連載小説
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夢を見た。

彼女と遊ぶ夢。ビリヤードで、ボウリングで、卓球で、ダーツで、遊ぶ夢。
日常の延長線上。
けれども、その夢は、ひゅぅと吹き抜けるすきま風によって搔き消され、目が覚めたら……いつも通りの自室だった。

布団を捲りあげると……今日もまた、毛布はクシャクシャになっていた。

やけに寒さが身に沁みる、そんな朝はバレンタインデーだった。


──
───

バレンタインデー。
どこか浮かれた街並みの中、いつものように心臓をドキドキと鳴らして、いつもの待ち合わせ場所で待っていると……

「ごめんごめん、ちょっと遅れてしまったよ」

そこに現れたのは、いつもと変わりない様子の後輩だった。何も変わらないスーツ姿。
いつも通り、ピシッと決まっていて……胸だけはパツパツに張り詰めている。

かく言う俺もスーツ姿だった。初めて遊んだ時から変わらない、暗黙の了解。

「今日は……なんだか特に人が多いね、これがバレンタインデーかぁ……」

そんな声と共に辺りを見渡す彼女。それに釣られて同じように周囲に意識を向けると……

ザワザワと色めき立つ観衆、突き刺すような視線、耳に入ってくるひそひそ話。

そのいずれもが心に障る。
無数の手に『お前には無理だ』と手を引かれているようで。
壇上の主演と幕裏の雑用、その格差を見せつけられてるようで。
心の中で密かに燻っている火種がすぅっと掻き消されるこの感覚。それが堪らなく正常に戻してくれるようで、嫌な安心感が包み込みそうになったところで……

「じゃ、今日も遊ぼっか、最初はどこ行く?」

手を握られ、火を灯される。

「何やらあっちにあるイルミネーションとかが人気みたいだけど……ま、それより今日も君と遊びたいかな」

ざわめく周囲を気にせず、淡々と続けられる言葉。
壇上と観客席が分けられるこの感覚。あぁ、勘違いしてしまいそうになる。変な優越感に酔いしれそうになってしまう。
友達として、手を繋がれるだけで。それが単なるスキンシップだと分かっていても。

クラリと傾きそうになる頭を保ちつつ「俺もそれがいいけど……歓迎会みたいなことは、しなくていいのか?」とひと言差し込む。

「あぁ、歓迎会はただの口実だけど……じゃ、夜、一緒に飲みに行こうか、とっても良い店を一つ知っているんだ」

すると返す刀で、流れるように飲みの誘い。
……言われてみれば、なぜ、バレンタインに歓迎会をやるのに、お店の一つや二つを用意しなかったのだろうか。
いや、でも、そんなつもりで居たら……

「ふふっ、もしかして、どこかお店を探してくれていたのかな?」

「でーも、今日はボクのワガママに付き合って貰う日だ、ここは譲らないよ」

見当違いの忠告。
だが、それは、無意識的に心を抉り、有無を言わさず予定を決定づける、魔法の一手。

「そういや、先輩さんとは一緒に飲むの初めてになるのかな?いっつも遊んで遅くなってお開きして……って感じだったし」

抉られた心にチクリと棘が刺さる。
『先輩と"は"一緒に飲むの』というたった一つの音にすら、敏感に反応してしまう。
他のやつとは行ったのか?などという、抱く権利すらないはずの独占欲が湧き上がって……

「だから、今日は特別な日になるね、ボクと君が初めて飲む日……酔った君がどんな姿になるのか……あぁ、ホントに楽しみだよ……♡」

狭まった視界の死角から、吹き込まれる甘い言葉。
いや、甘い、なんて言葉では済まされない。ガムシロップをぐつぐつに煮詰めたモノに、ハチミツと砂糖を詰め込んだような……あまりの甘味に悪寒すら感じる。
ビクン、と体が震える。それを正面から受け止める豊満な胸。軽く抱き込むように背中に回された腕。

ダメだ、限界だ。言葉を吐かねば、勘違いしてしまう。

「……なんだ、もう飲み会気分か。それなら今日はいつもより勝ちやすそうだな」

そんな思いから憎まれ口を叩きつつ、回された腕を軽く押しのける。
吞まれれば良いのに、吞まれないように。酸欠の魚が息継ぎをするよう、上向いて。それでも威厳を保とうとして。

「……はははっ!いいねいいね、君のそういうところ、本当にたまらないなぁ……♡」

くすりと一嗤い。
愉悦と嗜虐を含んだ笑みが、癪に障る。酷く楽しいやり取り。

「まあ、一応は歓迎会だからな、どこで遊ぶかは好きに決めたらいい」

「へぇ……じゃ、お言葉に甘えて選ばせて貰おうかな。最初は……そうだね、ボウリングにしよっか。ここ最近は特に調子がいいから、出端を挫いてあげるよ」

「おや?得意のビリヤードじゃなくていいのか?」

「デザートは最後に取っておくものさ、華やかな勝利の余韻に浸って、美酒を味わう……うん、完璧なプランじゃないかな?先輩さんはどう思う?」

「ははは、その美酒が苦杯にならないといいがな」

「ふふふっ……それはこちらのセリフ、かな?ま、全てに負けた君が苦渋を流し込めるよう、あまーいカクテルを頼んであげるから……ちゃんと全部飲み干すんだよ?」

「……あぁ、そうなったら全部飲み干してやるよ」

「あははっ!その姿、とっても楽しみにしてるよ!」

せっかくのバレンタインなのに、ロマンティックな雰囲気もへったくれも無い、いつも通りの皮肉交じりなやり取りで、歓迎会は幕を開けた。

─────
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──

いくつかの白熱電球で、やや薄暗く照らされた店内。
木造の丸テーブルを挟んで、向かい合うように座り

「かんぱーい!」

そう言って、琥珀色に輝くグラスをぶつけ合い、口元へと運ぶ。
きめ細かな白い泡が唇に当たり、ふわりがサラリと口の中に入り込む。まずは味蕾を刺激する仄かで確かな苦味。
さらにグラスを傾け、奥へと流し込むと黄金色の液体が唇に当たり、ピリピリとした刺激が伝わる。それを口内に思い切り迎え入れると……炭酸が口の中をパチパチと弾け、刺激する。
その勢いのまま喉奥へとゴクリ、ゴクリ……と苦い刺激を流し込み、きゅぅっと喉が搾られる。
舌から深みのある苦味と麦の確かな旨味、甘味が伝わってきて、頬の奥へとじわりと伝わり、渇きを一気に潤す。

──うまい

今日一日の疲れを癒し、楽しさを締めるような、そんな一口。
しかも、後味にすぅっと香味が……柑橘のような香りがそよ風のように吹き渡り、もう一口、さらに一口と、舌と喉が欲する。
今日の楽しさも相まってるのだろう、いつもの数倍は美味いビールをゴクリゴクリと喉奥まで迎え入れて……空になったグラスをトンと置く。喉奥から唸り出る満足感。ふわりを意識が浮く高揚感。
どうやら彼女も同じようだ。いつもは締まった目尻を緩めつつ、目を細め、体裁を気にせず満足感を唸り、木製のテーブルにグラスをトンと置く。

ぷはぁ、と漏れ出る吐息さえ、妖艶だ。

「どうだい、この店は?」

「あぁ、かなりいい店じゃないか」

「だろ?とっておきのお気に入りさ、お酒も美味しいし、何より雰囲気がボク好みかな」

ガヤガヤと喧噪が鳴り響く店内。けれども、それはクラッシック音楽のように纏まっており、対面の彼女の声を阻害せずに、外界と会話を隔離している。
小皿に置かれたナッツを、摘み上げる手。その手は彼女の口元へと近づき、ナッツを赤い唇に挟み込む。ふに、と揺れる。
そのまま白い歯が一瞬見え、挟んだかと思うと、カリっという軽快な音が鳴る。

「うん、濃厚でいい香りだ、ホントによく合うなぁ……君もひとつ、食べてみたら?」

そう言って、もう一つ摘み上げ、こちらに差し出してくる。
つい、うっかり、顔を近付けそう……になるが、すんでのところで左手を伸ばし、指と指が軽くキスするように、ナッツを一粒受け取る。

酒は、良い。
少しは臆病さが薄れて、素直になれるかもしれない。

酒は、怖い。
気が付いたら、溺れているかもしれない。

「んっ……あぁ、美味いな、香り高くて……コンビニのとは全然違う」

「どうやら店主が色々こだわってるみたいでね、このナッツもここでローストしてるんだって、ビールだって自家製さ」

「お店の雰囲気もかなり拘っているみたいだしな……さっきのビール、もう一つ頼むか」

「気に入ってくれたようで何より……店員さん、ビールを二つ、お願いします」

この店には、いつものように彼女に手を引かれて辿り着いた。
繁華街の裏通りに無数に存在する無骨なビル、そのうちの一つに入って、地下へと続く階段を降りて……入り込んだ。自分一人では絶対に見つけられない、そんな場所。
こっちに来たのは最近なはずなのに、よくもまあ、こんな店を見つけられるものだ。思えば、あのビリヤード場も、ボウリング場も、ダーツバーも……

「お待たせしました」

そんな声が割り込み、コトン、コトンとグラスが二つ置かれる。
琥珀色の液体に蓋をするきめ細かな白い泡。

「じゃ、また」

「あぁ」

グラスを掴むと、対面からスッとグラスを差し出され、そのままカチンとグラスを合わせる。
そして喉にビールを流し込む。うまい。

「ぷはっ……いやぁ、今日はとっても楽しかったなぁ、ボウリングに、ダーツに、ゲームセンターにも行って……そして、最後はビリヤード」

「あぁ、これ以上にないぐらい遊び倒したな」

「どれもこれもイイ感じに競り合ってたけど……予定通り、勝ったのは全部ボクさ。あぁ、いつもよりもお酒が美味しく感じるよ……♡」

恍惚な表情を浮かべながら勝ち誇り、んく、んく……と喉を鳴らして、ビールを流し込む姿。第一ボタンが外されていて、ほのかに上気した肌と鎖骨がチラリと顔を覗かせている。
嚥下する度に、その鎖骨が上下に動き、それに引っ張られて大きな胸がたゆんと、膨らんで、ほのかに縮んで、また膨らんで……たぷっ、たぷっ、と揺れ動く。
……珍しく、ジャケットのボタンも外されている。締め付けが少ない分、ワイシャツがいつもよりも張りつめられていて、飛び出ている。しかも、レース生地のブラジャーが、黒色の大きなブラジャーが、わずかに透けていて……

あぁ、酔いが回り始めた。目に焼き付いてしまう。
その豊満な果実が。温かくて重量感あるたわわが。暴力的なまでの魅力が。

「……ま、歓迎会だからな、今日はいい気分にさせないとな」

毒を吐かねば、やってられない。
視線がソレに寄せられて、如何わしい気持ちを汲み取られてしまいそうで。

「おや、まるで、いつでも勝てる、と言わんばかりのセリフだね。いつもボクが勝ち越してるのに」

「ははっ、昨日負けたから今日も勝てないなんて論理はまかり通ったら、いつまで立っても負けのままだ」

いつもの数倍は滑らかな舌を回し

「それに、端から負けるつもりでやっても面白くないだろ?」

本心を軽く口にする。

「ふふっ、そうだね、その心意気が何よりのプレゼントだよ……次も期待、してるよ」

皮肉めいた言葉が飛んでくるかと予想してたところに、突如としてぶつけられる想い。
そこは本心であると、的確に見透かされてたようで、くすぐったいような恥ずかしいような感情に襲われ、思わず目の前のグラスに助けを求める。

味わい深い苦味によく馴染んだアルコールが、舌から脳に染み渡り、酔いが回る。
チラリと彼女を一瞥すると、頬杖を付いて、こちらの様子を愛おしげに見つめていた。

あぁ、ダメだ、余計なことを考えるな。

グイっと杯を煽り、炭酸を流し込み、喉奥をきゅぅっと締め付ける。
回ってきた……全身を包み込む心地良い疲労感、ぽわっと頭が浮く感覚。それでも気恥ずかしさが無くなり切らず、彼女から視線を外すように辺りを見渡す。

店の中の照明は、傘を被せられた白熱電球がチラホラと。
全体像は木造。樽が縦に置かれていたり、横に置かれていたり。至る所に大小さまざまな置物や酒瓶が置かれていて、暖かな光がそれを照らしている。彩れる明暗のコントラストが、隠れ家のような心地よさをかもちだす。カリブの海賊は、こんな酒場で飲んだくれてたのかもしれない。
逆光で蔭る置物をよくよく見ると、ファンシーな物が多いことに気がつく。ハート柄だったり、可愛い帽子だったり、トランプだったり、何かのキャラ物だったり……

「おいおい、よそ見しちゃダメじゃないか」

ふと、彼女の声で思考が割かれる。視線を戻すと……トロンと据わった目がこちらをじぃっと見つめていた。
昼間の彼女とは違う、妖艶さを孕んだ表情。いつもはキリリと締まっている目尻が垂れ下がっていて、その微笑みがどことなく恐ろしく思えてしまう。
初めて見る酔った顔。
けれども、この表情をよく知っている。

「君にはボクがいるだろう?」

いつもよりねっとりとした声色、酔いが回っているのだろう。
それなのに、こんなキザなセリフが出てくるのは、本心なのか、はたまたそういう性格なのか……判断しかねる。
判断できない。

「酔ってもそんなセリフが出るか」

「そうだね、君に酔ってるからこんなセリフが出るんだよ」

ドキドキと狂わされ始めた恨みをぶつけるように、言葉の切っ先を彼女に向ける。だが、その刃先はいとも容易くひっくり返され、心臓を深く突き刺される。
好意があるように強く仄めかすセリフ。

