私は人ではない。
では何者なのか。
その答えを、私は知っている。
だが、それゆえに答えに窮する。
私は人ではない。
だが、決まった種族を持たない。

『我々』はキマイラ。
一つの体に複数の種族を保有する存在。

私は何時生まれたのか。
その記憶は定かではないが、『山羊』は言う。
古の魔術師により合成されたのだろうと。
合成とは、信じがたい話だ。
否、信じることを拒みたい話だ。
何故ならば、私がかつて敗れ、その様な所業を甘んじて受けたということに他ならない。

私は『竜』。
この身に生える翼、左腕の頭部、そして何より万物を焼き尽くす炎。
『我々』の中に多くの特徴を残す存在。
かつての記憶はないが、誇り高く生きたであろう事実は魂に刻まれている。
故に。
私は強く気高く在ろう。
この身に宿るすべての力を、従えて。

む。
不満か？




■○■○■○■○■○■




不満に決まっておろうが、『竜』よ。
何故、ヌシらが斯様なまでに安定しておると思っているのだ。
ワシが居るからじゃろう。
このワシ、『山羊』が４種もの魔力を安定させておるがゆえに、本来合わさらぬはずの異なる魔力を統合しておるのじゃろうが。

確かに。
『獅子』たる其方の強靭な生命力。
『蛇』たる其方の永遠性。
それらに加え、『竜』たる其方の他に類を見ない強靭な肉体あってこその事でもあろう。

故に、誰が、ではない。
『ワシら』全てが、『ワシら』なのじゃ。

知恵や知識であるならば、ワシが扱おう。
争いならば『竜』が、統治するのであれば『獅子』が合うやもしれん。
おなごらしさであればやはり『蛇』かもしれんがのぉ。

む、異論があるのじゃな？




■○■○■○■○■○■




あるに、決まっているだろうが。
オレは統治なんざ趣味じゃねえよ。
確かに俺はかつて、獣の、あるいは同族の王であったかもしれねぇ。

だがなぁ。
王である前に、一匹の獣だ。
そのオレを差し置いて、『竜』が争いに向いている？
はっ、笑わせるな。
肉体の強さ頼みで技も戦いの工夫もない、能無しのトカゲと同じにするな。

誇り？
そんなモノは後からついてくる。
強ければなぁ。
ついでによえぇ連中を引き連れるかも知れねぇが、それもまた強さあってのことだ。
弱いやつに誇りなんざ無意味だ。

強さが全て、と言いたいところだが。
『山羊』のせいで、そうとも言ってられねぇのは理解出来ちまっている。
納得はしないがな。
だが、『俺ら』にとって強さってのが一番重要だってのは、わかるだろ？

あ？
てめぇは文句あるのかよ。
『蛇』よぉ。




■○■○■○■○■○■




あるに決まっているわよ、まったく。
『竜』も『山羊』も『獅子』も、今の『私たち』がどうなっているのか、わかっているでしょう？
新しい魔王になってから、『私たち』は変わったのよ。
本質は変わらないかもしれないけれど、在り方は変わったわ。

私たちは、女の子になったのだから。

綺麗に着飾るのもいいじゃない。
強さも、知識もそれはそれでいいと思うわ。
誇りがあってもいいわ。
でも、女らしさが無くちゃ意味ないでしょ。

この体。
角は『山羊』だし、体毛は『獅子』。
私らしさなんて肌の色と尻尾ぐらいじゃない。
髪の長さ？
獅子辺りが短く切りそうだから、いつまでこの長さを保っていられるか分かったものじゃないけれど。

邪魔だって言うんでしょ？
はいはい、切られるのは嫌だから、こうやって紐で括っていればいいんでしょ。
え、なに？
『竜』の貴女が髪型にこだわるなんて珍しいわね。
……え、それ、本気？
いや、鬣（たてがみ）じゃないから、逆立てるのは、ん〜。

『山羊』、そのアイディアが良いと思うわ。
髪型はそれぞれが体の主導権を握った時に変えればいいってことで。
た・だ・し、切るのは無しよ。
わかった？
特に、『獅子』！
髪は女の命って言うぐらいなんだから、切ったら許さないわよ！
それに、長いってのは私みたいで良いじゃない。
私は長い髪、好きよ？
こうやって束ねた髪を手に取ってると、妹が出来たみたいで愛らしいじゃない？




