連載小説
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強請の約束事と強制の転送装置
Μ不思議の国・タマゴの里Μ
Μ初太視点Μ


「やっと、里にたどり着いた」
「里の方はパーティーで盛り上がってるようだね」

色とりどりの燕尾服と独特の帽子を被ったマッドハッターとその夫達が紅茶とお菓子を片手に会話を楽しむ。
幕には【コルヌ&花月・サイ夫妻緊急召集パーティー】と書かれてあり、更に【ようこそ討伐隊乱交記念】と書き加えられている。

「花月とサイ?」
「ボクの両親の名前だよ、ほらあそこで話をしてる」


「楽しかったわね」
「水汲み以外で里の外に出たのは、家族全員でのキャンプ以来だな」


男性はブラウンの短髪に無精髭。
女性の方は黒髪の上に漆塗りのお椀のような物を被っている。おそらくあれが彼女の帽子(キノコ)なのだろう。

「そして、彼等によってお茶会はさらに盛り上がるのさ」

周りには色狂いに交わる討伐隊達。身に纏う武装を脱ぎ捨て、口付けを交わし、胸を揉み合い、性器を啜り、淫らに腰を振る。

先程の殺意や必死さが嘘のようだ……

「女性が魔物になったら別人になり、夫もまた我を忘れてセックスに浸るのか……」


「セックスに浸る?聞き捨てならないな」
「性欲だけが欲望と思わないで」


と、反論するのがコック帽を被る女性とウェイトレスの少女。

少女は角に小ぶりな翼、そしてハート型の尻尾。
サキュバス……いや、不思議の国だからアリスが妥当だな。

パンパン

地面から大量のキノコが生え、厨房を形作る。

「始めるわよ」
「はい、師匠」

「アリスの方が師匠だったのか」
「コック姉さんはグレーテルさんから料理を教わったんだ」

とコルヌさん。

フライパンから油が弾ける音が鳴り、その上から次々と材料が投入される。

「ガーリック追加」

フライパンからニンニクが投入され、強烈な匂いが立ち込める

「ねぇ、ダーリン、血を頂戴♪」
「ほら、噛めよ」
「あはんっ」カプリッ

とある魔物娘が背中の羽を大きく羽ばたかせ妖艶な笑みで夫に寄り添ってきた。
彼女もサキュバスの類かと思ったが、口から生える長い牙で夫の首筋を噛み、血を吸い始める。吸血鬼なのだろうか?

「あれが前にマドラが言ってた吸血鬼?」
「ううん違うよ。あのヴァンパイアは恐らくこの国に来る前に魔物化したと思う」

厨房からの匂いがますます立ち込める。

美味しそうな匂いだな……

「初太、邪魔したらダメだよ」

マドラが俺の手を握る。どうやら俺は無意識のうちに厨房へと足を運んでいた。



「見つけた」
「ここが、タマゴの里か……」



里の入口からぞろぞろと鎧の兵士達がやって来た。

「討伐隊じゃない!?」

警戒する満知子達に対しナースさんは

「大丈夫、匂いにつられてきただ・け・よ」

『ようこそ、タマゴの里のお茶会へ』

住人達は笑顔で彼等を歓迎した。

「丁度料理が出来上がったところだ〜」
「サービスエリア名物、固有種風料理よ」

討伐隊は差し出された料理を躊躇なく口に運ぶ。

まるで料理に引き寄せられたかのように。

「長旅で疲れただろ〜いっぱい食うだ〜」

「美味しそうね」
「腹ごしらえするか」

性交を浸っていた筈の討伐隊が交わりを中断し、食事を始める。

「どう?これが性欲に勝る食欲の力よ」
「魔物娘やインキュバスは人間以上に食欲も強いのさ」

「あんたも食べてみなさい」

グレーテルが俺に料理一式を差し出す。

「そんなに心配なら『食育薬』で確認してみて」

俺は各料理に食育薬をトッピングして一口ずつ食べる。

モグモグ 「チェシャ猫の気まぐれねこまんま、媚薬少々」
シャキッ 「マーチヘアの発情人参サラダ、媚薬有り」
カリッ 「ドーマウスの劣情チーズ揚げ、媚薬有り」
ズルズル 「ジャバウォックの情欲ジャージャー麺、媚薬有り」
コクッ 「そして、マッドハッターの普通のキノコスープ、媚薬無し」

