かつどう18(前):魔物娘だらけの肝試し大会!ジョボボもあるよ!
ここはどこにでもある魔界
その四丁目にある淫夢通りにある一軒のアパート
そこに非公式の騎士団が結成されていた
その団名は…【アリス騎――
誰も居ないようです...
ここはとある魔界の町外れにある廃館
そこに非公式の集まりが行われていた
その名も…
「魔物娘だらけの肝試し大会!ジョボボもあるよ! in ハ・イ・カ・ン・♪ なのです♪」
パチパチパチパチパチ!
日が沈みきった夜中に騎士団の皆は町外れの廃館に集まっていました。
夏最後の締めくくりは何がいいか皆で考えていると、ポテチちゃんが肝試しにしようと言ったのが発端です。
団長を始めキッドちゃんも肝試しに賛同、そのまま肝試しをすることに決まりました。
肝試しの準備は誰がするかという話もトントン拍子に進み、準備にはポテチちゃんと妖狐お姉さんが行い。
その二人を除いた団長さん達4人が参加する形となりました。
風が呻くように吹く、団長さんは今か今かと目を輝かせわくわくしていますが、テンションが高いのは三人だけでした。
最初からいい顔をしていなかったレタスちゃんと潮ちゃんは会場で抱き合って小さな物音にも敏感に反応しています。
余裕たっぷりだったキッドちゃんも今では落ち着きがありません。
出発前の好奇心旺盛な落ち着きのなさとは打って変わって、産まれたばかりの子鹿のように足がプルプルと震わせて、シッポを逆立てています。
それをなんとか誤魔化そうと虚勢を貼ってはいますが無限に噴き出してくる汗を何度も拭うばかりです。
「それでは参加者の皆さんにルール説明なのです、廃館に隠したとあるアイテムを探して持って返ってくるだけというものなのです。
その持ち帰るアイテムとは…妖狐おねーさん、例のものを」
「はーい…じゃん♪」
妖狐お姉さんが取り出したのは透き通った透明の水晶。しかし、その水晶はとぐろを巻いた形をしていて、まるで――
「うんこー!」
団長さんのお下品な発言に会場は凍りついたかのように沈黙が訪れ、そして笑い声が響き渡りました。
「団長さん、それ言っちゃダメですよ」
「ブフォッ!た、たしかにうんこにみえるお!ブブブ!」
「そ、そんなこと言ったら…うん…う………ぶっ…っ〜〜…」
「…っ………っっ……」
妖狐お姉さんの注意している間にもキッドちゃんは堪え切れず吹き出し。
レタスちゃんは笑いが込みあげて上手く喋れず、潮ちゃんは後ろを向いて肩をプルプルと震わせています。
このアイテムのデザインをした張本人はというと…
「計 画 通 り(ニヤリ」
狙い通りの成果を上げたことにニヤニヤと満足気でした。
「さぁ、一笑いした所で再開なのです♪チームメンバーを決めるために作った特性アミバ…じゃなくて
あみだくじを引いてもらうのです♪棒の先にある色と同じ人がカップリ…パートナーなのです。
さぁさぁ、10本の棒からお好きなのを一つ引くのです!!」
「ポテチちゃん…10本は多いですよ」
ポテチちゃんが用意したのはホル牛乳の紙パックに入っている10本のアイスの棒。
多すぎると妖狐お姉さんにツッコミを入れられながら団長を先頭に皆が引いていきます。
「あかです!」
「わっちは青だお」
「あっ、赤ですぅ♪」
「えっと…あたり?」
「おめでとうなのです♪その棒は食あたりパン一年分なのですよ♪」
「えぇ!?このあみだくじは景品入りなんですか?」
「* ゚・*:.。.:*・゜+ d(*´∀`)b うそです +.:*・゜゚・*:. *」
ぉぉぉぉ…ぉ……
「ひぅ!?」
「ヴアッ!!!!」
「ひゃぅ!!!」
ぉぉぉぉ…ぉ……ぉ〜…
