連載小説
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映画撮影中
「みんな!映画を撮るわよ!」

「鈴木、やめろ、複数の意味で」

(株)セクシーカンパニーの社長室

ハンディカメラを持った鈴木と、ソファーに座るレニーがいた

「なんだ、ノリが悪いな」

「ノッちゃいけないノリだろ、それは」

「まったく、せっかくコスプレしたのに」

「ならせめてハ○ヒのキャラのコスプレをしろ、なんでスト2のガ○ルのコスプレなの?カツラまでして」

かすりもしてない

「…で、どうしていきなり映画を撮るなんて?」

「昨日、野球日本シリーズで美馬投手が好投しただろ?」

「うん、すごかったな」

「では、映画を撮るに至った経緯を」

「おまえ説明めんどくさかっただけだろ」

「そうだな」

相槌もめんどくさそうに打った

とにかく、経緯説明

「映画撮影は役者やセットなどのコストが掛かるが、成功すれば海外のポピュラーなメディアにも認められる、つまり、海外進出の第一歩だな」

「なるほどな、でも、ずいぶん違う畑だぞ?コストとか言ったけど、まず制作を雇って、上映期間、総制作費を決めて、小道具大道具の制作会社、フィルムを渡す配給会社も決めてから撮影するんだ、今言った通りじゃないこともあるが、役者を決めるまでにもこんなにあるんだぞ」

