読切小説
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俺の彼女は単眼娘
ああ…朝だ…
ちゅる…ぴちゅ
カーテンから差し込む日差し、外から聞こえてくる鳥の声
ぺちゃ…ちゅぅ

今日も一日清々しい朝を迎える…

ちゃぷ…ちゅぴっ
おはよう!俺
ちゅぅ…
おはよう!息子!
ぴゅぱ
おはよう!俺のかn…
ちゅるるぅ…
え?

ぼやけた思考で目の前を見ると俺の彼女が何かしていた
その辺りには俺の息子があって…妙にぬめって気持ちい感覚が伝わってきている
まだ眠りたいけだるい気分は股間から伝わる刺激に押され徐々に覚醒していく
そして何をされているのか…徐々に理解し始めた

「ちょ!?な、なにしてんの!?」

快楽に飲まれかけながら彼女が何をしているのかをやっと認識して驚く
股間から伝わる刺激がそれを裏付けている
彼女は…俺のを銜えていた…俺の息子を

「ん…ちゅる……おはよう、先にこっちに挨拶…」

一度口から放し、こっちを見ながら挨拶をすると
再び俺の息子を銜え舌を絡め始めた…
先ほどから続くぬめりの感覚は多分…
いや、確実に彼女が俺が寝ている間にもずっと絡めていたのだろう
俺の息子はもう発射準備の秒読みが始まっている

「はうぁ!?」ドクンッ

「んっ…んん……ゴクッ…んふぅ………おはよう(ニコリ)」

「あ、ああ…おはよう…」

カウントを数える間もなく俺の息子は口の中に発射してしまった
彼女はそれに驚いて顔を引くことなく、口に出されたものを飲み
改めて俺に笑顔で挨拶してきた、発射の爽快感を感じながら彼女の笑顔を見る…
なんて素敵なんだろう…こんなにも早くこんなことを味わえるなんて幸せだ…




朝起きて、背伸びしておきて
カーテンを開けると眩しい日差しを浴びながら
おはよう!ってやってたんだよね、毎日毎日…

でも、そんな日々は何故か終わった
いや、終わらせました
終わってくれました!
そう、ついに…俺にも彼女(恋人)ができたのです!

彼女と知り合いになったきっかけは高校1年の時だった
遅刻して急いでいた所に彼女…クー(本名はクーディネ)に出会った
しかもだ…どこのギャルゲーだよ!と言わんばかりに
お互い走っていて、道路の交差した場所での接触

それを切っ掛けに同じクラスだったクーとそれから知り合いになって…
一週間前に俺から彼女に告白!!
そして一発OKを貰ってしまったのさ!きゃっほう♪

え?もぎたい?もぎたいって?
HAHAHA!!もげるわけがない!
ああ、でももがれるならクーにしてもらいたいなぁ


っというかクーが何で居るんだろう?
俺は彼女の頭を撫でながら時計を見る
8:00(日)…日曜日なのに早く来たって…
あー!今日はデートの日だったよ…俺ったらうっかりさん♪


「起きた?」

「ばっちり、起きた!」

そう返事をするとクーは口元をゆるめる
サイクロプスは単眼のため表情が乏しく、無表情と言われがちだ
確かに目や眉毛による表情に乏しい
しかし、口による表現はしっかりとできる事は俺は知っている
それさえ見逃さなければ大体の事は分かるのだ
今の彼女を見れば笑っている、とういうことを察することができる

「っというか…待ち合わせは9時だったと思うんだけど…」

「待てなくて…来ちゃった…ごめん…」

「え、あ、いや…嬉しいけどさ♪」

「…良かった」

彼女の声はとても優しかった、それは安心した事を伝えている
ああ、もうちくしょう可愛いな!このままハグハグしたいけど…
問題がある…うむ、かなりの問題だ

「あ…お、親…起きてるよな?」

「うん…起きてなかったら入ってこれなかった」

そりゃそうだ、そうじゃなきゃ俺の部屋にどうやって入ってくるんだろう
飛べたり壁を登れたりするならまだしもクーはそんな事は出来ない
できたらできたで何気に恐ろしい、下手したらヤンデレ展開も可能になってしまう
いや、クーに限ってそんなことはないんだけど、でも…ちょっと味わってみたいな…
ソフトヤンデレ!いいね略してソフヤデ!…意味不明…

と、朝からクーにされて有頂天な俺を残してクーが部屋を出る
それはもちろん、着替えるからだ
見られて困るものはないし、彼女は既に俺の息子も見ているから生着替えを見せても構わない
ただ、恥ずかしいという気持ちはまた別だ
クーも彼氏の着替えを見てはぁはぁするような趣味は持っていないので部屋の外で待ってもらっている

とりあえずパジャマとパンツを脱いで裸になる
裸体が東窓から差し込んでくる日の光を浴びて優しい暖かさが伝わってくるが
それを悠長に堪能している場合でもない
昨日容易しておいた今日の服に着替え、携帯、財布…ハンカチ…ポケットティッシュ
鏡で顔をチェック!映ったのは不細工な顔…なわけね〜!とりあえず髪が少し乱れているので
ヘアブラシで軽く整えてる、彼女を待たせたまま長々とできないがみっともなくない程度に梳かした

準備が整い部屋を出てると壁に凭れ掛かっているクーが何かの鼻歌を歌っていた
「お待たせ」

「うん」

短い返事をした彼女と一緒に玄関へと歩く
と、その前に親に挨拶しておかないとな…
俺の部屋は二階にあって階段を降りれば直ぐ目の前に玄関があるが親が居る居間に行かなくてはいけない
1階に着くと左旋回をして居間の扉をあける

「おはよう!これから出かけてくる!」

「〜♪気をつけてね〜」

「………」

「………」

居間には母と親父と妹が居る
母は上機嫌に何かの鼻歌を歌いながら台所で何かを作っているようだ
香ばしい匂いと油のはねる音が食欲をそそる、しかし彼女を待たせてのんびりと朝食を取る鬼畜でない
朝食はどこかのファーストフード店で食べることになるだろう
いや、それを見越してなのかテーブルに置かれた食後の空皿は2人分…つまり俺の分が無い
母は皆が作った後に自分のを作るので今、母がやっているのは自分のだろう

親父は新聞を読んでいる、平日ならば既に居ないが休日ということもありのんびりと…
と、言いたいのだが何故か怒気を感じるのは何故だろう…
妹も同じく不機嫌のようだ…親父と喧嘩でもしたんだろうか?
まぁ…触らぬ神に祟り無し!さっさとクーとイチャイチャしてきちゃおう

「行ってきます!」

元気よく挨拶、そして返ってくる返事が…

「ごゆっくりぃ〜♪」

「………」

「死ね、バカ兄」

……何かずれてるが母だけまともな返事をくれた
親父は相当機嫌が悪いらしく見送りの言葉をくれない
妹も何故か死ねと言うし…と言っても口の悪さは何時も通りだから良いんだけど
妙に二人の機嫌が悪く、母の機嫌が良いのが気になる…
俺、何かしたのかなぁ…と考えてたら遅くなってしまう!
今は彼女とのデートを楽しまないとね!

先に玄関で待っていたクーの下へ行き二人で家の外へと出る
日曜日の朝は学校に行かなくて良い…だから朝の雰囲気をたくさん感じる事ができる
平日は学校やら仕事やらと時間に気をとられている事が多く
のんびりとした朝を迎えるのは日曜日か祝日だ

っといっても学校が休みならば正午まで寝てたりする事が多いので
こうやって穏やかな朝を迎えるのは何週間ぶりだろう…
少しひんやりとした空気を胸に吸い込むと
清涼感が寝ぼけが少し残る思考も雲ひとつ無い青空のように晴れ晴れとしてきた
天気も晴天!初デートには本当に最適な日だ!