「き、ききききき……」
「だ、ダイジョブだだだお!か、かぜ、かぜなんだお!」
廃館の中に入ったキッドちゃんと潮ちゃんはカンテラの明かりを頼りに薄暗い廊下を歩いています。
先陣切って進んだ団長に負けまいとキッドちゃんも勢いよく廃館に突撃したのですが
時々吹く隙間風に潮ちゃんは怯え、それに驚くキッドちゃんにまた潮ちゃんは驚いて思うように進めていない様子。
老朽化が進んだ廃館の軋む床、ひび割れた壁から入ってくる隙間風、風に吹かれて揺れる布。
ありとあらゆるものに潮ちゃんが驚き、キッドちゃんが潮ちゃんに驚いてはそれに潮ちゃんが驚く、その繰り返しを続けていました。
「あ、ああうぅぅぅ……」
半ばパニックになりかけている潮ちゃん、目尻には涙を溜めて今にも零れ落ちそうです。
「だ、だだだ、大丈夫だお!わ、わっちがお化けなんかたおすてやりんだお!」
なんとか潮ちゃんを励まそうとするキッドちゃん。
ですが、恐怖で声が裏返ってしまって逆に潮ちゃんを驚かせてしまって逆効果でした。
何とか進もうと頑張っている二人、それを覗くように様子を観ている影が2つあります。
体ほどある大きい頭に無表情なのにどこか歪な表情を浮かべる顔。肌の色は青白く、まるで青鬼のような色の仮面をかぶっています。
(お、きたきた…)
(程々に脅かしておけよ?下手に逃げさせて怪我させたら姉御と秋姉からのダブルお仕置きされるぞ…)
(やべえ、それやべえ!されてみてぇ、ちょっと本気だすか)
(姉御なら喜んでお仕置きされるけどよ…秋姉も待ってるんだぞ?)
(いいじゃねえか!踏んでくれるんだろ?俺達にとってご褒美じゃねえか!!)
(いや、そんなぬるいもんじゃねえ…軽くて全治三ヶ月、ヘタすれば当面の間、自分で飯食え無くなるぞ…)
(ヒィ…キ、キョウハサムイアルネ)
(ああ…俺も思い出してゾッとしてきた…と、いくか)
「ウヴォオオアアアアアアアアアア!!!」
「フヌゴオオオオオオ!!!」
キッドちゃんと潮ちゃんがゆっくりと廊下の角にさしかかると、突然仮面をかぶった大男二人が突然現れました。
「ひやああああああ!ひああああああ!!!キッドちゃんキッドちゃん!!!!」
音に慣れ始めた所に現れた大男に潮ちゃんは大驚き。
半ばパニックを起こしながら、キッドちゃんを思いっ切り揺らしています。
「グオオオオオ!」
「ガチョオオオオオン!!!」
「きききいきーーーキッドちゃあああん!!!」
更に脅しをかけてくる二人に潮ちゃんは悲鳴にならない悲鳴とキッドちゃんの名前を叫びました。
頼りのキッドちゃんはというと、何か様子が変です。
まるで無反応と言わんばかりに一歩も動かず、ぼーっと突っ立っています。
ドサッ
激しく揺すられ続けたキッドちゃんは完全にバランスを崩して床に転んでしまいました。
「ああああ、キキッドちゃ……っ!…」
倒れたキッドちゃんをの様子をみようと潮ちゃんがキッドちゃんの顔を覗きこむと
一色に塗りつぶされた瞳で強張った表情を浮かばせていました。
「〜〜っ……」
その顔に潮ちゃんは驚き、風船からゆっくりと空気が抜けるようにその場にへたり込みました。
床には生暖かい水が広がって行きます。
「うおっ…だ、大丈夫か?」
「す、すすすまねえ!やりすぎたっ…とりあえずこっちで休もう!な?な?!」
「ほ、ほれ下着もあるしさ!」
驚いて逃げるだけど思っていた男二人は予想外の展開に大慌て。
幼児用の下着を取り出し潮ちゃんに見せていますが、潮ちゃんは既に気を失っていました……
Bチーム キッド・潮
リ タ イ ア
再 起 不 能 なのです♪
一方、Aチームの方は―
「てやー!」
