連載小説
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疑心と事実
グナーがグレースと出会って交わってから一週間経った。
その間、二人は食事や睡眠や排泄などの時間を除けば常に交わり続けていた。
グナーもインキュバスになっている。
交わり始めたころはおっかなびっくりで、挿入した瞬間暴発してしまったこともあった。
今ではグレースを満足させることができるほど成長している。
しかし、バイコーンの欲や望みはそれだけでは終わらない。
彼女達にはさらなる悦びがあるのだ。



ある朝、グナーはグレースに、街に出て新たな嫁を得るように勧められた。
「自分から夫の浮気を勧めるとは随分なことだな……」
グナーはグレースの婿になったということで、今では砕けた口調で彼女に話している。
一方のグレースは、良家のスプモーニ家の娘のためか、出会ったときと変わらない口調でグナーと話していた。
「浮気ではございませぬ! ハーレムのためですわ!」
ぷっと頬を膨らませてグレースは反論する。
そして説明を始めた。
魔物娘は淫らであることが良いとされている。
これに加えてバイコーンは、自分の夫が多くの魔物と交わることでより肉欲にまみれて過ごす爛れた存在になることを望むのだ。
さらに、バイコーンはハーレムという形で多くの女達に最愛の夫の味を知らしめることが何よりの悦びなのである。
『そう言えば、初めて会ったときも、バイコーンはハーレムを積極的に作ろうとする、とグレースは言っていたな』
彼女の説明にグナーは納得したように頷いた。
「ですから……いかがですか、グナー様」
「グレース一人の相手でも辛いけど、それがグレースの望みなら、行ってくるよ」



こうしてグナーはその日の昼、第二第三の妻を探すために街にでることとなった。
そしてその日のうちにグナーに惹かれ、結婚することになったのがサキュバスのシンシア、ピクシーのミニオンだ。
結婚した当日にグナーはシンシアとミニオン、さらにグレースを加えて夜を共にした。
3人の魔物娘を同時に相手するのは少々難がある。
そこでグナーがシンシアかミニオン、どちらかとつながっている間はグレースがもう一方の相手をし、彼女がグナー好みの女になるように調教した。
4人は淫らに絡み合い、グレースもシンシアもミニオンもグナーの精を受けて白く染まるのであった……



「あんっ! あ、あ、ふわああ! ねぇグナー、いっぱい……ミニオンのお腹にいっぱいだして!」
今日も今日とてグナーはシンシアとミニオンと交わっていた。
グレースも加わりたがっていたのだが、彼女は所用で今は席を外している。
もう少しすれば遅れて交わりに参加するはずだ。
今は、2フィート(約60cm)ほどの身長になったミニオンがグナーに膝立ちの状態で跨って彼を銜えこみ、上下に腰を振っている。
「うふふ、ミニオンのキツキツおまんこ、気持ちいいかしら? 次はあたしにたっぷりと注いでね……ん、ちゅう……」
グナーの胸元ではシンシアが自分の秘裂を指でかき回しながら、彼の乳首にくちづけを落としたり舌を這わせたりしている。
上と下、両方から攻められてグナーの身体に絶頂が迫っていた。
「あっ!? グナーのおちんちん、またおっきくなってきたぁ! ふあっ、来るっ! グナーのせーえき、ミニオンの中に……ひゃう! ミニオンも、ミニオンもイッちゃううう!」
ミニオンの身体がグナーの上で痙攣し、膣が精をねだって収縮する。
すでに限界だった肉棒はどぷりと精を重力に逆らって小さな身体の中に吐き出した。
だがそれだけでは止まらない。
射精中の肉棒は収縮するミニオンの膣によって尿道に残っている一滴まで精液を搾り出された。
「ふふふ、一杯出したわね。さぁ、次はあたしの番よ」
シンシアが妖しげに笑いながら立ち上がった。
それに対してミニオンはピクシーらしく駄々をこねてしがみつく。
「いやーっ! もっとグナーとエッチしたいのぉ!」
「あらあら、順番、でしょう?」
ミニオンの駄々にシンシアは苦笑する。
グナーも二人のその様子を苦笑しながら見ていたが、ふと考えた。
『二人とも、交わりたいとか精液が欲しいとばかり言うな……』
何気なく思ったことだが、ふとそのことが急に怖くなった。
心臓を冷たい手で鷲掴みにされた気分だ。
『いや、二人ともそれ「しか」言わない。となると、俺の存在はなんなのだ?』
自分の精を吐き出す張り型でもあれば、彼女たちは満足するのではないだろうか?