あ…そういや…

スッキリとした頭で今朝の事を思い出す
クーにフェラチオしてもらったんだったなぁ…そう考えると股間が熱くなってくる…
やばい…そんなこと考えて起たせてたらみっともない…
もう一度朝の空気を吸う…ああ…気持ち良い涼しさだ…

「……?大丈夫?」

玄関を出て少し歩いた所で深呼吸をしていた俺を体調でも崩したのかと心配そうに顔を覗かせてくる
まじまじと見られると流石に恥ずかしい、ましてクーの事を考えていたとなると余計に…

「だ、大丈夫だよ!いやぁ久々にのんびりした朝だからつい…」

「…そう……もし、気分が悪かったら…無理しないで言ってね?」

「ああ、うん、ありがとう、繁華街へ行こうか」

「うん」

さぁて、先ずは朝食を食べないといけないんだけど…どうしよう
クーはご飯食べてきてると思うし…初めに行くのがファーストフードっていうのも何かかっこ悪い…
うう、我慢してカラオケかゲーセンあたり…映画も良いな…ああ、もう…行きたい場所が色々ある…

「…ご飯、食べたい」

「ん?朝食は?」

「…一緒に食べたかったから…食べてない」

…胸が熱くなってきた……
行き先はファーストフード…初デートで…いや駄目だ!
ここはちょっと高くつくけどレストランが良いかな?
なんたって初デートで初めに行ったのがファーストフード店だなんてかっこ悪いし…
レストランと言っても色々なのあるしなぁ…聞いてみた方が良いかな

「何か食べたいものってある?」

「…ハンバーガーとポテト」

…なんだか見透かされているような
どこにしようか悩んでた俺がバカバカしくも思えてきた…
いや、でもいきなし高級レストランとか言われたら死ねた
と言ってもクーはそんなこと言わないけど…妹だったらありえそうだなぁ…

さて、ファーストフード店は繁華街に3件ある
ロリッテア…個人的に俺はここのバーガーが好きだ
特にロリチキンは肉が柔らかくNo1の人気メニューでもある
ただ…店員の女性が子供体系っていう問題がある…元々はサバト専用だった名残らしいが
俺はロリコンじゃない、おっぱいは大きい方が好きだ、身長もそこそこあれば十分!
一応男性店員は普通の人達だけど、食べに来てるのか女性店員を見に来てるのか
わからない奴等も結構いたりする…う〜ん…やっぱここ選んだら引かれそうだ…
さらば…ロリチキン…クーにロリコンと思われたくないんだ…だから俺はチキン野郎になる!
俺は心の中で涙を流しながらロリッテアを選択肢から外す…

次に魔物ナルド…ここはまぁ普通…なんだろうか?
何故かここで働いている店員はサキュバスを中心とした好色な方々…
店員の服装は普通なんだと思うけど…
スカートが他の店よりも短くお辞儀をするだけで見えてしまいそうな勢いだ
そしてここのポテトは他の店よりも細いが揚げたてのカリっとした食感が個人的に好きだ
しかも多くの場所に進出しているのでバーガーショップといわれると真っ先に頭から出てくる
店舗が多いのはそういった意味もあるのだろう、しかもメニューに安定感があるし
何かゲーム会社とかと連動した企画もある…特に子供向けのばかりなんだけど
そのせいか客に子連れが多い、日曜日となれば更に賑やかになるだろう
ここは無難な候補としてOK…とはいえないか…
問題は店員…クーと付き合う前に言ったことあるけど制服のボタンを外して谷間が見えたり
ガーターベルトを装着している人が居たりと…男性の目を引き付け易い格好になる店員が多い
そういう人達は独身で仕事を兼ねて男性をゲット!という噂がある
クーとのデートで他の女性に目を移すのは流石に不味い…しかも初デートで…だ!
あー、女性店員全員休んでくれないかな…永遠に…
俺は心の中で涙を流しながら魔物ナルドを選択肢から外した…

残るはベルゼバーガー…このお店は一風変わっていて
なんと、注文してから仕込み済みの食材を調理をするという手作りを強調しているお店だ
完成までには他の店よりもかかるけど作りたての熱々なバーガーは他の店では味わえない上手さだ
もちろんポテトも上手い…だが俺はカリっとした方が好きだ
店員は普通、いや他がおかしいと思えるぐらい普通
リザードマンやオーク、マンドラゴラとか色々いた気がする
出来るまでの時間が他より遅いっていうのを差し引いても無難である
ただ…他より値段が高いという面がある…まぁお金は余裕あるし
無難に此処が良いかな

「ベルゼバーガーに行こうか」

「うん」

彼女が短い返事と共に頷いて第一目標に向う

さて、ここで安心もしていられない、その後に何処へ行くかだ
食後となればあまり動きたくは無い…となると…映画がベターだろう
あとはどんなジャンルか…だなぁ…恋愛あたりで良いんだろうか?
いや、まてよ?女優に嫉妬して気分を害するとかあったら…いや、それはないだろうけど
もし、苦手だったらどうしよう…うぅ…アクション系?
いや、爆音とか嫌いかもしれない…
そもそもやってるモノが何か分からない…ああ、困った…
映画は何が見れるのか…まずはそこからになりそうだ
しっかりと調べればよかった…初デートということに浮かれて確認とか怠った俺は死にたい

「ねぇ」

頭の中がぐるぐるして煙が出そうな時にクーの声が聞こえた

「あ、なに?」

「…退屈?」

「い、いや、そんなことないよ!」

「…そっか、さっきから難しい顔してたから……」

考えることに夢中になりすぎてデートの本質を見失いかけてた…
そうだよ!クーと楽しい楽しいデートなんだ!楽しまないとね!

「いや、ちょっと考え事してただけだよ、手…繋ごうか?」

「…うん♪」

差し出した手を握りクーは嬉しそうに口元を緩める
手から伝わる暖かさを感じながらクーと楽しくお喋りをしながら繁華街へ向った






「いらっしゃいませ〜♪」

店員の明るい声に迎えられて俺とクーはベルゼバーガーに入店
流石に日曜日という事もあり客も多く、かなり賑わっていた

「いらっしゃいませぇ〜、ご注文をどうぞぉ〜♪」

ニコリと微笑む店員のホルスタウロスに迎え入れられ俺達が注文をする番になり注文を決める
俺は既に注文するものはは決まっているので後はクーが決めるだけだ

「何が良い?テリヤキとかエビ、チーズとかあるけど」

「う〜ん……ベルゼセットで…」

「お飲み物は何にしますかぁ〜?」

「…コーラで」

「畏まりましたぁ〜♪」

「俺はテリヤキセット、飲み物はコーラで」

「畏まりましたぁ〜…こちらでお召し上がりですかぁ〜?」

「はい、そうです」

「はぁ〜い…お会計1420円になりますぅ〜」

のんびりとした口調の店員に財布から2枚の野田さんを出して支払った



「…私、こういうお店、初めて」

「え?そうなのか?」

「うん…必要な買い物がない時はいつも直帰してたから…
 一人で来るのもつまらないし…だから一緒に来てみたかったの」

意外だ、学生なら何度か足を運ぶ場所だと思ってたけど
クーは初めてファーストフード店に来のだ、しかも俺と一緒の初デートで
きっと良い思い出になる、いや良い思い出にさせよう!