気の抜けた掛け声と共に団長さんは迫り来る振り子式のギロチンを吹き飛ばしています。
ギロチンといっても鉄製で作られたものではなくダンボールで作られた小道具です。
「ぐい〜♪」
「だ、団長さん壊しちゃだめですぅ…」
最初の内は頼もしいと感じていたレタスちゃんでしたが、トラップを破壊しようとエスカレートする団長さんを止めるのに精一杯。
それがトラップに出くわす毎なのでレタスちゃんは肝試しどころじゃありません。
「つぎいきましょう!」
「はぁ…早く終わらせたいですぅ…」
そんな様子を館内に設置した監視装置を通じてポテチちゃん達が様子をみています。
「わはー♪さすが団長、一筋縄ではいかないのです♪」
「ポテチちゃん、何か違うゲームになってませんか? 落とし穴に振り子ギロチン、プレス天井とか…」
「団長を倒すにはこのぐらいはないとダメなのです♪ふふふ…この後には最終強化済みの首領が…」
「はぁ……」
団長の快進撃(?)に喜ぶポテチちゃん、仕掛けはポテチちゃんが行ったのですが、まったく違うゲームになってしまっています。
時々現れる危ないトラップに妖狐お姉さんは肝を冷やしながら様子を見守っていました。
ザ…ザー……ザザ……
「あら?」
ザーーー…ザッ……
「変ね…故障かしら…」
ざーーーーーー……ザーーーーー………
Aチームを見ていたモニターが突如、画面が乱れ始めました。
仕掛けを施した際に点検も行い、正常に可動しているのを確認していた妖狐お姉さんは首を傾げます。
「きゃあああああ!!!」
乱れるモニターからレタスちゃんの悲鳴が聞こえて来ました。
モニターは一瞬なにか白いものを映した後、砂嵐以外を映さなくなりました。
しかし、音声だけは途切れ途切れになりながら聞こえてきます。
「人が…人が浮…て!イア…ア…アアア!……」
尋常じゃないレタスちゃんの悲鳴に妖狐お姉さんは焦りました。
モニターの突然の不調が更に不安を煽ります。
「レタスちゃん!?ああ、もう…どうして映らないのよっ!」
「ここは当方に任せるのです…伝説の斜め四十五度チョーップ!」
ガンッ!
ザーー…プツ………
ポテチちゃんがモニターにチョップを食らわせるとモニターは治るどころか真っ黒になって何も映さなくなってしまいました…
「ん!?まちがったかな…」
「ちょっとポテチちゃん!ああもう!お姉さん様子を見てくるからまってて!」
いてもたっても居られなくなった妖狐お姉さんは廃館へ向かおうとします。
しかし、ポテチちゃんは妖狐お姉さんの前に飛んで立ちはだかりました。
「ポテチちゃん、そこをどいてください!」
「わはー♪ 団長さんならダイジョーブなのですよ♪」
「大丈夫って…そんなわけないでしょ、あの場所には何の仕掛けもしてないんだから
何かあったに決まってるじゃない!」
「ダイジョーブなのですよ♪ダイジョーブ♪」
「………」
妖狐お姉さんを阻むポテチちゃん、その笑みには無邪気な雰囲気はありません…
普段とは違う表情を見せるポテチちゃんに妖狐お姉さんは戸惑いましたが
嘘や冗談の類ではない事を感じ取り、しかつめらしい表情でポテチちゃんを見つめました。
「本当に、大丈夫なのよね?」
「はいな♪団長さんならきっと大丈夫なのですよ…
それに、これは大人が介入してはいけない…というか当方達は館に入れないのです」
「え…?」
空はいつの間にか曇り、涼しく吹いていた風は身を凍らせるような冷たい風に変わっていました。
―後半につづく―
その四丁目にある淫夢通りにある一軒のアパート
そこに非公式の騎士団が結成されていた
その団名は…【アリス騎――
誰も居ないようです...