■○■○■○■○■○■




ふむ。
髪型か。
『蛇』は後ろ髪を一つで括るのだな。
では私は、後頭部に結い上げて丸めておこう。
む、纏まらない。

なるほど、串か。
東の方では髪を纏めるのにそのようなものを使うのだな。
では、私は……串が無い。
難しいぞ、これは。

……やっと終わった。
『蛇』、髪型は何故ここまで難しいのだ。
なに？
元々器用でない私には向いていないだと？
くっ、『山羊』も『獅子』も、同じ意見だというのか。
ならばこのような髪……、駄目なのか、切っては。

むぅ。
ならば、その様にしよう。




■○■○■○■○■○■




やれやれ。
ブローチを買うまでは大人しくしておるのじゃぞ、『竜』よ。
さてはて、ワシはどうしようかのぉ。
この身は可愛らしさには少々欠けるところがあるのじゃが、そこは工夫するしかないかのぉ。

括る個所は２か所にして、括る位置を高くして。
膨らみがあったほうが愛らしいからのぉ、ボリューム上げるために括り方を変えて。
ふむ、良い出来じゃ。
ふんわりツインテールとでも名づけようかのぉ？

くくっ。
次はヌシの番じゃ。
ワシらも言っておるが、切るでないぞ？




■○■○■○■○■○■




ちっ、わーったよ。
つっても、俺は『竜』みたいに不器用じゃないから、凝った方法で行くぞ。

どうだ？
『山羊』のやり方を見て参考にした。
頭に二つ、編み込んだ髪を束ねておいて、耳の後ろに添える。
耳の位置より後ろだけどよぉ、これくらいなら邪魔にならないしなぁ。
あははっ、くやしいか、『竜』。
おまえもたまには誇りだとか言ってないで、練習くらいしておけよなぁ。

……む。
女らしさはいらねぇわけじゃないけどよぉ。
『山羊』も『蛇』も、それは思い込みが激しすぎだ。
オレが女らしさに目覚めるなんざ、ねぇよ。




■○■○■○■○■○■




そうかしらね？
『山羊』も言っているじゃない。
『私たち』の本能は、現在の魔王に引きずられているって。
心の底に聞いてごらんなさい。
わかるでしょう？

愛しい旦那様を欲している、自分の内なる声。
さ、行きましょう。
詰まらない封印も解けたことだから。
街に行って男を探しましょう。

それで、誰が行くのかしら？
ああ、それで良いかもしれないわね。
良さそうな男性が居たら、それぞれが試すってことで。

それじゃあ、私が探すわね。

ん、ちょっと。
『竜』、うるさいわよ。
翼なんて私は使い慣れていないのだから、上手く飛べなくて当然でしょ。
『山羊』、あなたの場合は魔力で飛ぶんじゃないの？
『獅子』みたいに何でもかんでも上手く出来るわけじゃないから、ああ、もう！
文句を言うなら変わりなさいよ！




■○■○■○■○■○■




……、……。




ここが人間の町か。
どれ、焼き尽くしてくれよう。

……冗談に決まっているだろう。
私にも良識くらいある。
最も、私の眼鏡に適う男がいるとも思えないがな。

これがブローチなのか？
正直、どれが良いのかわからないが。
ふむ、この楕円形の銀色をした物がよいのか？
どれどれ。
ふむ。
髪の金色に似合っているではないか。
気に入ったぞ。

む？
金を払えと？
ところで、金とは何だ？
財宝のことか。
だが、あの家にはなかったぞ。
では無視すればいいのか。
よし、では改めて男探しに出るか。


やれやれ、よい男など中々見つからん。
お前たちの好みも大概偏っているようだからな。

『山羊』は、なんだそれは。
兄？
良くわからないが。

『獅子』はまだわかりやすい。
強いものなのだな。
……む、私とは違う？
強いかどうかは『獅子』が判断するのか。
私とどう違うのだ？
わからん。

『蛇』が最もわからん。
気に入った相手が好みの相手とは。
平凡な男など、私は認めんぞ。
やはり竜を討つほどの強きものでないとな。

ん？
あの少年がどうした？
おい、『蛇』！




■○■○■○■○■○■




ふふ、こんにちは。
あらあら、怖がらせちゃったかしら？
大丈夫よ。
私は貴方に危害を加えたりはしないわ。

名前は何て言うのかしら。
リフ？
可愛らしい名前ね。
貴方にぴったりだわ。

え、私の名前？
そうね、何だったかしら。
覚えていないのよね。
見ての通り、私の体は変わっているでしょ。
色々あって記憶がないのよ。
正確には、『私たち』の記憶がないのだけれどね。

ふふ。
貴方、優しいのね。
そんな顔をしなくてもいいわよ。
『私たち』は別に不安でもないし悲しくもないのよ。
ずっとずっと前からこうだったから、慣れているのよ。
だから、泣かなくていいのよ。

