1.6 kiss me
部屋をノックしてみる。
返事はないみたい。
「お邪魔します……」
知らない人の部屋はここまで緊張するなんて……。
うぅ、襲われないといいけど……。
荷物を踏まないように、床に散乱した荷物をよけながら進む。
(どんな人なのかな?)
硬貨をテーブルに置いて、男の人の顔を覗いてみることにした。
壁側を向いているから顔が見えない、どうしよう……。
(寝てるし、ちょっとくらいなら……)
アルは男の外套を掴み、腕をプルプルと震えさせながら寝返りをうたせようとする。
(お、おもい。もうちょっとだけ……!)
*
カインがまどろみから意識が呼びもどされると、部屋の中に違和感を感じた。
自分以外の誰かを感じ、外套を掴んでいる感覚を。
(誰だ?強盗か?)
ゆっくりと体の向きを変えようとする力に逆らわず、流れるままに身を任せる。
(向き合った瞬間に……!)
(お、おもい〜〜!あとちょっと!)
ガタン、と床を叩く音とともに、二つは重なった。
「……は?」
「」
カインに触っていた少女は勢い余って足を滑らせ、床に頭を打って失神。
反対にカインは年端もいかぬような少女に馬乗りに。
「えっ」
振り上げた腕は行き場を失い、宙をさまよっている。
床で失神した少女は目を回している。
エプロンははだけ、スカートは太ももまで捲れている。
「あら、カイン。あなたロリコンだったの?そう言ってくれればいいのに」
ドアの向こうには満足そうな笑顔を浮かべたエリが立っていた。
*
「あはは!あなたって面白いのね!」
高笑いをするエリをしり目に、カインはアルと呼ばれた少女を膝に乗せている。
アルは足をパタパタと動かしてとても満足そうにしている。
「で?宿泊客を笑い物に?」
アルの頭に顎をつけてだるそうに聞く。
「これおいしいよー!」
「いたいっ!」
フォークに刺さったウインナーをカインに食べてもらうため、アルは勢いよく掲げたが、勢いが良すぎて失速。三又のフォークの端が、カインの鼻に引っかかっている。
「あははは、もうだめ、許して?」
エリは腹を押えながら笑っている。
目には涙を浮かべ、止まらない様子だ。
「次なにがいい?」
アルがフォークを食材に向け、無邪気な笑顔で聞いている。
目はきらきらと輝いており、汚れを知らない少女のように。
「あ、あぁ、次はイモを……」
カインがそう言うとアルは元気良く返事をし、手ごろなイモを探し始める。
「で、だ。どういうことなの」
アルの頭を撫でながらエリに尋ねる。
「いやね、冗談で言ったお金を真に受けて渡してきたから返そうと思ったのよ」
目じりの涙をぬぐいながら、やっと落ち着いたエリが言う。
ひとしきり笑い終わったあとはエプロンの乱れたところを直し、髪を整えている。
「んで、この子がき━━あついっ!」
フォークに刺さったほくほくのイモはカインの頬を撫でるようにスライドし、右目のすぐ隣で停止。
否、とどまることをしらないのかぐりぐりと押しつけられている。
「あつっ!魔物ってみんなこうなの!?」
何とか口に誘導し、目下の脅威が取り払われたことを確認し、やっとの思いで言う。
「あなたが膝に乗せてるからでしょう?」
「だって、乗せないと泣きそうに……」
少し前を思い出す。
椅子に座るとアルは隣に立ち、にこにことしてカインを見つめてくる。
数分たつと笑顔が薄くなる。
更に数分たつと不安そうになり、洋服の裾を握り締めている。
更に数分すると目には涙を浮かべ、洋服がしわになるほどに握り締めたアルの姿が。
「あなた、アリスにうまく乗せられてるわね……」
アリス。
その言葉を聞いて、カインは納得がいったと言わんばかりに膝の上に座る少女を見つめた。
返事はないみたい。
「お邪魔します……」
知らない人の部屋はここまで緊張するなんて……。
うぅ、襲われないといいけど……。
荷物を踏まないように、床に散乱した荷物をよけながら進む。
(どんな人なのかな?)