そんな疑問が頭の中に沸き起こる。
一度考え出すととまらない。
「あ、あれれ? グナー、どうしたの?」
シンシア相手に駄々をこねていたミニオンが突然振り向いて訊ねた。
ミニオンが腰を上げる。
秘裂からちゅるんと、愛液と精液にまみれたグナーのモノが出てきたが、その性器は萎えていた。
「グナーのおちんちん、ちっちゃくなっちゃった……」
「あら、萎えてしまったの? 仕方ないわねぇ、ここはあたしのテクで……」
「……出ていってくれ」
彼の性器に口を寄せようとしたシンシアの動きがピタリと止まる。
グナーがうつむきながら、低い声で唸っていた。
「どうしたの、グナー。気持ちよくして欲しくないの?」
「頼むから出ていってくれ! 俺を一人にしてくれ!」
シンシアの言葉にグナーは叫んで拒絶した。
沸き起こった疑問が頭の中でぐるぐる回っている。
肉棒がそうなっているように、彼は淫らな気持ちから醒めてしまっていた。
今は一人になって気持ちを整理する時間が欲しい……
シンシアとミニオンは顔を見合わせる。
二人には無理やりグナーを犯すという手段もあったが、今回はグナーの言葉と気持ちに従うことにしたようだ。
そっとベッドから降り、静かに部屋から出ていった。
ガチャン
扉が締まる音がしたあと、静寂が寝室を包んだ。
グナーは頭を抱えた。
彼女たちが求めているのはあくまで精や性の快感で、自分ではないのではないだろうか?
そういう意味では、彼女たちも自分の故郷の人間と同じく、グナーという存在を求めていないのではないだろうか?
がちゃ……
扉が開く音がして寝室に光が差し込んだ。
カーペットの上で棒を突くような音が断続的に起こる。
誰かが部屋に入ってきたのだ。
こんな音を立てる者は一人しかいない。
「シンシアとミニオンを追い出したのですね……」
グレースだった。
静かな口調でグナーに語りかけてくる。
彼女の言葉には応えず、グナーは頭を抱えたまま疑問を投げかけた。
「グレース、お前にとって俺は何なのだ?」
「まぁ、急に何を……私にとって貴方は何者にも代えられない、愛しい夫ですわ。それは私だけではなく、シンシアやミニオンも同じはず……」
グナーの問いに少し驚いたグレースだったが、静かに答えた。
揺るぎのない、愛する男のための、表も裏もない答えだ。
その答えは疑わないが、グナーの心に沸き起こっている疑問は消えない。
「俺の精液だけでもあれば満足なんじゃないのか?」
「いいえ、そんなことはありませぬ」
「それならば……」
グナーは少し内容をかえ、また問いかけた。
「もし俺より先に別の男に出会っていたら、その男を夫とし、俺なんか見向きもしなかったんじゃないか?」
「それは……」
グレースは言いよどむ。
その男と出会えたからその男と交わり、一生をかけてその男と寄り添い、交わる……
幼馴染や人間のころから想いを寄せていたとか夫婦だったなど例外はあるが、それが魔物娘だ。
グナーの問いは、否定はできない。
「……しかし、貴方は運命的に私と出会い、こうして結ばれた……そして貴方にだけ尽くしている……」
だが、この言葉もまた事実である。
結ばれた男がグナーである以上、グレースもシンシアもミニオンも、グナーに一生尽くす。
他の男など見向きもしない。
グナーが彼女達と結ばれたのは、運命の引き合わせとしか言いようがない。
「それでは満足できないのですか? ……できないのでしょうね」
「お前に何が……っ!」
自分の気持ちを分かっているかのようにあっさりと言われたことに逆上し、グナーはグレースを睨んで声をあげようとした。
だがその声はすぐに消えてしまう。
グレースの表情はいつものようなとろけた顔ではなく、真剣そのものの表情だった。
さらに、出会った日の晩餐のときにみせた、あの気の毒そうな表情も混じっている。
いつもと違う表情のグレースが口を開いた。
「グナー様……明日、もう一度新たな妻をお探しなさい」
「は? なぜそんなことを……!」
突然の、今の真剣な話には合わない内容の発言を受け、意見にグナーは食ってかかろうとした。
だがグレースは真面目な表情を崩さずに続ける。
「今度は、趣向を変えるとよろしいでしょう。男と交わること以外のことも考え、生き甲斐を持っている種族など……」
「あ、ああ……」
グレースの考えは相変わらず読めなかったが、その真剣な表情にグナーは押される。
