第8章 インキュバスさんお披露目パーティー 1
俺はスクーターを走らせひたすら帰宅を急いでいる。朝ほどではないが体の芯まで冷え切ってしまう様な寒さだ。本来なら心身を苛む冷気以外の事は考えられないはずだ。にもかかわらず…早く有妃に抱きしめてもらいたい…。柔らかい蛇体に包まれて温まりたい…。貪る様に交わって存分に精を吐きだしたい…。そんな渦巻く思いは消える事は無い。
今はもう白蛇の魔力に完全に蝕まれている状態だ。その影響で週末の帰宅時になると切なさや満たされない思いが溢れ出そうになるのだ。
有妃自身は気を遣ってくれて、つらいなら気分を楽にしてあげるから遠慮しないで、と毎週の様に言ってくれる。ただ、我慢した後で抱きしめられる安らぎは言葉には言い表せないほどなので、それを味わいたくて少々無理してしまうだけの事だ。
でも、こんな事を求めてしまう俺ってやっぱりマゾなんだろうか…。少々自嘲的な思いを抱いていると、いつの間にか見慣れた店の前を通過した。有妃との馴れ初めの地、狸茶屋だ。この店には結婚してからも立ち寄る事が多く、一緒に街中に出かけた時はよくここでお茶を飲みながらのんびりするのだ。そうだ。そう言えば狸茶屋ではあんな事もあった………
「佑人さん。そろそろ一休みしましょうか？」
「そうだね。喉も乾いたし…。」
この日は休日と言う事もあり俺と有妃は久しぶりに街に買い物に出かけた。ファッションには全く関心が無い俺の為に有妃が服を選んでくれる事もあれば、本屋で一緒に欲しい本の品定めをする事もある。今回は後者だが、読書家でもある有妃のおすすめの本を読むことは、色々と興味深くてとても愉しい。
そんなまったりとした時間も半ばを過ぎ、俺達は休憩の為に手ごろな店を探していた。あちこち冷やかしながら歩いていると、ふと以前見かけた記憶のある店構えが目に入る。そうだ。この店は…。
「あ…。有妃ちゃん。ここって…。」
「そうですね。ここは私達にとって記念の場所ですよ…。」
なにかを懐かしむ様な眼差しをすると有妃は微笑んだ。そうだ。ここは狸茶屋じゃないか。忘れることが出来ない有妃との初対面の場所だ。たちまち胸が詰まる様な思いが甦る。あの時はとにかく有妃から逃げる事しか頭に無かった。魔物娘とはいえ女性と関わる事は面倒なだけだった。
それが今ではすっかり変わってしまった。有妃は絶対に離れられない大切な人になったし、俺自身の心の持ちようも大きく変化があった。
有妃と付き合う前は街中で見かけるカップルに対して、相当暗い思いを抱いてしまうのを抑えきれなかった。それが今では微笑ましい気持ちで彼らを見ることが出来る。今日も何組ものカップルを見かけたが、みんな幸せそうでなによりだな。と温かい思いが心に溢れてきた。
本当に立場が変われば人の気持ちも簡単に変わってしまうんだなあ…。そんな思いにふけっていると有妃が俺の顔を覗き込んできた。
「どうでしょう？ここで一休みしませんか？」
「えっ？俺は構わないけれど……本当にここでいいの？」
思いもかけぬ言葉につい怪訝な様子で問いかけてしまった。なぜならばここは独り者の魔物が婿探しに入り浸る場でもある。いくら俺が有妃のものになっているからとはいえ、万が一のトラブルが起きないとも限らないからだ。そんな俺の疑問を察したかの様に有妃は朗らかに笑う。
「はい。普段はまあ…あまり好ましくない場所ですが、今日は心配しなくても大丈夫でしょう。」
そう言って有妃はドアに張り付けてある髪を指差した。ええと…何々？『インキュバスさんお披露目パーティー。〜カップル限定DAY〜』とあるが…。
「有妃ちゃん。これって…」
「はい。今日はカップル限定の様ですので特に問題は無いでしょう。」
「ああ。成るほどね…。でも、それはわかるけどインキュバスさんお披露目って…」
まだ疑問が消えない俺は有妃に問いかけた。
「ふふっ…。どうやら新たに魔物の彼氏や旦那さんになった男の方を皆さんにお披露目する、という趣旨の様ですね。」
「て、いうとまさか…。」