それは、既に熱くなり始めていた頭を茹で上げるには十分すぎるほどだった。
ぐるん、と一気に酔いが回る。

「おや、顔が真っ赤だけど……もう酔ったのかい?」

クククと嗤いながら、そう指摘してくる。おそらく、ホントに真っ赤になっているのだろう。これ以上言い返しても墓穴を掘るだけだと思い、顔をそらして「うっせ」と短く返し、店員を呼ぶ。
何かを頼もう。なるべく冷たいものがいい。

視線だけで、チラリと彼女を一瞥する。
にぃぃっと細まった瞳は妖しく輝き、口端は深く歪んでいる。その唇が開いたかと思うと、口元を隠すようにナッツを一粒放り込み、カリっ、コリっ、と丁寧に嚙み砕いた。
耽溺するように。きたる何かを愉しみにしてるかのように。

あぁ、この表情だ。
ひと月前、ビリヤードを手取り足取り教わった時も、淫靡な妄想を透かされた時も、恩情を与えられた時も、命令をせがまれた時も。
こんな顔をしていた。

全てが紙一重だった。

すぐに頭を冷やさないといけない。熱に中てられてしまいそうだ。
そう思って呼びつけた店員に向かい、メニューを片手に注文しようとする。

「えー、あ、このハイ……」

「そうだ、是非とも飲んで貰いたいのがあってね、紅茶のリキュールを使ったカクテルなんだ」

「ロイヤルミルクを二つ」

普通のハイボールを頼もうとするが、勝手に割り込まれ、別の物を頼まれる。
名前からして甘そうで、とても頭を冷やせそうにない。そんな想いから不服そうに彼女を睨み付けると

「おおっと、そんな目で見ないで欲しいな、とっても美味しいカクテルだから、気に入ってくれると思うよ」

「いやいや、甘いのを頼むには……まだ、早いんじゃないか?」

「ふふふっ……最初に言ったじゃないか、苦杯を味あわないよう、甘いカクテルを頼んであげる、って♡」

「それに君も、『そんなモノ全部飲み干してやる』って言ってたじゃないか、ほらほら約束はちゃんと守って貰わないと」

「……そういや、言ってたな」

「まま、ここの支払いはボクがやるから、このぐらいのワガママは許してくれないかな?」

「いやいや、そうは言われても、今日は歓迎会だし、そもそも俺が先輩……」

だから後輩に奢らせるわけ……と言葉を続けようとするが、ふと疑問が浮き上がる。

「……あれ、そういや、いくつなんだっけ?」

彼女の年齢を知らない。
後輩ではあるが、時期的に中途採用だ。年下なのか年上なのかすら分かっていない。だから、反射的にそんな疑問が口に出る。
今までは気にすることも無かった。

よく考えたら、知らないことばかりだ。

年齢も、出身地も、前職は何をしていたのかも、一人の時に何をしてるかも、知らない。
こんなにも、仲良くなったのに。
いや、仲良くなりすぎたから、そんな間を繋ぐ他愛ない話題を出すことすら無かった。

「おやぁ?レディーにいきなり年齢を聞くなんて、随分失礼じゃないかな?せめて口説き文句の一つぐらいは添えて貰わないと」

「いや、そんなレディーって柄じゃないだろ。というか、年齢一つ聞くのに口説き文句が必要な友達って……」

誤魔化そうとする彼女を適当にあしらおうとするが

「よっ……と」

突然、そんな声と共に手を後ろに回したかと思うと

パチンっ

と音が鳴り

ぶるんっ……♡♡
だぽんっ……♡

突如、目の前のワイシャツが異常なほどに膨張した。
重量感たっぷりに。

──え?

急に一回りも二回りも大きくなった中身に押し出され、ぱつんっ、とワイシャツが張りつめ、その乳肌が透けて見えてしまう。
乳白色の色の良い乳が、ワイシャツに押し止められ、ぐにっ……と不満げに形を変えてる様子が。そして、その先端には突起が確かにっ……

なんだ、何なんだ一体。

「ふぅ……あぁ、ごめんごめん、酔いが回って火照ってきたから、外させてもらったよ。ちょっとはしたないかもしれないけど、無礼講ということで許して欲しいな」

せまっ苦しいとこから解放されたかのように吐いた息。平然と吐き出される理由。
それに応じて、柔らかくも重い乳がたぷんっ……♡と揺れる。さっきまでとは明らかに違う柔乳感。そして重量感。

そこでようやく理解した。ブラジャーを、外したのだ。
どれだけギッチギチに締め付けていたのだろうか?メロンから大玉スイカへと変貌し、その圧はワイシャツすらも突き破ってしまいそうなほどで……みちり、と乳同士が頬擦り合っているのが見えてしまう。
しかも下の支えを失ったのに、前に突き出ようとワイシャツをイジメる様子からは、その異常なハリの良さを強調していて……

思わず喉から声が溢れ出そうになり、何とか押し止めるも

ぐにゅんっ……♡

腕が組まれる。
ただ、組むだけじゃない。
ワイシャツでパツパツに張り詰めた胸を抱き寄せるように腕を組み、持ち上げる。ぐぐぐと重力に従おうとする大きな果実をこれ見よがしに。
抱きかかえられてもなお、腕から溢れそうになるソレに、思わず釘付けになったところで

だぽんっ……♡たゆん……♡
たぷんっ……♡たゆ……♡

腕が緩められ、重力に従ってスルリと滑り落ち、重みたっぷりに揺れ動く。余韻を持って。
ゼラチン質の大きな球体をふたつ、落とし揺らしたかのような弾力感……けれども、それは強いしなやかさだけでなく、心奪う柔らかさを兼ね揃えてることを、背中が知っている。

「ぁっ……や、ば……」

だから、喉奥から、声が溢れてしまった。
なみなみのコップが表面張力の限界を迎え、一気に零れ落ちるように。

「……おやおやぁ?」

待ってました、と言わんばかりの声。
愉悦と待望を孕んだ声色は、ひどく歪んでいた。

「今の声は……何かな?まさか、ボクのおっぱいに見とれてたりしてないよなぁ?」

「い、や……」

「くくっ……ま、そうだよね。ボクと君はあくまで友達の関係。例えこんな風に」

また、腕が胸を締め付ける。

「腕でぎっちぎちに引き絞って、もうワイシャツのボタンがはち切れそうなほど強調しても……ほら、見てみてよ、スライムみたいに柔らかくて、弾力あって、モチモチで、気持ちよさそうだろ?」

「指で押したら、ぐにっと底なし沼のように沈み込んで……引き抜く時も物惜しげに吸い付いてくる。まるで意志を持ってるみたいにね。でも、柔らかいだけじゃなくて、抱き寄せ集めると……ゴム毬かと思うぐらいギチッとした弾力が出てくるのさ。底なしの柔らかさと暴力的な弾力、そのどちらも兼ね備えた自慢のおっぱい……ボク自身、暇な時はこねくり回して感触を堪能していてね」

何を……
そんな言葉を出そうにも出せない。
彼女の口から吐き出される淫靡なセリフ回しと仕草の数々。それは花を売る女が男を欲情させるためだけに言う、下品な行為であるはずなのに……彼女のソレは、ブランド物のスーツに隠された匠の趣向を一つ一つ解き明かし、自慢げに語り尽くして、魅力を最大限に伝える紳士のように思えてしまう。

「ま、君はいつも、この感触を背中で、胸板で、味わっているのだから、今さら見とれるわけないか」

い、や。
味わっていない。そんな風に堪能したことなんて無い。
背中に押し付けられることはあった。もっちもちで弾力ある柔らかい感触を押し付けられて、その温もりに心狂わされたことは何度もあった。
けれども、指で押したら、ワイシャツの生地すらも飲み込んで窄みを軽く残すほどモッチリと引き込むことなんて、知らない。指を引き抜いても尚、赤子が親の指をねだるように、いじらしくて吸い付いてくるなんて知らない。
ブラジャーを外したら、今にも破裂しそうな水風船のようにワイシャツをギチッと張り詰めさせて、それでも音が鳴りそうなほどの圧を発するなんて知らない。

高級フレンチのほんの一口を食べたとしても、そのフルコースの全てを知りようが無いのと同じように。
押し付けられた感触だけでは、その全ての一割すら味わってないことに……気が付いてしまった。

味わいたい。

「ふふふっ……」

急に降ってきた妖艶な嗤い声、嘲るようだけど扇情的で……クスクスと押し殺した声がかすかに聞こえる。

俺は、何を考えて……いや、こいつは、彼女は……急に何を……

ハッ我に返った頭が、思考を隠すように急いで顔を逸らそうとするが

ぷちり……

何かが切れる音。ほんの僅かな、か細い音。
張り詰めたワイシャツの一番張力が掛かっていたボタン、それを支える糸があまりの乳圧に耐えられず、切れてしまった音。
隙間からギチギチに押し込まれた柔肉が垣間見える。深いI字のクレパス。

「おおっと、ボタンが取れてしまった、流石にブラジャー無しじゃ支えきれなかったかな?」

そう言いつつ彼女は外れたボタンを取る振りをして……ワイシャツの隙間に指先を引っかけ、自らこじ開けた。
広がったスリットからも、なお長く続くI字の谷間。乳と乳との境界線。締め付けは緩んだ筈なのに、それでも匣よりも中身の方が大きすぎて、広がった隙間から跳び出そうと柔乳がわずかに溢れる。

「まあ、少しキツいと思っていたところだし、こうやって開けてた方がちょうど良いかもね」

ギチ、ギチ……♡と音が聞こえてきそうなほどの密度の谷間は、ひと度挿入してしまうと四方から吸い付くようにモチ乳がせめぎ合って、侵入者を隙間なく閉じ込めて……
あぁ、そこから引き抜こうものなら、逃がさないと言わんばかりに無数のモチモチ感触が、中身を寄越せとねだってくるだろう。根本から先端へと、擦り上げるように。
いや、引き抜くのすら覚束ないだろう。蓋をしたシリンダーからピストンを引き抜くのが大変なように。

引き抜こうとして出来た真空の乳膣が、中身を出せ、出せ、と吸い上げてきて……

止まらない。
淫靡な妄想が止まらない。酔いが回ってるのも相まって、蓋をしてきた下劣な思想が、止まらない。こんな……二人きりで対面してる時に考えることじゃない。
そうは分かっても、四六時中発情して猿のように盛る男子中学生のように、下品な考えが止まらない。あの穴で、シコりたい。挿入してズリたい。ダメだ、違う、違う、バカが何を考えてっ。

「くくくっ……♡」

ひと嗤い。
その声だけで、全ての葛藤がかき消され、全集中が彼女に向けられる。
壇上のマジシャンの仕草一つに観客が押し黙る、そんな圧。

「みっちり詰め込まれたボクのおっぱい……そんなに気になるかい?」

パチリをウインクしながら、べーっと舌を出して、乳穴を見せつけるように胸を強調する姿、挑発的な笑み、声、その全てが脳に焼き付く。

「あぁ、ほら、見てみてよ……」

そう言いつつ、見せつけるように自らの指をゆっくりと隙間に差し込む。
谷間はふにゅりと形を変え、隙間を埋めるようにぐにゅりと流れ込み、その指を飲み込んでいく。

「ボクの指を深くまで差し込んでも、奥まで全然届かない。しかも引き抜こうとすると、逃がすか逃がすかってモッチモチに吸い付いて甘えてくるものだから……困ったものでね。この中にナニカ入れてしまったら、二度と取り出せなくなるかも」

ぺろりと唇を舐め、乳の宝箱の鍵穴を見せつけるように弄くり回す。縦に、横に動かしても、その狭間は形を変えて、余計な隙間を与えることは無い。
どこまでも沈んでいきそうな底無しの谷間。もし、身体を虫みたいに小さくされて、あそこに閉じ込められたら、どれだけ気持ちいいだろうか……そのままプチプチとすり潰される羽目になっても、それは極上の……

「こうなると指を引き抜くのも一苦労なんだけど、こういう時は慌てずに、指をもう一本……」

空いていたもう一つの手を谷間に近づけ、同じように人差し指を差し込む。
ぐにゅう……と飲み込む肌色の狭間、深く、柔らかく、底無しで……また、埋め尽くす。隙間を。

そうしてみっちりと閉じ込められた二本の指を鈎のように使い

「よっ……と」

ぐにゅにゅ……♡

こじ開ける。両肩を開き、背筋を使っても尚、開かんと抵抗する乳箱は、もはや何でも丸呑みするモンスターのようで……倒錯的な興奮に襲われる。

くぷ……
むわぁ……♡

そして開かれた乳穴から漏れ出る蒸気、パッツパツのおっぱいの中で籠りに籠ったミスト。対面まで漂ってくる……濃厚な甘み。バターと砂糖とミルクをカンカンに煮詰めたような、甘ったるい香り。
その甘みに隠された濃密すぎるメスのフェロモンは噎せかえりそうなほどで、どうしようもなく勃起を搔き立てる。

あの香りだ。密着指導の時に嗅がされた、あの濃密な匂い。

甘いミルクで煮詰められた蒸気が微かに届くだけで、鼻腔をクンっと刺激して、溶かす、熔かす、融ける。白い火花が瞬時に弾ける。

「ぅ……ぁ……」

まるで、脳内に胞子をばら撒かれ、キノコだらけにされてしまったかのように、欲望が、下劣な想いが、止まらない。
あの谷間に顔を埋めて深呼吸すれば、腰が砕けるほどの甘射精を味わえてしまうはず。あぁ、抱きつきたい。
今、彼女に跪いて抱きつけば、ちょうど顔の位置におっぱいが来て、甘ったるい香りを肺いっぱいに埋め尽しながら、情けなく腰をヘコヘコ振って、腰の奥に溜まったドロドロの欲望が詰まることなる吐き出せるだろう。

そんなことしたら、どうなるだろうか?

