連載小説
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終点 裏オークション
ミルとミリアが離れ離れになる事件から早くも半年が過ぎていた。

「ミル〜♪」

「……」
ネスがミルに抱きつく。
年相応の少年であれば、彼女の大きな胸が腕に当たっていれば興奮の一つもするだろう。
しかし、精神的に死んでいるような状態のミルは感情一つ動かないでいた。

「あのねあのね?今日、セイラさんの所行って来たんだけどね?なんと、私妊娠してたんだって〜♪」

「……ぅぁ…」
ここに来た当初は、ネスがなかなか妊娠しないと騒がれていた事もあった。
まるで半狂乱かのように暴れ回るようなSEXで子を宿そうともした。
近所の迷惑になりそうな程大きな声を張り上げて激しく交わる事もあった。
そうした事がやっと報われたように、医師であるセイラさんからの受胎告知。
それが嬉しくて、ネスの瞳はキラキラと輝きを纏ってミルを見つめている。

「………」

「そう♪良かったぁ♪」
何をどう納得したのかは、本人にしか分からない。
多分、飛び跳ねるような喜び方から見て、ミルが肯定したと認識したのだろう。

「ねぇミル?今度、面白い買い物に行こう?」

「……」
依然として、ミルは何も答えない、答えられない。
しかし、ネスは勝手に頭の中で肯定の意を示したと思いこんでニコリと笑う。

―――――――――――――――――――

それから数日後、手製の車椅子に乗るミルを連れたネスは、暗い路地裏にあるバーに来ていた。

「マスター、お久しぶりね♪」

「あら、ネスちゃん♪ついに夫を………どうしたの…?」
どうやら、ネスとここのマスターは顔見知りらしい。
ネスが挨拶すると、向こうも笑顔で返す。
ネスの隣に居るミルが、彼女の夫だと直感的に感じたマスターは、それを率直に褒めようとするも、ミルの廃人のような姿を見て少し引いているようだ。
まぁ、無理も無い。
最初、アマゾネスの集落で過ごす事になった時もミルが廃人寸前なのを全員に話さなければ全員が引いていたのだから。

「いやぁ、つい初日から飛ばしすぎちゃいまして…」
自分も壊れてしまいそうな程に善がっていたのだから、相当量の快楽をどちらも受けている。
それで、ミルの方が弱かった為にこんなことになってしまったのだと、マスターは直感でも経験でも無く、恐怖で感じ取っていた。

「まぁいいわ。それより、今日は裏オークションの日よ?こんな場所にいていいの?」

「寧ろそれが目的なんです♪まぁ、ウィンドウに回ると思いますけどね♪」
何やら声を押さえて話す二人の表情は、挨拶したときよりも楽しそうな表情をしていた。
どうすればあそこまで無垢に見える笑顔が出せるのだろう。

「マスター!ウィンナー頼む!」

「マスター?ワインをお願いしますわ…」

「おぅいマスター!こっち、グラタン頼む!」
そこかしこから注文が飛び交う。
どうやらもうそろそろオークションが始まるのを知っている客たちが、開いている間に食事を済ませようとしているらしい。
しかし結構な面子だ。
明らかに場違いなお嬢様のようなドレスに身を包んだ女性も居れば、これから戦闘にでも赴くような格好をした女性もいる。
しかし、このような酒場でも現実世界のような酒場と明らかに違う所がある。
酒の匂いが漂うのはどこだってそうだろう。
しかし、女性客中心(というか、男一人で入ったりしたら確実に襲われる)のこのバーでは、現実世界で言う男臭い匂いは一切無く、代わりに女性が漂わせるほのかに甘い香りが立ち込めている。

「あれ?マスター、お香変えた?」

「あら、よく分かったわね♪微妙に変えて見たの♪今日のも媚薬混入タイプだけどね♪」
要するに媚香という訳である。
その証拠に、匂いだけでミルの肉棒は無意識にそそり立っていた。
スボンを押し上げる形な為か、とても目立つ。
周りを見れば、他の男性客も同様の様で、カップルなら熱いキスを、夫婦ならお互いの陰部を弄り合っていた。

「あぁ、もう始まるわね…皆〜?カーテン閉めて〜?」

『はぁ〜い♪』
マスターが部屋の奥から誰かを呼んだ。
その奥の部屋からやってきたのは小さな淫魔の子供たち。
その子供たちは皆一様に同じような格好なので、きっとマスターの娘たちなのだろう。
そして、子供たちはまだ夕日が差している窓に黒く分厚いカーテンをかけて店内を見えなくした。
ご丁寧に店のかけ札も閉店にひっくりかえっている。

――――――――――

そして、裏のオークションと呼ばれる闇市的な物は始まりを告げた。
最初の方は、非合法ルートで入手した麻薬や薬物など、暴力団関係の人間が買って行きそうなものを紹介していた。
買って行くのももちろんそれに準ずる人たちの様だ。