それから二人でファーストフード店の事を話しながらハンバーガーにかぶりついた
他の店―ロリッテアや魔物ナルド―のメニューの話を聞かせると
目を輝かせて俺の話に食い入るように聞いていた
今度、学校の帰りにでも一緒に行こう…と俺は心の中でそう決めた



「ありがとうございましたぁ〜♪」

店員の声に送られて店を出ると次に向うのは映画館
上映時間をしっかり調べれば良かったと思ったが
丁度良い時間の恋愛モノをやっているのでそれを見る事にする
やっぱ二人で見るにはこれが良さそうだ

売店で買ったポップコーン―クーはこれも初めて食べると言ってた―を摘みながら映画を見る




長い間、雪原で生活をしていた竜が遭難した一人の男性を気まぐれで助けたのがきっかけだった
介護され元気になった男性を麓まで送りいつもの生活へ戻った竜…
しかし日を追う毎に外の世界を見たくなった竜は自分の居た雪原を飛び出し世界を旅していた

今まで見てこなかった世界、草原、砂漠、海、川、森、町、そして多くの魔物娘
そんな彼女は飛び出すきっかけをくれた男性に礼をしようと探し始める
ついに竜は男性を探し出したものの、隣の女性と楽しそうに会話している所を目撃して声をかけられなかった

その時…竜は気づいてしまったのだ…自分が好意を募らせていた事に
彼の幸せを壊したくない…竜は自分の想いを心の牢獄に閉じ込め住処だった雪原へと戻っていった…
切なく寂しい表情に涙を流しながら…

それからの時間はまるで空虚だった、子供が忘れて言ったボロボロの人形のように洞窟の中で一人塞ぎこむ竜
彼に会いたい…彼に会いたい…と想いながら何をするわけでもなく、座り込んだままの生活を続けていた
そして彼女は再び空を飛び彼の姿を見に行った

彼と再会したのは墓場だった…一つの墓石の前に花が添えられれ涙を流す男
その背中をじっと見つめている竜…

病に倒れて他界した肉親の妹の墓で泣いていた所に現れた竜
以前、遭難したところを助けてくれた彼女が立っていたのだ
それから竜と付き合い、最後には結婚して幸せになった

という内容だった…映画が終わりクーを見ると涙をながしていた
ハンカチを取り出し、そっとクーに差し出すと礼を言って涙を拭いてくれた

その後もクーから観た映画が良かったとおしゃべりが続く
俺と一緒だったから楽しかった事や楽しめたことも絡めてくるので少し恥ずかしい
それ程にクーが楽しめていたことが分かる、初デートという事もあり
こんなにはしゃいでいるクーを見るのは初めてだ


学校では本を読み、お昼は一人で食べていて授業が終われば誰からも声をかけられる事無く帰宅
俺と付き合う前はそんなのが日常だったとクーの口から語られた
友達がまったく居ないというわけではなく、指で数えられるぐらいしか居ないらしい
しかも同じクラスでないので、遊ぶ機会も少なくメールでのやり取りが殆どだったと言う

振り返れば、知り合ってからのクーは本をあまり読まなくなっている
仲が良くなってくると一緒に勉強したり、周りから茶化されたこともあった
その時はクーと付き合うとは思いもよらなかったが
クーとなら付き合ってもいいかなという感情があったのだろう
茶化されてもあまり反抗はしなかった
…もしかしたら、その時にはもう好きだったのかもしれないな

そして、付き合い始めてから一緒に学食で昼飯をとったり授業の内容を話したり
授業が終われば宿題や世間話…付き合ってから急に積極的になってきたような気がする

「ねぇ、あれ…行ってみたい」

クーが指を指した先にあるもの…プラネタリウムだ
この後の予定は特になく彼女の希望通り中へと入った
昔―子供の頃―来た以来だったので俺も楽しみだ
場所は指定されており俺達は中央の投影機の少し後ろの席で通路寄りの位置だ

『本日はお越しいただき真にありがとうございます、これより皆様を素敵な星空の旅にご案内いたします』

はきはきとした声のアナウンスがと同時に
青い壁や天上を照らしていた照明がゆっくりと暗くなっていった

『先ずは春の星座からご案内いたします』

暗くなった室内に無数の光が徐々に増え始めた
昔見たのとは違い、物凄くリアルな夜空に俺は嘆息をした
星の輝きもまるで自ら発しているような雰囲気がある…

時折見える流れ星が更に演出を高め
本物と見間違うような星空の世界を俺達は堪能した…


そんな素敵過ぎる時間も終わりが来るととても寂しい気持ちになった
時間としてはかなり経っているにもかかわらず1分そこらで終わってしまったような感覚だけがのこっている
それほど集中して眺めていたのだろう…終わった後の俺達の会話は少なかった
星空に圧倒されてしまい、感動で言葉がでないのだ

どこかに行くわけでもなく、ただふらふらと歩いていると
くぅ〜…とお腹の虫は素直に空腹を訴えてきた…自重しろよ俺の虫…

「…くすくす、お昼…食べよう」

「あ〜うん…そうだね」

クーにクスクスと笑われてしまったけれど、そんな笑顔も素敵だ

「何か食べたいものってある?」

「…チーズバーガー食べたい」

「おっけい、んじゃ…この近くってなるとロリッテアになるけどいいかな?」

「うん…楽しみ」

どうやらハンバーガーが結構気に入ったらしく機嫌が良い
クーから聞こえる微かな鼻歌がそれを物語っている
歌の内容はどこか童謡チックで懐かしさと共に店へ足を運んだ




「うん、おいしい…」

ロリッテアに入店した俺達は早速注文を頼んだ
俺はロリチキンセットでクーはチーズバーガーセットだ
クーが美味しそうにかぶりつく姿を見ながらの食事はとても幸せだ

「ケチャップついてるよ」

「んん?」

よほど集中して食べていたのだろう
トレイについてきた紙ナプキンでクーの口についたケチャップを拭いて上げた

「…ありがとう」

少し恥ずかしそうに顔を赤らめながらのお礼…かわいい!めっちゃかわいいなぁ
頭とか撫でたらもっと恥ずかしそうにするんだろうなぁ…

「…私、そんなに変だった?」

そんな事を想像して顔がにやけていたのを変に捉えられてしまったようだ

「そんなことないよ、クーが可愛いからついにやけちゃって」

「……!…(もぐもぐもぐ)」

クーは俯いてもくもくとチーズバーガーを食べている
顔を覗こうとすればそっぽを向き顔を見せてくれない
照れてるようだ…ああ、やばい!またにやけてしまう…

それ以降の食事は終わるまでは無言だった
寂しい気持ちがあるけれど、その原因を作ったのは俺だから仕方が無い




「あ……」
空腹を満たして暫くの間、何処に行くわけでもなくのんびりと散歩をしていると
急にクーが声を上げて立ち止まった、目線の先にはUFOキャッチャーがあった
覗いてみると「まもむす図鑑」シリーズの2頭身のぬいぐるみだ
《アヌビス》《ワーウルフ》《スフィンクス》《ワーキャット》《アリス》《マンドラゴラ》
と様々な種族があるけど
クーが惹いたのは《サイクロプス》のぬいぐるみだろう、図鑑のホットパンツを履いた姿とは違い
現代版にアレンジされているのかつなぎと[安全第一]の書かれた安全帽を被っている
良く見ると他の種族もいくつか現代バージョンが混ざっていた

《アヌビス》は教師風《ワーウルフ》は軍服を着た兵士《スフィンクス》は制服
《ワーキャット》はパジャマに魚の抱き枕っぽいのを抱きかかえて
《アリス》はなぜか旧スク水…マニアックすぎる…
…いや《マンドラゴラ》は幼稚園の制服だからこっちの方がマニアックか

…よし、ちょっとやってみよう
「ちょっと待ってて」
クーに待ってもらうように言ってUFOキャッチャーの前に立つ
100円を投入口に入れてUFOを動かす…当然、狙うのは《サイクロプス》だ
TVでUFOキャッチャーの特集をやってたのを思い出す…重心に気をつけなくてはいけないのだ
2頭身タイプは基本的に体が軽く、頭が重い…首に上手くかかれば良いのだが
大体は頭の重さに耐えられず体が浮いて頭から落ちてしまう
と、なれば挟むのは頭だ、頭の中心から少し下…口の辺りにUFOを誘導して投下!