軽蔑、侮蔑、嘲笑?いや、それだけじゃない。
彼女なら、この後輩なら、確実に愉悦を孕み、受け入れてくれ……いや、搦め取られ

「ふぅ……ま、こんな風にちゃんと隙間を作ってあげれば引き抜くことができるんだけど、おっぱいの中で籠った汗の匂いが漏れ出ちゃうのが難点でね……もしかして、届いてしまったかな?」

届いた、届いた。
もう、股間の奥でグツグツに煮詰まった欲望が、ふと気を抜いたら吐き出てしまいそうで、それ以外に思考が割けない。

「でも、先輩さんはたしか……この匂いが好き、って言ってたよね。ボクの汗の匂いがクセになってしまうって、ずっと嗅いでいたい、って……♡」

言ったか?言ってたか?
でも、この濃密なバターとミルクを熟成させたような香りの虜にされてるのは事実で……あぁ、もっと近づきたい。あの狭間に鼻を突っ込んで、白く溢れる甘い毒霧に脳を侵されたい。

「ふふふっ……ほら、もっと嗅いでみるかい?友達同士なんだから、汗の匂いぐらい嗅ぐことだってあるだろうし。それが例えおっぱいの間で籠り籠って濃密になりすぎて練乳のようにドロドロとして、脳裏にへばりつくような匂いだとしても……♡」

「友達ゆえの事故のようなものさ……♡」

空気ポンプを押すように、その豊満な胸をぱふぱふと潰して、開いて。蒸気を吐き出す。嗅覚神経を刺激する、甘ったるくて濃密でクセになる香り。
もはや毒ガスだ。テーブルの下で勃起は収まらず、拡散した蒸気を一嗅ぎする度に、ぴゅるっ、ぴゅるっ、と我慢汁が溢れて止まらない。こんなの、直に嗅いでしまったら、体の中身が全て甘い生クリームにされて、魂ごと吐き出してしまう。
脳がくちゅくちゅと刺激される。

「くくくっ……♡いかにも興味津々っていう顔だね……♡」

嘲笑されても、顔を背けることが出来ない。

「まあ、ボクと君の仲だ」

「君からちゃんとおねだり出来たら、好きなようにさせてあげるよ」

クラリと脳が傾く。
あの胸を好きなように……好きなように?

「こんな風に思い切り掴んでもいいし、ゆさゆさと揺さぶってみてもいい、このスリットに指を突っ込んで官能な感触に心奪われてもいいし、思い切り抱きついて鼻をすっぽり埋めて脳をどろっどろに溶かし情けなく腰を震わしてもいい……」

「それとも、このボタンを全て外してみるかい?でも、それはオススメしないなぁ……生の感触を手のひら一杯に味わったら、もう一生その感触が恋しくてたまらなくなるし、籠り籠ってた君の大好きな匂いが脳髄まで届いて狂ってしまうかもしれない……♡」

「それに、ギチギチに詰まった穴が無くなってしまうからね。この圧はボクの自慢でもあるのだから……♡」

蓋をしていた筈の欲望の中身を見透かして、チクチクと刺激する言葉は……悪魔の囁き。
たゆんと揺らされる膨らみ、スリットから溢れる乳肉、漏れ出る甘ったるい香り。それらをほんの一口しか味わえてない俺の想像を搔き立てて、腰の奥がぐぐぐ……と固くなる。

ホントに、オネダリ出来たら、アレを好きなように……
この下品な欲望も、全部受け入れられっ……♡

チラリと表情をうかがうも……その微かな視線の動きにも気づかれ、べーっと舌を出されて挑発されてしまう。『ほら、返してみろよ』と言われてるようで『これも戯れの一つさ』と言われてるみたいで。
悪友とのやり取りみたいなソレが、敷居を下げる。色欲にまみれた発言をする敷居を。

──これはあからさまな罠だ。ここで誘いに乗ったら、ケラケラと笑いながら軽くバカにしてくるはずだ。
──挑発に決まっている。触らせるはずなんて……

そんな思考が首をもたげるも……

ぎゅっ……♡だぷんっ……♡ぱふっ……♡

抱き寄せ、持ち上げ、落として揺らし、穴を見せつけるようにぱふぱふと横から押し潰す、その動きだけで掻き消される。
あぁ、むしろ、戯れに乗って『冗談だよ、ばーか♡』と言われてしまうのなら、それでも良いかもしれない。
万が一、ホントに触らせてくれたら……
どうなるだろうか?もう、こんな誘惑だけで、発情期の犬のようにむしゃぶりついて腰をカクカク振ることしか考えられないのに、実際に手にして、こんな風に

「『ほら、好きなようにしていいんだよ……♡』」

妄想と声がリンクする。

「ぁ……ぁ……」

未来が見えてしまった。
木の蜜に群がる虫のように、彼女に抱きついて、あの胸に顔を埋めて、一心不乱に甘く饐えた匂いを嗅ぐ姿が。恥も外聞も捨て去って、へばりつく姿が。
そんな様子を見下ろして、嘲笑しつつも、後頭部を愛おしく抱き締め、尊厳を吐き出させる悪魔の姿が。

ダメだ、狂う。
そんなことになったら、頭が沸騰して、豆腐のようになった脳みそを、あの胸でグチャリと潰されてしまう。

中身がグズグズになって

「なっ……」

終わってしまう。破滅してしまう。
逃げられなくなる。

「なにを言……」

喉奥から振り絞って、言葉を紡ごうとした、その瞬間


「おまたせしました」


横から割り込む知らない声。
ハッとして、その声の方へと向くと、店員がトレーに乗せた2つのグラスを、テーブルにコト……コト……と置いていった。
背が低くて丸いグラス。スズランの花を逆さにしたような、飲み口がすぼんだ可愛いらしい形。
その中には、褐色かかった乳白色の液体がたっぷり注がれていた。ロイヤルミルクティーを彷彿とさせる……いや、恐らく、ソレのカクテル版なのだろう。

「さ、頼んでたカクテルが来たみたいだね、オススメの一杯だから、是非ともゆっくり味わってほしいな」

その声に導かれ、視線を上げると……あのスリットを腕で隠した彼女が、平然とした様子で佇んでいた。
あたかも、最初から何も無かったかのように。

今のは、何だったのだろうか?

今のは……

いや、

分かっているだろう。

今のは……誘いだ。

あぁ、分かっていただろう。後悔する羽目になると。
もっと迫られたいなんて歪んだ願望を抱いて、強情を張り続けていたら、いずれ。

……何て思われているのだろうか。
据え膳に手をつけなかった惨めな男とでも思っているのだろうか。意気地なしだと思って、見限ってしまったのだろうか。
あぁ、嫌だ、嫌だ。何も言ってないだろう。
全部俺の勝手な思い込みだ。他人を悪者にするのはよせ。全部俺のせいだ。まだ何も言われてない、何も。

こんな気分は、炭酸で思い切り流してしまいたい。
あっ、あぁっ、なんで、なんでここにあるのはこんな甘ったるそうなカクテルなんだ。喉奥からこみ上げそうなドス黒いモノと化学反応を起こして、異常な胸焼けが起きるに決まっている。とても流し込めない。
何故。なん

「ほら、グラス持って」

ぐるりと回り回った思考を切り裂く声。
決して強い口調でも、大きな声でも無かったが、熱暴走しかけた頭を止めるには十分なほど凜としていた。
空いた腕で差し出されるグラス。とぷんと揺れる液面。

それを受け取る。

「じゃ、かんぱい」

落ち着いた乾杯。その流れに疑うこともなく、グラスをかちりと合わせる。

──?

心が、読めない。
嘲笑も、侮蔑も、憐憫も、同情も、何も感じない。
少し冷えた頭は取っ散らかったままで、疑問符が脳内を駆け巡る。目の前の彼女は恐ろしいほど平静で……その表情に見惚れつつ、グラスを口元へ運び、傾けると

むわっ……♡

「んっ……!」

むせ返るほどの甘い香り。甘ったるい、甘ったるい、バターにハチミツ、ミルクに砂糖、そこに薫り高い茶葉を沢山詰めて、煮詰めたシロップを……あの胸で熟成させたような、匂い。

どこかで聞いたことがある。飲み口が窄んだ形状のグラスは、その香りを外へ逃がさないためにあるのだと。

だから、気付けなかった。
この液体が、こんなにも官能的な匂いを発していることに。口にするだけで脳がドロリと溶ける劇薬であることに。

傾けたグラスを戻す暇も無く、その液体は唇を通り、舌へと触れる。

甘い。底抜けに甘ったるい。
市販のロイヤルミルクティーを数倍に濃縮したかのような……頬からじわりと染み入る甘み、官能さ、興奮。
甘みだけじゃない、たっぷり詰まった馴染みある紅茶の香りと渋み、その味わいを重厚に纏め上げるアルコールの滑らかさ。けれども、その根幹にはミルクの濃い匂いが……熟成された匂いが揮発して、脳にドロッとへばりついて……ぁ……あまい……

「ふふふっ……♡どうかな、とっておきの『ロイヤルミルク』は……♡」

これ見よがしに、たぷんと揺らされる乳肉。豊満で、頭がおかしくなりそうな程デカくて、パイズリ穴から零れる香りはこのカクテルと同調していて……

「ボクの気持ちをたっぷり詰め込んだから、じっくり味わってね……♡濃厚で甘ったるくてドロドロとした匂いが脳にへばりついて離れなくなるまで……♡ほら、コレもたっぷりオカズにしていいんだよ♡」

組んだ腕に乗せられ、だぷん……♡と何度も揺らされる。
その揺れ、動き、重みたっぷりに緩慢と揺れる様子からは、中身がたっぷりと詰まってることに気が付いてしまう。
中身、そう、ミルク。
濃厚なミルク。
スリットから漏れ出るミストをかき集めて結露させたかのような、脳に染み付いて離れない甘ったるい香り。目の前の『ロイヤル"ミルク"』

「くくくっ……♡ワイン樽に思いを馳せながらワインをじっくり味わう……それと同じさ」

冗談と思うべきはずなのに、その言葉が真実に思えてしまう。
そう、あのおっぱいに詰まったミルクを……俺は、今、この口で……
芯から凍えるような悪寒が、沸騰感に変貌するゾクゾクとした感覚。全身の鳥肌が立って、頭がどうにかなりそうになる。

「さて、ただ見つめるだけじゃ飽きてしまうだろう……これはボクからのサービスだから、たっぷり見ていってね」

だぷん……♡ぷるんっ……♡
むぎゅっ……♡ぎちっ……♡

落とす、揺らす、抱き潰す、溢れる。
手慰みに遊ぶ程度の単調な動作。なのだが、詰まりに詰まったハリのある胸がその動きに重厚感を与えるせいで、シコりたくてたまらなくなってしまう。
中身がたっぷり詰まったミルクタンク。後輩で、毎日を一緒にした友達の、ミルクタンクの中身。乳を搾り出す想像も湧いてしまうほどバカデカいおっぱいの中身を、口にする。

もう一口、一口と。

紅茶のリキュールとよく馴染むミルク。甘ったるくて、へばりつく。舌に、鼻に、脳に。
びゅく、びゅく、とテーブルの下ではナニを痙攣させ粘つく雫を何度も吐き出しつつ、彼女の目の前で、彼女のミルクのカクテルを味わう。そんな変態的倒錯感に酔いしれ……ぁ……い、や、違っ、俺は何をっ……

「さぁて、ボクも一杯愉しもうかな」

戻りかけた頭に割り込む平静な声。
胸を弄んでいた手が離れ、そのままグラスへと伸びる。そして、手のひらで包むように持ち上げ、褐色がかった乳白色のソレを軽く揺らし、香りを味わって……躊躇うことなく、口へと流し込んだ。

「んくっ……んっ……」

ゴクリ、ゴクリ、と一気に飲み干していく。躊躇なく。
無防備にさらけ出た喉が、液体を嚥下して動く。あの一口飲むだけで脳が白く塗りつぶされそうな劇薬を、上から下へと、何遍も。

「ぷはぁ……♡あぁ、甘いなぁ、こんなに甘ったるくて、濃厚で、しつこい味になるなんて思っても無かったよ」

最後の一滴まで飲み干し、乳白色に曇ったグラスをぶらんとぶら下げる。

「どれもこれも、君のせい……だね」

音もなく嘲笑うように、べー、と舌を見せつけてくる。カキ氷のシロップで染まるのと同じように、乳白色に染まった舌を。
喉奥から漏れ出る吐息はとても熱っぽくて、メスを強く意識させる生っぽさと、どろっどろの濃密さ、そして甘ったるさが鼻につく。

全てが、股間に響く。

脳が、白く染まり始める。
最高に気持ちいい一線が、すぐそこにある、あの感覚。
重力から解き放たれたかのような不思議な感覚も相まって、口元のグラスから薫る濃厚な匂いだけでふらりと飛び降りてしまいそうで。

