連載小説
[TOP][目次]
act26・絶叫!パワフル草野球2011 ダイジェスト1
【2回の裏2アウト】


ルシフェル
「ふんふんふ〜ん♪
 クビが飛ぶ〜♪
 打たせてくれなきゃボーナスもカット♪
 ふんふんふ〜ん♪
 空気読め〜♪」



アルヴァロス
(………………………クソ女め。)

ヒロ
(こ、これが…、魔王!?何だかイメージが…。)

アルヴァロス
(当たり前だ。もっともこのクソ女は、色んな顔を持っていやがるから性質が悪い…。公式設定の性格じゃないから、好き放題に生きて、魔界で好き勝手やって、俺たち部下にまで無茶振りするような迷惑この上ない女だ!)

ヒロ
(な、何て迷惑な…!!)

アルヴァロス
(俺にしたってそうだ。ハードな仕事の割りには安い給料で扱き使いやがる…。おい、同志(ロリコン)。あれをやるぞ…。この女、魔王の肩書きは伊達じゃないから生半可な球は通じないからな。)

ヒロ
(あ、あれをやるんですか!?)

アルヴァロス
(あれをやるぞ!魔球・草野球ボール1号を!!



さぁ、長いサイン交換が終わってアルヴァロス選手、セットポジション。
ルシフェル選手は、今シーズンのデータがまったくありません。
しかしご本人の談話によれば、スポーツは大体得意だ、とのこと。
一番好きなスポーツは女子テニス。
爽やかに汗を流しながら、ミニスカートが翻るたびに心が躍るそうです。

アケミ
「……何考えてんの、あいつは。」

まあまあ、アケミさん。
性癖というのは十人十色と申しまして、萌えのツボも十人十色なのですよ。
さぁ、右打席のルシフェル選手。
頑張ろう神戸、を合言葉に活躍したオリックス・ブルーウェーブ時代のイチロー選手を彷彿とさせる、独特の照準合わせから振り子の動作で素振りをする。
非常に柔らかく、鋭いスイングです。
アンパイア、試合再開を宣言します。
アルヴァロス選手、独特のアンダースローから……投げました!!!



アルヴァロス
「ひぃっさつ!!!魔球!!!草野球ボール1号!!!」


シュッ…


ブンッ(ボールが4つに増える)


ボッ(増えたボールが真っ赤に燃える)


パッ(すべてのボールが消える)



何だこれはぁー!!!
ボールが増えて、燃えて、消えたぁぁぁぁぁ!?
アケミさん、私は幻を見ているんでしょうか!?

アケミ
「プラズマです。」

プラズマです!!
まさかのプラズマです!!!



ルシフェル
「あはっ♪」


カキィーーーーーーーン!!!



打ったぁぁぁぁぁぁぁぁ!?
ルシフェル選手、アルヴァロス選手の魔球を打ち返したぁぁー!?
しかし、消える魔球をそのまま打ち返したせいか、打球まで消えてしまいました!!
物理法則を無視なんてレベルじゃありません。
スーパーチート大戦!!
実況でありながら、ワタクシ、そのような言葉でしかこの対戦を表現出来ません!!!



アルヴァロス
「クソ、打球はどこ行った!!!打球の音からして間違いなく長打だ!!!!頼むぞフレック、リオン、フレイヤ!!お前ら外野が頼みの綱だ!!!」

フレック
「任せろ……、と言いたいが、何で打球まで消えるんだ!!!」

リオン
「どっちだ、どこに言ったんだぁぁぁぁ!!!」
レオン
(あー、たぶんそっち?いや、あっちかも。もーいーや、お前頑張れ。)
リオン
「手伝ってよ、レオォォォン!!!」

フレイヤ
「バッターの身体の開き具合と音からして…、フレック!君の方向に打球は行ったと思うぞ!!」



チーム志雄外野手一同、打球を探して右往左往。
その間にルシフェル選手は悠々と一塁を蹴る!!
思いの外、足が速い!!

アケミ
「これ見よがしに乳を揺らして走っているのはムカ付きますね。」

アケミさん?
やけにルシフェル選手に辛辣ですね?

アケミ
「あ、あらそう?」




ヒロ
「まさかあの球を初球で打つなんて…。それにしても打球は一体…。」

アルヴァロス
「打球が見付からないことには手出しが出来な……ヒロ!?足元!!!」

ヒロ
「……へ?」

コロコロ…(←ボール)

ヒロ、アルヴァロス
「「や、やられた!!!!!」」



何と打球はキャッチャー前ゴロ!!!!
ヒロ選手慌ててボールを拾う!!
ルシフェル選手はすでに二塁ベースを蹴って三塁へぇー!!!



