連載小説
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第七話 『娘に恩を感じているなら』
「俺は娘がここに住んでから、何度か遊びにはきたがな。いつも男っ気なんてもんはなかった」

 鍾馗髭親父はカレーを頬張りながら、どんぐり眼で俺を見ていた。

「あいつぁ清楚で一途でな。まあ逆に考えれば何で男が寄ってこねぇのかって話になるがよ。……美味ぇなコレ、何て料理だ」
「カレーライスです。何でって、こんな人気のねぇ所に住んでるからだと思いますがね」

 髭にカレーがついているのを見て思わず笑いそうになったが、ぐっと堪えて話を返す。ナナカは工房に引っ込んでおり、俺はこの親父殿と二人だけだ。俺が居候だと言うと、親父殿が二人でじっくり話をしたいなどと言い出したのだ。そのため鍋にたっぷり作ったカレーを振る舞うことになった。

「それもあるがな。しかしそのあいつが男を連れ込むたぁ、思ってもみなかった」
「いえ、俺が転がり込んだんですよ。そうしなきゃ俺は低体温症で死んでいたでしょう。あいつは命の恩人でして」
「おう、そうかそうか! さすが俺の娘だ。ワハハハ!」

 親父殿が笑う度にボロ屋が震動する。そのうち崩れるのではないかと心配になってきた。この小さい体のどこからこんなデカい声が出るのやら。体格の割に頭が大きいし、魔物と同じく耳が尖っているし、どうも人間ではないらしい。魔物は女しかいないというから、もしかしたら魔物と結婚すると体がこうなるのだろうか。だとしたら困る。背が低くなっては飛行機のフットバーに足が届かない。
 町にこんな男はいなかったし、それはないか。ともあれあのナナカの父親だけに、ただ者ではないのは間違いない。

「お前、どこから来た?」
「日本です」
「ニホン? 聞いたこともねぇな、遠い国か?」
「遠いですね。二度と帰れねぇくらいに」

 すると親父殿はドングリ眼を細めた。髭にはカレーがついたままだ。

「……もしかして、異界の人間か」
「よくご存知で」
「レミィナって姫様とはもう会ったかい?」

 意外な名前が飛び出した。この野生の猛獣のような親父が王侯貴族と関わりがあるようには思えない。だが実際あの姫様のことを知っているようだ。

「ええ、お姫様ともフィッケル中尉ともお会いしました」
「そうかい。姫様からそのヴェルナー・フィッケル卿の話は聞いてたが……」

 そう言って、親父殿は残りのカレーを一気にかき込んだ。そして皿をこちらへずいっと突き出し、「もう一杯」との注文。言われるままにカレーを盛り、ついでに自分の分ももう一杯盛る。

「他に住む所がないなら、ここにいな」
「えっ……」

 これはまた意外な言葉だった。娘の家にいきなり何処の馬の骨かも分からん男が居候を始めたのだ。出て行けというのが普通だろうに。だが親父殿は俺に笑顔を向けた。

「それがナナカにとってもいいだろうからな。鍛冶屋としても、『ヒト』としても。あいつは周りが見えないからよ」

 匙でカレーをかき込む親父殿の手は火傷だらけで、剥けた皮が硬く、分厚くなっている。この人もナナカやその母親同様に鍛冶屋のようだ。ナナカはそんな両親の背中を見て育ったのだろう。そして追いかけているのだろうが、まだ彼女は自分が納得できる打ち物さえ作れていない。親父殿としてはそんな娘に何か思う所があるらしい。

「娘に恩を感じているなら、あいつのためになることをしてやってくんな」
「……はい。必ず」

 頭を下げ、俺は親父殿に約束した。何をどうすればいいのかはサッパリだが、それでも約束した。
 何かのために……空しい言葉だと思っていた。祖国のために飛び、戦い、死んで行った連中が報われたようには思えないからだ。だが惚れた女のために生きるというのなら、そう悪くはないだろう。お国から遠く離れてしまった、今となっては。












