対談
対談
『間も無く、ノーマンズランドの首都カタリナに入ります。』
船旅が終わり、港に着き、馬車と荷物を降ろし、陸路を行くこと2日。私達はノーマンズランド領内に入った。関所も従僕が持っていた紙切れ一枚で難なく抜け、間も無く首都に到着しようとしている。首都の名前が国主と同じ名前とは、カタリナ殿下は少々悪趣味なようだ。
窓の外を見ると美しい緑の平原が広がり、心なしか太陽が強く感じたのは、生まれ育った西の大陸北部の厳しい気候以外、私は知らないからかも知れない。
程なくして首都カタリナの下馬場に入る。手荷物以外は持っていないので、御者夫婦に金を渡し、そのまま街を歩く事にした。
『旦那様、先ずはカタリナ様と契約をして頂きます。』
『……形だけだろうに、その契約とやらの殆どは完了してる筈だ。』
『申し訳ございません……その様な事はこの従僕には分かり兼ねます……。』
目線をやると従僕は口の端しを吊り上げてニタリと笑っている。まったく、白々しい。左手の薬指に刻まれた呪のおかげで私はこの従僕と離れられない。この従僕に必ずカタリナ殿下の前に連れて行かれる。
加えて性欲が日毎に増し、夜この従僕の身体を求めずにはいられなくなっている。他にも、腰に下げたカタナを触ると酷い嫌悪感を抱く。現に昨日、ハーピー達の盗賊に襲われたが、その様な理由で彼女達を斬ることは出来なかった。それから鏡に映る自分自身を見た時になんだか若返っているような印象を受けたり……いや、確実若返っている。最初は微々たる変化だった。今やどうだろか?街のガラス窓に映る自分の姿は20代後半と言っても差し支えない程だ。
しかし、この主従の呪は絶対らしく従僕は私の命令に決して逆らう事はない。また彼女は私の魔法を……どんな陳腐な魔法も打ち破る事が出来ないようだ。それは少し気分が良い。
成すようにしかならない。不本意ながらそんな事を考えながら街を歩く。
ノーマンズランドの首都カタリナは非常に綺麗な街だ。白を基調としている。魔物国だけあり、多種多様な魔物娘が街を歩いている。街には活気があり、昼間と言うのに花街には人が溢れている。
行き交う人々は男以外は殆どが魔物娘だ。少々露出が多過く目のやり場に困るが、文化の違いだろう。
この国は魔術が発達した国らしく、非常に高度な魔法が溢れている。水の魔方陣を使った噴水や手洗い場、市場の野菜や魚は氷の魔方陣により新鮮に保たれているようだ。道端の屋台ですら火の魔方陣を使い客に料理を提供している。あの羽の生えた魔物娘が止り木にしている柱は街灯と言うものらしく、どうやら光の魔方陣で日中に光を取り込み、夜に光を放出する事で街を照らしているらしい。どれもこれも初めて見るものばかりだ。
ベルモンテ王国や主神教の軍が手も足も出ないのも納得出来る。
大通りを進みその先、国主議会議事堂と書かれた首都の中央に鎮座する巨大な建物に入る。大小様々な美しい石像が置かれた広いロビーの中ではせわしなく局員が仕事に追われて動き回っている。
『国母様にお取り次ぎを。』
そう言って従僕は受付のサキュバスに書類を渡した。サキュバスはこちらにどうぞ、と立ち上がり、私達を奥の部屋へと通した。
『遠路はるばるようこそ。ベンジャミンさん。』
無駄に長い廊下を渡り、たどり着いた大きな部屋に居たのは紅いドレスを纏った白い悪魔だった。
『私はカタリナ、魔王が娘、リリムの1人。』
カウチに横たわる様に座る彼女は肩まである白い髪に、大きな角、白い蝙蝠羽、白い尾わ持ち、身に付けた真紅のドレスは丈がしどけなく片側に大きく開き、首元で結ばれる露出の大きいものであったが、気品を損なわないのは彼女の器であろう。暁を零したような紅い瞳が柔和に笑いかけている。美という単語が意味を成さないほど美しいこの魔王の娘からは一国を治めるにたる、得体の知れない何かと、王族のような高貴さを感じる。
『お会い出来て光栄でございます。カタリナ殿下。』
宮廷式の少々大げさな礼で頭をさげる。
『いえいえ、そう固くならず楽にして下さいな。』
そう言うとカタリナ殿下はソファーに手を向け座るように促した。
『失礼します。』
『どうか頭を下げないで下さい。私とあなたはもう友人よ?贈り物は気に入っていただけたかしら?』
『はい。それはもう……私には過ぎたもので、それに行く宛のない所を拾って頂き、何とお礼を申し上げたら……』
『そう。それは良かった。ベンジャミンさんならきっと私の夢に賛同してくれると。それから……あなたが良いインキュバスになった様で私も嬉しく思います。』