アームを広げゆっくりと降りていくUFOは狙った通りの場所にたどり着き
アームが《サイクロプス》の顔の裏側に回った
思ったとおり重心は顔の方に傾いていた
ゆらゆらと不安定ながらも重心の中央を掴んだアームは確実に景品ダクトに運び…

ガチャン

落ちた《サイクロプス》のぬいぐるみが景品取り出し口の蓋にあたる音が聞こえた
何回か行う覚悟でやったのだけど、なんと!1回で取れてしまったのだ
心の中で喜びながらなるべくクールを装いクーの所へ

「はい、これ」

《サイクロプス》のぬいぐるみをクーに差し出すと驚いた顔でぬいぐるみを見つめていた

「え…いいの?」

「うん、《サイクロプス》のぬいぐるみだから
 欲しそうかなって思って、やってみたら取れたからクーにあげるよ」

「…うん、ありがとう♪」

《サイクロプス》のぬいぐるみを受け取って嬉しそうに微笑むクーはぬいぐるみを頬ずりをしている
その行動は普段の彼女からはあまり想像できない可愛い仕草で、クーが更に可愛く見える
ぬいぐるみ、俺と代わってくれ!って邪な考えをしながら、改めてクーと付き合って俺は幸せだなと感じた




当てもない散歩は続き、クーはぬいぐるみを持ちながら何かの鼻歌を歌って上機嫌だ
歌…そうだ、カラオケに行こう!JRカラオケって意味わかんねえ…
「クー、カラオケに行ってみない?」

「…カラオケ?」

「そう、歌を歌う場所だよ、設備は揃ってるから直ぐに歌えるし」

「うん、行きたい」

「おっけい、それじゃ行こう!」




俺達は近くにあったカラオケ店に入った
小奇麗な店内は白と青のストライプの壁に床は緑の絨毯が敷かれている
俺は受付にて部屋を借りるための手続きを済ませる
時間は2時間が無難だろう、そう設定して二人分のマイクと伝票を受け取ってその場を後にした

きょろきょろと言えば大げさに聞こえるけど
クーはここも初めてで周囲を見渡している
どこから漏れてくる曲を耳にしながら個室へと向う
俺達の部屋は304号室、階段から上がった所から手前の2番目の列だ
中は7人ぐらいが座れそうなL字型のソファーと、それにあわせたサイズのテーブル
カラオケの機器のほかに…ミラーボールまである
つうかミラーボールを備えているのは初めてみた…

テーブルに置いてあるメニューと曲のリスト本
まずはメニューを開きドリンクとお菓子を頼もう
っといっても食べたばかりだから
軽いものであるポテトチップスと飲み物はさっぱりとしたウーロン茶が良さそうだ
クーにその話を持ちかけ俺と同じくウーロン茶を注文して
カラオケ本の見方とリモコンの使い方をクーに教えた
リスト本に載っている番号をリモコンで打ち込み、送信するだけなので意外と簡単である
一曲先に俺が歌って終わるとクーは未だに一生懸命自分が歌えそうなのを探している
部屋で音楽とか聴いたことないのだろうか?これは…失敗した…かな?

「…あった」

どうやら歌いたいのが見つかったようだ、リモコンに番号を打ち込んで送信をしている
そして出てきたタイトルが…「おもちゃのチャチャチャ」
もしかしたら大失敗フラグ?せっかくカラオケに来たのに
何も歌わないのも気まずいと思って一生懸命自分が歌えそうな曲を見つけたのだろう
それなのに俺は…俺はっ!!

壁に思いっきり頭をぶつけたい衝動を抑えながらクーの歌を聞く
そんな俺の心情と反対にクーは嬉しそうに歌っていたので失敗ではないのかもしれない
もしも、クーが無理して歌っていたなら直ぐに分かるが
そんな雰囲気もなく歌っているので成功の方なんだろうか?
その後もクーは童謡の歌い続け、たっぷり2時間分お互い歌いあった



「ありがとう」

カラオケ店を出てクーが不意に礼の言葉を口にしてきた

「え?」

「わたし…童謡が好き…でも、みんなの前じゃ歌えないから
 …楽しかった、また二人で来たいな…♪」

そういって口元を緩める…ああ……よかった成功のようだ
童謡ばかりで、本当は歌が好きなんじゃないかって懸念していたけれど
二人きりだったから歌いたかったモノを歌えて満足してくれたみたいだ
まぁ、確かに高校生が童謡を歌うのは恥ずかしいよな…
今日は俺と二人だったから気軽に歌えたんだろう、良かった良かった
今度デートする時にはカラオケに来よう、と俺は心に刻んだのだった



クーとの楽しいデートも午後5時を知らせる鐘が一日の終わりが近い事を告げる
空は黄昏色に染まり暖かかった表も日が沈むに連れて徐々に寒くなり始め今は少し肌寒い感じだ
沈み終わった頃には俺達は自宅へ戻り、家族と食事やら家で雑誌を読んだりしているのだろう
この先…デートがもう終わってしまうんだと思うと心寂しく感じてくる
できれば一泊とかしたいが多分親は許さないだろうし、クーの両親にも迷惑をかけてしまう
あぁ…時間が止まったら良いのに…

「ねぇ…」

「うん?」

「……あの…」

何だろう?何かを言いたそうにクーがこっちを見つめている
しかし言葉がつっかえているのか内容を言いづらそうに口篭っている
ああ…そっか…きっとここでデートを終えることを言いたいのだろう
それは言いづらいよな…っというかそれを彼女に言わせようとしてる俺は最低だよな…
よし!ここは俺が…男を見せないと!

「き、今日は楽しかったよ」

「…うん……」

「また…今度デートしよう」

「……うん…」

クーの視線が下に沈む、やっぱクーも寂しいんだろう…
でも俺達の関係はこれからが始まりなんだし、またデートすればいい
そう言い聞かせて今日のデートは終わりを告げていく――

「それじゃ、また…学校で」

「…っ……まって!」

――はずだった
俺が去ろうとするとクーが俺の腕を掴み引き止めた
ああ…クーも寂しいんだろう、もうちょっとだけ…居た方が良いかな?

「あの……き、今日……私の…私の……」

「う、うん?」

私の…?……うーん、今日はクーの誕生日じゃないし…なんだろう?

「…わ、私の…家に…と、とと……泊まりませんか!!!」







( 'Д')







('Д')








お泊りフラグきたあああああああああああああ!!!!!!!!!!!!






お、落ち着け俺!
そうだよな…そりゃお泊りの誘いなんてすげえ言いにくいよな…
AHAHAHAHA!!!

「……やっぱ…ダメ?」

むしろ断る理由を探すのはかなり難しい!
どのぐらい難しいかというと宇宙でもう一人の俺を探し出すぐらいに難しい!

「いやいや、そんなことないよ!泊まるよ!泊まる泊まる!」

全力で賛成、もう大賛成!っというかゲームで言えば

[>泊まるよ!
 泊まります!
 泊まらせてください!