とりあえず彼は次の日、街に出ることにしたのであった。




翌日の昼、グナーは街をフラフラと歩いていた。
バイコーンを妻としている男は、バイコーンの魔力によってその精の匂いが濃く魅力的な物になり、未婚の魔物娘を引き寄せる。
シンシアもミニオンもそうしてグナーに惹かれた魔物娘だ。
だが、今回はそうは行かない。
『男と交わること以外のことも考え、生き甲斐を持っている種族を探しなさい』
グレースの言葉が脳裏にまたよぎる。
『ということは……どの種族だ?』
グナーは首を傾げた。
今でこそバイコーンとサキュバスとピクシーを妻に持つグナーだが、元は反魔物領の出身。
この世界にいる魔物娘の種族を全て覚えたわけではない。
故にグレースにああ言われても、どの種族を指すのかピンと来なかった。
『うーん、分からんなぁ……』
歩き疲れたグナーはベンチに腰を下ろして一息つく。
とそのとき、グナーの前を何かがふよふよと飛びながら過ぎていった。
はっとその通り過ぎたものをグナーは見た。
体の大きさ、背中の羽などは妖精と同じだが、妖精があまり身に付けないような、羽ペンと小さな竪琴を持っている。
おそらく、リャナンシーだ。
『そしてリャナンシーは確か……交わりの他に、芸術にも興味を示す魔物!』
頭の中で確認したグナーは立ち上がって彼女に声をかけようとした。
が、立ち上がっただけで声が出ない。
何と言って話しかければいいか分からなかったのだ。
それもそのはず、彼は自分から女性を誘ったりしたことがない。
シンシアもミニオンも、向こうの方から声をかけて来たのだ。
立ち上がっただけで何も言えなかったグナーはリャナンシーの背中を見て、口を軽く開けた状態で固まってしまった。
そのままリャナンシーは行ってしまうかと思ったが……
「……?」
視線に気づいたのだろうか、グナーの方を振り向いた。
「こ、こんにちは……」
なんとか勇気を振り絞って声を出す。
「はい〜、こんにちはぁ」
少し舌っ足らずな声でリャナンシーは挨拶を返す。
その鼻がひくひくと動き、そして……突然、とろけた笑みをグナーに向けた。
グナーの精の匂いを感じ取ったようだ。
つがいがいる魔物娘は夫一筋のため、このような反応はしない。
つまり、このリャナンシーは未婚だ。
「お兄さん、私に何か用ですか〜?」
リャナンシーが尋ねてくる。
「え、あ、えーっと……竪琴とペンを見て思ったんだけど、もしかして、詩をやるの?」
グナーの故郷にも吟遊詩人が旅で来ることがあった。
彼らは自分の作った詩を、その楽器を持って吟じ、人々に聴かせる。
また、その詩を紙に残すため、また詩を作るメモなどのために、ペンも持ち歩いているのだ。
ペンと竪琴を持っていた彼女は果たして……
「はい〜、私は詩を専門にするリャナンシーですぅ」
自分の専門範囲に触れてもらえたのが嬉しかったのだろう、リャナンシーの羽がパタパタと動く。
彼女はソフィと名乗った。
グナーも自分の名前を名乗る。
「ねぇねぇグナーさん、グナーさんはどんな人の詩が好きなの?」
「えっ!?」
グナーは答えに詰まった。
彼は詩を読むことはできたが、特に学んだ訳ではない。
よってお気に入りの詩人とかはいないのだ。
「じゃあ、自分が今まで作った詩は?」
「え、え〜っと……」
自分で作った詩も然り。
学んだ訳ではないから、故郷に来た吟遊詩人のように金を得られるようなレベルではない。
何も話せないグナーを見て、ソフィの笑顔が曇る。
「あっ、私、用事があるから行かないとぉ……グナーさん、またねぇ……」
「えっ、あ、ちょ……!」
グナーが引き止めようとするのも虚しく、ソフィは手を振って去っていってしまった。
魔物娘でも、ある程度は好みという物を持っている。
特に人間と魔物が共に暮らしている親魔物領では、いつ人間を襲えるか分からないという状況ではないため、魔物も選り好みすることがあるのだ。
今グナーが話したリャナンシーも、優れた芸術家・創作家に惹かれ、気に入った者と結ばれようとする。
そしてどうやらグナーは彼女の眼鏡には適わなかったらしい。
またね、と言ってくれた分、印象は最悪ではないのだろうが良くもなかったに違いない。
グナーは肩を落とした。
『こんなことだったら、故郷で詩の勉強をしておくんだったな……』
後悔の念を抱きながら、グナーはその場を去った。



