連載小説
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105 青年が最も輝いた瞬間
機械で物凄く動きが遅くなっていそうなサリィを見ながら、俺は複雑な心境にドキドキしていたんだ…
どうして俺が一人で戦うことになってしまったのか…それを今現在、物凄く全身で考えているよ
いや、確かに…ナッカーサーも瓦礫で足を取られているし、他のみんなもこの研究施設に来ることが出来ない今の状況だからこそ、俺が戦わなくてはいけないんだろうけど…それでもだな…
いや、よく考えろよ俺…ナッカーサーの支援があるじゃないか!!だったら、さすがに一人で戦うよりはマシだよなぁ…
それに…今はこの研究施設はあと35分くらいで爆発してしまう…
くそぉっ!!いいよ…やろうじゃないか!!
今までの人生逃げ続けてきたんだ…一回くらい、子供の時のように無謀に戦ってやる!!

「い、行くぞっ!サリィっ!!干し肉バスターソード!!」

バキィッ!!

「あぁっ!?お、俺の武器が…っ!?」
「………」
「ぐぼぁっ!?」

一気に物凄い衝撃が体を走りぬけ、俺はサリィの機械質な攻撃を受け、少しだけ浮遊したんだ…
そして、次の瞬間…物凄い痛みが全身を走り抜ける
勢いと威力の高さに、俺の意識が一瞬吹き飛んでいきそうになったから、威力は相当のものだろうな…
だが、幸か不幸か俺はジェラシカの一件で痛みに少し慣れているんだ
まだ…まだ大丈夫…

「………」
「えっ!?ちょっと!!空中で掴むとかそれは無しだろ!!うわぁっ!!」

ちょっと待ってくれ…俺は空中で捕まれるなんて事は考えていなかったんだけど!?
こ、これは俺が物凄い酷い目に会いそうな…そんな予感が…
俺がそう思うとサリィは俺の体を一気に攻撃してきたんだ
よ、容赦のカケラも無い一撃はさすがだといわざるを得ないよな…

「うわぁぁぁぁっ!!危ないっ!!危ないってぇっ!!えっ…俺を掴んで一体どうするつもりなんだ!?」

…なんだ…?この非常に嫌な予感は…ま、まさか…
いや、まさかな…俺の嫌な予感が当たらなければ、さすがにサリィが俺を掴んで壁に向かって投げたりなんて…

「………」
「ま、まさか…やめてくれぇっ!!うわぁぁぁぁぁぁっ!!あいたぁっ!!」

な、投げやがった…サリィ、俺に遠慮なんて一切せずに俺を壁に…
当たった時の衝撃でまた変な感じのめまいが…
俺がそう思っていると、サリィは更に機械で強化された重そうな足で踏みつけ攻撃を仕掛けてこようとしたんだよ!!

ダダダダダダッ!!
バシューンッ!!シューーッ…

おぉっ!?ここでナッカーサーの空気を読んだ援護射撃だ!!
正直、もう少し早めに援護してくれるとうれしかったんだけど、この際…文句なんて言ってられないよな!?
とにかく…ありがとうナッカーサー!!
さらに、ナッカーサーはサリィの右足部分についていた赤いボタンのような場所を打ち抜いたんだよ!!
なるほど…ナッカーサーが言っていた機械の動力源ってのはあれだな…?

よく見ると、サリィの体の至る箇所…といっても、両手両足と正面…あと背中か?その場所にしかないけど…
つまり、俺もそこの部分を狙って攻撃すればいいんだな…?よし…オーケー

俺がそんな事を言っていると、サリィは体勢を立て直してナッカーサーを狙い始めたんだよ!!ナッカーサーは今…瓦礫の下敷きにされているから…俺がなんとかしないと…
……よし、サリィは今背中を俺に向けた!!弱点部分を狙って攻撃する事は難しいかも知れないけど、少しひるませるくらいなら出来るはずだ!!
…だよな?もし、これでひるまなかったら…俺、どうしようか?
まず、確実に痛い目に会うね…でも、それでも俺はやってやる!!

「食らえぇっ!!干し肉バスターソード!!」

バキィッ!!