 ……そして、一週間後。

「ジュンさん、カレーくれ!」
「俺はシャハンメンで」

 昼飯時に港へ屋台を曵いて行くと、すぐさま客が来る。大抵が港の労働者や水夫たちで、人間もいれば魔物もいる。カレーの匂いというのはあらゆる知的生物の脳を誘惑するのだ。どいつもこいつもガツガツ食っていく。
 屋台には『せんざい亭』の看板をかけ、ナナカにこの世界の文字で読みを書いてもらった。店名は以前乗っていた母艦が由来だ。品書きはカレーの他にシャハンメンも追加した。海軍式の中華そばで、艦内でこぼれにくいよう汁にとろみをつけてあるのが特徴である。「とろみのある汁」という単語を聞いた桃色の人魚がいきなり発情したのには参ったが、これもなかなかの売れ行きだ。

 しかし自分で実際にやってみると、主計科の苦労がよく分かるというもの。下ごしらえは済ませてあるが、次々と来る客に迅速に飯を提供しなくてはならない。暇を見て食器も洗わなくてはならないし、一人でやるのはなかなか大変だ。

 しかも時々、厄介な客が来る。

「店主! カレーを一杯だ!」
「いんや、その前にあたしのシャハンメンだ!」

 列に並んでいる間もずっと口論していた女二人組。片方は港の警備兵で、鮮やかな緑色の髪をした長身の女だ。エルフとかいう魔物だそうで、見た目は耳が尖っていること以外人間と変わらず、弓術に長じているらしい。
 もう片方はドワーフなる魔物で、こちらは背が非常に低く、子供のような体格だ。魔物のはずだが体型はナナカの親父殿とよく似ている。造船所で働いているとのことで、見かけによらず怪力の持ち主である。

「ふん! 長い麺を食ったところで背は伸びんぞ、ペドワーフが」
「ご忠告どうも。そのお奇麗な顔をカレーまみれにして笑いを取ったり、愉快なエロフだねぇ、あんた!」

 この二人は非常に仲が悪い。エルフとドワーフというのは遥か昔から仲が悪いのだと怪僧ヅギ・アスターから教わったが、だったら同じ時間に来るなと言いたい。いや、昼飯の時間はある程度限られているだろうが、何も仲の悪い者同士で並んで着席しなくたってよかろうに。
 しかも何がタチ悪いかって、こいつらいつもエルフの方がカレー、ドワーフがシャハンメンを注文する。そして自分の注文が先に来ないと怒るのだ。

「どうした店主、早くカレーを盛れ!」
「いーや! あたしのシャハンメンが先だ!」

 全く、迷惑極まりない客である。他の客は俺を気の毒そうに見ているが、さすがにこんな連中に関わりたくないらしい。口出しする奴はいない。
 だが頭の回転がそこそこ良いこの俺だ。すでに対処法は編み出してある。

「ほれ、間を取って二人とも肉じゃが!」
「何ぃ!? 私が食べたいのはカレーだぞ!」
「肉とジャガイモなんて食いに来たんじゃないよ! あたしは麺をズズっと吸い込むのが好きなんだ!」
「うるせぇ! 東郷元帥ゆかりの料理に文句垂れるんじゃねぇ!」

 ……と、このように賑やかな料理屋である。余談だがカレーが日本で海軍食になったのは、艦内では積める食材が限られているため、肉じゃがと共通の食材が多くて便利だったからだ。とりあえず自分の食費くらいは稼げるようになったし、しばらくすれば領主から借りた金も返せるだろう。
 そう思いながら仕事に励んでいると、知っている顔が尋ねてきた。

「Guten Tag、飛曹長」
「カレーライス二人前お願いね」

 フィッケル中尉と姫様が着席した。王族でありながらちゃんと順番を守っていた礼儀正しい二人だ。こうやって仲の良い者同士で来れば何も問題ないというのに。

「いらっしゃいませ、お二人さん。ご贔屓にありがとうございます」
「後を引く味なのよねぇ、カレーライスって料理」

 いつもながらこの姫様は楽しそうだ。店を出してからまだ一週間だが、お二人が来るのはこれで四度目になる。どうもドロドロした茶色い料理というのは西洋人には不気味に見えるようで、中尉の方は最初二の足を踏んでいた。だが一口食べるとその評価も一変した。