流石食育薬の効果。料理名や媚薬成分の有無といった情報が自然と頭の中に入ってくる。

「特に問題は無さそうだ」
「初太、一緒に食べよう」

俺達は席につき、料理を召し上がることにした。
向かい側には今朝挨拶したリコとコーンの美少女と美少年夫妻。

「はい、リコちゃんの分だよ」
「ありがとーコックねーいただきます」

虜のケーキを小さな口で美味しそうに食べるリコ。

「リコは相変わらず甘いもの好きだな〜太るぞ?」ズルズル
「ジャージャー麺五杯も食べてるコーンに言われたくないよ」
「これでタケリダケがあればな〜」

「そんな二人にはタケリダケ風カップケーキは如何?」

グレーテルはキノコの形をしたカップケーキを差し出す。

「おおー!タケリダケ」
「タケリダケの味がするだけで本当に発情する訳じゃないわ」
「んー!辛くてうまーい!ハァハァ……今度はリコを美味しく頂こうっかな〜?」

「えっ今から?タケリダケを食べたわけじゃないのに?」
「ノリだよ、ノリ。脱げよリコ」
「う、うん」カチャカチャ「えっと」カチャカチャ
「あー、じれったいな」ガチャガチャ
「や、やめてよ、コーン、強引に脱がさないで」
「あー面倒だ!キスしながら俺も一緒に脱ぐ」ガチャガチャ
「んーんー」

コーンは強引にリコの唇を奪う。子供ながらも大胆すぎる。

「リコ、入れるぞ?」
「うん……あっ♪」

リコは子供らしからぬ妖艶な表情をする。
対面座位で結合してると思うが、テーブルが視角になって見えない。

俺は交わりをよく見ようと椅子から立ち上がり


「ああー!」


突然の叫びに一時停止する。

ビュルルルル

討伐隊の一人があり得ない程の射精を繰り返していた。

「どうデスか?これがファミリアの射精パワーデス」
『おおー!』
「サバトに入会すれば、濃い精が味わえるデスよ」

ウィリアが喋る間も討伐隊の射精は続く。

「何が起きてるんだ?」
「ファミリアの魔力には精を濃くする効果があるのさ」
「マジかよ……俺にはレオタードを着た半人半獣の幼女にしかみえないぞ」

「止めてくれぇ、射精を止めてくれぇ」ビュルルル

男は涙目でウィリアに懇願するが

「これを飲むのデス」

ウィリアは男に前向き薬を飲ませる。

「射精、しゃせい、あはは、気持ちいい」ビュルルル

男の涙が止まり、表情が恍惚へと変わる。

「俺の精を、飲めぇぇ!」ビュルルル
『ああん、濃いわぁ』

「嬉しそうに精液を飛ばしてる……射精を前向きに捉えるなんて、滅茶苦茶だな」
「アタシ達のサバトではいつもの事よ」
「いつもあんな感じなのか?」

「そうだぜ、ただでさえ異常な人が多い不思議の国なのに、ウィリア様の暴走で、ブルーグさんも苦労してるのさ」
「不思議の国って変わってるな」
「それが不思議の国クオリティさ」


「おーい、テーブルの追加を」「頼む」


帽子は鎧兜、服は銀色の燕尾服の西洋騎士風のヘイルム夫妻を筆頭に、銅貨兵達が二人一組の担架を作って討伐隊を運んできた。

性交中の討伐隊をキノコの椅子やベッドの上に移動させ

「じゃあ私達は引き続き井戸に戻って警備を」「続ける」

ヘイルム夫妻は井戸へ戻ろうとして

「待って」

ナースさんに呼び止められた。

「二人とも今日も打撲傷?」
「……そうだ」「ナースさんには敵わないわね」

「シャンプ、二人を診察台へ」
「はい、治療用のベッドを用意しました。服を脱いでください」

「あの鎧兜夫妻、お互い自然な手つきで燕尾服を脱がしあってる」
「マッドハッターだからね。それにヘイルムさんとカーブさんはいつもお互いに戦闘の特訓しては、傷を治すために診療所を訪れるんだ」
「話してる間に一糸纏わぬ姿になった。よく見たら腹の辺りに青アザ」