「ここら辺は何も欲しそうなのは無いわね…」
まるで品定めするように、顎に手を当て考え込むネス。
彼女の真剣そうな表情は、何か狙いの物があるような表情だ。

そして、次の競売が始まった。

「続いての競売品は、市販されている濃度の1500倍の濃度を誇る幻の逸品、旧アルラウネの蜜壷でございます。」
そんな説明が続けられ、競り落としが開始した。
どうやらネスの狙いはこれらしく、積極的に値段を釣り上げてきている。
それから数人に絞られた中での値段の釣り上げあい。
その結果、ネスが辛勝を果たした。

「やった!これで、ミルも元に戻れるよ♪」
どうやら、蜜を使ってミルを元に戻そうとしているらしい。
強烈な刺激を与えて、元気だった頃の精神状態にでもしようと言うのだろうか。
メカニズムが全く分からない。

「続いての競売ですが、ここから暫く奴隷競売となります。安易な気持ちでの競り落としはご遠慮願います。」
そう言うと、舞台の上にズラズラと男女問わず様々な人が入って来た。
中にはサキュバスやオーク、ドラゴンもいる。
だが、そんな中でミルは一人の魔物娘に目を落としていた。
服も髪もボロボロで、生気が感じられないラミアの女性。
その女性に、ミルは見覚えがある。
だが、どこであったかは思い出せない。

「まずは、こちらの男性からスタートです」
そうして、奴隷競売は始まりを告げた。
どんどん値段が上がって行く中、ネスは一向に参加しようとはしなかった。
まぁ、理由はだいたい分かる。
ネスはミルがいればそれで幸せなのだから、それを妨害しようとする者など必要な訳が無い。
ましてやそれを多額の金を払ってまで買おうなどとは、思う筈も無い。

「――続いて、このラミアです」
遂に、ミルの気になっていた人の番だ。

====やっと会えた=====

そんな声が、ミルには聞こえた気がしたが、それに答える術はミルにはない。
やがて、彼女――ミリアとネームタグが描かれていた――は、一人の貴婦人らしき女性が競り落とした。
そして、出口へミリアが運ばれて行く。
ミルの横を通った辺りで、ミリアは小さくこう言った。

…………浮気はダメって言ったのに……‥‥…

そして、彼女は外へと運ばれて行った。

―――――――――――――――――――

あのオークションから数日が過ぎ、ネスの手元にやっと求めていた旧アルラウネの蜜が届いた。

「ミル〜!やった〜!届いたよ〜♪」

「ほぉ、これが競り落としたっていう旧アルラウネの……」

「そうなんですよ〜♪競り落とすのに苦労しましたよ〜♪」
たまたま遊びに来ていたマルネスが、ミルの代わりに返事をしながらもネスの持って来た蜜壷に興味心身になっている。
それもそうだろう。
魔王が代替わりして魔物達は一斉に魔物娘となって人々を深く愛するようになった。
それ以前の魔物達も魔力の変質の影響を受けて次々と魔物娘へと変わっていく。
そんな時代に、旧魔王時代のアルラウネが残した貴重な蜜だ。
貴重価値は相当なものとなる。


「はい♪ミルあーんして〜?」

「……んぅっ…」
半ば無理矢理口の中へ流し込まれた蜜は、そのまま口から流れてミルの身体の中に入っていった。
その激し過ぎるほどの刺激と、媚薬をとても強く濃縮したような感覚に囚われて、ミルの意識は一瞬宙を舞う。
だがそれも一瞬の出来事であった。
宙を舞っていた意識は自分の身体へ戻る。
その頃には、死んだような心がまるでそうなる前の状態に戻っていたのだ。

「ッハッ!?こ…ここは…」

「み…み…ミルゥゥゥゥ♪」

「やったな!成功したんだ!」
長い間廃人の様な状態だったミルだが、晴れて自分の意識が生き返ったのだ。
だが、身体が感じるこの違和感。
いつも目覚めた時には、別の誰かが抱きついてくれていたはずなのだ。

「えぇ…と……あなた…は…」

「ネス…ネスだよぉぉぉぉ……良かったぁァァァァぁぁぁぁッ♪」

「物凄い泣きようだな…まぁ、それだけコイツが大事だった訳だ。旦那さんだもんな…」
その言葉に、一瞬ミルは疑問を抱いたがそれ以上の発展はなく、疑問は疑問で片付けてしまった。
目の前で抱きついて泣いている女性が自分の妻で、僕はこの人の夫。
その事実を受け止めて、それが正しいと自分に言い聞かせた。
そして、疑問は疑問のままで消え去っていく。

「儀式はあれくらい派手にシないと夫婦の契を結べないものな…でも、普段からあんなに狂ったようなのはもうダメだぞ?」

「はい…はいぃ……ミル…ミルゥゥゥ…」
どうやら、僕はこの人と激しい交わりの末に意識と言うか自我を潰したんだそうな。
そんな説明をマルネスから聞いたミルは、とりあえずネスを慰めて話に戻った。