やっと泣き止んでくれたわね。
どう、空の感想？
小さな悩みなんて消えてしまうでしょう？
褒めてもらってうれしいわ。
『竜』も喜んでいるわよ。

ええ、さっき話したでしょう。
私が『蛇』で、他にも『山羊』と『獅子』、そして『竜』がこの体には入っているって。
ふふ。
え、どうしたのかって？
『竜』が照れているのよ。
彼女は褒めらえるのに慣れていないから。


はい、到着したわ。
それにしても、町から随分と離れているのね。
え、お邪魔してもいいのかしら？
それじゃあ、失礼して。

貴方って優しいけれど、お掃除は苦手なのね。
ちょっと待っていなさい。
私に任せていればいいのよ。
貴方はゆっくり座っていればいいの。

『山羊』。
茶々を入れないの。
普通に掃除をするだけよ。


掃除終了。
ところで、これは何かしら。
……魔法陣？
『山羊』はこれが何だかわかるの？
……禁術？
あの子が離れて住んでいることに関係があるのかしら。




■○■○■○■○■○■




……。




■○■○■○■○■○■




お待たせ。
料理も作ったわよ。
どうぞ召し上がれ。

美味しい？
そう、良かったわ。
『獅子』も喜んでるわよ。
どうしてって？
だって料理を作ったのは『獅子』だからよ。

味付けはともかく、作る技術は『獅子』の方が上だもの。
料理の知識は無駄に『山羊』が詳しいし。
火加減は、火に関してだけ得意な『竜』が頑張ったわ。
私は味見をしたくらいかしら。

だから、私はうれしいのよ。
みんなが力を合わせて、貴方のために料理を作ったのだから。
ふふふ。
みんな照れてるわね。
さぁ、私もいただきましょうかしら。


どうしたの？
何で服を脱がせるのかって？
お礼をしたいからよ。
どうして体を舐めるのかって？
お礼をしたいからよ。

もぅ、混乱しているところも可愛いけれど。
今は黙って、私に任せてればいいのよ♪


……。




■○■○■○■○■○■




『蛇』のやつ。
本当にレフに惚れこんでいるな。
私にもわかる。

『蛇』は最初にレフと出会った時はまだ、興味だけだった。
だが今は違う。
レフと共に食事をとる時も。
性交をする時も。
あるいはそれ抜きで共に寝るときも。
『蛇』は胸の奥を暖かくさせている。

その胸の奥に燃え上がる種火は、『私たち』の胸の奥にも温かさを伝えてくる。
『山羊』も同じなのだろう。
あの少年に手を貸そうとしているのだから。
『獅子』にも思うところはあるのだろう。
レフは努力家だ。
そして、心が強い。

ドラゴンが認めるほどの強さではないが。
この胸の奥の種火は、とても暖かだ。
不快ではない。
むしろ、今の私にとっては宝物の様なものだ。

宝物ではない。
だが。
掛け替えのないものではある、ということには同意だ。
……『蛇』、惚気るな。
『山羊』も茶化すな。




■○■○■○■○■○■




魔術の基礎は出来ておる。
じゃが、この禁術は。
……他の者たちも気づいておるじゃろうのぉ。
なにせ、『ワシら』は同じ知識を、記憶を共有しておるのじゃから。

この禁術は、ワシらと縁が深い。
これは。
魔獣合成の禁術じゃ。
レフは知っておったのじゃな。
『ワシら』が何であったのか。

レフはまだ幼い。
兄様と呼ぶには幼すぎる。
むしろ、弟とでも呼ぶべきかの。
じゃがその愛らしさは、好ましい。
魔術の講義以外でもその顔を見たくなるほどには。

『蛇』よ、別に取るつもりではないぞ？
じゃが『ワシら』は一心同体。
ヌシの物は、ワシの物でもあろう。

ははは。
構わん構わん。
ワシは別にレフの一番が欲しい訳ではないからのぉ。
ワシが欲しいのはあくまでも、ワシを甘えさせてくれる兄様じゃ。
……ヌシは見つけたのじゃろう。
愛しい旦那様を。
ならば、それで良いのじゃ。




■○■○■○■○■○■




ふん。
レフの奴は魔術師だ。
だが、あいつの魔術の根源は魔獣合成にある。
複数の魔獣を合成して使い魔にする魔術。
あいつは魔獣を使って非道なことをしたくないと悩みながら、魔獣合成の神髄を探そうとしている。