の選択肢でどれを選ぶか?って言われているようなものだ

「良かった…♪」

「…あ、そうだ親にいっとかないと」

「大丈夫…今朝…言っておいた…泊まっても良いって」

早っ!根回し早っ!?
あ、でも今朝の家族の態度が変だったのも納得できちゃうな…
何気にクーってこういうの行動力あるんだな…意外な一面を見てしまった(良い意味で
っというか親父は良く承諾してくれたな…きっとダメだと断るかと思ってたけど

「じゃ、じゃあ…もう少しデート…かな?」

「あ…えっと……夕食の材料…買いたい……」

「ん?頼まれてたのか」

「ううん…夕飯はまだ決めてないの……
 だから食べたいのがあったら言ってね、私が作るから」

「へぇ、クーは料理できるのかぁ…凄いね」

「そんなこと……ないよ」

クーは俺から目線を逸らして照れている仕草を見せた
ああ、可愛い…もっと照れたところを見てみたいと考えてしまったがきっとこれが正常なんだろう、うん
考えを戻してクーの手作り料理を食べられる…だめだ!顔がにやけてくる!
と、とりあえず食べたいもの…食べたいもの……
そういえば…肉じゃが最近食べてないなぁ、よし!それだ!


「…肉じゃが」

「甘い方がすき?辛い方がすき?」

「う〜ん、甘い方かな…といってもご飯と合うぐらいで」

「うん、分かった…食材買いに行こ♪」

得意の料理なのか嬉しいのか掴んだままの手でぐいぐいと引っ張る様はまるではしゃぐ子供だ
そんなクーに引っ張られながら近くのスーパーに足を運び必要な材料を買いに向った




「…重くない?」

「大丈夫だよ、軽い軽い♪」

買い物の帰り道、人気の少ない狭い道路を歩く俺とクー
スーパーで買った食材の入ったビニール袋を俺が持ってる
最初は俺が持つことを断っていたが強い押しに根負けして俺が荷物もちを半ば無理やりさせてもらった
料理を食べさせてくれるのにこれぐらいの事をしないで男と言えるのだろうか?いや言えない!
っということで俺は荷物もちをしている、無理やりとはいえ荷物を持ってくれている事を気にかけて
クーが時々心配そうに声をかけてくれている

材料は多くはないので重くはなく比較的軽い方だ
むしろ少ないほうだ、家族揃って少食なんだろうか?
買っている最中にみた量からしても2〜3人前だ
きっとスレンダーな両親なんだろうなぁ…初めてクーの両親に会うのでちょっと緊張してきた

「着いたよ」

いよいよご両親との面会だ…うわぁ、凄く緊張してきたぞ!
クーの家は2階建ての一軒家でデザインはかなり異なるが
見た目の広さは俺の家と然程の変わりない
しかし、両親は仕事で外出しているのか明かりが灯っておらず
クーを先頭に家の中へを入るが、やはり人気が無く誰も居ないようだ

「…今日は……親…仕事で帰らない…から、ゆっくりしてね」

「え……そ、そうなのか?」

「…………うん」





('Д' )





 !!!
('Д')






これってやっぱあれだよな…あれだよな!!!!!
なんていうかベタというか王道というか…二人っきりフラグとか……
ゆっくりしてとは言われたけれど、別の意味で緊張してしまう
って、クーもなんかそわそわした感じが…あぁ…きっとクーも意識しちゃったんだろうなぁ

「そう、そうだ何か手伝おうか?」

「あ、だ…だひじょうぶ……
 …大丈夫、一人で出来るから少し待ってて」

意識して緊張したせいかクーが珍しく噛んだ

「わ、わかった…んじゃ待ってるよ」

「うん…あ、テレビ…自由に見て良いからね…」

「わかった、ありがとう」




TVをつけてみると「なんでやねん!」とベタな漫才をしているお笑いコンビが映っていた
金色スーツと銀色のスーツを着ている…一昔前の衣装だ
更に金色の人が突っ込みをいれ銀色の人がボケてトークをしている様も古い

チャンネルを切り替えると今度はアリスが男とイチャイチャしている所がいきなし映った…
「うぅん……だめ…お兄ちゃん……そこ…」
なんでこんな時間に…ああ、MHKか
MHKは性教育番組をやっていて健全的な(?)教育番組として放送されている
もちろん健全なので同性愛やらSM等はやっていない
しかも趣味なのか殆どがロリのため、大きいお友達にも人気があるとかないとか…
見ててもしょうがないのでさっさと次のチャンネルに切り替えた

「次のニュースです、○×銀行を襲撃したサキュバスが男性銀行員に暴行を働いた事件で
 犯人は《彼氏にフラれてついカッっとなってやってしまった、今では満足している》と
 ツヤツヤした顔で犯行を認めていることから、警察は暴行罪としてサキュバスを逮捕した模様です」
……恐ろしい世の中だ、振られたからって他の男性を襲うなんて
ニュースはその後も色々な事件を取り上げていた

・コカトリス、男性に追い掛け回され襲われる
・マンドラゴラ、日向ぼっこしていたところを引っこ抜かれ襲われる
・つぼまじん、壷を覗いた男性に襲われる

……本当に恐ろしい世の中になったものだ
面白そうなニュースはなさそうなので次のチャンネルに切り替えることにした



結局、面白そうなのをやっていなかったので漫才を見ていると
部屋の中に美味しそうな匂いが漂ってきた、どうやら料理の方がそろそろ完成に近いのだろう
時計を見ると7時…もうこんな時間なのか…意外と時間が経つの早いんだなぁと思っていると
廊下からパタパタとスリッパで歩く音が聞こえてきた

「ご飯できた♪」

「あ、うん…分かった」

クーが食事が出来たので呼びに着たんだけど
猫のシルエットが描かれたエプロンに片手におたま
そして三角の耳のついたスリッパ…何とも可愛らしい姿だ
俺はテレビを消すとクーに導かれるように台所に向った






「うん、おいしいよ!」

「良かった…♪」

本当に美味しい、甘すぎない味付けがご飯と良く合う
ジャガイモは軟らかすぎず硬くもない、食べるには丁度良い硬さ
肉も柔らかく糸こんにゃくもダシが染みていてご飯と一緒に食べるとより一層美味しかった

「おかわりする?」

「ああ、お願いするよ」

空になったお茶碗を指し出し、クーがご飯を装ってくれる
ああ、今日は幸せのオンパレードだ…
クーは可愛くてご飯も美味い…こんな日々を毎日送ってみたい
学生の俺達にはまだまだ遠い夢なんだろうけど、幸せな家庭を築きたいものだ
……いやまぁ、なんといいますか話しがかなり飛んでるけどさ
俺はそのぐらい今は幸せだってことだ

「はい、どうぞ」

「サンキュー♪」

クーが装ってくれたご飯は湯気が立ち上っており
口に放り込めば暖かく軟らかい飯が口内を暖めてくれるような感覚を覚える
ご飯って…こんなに美味しかったかなぁ…
いや、なんか幸せすぎてしんみりしちゃってるな俺…気をつけないと
クーに目を向けると自分の作った料理の味を再度確認するように頷いている
ああ…本当に毎日続いて欲しい…いや、続くように頑張ろう
今はクーの美味しい手料理を食べよう、この先の事…その考えを一度とめ
クーの作ってくれた肉じゃがを味わって食べることに集中した






「ふぅ…良い湯だった」

食事が終わった後はお風呂に…クーは食べ終わった後の食器を洗うため俺が先に入った
クーが毎日使っているお風呂と考えると股間が熱くなったのは内緒だ
そんな風呂事を考えながら入浴している間に妹が来ていた

クーとは以前から知り合いだったらしく、住所を知っていて
帰宅する頃合を見計らって制服とパジャマ、漫画を届けにきてくれたのだ
そんな出来のよい妹に感謝しつつ、俺は今パジャマ姿でクーの部屋で寛がせてもらっている

