連載小説
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恐怖の交流戦
―日光 いろは坂―

そこに数十人の魔物の集団がたむろっている

アカオニ「さっき潰したヤツらはカスばっかだったナァ」
ウシオニ「あんなんで地元最速とかヌカしてんのかよ、ダセェ」

この集団はいかにも不良といった感じで
普通の人なら絶対に関わりたくないような雰囲気を醸し出している

オーガ「なんつー名前だっけか?」
アカオニ「あん?たしかぁ〜、エンペラー?」
オーガ「あ〜そうだ、ダセェ名前だよな!アハハハ!」
アオオニ「そんでアタイらに負けてさんざ嬲られてる時のあのカオ!たまらなかったぜェ!」

怪しげな会話を繰り広げながらも
地元最速を打ち破ったという言葉から
彼女達も相当の実力だと伺える

ウシオニ「そういやよォ、あいつら交流戦がどうとか言ってなかったか?」
アオオニ「確か言ってたな、んなこと」
ウシオニ「だよナァ。ならよォ、その交流戦の相手もアタシらで潰しちまおうぜ」
オーガ「ハハ!!そりゃーいい!ヤっちまおうぜ!」
アカオニ「そんじゃァ、アイツらもいっぺん締め上げて交流戦乗っ取ってやろうぜ」
ウシオニ「おっし!行こうぜー!」

その後、いろは坂には
男達の悲鳴と卑猥な水音が響き続けた…――――ー



―神奈川 とあるファミレス―

そこには、チーム『鶯』のメンバーが全員そろっていた

渉「いきなり呼び出してすまない、大事な話がある。」
セルフィ「次の交流戦の相手、エンペラーが負けたらしいよ」
一同「「何!?」」
渉「ついさっき連絡が来た、しかもそのエンペラーを負かした連中から交流戦の相手を自分達に変えろと伝えてきやがった」
優「おいおい」
瞬「いったいどういう連中なんだ?」
渉「詳しくはわからないが、魔物のレイプ魔集団の話があっただろ」
サリナ「ちょっと!まさか!」
渉「ああ、どうやらその集団らしい」
セツナ「な!?」
隆文「やべぇじゃねぇか、どうすんだよ」
渉「俺も出来れば受けたくなかった。だが、あいつ等、このバトル受けなければ直接神奈川に乗り込んで片っ端から走り屋を潰していくと言ってきた。だから、仕方なく受けるしかなかった」
優「卑怯な…!」
セツナ「ふざけるな!!」
エレナ「そんな奴等の相手して!なんかあったらどうすんだ!」
サリナ「NTRなんて本当に勘弁よ!!」
渉「俺達のせいで神奈川の走り屋達を危険に晒したくなかったんだ!」
セルフィ「それに、ただ受けたわけじゃないよ」
渉「しっかり条件を付けさせてもらった」
瞬「どんな条件だ?」
渉「俺達が勝ったら、潔く身を引いて、二度と走り屋を襲わない。そして、勝敗が決するまで相手に手出ししない。だ」
隆文「そんな奴等によくその条件が通ったな」
セルフィ「それだけ自信満々ってことだよ」
セツナ「相手が相手だ。勝つために何をしでかすかわからないぞ」
渉「それが一番の不安要素だ」
セツナ「それに、だ。エンペラーも地元最速だった。それを負かすとなると、速いぞ。」
渉「それもわかっている。でも、今まで何もしてなかったわけじゃない。意地でも勝つ」
セルフィ「それでも、何かあった時の為にいつでも逃げれるようにしておいてね」
サリナ「だったら今回は車の数を減らして、行った方がいいわね」
優「渉とセルフィは走るから二人とも自分の車を出して、俺達は一台に三人ずつ乗って二台で行こう」
渉「ああ、そうだな」
エレナ「誰の車を出すんだ?」
優「逃げる事になった時の為にも、パワーがあってオールマイティに対応できる方がいいな」
瞬「とりあえず俺のFDと優のR34でいいんじゃないか?」
隆文「そうだな。俺のワークスじゃ場所によっては分が悪過ぎるし、他のやつも個性が強すぎる」
優「残念だけど、俺のRはまだ調整が終わってないから出せない」
瞬「そうか、ならセツナ、お前のFDは出せるか?」
セツナ「大丈夫だ」
瞬「ならそれで行こう、皆それでいいか?」

