人で笑っている。
(それって結果は変わんないだろ……)
唐突に突きつけられた選択肢に憤りを隠せない。
暴挙というか理不尽の極みにあるような言葉だ、とカーマインは感じた。
「そら、行くぞ!」
カーマインめがけて剣を振るう。
腹部を狙った剣戟は咄嗟に体を曲げられて回避される。
「む、死にはしないのだ。さっさと楽になれ」
今度はまっすぐに振り下ろされる。
小さな叫びをあげながらカーマインは体を捻じる。
地面に刺さるか否か、のギリギリですぐさま切り返し。
風を切る感触を顔で感じながら後方に飛んで難なく得ている。
「あ、当たったらやばい!というか何で!?」
帽子を押さえながら心からの言葉を叫ぶ。
相手には届いていないのか、距離を詰めながらの連撃。
ヒッ、ヒエッ、と声を漏らしながらぎりぎりでながらも嫁入りから逃げるカーマイン。
「むう、埒が明かんな」
そういいながら片手での握りから両手への握りへとシフト。
ググッ、と腰を低くし、膂力を貯めるような構え。
━━これはいけない、と感じるとカーマインも初めて構えた。
「ほう、初めて構えをとったな」
両社の距離は僅か数メートル。
一足飛びの間合い。
「素手でどうにかなるのか?アマゾネスの力、甘く見るなよ?」
さらに力を込めながら女が言う。
先ほどよりも力がこもり、爆発せんばかりに張りつめている。
「いや、何事もないのがいいんだけどなーって?」
カーマインがおどけた様に言う。
「これでもふざける、か!」
━━両者が弾けた。
***************************
*********************
****************
************
「お前様、どうしたのじゃ?」
バフォメットのマリーが訪ねてきた。
尋ねられたカーマインはげっそりとしている。
「いや、ね?魔物っていろんなのがいるんだなって」
「ふむ、当たり前のようなことでなかなか深いの!」
「……」
良く分からずもとりあえず理解した、と言わんばかりにマリーが胸を張っている。
これでサバトの長なのか、と感じざるを得ない態度にカーマインは飽きれつつも笑っていた。
「なっ!何が可笑しいのじゃ、お前様!」
ボフ、音を立てながら叩かれる。
本人は強く殴ったのであろうが、手のもこもことしているせいで、威力はなくなってしまっている。
「早く先に行こう。もう疲れたよ、マリー……」
「な、なんじゃ、お前様……?何故そんなに疲れておる」
カーマインの半分くらいしかないマリーの頭をわしわしと乱暴に撫でながら、前へと進む。
森を抜ければ街道に。
親魔物国家領域、ひねもす街道。
ひねもすに大した意味合いはないらしく、この道を作った魔物が覚えたての言葉を使いたかったがために命名された街道。
人通りは多く、行商、冒険者、夫婦、野外プレイなど多種多様に渡って利用されている街道で、比較的綺麗に整備されており、昼間は活気があり夜間は魔物領よろしく、淫靡に発光する。
「……なぁ、お前様」
「どうした?」
ぽつり、とマリーが訪ねる。
「……おんぶ」
********************
*************
********
*****
開いた森の中で、先ほどの女剣士のアマゾネスが横たわっている。
剣は木の幹に突き刺さり、地面はえぐれている。
「━━━」
荒く息をしており、時折鼻をすする声が聞こえている。
よほど悔しいのか、誇りを傷つけられたのか、顔色は伺えない。
「くそっ……!」
小さく地面を握りしめている。
「ひぅっ!」
体が痛むのか、体を丸めて痛みに耐えている。
「私があんなものにっ……!」
片手で地面を握りしめ、片手でお尻を押さえている。
「くそーーーっ!!」
アマゾネスの咆哮。
怨嗟とも怨恨さえも感じるその声に、鳥たちがざわついている。
「ひっ」
小さく呻くアマゾネスの尻は、赤く腫れている。
綺麗な紅葉模様を残して。
腰につけた剣の柄に手を置き、まっすぐに目の前のカーマインを見て。
「三度目はない、聞きたいことがある」
言葉を返す暇もなく、まくしたてる。
カーマインは無言の圧力に驚き、一言も喋っていない。
「お前、嫁はいるのか?」
「え……?」
普通に想像する内容よりも斜め上の質問だった。
その内容にカーマインは完全に止まり、頭の中で何度も繰り返している。
(嫁?いないけどこんなときって普通は”誰だお前は”的な内容じゃないの?!)
