連載小説
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サークル設立中
(株)セクシーカンパニー本社ビル

さっぱりカットで爽やかな好青年になった鈴木が社長の椅子に座っていた

で、その向かいにはジャージ姿のレニーが足を組んで座っていた

「目指せ!壁サークル!」

「はい、帰って『ヒルナンデス!』見ていい?金曜日だから」

いきなり話の腰をサバ折った

「まあ待て、話を聞け」

「しろよ?聞けっつったからには、まともな話を」

「よし、まずは世界堂行ってカブラペンとGペン買ってきてくれ」

「話をしろ、っつったのに…」

いきなり買い出しとは

「…で?なんでまた、その、かべさあくる、ってやつを目指すんだ?なんかのスポーツか?アフリカ辺りの」

どうやらレニーはまったくの無知の様子

「…いいか、レニー、壁サークルというのは、こう、壁にコンパスで円を描いて…」

「あーあーあー、穴開いちまうぞ」

「あーあーあー、違う!ツッコめ!」

「あ、ツッコむのか?どれ…」

どずばぁ!と壁に必殺をかました怪力レニーさん

おっそろしいくらいにパワー満点、すぐ横のエレベーターシャフトが見えちゃいました

「…ありがとう、これでいつでも優勝できる」

「うん?これでかべさあくるになれるのか?」

「あぁ、後はおまえがそこから飛び降りればスッキリする」

「何が?」

「俺が」

「………………あ、違うんだ」

「違うね、違う…まったく違う…おまえのツッコミスキルを信じたらリフォーム代が掛かったよ」

200万掛かりました

まあそれは置いといて、本題に入る

「おまえが出しとけよ」

「えー、私が?」

「お・ま・え・が・出・し・と・け・よ?」

「ウース、反省してまーす」

置いといてって言ったのに

ようやく本題に入る

「とりあえず、壁サークルの答え合わせは同人誌即売会の大手が出展するポジション、あるいはそれら団体の代名詞になるな」

「同人誌即売会…?あ、4年に一度やる…」

「そこまで世界一を決めるような規模じゃない、と言ったら怒られるかな」

正解は一年に夏、年末の二回

「しかし、ここまで知識がないのではおまえのツッコミが期待できないな」

「また私のツッコミありきなの?」

「そういうわけで、ぱっぱらぱっぱっぱーぱっぱー、『都合よく勉強成果が出るっぽい22世紀的な催眠装置』ー(男のダミ声)」

パッと見、ただの中日ドラゴ○ズの帽子である

「危ない!いくつかの意味で!」

「これを頭に被って5秒すれば、基本的にこの世の無駄知識まで全て網羅した頭脳になる、効果は一話分もつ」

「一話分て何!?一話分て何!?私にわかる単位で話してくんない!?」

「つまり次の話の千文字目辺りまで効果が続く」

「だからわかる単位で話せって!」

「言うは易し、為すは難し、まずはやってみろ」

「何!?何が!?待て待て待て待て!」

あーーーーー

ぎにゃーーーーー

でやんすーーーーー

「…成功だ、さすがスポーツ医学の権威ダイジョ○ブ博士、催眠程度なら信頼度は抜群だな」

「…おまえ…そんな人間の作った機械頼るなよ…」

「お、どうだ気分は」

「そうだな、リエリとナオミの気分はなんとなくわかった」

「なるほど、効果は絶大だ」

鈴木の顔面に左ショートアッパー

「このサイト見てる人がだいたいわかるだろうっつー曖昧な感覚で、スルーされそうなことしてんじゃねーよ!」

「はっはっは、おまえも既にこちら側の知識を身に付けているな」

「うるさい!仕方ないから付き合ってやるけど、手早く済ませろよな!」

と、レニーの了承も得たところで、話はようやく同人誌へ

「まず、あまりに急だが、同人誌を作ろうとした経緯から話そう」

「おう、納得できる経緯をな」

「前にも言った通り、性的なコンテンツは今や一大ビジネスだ、低俗だのなんだのと切り捨てるにはもったいない」

「切り捨てなかった結果が前回の『ポテトチップシンドローム』だったな」

「よく覚えてるな、まあ当然か、累計70000本の売上だからな」

「えぇぇぇぇぇ!?処女作で70000んんん!?」

「幸先いいスタートだ」

「新設ブランドがやっちゃいけないスタートだな」

日本で二万人に一人は買ってます

「それでだ、今や海外にも名を轟かせているコミックマーケットに同人誌作品を出展して、セクシーカンパニー(株)の更なる飛躍を狙う」

