連載小説
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連発する発射と出発する発車
Μ不思議の国某所Μ
Μ初太視点Μ


「う、うう……」

俺は頭を抑えながら起き上がる。

「初太……」
「マドラ、無事か」
「うん……」
「一体、何が起こったんだ、景色が何度も変わった記憶があるような、ないような」
「多分、あれのせいだと思う」

マドラが指した小さな黒い珠、強制転送珠。
壊れているのか、珠から白い煙が――

「ぼくたちはその珠によって、国中を何度も、ワープしたと思う……」
「誰かー、誰かいませんかー」

俺は周囲に人がいるかを確認するため声をかけるが

「ダメだ、返事がない」
「初太、歩いてみよう、もしかしたらワープスポットが見つかるかもしれない」
「そうだな……」

俺とマドラは道なき道を歩き始めた。

「それにしてもここはどこだ?やけに霧が深いところだな」
「刑示板さえあればわかるけど……ワープの途中で紛失したようだ……」
「マドラ、木があるぞ」

霧の奥に木の影がうっすらと見える、しかも二本。

「もしかしたらワープスポットかもしれない」

俺とマドラは木の所へ向かう。

「実のなる木か、それぞれに赤い果実と青い果実が実ってるな。マドラ、この実って何……あれ?木の成長が早くて、赤い果実が、青い果実を取り込んでる?」

その光景は良く言えば受粉、悪く言えば捕食



官能的に言えば、魔物娘が男を取り込んでいるかのようだった。



「これは、夫婦の果実だよ……」
「へぇー、流石不思議の国、木の成長も早いんだな」



「違う」



「ぼくが知る限り、夫婦の果実はここまで成長は早くない……もしあるとすれば、ここはキョウシュウマウンテンだ」
「マドラ、それって以前言ってた運転の教習を行う山の事か?」
「うん、だけどここは教習の第一階層じゃない――」



「郷愁の第三階層だ」



マドラの足踏みが早まる。

「待てよ、マドラ、霧の中を走ったら危険だ!転ぶぞ」
「転んだっていい、早く山を降りないと、すぐに下山をしないと、急がなきゃ――」



「――郷愁に取り込まれてしまう前に」



Μタマゴの里Μ
Μ満知子視点Μ


「はい、運賃代」

花月さんが帽子一式と薬ビン一箱をスライムに差し出す。

「あんっ、あんっ」

スライムは薬の中身を宿主の肌に垂らす。

「あはっ、身体がスッゴく敏感になっちゃう〜」

スライムは親指を立てるような仕草をする。

「スライムの許可が下りたのデス!みんな乗り込むのデス」
「はぁー、地獄行きのバスか」

ノリノリのウィリアに対し、ブルーグさんはため息をつく。

「わーい、あたし一番」
「待ってよ〜」

魔女がスライムの上に乗り込み、アリスもそれに続く。

「慌てると転ぶよ」
「だいじょーぶだよおにぃちゃキャッ!」コケッ、ベチョ

夫の忠告通りアリスが階段につまづき、顔や服が粘液まみれになる。

「あーん、べとべとだよ、おにぃちゃん」
「ケガが無くて良かったよ」

スライムは身体を動かして、アリスを立たせる。

「ありがとう、バスさん」

にっこり微笑むスライム。


「あのスライム気が利くわね。それにひきかえ……」


「出るぅ〜」ピュッ♪ピュッ♪
「精液が身体じゅうにとろけちゃう〜」


「朝っぱらから運転手がバスガイドに発射なんて、発車する気あるの?」
「あー、その心配はないよ」
「ブルーグさん、それってどういうことですか?」
「寄生スライムが移動をはじめ、雑事や外敵の排除を行うから、宿主であるスライムキャリアは愛する夫、つまり運転手との交わりに集中出来るんだよ。はぁー、あんな風に仕事全般を他の者たちに任せられたらいいのに……」

と、ため息をつくブルーグさん。ブルーグさんも夫とエッチをしたいのね……


「うひひ、あのバスガイドのねーちゃん、帽子から制服までスライムで出来てるぜ……」


そんなアタシ達を尻目にへーくんは涎を垂らしながら、バスガイドを凝視している。

「参ったわ、本当なら今すぐにでもまどっちや初太を探したいけど……」
「仕方ないさ、コルヌさんが案内役を連れてくるまでの辛抱だ……ぐふふ」
「へーくん、口から涎を滴ながら言っても説得力ないわよ。それにしても、結構大きいわね」
「満知子もバスガイドの胸の大きさに気づいたのか、スライムボディに包まれて判りづらいがFに違いない、ウヒヒ」
「ちがうわよ、アタシが言いたいのは図鑑の挿絵よりもスライムが大きいことよ」