「討伐隊との戦闘中に腹を一発ずつ」「打たれた」

「脱ぐと男女の違いがはっきりわかるなー夫の上半身は筋肉質の胸板、妻の胸は揉むのには丁度良い大きさ。極めつけは満知子よりは大きい、大きい。大事な事なので二回言いました」
「ぐぬぬ……」

「始めるぞ(性的な)治療を」
「ああ」

Μ

「と、あの二人は言ったけれど、さっきからボディタッチだけだな」
「てっきり本番をするかと思ったわ」
「満知子、俺と本番に入りたいのか?」
「そうねへーくんとなら……って違うわよ!」
「何だ残念、せっかく痣の無い綺麗な肌をしてるから、丸裸で交わればいいのに……あれ、ぬゎんだと!いつの間にか身体の痣が消えている!」
「なんで?」

「二人共驚きすぎ、あのベッドには治療用の魔法陣が刻まれてるから、(性的な)刺激を与えれば痣や痛みを治す事が出来るんだよ」

「正に不思議の国クオリティ」

「にしてもコルヌさんが井戸を守らなくてのか?討伐隊召集が目的だろ?」
「大丈夫、里の自警団は強いよ、それに――」



「これで全員集まるとはボクは思ってないよ」



『え?』
「三人ともポカンとしすぎ、事情があって来ない兵士もいるかもしれないんだよ。例えばアレ、母さん達が集まってる」

大きなテーブルの周りには花月さんや、中には肌が灰色の女性や髪が長い女性もいる。

「改めて、討伐隊に関する情報をこの場で報告してほしい」

「はい」

灰色の女性が手を上げる。

「トリックストリートのジュリー夫妻」
「討伐隊のS-50氏、以下シスコン氏と交渉中です」
「召集の条件としてタマゴの里の住人であるシャンプ夫妻とコーン夫妻の四人がトリックストリートに来てほしいそうだ」

「私達の子供達もですか?」

「自分達のパーティーに外部の子供達を招いて一緒に遊びたいそうです。因みにシャンプ夫妻とは以前面識があります」

「シャンプ夫妻が保護者代わりなら大丈夫だろう」
「でも、私達も同行したほうがいいと思うけど…」

「お二方にはそれとは別に行ってもらいたい場所があります」

今度は髪が長い女性

「樹増の塔です」

彼女の一言で、周りがざわつく

「樹増の塔」「ヨツンバウェイの近くにある触手の森の最奥部にある塔」「地下深くまで続いてる触手の迷宮」「不正防止の為、女王が子宝宝樹を地下へ転送させ、その上に塔を建てた」「ラプンツェルさんが管理人だっけ」

「その通りですわ。討伐隊のT-1とC-48という名のチェシャ猫夫妻が来ましたわ。子宝宝樹に行きたいらしく、迷宮の入口へと案内させましたの」

「それで触手の餌食になって塔の外へポーン♪」
「逆ですわ。未だに脱落も帰還もありませんの」

「もしかしたら、地下までいってるかもしれないな」
「地上なら塔の外へ追い出されるけど、地下まで行ったら入口へ追い返されず触手によって延々と交わる続けるわ」

「産院SAにもチェシャ猫夫妻が来たという報告もありません」
「もし子宝宝樹にたどり着いたらなら、自動的に産院SAへワープするのだが」

「お二人、そして、飛脚運送の職員総動員で樹増の塔までお運びいただけますか?」
「え?何故?」

アリス服のバフォメットが首を傾げる。

「すみません、ブルーグ様」

魔女(大人)のゴーセルがブルーグに頭を下げる。

「なぜゴーセルが謝る?」
「実は彼女から約束事を」

小指に絡み付いた光り輝く髪の毛

「はぁー」

それを見たブルーグがため息をつきながら頭を抱えた。

「髪の毛?」
「毛娼妓は夫と認識した男性に操を立てる証として自身の髪の毛の一部を渡す。男性は日に日に持ち主の想いが強くなって、やがて毛娼妓の元へ向かうんだ」
「でも相手は女だぞ?」
「あれは操を立てるというより、約束事から逃れないようにしたんだと思う。毛娼妓の習性を応用してね」