「――と、まぁこんな所か…」

「僕が壊れていた間にそんな事が…」

「うん…悲しい事も嬉しい事もあった……でも、私はミルが帰ってきてくれて嬉しい♪」
その言葉に、ミルはキュンと来たのだろう。
それを証明付けるかのように、身体の至るところが熱い。
見れば、話を進めている間にも自分の肉棒は元気そうに震えている。

「わぁ、ミルってば早速シたいのぉ?それじゃ、ちょっとまっててね?服脱いでさっさと…」

「馬鹿、蜜の効能に決ってるだろうが…少し落ち付かんか!」
止めるマルネスを無視して、ネスはあっという間に服を脱いでしまう。
外をずっと駆け回っていた事の証の様に焦げ茶に焼けた褐色の肌が無性にエロさを際立たせる。
幼さの残る顔に、色気の引き立つ泣き痣。
その他もろもろ、ミルが劣情を沸き立たせない訳が無かった。

「それじゃ、いっただきまーす♪」

「うっ…」

「はぁ……仕方ない、私も手伝ってやる。ミル、こっちを見ろ」
言われたとおりにマルネスの方を向いたミル。
次の瞬間には、マルネスの舌がミルの舌を絡め取って蹂躙していた。

「んむっ……んっ…はっ…」

「ジュルルッ…チュッ……それじゃ、そろそろ…」

「んっ…プハッ…それじゃ、私は此処までにしておくか…」
そう言って、マルネスは唇を離して一歩離れた。
それと入れ替わるようにネスが顔を近づけてくる。
しかし、キスはされない。
代わりに、ミルの腫れあがったように大きくなった肉棒をネスの膣が飲み込む。
今更ではあるが、赤ん坊の事は気にしないでもいいのだろうか。

「だい…じょうぶ……まだ、危なくないんだも…んんっ♪」

「それじゃ、私はこれで失礼する。仲良くヤれよ?」

「えっ?ちょっ!止めて…うっ……」
どうやらマルネスも身体の火照りを抑えられなくなったらしい。
今の彼女の頭の中は、自分の旦那の事でいっぱいの筈だ。
だが、それをミルが悟るよりも早く、ネスは腰を強く激しく振る。
その表情は、いつもならただただ寝転がっているだけの旦那が腰を振ってくれている事からか、とてもうれしそうな表情をしていた。
気が付けば騎乗位になっていた訳だが、ネスがいつ押し倒したのか、ミルには分からない。
それほどまでに、ネスの膣の締め付けが気持ち良く、愛おしいのだ。

「あっ…あぁぁぁっ♪ミルぅ!もっと、もっと〜!」

「ぐっ…うぁっ…だ、だめ……でちゃ…うあぁぁぁぁ!」
快感に伴って感度も上がって来たのか、ネスの腰はもっともっととせがむように、更に激しく振られ始めた。
そんな強烈な刺激にミルが耐えられる筈も無く、彼女の膣の奥深くに挿し込むと同時にミルは大量の精液を流し込む。
精液を流し込まれる際の刺激が効いてか、ネスもミルを追いかけるように絶頂へ達していた。
痙攣する身体をお互いに抱き合う形で押さえる二人。
その光景は、とてもつい先日まで片方は壊れ、片方は飢えていたとは思えないものだった。

――――――――――――――――――――――

あれから、どれほどの月日が経っただろうか。
ネスはあれから子を産んで「ネル」と名付けてミルと共に育み。
マルネスはずっと深く愛していた最愛の旦那を亡くし。
ミルはアマゾネスの村でアマゾネスやその夫等の友人をたくさん得た。
それから暫く経ったそんなある日の事。

「マルネスさん……えと…その……」

「気を使わなくてもいいんだ………どうせ、あの人もそんなに長く無かったんだしね…」

「マルネスおばちゃんどうしたの?」
もう5歳になるネルが、マルネスの辛そうな表情を見て不思議に思ったのか、彼女の裾をくいくいと引っ張る。
それに気付いたマルネスは、すぐにその辛気臭そうな顔をやめてネルに笑顔を向けた。
彼女にも娘がいた筈だが、今日は連れていないようだ。
多分、もうそろそろ自立しても良い年齢だった訳だし旦那漁りにでも行ったのかな?

「ネス、少し来てくれるかい?」

「はーいー?アナタの為なら、例え身の中口の中〜♪」

「プッ……随分と卑猥な表現じゃないか…ハハハハハハッ♪」
どうやら、何を勘違いしたのかマルネスはエロイ事を想像したらしい。
全く、魔物と言うのはなぜこうまで頭の中がピンク色なのだろうか。
だが、そんな彼女たちがミルにとっては心の癒しにもなっていた。

「アハハハッ♪やっぱりミルは才能あるよっ♪」

「えへへ〜♪やっぱりそう〜?すごいでしょ〜?」

「わぁい♪おかーさんすごーい!」
こうして、ほんわかした生活をミルは続けて行く。
明るさ満点の家族は、その明るさを周りに振り撒いて行くだろう。

それは、とっても嬉しい事だ。

FIN
11/12/07 19:46更新 / 兎と兎
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あと一つ番外編書きます

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