ここはとある魔界の町外れにある廃館
そこに非公式の集まりが行われていた
その名も…
「魔物娘だらけの肝試し大会!ジョボボもあるよ! in ハ・イ・カ・ン・♪ なのです♪」
パチパチパチパチパチ!
日が沈みきった夜中に騎士団の皆は町外れの廃館に集まっていました。
夏最後の締めくくりは何がいいか皆で考えていると、ポテチちゃんが肝試しにしようと言ったのが発端です。
団長を始めキッドちゃんも肝試しに賛同、そのまま肝試しをすることに決まりました。
肝試しの準備は誰がするかという話もトントン拍子に進み、準備にはポテチちゃんと妖狐お姉さんが行い。
その二人を除いた団長さん達4人が参加する形となりました。
風が呻くように吹く、団長さんは今か今かと目を輝かせわくわくしていますが、テンションが高いのは三人だけでした。
最初からいい顔をしていなかったレタスちゃんと潮ちゃんは会場で抱き合って小さな物音にも敏感に反応しています。
余裕たっぷりだったキッドちゃんも今では落ち着きがありません。
出発前の好奇心旺盛な落ち着きのなさとは打って変わって、産まれたばかりの子鹿のように足がプルプルと震わせて、シッポを逆立てています。
それをなんとか誤魔化そうと虚勢を貼ってはいますが無限に噴き出してくる汗を何度も拭うばかりです。
「それでは参加者の皆さんにルール説明なのです、廃館に隠したとあるアイテムを探して持って返ってくるだけというものなのです。
その持ち帰るアイテムとは…妖狐おねーさん、例のものを」
「はーい…じゃん♪」
妖狐お姉さんが取り出したのは透き通った透明の水晶。しかし、その水晶はとぐろを巻いた形をしていて、まるで――
「うんこー!」
団長さんのお下品な発言に会場は凍りついたかのように沈黙が訪れ、そして笑い声が響き渡りました。
「団長さん、それ言っちゃダメですよ」
「ブフォッ!た、たしかにうんこにみえるお!ブブブ!」
「そ、そんなこと言ったら…うん…う………ぶっ…っ〜〜…」
「…っ………っっ……」
妖狐お姉さんの注意している間にもキッドちゃんは堪え切れず吹き出し。
レタスちゃんは笑いが込みあげて上手く喋れず、潮ちゃんは後ろを向いて肩をプルプルと震わせています。
このアイテムのデザインをした張本人はというと…
「計 画 通 り(ニヤリ」
狙い通りの成果を上げたことにニヤニヤと満足気でした。
「さぁ、一笑いした所で再開なのです♪チームメンバーを決めるために作った特性アミバ…じゃなくて
あみだくじを引いてもらうのです♪棒の先にある色と同じ人がカップリ…パートナーなのです。
さぁさぁ、10本の棒からお好きなのを一つ引くのです!!」
「ポテチちゃん…10本は多いですよ」
ポテチちゃんが用意したのはホル牛乳の紙パックに入っている10本のアイスの棒。
多すぎると妖狐お姉さんにツッコミを入れられながら団長を先頭に皆が引いていきます。
「あかです!」
「わっちは青だお」
「あっ、赤ですぅ♪」
「えっと…あたり?」
「おめでとうなのです♪その棒は食あたりパン一年分なのですよ♪」
「えぇ!?このあみだくじは景品入りなんですか?」
「* ゚・*:.。.:*・゜+ d(*´∀`)b うそです +.:*・゜゚・*:. *」
ぉぉぉぉ…ぉ……
「ひぅ!?」
「ヴアッ!!!!」
「ひゃぅ!!!」
ぉぉぉぉ…ぉ……ぉ〜…
「き、ききききき……」
「だ、ダイジョブだだだお!か、かぜ、かぜなんだお!」
廃館の中に入ったキッドちゃんと潮ちゃんはカンテラの明かりを頼りに薄暗い廊下を歩いています。