「さぁて、メインイベントと行こうじゃないか」

メインイベント……?
そんな言葉をかろうじて脳が拾った瞬間。

すり……

脚に何かが触れる。
しなやかで長いソレは、股の間にスッと入って、脚の内側をなぞるように、くすぐるように登っていく。

これは脚だ、彼女の脚……

そう気がつくも、すでにその脚はまるで蔦のように俺の脚に絡み付いてしまって、振りほどくことができない。

「さっきは『ちゃんとオネダリできたら、このおっぱいを好きなようにしていい』なんてことを言ったけど……」

ぎゅむ……

柔らかな足が内腿に押し付けられる。

「よくよく考えたら、いくら友達といえども、タダで自慢のおっぱいを好きにさせてあげるなんて……不平等じゃないかな、って思ってね」

ぐにぐにと、内腿を一歩ずつ丁寧に踏みつけながら登っていって、徐々に隆起した目的地へと近づいてくる。今にも臨界点を迎えそうな、てっぺんに。

「それに、今朝の発言は覚えているかな?ボクが頼む甘いカクテル、それを全部飲み干してやるって宣言したよね?でも、グラスはまだまだ乾きそうに無い……約束は守らないといけない、そう思わないかな?」

──ま、って

そんな言葉を吐き出そうとしたが

ぎゅむりっ……♡

踏まれる。
ぷにぷにの足裏で、根元から先端にかけて絞り出すように踏みしめられる。

「あぁっっ……♡♡♡」

情けない声と共に、びゅるっ……と竿に溜まっていた我慢汁が一気に吐き出され、パンツがべちゃりと濡れる感触がした。

染み出る……いや、このままだと溜まった物が全部っ……

そんな忌避感から、何とか逃げようとするも……踵で竿の根元を固定され、裏筋を隙間なく押さえつけられつつ、親指と人差し指で亀頭が挟み込まれてしまって……寸分も逃げることが出来ない。
全部余す所なくぺちゃんこにするかのように、じわじわと圧を掛けられ……とぷっ、と粘っこい液体が吐き出される。

「だから、賭けをしようか」

賭け。
こんな状況でする賭けなんて……

「ルールは簡単、君がそのグラスを空にすれば勝ち……ただし」

ぎゅむっ……♡

「ぅあっっ……♡♡♡」

「君がミルクを吐き出す前に……ね♡」

勝てるわけがない。
この液体を飲み干したら、全部、出てしまう。潰れたカエルのようにビクビクと痙攣しながら、濃い精液をズボンから染み出してしまう様子が、想像つく。
想像ついて、興奮が搔き立てられる。

「君が勝ったら、このおっぱいを好きにしていい……けど、もし君が負けたら……どうしようかな……約束を破ってしまうような人は……」

考えるような素振り。人差し指を唇に軽く添えて、宙に視線をさまよわせ

「奴隷にでも、なって貰おうか」

その指の先をこっちに向ける。喉を真っ直ぐ射ぬくように。
奴隷。
彼女の奴隷に。

「な、に、を言って」

「釣り合わない?いや、君はそう思ってないはずさ。これが手に入るなら、全て搦め取られてもいい……なんてことを思ったのは一度や二度じゃないだろう?」

見透かされている。疚しい思いも、密かに抱いていたはずの狂信的な想いも。
サァっと血の気が引きそうになったところで

ぎゅむぅ……♡

「ぅくっ……♡♡」

踏まれる。
彼女の柔らかでぷにぷにの足で容赦なく踏みつぶされてしまう。
股間を足蹴にされる、とても侮蔑的な行為のはずなのに……その足裏はまるで優しく抱き込むように隆起したナニを包み、ぎゅぅっと磨り潰す。
甘くて鈍い快楽。引きそうになった血の気が一気に押し上げられ、反動で心臓がきゅぅっと鈍く痛む。

「ぁ、はぁっ……♡まぁっ……♡うぅぅ……♡」

抗議の声を上げねば、始まってしまう。それなのに……喉奥からは甘い呻き声しか出すことが出来ない。
発情した猫が媚びるような、おぞ気がするほど甘ったるい声。

「ふふふっ…♡君も待ちきれないみたいだし、ゲームスタートだね♡」

ぎゅうぅっ……♡
ぎゅっ♡ぎゅっ♡ぎゅむっ♡♡

その言葉と共に、股間を踏みしめる足の圧が強まり……ぎゅっぎゅっとリズミカルに圧迫し始める。

「ぅっ……はぁっ……♡♡」

ビクンっとひと際大きく腰が跳ねるが、押さえつけるように踏まれてしまい、更に強い快感に襲われてしまう。
それでも尚情けなく抵抗するナニを踏みにじるように、ぎゅっ、ぎゅっ、と押しつぶされ……それに応じて、ぴゅるっ、ぴゅるっ、とポンプのように我慢汁が吐き出てしまう。

「んー、どうしたんだい?かるーく踏んだだけなのに、そんな苦しそうな声を上げて……まさか、この程度で負けてしまう訳ないよなぁ♡ゲームはまだ始まったばかり、もっと粘ってもらわないと困るよ……♡」

軽い煽り、なじり。それは毎日遊んだ時のように気軽な雰囲気をかもちだしているが……ドロッと溢れる吐息を隠し切れていない。
じわぁっ……と脳が犯される。

「そういや……あのビリヤードからだったね、こうして遊ぶようになったのは。あれからのゲームは九割方ボクの勝利、だけど……唯一賭けをしたあの一回、大事な勝負で負けちゃったのが心残りでね」

「……実を言うとボクはかなり根に持つタイプなのさ。記憶力がいいから、その時のことをずぅっと思い返してしまうんだ。君の撞いた玉が綺麗な放物線を描いた瞬間、それが何度も何度も頭に焼き付いて離れない」

「手のひらで包んで閉じ込めたはずの蝶が、手品のように指の隙間をすり抜けて、逃げてしまったあの瞬間を」

不気味なほど平坦な独白に、くくく、とひと笑いが添えられる。
そのセリフは、単なる懐古……のように思えて、思えない。ゾワリと全身が沸き上がる。

「で、今もまさに絶対絶命っていうシチュエーション……さ、今度はどんなマジックを見せてくれるのかな」

ぎゅむ、ぎゅむ、ぎゅむ……♡♡

と踏まれる度に、ゾワゾワと搔き立てられた身体中の熱が股間の一点に集まってきて、ドロドロとした欲望が際限なく溜め込まれる。

「ほら、しっかりしてよ、ボクは君の『友達』、友達にこんなことされるのはおかしいだろう?それに、負けたら奴隷になってしまうんだよ?抗わないとダメなんじゃないかな?」

言葉に同調するように、徐々に圧が高まっていく。不満をぶつけるような、そんな容赦ない責め。
踏まれる度に、ドクンと脈打ち普段より大きく、より大きく怒張していくが……足蹴は止まらない。

「君が望んだ関係が壊されてしまうんだよ?もっと必死にならなきゃ……ほら……もっと……♡」

「ぅっ……♡くぅっ……♡ぁぁっ……♡」

徐々に激しくなる足踏みに呻き声が漏れ出る。苦悶を吐いたつもりなのに、出るのは甘ったるい悶え声。
その悶えに同調するように、言葉の端が徐々に揺れ動いていって……

「あぁっ……♡ほら、もっと頑張ってよ……♡勝ちを掴もうと必死になってくれよ……♡♡ボクは、負けると分かってても必死に抗う勇敢な君を、欲望に負ける度胸すらない臆病な君を、友達を愛する純粋な君を……」

嗜虐と愉悦で軽く震えた声色に惹かれて、視線を上げてしまうと


「グチャグチャにしてやりたいんだ♡♡♡」


ひどく歪んだ笑顔。
それはご馳走を目の前にした獣のようで、妖艶に獲物を喰らおうとするジョロウグモのようで。

「あっ……あああぁっ……♡♡」

びゅっ……♡♡

脳が焼かれるほどの、衝撃。
少年期、初めて触れた過激なエロに、脳に熱湯を注がれたような感情を抱いた、あの感覚。性癖をグチャリと潰された感触ゆえに、前立腺の奥から粘っこい我慢汁が吐き出る。異常に興奮した証拠。

「おおっと、ごめんごめん、ついつい本音が溢れてしまったね……でも、こんな感情も受け入れるのが、友達ってモノだろう?」

少年漫画か何かにそう書いてあった気がするよ、なんて言葉を添えながらクククと笑う。

「それに、レディーの恥ずかしい顔を勝手に見るなんてダメじゃないか……これはいわゆる、セクハラ、ってやつかな?イけない先輩さんにはボクがお仕置きしてあげよう……♡」

「ぅあっ……♡や、めっ……♡♡うぅぅっ……♡♡」

「やめてあげないよ、たとえ先輩だとしても今日は歓迎会……ボクのワガママは全部聞いて貰うことになっているし、友達だとしてもかるーい余興の最中……それに水を差そう、なんて野暮なことは無しさ。水入らずの関係とも言うしね」

「というか……さっきから一滴も飲んでないね、そのカクテル。もしかして、ボクの奴隷になりたいからって、わざと負けようとしていたり……♡♡」

「……あぁ、それはとっても悲しいなぁ、抗う君を、友達の君を、ぐっちゃぐちゃにしてやりたいのに……もう負けてちゃ、つまらないや♡♡」

抗わないと、つまらないと思われてしまう。
わざと負けてしまったら……ダメだ、期待に応えねば……飲まないと、飲まないといけないのに……

むわっ……♡

少し傾けるだけで、濃密ミルクフェロモンを漂わせるドロ甘カクテルに脳を犯され

ぎゅむっ♡ぎゅっ♡ぎゅっ♡

容赦なく踏んづけてくる足が、怒張を更に、更に、追い込んで……腹と腰に力を入れて耐えることしか出来ない。前かがみになって、テーブルに突っ伏すように。

「うくっ……♡♡こ、のぉ……♡♡」

「あはぁ……♡もう、そんな甘ったるい声しか出せないんだ……♡♡それはそれは、ずいぶん酔ってしまったんだね……♡♡」

何とか視線を上げて抗議してやろうと思うものの、その視線はパツパツに張り詰めたワイシャツの隙間……ぎっちぎちに詰まった乳肉に吸い寄せられて、止まってしまう。
大玉スイカほど大きく膨れ上がって、ミルクをたっぷり溜め込んだおっぱい。俺の頭なんて簡単に挟み潰せそうなほどで、重量感たっぷりで、暴力的な圧を内包した……ギチギチな乳肉。

勝てば、あれを好きなようにっ……♡飲み干せれば、アレに……♡
あそこに抱き付いて、その甘ったるい香りで脳をぐずぐずに溶かしてっ……♡♡

そんな邪な思いが興奮を搔き立て、膨れ上がった欲望を足で踏み抑えられ、圧が高まる。

「うぅぅっっ……♡♡」

「ほーら、こんなに苦しそうにして……もう、限界だろう?」

優しい口調で心配するように言いつつ、胸を両手で挟むように持ち、押して……ワイシャツの形ごと、もっちりと縦長に変形する。そのパイズリ穴からは、乳肉が溢れんとしてる様子が見えた。
背中が覚えている極上の柔乳加減。それらがギッチギチに詰め込まれていて……糸ほどの隙間からは官能的な甘さが僅かに漂ってくる。

先ほど、こじ開けられた時の匂いが、フラッシュバックする。

あぁ、ダメだ、アレの全てを想像するだけで、脳が弾けてしまいそうになる。
今、あの穴にナニを突っ込んでしまったら……死んでしまう。ガクガクと腰を震わせて、出してはイけない命の雫すら搾られてしまう。絶頂と、最高の快楽を味わいながら。
顔を突っ込んでも死んでしまう。とろっとろで甘ったるいおっぱいフェロモンに脳内が支配されて、びゅくびゅくと全てを吐き出してしまって。

「いいんだよ、ほら、そのままさ……吐き出しちゃって楽になろうか」

パッと手が離され、だぷんっ……♡と余韻たっぷりに揺れ動く大きな乳房。微かに、たぽ……♡たぽ……♡と中身が揺れる音が聞こえた、気がした。

「また、嗅ぎたいだろう?この匂い……♡」

そして、指が一本、I字の谷間をさらけ出すスリットに近づいて、差し込まれる。
みち、みち、ねち、ねち……と音を立てながら。

「大丈夫、後処理もぜーんぶボクがやってあげるからさ……」

そして、もう一本、すっと指が、そのパイズリ穴の中へと差し込まれる。みちみちに詰まった乳肉を搔き分けるように。
その瞬間、ふわっ……と甘ったるい匂いが鼻先をくすぐった。

あぁ、ダメだ。ダメだ。こんな状況で……魔性の足で踏まれながら、あの籠った蒸気を嗅がされたら、絶対に出してしまう。
発情した犬のようし、踏み潰す圧に腰をカクカク押し付けながら、目の前のおっぱいをオカズにして、至高の射精を味わうことしか考えられなく……♡
容易に想像がつく結末。何とか、しないと

「ぁっ……♡うぅっ……♡」

「ふふふっ……ツラいなら自然体で身を委ねるのも大切。余計なこと、ぜーんぶ忘れて素直になっていいんだよ……♡」

分かっていても、二つの指を吞み込んだ谷間から目が離せない……いや、分かっているから、目が離せない。
ダメだ。自然体になったら、ダメだ。矜持も、意地も、ぜんぶ忘れたら、もう、堕ちるしか……♡
この、おっぱいで脳内が埋め尽くされ……

ぎゅっ、ぎゅっ……♡

「うぅぅっ……♡♡く、ぁ……♡」

軽く踏まれるだけで、抵抗も、力も全部奪われて……中身がたっぷり残ったグラスをテーブルにトン、と置いてしまう。
降参に等しい行為。それでも足は止まらない。

「ほら、ボクのおっぱいに釘付けになってもいいさ……♡ボクと一緒に遊んでるときも、ちょっと密着されたり、からかわれたりしたら、すぐに硬くして……ずっと吐き出したくてたまらなかったのだろう?」