「見た目はグロテスクだが、東の果てにこんなに美味いものがあったとは。日本海軍由来の料理と聞いて少し不安だったのだが」
「どういう意味ですか、そりゃ?」
「いや、シバ飛曹長。日本の食文化を侮辱するのではない。ただ……」

 中尉は一旦言葉を切った。俺がカレーを盛りつけ、目の前に置いたからだ。その匂いを胸一杯に吸い込む。

「……日本海軍はイギリス海軍を手本にしたと聞いていたのでね」
「……イギリスの食い物ってそんなに不味いんですかい」
「全部が不味いわけではないよ、飛曹長。戦前ロンドンに行ったが、中華料理やフランス料理の店は美味かった」

 嫌味を垂れる中尉の横で、姫様は笑顔でカレーを頬張っていた。見る者全てが惹き付けられるような、至福の笑顔である。
 ナナカがこんな顔をするのを一度見てみたい。もちろんいつものナナカも好きだが、やはり女は笑顔が一番だと思う。あの職人仕事一筋の一つ目女でも、心から楽しいときにはこんな笑顔を浮かべるのではないだろうか。表に出にくいだけで、あいつは喜びも悲しみも人並みに、もしかしたら下手な人間よりもよっぽど大きく感じている。しばらく同居して気づいたが、ナナカはそういう女なのだ。

「ねぇシバさん、ナナカさんとはどうなってるの?」

 考えていることを見抜いたかのように尋ねられる。

「仲良くやっとりますよ。何だかんだで二人暮らしが続いてますし」

 親父殿が来たと思えば、あの人はナナカの家ではなく領主邸に泊まっている。元々領主邸の調度品を作るために呼ばれたそうで、以前から注文を受けていたが、先に済ませる仕事が多くて遅くなったと言っていた。だからと言って娘と男を二人っきりにするとは予想外だったが、ナナカ曰く「お父さんがうちにいると家が壊れる」と言われて納得した。笑い声であれだけ震動がおきたのだから、寝ている間にいびきで家が倒壊することもあるかもしれない。

 そんな親父殿と俺の関係については実に良い。あの人は鍛冶と彫金の達人で、その方面への興味も強い。領主邸で思わぬ金属製品に出会えて大いに喜んでいるのだ。つまり俺の乗ってきた零観である。金属加工に明るい人員がいれば修復作業も捗るということで、親父殿は調度品作りの片手間に、零観に空いた12.7mm機銃弾の穴を塞いでくれるとのことだ。

 そしてナナカとの仲だが……

「あいつは本当にいい女で。いろいろな意味で」
「んふふっ、それは何より」

 姫様は察したようだ。さすが魔物の王族というか。

「飛行機の改造が終わったら、二人で飛ぶといいよ。私とヴェルナーみたいに。ちょっと時間かかってるみたいだけど」
「シュトルヒと違い全金属製の複葉機、水上機、肝心のエンジンも構造が違う。同じようにはいかないでしょう」

 フィッケル中尉の言う通り、零観は複葉機としてはかなり進んだ設計をしている。改造に成功しても中尉のように自由に旅をするのは不可能だろう。飛行機は整備なしではただの棺桶にすぎない。俺も整備を自分でしたことはあるがフィッケル中尉ほどの技術知識はないし、布張りのシュトルヒより整備性も悪い。

「この町に腰を落ち着けて、必要なときに飛ぶ。できればナナカと一緒にね。そうやって生きていくつもりです」
「町の水軍から勧誘を受けたとも聞くが?」
「帝国海軍以外の軍服に袖を通す気はありません」

 これははっきりと答えた。本心だ。祖国への最後の義理である。

「俺の軍人としての忠誠心はもう、日本に置いてきました」
「……なるほど」

 中尉は笑みを浮かべた。この人は自分の祖国に、というよりはその頂点に立つ者に対し、忠誠心よりむしろ嫌悪を露わにしていた。今は姫様の夫であると同時に親衛隊員という役職を持っているそうだが、未だにドイツ空軍の軍服・軍帽を身につけ、勲章を佩用している。心中は俺と近いものがあるのかもしれない。