「い、いや、嫁は居ないというかそんなの━━」
「ほう、嫁はいない、か。良いことを聞いた」
金属の擦れる音を響かせながら、腰の剣をゆっくりと抜いている。
あまりにも当たり前に、自然に抜くものでカーマインはただ見ている。
抜き放った剣を何度か振りながら、目の前の女剣士はニヤリと口角を上げる。
「では始めよう。お前が負けたら私に婿入りしてもらう。私に勝てたら嫁入りしてやる」
フフ、と一人で笑っている。
(それって結果は変わんないだろ……)
唐突に突きつけられた選択肢に憤りを隠せない。
暴挙というか理不尽の極みにあるような言葉だ、とカーマインは感じた。
「そら、行くぞ!」
カーマインめがけて剣を振るう。
腹部を狙った剣戟は咄嗟に体を曲げられて回避される。
「む、死にはしないのだ。さっさと楽になれ」
今度はまっすぐに振り下ろされる。
小さな叫びをあげながらカーマインは体を捻じる。
地面に刺さるか否か、のギリギリですぐさま切り返し。
風を切る感触を顔で感じながら後方に飛んで難なく得ている。
「あ、当たったらやばい!というか何で!?」
帽子を押さえながら心からの言葉を叫ぶ。
相手には届いていないのか、距離を詰めながらの連撃。
ヒッ、ヒエッ、と声を漏らしながらぎりぎりでながらも嫁入りから逃げるカーマイン。
「むう、埒が明かんな」
そういいながら片手での握りから両手への握りへとシフト。
ググッ、と腰を低くし、膂力を貯めるような構え。
━━これはいけない、と感じるとカーマインも初めて構えた。
「ほう、初めて構えをとったな」
両社の距離は僅か数メートル。
一足飛びの間合い。
「素手でどうにかなるのか?アマゾネスの力、甘く見るなよ?」
さらに力を込めながら女が言う。
先ほどよりも力がこもり、爆発せんばかりに張りつめている。
「いや、何事もないのがいいんだけどなーって?」
カーマインがおどけた様に言う。
「これでもふざける、か!」
━━両者が弾けた。
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「お前様、どうしたのじゃ?」
バフォメットのマリーが訪ねてきた。
尋ねられたカーマインはげっそりとしている。
「いや、ね?魔物っていろんなのがいるんだなって」
「ふむ、当たり前のようなことでなかなか深いの!」
「……」
良く分からずもとりあえず理解した、と言わんばかりにマリーが胸を張っている。
これでサバトの長なのか、と感じざるを得ない態度にカーマインは飽きれつつも笑っていた。
「なっ!何が可笑しいのじゃ、お前様!」
ボフ、音を立てながら叩かれる。
本人は強く殴ったのであろうが、手のもこもことしているせいで、威力はなくなってしまっている。
「早く先に行こう。もう疲れたよ、マリー……」
「な、なんじゃ、お前様……?何故そんなに疲れておる」
カーマインの半分くらいしかないマリーの頭をわしわしと乱暴に撫でながら、前へと進む。
森を抜ければ街道に。
親魔物国家領域、ひねもす街道。
ひねもすに大した意味合いはないらしく、この道を作った魔物が覚えたての言葉を使いたかったがために命名された街道。
人通りは多く、行商、冒険者、夫婦、野外プレイなど多種多様に渡って利用されている街道で、比較的綺麗に整備されており、昼間は活気があり夜間は魔物領よろしく、淫靡に発光する。
「……なぁ、お前様」
「どうした?」
ぽつり、とマリーが訪ねる。
「……おんぶ」
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開いた森の中で、先ほどの女剣士のアマゾネスが横たわっている。
剣は木の幹に突き刺さり、地面はえぐれている。
「━━━」
荒く息をしており、時折鼻をすする声が聞こえている。
よほど悔しいのか、誇りを傷つけられたのか、顔色は伺えない。
「くそっ……!」
小さく地面を握りしめている。
「ひぅっ!」
体が痛むのか、体を丸めて痛みに耐えている。
「私があんなものにっ……!」
片手で地面を握りしめ、片手でお尻を押さえている。
「くそーーーっ!!」
アマゾネスの咆哮。
怨嗟とも怨恨さえも感じるその声に、鳥たちがざわついている。
「ひっ」
小さく呻くアマゾネスの尻は、赤く腫れている。
綺麗な紅葉模様を残して。
16/09/26 22:54更新 / つくね
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