『インキュバス?……それは、どう言う事でしょうか?カタリナ殿下。』
カタリナ殿下は口の端を吊り上げニタリと心の底から嬉しそうに笑う。
『ベンジャミンさんも我々と同じ魔の者になったと言うこと。ダフネの具合はさぞ良いかった様ね?』
『!!!』
『驚く事は無いのよ?人間だった幼いあの娘を拾い、サキュバスに変え、眷属にし、育て、教育を施し、夜伽を仕込んだのはこの私。それにコレはもう必要無いわね?』
殿下が手をかざすと腰に吊り下げていたカタナがひとりでにスラリと抜け殿下の手に渡った。
『魔物娘と交わった人間の男性は男性の魔物であるインキュバスになる。若返り、愛欲が増し、他者を殺せ無くなる。私達魔物と同じく、愛を知る者としてそうなるのよ。』
私は人の心の裏を察するに長けていると自負しているが、全てを見透かす様な笑みを浮かべるカタリナ殿下の心中を読むことは出来ない。
『殿下もお人が悪い。では殺意を失った拷問手の私にどの様に私に腕を振えとおっしゃいますか?』
『そうね……その辺りに関してだけど、最初から殺す気の無い者には余り関係ないと思うわ。あなたは人間の頃から殺意も無く相手を殺さずに嬲れる素晴らしい方よ?全てにおいて問題無いの……さて、本題に入りましょう。あなたには私の国、ノーマンズランドの国立闘技場にて3ヶ月後のショーに出てもらうわ。そうね……1つの公演につき、金10000ジュエルでどうかしら?……価値としては金50000ベルとだいたい同じぐらいだと思うわ。』
『嬉しいのですが、金50000ベルもの価値が私のような卑しい拷問手にあるでしょうか?』
カタリナ殿下は笑い出した。
『いや、失礼。ベンジャミンさん、あなた価値はそれでも安いぐらいよ?卑しいなんてとんでもない!あなたは確かに世界の財産に値する素晴らしい拷問手。他にもあなたにはいろいろとやってもらうわ。そうね……秘密諜報機関で働いて貰おうと思ってるわ。もちろん、尋問専門で。給金も弾むわ。それから……道具は望む物を全てを此方で用意させましょう。』
『……殿下はなぜ、私にそこまで?』
突如としてカタリナ殿下の空気が変わった。ダフネが持つものと同じ……いや、それよりももっと暗く廃頽的で禍々しいものだ。
『あなたには私の夢の協力をしてほしいの。私はね?愛とお金と享楽が生きとし生けるもの全てと、世界を支配するに値し、また救うと信じているの。人間みんなが私達、魔物娘やインキュバスと同じように永遠の愛と快楽と享楽を享受することが出来れば、争いは無くなる。そして、お母様……魔王の永遠の統治が!栄光に満ちた万年王国が誕生する!!……それは正に素晴らしい理想よ。理想の実現……それには莫大なお金がかかるの。文化に、文明に、発展に、進歩に、食料に、技術に、設備に、軍備に、戦争に、戦略に、戦術に、情報に、収集に、交渉に、買収に、懐柔に、協力に、援助に、支援に、支配に、統治に、そして愛を得る自由に。ありとあらゆる事に富が必要になる。そして、統治するにあたって民衆には享楽が必要なの。……黒衣の聖者が拷問ショーに出る。それだけで、民衆は享楽に期待し、西の大陸の小国の1つや2つどうにでもなるぐらいのお金が動く。尋問官としてのあなたの腕にも期待しているわ。敵対する反魔物国の重要人物から情報を引き出すのに尋問官は人間の精神、心理構造を理解している優秀な者が必要不可欠。そしてそれらが、私と私の国にどれだけの利益を与えるでしょう?パンとサーカスで民衆に享楽を与え、得たお金と尋問により得た情報で反魔物国や教団に侵攻し、侵略し、支配し、統治する。男は犯し、女は魔物娘にする。全ては平和の為……。私は……いえ、私達なら、支配する土地の民衆にも……いえ、この世の全ての魔物娘と人間に永遠の愛と富と享楽を与えられるわ!パンが無いのなら与えましょう。自由が欲しければ与えましょう。愛を得たいのならその機会を与えましょう。全ての女が私達魔物娘になり、全ての男が私達魔物娘と番になる!!そしてみんなが幸せになれる!!!永遠の愛!永遠の富!永遠の享楽!これこそ正義!!あぁ!なんて素晴らしいのでしょう!!!!』
狂っている。いや、殿下が言っていることは酷くまともかも知れない。現に私は従僕であるダフネから与えられる愛と享楽に支配されている。その自覚がある。それは従僕も同じだ。2人の関係だけを見れば理想的な共栄共依存と言える。