「お互い古いタイプの人間のようだ。弓矢で戦っていたイギリス軍将校ほどではないが」
「そんな阿呆みたいな奴がいたんですか!? ……まあ時代錯誤と言えば日本海軍も、飛行機乗りの適正診断に人相占いを使ってましたなぁ」
「おいおい、科学技術の結晶たる飛行機に乗るパイロットを、そんな方法で……いや、確かに適正診断は難しいが」
「こらこら。わたしを置いていかないの」

 姫様が中尉の頬をつついて話を中断させる。周りの客が「弓で戦っちゃいけないのか?」「配属を占いで決めるとか、別に珍しくないよな……」などと話しているのが聞こえた。感覚のズレは非常に大きい。

「とりあえずシバさん。貴方は誰かさんと違って分かってるとは思うけど」

 誰かさんと違って、の所で彼女はちらりと中尉を横目で見た。

「ナナカさんの幸せを望むなら、自分が幸せになることも忘れないでね」
「……肝に銘じますよ」


 ……こんな具合でカレー屋は繁盛しているし、友人にも恵まれている。こうなると化け物だらけの世界がむしろ楽しいものだ。浜辺で人魚が歌っているのを聞いたり、町のガキ共に中尉と一緒に紙飛行機を作ってやったり、楽しみは多い。あの怪僧の教会へもたまに顔を出すし、コルバの料理屋にも行った。魔物の母乳を使ったシチューという奴を食ったがこれがまた美味い。
 コルバも俺のカレーを褒めてくれて、頑張って稼げと励ましてくれた。商売敵になるかもしれないぞと言ってみたら、「ライバルが怖いと思う奴は二流三流のままだ」と返された。

 商売を終えた後は零観の修復作業を見に行き、あれこれと意見を言ってから帰宅する。平和な日々だ。

 だがいつまでも平和ではないだろう。恐らく俺が、そしてこの町の誰もが望んでいないことが起きそうな予感がしている。俺とナナカを監視する者が増えたのだ。以前から監視がついていることは察していたが、最近特に厳重になった。領主に尋ねると、『教団』とやらに動きが見られるため、俺たちの身の安全を確保するために監視を強化したとの答えだった。領主は信頼できる人物で、俺に心配をかけまいとしているようだが、こっちは仮にも軍人の端くれである。

 ふと空を見上げると、蜂の魔物らしき女が三人で編隊を組み、哨戒飛行をしていた。いずれも軍装で槍を手にしている。この世界の人間に飛行手段は無きに等しく、制空権は完全に魔物側にあるのだ。
 自分がもし教団の指揮官で、この町に『違う世界の兵器』が現れたと知ったならどうするか。ましてそれが、人間が空を飛ぶための機械だったとしたら。飛行機が魔物相手にどの程度有効かは分からないが、戦局挽回を賭けて鹵獲しようとするだろう。だから領主も俺に銃を返した。弾は致死性のない魔法の弾丸に変えられていたが、自衛の手段を与えたのだ。

 また戦がやってくる。



「ナナカ、今帰ったぞ」

 ボロ戸を開け、家に入る。ナナカは家畜の魔界トカゲの尻尾を切り落とし、晩飯の準備をしてくれていた。今日は全裸ではなく、一応ボロ布で胸と下半身を隠している。

「……おかえり」

 表情こそ変化に乏しいが、その言葉遣いには優しさが滲み出ている。戸を締めるまでの間、傾いた日の光が大きな瞳を美しく輝かせていた。俺が銃を腰から外して胡座をかくと、手を止めてちらりと俺を見る。