あぁっ!?また砕け…

ドゴォッ!!

「ぐはぁぁぁぁぁっ!!」

ドシャッ…ドゴォッ!!

あいたたたたっ…この作品がギャグよりで本当によかった…
じゃないと俺は本当に死んでいたLVじゃないか…
しかし…どうして俺の会心の一撃は通じないんだ…

《教えてあげましょうか?この私が…》

……教えてくれ、もしも俺が納得できる答えだったら…

《たかが肉で攻撃が出来るわけ無いじゃありませんか…今まで気づいていなかったんですか?馬鹿ですわねぇ…》

なっ…にぃっ…!?
いや、そんな事はないはずだっ!!だって、この干し肉は物凄く硬い…
そして、どうでもいいことだけど、俺の台詞を心の中で思うよりも先に答えられたのは、正直虚しかったな…

《ですから…そもそも、それは肉ですよ?ただの肉です…限界があるでしょう硬さにも…》

………まさか、そんな事が…
正直、俺はこの干し肉なら敵を倒す事は簡単だろうと思っていた…
だが、そう思っていたのは俺だけだった…ジェラシカはそういいたいんだな…

……悔しいけど、指摘されたらそのとおりだと思う!!
だって…肉だしっ!!

って、こんなことを言っている場合じゃないな…
サリィがこっちに向かって攻撃対象を代えたはず…
俺はそう思ってサリィの方を見る…すると!!

サリィの両手の機械パーツが少し開いているんだよ!!
そして、そこからさっきまで隠れていた羽の部分が…一体、なんだというんだ?
俺がそう思いながらサリィの次の行動を予想していると、サリィは一気に両手を振り下ろしてきたんだよ!!
しかも…俺に明らかに届かない場所で…馬鹿じゃないのか?

「……えっ…?」

な…なんだ?さっき、サリィの方から何かが凄い速度で俺の方に飛んできたんだが…
えっ…?ちょっと、足にちょっとだけ切り傷できてますよ!?

そして、その後…俺はサリィの羽がすぐ近くに落ちているのを見つけたんだ…
え、遠距離攻撃が出来るようになっただと…!?
そ、それはちょっと卑怯じゃないか!!
まぁ…確かに?俺もナッカーサーの支援があるって状況のいわば2対1の状況で戦っている事は少しなりとも卑怯だと認めよう…それでもだよ!?
サリィはそのくらいのハンデを俺達に分けてくれたっていいじゃないか!!
……まぁ、サリィは今…自分の意識で戦っていない…いわば機械に動かされている状況らしいから、俺は何も言わないけどね?

そして、俺が慌てふためいていると、ナッカーサーが背中の弱点をガトリングの援護射撃で破壊してくれたんだよ!!
ナッカーサー…やっぱり空気が分かるなお前はっ!!
しかも、攻撃された時にその時の反動でサリィがこっちに転がってきた…
これは、チャンスって奴なんじゃないのか!?
よし…デメトリオ!!お前は出来る奴のはずだ!!頑張るんだ!!

俺は倒れこんだサリィに向かって思いっきり剣を振り下ろしたんだ…
俺の武器は殺傷能力は無いし…少しだけ衝撃があるのを我慢して貰うだけだからなサリィ!!

だが、サリィは素早く反応すると体を横に反らしたんだよ!!
おかげで、元々狙っていた場所より左にずれてしまったんだ…
唯一の救いは、狙うはずだった場所に攻撃が当たってくれたってところかな…

そして俺はそう思いながらサリィと向き合ったんだが…あれ?さっきに比べてサリィの動きが遅く見えるな…
俺の気のせい…?それにしてははっきりと遅くなっているのが分かる気が…

「………」
「ひぃぃっ!?よ、よけれた…?やっぱり、少しだけサリィの速度が落ちてる…でも、ギリギリかわしていることには変わりないんだけど…ね?」

って呟いてみるが、サリィは遠慮なく俺に攻撃を仕掛けてくる…
今はギリギリ避けれているけど、いずれは避けられなくなるかも知れないな…
一気に畳み掛けるなら今がいいんだけど…

