連載小説
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エピローグ
 ルーカストの街で、エレリーナさんとクレミリアの2人と分かれた私は、一路私の屋敷へ、ほぼ半年ぶりに帰路に着いたのだ。

 エスタラニィは、私の呪いが解けたことを両親に報告するために、私がルーカストの街に寄る前に、先に帰ってもらっていた。

 ルーカストの街を出てすこし、私は森の中の一本道を歩いていた。
 屋敷へ向かいながら、半年以上前のことを振り返ってみた。出発したときは、母の用意してくれた場所に馬車に揺られて行った道を、今は徒歩で向かっている。こうして歩いてみると、けっこう遠いものである。
 だが、今の私は家を出発したときにくらべて、はるかに余裕があった。出発したときは、先祖が見つけられなかった物をはたして自分が見つけられるのか、不安とあきらめの気持ちでいっぱいだったけど。あの時は、呪いに殺されるか、冒険の途中で野たれ死ぬ。そののどちからになる確率が、はるかに高いと私は思っていた。私の力では、呪いを解くことなんて、はるかにかなわない夢なんだと、心のどこかで思っていた。
だけど、今は『私はやり遂げたんだ』という気持ちでいっぱいだ。

 吹き抜ける風にまぎれて、磯の香りが漂って来る。そろそろ森の中の道を抜けるのだろう。

 私には気になっていた事が、一つだけあった。
あの邪剣の最後の言葉。それが本当なら、この世界にはあの剣よりも先に来た邪剣の同胞、すなわち他の邪剣があるはず。だが、いまだそういった話は聞かない。あの邪剣が気付かないうちに、破壊されたのか、いまだ目立った活動は行っていないのか。
 だが、今はその同胞を追うのではない。呪いを解くために旅だった旅を、ひとまずは終えるのだ。考えるのは、それかでもいいはずだ。

 森の中の道が切れた。片側はいまだに木々が茂っているが、反対側が海まで海岸沿いの道に出た。ここまで来れば、ルーカストの街から屋敷までの道のりの半分まで来た事になる、

 この旅では、いろいろな人(っていうか魔物)に出会い助けられた。私一人では、邪剣を倒すどころか、呪いを解くことすら不可能だっただろう。ま、実際的に次の手がかりの場所や位置の目安は、ほぼ他人任せになってしまった訳だが・・・。

 遠くに、懐かしい建造物が見えてきた。最初は歩いた私だったが、屋敷が近づくにつれて、足がだんだんと早くなっていく。気がつけば、私は屋敷に向かって駆け出していた。

 はたして、屋敷の入り口では父、母、妹の家族3人が、そろって私の帰りを待っていてくれた。

「よく無事に戻った、我が娘よ。」
「おかえり、ルシィラ。」
「おかえり、お姉ちゃん。」

 そして私は言う、この屋敷を出発したときに、笑顔で言うと決めていた台詞を・・・。

「ただいま。」
11/07/28 08:44更新 / KのHF
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■作者メッセージ
 短いですが、ルシィラの物語はこれにて終了。

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