そして、私が殿下に感じた得体の知れない何かとは盲信だ。狂気すら感じる程の理想を誰もが求める正義だと疑わない。それは、強いか弱いかだけでユタ人が盲目的に信じる金と知恵、主神教の信者が盲目的に信じる主神への信仰のそれと同じものだ。
殿下の最も恐ろしい所はその狂気を自身で制御していることだ。必要とあらば微塵の躊躇も無く、後悔も無く、一切のしがらみ無く、その狂気と力を行使することだろう。人類へと向けられた悪意の無い純白の悪……そんな言葉が相応しい。
彼女が言うところのパンとサーカス……同じ様な統治のシステムを起用した古代ロマーナ帝国は愚帝による愚政により滅んだ。しかし、目の前の女帝は賢帝として理想的な統治を永遠に等しい時で行えるのだろう。
『ふふふ……あなたには存分に働いてもらうわ。よろしい?』
『首を横に振らせない為にダフネを私にお贈りになったのでは?』
従僕であるダフネとの毎夜の枷により私も魔物になったということは、ダフネと同じくカタリナ殿下の眷属も同じ……。逆らえる訳がない。
最初からこの方の手のひらの上だ。この私が心を読まれている。
私の言葉を肯定と受け止めたカタリナ殿下は満足気に禍々しい笑みを浮かべ微笑むと、パンパン!と手を2つ叩いた。
『失礼します。』
『この2人を用意した屋敷に案内して?』
『かしこまりました。』
出てきたサキュバスの局員に殿下はそう言って私に立つ様に促した。
『ダフネ……。よくやってくれました。ありがとう。お幸せにね?』
『勿体無いお言葉です。お母様。』
そうして私達はこの場を後にした。
それから私はカタリナ殿下から与えられた屋敷にて準備を始めた。この2ヶ月、拷問具を取り寄せ、従僕を実験台に試行錯誤をする必要があった。と言うのも、拷問具は全て魔界銀で出来ており物を傷つけたり破壊することは出来ても、身体を傷つける事が無い。例えば魔界銀のナイフで斬っても斬られた感覚だけを与える。そして、魔力の媒体や導体、対象への魔力の定着に使える。どうやら、例えば武器として生体に使用した場合は魔力にダメージを与える様だ。
それに加えてあらゆる魔法薬、道具、使われている魔法や呪い、方陣についても同じように研究をした。今まで魔法の類はあまり研究して来なかったが改めてやると面白いものだ。
久しぶりの仕事に高揚を隠せない自分がいる。犠牲者は魔物娘か?それとも人間か?さぁ、生かさず殺さず、どうやって痛めつけてやろうか?
コンコンコン!
『誰だ?』
『ダフネでございます。旦那様。』
『入れ。』
ガチャリと音を立てて従僕が入ってきた。
『生贄が決定しました。旦那様と同じベルモンテ王国出身の西方主神教ケント・オーベルシュタイン司教でございます。』
『そうか……彼はまだ敬虔な主神教司教か?』
『はい。司教の鏡のような方でございます。……“まだ”とは如何なされました?』
ベルモンテ王国出身の敬虔な主神教司教……オーベルシュタインと言えば、知らないと言えば嘘になる。
『……恐らく彼は私の神学校の恩師だ。教鞭を振るっていたのが懐かしい。彼に主神言語学を習った。』
質素倹約、規律に厳しい先生で鉄仮面とあだ名がついていた。もう80にも近いだろうにまだ生きていたとは……
『左様でございますか。』
『……彼はまだ人間か?』
『はい。』
『では彼に聖典と法具を与え、魔界の食事を与えるな。毎日好きなだけ彼の愛する主神に祈らせてやれ。人間のまま、敬虔な主神教司教のまま彼を私の下に連れてこい。そうカタリナ殿下に伝えろ。下がって良い……』
『かしこまりました……』
そう言ったが従僕はそこを動こうとはしなかった。
察しはつく。
私は従僕の方を向き、人差し指で2回招くと、その目は歓喜の色を映した。
身に付けているガウンをはだけさせる。従僕の豊かな双丘の頂には魔界銀のピアスが付けてある。貞操帯を履かせた陰核にも同様に。
綺麗な肌を傷付けるのは少し気が引けたが彼女のちょうど胎がある所には快楽のルーンが刻んである。通常は刺青の様にして身体に施すらしいが、魔界銀の焼印を火の魔精霊イグニスの炎で熱したものを焼き付けた。それは彼女の舌にもついてある。
他にも実験として転送魔法を試したところ、魔法そのものは不可能だが、魔方陣や護符の文字や文様を任意に転送できる事が分かった。従僕の膣内、胎内、肛門内には転送・転写した快楽の ルーンが、卵巣には感覚を与える魔方陣を転写してある。