「あれは夫の精を蓄えてより大きくなった個体なの」
「一度に多くの住人を移動させる『大型ばす』としてね」

「へぇー不思議の国にもバスがあるのね」

花月さん夫妻の解説に納得をするアタシ。


「カニカニ〜」


「ちょっと、リンス、速いってば!」
「どけどけ〜俺はカニだ〜」

カニの仮装をしたリンスさんがシャンプさんを乗せてこちらに向かってきた。

「チョッキン、チョッキン〜」
「いくらカニの鋏をカチカチ鳴らしても前進してる時点で既にカニじゃないわよ!」
「カニカニ〜」
「こうなったら、急ブレーキ!」

シャンプさんがそう言うと

「アッー!」

リンスさんが急停止し、恍惚な表情を浮かばせ

「アッー続ッー続ーッ!」

気持ち良さそうにへたれこんだ。
まるで射精したかのように

「ふぅ、これで暫くは動けないわね」

「あの〜シャンプさん」
「何だその格好?まるでキャンサーじゃねーか」

へーくんがそう思うのも無理はない。
リンスさんはリアルなカニの着ぐるみ、シャンプさんは上半身裸で殻のビキニを身につけただけの露出の多い衣装だった。

「そうよ、キャンサーよ!」

明らかに恥ずかしい格好なのに、堂々と宣言するシャンプさん。
流石マッドハッター。もしアタシがあんな格好をしてへーくんの前に立ったら、きっと難癖つけてへーくんを押し倒すと思う。

「以前作った夫婦用のコスプレ衣装が役に立ったよ」

と、微笑むのが洋服屋のサンドラさん。

「参ったわ、これがサンドラさんの自信作なの?」
「いんや、あの二人はオマケだよ。本当のサプライズはこれからさ、二人とも出ておいで」

サンドラさんに呼ばれてやってきたのは

ガシャン、ガシャン

と金属音を立てる



鎧の戦士



首から下は鎧に対し、頭の装備は三角帽という何とも不釣り合いな見た目だ。
でも、面構えがとても格好よく、年頃の少女にモテそうな感じがする。へーくんもこんなに頼もしかったらないいのに

「何だよ、ジロジロ見やがって」
「お、重そうだな〜って」

アタシは咄嗟に誤魔化す。

「ハッ、軽そうな胸をしている女に言われたくないね」

ブチッ

「ガキに言われたくないわよ!」
「キレるってことは、気にしてる証拠だぜ?」
「何を〜」


「ご、ごめんなさい!」


アタシと戦士の合間に入ったのが



魔女



とんがり帽子にサバトの紋章付きローブにスカート、オプションに木製の箒。
可愛らしい格好に、ピンクの髪の毛とぱっちりとした青い瞳という素材が引き立ち、年頃の少年にモテそうな感じがする。
悔しいけど、へーくんなら即ナンパするんだろうな。

「あの、わたしの格好……変ですか?」
「ううん、そんなことないよ、似合ってる、魔女っ娘って感じがする」

「良かった……」
「ふん、もし変なんて言ったら、オレがリコの代わりにブチキレてたけどな」
「ダメだよコーン、住人とは仲良くしなさいって、おかーさんが言ってるじゃない」

不機嫌そうなコーンを宥めるリコ。
十歳ちょっとの年齢で夫婦してるんだね。

「どうだいリコちゃんの仮装は?」
「まぁ、悪くはないと思うわ」
「だろ?今の流行を取り入れてるのさ」

「へぇ〜流行ね〜」
「何よへーくん、リコちゃんをジロジロ見て。ナンパのつもり?」
「ナンパなんてしねえよ。み〜て〜る〜だ〜け〜」


「コーン、リコ、そろそろ行くよ」
「シャンプさん、待ってて、おかーさんからお守りを貰うから」

花月さんが自分の帽子を脱ぎ、それをリコちゃんに渡す。

「はい、お守りよ」
「ありがとーおかーさん」
「いざというときにはその鉢がリコを守ってくれるわ」
「うん」

「ほら行くぞ、リコ」
「コーンちょっと待って、帽子の鍔が大きすぎて前がよく見えないよ」

コーンはリコちゃんに手を差し出す。

「前が見えづらいなら、オレが手を貸してやるよ」
「うん……」

コーンがリコちゃんの手をしっかり握り、歩き始める。
そんなリコちゃんの頬がほんのり赤く染まっていた。



「そろそろ、行くか」
「ええ、あなた」

花月さん夫妻がバスに乗車。

「では発車するのデース!」

「出る〜」ビュウウウ〜

「そうそう、精液をビュルビュル身体中にぶっかけて……その発射じゃないデース!」

あはははは


ウィリアのノリツッコミにサバト会員達が大ウケ。

バスがゆっくりと前進、ヨツンバウェイへ向けて発車された。


キン、コン、カン、コーン♪

『ただいまより、寄生スライムばす発車記念パーティーを開催します』

里の放送を合図に、色とりどりの帽子を被ったマッドハッター達が里中央のテーブルへ集まる。
温かいお茶がカップへ注がれ、甘い香りがするお菓子がテーブルに並べられる。

こんな時で普通にもお茶するの?

