読切小説
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蝶々結び、縁結び
おはよう、と優しいキスで起こされた。

「んぁ……あぁ、おはよう」

すぐに思い出すのはまどろみの中、ひたすらに愛し合っていたことだった。

「大人の階段登っちゃったねー♥ほら見て見て綺麗な羽でしょ?」

彼女がくるくると回って見せてくるその羽の柄は継ぎはぎのパッチワークのような柄でだれもが綺麗だと思うような柄ではなかった。
でも、俺と彼女にとっては特別で間違いなく綺麗な羽だった。

「羽を見せるのはいいんだけど……そのだな、服を着てくれないか?」

そもそも情事の後である彼女は一糸纏わずに自分の新しい姿を見せてくるのだ、正直目のやりどころがない。

「それなんだけどね……ボクも起きた時に服は着ようと思ったんだよ?でもね、今までの服だと着れないんだよね」
「あー」

それもそのはずだ、いきなり体格も何から何まで変わっているんだから服が着れないのは当たり前だったか。

「とりあえず俺の服で良いから羽織っとけ」
「にひひーいい匂い♪」
「俺的にはお前の方がよっぽど良い匂いしてるわけなんだけどな」

以前と変わらぬ笑みを浮かべながら彼女は器用に羽を畳んで俺のワイシャツを羽織って俺の胸元に飛び込んでくる。

「それにしてもお前の服どうするか」
「また作り直しかなぁ……今度一緒に作ってみる?」
「俺、不器用だぞ」
「いいよ、こういうのは出来よりも気持ちの方が大事なんだからさ」
「まあ。善処してみるよ」
「そうだ、ボクがキミの古着で服を作ってた理由って話したっけ?」

確か、繭に包まる前にその話は聞いた気がする。

「俺の匂いが染みついてて安心するからだっけか?」
「それもあるんだけどね、もう一つ理由があるんだ。ほら、ボクってこの姿になる前は引きこもりだったでしょ?だからさ、キミの心が離れちゃうんじゃないかって不安だったんだよ。それで君の心が離れないようにつなぎ合わせて結んで傍にあるようにっておまじない」
「見事に赤い糸も結んだわけだな」
「おー上手いこと言うね」

彼女の体をぎゅっと抱きしめてみる。

「およっ急にどうしたの?」
「お前に心を結ばれちまったからな、離れられない」
「それはボクもなんだよねー」

抱きしめあって、離れられないことを確かめ合うようにキスの応酬。そばにいるだけでのほほんと幸せな気分になっていく。

「ボクはキミのことが大好きだよ」
「俺もお前を愛してる」

俺は彼女とお互いに紡ぎあって行くのだろう。彼女の服のように今度は二人だけの人生をパッチワークにして。
18/09/11 09:53更新 / アンノウン

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