部屋はシンプルな白い壁と南側の窓が一つ
白く塗られた木製の机にはノートパソコンと棚に収まっている参考書の数々があり
床はオールドローズ色の絨毯が敷かれている

ベッドは桃色の掛けカバーと合わせた赤と白の縞々柄のキャンディの形をした枕がある
なんというか凄くファンシーな部屋だ、とても女の子っぽい
クーはこういうのが好きなんだなと改めて思う
窓とタンスの上にぬいぐるみが置かれている殆どが「まもむす図鑑」のものであり
その中で一際目立つように最前列に置かれているのは今日、俺が取った《サイクロプス》のぬいぐるみだった
周囲を一つ分空けて主役ですと言わんばかりの置き方からとても気に入ってくれているんだろう

そんなぬいぐるみたちと違う意味で目立っているモノもある
「まもむす図鑑」と違うぬいぐるみは一つだけ、熊のぬいぐるみだった
損傷してしまったのか太い糸の繋ぎ目が目立つ肩と目の変わりにボタンが付けられている

中央のテーブルにはぬいぐるみは置かれていない
あるのは用意してくれた甘さ控えめのミルクティーとシナモンクッキー
それをつまみながら俺は週刊漫画を読んで風呂に入っているクーを待っているのだ

少し寝そべろうかと足を伸ばしたとき、テーブルの下で何かが当たった
「ん…?なんだろ?」
テーブルの下を覗くと雑誌らしいものが落ちていた
雑誌のタイトルは―まもむす通信―


…なんでこんなのが落ちているんだろう
裏表紙を見てみると名前が書かれていた
     ―海辺 美歌―

誰からか借りているものらしい
再び表紙に戻し見出しを見てみる

・特集!彼氏が喜ぶエッチな行動
・SMY ―最終回―
・彼氏に食べてもらう性的な手料理



「…なんだよこれ成人向け雑誌かよ」
良く見るとR18のマークもしっかりと書かれている
雑誌をテーブルの下に戻して気づかないふりをしたほうが良いんだろうけど
ちょっとだけ気になる項目があった…

―特集!彼氏が喜ぶエッチな行動―

付き合ってまだ一週間の俺達だがクーの今朝の行動が何故か浮かんでしまった
実のところキスをしてない…はい、してないんです…
本来なら手を繋いだりキスをして、そこからエロい事にハッテンしていくのが普通
しかし、手順の 法則が 乱れた わけで…
もしかしたらこの雑誌の影響なのだろうか?
いや、まさかね…と思いつつ特集の載っているページをめくってみた


……パタン


見なかったことにしよう…うん、そうしよう
いきなし朝フェラとか文字が見えたけど見なかったことにしよう
うん、きっと只の誤認だうんうん

…………

……




でも、もう一回だけ見てみよう
ページをめくってみるとやっぱり朝フェラが書かれていた
やはり疑いの余地がない、クーはきっとこれを試したんだろう
軽く読んでみるとなかなかに興味深いことが書かれている

男性の状態、舌の使い方からペニスの性感帯、口や歯の加減の仕方から
口淫をしている時の仕草、手の添え方から射精時の注意点もしっかり書かれおり
ただのエロ雑誌かと高を括っていたが意外に性行為に関して真面目に書かれてて驚いた

恐るべし「まもむす通信」…クーを一気にベテラン級にするなんて…


ガチャリ


「おまた…あ………」

「あ……」

最悪のタイミングでクーがお風呂から戻ってきた…
俺が何の雑誌を見ているのか分かっているのだろう
星柄の入ったピンクのパジャマ姿のクーは何も喋らずに俺の近くに座った
会話もなくお互いに無言のままだ
凄く気まずい…

「…それ、ね……」

その空気に耐え切れなくなったのはクーの方だった

「借りたの……喜んで、貰いたくて……でも…
 やっぱ…こういうの…よくない…よね……?」

その後も何かを呟いたけど、聞き取れない小声…
クーは俯き、再び静寂がこの部屋を支配しようとしていた

「そ、そんなことないよ!」

「…本当?」

「ああ、本当さ!そりゃ始めは驚いたさ
 大人しかったクーが大胆な行動をとれば普通に驚くよ」

「………」

一度こっちに顔を向けたが再び俯いた
その瞳は寂しく、そして悲しそうだった
何やってんだ俺…大切な彼女を悲しませるなんて…

「で、でもさ!それは俺に喜んでもらいたくてしたんだよね?」

「……うん」

「俺さ、凄く嬉しかったよ、クーがそこまで俺に喜んでくれるためにさ
 この雑誌を借りて、勉強したんだよね?」

「…うん……」

「あー…なんて言ったらいいんだろ…
 その、クーだけじゃなく俺にも何かクーを喜ばせたいんだけどさ
 ……どうしたらいいかな?」

言いたい事があった、でもそれを表現することが出来ない
形は分かるのにそれを表現する言葉がないような、凄く曖昧な表現
俺は嬉しい、でもクーに何かしてあげられるのかを考えると…思いつかない

ああ…これじゃ彼氏失格だよな…本当にもう…
クーは俺の為に頑張って勉強したのに俺はクーを考えてニヤニヤしてただけだ

「…じゃあ……私を見て」

「うん、分かった」

お互いに顔を見つめあう、それだけなのに胸がどきどきと高ぶる
二人きり、この家には二人きりという事よりもクーと見詰め合っている方がドキドキしてくる
俺の顔がクーの瞳に映っている…たぶん俺の瞳にもクーが映っているのだろう

「やっと…見てくれた」

「…え?」

俺はその言葉が理解できなかった
一緒にいたし、クーと会話もした楽しいデートだと自負していたんだけど
…何か見落としていたところがあったんだろうか?

「…ほら、また……私を見てない……私…そんなに…つまらない?」

あ…そうか、この事か
俺はクーに楽しんでもらおうとこの先はどうしようかと考えていた
それはデート中もだ、初デートって事もあったんだろう
必死に考えて…って今こうやって考えてる事もクーを気落ちさせているんだ
考えるのはやめよう、今はクーに意識を向けるために

「いや、そんなことないよ…俺だってクーに喜んでもらいたくて
 デート中もどうすれば良いかずっと考えて居たんだよ
 でも、それは考えることばかりに集中してクーの事を見てないって事になって
 今更ながら気づかされたよ…ごめん、本当にごめん」

「…ううん、私の事を考えてくれるのは嬉しいけど
 ……二人きりの時は……私の事、考えて欲しかったな…」

「うん、時間は取り戻せないけど、今度…いや、今からクーを見ることにするよ
 それが…一番クーの為になるなら、そうするよ」

「うん…うん♪……」

やっとクーの顔に笑顔が戻った…もっと、クーを見るにはどうしたらいいんだろう?
いや、考えちゃだめだ…今の俺が…クーにできることをしよう…

「ク、クー!」

俺は思わずクーの肩を掴んでしまった…うああ俺何やってんだよ!!

「あ……うん…………分かった」

クーはゆっくりと瞳を閉じた…あれ?なんで?
あ!そ、そうか…これはキ、キスしようと思われたんだ!
そうかそうか…良かった…じゃねえ!
ええっと………そ、そうだな!キスだ!やっぱ恋人ならキスの一つや二つしないとね!