いいじゃねぇか。
オレはそういうの、嫌いじゃねぇぜ。
『山羊』みたいに誤魔化しはしねぇ。
『竜』が見ないふりしているが気にしねぇ。
わかってるんだろ？
オレらは、レフ相手に発情している。

『蛇』がレフに触れるたびに。
『蛇』がレフの唇を舐めるたびに。
『オレら』の中の熱い感情が燃え上がる。
わかるだろう？
発情だよ、発情。

『蛇』。
レフ以外と交わっても良いのか？
嫌なんだろう。
だったら、選択肢はねぇぜ。
オレもレフと交わる。
お前だって俺らの今の気持ちを分かっているだろう。
堪んねぇんだよ。
見てるだけってのは、よぉ！


レフ。
オレとヤるのは嫌か？
オレだって、『蛇』と同じ体だぜ？
浮気になるかもしれねぇ。
だがよぉ。
オレのココが、疼いて仕方ねぇんだ。
溜んねぇんだ。

はは、甘いなぁ、レフの唇は。
幾ら舐めても舐めたりねぇ。
ははは。
こういうのは嫌いか？
くくく。
正直なのは、好きだぜ。

さ。
気持ちよくしてやるぜ。
獣の交尾っての、教えてやるよ。




■○■○■○■○■○■




『獅子』のやつめ。
なぜワシが敢えて見ないふりをして来たと思っておる！
一人だけの熱情であれば耐えられる。
じゃがのぉ。
数が増えれば増えるほど、耐えづらくなるのは目に見えておる。

『蛇』の嫉妬込みで燃え上がるこの体。
下腹部の熱。
それに何より。
ワシまで『蛇』、それに『獅子』の熱に引きずられたようじゃのぉ。

すまんの、レフよ。
ワシとて魔物じゃ。
ヌシの気持ちはよぉわかっておる。
だが、のぉ。

……言葉で言いつくろう事は止めにしようぞ。
ワシはヌシを兄様だとも思ってはおらん。
じゃが、掛け替えのない弟分であることには変わりない。
愛おしい、弟分じゃ。
そうじゃの。
愛おしいからこそ、愛するのじゃよ。

各人格は、それぞれが表に出ておる間は自身の特性が強く体に現れるのじゃ。
ワシは『山羊』。
ワシの膣は、一味違うぞ？

愛しい愛しいレフよ。
間違ってワシを一番にしてしもうたなら。
毎晩、覚悟することじゃ。
このワシのおま○こが、毎晩ヌシを銜え込むことじゃろう。
良い、良いぞ。
何度もワシの中で果てるのじゃ♪




■○■○■○■○■○■




『獅子』に続いて、『山羊』までもレフに惹かれたか。
理解はしている。
だが納得はしていない。
これは、同じ肉体を持つがゆえに起きる事なのだ。
体が情欲に燃えているからこそ、魂が引きずられるのだ。
私はレフを認めている。
だが、勇者ではない。
レフはドラゴンの夫になるほどの強さは持ちわせていない。

そして、何より。
レフは『蛇』の夫だ。
私は『山羊』や『獅子』を責めているわけではない。
ただ、私は私だ。
レフと体を重ねることは、ないだろう。


くぅ。
やはり一度、体の奥の種火に気付いてしまっては。
辛いな。
このままではレフを押し倒してしまうか、自分自身を慰めてしまう事になるだろう。
それでもいいのか、『蛇』よ！
良くないのだろう。
ならば、早く換わるのだ！
くぅ。
『山羊』、『獅子』、なぜ換わろうとしないのだ！

レフ、か。
こんな夜中に何をしている。
ああ、私の事は気にするな。
他の者たちが少々悪戯をしているだけだ。

辛くなどない。
だから一人にして欲しい。
私はレフとの関係を変えるつもりなど無いのだ。

なっ、レフ！
早く離れろ！
なぜ、私に抱き着くのだ！
辛くなど、ない！
だから離れろ！
はや、く……んむ！？

ん、く、ふぁ、……ちゅ、ん。
……レフ、それがお前の選択なのか。
『蛇』、お前もそれで良いのか。
だが私は『竜』だ。
自らの夫は自らが決める。
だから。
『蛇』の夫は、私の……『蛇』？