先陣切って進んだ団長に負けまいとキッドちゃんも勢いよく廃館に突撃したのですが
時々吹く隙間風に潮ちゃんは怯え、それに驚くキッドちゃんにまた潮ちゃんは驚いて思うように進めていない様子。
老朽化が進んだ廃館の軋む床、ひび割れた壁から入ってくる隙間風、風に吹かれて揺れる布。
ありとあらゆるものに潮ちゃんが驚き、キッドちゃんが潮ちゃんに驚いてはそれに潮ちゃんが驚く、その繰り返しを続けていました。
「あ、ああうぅぅぅ……」
半ばパニックになりかけている潮ちゃん、目尻には涙を溜めて今にも零れ落ちそうです。
「だ、だだだ、大丈夫だお!わ、わっちがお化けなんかたおすてやりんだお!」
なんとか潮ちゃんを励まそうとするキッドちゃん。
ですが、恐怖で声が裏返ってしまって逆に潮ちゃんを驚かせてしまって逆効果でした。
何とか進もうと頑張っている二人、それを覗くように様子を観ている影が2つあります。
体ほどある大きい頭に無表情なのにどこか歪な表情を浮かべる顔。肌の色は青白く、まるで青鬼のような色の仮面をかぶっています。
(お、きたきた…)
(程々に脅かしておけよ?下手に逃げさせて怪我させたら姉御と秋姉からのダブルお仕置きされるぞ…)
(やべえ、それやべえ!されてみてぇ、ちょっと本気だすか)
(姉御なら喜んでお仕置きされるけどよ…秋姉も待ってるんだぞ?)
(いいじゃねえか!踏んでくれるんだろ?俺達にとってご褒美じゃねえか!!)
(いや、そんなぬるいもんじゃねえ…軽くて全治三ヶ月、ヘタすれば当面の間、自分で飯食え無くなるぞ…)
(ヒィ…キ、キョウハサムイアルネ)
(ああ…俺も思い出してゾッとしてきた…と、いくか)
「ウヴォオオアアアアアアアアアア!!!」
「フヌゴオオオオオオ!!!」
キッドちゃんと潮ちゃんがゆっくりと廊下の角にさしかかると、突然仮面をかぶった大男二人が突然現れました。
「ひやああああああ!ひああああああ!!!キッドちゃんキッドちゃん!!!!」
音に慣れ始めた所に現れた大男に潮ちゃんは大驚き。
半ばパニックを起こしながら、キッドちゃんを思いっ切り揺らしています。
「グオオオオオ!」
「ガチョオオオオオン!!!」
「きききいきーーーキッドちゃあああん!!!」
更に脅しをかけてくる二人に潮ちゃんは悲鳴にならない悲鳴とキッドちゃんの名前を叫びました。
頼りのキッドちゃんはというと、何か様子が変です。
まるで無反応と言わんばかりに一歩も動かず、ぼーっと突っ立っています。
ドサッ
激しく揺すられ続けたキッドちゃんは完全にバランスを崩して床に転んでしまいました。
「ああああ、キキッドちゃ……っ!…」
倒れたキッドちゃんをの様子をみようと潮ちゃんがキッドちゃんの顔を覗きこむと
一色に塗りつぶされた瞳で強張った表情を浮かばせていました。
「〜〜っ……」
その顔に潮ちゃんは驚き、風船からゆっくりと空気が抜けるようにその場にへたり込みました。
床には生暖かい水が広がって行きます。
「うおっ…だ、大丈夫か?」
「す、すすすまねえ!やりすぎたっ…とりあえずこっちで休もう!な?な?!」
「ほ、ほれ下着もあるしさ!」
驚いて逃げるだけど思っていた男二人は予想外の展開に大慌て。
幼児用の下着を取り出し潮ちゃんに見せていますが、潮ちゃんは既に気を失っていました……
Bチーム キッド・潮
リ タ イ ア
再 起 不 能 なのです♪
一方、Aチームの方は―
「てやー!」
気の抜けた掛け声と共に団長さんは迫り来る振り子式のギロチンを吹き飛ばしています。