「うっ……♡ふっ、くぅっ……♡」

バレ、てた。ずっと抱いていた浅ましい欲望すらも。
あの重い胸を感じながら、見ながら、彼女にからかわれつつ、こんな風にイジられてしまいたい、搦め取られてしまいたい、なんて願望も。

「そのまま、ちゃーんと見ててね……ボクのおっぱい、君がずぅっと意識していたおっぱい……♡」

二本の指を鉤にして、さらに引っ掛ける指を増やし、ぎっちぎちに閉じようとする隙間を両手でこじ開けられ、底無しの谷奥が顔を覗かせる。
もう、籠りすぎて、サウナ室のように蒸気がむわぁっと立ち込めていて……あの、空間に顔を突っ込みたい。鼻を埋めたい。そしたら、ブレーキをかける脳が壊れ、甘く疼く前立腺が一気に締め上がって……♡

「ボクは何でも許してあげるよ……♡みっちみちのおっぱいをじぃっと見つめて、この甘ったるい匂いで頭の中グチャグチャにしながら、びゅっ、びゅーっ♡って腰の奥のモノを全部吐き出すような大量射精……それがシたいのはお見通しさ……♡」

シたい。出し、たい。
両手がこじ開けられた谷間の芳香を肺いっぱいに吸いながら、この足の圧で全部吐き出しっ……て……
い、や、ダメだ、終わってしまう、全部。関係も、ゲームも、何もかも。

終わってしまう。

「その望み、叶えてあげるよ……♡君に最高のひと時をプレゼントしてあげよう……♡」

あぁ、ダメだ、ヤだ、嫌だ、欲しくない。こんなの貰ったら、幸せすぎておかしくなる。欲しくない、続いてほしい、欲しい、ヤだ、嫌だ。
両手でぱっくり開かれた谷間から漏れ出る白い蒸気が、こっちまで届いて、脳がドロリと溶け始める。
恐ろしくも恋しい。恋しい、甘ったるく薫る匂いが恋しい。肺いっぱいに吸い込んで、白く弾けたら……あぁ、あの谷間で蒸されて殺されるのなら、この後輩の甘ったるい罠でハメ殺されるなら、それでもっ

「だから……負けろっ♡♡♡」


ぱふっ……♡


そんな想いをよそに、空気ポンプで風を送るように両腕で乳肉を押し込まれた。
その狭間が一気に閉じ、行き場を失った甘ったるい蒸気が、直に届く。
温かな感触が届いた瞬間に、鼻腔に入り込む甘ったるい香り、メスの饐えた匂い、ミルクの甘さ、生っぽさ、バターを彷彿とさせるクセの強い薫り。白く染まる視界。
全てがクンっと嗅覚神経をつんざいて、脳天まで電撃が走り

ぎゅむっ、ぎゅぅぅ……♡♡

ビクンと痙攣した全身を、その足で強く、強く押さえつけられ、擦られてしまう。
その圧に甘えるように陰茎がビクンと怒張し、尿道を大きく広げさせ、睾丸の奥底から込み上げるようにっ……♡
乳フェロモンによってキュンキュンと硬く膨んだ前立腺が収縮して、我慢汁が尿道を滑り抜け……煮凝っていた精液がでっ……♡♡

「うぁっ……あ゛ぁぁぁぁっっ♡♡♡」

びゅーっっ♡♡びゅるるるっっ♡♡
びゅるるるっっ♡♡

断末魔のような呻き声と共に、ゼリー状の精液がとめどなく噴き出る、出る、出るっ、止まらない。
きゅぅぅっと全身が縮まり込んで、腰の奥の一点に全ての力が集中し、半固体のような粘っこい精液が詰まることなく吐き出てしまう。びゅるる、と。せまっ苦しいパンツの中であっても、その布すらも突き破る勢いで。
まるで淫魔の誘惑に負けた男が、魂の一滴まで吐き出すような……絶望的な射精感。最後に吐き捨てられた言葉も相まって、屈服感が全身を襲う。彼女に圧し潰されるような、陶酔してしまう屈服感。

「あーあ……♡♡出してしまったね。ボクの足に踏まれて、びゅーっ、びゅーって最高に気持ちいいお漏らし射精、キめちゃったね……♡♡どうやら、今回の賭けは君の負けのようだ……♡♡」

「じゃ、敗者にはたっぷりと罰を受けて貰おうか……♡♡♡脳細胞がぷちぷちと潰れていくような、とびっきりの敗北射精、じっくりと味わっていってね……♡♡♡」

敗北を決定づける残酷さと、最高の射精を愉しませようと気遣う優しさ、その二つの想いがたっぷり詰まった足踏み。リズミカルな動きは心臓を異常なほど高鳴らせ、全身をポンプにしてしまう。
精液を吐き出すだけのポンプに。

だぽんっ……♡だぷっ……♡♡

ぎゅっ♡♡ぎゅっ♡♡ぎゅっ♡♡

どぷっ♡♡どぷっ♡♡
どくっ♡♡どくっ♡♡どくっ♡♡

「あ゛ぁっ……♡♡ぅあぁっっ……♡♡♡」

休む間も与えぬよう、でっかい乳を見せつけるように揺らされ、思考をもっちりとすり潰される。一吐きする度に全身が生クリームに埋められたかのような甘い倦怠感に襲われ、身動きすらも取れない。
力が抜ければ射精も衰える……はずだが、柔らかい足が、脈動に合わせて、根元から先端へ踏み扱くため……衰えない。ドロドロの精液が詰まらないよう、丁寧に丁寧に。

「くくくっ……♡♡そんな発情したウサギのようにあまーく腰を震わせて、媚びた声でどれだけ鳴いても……そんなのじゃ、絶対に赦さないからね。ボクを本気にさせた罪は絶対に赦さない……♡♡その身と心をもって、永遠に償わせてあげるよ……♡♡」

だらしなく涎を垂らしてテーブルに突っ伏し、痙攣することしか出来なくなったところに、降ってきた甘ったるい嗤い声。
永遠に償わせる、そんな言葉すら引き出す愛憎が、全身の鳥肌が立ってしまうぐらい悍ましくて、恋しくて。
そんな言葉に惹かれてしまい、伏せていた顔を何とか上げて……しまった。

視界を埋め尽していた乳肉の圧。テーブルを挟んでるはずなのに、そのパイズリ穴はトンネルの入り口かと思うほど大きく錯覚する。そして、その上から垣間見えてしまった嗜虐的な笑顔。

「あ、あぁっ……♡♡そんな顔を見せてっ……♡♡ホ、ントに君はっ……♡♡ボクを煽るのがっ……♡♡っっ……♡♡♡」

降ってくる嬌声、愉悦。絶叫を押し殺したような息遣いは、強酸の涎を垂らして地面を焦がす化け物を彷彿とさせ……

──食べられる、なんていう有り得ない恐怖に襲われる。

「っふぅ……♡♡ほら、こんな極上のひと時を味わってるのに、何も出来ずにびゅーびゅーすることしか出来ない可哀想な君への、とびっきりのサービスさ……♡♡♡」

その恐れを搔き立てるように、彼女の両手が開けてはならない匣の中をもう一度こじ開け、真っ白い猛毒の靄がすぐ目の前に広がる。
さっきよりも、濃い。場の興奮に合わさって、上気した。
それを見ただけで、びゅるるっ、びゅるるっ、と精液が奥から奥から吐き出てしまう。

──や、めて

そんな思いが口から漏れ出したのかも分からなかったが

「くすっ……へぇ、まだそんな声を出せるんだ。分かっているかい?今の自分の姿が……」

その思いを掻き消すように、囁きが吹き込まれる。

「テーブルに体をだらんと預けながら、踏んでくる足の裏に甘えるように腰を押し付けて射精してる姿。これ以上なく、みっともなくて、惨めで……それでもまだ、矜持を守ろうとするのかな?」

その声色は冷淡で、どこか怒気を孕みつつも、何かを諦めさせようとしてくる。子を𠮟る親のように。

「はぁー……ボクが長らく誘っても、紳士ぶった毅然とした態度で対応してたクセに、ちょっとしたイタズラでからかって、どろっどろに煮詰まったミルクを飲ませて、踏んづけてみたら……こうなってしまった」

その台詞によって、ゾクリと心奥が狭く苦しい感覚に陥る。性欲を暴かれ、失望されてしまうという恐れていた事態。
腹の底から薄暗い感情が立ち上り、失敗した、という自己嫌悪が全身を支配されかけるが……

「幻滅したなぁ、もう、ボクのおっぱいフェロモンでぐずぐずに脳を溶かすことしか考えられないなんて……ほら、もっと浅ましい姿を見せな、ボクらは友達、友達の間柄に隠し事は禁止さ。最初に約束しただろう?全部教えてね、って」

友達、という言葉と共に、ぎゅっぎゅっと足で踏み、さらに痴態を晒けさせようとする……その行動が、倒錯的すぎて、狂った幸福感が湧き上がってしまう。
まるで、こんな姿も好ましいと言いかね無い様子に期待を抱いてしまい……

いや、そんなことは無い、我慢しないと……と、薄暗い感情が否定しようとするも

「くくくっ……あぁ、そんなに我慢しようとして……♡バカだなぁ、君は本当に愚かで臆病だねっ……♡♡♡」

愉悦に満ちた罵倒によって、いとも簡単に吹き消されてしまう。
薄暗い感情の代わりに、甘い猛毒を流し込まれ……支配が変わる。自己否定的な感情から、彼女へと。

ドクン、ドクン、と心臓が鳴り響く。

「浅ましい、幻滅した、なんて酷い言葉を吐き掛けられたとしても……」

ぽつり、ぽつり、と言葉を落としていく唇の

「ボクと君との間柄なら」

その端からこぼれる悦びに気が付いてしまい

「それが愛情の裏返しだなんて、言わなくても分かるはずなのに……♡♡♡」

ぐりっ……♡♡

「ぁ……♡♡」

声が漏れ出てしまう。全身を支配する甘い感覚が気持ち良すぎて。イジメるように踏みつける足の感触が優しすぎて。
みっともない姿すらなじって愛されてしまう……そんな関係があまりに幸せすぎて。

「あぁ、やっぱ図星なんだね。ホントに浅ましいよ、君は……♡♡」

ずいっと胸を張ってズリ穴をグッと近づけられ、足の圧もキツく𠮟るように更に高まり、どぷどぷと快楽が溢れ……なじる言葉と幸福を司る回路が、繋がってしまった。

「そんな浅ましさだって、ボクは愛してあげるのに……♡♡♡なじって、イジメて、壊して、受け入れてあげるのに……♡♡♡」

その言葉の湿度が段々と高くなり、それに同調するように、目の前のおっぱいの隙間……両手でこじ開けられたおっぱいトンネルの霧も濃くなって、ふわ……と甘い匂いが届いてしまう。
精液はまだ、どぷ、どぷ、と込み上げているのに、ギチ、ギチ、とワイシャツを張り詰めさせる豊満すぎる乳肉を見てるだけで……二度目の絶頂が近づいてきて……

「だから、みっともない姿も浅ましい姿も、ぜーんぶ包み隠さず、さらけ出したらいいさ……♡♡」

もう、本能が拒否してしまう。
嫌悪ではない。この先にある……あまりの幸福を、快楽を、屈服を、愛憎を、受け入れ切れないから。
受け入れたら、壊れてしまう。熱湯でグラスが割れるように、水圧でバケツがひしゃげるように。

「ほら、もう一回負けろ、浅ましく負けろっ、ボクの足で踏まれて屈服しろっ、出せっ、ボクのおっぱいに……」

迫りくるプレス機から逃れようと……あぁ、デッカい乳が、その奥で籠っている脳を白く染める劇薬が、こっちを吞み込もうとしていて……脈動が収まらないナニの奥にドクリと液が詰め込まれ……
あっ……ヤ、だ、ヤだ。また、あれがっ、またっ、あの匂いを嗅がされたらっ、もうっ

「負けちゃえっ♡♡♡」

ぱふっ……♡
むわぁっ……♡♡

パッと手が離され、もにゅんっ♡と瞬時に隙間が埋められ、あのおっぱいで籠った蒸気が一気に襲い来る。
甘ったるくて濃密なメスの香りが、嗅覚をバチっと弾けさせ、チカチカと白い火花が脳内で散りばめられ……

「あっ……♡あ゛ぁぁぁっっ♡♡♡♡」

びゅーっ♡♡♡びゅーっ♡♡
びゅるるるっ♡♡♡ぷしっ♡♡♡びゅーっ♡♡♡

射精が終わり切らない中での二度目の射精が、くるっ、クるっ……♡
濁流が川を吞み込むように、弱まりかけた射精を塗りつぶし、タマの奥からどろっどろの精液が溢れ、押し出し、尿道をさらに押し広げる。
どれだけ出してもキュンと締まる前立腺。まるで足裏の圧と、目の前の乳に恋してしまったかのように……キュンキュンが止まらなくて、脳髄から脊髄をなぞりあげるような刺激が走る。

「あははははっ♡♡♡♡どうだい?間髪入れずに二度も負けちゃった気分は……♡♡信じられないほど気持ちいいだろぉ……♡♡♡そうだと言ってくれよぉ……♡♡♡」

「っ……♡♡かはぁっ……♡♡♡っっ……♡♡♡」

大きな波が収まり、反射的に息を吸おうとして、また襲い来る甘ったるい毒。再び白く弾ける脳が捉えたのは……テーブルに押しつけられ、ぐにゅん、と形を変える双球。

『ボクのおっぱいからドキ、ドキ、って心臓の音が伝わってるの分かるかい……?』

フラッシュバックしてしまう。あの密着指導を。背中にぐにゅんと、あのもっちもちの胸を押し付けられて、いいように弄られた記憶が。
まるで、その続きを体験しているような錯覚に陥って、背中を柔らかい感覚に挟み潰され、無いはずの心臓の音が脈動と同期して……