ヒロ
「この…、舐めるなぁぁぁぁ!!!!」


シュッ


ヒロ選手、サードへ投げる!!!
これは好送球。
強肩を活かして、正確な矢のような送球がクック選手のグラブに納まる!!
そのまま、タッチ……アウトォォォォー!!!!
これでスリーアウトチェンジです。
これは好プレー!!
サードという性質、そしてデカすぎる身体で目立ちます!!
クック=ケインズ選手、ヒロ=ハイル選手の好プレーであわやルシフェル選手のスリーベースヒットになるところでし………、おや?
クック選手、泣いています。
一体何があったのでしょうか…。



クック
「ちくしょう…、ちくしょうちくしょうちくしょぉぉぉぉぉ!!!!」

ルシフェル
「………わかるよ、クック。君の悔しさが。君の無念が。」

クック
「せっかく…、せっかく運良くタッチした時に推定Fカップの胸に触れたというのに……、何で俺はグローブをしたまま、しかも何の感触も残らないグローブの先で触ってしまったんだぁぁぁぁぁ!!!!俺というヤツは勝利に目が眩んで、何て愚かな選択を……。俺はもう駄目だ、こんな千載一遇のチャンスを逃すなんて人間じゃねえ!!!!」

ルシフェル
「……私も淫魔の類だからね。君の気持ちもわからないでもない。そして訂正させてくれ。私はこう見えても着痩せする方でね……、君の鑑定眼を否定するようで申し訳ないが…、私はG級なんだ。」

クック
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


―――――――――――――――――――――――――――――――――


【7回表2アウト】


ヒットで出塁したハインケル=ゼファー選手を三塁に置いて、打席には今日ノーヒットのリオン=ファウスト選手を迎えます。
チーム雷紅狼のピッチャーを攻め切れず、ここまで散発のヒットばかりのチーム志雄、ついに反撃の一点を目の前にしております。
そしてこの回からのゲスト解説者、沢木綾乃さんを迎えております。
よろしくお願いします。

綾乃
「よろしく。」

綾乃さんの目から見て、今日のリオン選手の状態をどう見ますか?

綾乃
「どう見るか…、と言われると困るな。私だって野球に詳しくはないんだし。まぁ、手元の資料を見ながらで良いなら…。リオン選手は9番打者にしておくには非常にもったいない能力を持っているようだが、どうやら速球に弱いらしいな。ネフィーもイチゴもそれがわかっているから、今日の彼には速球中心の組み立てで来ている。3打席目でようやく呼吸が合ってきたようだが、それでも内野の頭を越えることはない…。この打席も危ないかもしれないな。……っと、話をしている間に、もう2ストライクか。ああ、駄目だな。野球のわからない私でも、これくらいならわかるぞ。焦っているのはわかるが、振り回しちゃ駄目だ。」

そうですねぇ、綾乃さん。
さぁ、このまま終わってしまうのでしょうか。





リオン
(せっかく、ハインケルが出たというのに…。打てる気がしない…。)
レオン
(…悩むようなことかよ。)

リオン
(そう思うんだったら、君がやってみろよ!!)
レオン
(馬鹿、めんどくせえ。あのな、野球ってのは振り回すだけが攻撃じゃないんだぞ?)

リオン
(振り回すだけじゃない……、そうか!!)





さぁ、ネフェルティータ投手。
これでこの回を終えられるか。
セットポジションから、第三球……おーっと!!
三塁ランナーのハインケル選手、ホームスチール!!!




ハインケル
「お膳立てはしてやったぞ!!」

リオン
(感謝します、そして……。)
「これが今の僕に出来る最善策だ!!!!」



リオン選手、バントの構えだぁぁ!!!
ネフェルティータ投手、驚きの表情を隠せない!!!



コンッ



絶妙なバントがサードへと転がっていく!!
サードの二代目ロウガ選手、慌てて前進!
その間にハインケル選手はホームイン。
このままリオン選手がセーフになれば、1点が入ります。
ロウガ選手、ダイレクトキャッチでそのまま一塁へ送球!!
リオン選手、ヘッドスライディングで一塁に滑り込む!!!
送球とリオン選手。
一体早かったのはどっちだぁー!!!