なんて俺がそう思った瞬間にサリィの左足をナッカーサーがガトリングで撃ち抜いたんだよ!!さすがナッカーサー…空気読めるよ!!
よし…これでサリィの体を覆っている機械の破壊するべき箇所は残り右腕と正面の大きな奴の二つだ!!
一人だったらここまで来ることが出来なかったかもしれない…
これはナッカーサーがいたから出来たことだな…うん…
恐らく、俺一人でサリィに挑んでいたら…ひぃぃ…考えるだけでも恐ろしい…

だが、俺がこんなことを考えているとサリィはナッカーサーの方に攻撃を仕掛けたんだ!!しかも…遠距離攻撃だ!!
な、ナッカーサーは今動けないってのに!!
ナッカーサーのガトリングに容赦なくサリィの羽が刺さっていく…
そして、とどめとばかりにサリィがそのガトリングを踏みつけたんだよ!!
くっ…これで、ナッカーサーの支援はもう無い…

だが、俺はサリィに対して無謀にも後ろから攻撃を仕掛けていたんだ…
いや、無謀じゃないか…俺はナッカーサーが追撃を受けないように行動したんだから…俺は今は自分にどんなダメージが降りかかってきても…耐えてやる!
…もしよければ、俺のこの奇襲攻撃が当たってくれるといいんだけどなぁ…

「当たってくれっ!!」

だが、俺の願いは天には届かなかったわけだな…
俺は空中で自分の剣が空振りし…サリィの機械で覆われた手がおなかにめり込んだ瞬間、一瞬だけど死を覚悟したね…

だが、俺にはジェラシカ戦で見についてしまったうれしくもないスキルがある
このおかげで、俺は痛みには物凄く強っ…ぐほぉっ!?
くそっ…まさかのコンボが…ぐはぁっ!

それから俺はしばらくの間、サリィのコンボ攻撃を受け続けていたんだ…
ようやくコンボが終了した時、俺は壁の方に蹴り飛ばされたくらいだからな…
いや、でもまぁ…コンボをアレだけ叩き込まれたのにまだ生きているんだから、よしとするべきなのかな…?
くぅっ…ふらふらするって事は、間違いなく俺は今…体にダメージが蓄積しているな…
痛みには堪えられるけど、ダメージが0になったわけじゃ…ないって事か…

それに…今の状況は俺にとってうれしい状況じゃない…
だって、今の俺はナッカーサーという強力なサポートを受けられないからな…
さすがに、サリィと自分との戦力差が今現在どのくらいあるかはさっきのコンボを受けている時に痛感したよ…
はっきりと言うと…勝てる気がしない!!いや…勝てない!!
俺が正面から攻撃を仕掛けても、不意打ちしても…普通に戦ったんじゃサリィにはとてもかなわない!!
なにか…なにかいい方法は…

それから俺は少し考えたが、ダメだ…やっぱり俺の考えは全部サリィに通用する気がしない…
こんな時に、賢いケイとかがいて知恵を貸してくれたら…いや、ジェラシカがいたな…
でも、知恵を貸してくれるかはわからないし…

《あら?知恵を貸して欲しかったのなら言って下さればよかったのに…てっきり、わざと焦っている振りをしているのかと…》

……今の状況でそんな事をしている余裕はさすがに俺でもないよ…
そんな事をしていたら、本物の馬鹿だって俺は思うね!
…待てよ?それって、俺は本物の馬鹿だとジェラシカに思われていたってことじゃないか!?もしそうだとしたら…失礼な奴だな…

《彼女に攻撃を仕掛ける方法は武器しかありませんの?不意打ちとか、他にも色々方法はあると思いますけれど…?たとえば、木のかけらを彼女に投げて、彼女がそれに一瞬気を取られた時に攻撃するとか…おそらく、右手の赤い場所は攻撃できると思いますわよ?》

……凄い、それには全然気がつかなかった…
知恵を貸してくれるって言っていたのは…嘘じゃなかったか…
よしっ!!どうせ他に作戦も無いし…それで行こう!!