硬貨をテーブルに置いて、男の人の顔を覗いてみることにした。
壁側を向いているから顔が見えない、どうしよう……。
(寝てるし、ちょっとくらいなら……)
アルは男の外套を掴み、腕をプルプルと震えさせながら寝返りをうたせようとする。
(お、おもい。もうちょっとだけ……!)
*
カインがまどろみから意識が呼びもどされると、部屋の中に違和感を感じた。
自分以外の誰かを感じ、外套を掴んでいる感覚を。
(誰だ?強盗か?)
ゆっくりと体の向きを変えようとする力に逆らわず、流れるままに身を任せる。
(向き合った瞬間に……!)
(お、おもい〜〜!あとちょっと!)
ガタン、と床を叩く音とともに、二つは重なった。
「……は?」
「」
カインに触っていた少女は勢い余って足を滑らせ、床に頭を打って失神。
反対にカインは年端もいかぬような少女に馬乗りに。
「えっ」
振り上げた腕は行き場を失い、宙をさまよっている。
床で失神した少女は目を回している。
エプロンははだけ、スカートは太ももまで捲れている。
「あら、カイン。あなたロリコンだったの?そう言ってくれればいいのに」
ドアの向こうには満足そうな笑顔を浮かべたエリが立っていた。
*
「あはは!あなたって面白いのね!」
高笑いをするエリをしり目に、カインはアルと呼ばれた少女を膝に乗せている。
アルは足をパタパタと動かしてとても満足そうにしている。
「で?宿泊客を笑い物に?」
アルの頭に顎をつけてだるそうに聞く。
「これおいしいよー!」
「いたいっ!」
フォークに刺さったウインナーをカインに食べてもらうため、アルは勢いよく掲げたが、勢いが良すぎて失速。三又のフォークの端が、カインの鼻に引っかかっている。
「あははは、もうだめ、許して?」
エリは腹を押えながら笑っている。
目には涙を浮かべ、止まらない様子だ。
「次なにがいい?」
アルがフォークを食材に向け、無邪気な笑顔で聞いている。
目はきらきらと輝いており、汚れを知らない少女のように。
「あ、あぁ、次はイモを……」
カインがそう言うとアルは元気良く返事をし、手ごろなイモを探し始める。
「で、だ。どういうことなの」
アルの頭を撫でながらエリに尋ねる。
「いやね、冗談で言ったお金を真に受けて渡してきたから返そうと思ったのよ」
目じりの涙をぬぐいながら、やっと落ち着いたエリが言う。
ひとしきり笑い終わったあとはエプロンの乱れたところを直し、髪を整えている。
「んで、この子がき━━あついっ!」
フォークに刺さったほくほくのイモはカインの頬を撫でるようにスライドし、右目のすぐ隣で停止。
否、とどまることをしらないのかぐりぐりと押しつけられている。
「あつっ!魔物ってみんなこうなの!?」
何とか口に誘導し、目下の脅威が取り払われたことを確認し、やっとの思いで言う。
「あなたが膝に乗せてるからでしょう?」
「だって、乗せないと泣きそうに……」
少し前を思い出す。
椅子に座るとアルは隣に立ち、にこにことしてカインを見つめてくる。
数分たつと笑顔が薄くなる。
更に数分たつと不安そうになり、洋服の裾を握り締めている。
更に数分すると目には涙を浮かべ、洋服がしわになるほどに握り締めたアルの姿が。
「あなた、アリスにうまく乗せられてるわね……」
アリス。
その言葉を聞いて、カインは納得がいったと言わんばかりに膝の上に座る少女を見つめた。
13/05/03 23:47更新 / つくね
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