「おい、そこの君、ちょっと待て」
グナーがソフィと別れてからしばらく経ったころ。
突然グナーは何者かに呼び止められた。
声の主を見てみる。
トカゲのような緑の鱗の尾や特徴的な耳を持ち、腰に短めの剣を2本佩いた魔物娘。
リザードマンだ。
「見かけない顔だね……何者?」
「あっ、えーっと……俺は少し前にこの街に来た、グナー。今はスプモーニ家の館の厄介になっている」
突然の詰問に驚きながらも、グナーは答える。
「ふむ、ならいい……」
呼び止めた時は鋭く威圧的な雰囲気を出していたが、すぐにリザードマンはその雰囲気を消し去り、温厚な物にする。
彼女は急にグナーを呼び止めたことを詫び、自分はこの街の自警団のルイーズと名乗った。
「ところで、君の腰に剣が下げられているけど……腕の方はどうなの?」
「いや、まぁ、そこそこ……」
グナーは苦笑しながら答えた。
少なくともここまでは一人で来たのだし、盗賊を撃破するくらいは造作もない。
「ほう……」
グナーの答えを聞いたルイーズの雰囲気がまた変わる。
顔が引き締まり、瞳の奥は闘志の炎が燃えていた。
強い者に挑みたいという戦士の雰囲気だ。
だが口からは舌を覗かせ、ぺろりとくちびるを舐めていた。
彼女もまた未婚で、グナーの精を感じ取ったらしい。
「ならば、君さえ良ければちょっと手合わせしてくれないかな?」
最近、慣れた仲間としか稽古が出来ていなかったため、手の内を知らない相手とやりたかったと彼女は言う。
ルイーズの誘いにグナーは大きく頷いて乗った。
リザードマンは自分を打ち負かした相手を夫とする。
つまりこのルイーズを打ち負かせば彼女を妻とし、ハーレムの一員に加えられるのだ。
こうして二人は街の自警団の稽古場に向かったのだった。



稽古場でグナーとルイーズは対峙していた。
グナーは片手剣とラウンドシールドを、ルイーズは二振りの剣を手に持っている。
なお、どちらの得物も刃が潰れている模造刀だ。
「では始めようか」
ルイーズの合図と共に二人は得物を構える。
グナーの構えを見てルイーズの目が鋭く細まった。
「君、それは……多人数向けの構えではないのか?」
「へ? 習った通りの構えをしているんだが……」
「……つまり君は、軍隊に所属したことがあったんだな? どこかは問わないが……階級は?」
構えを見ただけで軍に所属していたことを見抜くルイーズに驚きながら、グナーは答えた。
「いや、特に階級はない、一兵卒だったよ。3年の兵役を終えたら辞めたし……」
「その後は? 師匠は?」
「いや、特に……」
グナーがそう言った途端、ルイーズの雰囲気が変わった。
闘志と言うより、怒りに近いオーラが彼女を取り巻いている。
次の瞬間には、グナーは一気に間合いを詰められていた。
「ふざけるなぁ!」
怒声と共にルイーズの左剣が下から振り抜かれ、グナーの剣を弾き飛ばす。
慌ててグナーは盾で右剣の攻撃に備えたが、それよりも遥かに早く、ルイーズの右後ろ蹴りがグナーの身体を打ち抜いた。
「ぐはっ!」
グナーの身体は宙に浮き、壁に叩きつけられる。
そのままグナーの身体はうつぶせに崩れ落ちた。
「その程度で『腕にそこそこ自信がある』? リザードマンに闘う?」
はっきりと怒気を孕んだ声が上から浴びせられる。
意識こそはっきりしていたが腹部のダメージが抜けていないグナーは立ち上がることは愚か、顔すら上げられず、うずくまったままその罵声を受けた。
「私たちリザードマンは強い男を夫にするためにも、常に自分の腕を磨いている……その私たちに対して、軍でかじった程度の剣術で闘う? リザードマンをなめないで!」
意識がはっきりしている分、ルイーズが何を言っているか一字一句全て聞き取ることができた。
「う、うぐ……」
蹴りの痛みより、ルイーズの言葉の方が遥かに堪える。
グナーは呻き声を上げた。
「何、その腕で悔しがっているの? 悔しがるんならそれなりの修行を積んでからね」
弾き飛ばした剣を拾い、貸したグナーの盾をむしり取り、ルイーズは稽古場から去っていった。
「……」
グナーは稽古場の床にうずくまったままだった。
腹のダメージは完全ではないものの抜けてきており、もう立ち上がれるはずなのだが立ち上がらない。
彼の頭の中には、今ルイーズに言われたこと、今日のソフィのことがグルグルと回っている。
悔しがっているのか、とルイーズは聞いた。