つまり、彼女は未だ拷問中だ。ものを食べるにも、触れる事にも、もはや動く事でさえ耐え難い快楽が全身に走るであろうに、貞操帯のおかげで自分を慰める事も出来ない。そんな状態なのに関わらず、従僕は気丈に振る舞っている。
そんな健気な姿を見ていると堪らなくなる。
ちゅ……んちゅ……れろ……
『ん"ん!お''……あ"……んあ"!!?』
貞操帯を脱がせながら唇を奪い、歯と歯の間から舌を這わせると従僕は白目を剥いて快楽に喘いだ。口の中で獣の様な声が吃り、淫紋が刻まれた従僕舌が私の舌に蛇のように絡みついてくる。
快楽から逃れたいのか、貪りたいのか……
貞操帯を脱がすとむせ返るような甘ったるい雌の匂いが辺りに立ち込める。
くちゅり……
『お"っ……ぁあ❤』
触るだけでビクンと跳ね上がる従僕の肢体を押さえ、跪かせる。従僕は犬のように手を使わず口を器用に動かし、カチャカチャと私のキュレットのボタンを外していく。言わずとも分かっている。
『はっ❤はっ❤は❤』
私の分身を取り出す事に成功した従僕は目を輝かせている。
『まて。』
従僕の身体に施された契約の呪印が淡く光ると今にも私の分身にしゃぶり付きそうな従僕の動きが止まる。それを確認してから、そそり立ったそれを従僕の顔に擦り付ける。
『お前は何だ?』
『旦那様の……卑しい僕でございます❤❤』
『ではそのまま這い蹲ったまま動かずに声も上げるな。』
『はい……』
尻尾を掴み、腰に分身を一気にズブリと従僕の肛門に突き立てる。
『〜〜〜〜〜〜❤❤❤❤❤』
従僕の中は熱く、別の生き物の様にグチャグチャと蠢いていて膣とはまた違う感覚を与えてくる。快楽の呪印が効いているのか、腰を動かす度に卑猥な音が漏れ出す。
従僕は命令通り、動かず声も上げずに澄まし顔をしているが、床には突く度に噴出する愛液や尿や分泌液や汗で水溜まりが出来ている。
パチュン!
『!❤』
パチュン!パチュン!
『〜〜❤❤!!』
従僕の痙攣が一段と激しくなった。そろそろ果てるようだ。
『私が満足するまで果てるな……』
『ひぐっ!!???』
そう耳元で囁くと酷く素っ頓狂な鳴き声を上げた。私は焦らす様にゆっくりとゆっくりと自らの分身を出し入れする。
ズロロロロロロ…………
『ーーーーーーー!!!』
ズルルルルルル…………
『〜〜〜〜〜〜〜!!!』
みるみる澄ました顔が切羽詰まった苦悶の表情に変わっていく。暫くこのまま楽しむとしよう。
そうして、小一時間ほど弄んだ頃には時折ビクビクと痙攣するだけの肉人形の様になった。そろそろこちらも限界だ。
パチュン!パチュン!グチャ!グチャ!グチャ!グチャグチャグチャグチャグチャグチャグチャグチャグチャグチャグチャグチャ……
『?!?!ーーーーー…………』
こんな時にも命令を守ろうとしているのか?見上げたものだ。
『私も限界だ。声くらいは出させてやる。果てろ!果ててしまえ!!』
『ぉ"❤お"❤お"❤お"❤い❤ぁ❤い"ぐっ!!いぎま"す!!ぼぉ"ぉ"おお"お"お"お"おお"お"お"ああ❤❤❤❤❤❤❤❤❤』
ドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドク
長い長い絶頂。ダフネは獣のような無様な叫び声を上げ、波打ち際に打ち上げられた魚の様に激しく痙攣している。
インキュバスとなった為か、尋常ではない量の自身の欲望が彼女の腹の中で爆ぜ、それをダフネは全て受け止める。流石はサキュバスと言ったところであろう。
ズッルン……どちゅ!!
『ひゃぁう!!?』
分身を引き抜き今度は膣へ欲望の赴くままに突き入れる。この女を抱くと全てが満たされて全てが渇くようで欲望の果てがなくなる。
未だに『動くな』を守り、肉人形の様なダフネの膣は更なる快楽を味わおうと空のままの子宮を下ろし、私に吸い付いてくる。
自らの1番弱い所を私に擦らせ、何度も絶頂したダフネの顔は快楽に蕩けてだらし無く弛緩している。あぁ……私はこの顔が見たかったのかもしれない………。
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その後、ダフネの穴という穴を犯し、欲望を吐き出し尽くした私は、疲れ果て気を失い寝息を立てる彼女の身体を綺麗に拭き、ベッドまで運んだ。
自分らしくはないと解ってはいながら、何故かそうしなければならない本能的な『何か』があり、私はそれに従った。
従僕の……ダフネの美しくも安らかな寝顔を見ていると何であろうか……
この暖かい気持ちは何であろうか?