……、そう、か。
私も、良いのか？
……。
済まない、レフ。
私の、本音を明かそう。

レフ。
お前を愛している。
愛してしまっている。
お前が、欲しいのだ。
抱いてくれ。


……、……。




■○■○■○■○■○■





結局、『竜』が折れてからやっと１年が経過したわね。
まだ子供は生まれていないけど。
生まれたら誰の子供になるのかしらね。

ああ、『竜』っていうんじゃなかったかしらね。
レフが私たち全員の旦那様になった記念で、名前をくれたのよね。

『竜』にはファフニーリア。
伝説のドラゴンの名前から借りてきたそうよ。
彼女ったら感激して泣いちゃったのよね。
良かったわね、ファフ。

『山羊』にはニグラスって名前になったわ。
これも伝説の黒山羊の名前らしいのだけど、『山羊』が言葉を失った辺りすごい名前だったのよね。
むしろレフって何で、『あんな名前』を知っているのかしら。
不思議ねぇ。

『獅子』にはレオナって名前。
単純に獅子のレオから名前を取って来たみたい。
わかりやすいのが一番ってことで、レオナも満足してるようね。


うん、今日もいい天気。
絶好の洗濯物干し日和ね。
昨日もレオナが張り切りすぎちゃって、シーツを洗うのが大変だったわ。

今日も私は、この家の家事担当として頑張る。
私が見つけた旦那さまなのに他のみんなの面倒を見てばかりの気がするけど。
一人占めをしたいのが本音なのだけど。
悪い気がしないのよね。
『みんな』が喜んでいるのがわかるから。

私も。
レフから貰った名前を胸に抱いて、幸せいっぱいに生きていける。
エメラルダ。
私が私だった名残の尻尾。
蛇の頭を持つエメラルド色の尻尾を撫でてから、私は洗濯物片手に外に出た。


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「おまけ：説明書き」

【共通】
種族：キマイラ
外見：大体挿絵通り。髪は腰を隠すほどの長さ。
過去：合成魔術により４種の魔物を融合して作られた。作成後、融合器から出す前に諸事情により魔術師が逃亡したため、作中で顔を出したのがキマイラとしての最初の目覚め。本人たちは夢の中で会話をしていた。細かい事情は『魔物娘だから』という事で。
現在：【山羊】の魔術により、人格が変わったと同時に髪型が変更されるようになった。便利仕様。ビバ魔物娘クオリティ。

【山羊】
名前：ニグラス
特徴：魔術得意。知識に精通。爺言葉。名器。
性格：強気。好色。甘えたがり。
髪型：ツインテール。側頭部で纏めてボリューム感を出している。髪留めはピンク色の大玉二つ。
その後：レフの魔術研究を手伝いながら、なぜか性魔術の勉強と称して色々やっている。一度吹っ切れたら遠慮しないらしい。他の人格を焚きつける意味でも色々積極的。なかなか甘えるタイミングがなくて困っている長女ポジション。

【蛇】
名前：エメラルダ
特徴：家事全般得意。蛇尻尾に擬似人格。たまに髪も動く。
性格：献身的。穏やか。嫉妬深い。
髪型：後ろ括り（低い位置のポニーテール）。髪留めは紺のリボンで蝶々結び。
その後：レフと二人きりで愛し合いたかったが、他の人格の気持ちもわかるため一夫多妻を受け入れる。元の種族は不明だが、どことなくエキドナチック。他の人格がレフと過ごせるように配慮しているが、正妻枠だけは譲ろうとしない。複雑な次女ポジション。

【獅子】
名前：レオナ
特徴：体を使うこと全般が得意。野獣。肉体言語。
性格：強気。陽気。好色。
髪型：ケモ耳の後ろに編み団子（三つ編みで輪を作ってる）。髪留めは小さな鈴。
その後：魔術だけでは駄目だと、走り込みから始まる肉体トレーニングをレフに行っている。運動後は汗を舐めるところから始まる、色々。元は本能の赴くままに我が儘で強さを求める性格だったが、他の人格の影響を受けて技巧を凝らしたり孤高になったりと変動が激しい。悩む前にヤっちゃえと単純思考だが、真面目に考えるときは真面目な三女ポジション。

【竜】
名前：ファフニーリア
特徴：飛行、ブレスが得意。思慮は深いが、行動は大雑把。
性格：誇り高い。真面目。
髪型：ハーフアップ。髪留めは銀のブローチ。
その後：一夫一妻への観念が強く、未だに他の人格へ遠慮しているところがある。性格上、他の人格のまとめ役をしようとしているが……。なんだかんだで甘えるのが苦手な可愛らしい末っ子ポジション。

【レフ】
種族：人間
外見：ショタ。以上。
過去：両親は色々あって死亡。基本的に闇魔術の家系。先祖の禁術を知って以来、自分の血筋などに悩んだ挙句、魔獣合成の魔術を平和的に使えないかと模索するように。キマイラの融合器が解放された事を知って途方に暮れているとき、当の本人に出会った。
現在：めちゃくちゃセックスしている。