「ぉっ♡♡ぃっ……♡♡〜〜〜〜っっ♡♡♡♡」

ぶびゅっ♡♡
びゅるるるっっ♡♡びゅーっ♡♡♡

吐き出る。精が、とめどなく。

「おいおい……♡♡こんなにも可愛い後輩が、君の素敵な友達が、プレゼントの感想が欲しいって懇願しているのに……おっぱいを見つめながら、だらしない呻き声をあげて、びゅーって腰を震わせるだけだなんて……♡♡♡ホントに酷い先輩だよ、君は……♡♡♡奴隷になって当然の存在だね……♡♡」

演技者が気を引くために冗談めかして深く悲しむような声色、呆れ、嘆き、嘲笑、侮蔑。その一つ一つが、被虐心を、罪悪感を、屈服感を搔き立て、剝き出しの心を握り込まれてしまう。
何かから逃げようと、本能が働いて体に力が籠るが……

『それが愛情の裏返しだなんて、言わなくても分かるはずなのに……♡♡♡』

「ぁっ……♡♡〜〜〜〜っっ♡♡♡♡」

びゅるるるっ♡♡
びゅーっっ♡♡♡びゅーっっ♡♡♡

先ほど植え付けられた囁きが、剝き身の心を柔らかくほぐしてしまう。なじるような言葉が奥底まで染みつくように。
もう現と夢の境目が分からなくて……まるで背中を胸で抑えつけられ、両耳の傍に口を近づけられ、視界も大きな胸で塞がれるかのように思えてしまう。
四方八方が大好きな彼女の、後輩の、友人の、おっぱいに囲まれて、知らないはずの触感に押し潰されて、幸せすぎてどうにかなっ……♡

「あはぁ……♡♡いいよ、今日は無礼講……♡♡ボクの言葉を無視しても特別に許してあげるよ……♡♡ほぉら、好きなだけ負けていいさ……♡♡♡ボクのおっぱいにガチ恋したトロ顔を晒して、ボクの足に屈服してビクビク震える……そんな情けない君の姿も大好きだからね……♡♡♡」

上下なんて無かったはずの関係は、『許し』という甘い猛毒を盛られ、女王に許しを乞う下僕へジワジワと変化してしまう。知らぬ間に、常識が塗り潰される。

「このまま奴隷にしてあげるから……♡♡♡君の脳みそも、心も、ぐじゅぐじゅ〜……ってすり潰してあげるよ……♡♡♡あはははっ♡♡♡」

比喩じゃ、ない。焼き焦げた脳が、刺された心が、それを知っている。
ホントに奴隷にされてしまう。あぁ、ぐじゃぐじゃにされて、彼女に囁かれるだけで多幸感溢れてしまう奴隷にっ、そんな幸せすぎる奴隷にっ……

「あ゛ぁっ……♡♡♡」

ビクン、と身体が一際跳ねてしまう。それは、危機を知らせる生存本能だったのかもしれないが……もう、悦びに打ち震えてるようにしか思えない。

「あはははっ♡♡♡ホントに良い反応するなぁ……♡♡♡」

その大きな笑いに従って、大きな胸が、だぽんっ……♡だぽんっ……♡と揺れ、テーブルに押しつけられ、ひしゃげて……まるで意志を持ってかのように、形を変える。
茹で餅のようにぺたんと貼り付くのに、テーブルから離れようと押し返して……いや、違う。呑み込もうとしているのだ。下に敷かれたのが胸より大きなテーブルで無ければ……そう、例えば俺の顔が敷かれてたら……

ぐにゅん、と呑み込まれて、窒息させられてしまう。甘い香りに閉じ込められ、抵抗すらも許されず。鼻と口をもっちりと埋められて……

また、大きく身体がビクンと跳ね、びゅるるっ、びゅるるっ、と大きな波を吐き出してしまう。足裏の感触に甘えながら。
その拷問が、あまりに魅力的で。

「はあぁっ……♡♡今度はボクのおっぱいを見ただけで軽い脳イキしちゃったかぁ……♡♡想像よりもずっといいや……♡♡君が惨めに伏しながらボクの与える幸福に身を沈めてる姿、色んな感情がない交ぜになった表情、全てがボクの琴線に触れるよ……ホントに君は、ボクのために生まれてきたんだね♡♡♡」

甘すぎる嘲笑と共に、彼女の手が自身の胸を這うように動き、視界に入り込む。
その手先は大きすぎる双球の山を着々と登っていき……指先はぷっくり膨れた先端へと到達した。
おそらく、乳首に。興奮で隆起した乳首に。

「はぁー……♡♡あー……♡♡♡想像以上だよ……♡♡ホントに君は、ボクの想像を越えていくっなぁっ……♡♡♡思わず苛立ってしまいそうだ……♡♡」

その指先は、周りをクルクルと回りなぞって、膨れ上がった頂上をピン、と弾く。
漏れ出る甘い吐息、まるでお風呂にでも入ったかのような、安楽の嬌声。
そして、親指と中指が周りごと抽出するように強く押し込みながらつまんで、無理やり広げ……乳首の一点がポチっと浮き出たせる。そして、爪でメスを入れるように、人差し指を鈎のように立て……

カリっ……♡
カリカリっ♡

「んくっ……♡♡あはぁっ……♡♡♡」

引っ搔く。張り付いたシールを剝がすかのように、カリカリと。
乳首があるだろう場所を、キツく、自らイジメて、体を軽く震わし、快楽に耽る様子を見て、羨ましくも見惚れて……

「っっ……♡♡♡」

その行為の淫靡さが、妄想を生み出す。
あまりに気持ち良さそうで、同じように弄られたら、どうなるのか、と思ってしまった。

あんな風にカリカリと、乳首を爪で引っ搔かれて……下腹部が疼くのだろう。
くすぐったいような快感に侵され、あまりのもどかしさに、くねくねと身を捩ってしまうのだろう。下腹部に力を込めて、前立腺がきゅぅと疼いて……固くてねばっこい我慢汁が、ぷくぅと吐き出て……♡

そこで快感を感じたことすら無い筈なのに、分かってしまう。
まるで感覚がリンクしたかのように。もう、乳首がじんじんと疼き始め……

あんな風に、搔かれたら、絶対に気持ちいい……カリッと爪で弾かれたら、電撃のような快感がっ……♡
搔かれたら……搔かれたいっ……♡

「あぁ……♡♡もしかして、ボクのおっぱいに嫉妬してるのかな?こんな風に乳首をカリカリ〜ってイジメられて、女の子のように喘がされてしまいたいって……♡♡もう、オナニーしてる指先にすら恋しちゃう卑しい奴隷くんになっちゃったのかな……♡♡」

それをまた見透かされ、ゾワリと忌避感が搔き立てられたところで

「……いいよ、後でたっぷりメスにしてあげるさ……♡♡」

許しを与えられる。しかも、ご褒美付きの。
後で、後であんな風にカリカリと、目にも止まらない早さで引っかかれるのを想像しただけでも……前立腺がキュンキュン疼いてしまう。
そうして、奥で分泌させられた我慢汁を抜き出すように

ぎゅむっぎゅむっ……♡♡
ぴゅっ♡♡ぴゅるっ……♡♡♡

的確に踏み抜かれる。
ぎゅぽっ、ぎゅぽっ、と空気ポンプを踏むように、固い我慢汁を絞り出され、下半身が甘蕩の湯に浸ったような快感に支配される。

「んんっ……♡♡♡足でもちゃんと感じるよ、惨めにびくびく震えて、ねばっこい我慢汁をぴゅっ、ぴゅっ……と吐き出してるのを……♡♡着実に、踏まれて悦ぶ奴隷へと近づいているのが……♡♡♡あぁ……さいっこうだなぁ……♡♡」

カリっ♡カリカリカリっ♡♡

先っぽをいじる指先が、その先端をこそぎ取らんとばかりに高速に、力強く、引っ搔き始めて……ドロリと溶けた声が溢れる。
すでに蕩けきった声は、とても艶っぽく、練乳にも負けない甘い香りが漂って……ミルク、を想像させられてしまった。
先程のカクテル、たっぷりのミルク……が詰まった胸。それを飲んだ俺の胸にも……とぷんと揺れる心地がして、波が始まってしまう。

「あー……♡きたきたっ……♡♡んっ……♡んんぅっ……♡♡」

カリカリカリっ♡♡ギュッ♡

ぴくんっと震え、大きな胸が小刻みに震え始めても、こちらから視線を一瞬たりとも外さずに、にぃっと見下ろし続けていて……
上気した頬、外された第一ボタンから漏れ出る熱気、震える肩、怯えるスライムのようにぷるぷる震える大きな胸、それをイジメる指先。
その振動に同調するように……快感の波が、敏感な粘膜の先端を激しく擦られてるような快感が、大きく、大きくなって……っ……♡

ぎゅぅぅぅ……♡♡♡

「んぅっ〜〜♡♡♡っっ〜〜〜……♡♡♡っはぁ〜……♡♡♡」

「まっ〜〜〜っっ♡♡♡〜〜〜♡♡」

どぷっ♡♡♡どくっ、どくっ、どくっ……♡♡

その瞬間、ぎゅっと足で強く踏まれ、同時にビクンっと身体を大きく震わせ、息すら出来ない強烈な快感に襲われる。身体の芯を自ら圧縮して潰すかのような、ドライな絶頂。加えて、射精を伴う絶頂。
二つの別の絶頂に苛まれ、彼女のように悦楽の声を吐くことが出来ない……全身に力を込め続けないと、バラバラになりそうでっ……♡

「あ〜……♡♡ふぅ……♡♡……あぁ、少々昂ぶりすぎてしまったね。まだまだ始まったばかりというのに、君が可愛いすぎて思わず致してしまったよ……♡♡日課になってしまってたから、ついつい……♡」

「ぁっ……♡♡♡ぉっ……♡♡」

まだ響くオーガズムに身体震わせているのに……君のせいだ、と言わんばかりにゲジゲジと踏まれ、もう、呻く事しかできない。

「さ、君のオナニーも一旦終わらせてあげようか、まだ奥に残っているだろう?」

オナニー、なんていうひと言で済ますのか。この行為を。矜恃も、尊厳も、グチャグチャにしたクセに……
そんな、今にもまどろみに溶けそうな反抗心すら

「最後までたぁっぷり気持ちよく負けさせてあげるよ……♡♡」

偽りの優しさで、丁寧に潰されてしまう。
それが、ひどく意地悪で……異常にやさしくて……

「ほーら、負けちゃえ負けちゃえ……♡♡ぐぃーって足に腰を押しつけて、びゅっ、びゅーっ……♡♡」

その声に従って残った力を振り絞り、腰を足裏に押し付ける。
根元から先端にかけて丁寧に踏み扱かれ、びゅるるっと塊のような精液が吐き出る。

「びゅーっ、びゅー……♡一回力抜いてー……はい、また、ぎゅーっ……♡びゅっ、びゅーっ……♡♡」

本能が残した力すらも利用され、精液が吐き出る、出る、出る。
睾丸の奥でへばりついてた精液すら、ブラシで掃除をしたかのように一滴残らず吐き出てきて……ひどく、気持ちいい。そんな爽快さすら感じる快感によって、この行為を強固に覚え込まされてしまう……♡

「うんうん、いい感じに負け癖が付いてるかもね……♡ボクの声に導かれて、気持ちいいのが引きずり出される感覚、忘れないよう、ちゃんと覚えておくんだよ……♡」

忘れちゃったら、もう一度してあげるから……
なんていうセリフが添えられた気がした。それが幻聴なのか、現実なのか、それすらも分からない。

「じゃ、最後にぎゅーって思い切り踏んであげるから、おっぱい揺れるのちゃんと見ながら腰に力入れてね」

目の前の大きな胸を、たぷんっ……♡と軽く揺らされ、スリットから垣間見える乳肉が曲がり、溢れ、戻る。たぽん、たぽん、と。
その光景だけで、ぴくんっと震えた腰を、足で強く押さえつけられ、どこかに隠し持ってた精液が勢いよく吐き出る。
もう、それを受け入れることしか……出来ずに……
されるがままに……♡

びゅるるっ……♡

「パブロフの犬なんて言葉があるけど……今の君はまさにそれかな?ボクのおっぱいが揺れるだけで尻尾をピクピク動かしちゃうおバカなワンちゃん……♡」

たゆんっ……♡
ぎゅむぅっ……♡
びゅるるっ……♡♡

「でも、それは仕方ないことさ……♡だって、ボクがそうなるように仕向けたんだからね……♡ボクだけのおっぱいマゾになってくれるよう、色んな策を高じてね……♡」

たゆんっ……♡たゆっ……♡
ぎゅっ……♡ぎゅっ……♡
びゅるる……♡♡

「君におっぱいを押し付けて、見せつけるように揺らして、ブラもちょっと透けやすいのにして、意識が吸い寄せられるように……ま、単に、君に見られるのは好きだから、ってのもあるけどね」

たゆんっ……♡むにっ……♡
ぎゅー……♡
びゅるる……♡♡

「ほーら、もっと揺らしてあげるよ……ボクが言うのもなんだけど、ホントに大きいよね、コレ……♡君の頭なんて、こうやってむぎゅ〜ってしたら、潰せてしまいそうだ……♡」