俺はそう思うと、自分の愛用しているポーチから、旅のいたるところで手に入れた木材の破片たちをだしたんだ…
これが全て…空き箱が壊れた時の破片であり、俺の戦友…か…
よしっ!!今回が最後になるかも知れないが…今回もよろしくたのむぞ!
俺は破片を握りして、サリィの方に向き直ったんだ…
多分…全て一気に投げればいけるかな…?

「てりゃあぁぁぁぁっ!!」

おっ…!?本当に一瞬だけサリィが破片に気を取られてくれた…!?
戦友たちよ…ありがとう!!お前達の事は…俺の心で覚えておくぜ!
そして…せっかくのチャンスだ…

「行くぞぉぉぉぉぉぉっ!!てりゃあぁぁぁぁぁぁっ!!」

バキィッ!!

よしっ!!やった…!!これで、後はサリィの正面にある大きな場所だけ…
俺がそう思い、少し気を緩めた時だった…
サリィは俺の攻撃でよろめくことも無く、俺の頭を手で抱きかかえるかのように掴んできたんだよ!!
いや…手で体が持ち上げられている…そう言ったほうが正しいかな…

あぁぁぁっ!!両手でアイアンクローされているみたいだ…!!
あ、頭が痛い…いたいぃぃぃっ!!
ちょっと…これはさすがに酷い気がするんだけど…?

だが、俺の頼みはサリィに聞こえるはずも無く、俺は頭が潰されるんじゃないかと恐怖しながら痛みに堪えていたんだ…
うぅっ…目の前がかすんできた…これは非常にまずい状況では…
俺がそう思ったとき、サリィは俺の体を壁に向けて思いっきりなげたんだよ!

本日3回目の壁に対する激突…しかも、今回は今までの中で一番痛かった!
おかげで意識が少しはっきりしたけど…これは痛い…
はっ…サリィ、今の状態の俺に追撃を仕掛けるつもりだと…!?

そう思った瞬間、俺の心の中にまたあの感情が芽生えてきたんだ…
恐怖心…逃げたいって気持ちがね?
逃げても何にもならない状況だったら…恐らく俺は逃げていたかも知れないほどの恐怖が俺の体を電撃のように走る…
くそっ…こんなことをしている間にもサリィが…サリィがこっちに来る…

「うわぁぁぁぁぁっ!!」

そして、俺はサリィがある程度近づいた時…誤って剣をサリィに投げてしまったんだ…
ま、まさか…この状況で剣を手放すなんて…
まずいと思ったときには既に遅く、剣はサリィに向かって飛び始め…弱点の部分に当たったんだよ…

……あれっ!?当たった…?嘘…だろ?マジで?

……やったぜーーー!!

勝った…俺が偶然を味方につけてサリィに勝ったんだよ!!
本気でうれしいな今…俺のような奴でも、運を味方につければ出来るってことだろ?
初めて、初めて…戦いってジャンルで勝つことが出来た…

俺は余りの喜びにそれ以外のことを考えることが一瞬できなかったんだ…
それくらい、今の俺はうれしさに満ち溢れていたんだよ!!

「…おい、俺を助けてくれよ…うれしいのは分かるけど、瓦礫に足を取られている俺を無視して喜ぶのはやめてくれよ?」
「あっ…悪い…ちょっと待っててくれよ?」

俺はナッカーサーに指摘されてからそのことを思いだしたんだよ…
ナッカーサーを早く助け出して、あそこで倒れているサリィを連れて帰らないといけないんだから、喜ぶのはその後だったな…
いやぁ…しかしうれしい…

それから、俺はナッカーサーの足部分にある瓦礫を撤去する作業に入ったんだが…予想以上にこの瓦礫が重いんだよな…
いや、まぁ…無理って事は無いけどさ?今の俺なら、こんな瓦礫の一つや二つ簡単にのけてやるさ!!
それから一人で瓦礫を撤去していく俺…小さい奴から撤去しているから、進行速度は遅いけど…まぁ、そこは大目に見て欲しいところだね

「くそっ…こ、これは…重いな…」
「頑張ってくれデメトリオ!!その瓦礫をのけてくれたら何とか這いずって出られそうだから!!」
「あぁ…行くぞっ!!ファイトーーッ!!」
「オーーーーーッ!!」

ガタンッ…

よし、これで何とか出られるかな…?ふぅ、これは明日は確実に筋肉痛だな…
俺がそう思って、ナッカーサーに手を差し伸べた時だ…
実に絶妙なタイミングであたりにアラーム音が鳴り響いたんだよ!!
な、なんだ…!?この軽快な音は…!?一体何なんだっ!?