俺はまじまじと有妃の顔を見つめた。そう…以前にも述べたが、伴侶になった男と交わっている姿を他人に見せつける、というアマゾネスの風習。これが多くの魔物の間に広まっている事もあり、乱交パーティーじみた行為が魔物達の間でもよく行われるようになったという噂だ。無論あくまでもいたすのは自分の夫だけであろうから『乱交』とは違うのだが…
まさかこんな身近な所でも行われていようとは…まあでもこの店ならあり得るか…。でも、そんな場所に俺を連れ込もうとするなんて、有妃も俺とのセックスを他人に見せつけたいのだろうか。そう思うと急激に羞恥心が心に湧き起こってきた。いや…それは駄目だ！まだ俺はそんな恥ずかしい事に耐えられるほど人の理性を捨ててはいない！慌てた俺は有妃に訴えかける
「だ、駄目だよ！いくら有妃ちゃんの言う事でもそれは絶対に駄目だから！いくらなんでも恥ずかしいよ……」
しどろもどろになって哀願する俺を見て有妃は戯れるような笑みを見せた。そして優しく宥めてくれる。
「大丈夫ですよ！わかっておりますから…。佑人さんが嫌がる様な事は絶対に致しません！ですのでそんなに慌てないで下さいね。」
俺はなおも疑うような眼差しをしていたのだろう。有妃は気持ちを落ち着かせる様に頭をいい子いい子と撫でてくれた。
「もう…。佑人さんが嫌がる事を私が無理強いする訳がないじゃないですか…。でも、他の皆さんがシテいる所を見られるなんて…なんか興奮しませんか？今後のプレイの参考にもなるでしょうし。」
「でも…有妃ちゃん俺がよその女を見るといつもおしおきするじゃないか…」
俺も露骨に態度に出したりする訳では無い。でも、たとえばＴＶのニュースの女子アナを見て『この子可愛いな…』と思う気持までは抑えきれない。
有妃はそんな心の揺れに恐ろしく敏感で、気持ちを察知するたびに仕方がないなあ、と言わんばかりにため息をつく。そしてにっこりと笑ってこう言うのだ。『欲求不満ならそう言ってくださればいいのに…私が存分に解消してあげますので。』と…
実際その後は甘く激しい責めを受けて、いつもより相当余分に精を搾り取られる事になるのだ。当然の様に疲れて有妃の蛇体に包まれながら眠りにつく事になるが、そんな俺を愛情深くも若干の優越感を感じさせる眼差しで見つめる有妃がまた素敵なのだ…
普段でさえこうなのだから、よその魔物夫婦の淫らな交わりを見て気持ちを昂らせた日にはどうなる事か想像もつかない。それなのにいったい何を言っているのだろう…。幾分非難めいた俺の口調に有妃は悪戯っぽく笑う。
「まあっ！おしおきだなんて人聞きの悪い。私は変なモノが溜まった佑人さんにすっきりして頂いているだけじゃないですか…。」
「でも…」
「あの…それとも嫌…でしたか…。もしかして、つらかったですか…」
なおも不満そうな俺を見て有妃は急に不安げな口調になった。気は付けばいつも通りの優しく気遣う様な眼差しだ。俺は慌てて否定する。
「いやいやそんな事無いから！大丈夫だから！」
たしかにたっぷりと精を捧げる事にはなるのだが、もちろん俺の体調をちゃんと気遣った上での搾精だ。いつも安心して有妃の与えてくれる快楽に浸ることが出来る。本当は有妃が『欲求不満を解消してあげる』と言ってくれるのを心待ちにしているぐらいなのだ。
「嫌なんかじゃ無いよ…。いつも有妃ちゃんにはとっても気持ち良くしてもらっているし…。」
「本当ですか？もし嫌なら…」
「ううん…。正直言うとまたして欲しい…って思っているぐらいなんだよ。」
幾分の羞恥心を込めてぼそぼそ呟く俺を見て有妃はほっとした様にため息をつく。
「良かった…。でも私こそ佑人さんには有難く思っているんですよ。だって、いつもこんなにも私に溺れてくれて…魔物としてこれほど嬉しい事はありませんから。」
「…ん。有妃ちゃん。」
有妃は俺を抱きしめた。いつの間にか蛇体も優しく巻き付き、その心地よい圧迫感に酔いしれる。毎日の事なのだが全く飽きる事のない至福の拘束だ。全身を弛緩させて身を委ねる俺を有妃は慈愛深く見守っていてくれる。