審判
「セーフ!」


セーフです!
見事なセーフティーバントでハインケル選手生還!!!
4対2、ついにラッキーセブンの7回、チーム志雄に待望の1点が入りました!!
一塁上のリオン選手、手を振って歓声に応えます。
ネフェルティータ選手、完全に裏を掻かれてしまいました!!
さぁ、次のバッターは怖い怖い1番バッター、ウェールズ=ドライグ選手です。

……………………。

…………………。

………………。

審判
「フォアボール!」



この試合、最大の山場に入りました!!!
7回裏、9番リオン選手から始まった反撃は、1番ウェールズ選手のセンター前ヒット、2番ローゴールト選手の執念のレフト前ヒット、そして3番フレイヤ選手の内野安打でランナーのリオン選手が生還し4対3、1点差まで詰め寄ってきました!!
さらに4番クック選手がフォアボールで出塁し、ついに満塁です!!
尚ローゴールト選手は、レフト前ヒットを放った際にギックリ腰と左ふくらはぎの肉離れ、持病の親知らずが痛み出したためにこの回で交代になりました。
代走はキリア=ミーナ選手。
神速のランナーを置いて、5番・ファラ=アロンダイト選手を迎えます。

綾乃
「まさにリオン選手の内野安打が反撃の口火になったな。だが、次の打者はリオン選手よりも状態が悪い。今日は全打席凡退……、いや、全打席三振で終わっているファラ=アロンダイト選手か。上半身と下半身の状態がバラバラだ。これはスランプか…?いや、それにしても酷い。絶不調そのものじゃないか。」

その通りです。
手元の資料によりますと、チーム志雄の5番バッター、ファラ選手は今シーズン打率2割3分9厘、ホームラン25本という活躍でしたが、今日は完全に絶不調。
原因は昨晩風邪を抉らせたようで、今日の試合前の健康チェックでも38度の熱が出た状態でのプレイですが、本人の強い希望で指名打者での出場となっております。

綾乃
「まさに背水の陣…か。」





キリア
「ねー、満塁じゃあたしの足、活かせられないじゃーん!」

ネフェルティータ
(助かりました…。あの足に引っ掻き回される心配がなくなって…。)

イチゴ
(むふふふふ、しかも今日、良いところなしのこやつならピンチも凌げよう♪)

ネフェルティータ
(イチゴ先生、彼への初球は…?)

イチゴ
(インコース低めにフォークじゃ。ところでオヌシ、さっきからサイン出すたびに尻尾振るのはやめるのじゃ。振り幅で次の球種がバレてしまっておるの…、オヌシ気が付いておるかの?)

ネフェルティータ
「ちょ、え、ええええええ!?そんな訳……、うわ、本当に尻尾振ってる!?気が付いてなかった!!!は、恥ずかしい…。」




おや、ネフェルティータ選手。
尻尾を押さえて、蹲っています。
どうやら今頃、自身の癖に気が付いた模様です。

綾乃
「カズサのチームらしいね。みんな気が付いていたのに、ネフィーの仕草が可愛いから誰一人教えていなかったんだから。おや、あの集団は何だ?スケッチブックにものすごい勢いで、何かを描いているようだが…?」

ああ、アレはネフェルティータ熱心党の皆様です。
どんな些細なことも記録しようと党員総出で彼女のスケッチをしているのです。




《内野応援席》

ネヴィア
「…………ファラ、私には見ていることしか出来ません。あなたのために、祈ります…。」



―――――――――――――――――――――――――――――――――


【回想シーン】

ネヴィア
「ファラ、いくらなんでも無茶です!そんな高熱で……!!」

ファラ
「…………俺は………行く。こんな……熱程度で………寝ている訳には……いかぬ。」

ネヴィア
「無茶です!熱は38度も出ているのに……。」

ファラ
「………………ネヴィア。」

ネヴィア
「……その目は諦めていないのですね。昔からそうでした。あなたは一度口に出したことを決して曲げようとしない。私との約束を決して破ったことがない。そうでしたね…。では、せめて風邪薬を…。」

ファラ
「…………いらない。」

ネヴィア
「まだそんな我侭を…。」

ファラ
「もしも………、今日…、ホームランを…………打ったら……結婚してくれ。」








さぁ、カウントフルカウント。
状態が悪いにも関わらず、これまでファラ選手、5球もファールで粘っております。
肩で息をしているファラ選手。
一方、余裕を取り戻したネフェルティータ選手。
イチゴ選手のサインと、自らの尻尾を確認してセットポジション。
さぁ、これでピンチを凌げるのかー!



ファラ
(ここまでか……。ここまで……なのか…。)

ネヴィア
「ファラ!!!」

ファラ
(あれは……ネヴィア…。そうか…、応援に来てくれたのか…。)


ギリッ


ファラ
(まだだ。まだ……諦める訳にはいかない…!!)




ネフェルティータ選手、クイックモーションで足を上げ……投げた!!


シュッ……



ファラ
(この一打に……、この一振りに……、俺のすべてを…!!)

ネヴィア
「ファラァァー!!打って!!もしも……、もしもホームランを打てたら…。」




昔みたいに挟んであげるから!!!!




カキィィィィーン!!!!