ゆっくりと顔を近づけると徐々にクーの顔が大きく映ってゆく
それに合わせて俺の鼓動も早くなる…

「ん……」

お互いの唇の先が軽く触れる
これが、俺とクーのファーストキス
唇から伝わる感触は胸を擽りもっとクーを感じたいと思ってきた
デート中は考え事ばかりで俺が楽しむ余裕があまりなかったせいなのだろう

今になって今日、クーと触れ合っている感じがした
石鹸の良い匂いが鼻を通って焦る気持ちを落ち着かせる

唇を離してもクーは目を瞑ったままだ
緊張で硬直したような雰囲気ではなく落ち着いた幸せそうな良い雰囲気だ
そんなクーをもっと感じたい、それが今の俺の気持ち

「もう一回…しよう」

「……ぅん…」

再び唇が重なり合う

二回目のキスは唇と唇と擦り合わせた
唇が擦れるたびに甘い感覚が流れ込んでくる
それはとても気持ちが良くて、切ない気分も混ざっていた

今日のデートは楽しかった…でも、その時間を上回る気持ちを今、感じているのだ
もっと早くにしていれば良かった…そんな後悔が切なくなる原因だった
ならば、デートで味わえなかった分を今、味わえば良いじゃないか…
それで良い、うん……そうしよう…


唇を離して一呼吸
そして再びクーと唇を重ねあう

三回目、唇を擦り合わせる
舌を少し出し、クーの口の中に潜り込ませてみた

「んっ!?……んっ……ん♪」

クーは驚きながらも俺の舌を受け入れてくれた
お互いの舌を絡ませ俺はクーを、クーは俺の舌を探るように絡みつかせる

「んぅ…んっ…はんっ……ぁ…んぅ…」

湿った舌のぬるぬるした感触とクーから漏れる喘ぎ声が
一つ一つ、小さな幸せと快楽を作り始める
それは無数の水滴のようで、一つずつ小さな珠を作り
珠が隣の珠とくっついて大きな珠となった
その大きな珠はクーを求めるよう貪るように促して
いつの間にかお互い抱き合いながら舌を絡めていた





俺もクーも興奮している、それを止める邪魔モノはいない
クーの両親は居らず、時計の針はまだ9時を指していて、時間を気にする必要もない
長い夜の始まりはベッドに移ってから始まった

四回目はお互いを求め貪るような激しいキス
俺は遠慮なくクーの唇を奪い、逃げる術を与えない程に舌を絡める

「ふぅ…うぅ……んっ……あぁ………」

激しいキスに感じているクーの声が徐々に大きく漏れ
回した腕に力が入りを二度と離さないように強く抱きつき
激しいキスの攻めを止めさせないように、終わらせないように
ずっと続いて欲しいという願いが込められている

クーと絡め合う舌はぬちゅぬちゅと滑りのある水音を微かに立てている
できれば、このまま時間が止まって欲しい
でも、俺はそれ以上の事がしたい…息子も熱く、そして硬くなり
パジャマを脱げばそそり立つ姿を拝むことができるだろう
そんな欲望が渦巻いている

「ねぇ……」

突然聞こえた音―クーの声―にふと我に返る
激しく絡めていた舌はいつの間にか離れ
回されていた腕はベッドの上に置かれている
これ以上の事を求めていいのか悩んでいたのが体の動きを止めてしまった

「あ…ごめん、またやっちゃったか…」

「うん…何を…考えていたの?」

少し躊躇う、これ以上の事…つまりセックスをしたいと言う事を言っていいのかと

「…くすっ……」

何故かクーが笑っている…俺、変な顔でもしていたのかなぁ…

「私の事、とても大事にして悩んでくれるのは嬉しいよ
 …でも、悩む必要なんてないと思うの、親も今日は帰らないし…
 ………もしかして…別の理由があるの……?」

あー、俺最低だ…クーにこんなこと言わせるなんて
そうだよ、親が居ない機会を狙ってのお泊り…
それは俺としたいってサインじゃないか
…ああ、また考えてる…もう考えるのやめよう

「俺は…」

いや、躊躇う必要なんてないんだ、はっきり言おう

「俺はクーとしたいって思ってる
 クーをとても大事にしてるから…していいのかって悩んでた
 デートの時も学校の時もクーが好きで好きでたまらなくて
 だから傷つけないように退屈させないようにって悩んでた
 でも、逆にそれがクーに不安を与えてたんだなって、今更ながら教えられたよ」

「…うん、大事にしてくれて、私は嬉しい
 だから…悩んでしまうのも……分かるよ
 でも…遠慮しないで…

 私は…貴方のモノだから……」

そうだよ…クーは俺の彼女なんだ
そして俺のモノなんだ…友達なんかじゃない
俺の恋人なんだ…今の気持ちを、クーに届けよう

「クー…好きだ」

「…私も、大好き」




ちゅ




これで五回目のキス
4回目と違ってマシュマロのような感触の優しいキス

それから俺は一つ一つ、クーのパジャマのボタンを外してゆく
徐々に見える彼女の青い肌、けっして不健康というわけじゃない
種族による肌の色だ
一部の人間はこの色を不吉だとか不快だとか思っているが
俺はそんなことは思わない、寧ろ綺麗な肌だと思う
その綺麗な肌には豊満な二つの山が聳えている

ボタンを外し終わってパジャマを開くと
その双山が露になり、頂上には綺麗な桜色に染まっている
まるで春に咲き誇るサクラのように

ちゅ…

「んっ…」

紳士が婦女子の手の甲にキスするような優しい口付け
触れたことによる刺激に思わずクーは声を漏らす

ちゅ…ぺちゅ…ぺろ…

桜色をした頂上を唇で囲み先端をしたで撫でる
それはとても甘く感じて俺の欲望を少しだけ刺激する

「あ...んっはぁ…っ…んん…」

クーから漏れる切なそうな声を聞きながら俺は更に胸を刺激する
舌で先端を押しながら滑り落ちるように乳輪へ
外周を走るように舌でなぞりながら再び先端へ戻る

「はぁ…あっあぅ…ん」

敏感な部分をなぞられクーの漏れる声も多く、そして大きくなってゆく
そんなクーの反応を楽しみながらゆっくりと右腕を下に滑り込ませる
目標はクーの大事な部分だ

パジャマ越しに指でなぞるとクーのアソコが濡れているのがはっきりと分かった
染みを作ったパジャマを脱がせば十分に濡れたクーの秘部が見えるのだろう
そんな事を考えながらゆっくりと優しく上下に指でなぞってゆく

「お願い…んぁ…じら…さ、ないで…あっ…んくっ…ほしいの…」

何度も指でなぞり、それに合わせて体をひくつかせていた
クーが恍惚した目で強請ってきた
十分に濡らしてからにしようと思ったが
クー自身は我慢できないみたいだ
正直、俺も我慢するのは辛い

パジャマのズボンと一緒にパンティも脱がすと
パンツとアソコを繋ぐように一本の糸を引いて
つややかな糸はとても艶かしく、更に俺を欲情をそそらせる

俺もパジャマズボンを脱ぐと息子をクーのアソコに押し当てた
もう我慢が出来ない、クーと一緒になりたかった、繋がりたい

「それじゃ……行くよ」

「うん…来て……」

クーの小さな空洞にムスコを押し当て、一気に秘部を突いた
入り口を小さくするための幕は破れ小さすぎた穴は最適な大きさの入り口へと変わって言った

「ん!!あがっ…ぐぅ……あぐ………」

破られた膜の痛みに堪え歯を食いしばるクーを見て罪悪感が湧き上がってくる
    ―初めては痛い―
それは分かっていたし理解している
でも、好きな人の苦痛の顔を見るのは流石に辛い

「大丈夫…?」

「んんっ…少し…ま、待って…」

痛みに耐えながらクーは荒々しい呼吸を整えようとしていた
このまま止めても良かったが、クーは続けたいと願っている
俺達は繋がったままでクーの痛みが治まるまで待っていた



秘部から垂れる赤い水がシーツに染みを作ってから数分が経つ
呼吸も落ち着き、苦痛の表情はクーの顔からは消え去っている

「もう…大丈夫…」

「わかった…動くよ」

「んっ…」

腰をゆっくりと動かすと息子から恐ろしいほどの快楽が流れ込んできた
自分でするよりも強い快楽に思わず腰を乱暴に振りそうになった
ゆっくりと、ゆっくりと動いてクーの表情を窺うと―