私はどうしてしまったのであろうか……
言い表せない恐怖に似た何かを自分の奥に感じる。
『旦那……様……』
そう寝言を吐いた彼女の額に手を触れ、寝室を後にした。
『忘れるなよ、ベンジャミン・シュバルツ・リヒター!お前は邪悪なる拷問手なんだ!!』
故に幸福を望んではいけない。私はもう一度自分自身へ言い聞かせ、いよいよ2週間後に迫ったショーの準備をする為に書斎へと戻った。
『間も無く、ノーマンズランドの首都カタリナに入ります。』
船旅が終わり、港に着き、馬車と荷物を降ろし、陸路を行くこと2日。私達はノーマンズランド領内に入った。関所も従僕が持っていた紙切れ一枚で難なく抜け、間も無く首都に到着しようとしている。首都の名前が国主と同じ名前とは、カタリナ殿下は少々悪趣味なようだ。
窓の外を見ると美しい緑の平原が広がり、心なしか太陽が強く感じたのは、生まれ育った西の大陸北部の厳しい気候以外、私は知らないからかも知れない。
程なくして首都カタリナの下馬場に入る。手荷物以外は持っていないので、御者夫婦に金を渡し、そのまま街を歩く事にした。
『旦那様、先ずはカタリナ様と契約をして頂きます。』
『……形だけだろうに、その契約とやらの殆どは完了してる筈だ。』
『申し訳ございません……その様な事はこの従僕には分かり兼ねます……。』
目線をやると従僕は口の端しを吊り上げてニタリと笑っている。まったく、白々しい。左手の薬指に刻まれた呪のおかげで私はこの従僕と離れられない。この従僕に必ずカタリナ殿下の前に連れて行かれる。
加えて性欲が日毎に増し、夜この従僕の身体を求めずにはいられなくなっている。他にも、腰に下げたカタナを触ると酷い嫌悪感を抱く。現に昨日、ハーピー達の盗賊に襲われたが、その様な理由で彼女達を斬ることは出来なかった。それから鏡に映る自分自身を見た時になんだか若返っているような印象を受けたり……いや、確実若返っている。最初は微々たる変化だった。今やどうだろか?街のガラス窓に映る自分の姿は20代後半と言っても差し支えない程だ。
しかし、この主従の呪は絶対らしく従僕は私の命令に決して逆らう事はない。また彼女は私の魔法を……どんな陳腐な魔法も打ち破る事が出来ないようだ。それは少し気分が良い。
成すようにしかならない。不本意ながらそんな事を考えながら街を歩く。
ノーマンズランドの首都カタリナは非常に綺麗な街だ。白を基調としている。魔物国だけあり、多種多様な魔物娘が街を歩いている。街には活気があり、昼間と言うのに花街には人が溢れている。
行き交う人々は男以外は殆どが魔物娘だ。少々露出が多過く目のやり場に困るが、文化の違いだろう。
この国は魔術が発達した国らしく、非常に高度な魔法が溢れている。水の魔方陣を使った噴水や手洗い場、市場の野菜や魚は氷の魔方陣により新鮮に保たれているようだ。道端の屋台ですら火の魔方陣を使い客に料理を提供している。あの羽の生えた魔物娘が止り木にしている柱は街灯と言うものらしく、どうやら光の魔方陣で日中に光を取り込み、夜に光を放出する事で街を照らしているらしい。どれもこれも初めて見るものばかりだ。
ベルモンテ王国や主神教の軍が手も足も出ないのも納得出来る。
大通りを進みその先、国主議会議事堂と書かれた首都の中央に鎮座する巨大な建物に入る。大小様々な美しい石像が置かれた広いロビーの中ではせわしなく局員が仕事に追われて動き回っている。
『国母様にお取り次ぎを。』
そう言って従僕は受付のサキュバスに書類を渡した。サキュバスはこちらにどうぞ、と立ち上がり、私達を奥の部屋へと通した。
『遠路はるばるようこそ。ベンジャミンさん。』
無駄に長い廊下を渡り、たどり着いた大きな部屋に居たのは紅いドレスを纏った白い悪魔だった。
『私はカタリナ、魔王が娘、リリムの1人。』
カウチに横たわる様に座る彼女は肩まである白い髪に、大きな角、白い蝙蝠羽、白い尾わ持ち、身に付けた真紅のドレスは丈がしどけなく片側に大きく開き、首元で結ばれる露出の大きいものであったが、気品を損なわないのは彼女の器であろう。暁を零したような紅い瞳が柔和に笑いかけている。美という単語が意味を成さないほど美しいこの魔王の娘からは一国を治めるにたる、得体の知れない何かと、王族のような高貴さを感じる。
『お会い出来て光栄でございます。カタリナ殿下。』
宮廷式の少々大げさな礼で頭をさげる。
『いえいえ、そう固くならず楽にして下さいな。』
そう言うとカタリナ殿下はソファーに手を向け座るように促した。
『失礼します。』
『どうか頭を下げないで下さい。私とあなたはもう友人よ?贈り物は気に入っていただけたかしら?』
『はい。それはもう……私には過ぎたもので、それに行く宛のない所を拾って頂き、何とお礼を申し上げたら……』