「彼女の髪の毛を数本貰う代わりにサバトが総力をあげて救出へ向かうよう約束事を」

「ウィリアがゴーセルに頼んだのデス」
「はぁー、つまりウィリアの強請で、厄介事を背負わされる羽目に」

「しょうがない、樹増の塔へ行くか。コルヌ、強制転送珠を貸してくれ」
「はーい、父さん」

「待って、わざわざ珠を使わなくても直接魔のカーブから飛び降りればいいのよ」
「それもそうだな。パラサイ交通に連絡して大型ばすを手配するか」

「コルヌさん、その珠ってさっきの…」
「これは『強制転送珠』といって、行きたい場所を言えば不思議の国のあらゆる場所へ転送できる特注品さ」

俺は直径二センチ程の珠を手に取る。

「こんな小さな珠がね。討伐隊が潜んでる場所へ連れてってくれ〜とか?」

すると珠が光り俺とマド


Μ満知子視点Μ


「初太と、まどっちが、消えた……?」


Μ続くΜ
14/10/12 23:58更新 / ドリルモール
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■作者メッセージ
ドリルモールです。

初太とマドラはどこへ消えたのか?
コルヌ達の冒険がまた始まります。

用語集、今回は三本だてです。


Μ


用語集@
【食育薬】
 サバト不思議の国支部『飛脚運送』が作った薬。
 自分の子供に食の知識を学んでほしい親の要望から作られた。
 無味・無臭・無媚薬の透明な液体で、飲めば先程咀嚼した食べ物の名前・効能・食べ方等が理解できる。
食べ物や料理に一滴垂らすだけでも効果があり、一舐めだけで確認は可能、味や風味を損なうことなく食材や料理の知識を得ることが出来る。
 そのため需要は子供の他にも、魔物娘が夫に自慢の手料理を味わってもらうために素材の鮮度や媚薬成分の有無を確かめたり、うっかり食べ物の罠にかかった住人が効能を確認したり、安全な食べ物であるかを確認するため、不思議の国の色に染まっていない来訪者も食育薬を使用する。


Μ


用語集A
【前向き薬】
 サバト不思議の国支部『飛脚運送』が作った薬。
 不思議の国の異常さに戸惑う来訪者をよりスムーズに不思議の国を受け入れてもらうために作られた。
 淡く輝く液体で服用すれば今ある状況を前向きな考え方にとらえることができる。
 例えば周りに交わる者達は、互いに愛し合っているととらえ
 次々起こるハプニングが楽しくなり
 嫌いな相手が会いに来たら、仲直り出来る絶好の機会だと考えるようになり
 行方不明の仲間を探す場合はきっと見つかると信じることが出来る。
 ただし、あくまでも本人の気持ち次第であり、精神が極度に不安定だと効果が出にくいので、服用後に性交する等して精神を安定させる事を推奨する。


Μ


用語集B
【強制転送珠】
 ハートの女王が作った転送魔術装置の一種。
見た目は直径2センチの黒い珠で、男女の交わりを行わなくても僅かな精や魔力で不思議の国内ならどこでも転送可能。
 使い方は珠に行きたい場所と対象を言えば目的地へ転送出来る。
 ただし、場所や対象を正確に言わないと珠が暴走してしまい、目的外の場所へ転送されてしまう。さらに何気ない一言や気まぐれで珠が起動してしまうため、使用は制限されている。
 今回は女王の命により討伐隊を一斉に一ヶ所へ集めるため、珠の使用が決定された。

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