【起爆装置起動まで…後…10分です…】

あぁっ!!忘れていた…そういえば、ゴルガーが起爆装置を作動していたんだ…やばいな…早く逃げないと…

「ナッカーサー!!早く逃げよう!!」
「そうだな…じゃあ、俺が言った緊急用のテレポーテーションシステムが置いてある部屋に行こう…あそこならシャッターもおりるから、唯一爆発にも巻き込まれないだろうし…」
「わかった…ナッカーサー、足は大丈夫か?サリィは俺が背負っていくけど…」
「あぁ…大丈夫だって、安心しろ」

…さぁて、じゃあさっそくサリィを背負って…うぉっ!?結構軽いな…
重いんじゃないのかよって突っ込もうとしたなら、俺に裏をかかれたって奴だな…へへっ…

そして、俺はナッカーサーと一緒に部屋まで逃げることが出来たんだ…
さぁて、後はシャッターを降ろせば終わりだからな…
俺はそう思いながら、サリィをそっとテレポーテーションシステムの転送部分に置いて、シャッターを下ろすレバーのところに行ったんだ

「後はこれを下に移動させれば、自動でシャッターが降りる仕組みなんだな…」

俺はそう言いながらレバーを下に降ろしたんだ…
さぁ、これで一段落…って、あれっ!?
どうして…どうしてシャッターが下りないんだ!?

「ナッカーサーっ!!やばいよっ!!シャッターが下りない!!」
「……そのようだな…テレポーテーションシステムも止まってる…これは、この部屋に電気が通っていないからか!?くそっ…電力室にいければ楽なんだが…時間が無いな…緊急電源を使ってみるか…?デメトリオはそこでおとなしくしていてくれ」

【起爆装置起動まで…後…5分…】

や、やばい…これは非常にまずいじゃないか!!
このままじゃ…全員全滅だ…
俺が電力室に行って、電気を回復させれば助かるかも知れないけど…
でも、電力室に行って俺が無事に時間内に戻ってくる事はできるのかな…?
もし…もしも電力室が近いなら別に問題じゃないけど…遠かったら俺は…死ぬよな?

でも、このまま何もしなかったら、全員ここで爆発に巻き込まれて死ぬのか…
それも、嫌だよなあ…
………やっぱり、行くしかないな…
怖いけど…本気で怖いけど…電力室が近いって信じていくしか…

そう…俺はここで、一種の覚悟のようなものを心の中で決めたんだ…
ジェラシカに体を乗っ取られていなかったら、絶対に選択することが出来なかったであろう選択肢を俺は今から…選ぼうと思う…
行くぞっ!!
っとその前に…縁起でもないことだけど…この部屋に持ち物は全て置いていこう…
もし…もしも俺が死んだ時、ジェラシカにサリィをサポートしてあげて欲しいし…それに…
忘れられるの、嫌だからさ…
ナッカーサーは緊急電源を起動するのに忙しそうだから…何も言わないで行くか…
ジェラシカ、もしもの時は頼むよ?
いやまぁ…全力で戻ってくるけどね?

そして、俺はもし俺が戻ってこれなかった時のために、外側からシャッターの開閉レバーを下ろしたんだ…
これなら、俺が戻ってこれた時にシャッターが閉まっていてもシャッターを開けることが出来るし…

だが…俺の考えは自分が思っている以上に甘かったって事を俺は思い知らされたんだ…
電力室が俺の思っていた以上に遠かったんだよ!!
まさか…こんなに入り組んだ場所にあったなんて…早くボタンを押して戻らないと…
だが、焦る俺を尻目に電力を送るボタンは中々見つけることが出来ないでいたんだ…
どうしてこんな時って中々見つかってくれないんだよ!!