『そう。それは良かった。ベンジャミンさんならきっと私の夢に賛同してくれると。それから……あなたが良いインキュバスになった様で私も嬉しく思います。』
『インキュバス?……それは、どう言う事でしょうか?カタリナ殿下。』
カタリナ殿下は口の端を吊り上げニタリと心の底から嬉しそうに笑う。
『ベンジャミンさんも我々と同じ魔の者になったと言うこと。ダフネの具合はさぞ良いかった様ね?』
『!!!』
『驚く事は無いのよ?人間だった幼いあの娘を拾い、サキュバスに変え、眷属にし、育て、教育を施し、夜伽を仕込んだのはこの私。それにコレはもう必要無いわね?』
殿下が手をかざすと腰に吊り下げていたカタナがひとりでにスラリと抜け殿下の手に渡った。
『魔物娘と交わった人間の男性は男性の魔物であるインキュバスになる。若返り、愛欲が増し、他者を殺せ無くなる。私達魔物と同じく、愛を知る者としてそうなるのよ。』
私は人の心の裏を察するに長けていると自負しているが、全てを見透かす様な笑みを浮かべるカタリナ殿下の心中を読むことは出来ない。
『殿下もお人が悪い。では殺意を失った拷問手の私にどの様に私に腕を振えとおっしゃいますか?』
『そうね……その辺りに関してだけど、最初から殺す気の無い者には余り関係ないと思うわ。あなたは人間の頃から殺意も無く相手を殺さずに嬲れる素晴らしい方よ?全てにおいて問題無いの……さて、本題に入りましょう。あなたには私の国、ノーマンズランドの国立闘技場にて3ヶ月後のショーに出てもらうわ。そうね……1つの公演につき、金10000ジュエルでどうかしら?……価値としては金50000ベルとだいたい同じぐらいだと思うわ。』
『嬉しいのですが、金50000ベルもの価値が私のような卑しい拷問手にあるでしょうか?』
カタリナ殿下は笑い出した。
『いや、失礼。ベンジャミンさん、あなた価値はそれでも安いぐらいよ?卑しいなんてとんでもない!あなたは確かに世界の財産に値する素晴らしい拷問手。他にもあなたにはいろいろとやってもらうわ。そうね……秘密諜報機関で働いて貰おうと思ってるわ。もちろん、尋問専門で。給金も弾むわ。それから……道具は望む物を全てを此方で用意させましょう。』
『……殿下はなぜ、私にそこまで?』
突如としてカタリナ殿下の空気が変わった。ダフネが持つものと同じ……いや、それよりももっと暗く廃頽的で禍々しいものだ。
『あなたには私の夢の協力をしてほしいの。私はね?愛とお金と享楽が生きとし生けるもの全てと、世界を支配するに値し、また救うと信じているの。人間みんなが私達、魔物娘やインキュバスと同じように永遠の愛と快楽と享楽を享受することが出来れば、争いは無くなる。そして、お母様……魔王の永遠の統治が!栄光に満ちた万年王国が誕生する!!……それは正に素晴らしい理想よ。理想の実現……それには莫大なお金がかかるの。文化に、文明に、発展に、進歩に、食料に、技術に、設備に、軍備に、戦争に、戦略に、戦術に、情報に、収集に、交渉に、買収に、懐柔に、協力に、援助に、支援に、支配に、統治に、そして愛を得る自由に。ありとあらゆる事に富が必要になる。そして、統治するにあたって民衆には享楽が必要なの。……黒衣の聖者が拷問ショーに出る。それだけで、民衆は享楽に期待し、西の大陸の小国の1つや2つどうにでもなるぐらいのお金が動く。尋問官としてのあなたの腕にも期待しているわ。敵対する反魔物国の重要人物から情報を引き出すのに尋問官は人間の精神、心理構造を理解している優秀な者が必要不可欠。そしてそれらが、私と私の国にどれだけの利益を与えるでしょう?パンとサーカスで民衆に享楽を与え、得たお金と尋問により得た情報で反魔物国や教団に侵攻し、侵略し、支配し、統治する。男は犯し、女は魔物娘にする。全ては平和の為……。私は……いえ、私達なら、支配する土地の民衆にも……いえ、この世の全ての魔物娘と人間に永遠の愛と富と享楽を与えられるわ!パンが無いのなら与えましょう。自由が欲しければ与えましょう。愛を得たいのならその機会を与えましょう。全ての女が私達魔物娘になり、全ての男が私達魔物娘と番になる!!そしてみんなが幸せになれる!!!永遠の愛!永遠の富!永遠の享楽!これこそ正義!!あぁ!なんて素晴らしいのでしょう!!!!』
狂っている。いや、殿下が言っていることは酷くまともかも知れない。現に私は従僕であるダフネから与えられる愛と享楽に支配されている。その自覚がある。それは従僕も同じだ。2人の関係だけを見れば理想的な共栄共依存と言える。