そこにいる全員がうなずいた

セルフィ「向こうについたら、ドライバー、待機組、それぞれいつでも電話をかけられるようにしておいて。何かあったらすぐに電話をかけて、着信があったらそれは逃げる合図」
渉「遠征は四日後だ。明日の朝6時にまたここの駐車場に集まってくれ。皆、気をつけてくれよ」

全員がそれぞれ返事をし
それぞれがレジで支払いを済ませ
店を出て行った


渉「そういやお前のFD、フロントまわり傷だらけだけど大丈夫か?」
瞬「あ?ああ…、ちょっとぶつけただけだ」
渉「入れ込むのもわかるが、気をつけろよー」
瞬「わかってるよ…」



―四日後の夜―

―日光 いろは坂―

アカオニ「…来たか」

薄暗い駐車場にヘッドライトで地面を照らしながら
四台のチューニングカーが並んで入ってくる

ウシオニ「へぇ…、もっとうじゃうじゃ大勢で来るのかと思ったら、案外少ねェな」
アオオニ「クルマは大層ご立派だがなァ」
オーガ「なんだってイイよ、それよりさっさとブッ倒してヤッちまおうぜェ!ヒャハハ!」

それぞれのオーガ属(一部アラクネ族)が怪しげな会話をしてる中
鶯の一行は車を駐車スペースに止め
それぞれが車から降りる

アオオニ「お、イイ男じゃねぇか」
ウシオニ「チッ、女連れかよ」
オーガ「カンケーねェよ、犯しちまえばこっちのもんだ」

鶯の面々を見たオニ達は
品定めするような視線を送りながら言った

エレナ「胸糞わりぃ会話だぜ」
サリナ「あの視線も腹立つわね…」

自分の伴侶を狙う視線と会話に
鶯の魔物メンバーは早くもご立腹だ

渉「早速始めたいと思うのですが!リーダーはどなたですか!」
アカオニ「アタイだ!」

オニ達のリーダー格と思われる
アカオニが出てくる

渉「第一、第二。それぞれ1人代表を出して一本ずつで走ります。第一は三つ目の橋を先に通過したほうが勝ち、第二はこの明智平の前を先に通過したほうが勝ち。いいですか?」
アカオニ「んなこたァわかってんだ、さっさと始めるぞ!」
渉「第一と第二、どちらから始めますか?」
アカオニ「ちけぇから第一でいいだろ」
渉「では早速始めましょう」

渉によってバトルの内容が決まり
第一いろは坂のスタートラインへと
車が並べられる

―スタートライン―

瞬「相手はリーダーのアカオニか…、しかも車はインテRのDC5ときやがった」
セルフィ「あの性格のタイプの割には意外な車だね」
渉「でも雰囲気はかなり出てる、簡単には勝たせてはくれなそうだ」
サリナ「絶対勝ってよね!チームの男の貞操がかかってるんだから!」
アカオニ「なにくっちゃべってんだ!さっさと始めるぞ!」
瞬「あ、はい!勝てよ…渉」
渉「ああ!」
瞬「カウントいきます!!」

5!

ヴォン!!ヴォォン!!ヴォォォォン!!パパン!!

4!

アカオニ(ウッセェな…)
ウォォォォォォン!!プシュゥ!!

3!

渉(な!?ブローオフ!?)

2!

ヴォォォォォォ!!

1!

ウォォォォォォ!!


GO!!


ギャアァァァァァァ!!


大音量のスキール音とともに
二台の車が一斉に唸りをあげる
ハイパワー4WDである渉のインプレッサが先行する
その後を追うインテグラ
二台は一気に最初のストレートを駆け抜けていく

アカオニ(ケッ、パワーばっかご立派だナァ)
渉(FFなのになんてパワーとトラクションだよ)

最初の緩い連続コーナーに差し掛かる

パン!パパン!!

