連載小説
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息抜き2 椿に響く4A-Gサウンド
いろは坂遠征ちょっと前の出来事



瞬「もうガスねぇな、もう四時か…。帰るか」


椿ラインの駐車場で
瞬は1人呟いた

瞬「はぁ…、ガソリン代がバカになんねぇなぁ…。これもロータリーの宿命かぁ」

瞬は呟きながら
FDへと乗り込み
真っ暗な道路へと
アクセルを開けた



―一つ目のヘアピン地点―



瞬「ふぁぁ…、ねむてぇ…。さっさと帰ろ」

瞬は眠気に耐えながら
愛車を飛ばしていた

ギャァァァァ!!

瞬「ん…?」

ウォォォォン!!

ギャァァ!!

瞬(…聞き間違いじゃねぇな)

瞬のFDを後ろからもの凄い勢いで追い上げる車が一台

瞬(このライトの感じ…、リトラクタブルか。ま〜たセツナかぁ?)

謎のヘッドライトは
FDのテールに張り付いたまま
ぴったりと着いてくる

瞬(会ったばっかの時の借りを返そうってか)

瞬「いいぜ。やってやるよ!」

瞬は追い上げる車を
セツナが決着をつけにきたのだと考えた
そして目の前のコーナーを
まだ半開の状態で抜ける

瞬(ん…?何かが違う…)

瞬は後ろを走る車に違和感を覚える

瞬(エンジン音がロータリーじゃない…?これは…4スロか…?そもそも追っかけてくる雰囲気がまったく違う!)

そして瞬は
ある一台の旧車を思い浮かべる

瞬「このエンジン音とリトラクタブル…、なんとなく察しがついた」

ヘッドライトは尚も着いてくる

瞬「上等だ、旧型だろうが手加減はナシだ!」

瞬は一気にアクセルを開ける
一気に加速するFD
それにあわせて加速しだす謎の車
だが、パワーに差があるのか
少なからず差が開く二台
だらだらと続く連続S字をハイスピードで突っ込む
そこで差が一気に縮まる

瞬(速い!こんな風に着いてきた奴、セツナ以来じゃねーか…!?)

そして、大きく回りこむ左コーナーで
瞬はドリフトをしながら
ガラス越しに後ろを走る謎の車をちらりと見る
特徴的な白と黒のツートンカラー
NA、そしてテンロクならではの独特な甲高いエンジンサウンド
コンパクトながらのスポーティーなボディ
バンパーにつけられた一対の黄色いフォグランプ
ちらりと見ただけでも
思い当たる車種は一台しかなかった

瞬「やっぱりハチロクか!このサウンドは4A-G以外ねーよな!」

ハチロクはまさにスッポンのように
ぴったりと張り付いている

瞬(離れねぇ…、どっかの漫画と被る状況だ…)

瞬は張り付いてくるハチロクに
とある漫画のパンダトレノを
思い浮かべる

瞬(しかもまるまるそっくりのパンダトレノときやがった…。唯一違うのが、なんちゃらとうふ店ってステッカーが無い事だけだな)

だらだらと続くヘアピンを抜け
二つ目のヘアピンに差し掛かる
そこでこのバトルは大きく動く

?「…」
瞬「んな!?」

その瞬間
後ろにいたはずのハチロクが
瞬のFDの真横にぴったりと並んでいたのである
それもヘアピンに突っ込んだ瞬間であったため
いきなりの事に
瞬はあっけなく道を譲る事しか出来なかった

瞬「なんなんだ…!」

立ち上がりながら先行していくハチロク
普通ならありえないラインからのパッシングに
瞬は驚きを隠せなかった

瞬(俺はあんなラインを知らない…、それにあんなハチロクはみた事がない…。だがあんなライン、地元でもできるかわかんねぇぞ…!なんなんだ!!)

前を走るハチロクを追うFD
勝負は後半へと突入する

瞬「クッソ!なんなんだあの走りは!」

先行するハチロクは
瞬が見てきたどの走り屋にも当てはまらない
独特の走りをしていた

瞬(見ているこっちが自分の走りを見失いそうだ)

ハチロクはまるで
川の水が流れるかのようにするすると
無駄なテールスライドも起こさずに
椿ラインの独特なコーナーを抜けていく

瞬(なんか…、藤原と乾を合わせたような奴だな。走りも綺麗で見ていて気持ちがいい、まるで吸い込まれるようだ…)

瞬「でも、こんな奴の後ろにいたら、こっちがリズム崩されて事故っちまう…!早くブチ抜かねぇと!」

二台はM字型のコーナーへと差し掛かる

瞬(行けるか!!)

瞬はわずかな隙間を使い
ハチロクのインへと躍り出る

瞬「このまま並べ!」

並んだまま連続コーナーを抜ける二台
そこで瞬は
驚くべきものを目にする

瞬「な!?人間の男!?」

瞬は抜かれた時から
ハチロクのドライバーが
魔物娘だと思っていた
地元で走っている走り屋を大体把握している瞬が
1度も見たことがないハチロクが
ありえないラインで
ありえないリズムで走っているのだ
そう思うのは当然だろう

瞬(お前どっから来たんだよ…。地元じゃないんだろ?なんでそこまで走れんだよ…!)

そして二台はM字の三つ目のコーナーに差し掛かる
その瞬間
なんとハチロクが
車体をぶつけない程度に幅寄せし
無理やり瞬のFDを後ろに押しとどめたのだ

瞬「ふざけんな…!」

それを避けた瞬は
FDのフロントを
イン側のコンクリートにぶつけてしまい
そのまま姿勢を崩し
スピンしてしまった
そして壁すれすれで
ギリギリ停止したのだった

瞬「何もかも無茶苦茶だ!!あのハチロク!!」

そして瞬は走り去っていくハチロクを見ながら
あることに気づく

瞬(そういや、あのドライバー、目が…、そうか!)

瞬が見たハチロクのドライバーの目は
深い赤色をしていたのだ
赤い目は
インキュバスになった男によく見られるものだった

瞬(そうか…、だからあそこまでの独特な走りを地元じゃない場所でもあそこまで…)

インキュバスになった男は
性欲と精力が上がり
魔物と交わるだけで生きる事ができ
個人差はあるが
高い能力得る事が出来るという

瞬(まさかインキュバスになった奴があそこまでヤバイとは…。あと、ナンバープレートには確か…、群馬…か…。まさか県まで同じとはな)

秋名のハチロク
瞬は頭の中で
この言葉を思い浮かべた

瞬(いつか…、また会うときが来るだろーな。その時は、この借りを必ず返す!絶対にな!!


瞬はそう胸に誓い
セツナが待つ
我が家へと向かったのだった―――




瞬(あ〜あ、フロントバンパーバキバキのボコボコ…。ただでさえガソリン代で金が無いのに、どうするよこれ…)
19/07/18 12:30更新 / 稲荷の伴侶
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■作者メッセージ
どうも、稲荷の伴侶です^^

この話はまんまフラグですw
この先、このハチロクがどのように登場するか
楽しみにしていてくださいネ^^

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