連載小説
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忘却少年と神隠しの少女
とある街の夜道を、僕と彼女は歩く。
周りには誰もいない。もう、普通の人間が起きているような時間ではない。

「…………私がルー君と再会して、一体どのくらいたったのかな……?」

僕の隣で彼女が呟く。

「そうだね、大体…………1年くらいはたったのかな…………?」

そう、僕が答えると、彼女は少し驚いたような顔をした。

「よく覚えてられるよね、そんなこと」
「そんなことって………………」

酷いな……忘れられるわけないよ。
だって…………

「君がいつ居なくなってしまうのか分からなくて、怖くて…………忘れられるわけ、ないじゃないか…………」
「…………ごめんね……私のせいで、あなたを縛ってしまって…………」

本当にすまなそうに、彼女は言う。
そんなことない。

「そんなことないよ。僕は望んで君と一緒にいる。いたいと思ってる。だから…………いつまでも君を探すさ…………」
「…………………………ありがとう、ルー君……」

悲しそうな顔をして、彼女は俯いてしまった。

「…………そろそろ、時間なのかい?」
「……ごめんね……」

また、彼女は謝った。

「大丈夫だよ。また……見つけるから。絶対に、君を」
「ありがとう……。………………一つ、頼んでいいかしら?」
「なんだい?」
「手を……つないでいて欲しいんだ……」

彼女の願いを、僕は微笑みながら叶えた。
僕の手の中に、彼女の温もりが伝わってくる。

「…………一年かぁ……長いようで、短かったなぁ…………」

感慨深そうに言う彼女の体が、暗い闇に包まれていく。
そんな自分の様子を見ながら、彼女は泣きそうな顔で僕に別れを告げた。

「じゃあね、ルー君。また会う日まで」

そして彼女は闇に飲まれて消えた。
僕の手の中にあった彼女の温もりも……消えた。
僕の顔に、一筋、涙が流れた。

「絶対、絶対に見つけるから…………」

夜道に一人、僕は呟く。

「だから……待っててね…………フィス……」
第一章「旅の少年、ルシア」10/09/29 02:13
第二章「同行者、アーシェ」10/09/30 22:41
第三章「大蛇の洞窟」10/10/02 16:09
第四章「洞窟の主、ラナ」10/10/02 21:38
第五章「情報、そして……」10/10/06 10:24
第六章「力のあり方」10/10/08 17:02
第七章「再開は突然に」10/10/11 22:03
夜伽章「久しぶりの二人の夜」10/10/13 20:45
第八章「別れの時」10/10/17 22:37
第九章「フィスのいる日常」10/10/22 12:33
第十章「ミラーサバト」10/10/25 22:08
最終章「戻る過去、枯れる川」10/10/29 19:53

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