打ったぁぁぁぁー!!!
ファラ=アロンダイト選手、今日の絶不調が嘘のようなスイングで強打ぁぁ!!
これは行ったか、これは行ったかぁぁぁ!!!
左中間に打球は飛んでいき……フェンス手前でワンバウンド。
後一伸びあれば、ホームランという打球でした。

綾乃
「おや?バウンドが高い…。実況、これは面白い結果になるかもしれないぞ。」

確かにバウンドが高いですね…?
この球場は今時珍しくフェンスが低い球場ですかr…………
は、入ったぁぁぁぁぁ!!!!
エンタイトル2ベースヒットです!!
2アウト満塁のチャンスで、ファラ=アロンダイト選手。
見事エンタイトル2ベースヒットで、ランナー2人を返して見事逆転!!!
4対5、ついにチーム志雄!!
3点差を、この回一挙逆転!!!
2塁上のファラ選手、ファンの大きな声援に手を振って応えます。
本日の絶不調を吹き飛ばす、見事な一打に割れんばかりの声援。
安堵したような笑顔が今日のすべてを物語っております!!!





《内野応援席》

ダークエンジェルA
「へー、今打ったのが君の将来の旦那?」

ダークエンジェルB
「ウソ、意外に渋い良い男じゃん。」

ネヴィア
「あら、ありがとうございます♪でも……、あの人を旦那様って呼ぶ日はもう少し遠いかもしれませんね。本編ではまだ再会すらしていませんし、何より今日はホームラン打ったら結婚しようって約束だったので、まだまだ恋人時代をエンジョイするつもりですよ♪」

ダークエンジェルB
「…ちょっと好みかも。摘み食いしても…。」

ネヴィア
「駄目です♪」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

ダークエンジェルB
「ご、ごめん。ちょっとした冗談……。」





打者一巡の攻撃で7回の表、ついに逆転しましたチーム志雄。
このまま逃げ切ることが出来るのでしょうか。
それとも更なるドラマが待っているのでしょうか!!
さぁ、場内アナウンスが響き渡り、ピッチャー交代が告げられます。
アルヴァロス選手、7回を無失点で投げ切ってついに降板です。

綾乃
「本来中継ぎだったのに、ロングリリーフで先発並みの働きだったな。来シーズンは先発に転向して、チームの更なる勝ち頭になってくれることを期待しよう。私は10勝は固いと思っているんだが?」

私は14勝か固いと思います。
特に魔球・草野球ボール1号は絶大な威力です。
その証拠に初回以降、ここぞという場面では必ず魔球が投げられています。
是非とも2号、3号と開発していただきたいものです。
さぁ、アルヴァロス選手交代です。
8回のマウンドに上がるのは……、やはり来ました!
七色の変化球を投げる男、アンブレイ=カルロス選手です。
やはり、チーム志雄は本気でした。
外道投手の異名を持つ男が、この決勝戦でも健在です!!!
右投げ右打ちの軟投派の投手、アンブレイ選手。
投げれない変化球はない、と豪語する通り、狙い球を絞らせない投球で、今シーズンの防御率を0,56という脅威の成績で、中継ぎとしてスクランブル登板をこなして参りました。

綾乃
「これは完全に抑えに来たようだな。手元の資料を見る限り、今シーズンの失点は自身が打たれたせいではないな。まさに恐るべき投手、と言えるだろう。だが、彼が外道ならチーム雷紅狼の監督、カズサはそれを上回る外道王だ。まさに悪と悪の化かし合いになることは予想される。私としては、どこまで互いを騙せるか、というところに注目しているよ。」

そうですねぇ、綾乃さん。
さぁ、投球練習も終わって、主審がゲーム再開を宣言したところで、本日の放送時間がなくなって参りました。
本日はこれにてお別れです。
解説にフラン軒女将のアケミさん、
そしてセラエノ学園臨時教師の沢木綾乃さんをお迎えしてお送りしました。
また次回の放送でお会いしましょう。
実況は私、宿利京祐でした。



11/06/03 00:20更新 / 宿利京祐
戻る 次へ

■作者メッセージ
6部構成で書きますと宣言しておいて、再び変更です。
7部構成になりました…。
あれ?
短くまとめる才能がないのが怨めしい…。

そんな訳で久し振りの学園更新と相成りました。
今回も前回に引き続き、野球放送をお送りしました。
ついに最強ゲスト軍団チーム志雄が一挙5点をもぎ取って逆転しました。
このまま終わってしまうのか。
それとも…。

では最後になりましたが
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
書きたいネタが多すぎる…。
そんなジレンマばかりしていますが、
これからも皆様に楽しんでいただける作品を
生み出していけるよう努力していきます。
それでは、また次回「ダイジェスト2」にてお会いしましょう^^。

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33