そんな安らかなひと時だったが……ちょっと待てよ…。ここは家の中じゃないんだぞ…。往来で堂々と抱き合うなんて少々恥ずかしいじゃないか…。ふと我に返って慌てて有妃に訴える。
「ちょっと有妃ちゃん。ここじゃまずいよ…。」
「あ……そ、そうですよね…。ごめんなさい…。」
気が付いた有妃も幾分狼狽したかのように拘束を解いた。公道で過激な事をしている人魔のカップルなど珍しくも無いが、まだ俺はそこまで魔に染まっていないのだ。ここはとりあえず店の中に入ろう。俺はそっと有妃の手を取った。
「それじゃあ、ここで一休みしようか…。」
「はい…佑人さん…。」
有妃は顔を赤らめてうなずいた。
店のドアを開けると以前と全く変わらぬ光景が目に入ってきた。明るく落ち着ける空気感だが、あのときの事を思いだして懐かしい。ただ今日はカップル限定日というだけの事はあり、店内は人魔の番しか見当たらない。これならまあ独身の魔物に絡まれる事も無いだろう…。そんな思いを抱いていると、どこからか聞き覚えのある声で呼びかけられた。
「え……。君は…？まあ！久しぶりじゃない！」
振り向いた俺の目に入ってきたのは、人を象っている濃い紫色の液体だった。美しい少女の姿のそれは、華やかな笑みを浮かべると嬉しそうに近づいてきた。そうだ…彼女はダークスライムのエレンだ。
相変らず天真爛漫な雰囲気を纏っている彼女を見ていると、あの時の事が一気に思い出されてしばし追憶に浸る。エレンには独り者の魔物娘がどの様な存在であるか色々教えられた気がする。大げさに言えば魔の世界の入り口で道案内をしてくれたともいえる人だ。
「お久しぶりですエレンさん。あの時はお世話になりました。」
久し振りに会えた嬉しさで俺も笑顔を浮かべて挨拶した。
「もぉ〜。そんな堅苦しい挨拶はやめてよ〜。それで…今日はどうしてここに？」
はしゃいだ様子でなおも俺に近寄ろうとするエレンだったが、その時目にもとまらぬ早さで白い影が割り込んできた。有妃だ…。突然の事であっけにとられるエレンを前に、有妃はにこやかな笑みを浮かべると慇懃に頭を下げた。
「お会い致しますのはこれで２度目になりますが…。このたび森宮の妻になりました有妃でございます。先だっては主人が大変お世話になりました。本日はそのお礼とご報告もかねてご挨拶に伺いました。」
笑顔を崩さず全く隙のない丁寧な様子が逆に慇懃無礼という印象を抱く。そして幾分『妻』と言う言葉を強調しているのが気になる。思わず有妃の表情を伺うと妙に視線が強い。もしかして…これは…威嚇しているのか？
俺たちの馴れ初めの日、あの時エレンがダークスライムゼリーをこっそり俺に食べさそうとした事は有妃も知っている。桃里社長に止められなければ、今頃俺の奥さんは有妃では無くてエレンだったかもしれないのだ。
有妃からすれば横合いから獲物を攫おうとしたエレンは面白くない存在だろう。とすると今日は警告するつもりでこの店に来たのか？この男は私のものになったのだから手を出すな、という…。理由はともかく争いごとを見るのは嫌だ…。俺は有妃の手を握って制止しようとする。
すると有妃は俺の方を振り向くと優しい笑みを浮かべてかぶりを振った。そして心配しないでいいですよと言わんばかりにぎゅっと抱きしめると、蛇体を絡めて何度も額にキスしてくれた。正直人前でする事ではないのだが、全身を包む有妃の匂いと唇の柔らかさに気持ちが落ち着く。
傍から見れば所有権を誇示する様ないちゃいちゃぶりだったのだろう…。そんな様子を終始無言で見つめていたエレンだったが、呆れたように薄く笑った。
「え〜と……。随分とラブラブで結構な事ですねっ…。まあ…おめでとうございますっ！死ぬまでお幸せにっ！」
祝福してくれたが言葉尻には棘がある。一応笑顔を浮かべてはいたが、先ほど俺に見せた自然な様子とは打って変わった作り笑いだ。エレンは何か言いたそうな様子で俺達を眺めていたが、ぷいと顔をそむけると振り向きもしないで去って行った。