悔しかった。
今までに感じたことがないほど悔しかった。
しかし、グナーにはそれが許されないらしい。
「悔しがるんならそれなりの修行を積んでからね」
ルイーズはそう言った。
『そうだ、俺は修行らしいことをしていなかった……!』
グナーは自分のことを振り返りながら、考える。
軍に義務で入隊し、それなりに稽古をしてそれなりの腕を身に付けたが、それ以上のことはしなかった。
剣だけではない。
詩に関しても彼は教会などに置いてあったりする物を読み、写したりこそしたが、自分から積極的に勉強することはなかった。
他の事に関してもそうだ。
確かに、グナーは自分が思っているとおり、万能であらゆる能力をそれなりに身に付けている。
しかし、あくまでも「それなり」。
どの能力も中途半端で誇れるようなものは何も持っていなかったのだ。
しかもそれは才能云々の問題ではない。
努力しなかったのが問題だ。
だから軍も教会も女性もどの人も、彼を求めようとはしなかったのだ。
それなのにグナーは自分が努力していないと言う事実から逃げ、みんなが自分を求めていないと人のせいにしていた。
『それに比べて他のみんなは……』
彼は故郷の人物を思い出す。
彼の家の隣に住んでいたブリアンは朝早くから起きて槍の稽古をしており、昼も夜も鍛練をしていた。
結果、彼は国の武術大会で準優勝まで上り詰め、国の衛兵に召抱えられた。
グナーが故郷を飛び出すころには妻も娶っていて、子どもも二人いたはずだ。
また、旅でふらりとグナーの村に立ち寄った吟遊詩人も、気ままな生活と言う様子ではなかった。
村中を駆け回って人から話を聞き、教会で本を読み、夜は一人で詩を考えていた。
彼は村娘の一人に惚れられ、村を発つ時にはその彼女を妻に迎えて共に去っていった。
他にも農夫のヘン、狩人のバルバ、村の神父……みんな何かしらを得意とし、それに対する努力を惜しんでいなかった。
だからこそ人に求められていた。
その『人に求められる』と言うことも、努力によって得た賜物だ。
であれば、努力をしていない自分が人に求められないのも当然と言える。
そして昨日からの悩みの正体も悟った。
なぜ、グレースの言うとおり『偶然出会ったから』で納得できなかったのか。
グレースは巡り合せで結ばれた魔物娘、シンシアとミニオンはグレースの魔力によって惹き寄せられた魔物娘……いずれも自分の努力や何らかの魅力で得た妻ではない。
『だから三人を、別に自分でなくてもいいのではないか、何に惹かれたんだと疑ってしまうわけだ』
今、グナーは自分が逃げていた悩みや課題を理解しそれに向き合った。
向き合えたのなら、やるべきことも自ずと本人の中で固まる。
「お、俺は……」
グナーは立ち上がってつぶやいた。
まだ少し腹のダメージが残っていたためか脚は少しおぼつかないが、それでも立ち上がった。
「俺は、変わるぞ……! 変わってやる……!」
よろけながらも彼は自分の脚でしっかりと稽古場の土を踏みしめながら、その場を後にし、スプモーニ家の館に戻ったのであった。
12/05/24 19:19更新 / 沈黙の天使
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■作者メッセージ
さて、バイコーンSSを進めた訳ですが……
「バイコーンSS」を名乗る割には今章はバイコーン要素が少なかったですね、申し訳ありません。
バイコーンがメインだということでシンシアやミニオンとの濡れ場をかなり短くライトにしたのですが……
やっぱり人数が増えると、キャラやそのエピソードが薄まってしまいますね……
だから私はハーレムSSは得意じゃないし、同じようにハーレムを書くのは苦手というSS書きさんも多いと思います(ハーレム自体が好きかどうかはともかく)
だからこそ!
ここに来て間もない投稿なのに、冒険ハーレム連載SSに手をつけるのはやめときなさいよ。

さて、今回で自分が逃げていた事に気付いたグナー!
ここから努力して見返すことが出来るのか!?
その結末は次の最終章で!
もちろん、バイコーンSSですからグレースとのエッチも出てきますよ!
お楽しみに(って言えるほどちゃんとかけているのかな……--;)

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