「……今日、どうだった……?」
「ああ、繁盛したぜ。エルフとドワーフには参ったけどな。お前の方は?」
「あんまり上手くは……いかなかった」

 相変わらず、打ち物に試行錯誤している彼女だ。だが今は仕事のことより、気になっている物があるようだ。

「ジュン」
「……ああ、頼む」

 俺は靴を脱ぎ捨て、ハンモックに横たわった。そのままズボンを降ろし、小便のときのように褌をずらす。ナニが露出した。
 ナナカが青い頬を赤く染めながら、じっとそれを見つめてくる。大きな一つ目には何か不思議な力でもあるのかもしれない。否、単に俺がナナカに抱いている感情が原因だろう。見つめられているだけで股間に血が集まり始めた。

 半分ほど頭をもたげた男根に、ナナカはゆっくりと顔を近づけ、口づけした。唾に濡れた唇は胸とはまた違った柔らかさと、淫らなぬめりを帯びている。その刺激に男根は喜び、ますます元気になっていく。
 そのまま唇だけでついばまれるような刺激を与えられ、完全に怒張した竿を、ナナカはうっとりと見つめた。淫らな、雌の視線で。

「んっ……」

 俺の顔を上目遣いで見つつ、彼女は竿を根元まで咥え込んでしまう。温かな口腔に男根が包み込まれた瞬間、気が遠くなりそうになる。舌が亀頭周辺を舐め回し、唾液がまとわりつく。どうやってか一番効果的な場所を感じ取り、そこを集中的に刺激してくるのだ。

「ナナカ……」

 艶やかな髪を撫でてやると、彼女は単眼を細めた。そして一旦口を離し、胸を隠している布を剥ぎ取る。青くて柔らかな、男殺しの乳房がぷるんと揺れたかと思うと、たちまち男根に襲いかかってくる。
 咥え込まれていた竿部分には唾液がまぶされており、汗ばんだ胸の谷間をさらにぬるつかせる。その柔らかいもの二つに押しつぶされ、擦り付けられる快感。それを味わいながら、青い乳房に手を伸ばす。

「あ……」

 声を出しながらも、ナナカは触らせてくれた。ぐっと揉む度に指が沈み込んで、押し返される。また揉んでは押し返される。指が勝手にその運動を繰り返していた。
 それが気持ちいいのか、俺の様子が面白いのか、ナナカは少し微笑んだ。そのまま胸での奉仕を続けてくる。

 最初にこういうことをして以来、晩飯前か寝る前にかならずこれだ。だが膣に入れたことはない。さすがにそれはちゃんと所帯を持ってからだと思うし、ナナカもそこまでするほど思い切りはよくないようだ。しかし彼女とこんな風に触れ合えるというだけで、大きな進展と言っていいだろう。魔物は淫らな物なれど、好きでもない男のナニを咥え込むようなことはないようだ。少なくともナナカは。

 思えば元の世界でこういう経験をしたのは、開戦前に上官に連れられていった遊郭での一回だけだ。いつも真面目で規則に厳しい上官が突然、「柴、お前は童貞か?」と訊いてきたので、そうですと答えた。ずっと水兵として訓練を受けてきたのだから、女の味なんて知らないに決まってる。そんな俺と同期の連中を引き連れて、真面目な上官がいきなり遊郭へ向かった。驚きはしたが部屋に入ってきた女に辛抱ならず、することを済ませてしまった。だが緊張から一晩中、何もできず悶々としていただけの奴もいたようだ。

 そして童貞を卒業した直後に対米開戦を告げられ、そういうことだったのかと納得し、これで死んでも悔いは少ないと上官に感謝したものだ。

 だが今、また死ねない理由ができてしまった。
 口や胸だけではない。ナナカを娶り、こいつの全てを手に入れたい。

 それまでは死なないし、ナナカも死なせん。ついでに零観も誰にも渡さん。

「……ナナカ、出そうだ」
「じゃあ、飲んであげる」

 恥ずかしがりつつも、嬉々として男根を口に収めるナナカ。
 チュウチュウと音を立てて吸引してくる彼女の口腔に、俺は心おきなく射精した……
16/12/28 10:12更新 / 空き缶号
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■作者メッセージ
お待たせしました。
大変、お待たせしました。
正直に言って詰まってましたが、とりあえず大丈夫です。
学校シリーズと併せて書き進めて行きます。
応援いただければ幸いです。

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