そして、私が殿下に感じた得体の知れない何かとは盲信だ。狂気すら感じる程の理想を誰もが求める正義だと疑わない。それは、強いか弱いかだけでユタ人が盲目的に信じる金と知恵、主神教の信者が盲目的に信じる主神への信仰のそれと同じものだ。
殿下の最も恐ろしい所はその狂気を自身で制御していることだ。必要とあらば微塵の躊躇も無く、後悔も無く、一切のしがらみ無く、その狂気と力を行使することだろう。人類へと向けられた悪意の無い純白の悪……そんな言葉が相応しい。
彼女が言うところのパンとサーカス……同じ様な統治のシステムを起用した古代ロマーナ帝国は愚帝による愚政により滅んだ。しかし、目の前の女帝は賢帝として理想的な統治を永遠に等しい時で行えるのだろう。
『ふふふ……あなたには存分に働いてもらうわ。よろしい?』
『首を横に振らせない為にダフネを私にお贈りになったのでは?』
従僕であるダフネとの毎夜の枷により私も魔物になったということは、ダフネと同じくカタリナ殿下の眷属も同じ……。逆らえる訳がない。
最初からこの方の手のひらの上だ。この私が心を読まれている。
私の言葉を肯定と受け止めたカタリナ殿下は満足気に禍々しい笑みを浮かべ微笑むと、パンパン!と手を2つ叩いた。
『失礼します。』
『この2人を用意した屋敷に案内して?』
『かしこまりました。』
出てきたサキュバスの局員に殿下はそう言って私に立つ様に促した。
『ダフネ……。よくやってくれました。ありがとう。お幸せにね?』
『勿体無いお言葉です。お母様。』
そうして私達はこの場を後にした。
それから私はカタリナ殿下から与えられた屋敷にて準備を始めた。この2ヶ月、拷問具を取り寄せ、従僕を実験台に試行錯誤をする必要があった。と言うのも、拷問具は全て魔界銀で出来ており物を傷つけたり破壊することは出来ても、身体を傷つける事が無い。例えば魔界銀のナイフで斬っても斬られた感覚だけを与える。そして、魔力の媒体や導体、対象への魔力の定着に使える。どうやら、例えば武器として生体に使用した場合は魔力にダメージを与える様だ。
それに加えてあらゆる魔法薬、道具、使われている魔法や呪い、方陣についても同じように研究をした。今まで魔法の類はあまり研究して来なかったが改めてやると面白いものだ。
久しぶりの仕事に高揚を隠せない自分がいる。犠牲者は魔物娘か?それとも人間か?さぁ、生かさず殺さず、どうやって痛めつけてやろうか?
コンコンコン!
『誰だ?』
『ダフネでございます。旦那様。』
『入れ。』
ガチャリと音を立てて従僕が入ってきた。
『生贄が決定しました。旦那様と同じベルモンテ王国出身の西方主神教ケント・オーベルシュタイン司教でございます。』
『そうか……彼はまだ敬虔な主神教司教か?』
『はい。司教の鏡のような方でございます。……“まだ”とは如何なされました?』
ベルモンテ王国出身の敬虔な主神教司教……オーベルシュタインと言えば、知らないと言えば嘘になる。
『……恐らく彼は私の神学校の恩師だ。教鞭を振るっていたのが懐かしい。彼に主神言語学を習った。』
質素倹約、規律に厳しい先生で鉄仮面とあだ名がついていた。もう80にも近いだろうにまだ生きていたとは……
『左様でございますか。』
『……彼はまだ人間か?』
『はい。』
『では彼に聖典と法具を与え、魔界の食事を与えるな。毎日好きなだけ彼の愛する主神に祈らせてやれ。人間のまま、敬虔な主神教司教のまま彼を私の下に連れてこい。そうカタリナ殿下に伝えろ。下がって良い……』
『かしこまりました……』
そう言ったが従僕はそこを動こうとはしなかった。
察しはつく。
私は従僕の方を向き、人差し指で2回招くと、その目は歓喜の色を映した。
身に付けているガウンをはだけさせる。従僕の豊かな双丘の頂には魔界銀のピアスが付けてある。貞操帯を履かせた陰核にも同様に。
綺麗な肌を傷付けるのは少し気が引けたが彼女のちょうど胎がある所には快楽のルーンが刻んである。通常は刺青の様にして身体に施すらしいが、魔界銀の焼印を火の魔精霊イグニスの炎で熱したものを焼き付けた。それは彼女の舌にもついてある。
他にも実験として転送魔法を試したところ、魔法そのものは不可能だが、魔方陣や護符の文字や文様を任意に転送できる事が分かった。従僕の膣内、胎内、肛門内には転送・転写した快楽の ルーンが、卵巣には感覚を与える魔方陣を転写してある。
つまり、彼女は未だ拷問中だ。ものを食べるにも、触れる事にも、もはや動く事でさえ耐え難い快楽が全身に走るであろうに、貞操帯のおかげで自分を慰める事も出来ない。そんな状態なのに関わらず、従僕は気丈に振る舞っている。
そんな健気な姿を見ていると堪らなくなる。
ちゅ……んちゅ……れろ……
『ん"ん!お''……あ"……んあ"!!?』