むぎゅっ♡♡ぎゅ〜っ……♡♡
ぎゅむぅっ……♡
びゅるるっっ……♡♡びゅーっ……♡

「ふふふっ、そんな顔しなくても君の期待にはちゃんと答えてあげるよ、すぐに、ね……ほら、腰に力入れて、ぎゅー……ぎゅーっ……」

だぽんっ……♡♡
むぎゅー……♡ぎゅー……♡♡
びゅるっ……♡びゅっ……♡ぴゅるっ……♡♡

「最後まで出してね、ぎゅーっ……これで一旦終わり、かな?」

びゅくっ……♡びゅっ……♡ぴくんっ……♡……♡

「うん、ちゃんと出し切ったみたいだね」

「っ……♡はぁっ……♡はぁっ……♡うぅ……」

長い長い射精がようやく終わり、息が漏れ出る。
もどかしさが尿道に残ること無く、異常なほど濃い精液を止めどなく放出する快楽。
それを引き起こした声、胸、言葉、甘み、匂い、感触……その全てが脳に焼き付いてしまって、離れない。

「まずはお疲れ様、これで晴れて君はボクの奴隷となった訳だ」

「とっても情けなくて……よかったよ」

「っ……♡」

倒錯した優しさ。奴隷になったことを喜ばしい出来事ように囁かれ、情けなさを受け入れられ、暖かい声色で褒められてしまい……却って、ゾクゾクが沸き立ってしまう。
完全に上下が決まってしまった取り返しのつかなさ、主従を決定つけた快楽の残渣、優しさの裏にあるのが……

「ふふふっ……君とボクの仲じゃないか」

「こんな姿を見て失望する訳ないなんて、分かりきってるだろう?」

ぬちゃり、と足が外される。
圧を失ったナニはビクンビクンと痙攣するものの、中身は何も出ない。
こんなにも惨めで、情けなくなっても、失望しない……その言葉は単なる優しさではなく、毒。
傷口に塗られるソレは、あまりにも効果が強すぎて、もはや猛毒だ。これが無いと、生きていけないぐらい中毒になってしまいそうで……

「むしろ……独り占めしたくなって……あぁぁっ、狂ってしまいそうだよっ……♡♡♡♡」

ゾクリと背中が粟立つ。突然、火傷しそうなほど熱くて煮えたぎった情欲を被せられ、体が震えてしまう。
悦びに震える体を何とか押さえつけ、チラリと顔を伺うと……彼女は三日月のように口を歪め、ドロリと濁った目で見下ろしていた。
キュンと前立腺が締まる。

「ぅぁ……♡♡」

「おっと……またレディーの恥ずかしい顔を勝手に見て……♡ダメじゃないかぁ……♡♡せっかく君が俯いていたから、仮面を外して一休みしてたのに……♡♡」

そのまま顔を軽く隠すように手で覆うが……スカスカな指の隙間から、狂気に満ちた瞳が変わらずこちらをジィっと見つめていた。
あぁ、そんな表情を向けないで欲しい。獰猛で、凶暴で、貪欲な、仮面の内側すらも魅せられ続けたら……もう、ゾクゾクが止まらなくて死んでしまう。

「さて、と……じゃ、約束通り、後処理をしてあげようか、このままじゃ席を立つことも出来ないだろうし」

指の隙間をくしゃりと潰し、手の仮面を外したら……そこには、平然と微笑みを向ける彼女が佇んでいた。まるで、手品のように。
異様な平静なはずなのに、心落ち着いてしまうのは……

「っと……かなり出したみたいだね、君の精液で結構濡れてしまったよ……こんなに屈服してくれたんだね……♡」

微かに、ぬちゃ……という音が耳に届き、トントンと靴を履く音が聞こえる。
そして、そのまま腰を上げて席を立ち……視界から顔と胸が消える。代わりに見えるのは、安産型にくびれ広がった腰つき。
……そのまま俺に座ってくれないだろうか。テーブルの上でぺしゃんと潰れる俺を、グリグリと磨り潰してくれたら……♡

そんなバカな考えも思い浮かぶが、もう自分を咎める気力すら出ない。

「あぁ、そんな風に顔を突っ伏していたら痛いだろう、イイものを君にあげるから、それを顔に敷いておくといいよ」

肩を叩かれたかと思うと、低い視界にだぽんっ♡♡と大きな胸が勢い良く落ちてくる。

「ほら、よーく見ていてね、この胸から奴隷になった君への特別なプレゼントを出してあげよう……♡」

デカくて、長い。そして柔らかくて、重い。そんな巨大な乳房はワイシャツを長く変形させつつ、たぽ……♡たぽ……♡と微かに揺れている。
もし、あんなのを、この頭に落されてしまったら……脳がぐちゃぐちゃになって廃人に……♡
そんな妄想が脳を支配し、視線が釘付けになり、乳房が上へと逃げていっても、顔を上げて追いかけてしまう。

「そうそう、その調子でよく見て……」

乳肉を見せつけるスリット。もっちゅんもっちゅんに肉がひしめき合ってる狭間は、明らかに先ほどより大きくなっていて……
そこでようやく、ボタンがもう一つ外されていたことに気がついた。

「んっ……」

乳肉の狭間に手がねじ込まれ、手首も呑まれ……ぐにゅん、ぐにゅん、横へ、縦へ、自由自在に変形する。
そして、もう片方の腕で下から支えるように持ち上げ、ワイシャツと下乳の間をまさぐり……

「えーと……ん、あったあった……」

そんな声と共に、呑み込まれていた腕がぐぷぷ……とゆっくり引き抜かれる。
ほんの数秒、飲まれてただけなのに、その腕からは乳白色の熱気が立ち込めていて……ふわっ、と甘い香りが漂ってくる。
その香りに惹かれ、更に視界が狭まったところで、ようやく手先まで引き抜かれ……ワイシャツと乳肉、その狭間からズルリと、レース柄があしらわれたナニカが出てくるのを、目に焼き付けてしまった。

「よっ……と、うん、キレイに引き抜けたかな」

黒色のブラジャー。それも、尋常じゃない大きさの。
表面はレース細工がなされて上品な出来になっているが……裏面はただデカ乳を収めるために、シンプルで分厚い造りになっている。その機能美が、想像を搔き立ててしまい、興奮が沸き立つ。
カップを嵌める窪みは、もはや片方だけで顔をすっぽりと覆い尽くしてしまうほど大きい。こんなモノで支えてたなんて……考えるだけで、脳が沸騰しそうになる。
そんな規格外のカップを収めるためのデカブラ……その脱ぎたてが、今も熱気を溢れさせるソレが、すぐそこに。

「はい、ボクのブラジャー、Lカップの特大ブラジャー……君の大好きなおっぱいフェロモンたっぷり染みついたブラジャーさ……♡まあ、ボクにとっては小さかったけど、君の顔を覆い込むにはこの程度で十分だろう……♡」

Lカップ。
L?Jよりも、Kよりも、上のLカップ?

「……あ、脱ぎ立てだから生暖かいけど、そのぐらいは我慢してね」

生暖かい、なんて問題じゃない。
こんなモノを顔に敷かれたら、温かさと、熱気と……

むわっ……♡

染みついた甘い匂いで脳がグチャグチャに熔けてしまう、なんて分かり切ってるはずなのに。
そんなことは知らずに、まるで無垢な優しさから、平然とその窪みを顔に被せるように向けてきて、視界が覆われ……ぁ、まっ……♡♡

ばふっっ……♡♡

「んふっ♡♡んんん〜〜っ……♡♡♡」

「ほら、敷き心地はいかがかな?このおっきな胸を支えてるだけあって、分厚くて、クッション性バツグンで、気持ちいいだろう……♡」

その裏地が顔に押しつけられた瞬間、途轍もなく濃厚な乳甘さが鼻腔を伝って全身へと駆け巡る。甘い甘い匂い。
先ほど嗅がされたおっぱいミスト……それを何度も何度も染み込ませた、甘ったるくて、ドロリとへばりつくような匂いが、脳を犯す。
吐き出し切ったはずのペニスから、びゅるり、と我慢汁の塊が勢いよく噴き出る。
しかも、そのクッション性の良さのせいで、染みついた甘々フェロモンを最大限集中できて……極上の心地でブラジャークッションを堪能してしまう。本能が、勝手に。

「あぁでも、結構使い込んだから、ボクの甘ったるい匂いが染み付いちゃってるかも……♡ずぅっと使ってたし……君と遊んでた時も、汗ばんで蒸れ蒸れになった胸を支え続けて、ボクのおっぱいミストをたっぷり吸ってたからね……♡」

染み付いてる、なんてレベルじゃない。
その籠ったフェロモンを全て吸収して濃縮したかのような、濃さ、甘さ。脳をふわりと埋めつくして、あっという間にドロリと熔かす猛毒の香り。それが無尽蔵に湧き出てっ……
ダメだ、逃げろ。
とナニカが警鐘を鳴らすが、ひと嗅ぎするだけで全身が弛緩してしまって、脊髄が悦びに打ち震えてしまう。それが、ひどく気持ちいい。

「ま、君はそんな匂いがだーい好きな変態おっぱいマゾだから、それもご褒美だろ……♡」

「っっ♡♡♡」

「あははっ♡こんな言葉で興奮するなら、何度でも罵倒してあげるよ……♡ばーか……♡」

あぁ、こんな甘すぎる罵倒を何度も味わされたら、もうダメになる。ばーか、なんていう雑な罵倒すらもご褒美になってしまう。後輩に罵倒されるのが大好きなマゾへと……♡あぁ、そうなったら、ひたすらっ……♡

「くくくっ……♡♡どうやらとても気に入ってくれたみたいだ……♡じゃ、しばらくはボクのブラジャーとラブラブしておいてね……♡大人しくしておくんだよ」

突っ伏す頭をクシャリと撫でられつつ、子どもにお留守番を任せるように優しく言い残される。
対等、なんてとこからは程遠い優しさが、滲みてしまう。

もう、力がろくに入らず、ふすー……とくぐもった呼吸を何度も繰り返す。何度も何度も。体中に細胞すべてを甘いフェロモンで埋め尽くすために。
入り込む甘い匂いは、着々と中毒を引き起こし、頭蓋の中身が蕩け……もう、しあわせでっ……♡

カタン、と机の下から音が鳴る。

「あはぁっ……♡こんなに濃いのを出して……ズボンからもこんなに沢山染み出してるし……そんなに気に入ってくれたんだね……ふふふっ……♡♡♡」

下で何かが蠢き、声が聞こえる。感じるはずのない甘い吐息が、ズボン越しに股間をくすぐる。
そこでようやく、彼女が足元に潜り込んだことに気がついた。

カチャ、カチャ、と腰の辺りをまさぐられ、ぐいっぐいっ……とズボンを引っ張られて、反射的に腰を浮かせてしまう。
ずるりとズボンを脱がされ、籠った熱気が逃げていくが、まだ熱い。ふすー……と、鼻から息を深く吸う。

「すぅー……んくっ……♡♡♡あぁ、君の匂いがとぉっても濃くて、ボクも頭がおかしくなっちゃいそうだよ……♡♡すぅーっ……♡♡♡」

下着越しでも確かに感じる吐息は、強酸の霧のように、触れた箇所を熱く爛れさせ……腰の奥がジワリと熱くなる。

……彼女は、何をしている?
精液をべったり漏らしたであろうパンツ。栗の花のエグい匂いしかしないはずなのに、そこに顔を近づけて、はしたなく鼻息を立てて、堪能するなんて……
そんな疑問が浮かぶも……すぐにブラジャーの濃厚な乳臭で塗り潰される。

「さて、おこぼれで味見といったところかな……♡あーん……♡」

声だけが微かに聞こえ、ちゅぷ……♡という、生暖かい感触がパンツ越しに押しつけられた。
ぷるんと弾力があって、柔らかい。その感触はふにゃりとしたペニスを入念に捉え、挟み込み

「じゅる……♡ちゅっ……♡ちゅるっ……♡じゅるるっ……♡♡」

啜られる。はしたない音を立てながら。布に染みついた精液を吸い出すように。
あのステディな彼女がからは想像も付かないような、下品な音。まるで、蓋に付いたアイスクリームを一つ残らず舐め取らんとするような、意地汚なさ。
その強欲が、俺の下着に向けられてるのだ。イケメンで、誰もが振り向く美貌を持ち、何でも出来る優秀な彼女が……へばりついた精液を一滴残らず吸い取ろうと……

「んふっ……♡ちゅぅ……♡ちゅっ、ちゅっ……♡じゅるるるっ……♡♡じゅぷっ……♡♡ぢゅっ……♡ぢゅぅっ……♡♡」

深く吸い付いて、キス、キス。布越しのディープキス。
ご馳走を目の前にして一心不乱に貪るように、ぷるんとした唇で何度も挟まれ、舌で丹念に味わされ、啜られる。
その快感で意識が下にも割かれ、我慢の隙間にブラジャーの甘く饐えた匂いがこれでもかと入り込み、脳がジクジクと蕩け始める。

「ぷはぁっ……♡ふふっ……♡♡じゃ、中も綺麗にしてあげよう……♡最初は周りから……ぢゅぅっ……♡じゅるっ……♡」

パンツすらも無理やり裏返され、内側についた精液すらも舐め取られる。
ドロリと溶けた吐息が秘部に触れ、熱が蝕んでいく。さらりとした髪がペニスをくすぐり、鼠径部も、下腹部も丁寧に舌が這う。吐き出した精液を一滴残らず吸い尽さんとする勢いで。

「くふっ……じゅるるっ……♡♡じゅるるる……♡♡ぢゅぅ……♡」

「お……♡ぉお……♡♡うぅぅ……♡」

その際に、ぷにぷにの頬や唇がペニスに当たり、くすぐったいような快楽に喘ぎ声が漏れだす。
もどかしい快感と、目の前を覆うブラジャー……甘い乳フェロモン。それらの要素は、一度吐き出しきったはずのナニを