「あふっ…ふぅんぁ……あっ…あん……」

痛むような雰囲気は一切なく、快楽に身を任せた恍惚の顔だ
少し不安だったが大丈夫そうだ

ゆっくりから少しへ、少しから早めに
クーが痛くない事を窺いながら腰を振り
気がつけば肉と肉を打ち付ける音とクーの喘ぐ声しか聞こえない
いや、微かながら淫らに粘液が激しくすれるような音も聞こえる

クーの膣は十分に濡れていて動かすのは容易かった
中は熱く、滑っていて凄く気持ち良い
膣はもっと感じたい、もっと感じさせたいと言わんばかりに締め付ける

「気持ちいいよ…くぅ、クー…!」

「ひゃぅ…いわっ…んんっ…ない、でっ…ふぁぁ…はず……んきゅぅぅ…」

激しい突きの快楽で最後まで言えずに言葉は中断される
突かれる度に乱れ、突かれる度に声を漏らす
何度も何度も、獣のように腰を振りお互いの体は快楽の波に飲まれ溺れてゆく
それは決して背徳や悪道的な行為ではない
お互いに愛し合い、お互いに求め合う快楽だ

絡みつくようなクーの膣を貪るように突き続けると
背中に寒気に似た感覚と息子が痺れるような感覚に襲われる
もう、限界だ
絶頂の波が押し寄せ飲まれようとしている
これ以上の我慢は出来ない、息子は発射準備を終えて秒読みを開始している
もう、この欲望を止めることはできない
俺の息子はカウントダウンに入っているのだ





「はうぅ…あっああぅ!…うぁぁ!!……」
快楽に身を委ねて乱れるクー
大きな喘ぎ声と揺れる胸は快楽を刺激し更に興奮を駆り立てる





「クー、俺っもうダメだ!」
カウントダウの始まった腰はもはや暴走に近い
絶頂に向って徐々に支配されてゆく感覚の中で果てそうになることを告げた





「わ、わたひも、あぅ!だ、い、いきゅぅっ」
クーも限界に近かった
その証拠に膣は銜えたまま離さないように締め付けている
この締め付けは更に強い摩擦を生み
快楽の波を止め処ない力に変換されていった





頭の中には二つの事が浮かんでいる
一つは絶頂を求めて腰を振ること
もう一つはクーと愛し合っていること
だから俺は一緒に、イキたいと思った





「一緒に…あぁ…い、一緒にイこう……くぅ」
「ひゃぅぁ!う、うんんっ…わた…ひも……ひゃぅあ、ああぅ!」
最後まで言葉にならない、でも一緒にイキたいという事は伝わった
背中がゾクゾクと寒気が走り、息子は痺れ痙攣を起こしている
クーも体を小刻みの痙攣を起こし今まで以上に膣が締め付けた




「で、、でるっ……う、ううあぁっ!!」
「ひゅぅあ、あっ!ああああああぅぅぅぅぅぅ!!!!」

ドクッ…ビュルルルルゥゥゥゥ……ビュゥ……ビュ……

息子から尿とは違う熱い何かを吐き出すような感覚に襲われた
それは溜まった快楽を吐き出すようにクーの中へ注ぎ込んでいった
腰がビクビクと動き残らず全てを吐き出すような運動を行われ
それが終わると今度は脱力感が襲ってきた

その脱力感に抗うことが出来ず、俺はクーに寄り添うようにゆっくりと倒れた
クーは何処を見ているのか分からない焦点の合わない目で天井を見上げている
脱力の次に襲ってきたのは眠気…

眠気に身を任せ、俺はクーを抱き寄せると重い瞼を閉ざした
その時「おやすみなさい」という言葉が聞こえたが、返事もできずに
顔に何か軟らかい感触を感じながら深い眠りへと…落ちていった………











シャーー!

眩しい、急に黒から白に視界が塗りつぶされた
「う、うぅ……」

閉じた瞼を更に瞑り布団の中へと顔を埋める
眠さの残る思考で何故明るくなったのかを考える

「貴方、朝ですよ…お…お・き・て」

ああ、そうか…朝か、でも眠いなぁ…
凄く寝たりない…

「もうちょっと寝る…」

声の主にそう、返事をして再び夢の…
ちょっとまて!誰だ!?

ガバッ!

飛び上がるように上半身を起こし周囲を見渡す
そこは見知らぬ部屋で、一人の女性が立っている
いやいや、ちょっとまて…思考が空回りしてる

寝起きのせいだろうか、自分がここに居るのを理解できていない
頭を起こすため一度だけ深呼吸をする

すぅ〜…はぁ〜…

そしてもう一度周囲を見渡す
ああ、そうか…ここはクーの家だ
昨日のデートの後に泊まったんだった
…そしてクーと……

うむ、股間が熱くなるな…じゃなくて!
クーに挨拶を言わなきゃダメだろ

「おは…うお!?」

クーに視線を戻して挨拶をしようとしたが途中で驚きの声に変わった
それもそのはずだ、クーがエプロン姿なのだから
しかも、エプロン意外何もつけてない…裸エプロン

「な、何してるの?」

「…裸エプロンの新妻」

どう答えたらいいんだ?っというかクーってこんなことしたっけ…
突然のエロい姿に俺は困惑してしまう

「…まもむす通信に……の、載ってた」

あまりにも動揺している俺に説明をしてくれた
ああ、なんとなく納得できた
…たぶん、彼氏を喜ばす何とかって項目に載っていたんだろう
俺の動揺ぶりにクーも動揺し始める

「…だめ……だった?こういうの嫌い?」

「い、いやいや!嫌いじゃないよ、むしろ好物!」
自爆したああああああああああああ!!!orz
いや好きなのは変わりないけどさ

「良かっ…くしゅんっ」

流石にまだ肌寒い季節だ、そんな中で裸エプロンなんてやったらくしゃみも出る

「嬉しいのは確かなんだけどさ…、とりあえず、服着ようか」

「うん…そうする…」


朝から驚いたけどクーは俺が好みそうな事を
積極的に取り入れて実行しようとしていたようだ
クーが作ってくれた朝食の時もアーンって食べさせてもらった
恥ずかしかったけどクーの好意を無下にしたくないし、俺は寧ろ嬉しかった
そんな甘い甘い時間も学校の時間と共に終わってしまうのは寂しいが
次の日曜日にまたデートをすることを約束した

時間になり、学校まで一緒に登校をする
爽やかで幸せな時間を過ごしながら学校へ歩いてゆく
…次のデートは余計なことを考えないでクーを見るようにしないとなぁ

「……また、何か考えてる…」

「え?あ…ごめん、次のデートが楽しみだなってさ…」

「うん、楽しみ♪」

そういってクーは俺に笑顔を見せてくれた
その笑顔は朝日のせいだろうか?とてもとても輝いて見えた


今日は月曜日…一週間が始まる事を知らせる言葉だが今では素敵に思える








だって









今の俺は、幸せだからださ!









「クー!手を繋いで登校しようか!」
「…うん♪」




                               ―END―
13/04/11 00:18更新 / ロッテン

■作者メッセージ
先生助けてっ!
RotWingが…が息してないのっっ!!

やっと書きあがりましたよ…
この手の描写はとても苦手だと今更気づいた…orz
しかも読みきり系最長の22853文字とかなんなのと…


サイクロプスのSSは現代と図鑑の二種類ネタが上がったんですが
たまには甘いものをと思って現代にしたらとんでもなく遅筆になりました


某小さいバスターズのサントラには思いっきり助けられ
他にもメモ帳のフリーツールの[メモ紙]っというのも使って進行は何とか進み完成

背景色を変えられるので バルスカラーでなくなったのは良い事でした…
さて、最後まで読んで頂きありがとうございました


作成状況等が気になる方はプロフィールでもご覧ください
適当に作成内容等を書くと思いますので

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