「大丈夫だ、なんとかなる」

「いきなり『なんとかなる』出ちゃまずいだろ…」

楽観にもほどがある

それに、映画はリスクが高い、リターンも大きいかもしれないが、失敗した際の損害はエンターテインメント業界でも最大だ

「最初から敗色濃厚な道にしなくても、動画サイトで短編映画を投稿して、だんだん評価を上げていったっていいじゃないか」

「……………」

鈴木はあごを押さえている

考え込んでいる、珍しく

「…まあ、決めるのはおまえだし、私がとやかく言うのも…」

「なんでおまえそんなに詳しいんだ?」

「…………………………は?」

「いや、映画について、けっこうシビアな意見が…」

と、レニーがぷるぷる震えている

「おまえが先月変な機械被せたからだろがぁぁぁぁぁ!」

「ああ、あれか、えーと、ダイナマイト四国のマスクだったか」

「犯人が覚えてないってどういうことだぁぁぁぁぁ!」

正しくは『都合よく勉強成果が出る22世紀的な催眠装置』である

「あれ以来、テレビ見るときも専門家みたいな見方しちゃって、全然楽しく見れないんだよ!」

「なんとそこまで」

「ついには日本シリーズの解説しちゃってたよ!ノムさんと一緒に!」

非常にハイレベルな成果

「よかったじゃないか、一応プラスにはなったろう?」

「マイナスじゃないけどなぁ…あっ!」

急に何かに気づいたように頭が震えた

「なんだ?」

「頭から突っかかりが取れた気がする…!」

「ん?あぁ、今回の話の千文字を越えたな、ということは効果が切れたのか」

「ほ、本当か!よし!これでまたテレビが普通に見れるぞ!」

「…まあ、今回は映画の話だし、いいだろう」

と、鈴木は出しかけたあの帽子をしまった

「さて、撮影だが、まず制作にはプロを雇った、コンセプトは伝え、上映期間や配給会社も世話してくれた、下準備は万端だ」

「おお、手際はいいな、てか、知ってたのか、そういうこと」

「まあな、やると言ったからには勉強しなくてはなるまい」

姿勢はよし、と

「監督は、新人を使うよりかは、と思って俺がやったが」

姿勢が前のめった

「明らかにおまえ使うよりかは新人の方がいいに決まってんだろ!」

「おいおい、最初に言ったろう、映画を撮る、と」

「言ったけど!…って、待て、やった?やった、っつったか?」

「言った」

「…まーた事後報告かよ!好きなの!?それ!」

「おまえが気づくのが遅いだけだ」

「私の責任を主張するとは…」

転嫁、ダメ、ゼッタイ

「まあ見てみろ、機材は揃っていて、クランクアップもしているが、まだ編集段階でな」

「うわあ、今までにない進み具合」

パソコンに映し出された映像は、いきなり本編のシーンから始まった

タイトルやら主題歌やらはまだつけていないらしい

「主演はダカンバレロ・ペレ…」

「ちょっと待った、いや、かなり待て、外人!?」

「ブラジルの民族出身だ」

「いや、国の情報はいいよ!さっきの『外人!?』は初作品の主演に外人起用してんの!?の『外人!?』だよ!」

「別に変じゃないだろう」

「変じゃないかもしれないけど!こいつ始まってから三分間ずっと独白で、しかも母国語喋ってるらしいから何言ってんだかわかんないし!」

「ああ、完成したら字幕つけるから」

「日本で日本人が作った邦画が字幕必要ってなんだよ!」

「みんな!映画を撮るわよ!」

「うるせぇぇぇ!あとさっさとガイ○のコスプレやめろ!」

まだしてた

「まあまあ、落ち着け、テーマは日本在住外国人の苦悩だ、ロケにドイツまで行ったんだぞ」

「テーマとロケ地を合わせろ!せめて日本でやれ日本で!」

「無理だ、知り合いに会ったら気まずいだろ」

「そんな意志の弱さで映画なんぞ撮ろうとすんじゃねぇ!」

エンターテイナーになるなら恥を捨てなければ始まらない

「それは置いといて、あー、彼の名前はジミー、前半は言語の壁に悩んだ姿を見せるんだ、言葉が通じない辛さは、日本人には出来ない」

「ドイツなら日本人にも出来らぁ!バカ!」

「さらに後半は言語の壁に悩む姿を…」

「じゃあ前半後半じゃねえな!全編通して言語の壁にぶつかってるよ!」

「いや、自分の勘違いが原因でアメリカで不法移民が増えてしまうんだ」

「ドイツでの勘違いがどうやってアメリカに関係するんだよ!」

「そして彼はインドで仏教を信仰し始める」

「なぁ、これ90分から150分の間に終わるか!?すげえワールドワイドな活躍してんだけど」

「だが、仏教を信じれば信じるほど、言語の壁が道を阻む…今度はギリギリ言葉が通じるかな?と中国へ渡る」

「通じねぇよ!違うわ!標準語!」

「だが、不法入国の疑いをかけられ、捜査官に追われる」

「ついに犯罪者扱いかよ!」

「これはたまらん、とアメリカへ逃亡」

「逃げるなよ!釈明しろ!…まさか本当に不法入国じゃねぇよな」

「金が尽きかけた彼は、ボクシングで金を稼ぐことにしたが、なかなかまとまったファイトマネーはもらえない…」

「また逃げる気じゃねぇだろうな」

「一攫千金をかけて、チャンピオンに挑むも敗北、金は手にいれたが、屈辱だった」

「…ああ、うん、かもな」

「その後、日本に帰れたジミーは、ある力士と銭湯で出会う…」

「………………………………」

「ん?どうした?急に黙って」

「あぁ、うん…ジミーの旅はさ、ドイツからだよな?」

「そうだ」

「で、インド行って?中国では捜査官に追われる?捜査官て女か?」

「よくわかったな、女性だよ」

「アメリカでボクシングのチャンピオンっつったけど、階級はヘビー級か?」

「うん」

「で、日本の銭湯で力士…」

「まだ続くがな」

レニーは鈴木の姿を見た

そして画面のジミーを見た

「…ジミーの通称は?」

「ブラ○カ」

「ストリートファイ○ーだこれぇぇぇぇぇ!」

「あ、本当だ」

「偶然だったのかよ!」

インドでわかった人は100ポイント

「しまった、これではパクりと言われてしまう」

「パクるとかパクらねぇとかそういう問題じゃあねぇよ!」

「…仕方がない、また最初から撮り直す」

「…え」

す、とカメラを手に取り

「みんな!映画を撮るわよ!」

「だから○イルのコスプレやめろぉぉぉ!」





おしまい

次回へ続く
13/11/17 09:42更新 / フルジフォン
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■作者メッセージ
台詞祭り再び

まあ『漫才』を意識しているし、台詞頼みになるのは仕方ありません

さて、次も頑張りましょう

ブランカの本名はジミーなんですね、初めて知りました

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