「……♡♡」

もう一度大きくさせるのには、十分すぎた。先ほどよりも雄々しい勃起。芯から湧き立つ怒張。
彼女の顔は見えなかったが、目元を細めて熱っぽい視線でソレを見つめているのだと、容易に想像ついた。けれどもそれは、見上げる恍惚ではなく……

「はぁー……♡♡」

自ら身を捧げた憐れなご馳走を、慈しむ行為。
焼き爛れそうなほど熱い吐息がかかる。そして……

「ちゅっ……♡♡ちゅぷぷ……♡♡」

欲望で煮えたぎった口膣へと招き込まれる。じっくりと味わうように舌を絡められ、ゆっくりと丸呑み。すでに長い射精を味わった亀頭は敏感になっており、口の粘膜が擦り付けられる度に灼けるような快感が襲い掛かる。
そして乱れた呼吸が求めるのは……甘ったるい麻薬。ブラジャーに染み付いたメスの匂い。苛烈な快感もドロドロに溶けるような甘みに変容され、まどろんでいく。

「ぢゅぅ……♡♡んっ……♡♡」

ぐぐぐ……と際限なく膨張するペニスを、抑え込むように奥へと招かれ……喉の奥まで捩じ込まれてしまう。
反射的に腰を引こうにも、決して逃がさないと言わんばかりに絞られる。蛇の丸呑みのように、執念深く。ねちっこく。
四方八方を熱い粘膜で締め付けられ、熱い喉奥でじっくりと消化され、硬く張り詰めた怒張がふと緩み、股間がすぅっと空虚になって……

びゅるっ……♡
びゅるるっ……♡♡

「ぁっ……♡♡ぁぁッ……♡♡」

射精。
もはやそれは、蛇に呑まれ締められ、たまらず臓物を吐き散らしたかのような……そんな射精。
しかも、その吐き出し先は……

「……♡♡んくっ……んくっ……♡」

彼女の喉奥。
まるで排泄するかのように、座りながら、彼女の食道へと精液を流し込んでしまっている。
忌避が、僅かな理性が、それを止めようと踏ん張るが

「んっ……♡んっ……♡」

その本人に、もっと出せと言わんばかりに軽くピストンされ、裏筋にぐにゅりと添えられた肉厚の舌で精液を搔き出される。奥から手前へと。

びゅー♡♡
びゅるるっ……♡♡

「んぁっ……♡♡ぁあっ……♡♡」

止まらない。止められない。
先ほどのような激しい射精とはまた違った極上の快楽。寒い日にたくさん我慢した末の放尿、その快感を何倍も濃くしたような、安堵を伴う射精。
緩む全身。更に深くブラジャーのクッションへと顔が沈み込み……口と鼻に入り込む空気は、もう、フェロモンに毒されきっていた。アルコールも相まって、脳が蕩ける。

びゅー……♡びゅるるっ……♡♡
びゅるるっ……♡どぷっ、どぷっ、どぷっ……♡♡
びゅる……♡♡

長い長い射精。精嚢の中身を全て吐き出すために、全身が弛緩して、一本の管になって。
その精液を食道へと流し込んでしまう度に……倒錯的な優越と背徳に身を焦がされてしまう。
ぞく、ぞく、と後頭部から背中にかけて痺れが走る。バグを引き起こしそうなほど。

「……んく……んく……ぷはぁ♡」

長い射精も弱まり、慈しむようにきゅぅきゅぅと絞めつけられ、名残惜しそうに吐き出される。
開放されたペニスに、粘っこい吐息がかかる。満足を唸るような、そんな吐息。

「はぁー……♡くふふふっ……♡ホントはつまみ食い程度にするつもりだったけど……あまりに美味しそうな匂いをしてるからついつい……♡」

テーブルの下からシルクハットのようなツバ付き帽子を覗かせて、そのままニヤリとした顔を向けられる。
意地悪な奇術師、そんな言葉がこれ以上になく似合っている。

「ま、オードブルとしては……最高の出来だったよ♡」

オードブル……?ならメインは……
その言葉の違和を、鈍い頭が捉えるが……その以後を考えることができない。

「ふぅー……あ、ちょっと一口貰うね」

すくりと立ち上がった彼女は、流れるように中身の残ったグラスを手に取り、口を付ける。
乳白色の曇りが残った飲み口に合わせて。

「ぷはぁっ……あぁ、ホントに甘いなぁ……♡」

漏れ出る息すら、妖艶で。

「ささ、君も起きて起きて」

しなやかな指は、美しい白磁を想起させるほど滑らかで
その声は綺麗すぎて、何でも聞いてしまいそうで
逆らえない。

「ほら、あーん」

同じ帽子の陰に顔を寄せられ、曇った飲み口を向けられる。

「むせないように気を付けてね」

ほんの少し、彼女の匂いが残った飲み口。
中から甘ったるい匂いが薫ってきたが、拒否することすら思いつかず、そのまま受け入れ、ゴクリ、ゴクリ、と喉を鳴らす。

「うんうん、その調子……ドンドン飲んでね……♡」

ひと口、もうひと口と、甘ったるくて重厚で、蕩けたアルコールを感じるソレを喉へ流し込む。
吐き出したモノの代わりに充填するように、白濁の液体が身体を埋めていって、ぽわぁっと浮くような感覚に包まれて……

「ボクのあまーいロイヤルミルク……♡疲れた体に染み渡るだろう……♡」

甘い吐息が

「そうそう、視線はこーこ……♡ボクのおっぱい、ちゃんと目に焼き付けておくんだよ……♡これが君のご主人様だって、脳に刻み込んでね……♡」

揺れる大きな胸が

「ふふっ……♡目がトロンと溶けてきたね……♡実はこのカクテル、結構度数高いんだ……♡あまーい飲みやすさに騙されちゃったかな……?」

いじわるな声色が

「お、あとちょっとだね……」

沁みて

「じゃ、一気に傾けるよ」

溶けて、まどろんで

「うん……うん……はい、お疲れ様」

口元から離されたグラスに微かな寂しさを感じる。波打つように左右に揺れる視界、気持ちの良い高揚感、痺れ。

無意識に、イスの背もたれに身体を預け、だらんと力を抜く。

ぽわっと浮く脳。ぐらんと回り溶ける世界。肌に感じる絡み付くような熱気。蕩けて無くなっていく四肢。
はぁー……と深く吐いた息は、甘く侵されていた。

「さ、肩を貸してあげるから、そろそろ行こうじゃないか」

横から腕をくいっくいっと軽く引かれる。その表情は帽子のツバに隠されてしまって、よく見えない。

「まっ、まってぇ……」

袖を引く手を取らないよう気を付けて、呂律が回らない口で何とか言葉を紡ぐ。
恐ろしい期待が背中にべったりと貼り付く。

「ど、どぉにいくの……?」

分かっているはずなのに、分からない。
どこに行くかを、想像したくて、したくない。
この瞬間が愛おしすぎて。

そんな矛盾した感情でいっぱいになる。
自分でも理解しがたい本心。

「んー?どこに行くんだろうねぇ……」

彼女はねっとりとした声でぼかす。不安を、期待を煽るように、意地悪に言葉を濁す。

「まあ、そんなの……ちょっと考えたら分かるんじゃないかな?」

ぐい、ぐいっと腕を引かれる。先ほどよりも強く、楽しみを待ちきれない子供のように、強引に。
そして、イスからずり下ろされ、上体のバランスが崩れてしまい、倒れるっ……と思ったところで、スッと左脇に彼女の肩が差し込まれる。
そのまま持ち上げられそうになって……ふと、染みが広がったズボンの存在に気がつく。

「ま、まっへ……ズボンが……」

「ん……?あぁ、それならこの帽子で隠すといいよ、まあ誰も気にしないけど」

被っていた大きな帽子を渡される。前で持てば多少不自然とはいえ、シミを隠せるほど大きな……

──あれ、この帽子はどこから……?

鈍い頭が記憶を辿る。今日の彼女は出会った時からその色素が薄い鈍色の髪を……

ふわりと

香りがする。

すぐ側で揺れる髪が、首筋を擽る。
とても濃くて、心地よい香りが鼻腔を通り抜け……

ああ、そうだ、彼女は色素の薄い特徴的な髪を揺らし、大きな胸も揺らして、俺を狂わせていたはずだ。
今朝会った時だっていつも通りの格好だった。
ボウリングの時だって髪を軽く揺らして、美しいフォームでストライクを取っていた。ダーツの時も、その凜と締まった横顔に見惚れていた。
ビリヤードの時だって、店に入るや否や、キューを片手に取り、大きな胸を限界まで近づけ、愉しさ滲む表情で素振りをしてた。

それを遮る帽子なんて無かった。

その帽子を顔に近づける。
ふわりと漂う甘くて奥深い香り、どこかキノコを彷彿とさせるような、クセのある匂い。
彼女の匂い。

好きな匂い。

「ふふっ……その匂い、そんなに好きなのかな?」

「ぅ、ん……」

「あははっ、やっぱりそうなんだね……♡いいよ、これから毎日心ゆくまで嗅がせてあげようじゃないか……♡」

これから毎日、この匂いを……
毎日。

「……それでさ」

言葉を読み取ろうとした、その刹那

「ボクのことは、好き、なのかな?」

問い掛けが切り込まれる。

「ぇ……」

好き、か、だなんて……決まっている。

好き、なんて言葉で済ませたくないほど、想っている。

ずっと弄ばれたい。一緒に過ごしたい。からかわれたい。見てほしい。
キリッとしまったいつもの目を向けてほしい。微笑んでほしい。
ギラリとした狂気の目を向けてほしい。嘲笑ってほしい。

その手で心臓を掴んで、握ってほしい。
凄まじい膂力を秘めた体で、押し潰してほしい。ちっぽけな俺を潰してくれ。
その胸の中に顔を埋めて、ひたすら甘やかして欲しい。ひたすら嘲笑して欲しい。
隣で楽しそうにして欲しい、他愛ない時間を一緒に過ごして欲しい。

特別で、ありたい。
殺されてしまいそうなほど。刺されてしまいそうなほど。
刺されたくて、潰されたくて、逃げたくて。
捕まえられたくて、抱きしめられたくて、乱暴されたくて、愛されたくて、虐められたくて。

「ぁ……っ……」

巡る頭。思い出というフィルムの一コマ一コマが脳裏に浮かび、言葉が奥から溢れすぎて、つっかえる。

初対面の時には、もう惚れていた気がする。その仕草一つ一つに魅了されて。
一週間も経った時には、恋煩いになっていた。王子様を密かに想う魔女のように。
そして、ビリヤード、あれで狂わされてしまった。差し伸べられた手すら取れないほどの恋慕へと。陶酔へと。
友達として過ごした時間は甘美すぎて、留めようとしたたはずの想いは膨れ上がった。その想いが破裂しないよう、最高の舞台に少しでも長く居られるよう

先輩として、友達として、ひたすらひたすら演じて
幕が下りないよう、ひたすらひたすら逃げて

その赤い双眸が、こちらを射殺さんと見つめるようになっても
その黒い脚で、奴隷へと堕とされようとも
その白い乳房で、脳髄すら溶かされようとも

その想いを向けられ続けるのが、魂が震えて達しそうなほど悦ばしくて。

そんな唯一無二の人間から没落してしまうのがひたすら怖くて。

その悦楽を、もっと、もっと、自分だけを、と浅ましい本能が貪欲に

まだ、もっと、求められて、イジメられ


──チーン……


音が鳴る。どこか古臭い音。
ふと視線を上げると、エレベーターの目の前にいた。ギイギイと今にも軋みそうな。

「ふふっ……ま、答えはこの中で聞こうかな」

ジィー……とあらわになる狭い部屋。
それは見慣れない光景。エレベーターなんて、乗った記憶は……無い。この酒場には階段で降りてきたはずだ。無骨なビルの入口には、こんなモノ……無かった。
まるで夢の中特有のちぐはぐさで……ふと不安になって、彼女の顔を確認する。

「んー?……大丈夫だよ♡そんなに心配しなくても大丈夫さ……♡ボクはずっと君のすぐ側にいるよ……♡」

端正な顔は黒く塗り潰されておらず、むしろ恐ろしいほど鮮明に映り、瞳に焼き付く。
そして流れるように、チュッ、と頬に軽くキスをされる。そのあまりに甘美な感触と喜びが、これは夢じゃない……と伝えてくる。

「ほら、乗った乗った……ここからはお楽しみの時間だ……♡」

その中へと引き込まれる。動かない体を肩に乗せられ。
そしてボタンを押して、その狭い箱の中に閉じ込めようと……
手篭めにしようと、逃げないと

「まっ」

あぁ、ダメだ。
閉じ込められたら、ダメだ。
堕ちたらダメだ。

抵抗しないと。

「まっ、て」

俺は、ただの
何の価値もない
多数の一人に。

そうして、持っていた帽子をぱさりと落とし

「やっ、閉めなっ」

彼女から視線を外して、ジィー……と音を立ててゆっくり閉まる扉に伸ばした右手は

温かく湿った左手にパシリと囚われ

まるで社交ダンスを踊るように、力強く引かれ、ぐるんと反転して
むぎゅっと大きな胸に上から押されて、しがみついていた左腕がずり落ちそうになり、倒れそうになって、ほんの一瞬慌てたところで、背中に回された右腕で支えられ

ガクンと上向いた視界いっぱいは

「ホントに……強情だね、君は」

彼女の顔で埋め尽くされていた。
24/02/03 00:09更新 / よね、
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