「満知子、俺達もお茶しようぜ」
「……いらない、そんな気分じゃない」


ぐぅ〜


「満知子、朝から何も食べてないだろ、そんな調子じゃ胸に脂肪が溜まらないぞ?」
「腹に脂肪が溜まるよりはいい」
「ほぃ」

へーくんがアタシに薬瓶を差し出した。
中身は淡く輝く液体。

「前向き薬?」
「飲めば落ち着くぞ」
「こんなの飲んでも一緒よ」
「ウィリア様が言ってたぜ「どんな物でも試してみないとわからないのデス」ってな」
「わかったわ……」コクッ
「どうだ?」
「……別に」
「あー、そうか……それなら」


チュパチュパ


ひゃうっ!


チュパチュパ


「へーくん」


チュパチュパ


「いやん、耳をしゃぶらないでぇ」
「満知子が寂しそうだったからな」

はぁ?だからといっていきなり耳をしゃぶる奴がどこにいるの?変態よ、変態!

はっ、まさかへーくんは変態なの?

変態を夫にするアタシはもっと変態じゃない!

「くっ、お返しよ!」

アタシは、(マーチヘアとしては)つるぺたボディでへーくんを欲情させてやるの

どうせ変態夫婦なんだ、思い切り変態なことをしてやるわ!

「いいぜ〜まずは密着コキだ」

変態のへーくんはズボンを脱ぎ、アタシの腹に熱い物が――

「出るっ」ビュウウウ

変態のへーくんが発射、お腹に熱いのが〜

「へーくん、こっちきて?」

変態のアタシは椅子に座り、股を開く

「ハァハァ」

ああん、変態のへーくんがケダモノのような目付きで歩みよってくる

オチンポもビンビンしてるよぉ

「ウヒヒ……あ」
「へーくん?」
「満知子、迎えが来たようだ」

コルヌさんが一匹のチェシャ猫を連れて戻ってきた。

「遅くなってゴメン」
「チェルですニャ、初太をあんニャいしたチェシャ猫ですニャ。ゴメンニャさい、いい所を邪魔して」

我に返ったアタシは慌てて股を閉じる。

「満知子、今の気分は?」
「何って……最悪……じゃない?」
「ウィリアさん曰く、前向き薬は服用後に性交すればより前向きになれるそうだ」
「そうなんだ」
「因みに女同士の性交でも効果があるんだって」
「百合でもいいのかよ……」


「満知子ちゃん」
「コックさん?」
「戻ってきた時のケーキは何がいい?」
「ケーキ?」
「君達が戻ってきた時に温かく歓迎するためのさ、満知子ちゃん達がマドラちゃんと初太君を連れてここに来ると信じてね」
「コックさん……」
「それに見て、里の皆も気持ちは同じだよ」
「あっ」

垂れ幕には『大丈夫だよ、満知子ちゃん』と描かれてあった。


Μ


「――以上がアタシからのリクエストです」
「じゃあ、注文通りに作っておくよ」
「宜しくお願いします……行こうへーくん。まどっちが無事であることを祈って」

アタシはコルヌさんが手配したタクシーに乗車。

「チェル、初太クンが移動した形跡は?」
「城下町に初太の匂いを強く感じますニャ!」
「城下町までお願いします」


「はっしゃ〜」ビュウウウ「ああん〜」


運転手(夫)の射精を合図に寄生スライムたくしーは動き出した。

「発射しないと発車しないのかよ……」


Μ続くΜ
14/12/15 23:16更新 / ドリルモール
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■作者メッセージ
ドリルモールです。

 久しぶりの更新です。

 今回の話から行方不明の初太とマドラを探すために満知子達が不思議の国を廻ります。

 次回は不思議の国の中心部にある城下町を舞台に、満知子達が初太達の手がかりを求めて、様々なばいくが販売されているお店を訪れ――


12/15 チェルの名前を間違えていましたので訂正しました。


 今回の用語集は、寄生スライム&スライムキャリアの交通機関『パラサイ交通』です。


Μ


用語集
【パラサイ交通】
 不思議の国にある交通サービス業。パラサイ峠を拠点に従業員である寄生スライム&スライムキャリア達が不思議の国中を巡回している。
 寄生スライムが乗り物の役目を果たし、タクシーとバスの二種類がある。なおバスの場合は夫の精をより多く摂取しており、通常よりも巨大なサイズである。
 ワープの需要が高い不思議の国の住人にとって、観光気分で使用したり、一度に複数の住人を目的地へ運ぶことに重宝されている。
 運賃は物々交換制で、乗車前に媚薬等交わりに促進する物及びマッドハッターの帽子を差し出す必要がある。
 従来の寄生スライム同様、外敵を追い払い、乗客をハプニングから守ってくれる。
 因みに寄生スライムの攻撃により転倒した女性を見かけると帽子を被った寄生スライムが女性に帽子を被せたり、自ら女性の体内に入り込むことでその女性を魔物化させる本能があり、それ故にパラサイ峠で転ぶと(人間としての)寿命が三秒で終わると言われている。

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