インプレッサはアクセルを抜いてブレーキングをして突っ込む
それに対し
インテグラはアクセルは抜ききらず
左足でブレーキングしながら突っ込む
それによってストレートでついた差が一気に縮まる

渉(すげぇ突っ込みだ…、パワーでついた差がほとんど無くなっちまった…)

そしてインプレッサの後ろにインテグラが張り付いたまま
連続コーナーを抜け
一つ目のヘアピンが迫る
先行するインプレッサがサイドを引いて
WRCさながらにターンしていく
続いてインテグラがサイドを引いてターンしていく
立ち上がりで一気にアクセルを開ける
だが、ミスファイアによって強化されたインプレッサに
インテグラが敵うはずもなく
グンと差が開く

渉(ミスファイアは入れて正解だったな、恐らく入れてなかったら相手のインテRと立ち上がりまでどっこいだっただろうな…)

そしてまた細かいコーナーの後に
ヘアピンが迫る
インテグラは左足ブレーキによって
細かいコーナーでは差を縮めるが
ヘアピンを曲がりきった後の立ち上がりで
差が開いてしまう

アカオニ(チッ…)

そのままの状態のままヘアピンを何個も抜けていく
バトルは四分の一を消化していく

―明智平 駐車場―

隆文「相手はFFだったな」
瞬「そうだな、しかもスタートの時にブローオフの音が聞こえた。ありゃターボだ」
サリナ「走り屋を潰してる割には車はちゃんとしてるのね」
優「VTECにターボって邪道じゃないの?」
セルフィ「その話はよく聞くけど、実際はトルクが太くなってパワーも上がるから意外と相性がいいんだよ。邪道って言ってる人は多分、VTECそのものの機構を気に入ってるからだと思うよ。まぁFFだと、大パワーはトラクション的に不向きなんだけどね」
優「へぇー、さすがチューナー」
セツナ「多分車だけじゃないな、ウデも相当だ。スタートの時のギアの繋ぎは本当に上手かった」
隆文「なぁんで実力はあんのに、あんなになっちまったんだかなぁ」
エレナ「同じオーガ属として恥ずかしいぜ、まったく」
優「何も無ければいいな…」
セルフィ「本当にね…、あたし不安でしょうがないよ…」

―中の茶屋地点―

渉「…」

状況は相変わらずだった
ヘアピンの直前では差が縮まり
ヘアピンを抜けた後の立ち上がりでは差が開くというのを
繰り返していた
渉は持ち前の集中力を発揮していた

アカオニ(クソが…、イライラするぜ…)

アカオニは後追いという状況が変わらないということと
抜けそうで抜けないもどかしさに
焦れ始めていた

アカオニ(アタイはテメェみてェな野郎は大嫌いなんだよォ…。パワーばっか鼻に掛けやがってよォ…)

また同じようにヘアピンを抜ける
と、思われた

アカオニ「オラァ!走り屋やってんならァ!パワーだけじゃネェって証明してみせろォ!!」

インプレッサが同じようにサイドで曲がるが
インテグラはワザとサイドを遅らせインプレッサのインに無理やり入り込んだ
そしてそのまま車体を押し付け
インプレッサを吹き飛ばしたのだ

渉「…!」
アカオニ「そのまま吹っ飛んじまえ!!」

インプレッサは姿勢を崩しそのまま壁に突っ込む…、かに思われた

アカオニ「な!?」
渉「フン…」

渉は無言のままアクセルを抜き
おもいっきりハンドルを切って
ふりっ返しのモーションをとった
丁度そのヘアピンと次のヘアピンの間が短く
連続コーナーのようになっていたのだ
渉はそのまま何事も無かったかのように
ヘアピンを抜けていく
一方インテグラは自業自得にも
無理やりぶつけにいった為
姿勢を崩し
大幅に失速してしまった

アカオニ「ク…クッソォォォォ!!」

最早追い着くのは不可能に近かった
渉のウリは何をされても動じない
もの凄い集中力なのだ
一度集中してしまえば
大きなミスはほぼ無く
軽くぶつけられようが
さらりと立て直してしまうのだ
さらに、両者実力が拮抗しているとなると
差を縮めるのは難しい
渉が大きくミスをすれば話は変わるが
集中してしまった渉にミスはほとんど無いのだ

渉「…呆気ないな」

渉は大きくついた差をそのままに留めながら
ゴールである三つ目の橋を難なく通過したのだった


第一いろは坂の一本勝負は


渉のあっけないブッちぎりで


勝負を決したのだった


残るは第二いろは坂の一本勝負のみとなった―――



15/02/13 20:31更新 / 稲荷の伴侶
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■作者メッセージ
お久しぶりです、稲荷の伴侶です。

なかなかネタが無い…。

やっぱ走り屋をSSにするのは難しい…。

ということで、まぁがんばってはいきます^^

次回

息抜き2 椿に響く4A-Gサウンド

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