「あぁ、そうか、ブランド名だっけ、セクシーカンパニー(株)…」

一応別物である

「悪くない話だろう?」

「計画はな、また突拍子もないけど」

「じゃあ話を進めよう」

「ちょっと待て、誰が漫画描くんだ?『ポテトチップシンドローム』のイラストレーターさんか?」

「いや、そこまでは出来ん、仮に出来たとしてもそれは俺のサークルじゃない」

「うん、だとすると」

「俺が描く」

「…これギャグ漫画なら自爆のパターンだぞ」

真剣に下手とか、中途半端に上手いとか

「それなら大丈夫、ユーキャンで漫画家の資格取ったから」

「漫画家って資格だったっけ…」

「平均受講期間は半年、月賦で3280円」

「せめて一括で払えよ…学生や主婦じゃねぇんだから」

とは言ったものの、どんな過程を経たにせよ、実力は見てみないことには始まらない

漫画の評価なんて今一つわからないが、絵が上手いか下手かくらいはわかる

冒頭でもあったように、Gペンなど、足らない画材を買ってきて、さっそく原稿にパパッとキャラクターを描いてもらう

鉛筆を踊らせ、消しゴムで輪郭を確立させて…ただの試し描きなので、ペン入れはしない

「…よし、どうだ」

見せてくれた絵は、版権モノだが…

「上手いじゃないか、ドラえ○ん」

トゥーンな画風はお手のもののようだ

「うん、自信はある、だが、これではあまり参考にならないな…、すまん、題材を変える、また少し待ってくれ」

「おう」

また、カリカリと鉛筆が踊り出す

ちら、と見ると

出来すぎだった、あ、いや、出来杉君だった

「なんでまたドラえも○キャラなんだよ…」

「ん、あ、しまった、つい」

「いや、もういいよ、絵がそこそこ上手いのはわかったから」

「そうか、では今回出展する作品のプランを教えよう」

さあ、どんな物を描くのか…

同人誌なので、必ずしもオリジナルだったり、性的な描写がなければならない、というものではない

「今はカップリングモノが流行ってる、いわゆる腐モノだ、人気も高いから狙うべきだろうな」

「つまり、男性向けじゃなく女性向けに?」

「そうだ、ドラマ化などは女性向けの漫画や小説の方が多い、これは原作者の実力があるのだろうが、その傾向が強い」

「なるほど、狙いとしては悪くないと私も思う」

いつもこういうことは高い所を目指すのだ、この男は

しかも、信念を持っているため、継続する力もある

予想では、悪くないビジネスだ

「実はだな、もう既に10ページは描き上げてあるんだ」

「え…だからなんでおまえはそうやって事後報告なの?」

前回もそうだった

「まあ見てみろ」

渡された封筒を開けると、たしかに数枚の用紙が…

『青いタヌキを愛した英才』

「…おい」

「ん?」

「おい」

「ん?」

「おい!」

「だから、ん?」

「ん?じゃねぇよ!どんだけニッチな層狙ってんだよ!」

「ニッチか?」

「ニッチじゃい!日本でもドラ×出来本なんてねぇだろ!」

「はっはっは、ずいぶんそっちの用語が板についてきたな」

「おかげさまでな!」

言いたいことはそれだけではない

「そもそも!これは勝算があって選んだ題材か!?」

「ある、日本総人口の30%はいるという機械姦マニアが狙いだ」

「いねぇぇぇぇよ!約4000万人もいねぇよ!」

「いる」

断言

「いや、それはもしかしたらいいかもしれない!ひょっとしたらネタ本として有名になるかもしれないからな!でもなんでこのカップリング!?」

「正直ドラ×スネかドラ×エルか迷った」

スネ…骨川○ネ夫、エル…エルマタド○ラ

「なんだろう、ドラ×エルがしっくり来る」

「銅製だからな」

「銅製じゃないだろ…」

同性とかじゃないと思う

「とにかく、批判は後で受ける、今は中身を見ろ中身を」

「すっげぇ嫌だすっげぇ嫌だ、何が悲しくてこんな既視感ばっちりの同人誌読まなきゃいけないんだ…」

しかし、ぶつくさ言っててもしょうがないので、とりあえずめくる

1ページ目と2ページ目は目次と…まあプロパティだろうか、これは普通

ただ、完成してないのに目次とかあるのは不思議だが

『僕はある日、男の味を知った』

「出来杉がなんか言ってるぞ」

「黙って見れないのかおまえ」

『最初は、それはそれは抵抗した、しかし、逆らえなかった』

「……………………」

性描写を想起させるシーンが数コマ

『一度味わえば、二度目には抵抗が薄らぐ、いつからか、僕は毎晩、彼の元に通っていた』