だが、俺は乱雑に散らばった書類の下にようやくボタンを見つけることが出来たんだよ…
さぁて…これを押して早く戻らないと…

【起爆まで…残り1分】

なっ…!?ま、間に合わない…?単純に考えても…俺はあの部屋まで戻れないじゃないか!
まさか…まさか…本当に…
その次の瞬間、俺の頭の中に死って言葉が浮かんでくる…
くそぉっ…こんなに電力室まで距離があったのなら、初めから…来なければ…
だが、いくら後悔してももう遅い…俺はどう足掻いてもここで死ぬって事が俺にはわかってしまったんだよ…
そして、俺はボタンの前で少し固まってしまった…
あれだな…俺には死ってのが余りに恐怖でありすぎたんだろうな…

今思えば、俺の人生って何だったんだろうか?親が残した宿屋をついで…
子供の時から色々なことに負け続けて…友達は出来たし…裏切ってしまったけど仲間だっていた…
いや、今だって…ナッカーサーが俺がそこにはいないって事に気がつかず、俺達を逃がすために頑張ってくれている…
待てよ…?そうか…俺にはなんだかんだで仲間が…
改めて思いなおすと…中々波乱に満ち溢れた人生を最近送っているじゃないか
こんな体験…普通に過ごしているだけだったら絶対経験することが出来なかった…つまり、案外いい経験だったってことだよな?
後は俺が逃げなければ…もう少し俺の評価は…
これが…逃げ続けた俺に戻ってきた罰って奴なんだろうかな?

【残り…30秒です…】

だったら……嫌だな…
ははっ…はははっ…嫌だな…死にたくない…
こんなところで死ぬのは嫌だっ…俺はまだ生きたい!!

「うぅっ…うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

だが、俺は結局…残った二人を助けるために電力ボタンを押したんだ…
これで…俺は…
嫌だ…いずれ俺の存在なんて何も無かったかのように忘れ去られるのが…
俺は…俺は…

そして次の瞬間、俺は物凄い爆音を聞いてから、体が横に吹き飛ばされるのを感じたんだ…
そして俺は泣きながら目の前が真っ暗になるのを感じたのだった…

〜〜〜ナッカーサーの視点に移ります!!〜〜〜

くそっ!!くそぉっ!!どうして緊急電力も動いてくれないんだ…?
このままじゃ、俺はもちろんサリィもデメトリオだって死んでしまう…
そんな結末、俺は絶対に認めない…認めないからなっ!!

そう思っていたときだった…
なんと、このタイミングで電力が復旧したんだよ!!
そして、すぐ後ろでシャッターが下りる音も聞こえたんだ…
助かった…一体どうして電力が急に復旧したのかは分からないけど、とにかく…これで助かったな…
俺はそう思うと、デメトリオの方を向いたんだが…
って、あれ?デメトリオの奴はどこだ…?

部屋の中を見回してみても、デメトリオの姿は無い…そして、シャッターの向こう側から爆発音が聞こえてくるのを聞きながら、俺はどうしていきなり電力が復旧したのかに気がついたんだ…

「デメトリオっ…あの馬鹿っ!!くそっ!!畜生!!」

俺はシャッターが変形して開かないことに気づいていながらも、ずっとレバーを上にあげていたんだ…
案の定…シャッターは動いてくれない…それに、この爆発だ…恐らくもう…
そして部屋の中を見回してみると、やけに丁寧に折りたたまれた上着とポーチを見つけたんだ…
あの馬鹿…これだけ残していきやがって…

くそっ…ちくしょぉぉぉぉぉぉっ!!

そして、俺の叫びは無情に密室の中で響いたのだった…
12/11/30 20:00更新 / デメトリオン
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■作者メッセージ
どうも!!

さて…みなさん、この結末を誰が予想できたでしょうか?
デメトリオはここでなんと…死んでしまったんですよ!!

……最後に彼の印象が少しでもよくなってくれたら、作者としてはうれしいんですけどね…
では、後二話…楽しんで読んでいただけるとうれしいです!!
ありがとうございましたーー!!

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