貞操帯を脱がせながら唇を奪い、歯と歯の間から舌を這わせると従僕は白目を剥いて快楽に喘いだ。口の中で獣の様な声が吃り、淫紋が刻まれた従僕舌が私の舌に蛇のように絡みついてくる。
快楽から逃れたいのか、貪りたいのか……
貞操帯を脱がすとむせ返るような甘ったるい雌の匂いが辺りに立ち込める。
くちゅり……
『お"っ……ぁあ❤』
触るだけでビクンと跳ね上がる従僕の肢体を押さえ、跪かせる。従僕は犬のように手を使わず口を器用に動かし、カチャカチャと私のキュレットのボタンを外していく。言わずとも分かっている。
『はっ❤はっ❤は❤』
私の分身を取り出す事に成功した従僕は目を輝かせている。
『まて。』
従僕の身体に施された契約の呪印が淡く光ると今にも私の分身にしゃぶり付きそうな従僕の動きが止まる。それを確認してから、そそり立ったそれを従僕の顔に擦り付ける。
『お前は何だ?』
『旦那様の……卑しい僕でございます❤❤』
『ではそのまま這い蹲ったまま動かずに声も上げるな。』
『はい……』
尻尾を掴み、腰に分身を一気にズブリと従僕の肛門に突き立てる。
『〜〜〜〜〜〜❤❤❤❤❤』
従僕の中は熱く、別の生き物の様にグチャグチャと蠢いていて膣とはまた違う感覚を与えてくる。快楽の呪印が効いているのか、腰を動かす度に卑猥な音が漏れ出す。
従僕は命令通り、動かず声も上げずに澄まし顔をしているが、床には突く度に噴出する愛液や尿や分泌液や汗で水溜まりが出来ている。
パチュン!
『!❤』
パチュン!パチュン!
『〜〜❤❤!!』
従僕の痙攣が一段と激しくなった。そろそろ果てるようだ。
『私が満足するまで果てるな……』
『ひぐっ!!???』
そう耳元で囁くと酷く素っ頓狂な鳴き声を上げた。私は焦らす様にゆっくりとゆっくりと自らの分身を出し入れする。
ズロロロロロロ…………
『ーーーーーーー!!!』
ズルルルルルル…………
『〜〜〜〜〜〜〜!!!』
みるみる澄ました顔が切羽詰まった苦悶の表情に変わっていく。暫くこのまま楽しむとしよう。
そうして、小一時間ほど弄んだ頃には時折ビクビクと痙攣するだけの肉人形の様になった。そろそろこちらも限界だ。
パチュン!パチュン!グチャ!グチャ!グチャ!グチャグチャグチャグチャグチャグチャグチャグチャグチャグチャグチャグチャ……
『?!?!ーーーーー…………』
こんな時にも命令を守ろうとしているのか?見上げたものだ。
『私も限界だ。声くらいは出させてやる。果てろ!果ててしまえ!!』
『ぉ"❤お"❤お"❤お"❤い❤ぁ❤い"ぐっ!!いぎま"す!!ぼぉ"ぉ"おお"お"お"お"おお"お"お"ああ❤❤❤❤❤❤❤❤❤』
ドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドク
長い長い絶頂。ダフネは獣のような無様な叫び声を上げ、波打ち際に打ち上げられた魚の様に激しく痙攣している。
インキュバスとなった為か、尋常ではない量の自身の欲望が彼女の腹の中で爆ぜ、それをダフネは全て受け止める。流石はサキュバスと言ったところであろう。
ズッルン……どちゅ!!
『ひゃぁう!!?』
分身を引き抜き今度は膣へ欲望の赴くままに突き入れる。この女を抱くと全てが満たされて全てが渇くようで欲望の果てがなくなる。
未だに『動くな』を守り、肉人形の様なダフネの膣は更なる快楽を味わおうと空のままの子宮を下ろし、私に吸い付いてくる。
自らの1番弱い所を私に擦らせ、何度も絶頂したダフネの顔は快楽に蕩けてだらし無く弛緩している。あぁ……私はこの顔が見たかったのかもしれない………。
。
。
。
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その後、ダフネの穴という穴を犯し、欲望を吐き出し尽くした私は、疲れ果て気を失い寝息を立てる彼女の身体を綺麗に拭き、ベッドまで運んだ。
自分らしくはないと解ってはいながら、何故かそうしなければならない本能的な『何か』があり、私はそれに従った。
従僕の……ダフネの美しくも安らかな寝顔を見ていると何であろうか……
この暖かい気持ちは何であろうか?
私はどうしてしまったのであろうか……
言い表せない恐怖に似た何かを自分の奥に感じる。
『旦那……様……』
そう寝言を吐いた彼女の額に手を触れ、寝室を後にした。
『忘れるなよ、ベンジャミン・シュバルツ・リヒター!お前は邪悪なる拷問手なんだ!!』
故に幸福を望んではいけない。私はもう一度自分自身へ言い聞かせ、いよいよ2週間後に迫ったショーの準備をする為に書斎へと戻った。
17/11/13 20:12更新 / francois
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