『ぼくドラ○もん』

が足を組んで(?)タバコをふかしている

頭の中でのぶ代ボイスで再生された

吹いた

『ドラえも○、今日も僕はお尻の穴に空気砲をねじ込まれるのかい…?』

頭の中で、磯野野球しようぜ、の中島くんがなんかしゃべっている

『どぅふふ♪今日は違うよ、(ペカペカー)ガリバートンネルぅ』

ずぶり

『ふぎぃ!』

『どぉれ、出来杉君の汚い穴の中でも探険しようかなぁ』

『や、やめれぇ!○○チ穴の中いじめないれぇ!』

『ンギャアァァァァ!でっかい○ン○だぁ!でっかいのは当たり前かぁ!ビッグライトぉ!』

「おい、こいつ出来杉殺すつもりだぞ」

「出来杉くんは腸が爆発したくらいじゃ死なんよ」

「なにその自信」

『んほおぉぉぉぉっ!さ、裂けるぅ!お尻の穴裂けちゃうぅぅぅん!』

「出来杉きっもちわりぃな」

『スモールライトぉ!』

『えっ…や、やめるのかい…?』

『裂けちゃうの怖いんだろう?』

『そ、それはそうだけど…』

『それともなにかい?裂いてほしいのかい?』

『…くっ…』

『なら言ってみるんだ、僕はクソでかいクソに肛門裂かれて喜ぶド変態オス豚だってねぇ!』

閉じた

「…なにこれ」

「同人誌」

「いや、そうじゃなくて…六割クソの話してんじゃねぇか」

「そういうもんだろう、BL本は」

「おまえBL本ナメてるな」

※BL本はこんなクソみたいな内容ばかりではありません、これは小説上の演出です

「おい、上の※じゃ、まあ少しはあるけどね、ってなっちゃってるけどいいのか」

「そういうもんだろう、BL本は」

「おまえ…あんなんないだろ…男性向けならそういうジャンルあるけど…」

「男性向けだろう、ある意味」

「あぁ…うん、BL向けだな」

※全国の甘あまBL作家の方、たいへん申し訳ありません

「あと、もう一つ確認したいことがあるんだけど」

「なんだ?」

「絵が変わってるな」

「訓練しながらちまちま描いてたからな、数ページで驚きの変化してても違和感はあるが大丈夫だろう」

「いや、藤子○不○○の画風が『スモールライト』辺りから峰倉○○や絵になってんだよ、三蔵様と同じ頭身だよ、○ラえもんがよ」

「あれ?おかしいな、ちゃんとコミックス見てたんだけどな?」

「すげぇよ、お腹が白い青の全身タイツ着たイケメンがのぶ代ボイスで…くっ、ふふ…」

思い出して吹いた

「おいおい、ちゃんと漫画自体の評価をしてくれないか、たしかにまだ途中だが、続きが気になる、みたいな評価をだな」

「ほぼギャグ漫画なのに評価をしろったって…」

面白い(お笑い的に)以外出来るか?

「…まあいい、コミケまであと三ヶ月、レニー、アシスタント頼んだぞ」

「…は?」

「いや、俺は遅筆だからな、ベタ、スクリーントーンにモブキャラまで描くのは無理だ」

「モブ必要か?この漫画に」

「とにかく、俺を助けると思って」

「なんで私が、他の人に頼めよ!」

「いや、おまえじゃないと駄目なんだ」

「…え…」

どういうことだ?

鈴木からそういう言葉を聞くと、なんだか胸が…

「サークル名を『筋肉ミノタウロスの憂鬱』にしたから、おまえがいないと辻褄が合わない」

「何してくれてんだあああぁぁ!」

「頑張れリーダー」

「巻き込んだモンをトップに据えるのやめた方がよくないか」

さあ、勇ましくもサークルを率いる身となったレニー

果たして、彼女は念願の壁をゲットすることが出来るのか?

「うおぉぉぉぉぉ!私の話にすり替えられてるぅぅぅぅぅ!」




おしまい

「締めるな!締めないでくれ!」

おしまい
13/11/15 16:41更新 / フルジフォン
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■作者メッセージ
相変わらず台詞の比率がやばいですね

あと、お訊きしたいのですが

版権があるキャラはやっていいのでしょうか

せっかく『クノイチ』カテゴリがあるので、いろいろやりたいのですが、規約にはどうあったかな、(よく見てなかった)なので、やってみたいのですが

でも他の作者の方はやってないようなので、ダメかなー、と思うんですが…どうでしょうか?もしよろしければ皆様のご意見をいただけますでしょうか、めんどくさかったら全然大丈夫ですので

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