ギロチンといっても鉄製で作られたものではなくダンボールで作られた小道具です。
「ぐい〜♪」
「だ、団長さん壊しちゃだめですぅ…」
最初の内は頼もしいと感じていたレタスちゃんでしたが、トラップを破壊しようとエスカレートする団長さんを止めるのに精一杯。
それがトラップに出くわす毎なのでレタスちゃんは肝試しどころじゃありません。
「つぎいきましょう!」
「はぁ…早く終わらせたいですぅ…」
そんな様子を館内に設置した監視装置を通じてポテチちゃん達が様子をみています。
「わはー♪さすが団長、一筋縄ではいかないのです♪」
「ポテチちゃん、何か違うゲームになってませんか? 落とし穴に振り子ギロチン、プレス天井とか…」
「団長を倒すにはこのぐらいはないとダメなのです♪ふふふ…この後には最終強化済みの首領が…」
「はぁ……」
団長の快進撃(?)に喜ぶポテチちゃん、仕掛けはポテチちゃんが行ったのですが、まったく違うゲームになってしまっています。
時々現れる危ないトラップに妖狐お姉さんは肝を冷やしながら様子を見守っていました。
ザ…ザー……ザザ……
「あら?」
ザーーー…ザッ……
「変ね…故障かしら…」
ざーーーーーー……ザーーーーー………
Aチームを見ていたモニターが突如、画面が乱れ始めました。
仕掛けを施した際に点検も行い、正常に可動しているのを確認していた妖狐お姉さんは首を傾げます。
「きゃあああああ!!!」
乱れるモニターからレタスちゃんの悲鳴が聞こえて来ました。
モニターは一瞬なにか白いものを映した後、砂嵐以外を映さなくなりました。
しかし、音声だけは途切れ途切れになりながら聞こえてきます。
「人が…人が浮…て!イア…ア…アアア!……」
尋常じゃないレタスちゃんの悲鳴に妖狐お姉さんは焦りました。
モニターの突然の不調が更に不安を煽ります。
「レタスちゃん!?ああ、もう…どうして映らないのよっ!」
「ここは当方に任せるのです…伝説の斜め四十五度チョーップ!」
ガンッ!
ザーー…プツ………
ポテチちゃんがモニターにチョップを食らわせるとモニターは治るどころか真っ黒になって何も映さなくなってしまいました…
「ん!?まちがったかな…」
「ちょっとポテチちゃん!ああもう!お姉さん様子を見てくるからまってて!」
いてもたっても居られなくなった妖狐お姉さんは廃館へ向かおうとします。
しかし、ポテチちゃんは妖狐お姉さんの前に飛んで立ちはだかりました。
「ポテチちゃん、そこをどいてください!」
「わはー♪ 団長さんならダイジョーブなのですよ♪」
「大丈夫って…そんなわけないでしょ、あの場所には何の仕掛けもしてないんだから
何かあったに決まってるじゃない!」
「ダイジョーブなのですよ♪ダイジョーブ♪」
「………」
妖狐お姉さんを阻むポテチちゃん、その笑みには無邪気な雰囲気はありません…
普段とは違う表情を見せるポテチちゃんに妖狐お姉さんは戸惑いましたが
嘘や冗談の類ではない事を感じ取り、しかつめらしい表情でポテチちゃんを見つめました。
「本当に、大丈夫なのよね?」
「はいな♪団長さんならきっと大丈夫なのですよ…
それに、これは大人が介入してはいけない…というか当方達は館に入れないのです」
「え…?」
空はいつの間にか曇り、涼しく吹いていた風は身を凍らせるような冷たい風に変わっていました。
―後半につづく―
13/04/11 00:33更新 / ロッテン
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