有妃は俺をぐるぐる巻きにしながらエレンを見送った。瞳の奥に攻撃的な光を宿す笑顔であるのは変わらない。彼女からすれば確かにエレンには一言言って置きたいだろう。その気持ちは分からないでもない。でも、別に当時の俺は誰とも付き合っていなかった。エレンが魅了する様な事をしても問題がある訳では無い。それにあの時一回だけの事であり、その後しつこく誘惑された訳では全く無いのだ。
それなのにわざわざエレン本人を前にあそこまでしなくても良いのではないか…。正直言って少し疑問に思う。
「有妃ちゃん…。」
「ええ…。わかっておりますよ佑人さん。」
俺は幾分困惑したような眼差しだったのだろう。有妃は視線を避ける様に俯くと深いため息をついた。
「自分でもこういう所は嫌になるんですけれどね…。でも、佑人さんを横取りしようとした方を前にしたら気持ちが…。」
「ねえ…。」
「あの方は独身の魔物として当然の事をしただけなんです。もちろんその事はわかっているんですよ…。でも…。」
「もしかして今日ここに来たのは…。」
そっと問いかける俺に対して有妃は慌てたように首を何度も降った。切ないような、苦しいような輝きを放っている紅い瞳が俺をじっと捕える。
「いいえ！それは誤解です…。あの方に私達の事をアピールしようとか、そんなつもりで来たわけではありません！このお店に来たのは本当に偶然です。でも…」
有妃はつらそうな眼差しで俺を見ると儚げに笑った。
「ごめんなさい…私ってこんなに浅ましい女なんですよ…。でも、我慢できないんです…。佑人さんが私以外のものになっていたかもしれないと思うと…もう我を忘れてしまいそうで。」
「有妃ちゃん…」
もちろんラミア属の嫉妬深さと言うのは知っていた。当然有妃本人からもその事は打ち明けられており、彼女の情念の強さが伺える場面は何度か目にしている。でもよその女に対して今回の様な露骨な態度を示したのはこれが初めてだ。
全く驚かなかったと言えば嘘になるのだが…。でも、そうだ。これがラミアの…白蛇の女の子と一緒に住むという事なのだろう。嫉妬深さも独占欲の強さも含めて有妃の素敵な一面なのだ。俺は自然に納得する事ができた。
「お願いです佑人さん！もし不愉快だったのならお詫びします。ですからどうか…。」
有妃は哀願する様な眼差しで何度も頭を下げている。いまでは見慣れた焦燥感溢れる様子もまた可愛い妻の一面だ。そんな姿を見ていると、有妃に対する愛おしさが際限なく溢れ出して自然と言葉となった。
「大丈夫だって…。何も気にしないで。ね…。俺は嬉しいんだよ。これって有妃ちゃんが俺の事をいつも気にかけてくれているって事でもあるよね…。
俺だってもう有妃ちゃんと一緒じゃないと耐えられないんだよ…。絶対に離れたくない。だから、こちらこそお願い。これからもこうして見守っていてほしい…。」
いつも有妃がしてくれているように俺は彼女の頭を胸に抱いて何度も撫でる。白く輝くさらさらの長髪がとても良い手触りだ。いつしか髪から良い匂いが立ち上ってきて蕩ける様な心持になっていった。
何も出来なくてエレンには少し申し訳ない気もするが、彼女なら良い旦那さんを見つけることが出来るだろう…。そう思うしかない…。
有妃は静かに顔を上げ泣き笑いのような表情を見せた。と、思う間もなく唇を合わせてきた。俺はごく自然にそれを受け入れ、柔らかく瑞々しい唇とぬるぬるした長い舌を存分に味わう。
「ゆうとさん。嬉しいです…。私こそ良い奥さんになりますから…よろしくお願いしますね…。」
互いの唇絶を満足するまで堪能すると有妃は照れたように微笑んだ。そんな彼女の愛らしい姿に我慢できずに俺はもう一度抱きしめようとしたが、その時ふいに声を掛けられた。妙に間延びしているが愛らしい声だ。
「あの〜。おきゃくさん〜。どうでしょう〜。お楽しみは席に着いてから…と言う事では〜？」
驚いて振り向くと、そこには牛の様な二本の角を持つ少女の姿があった。黒と白のストライプの髪と愛らしいつぶらな瞳、そして何よりも大変立派な胸を持つ少女…。ホルスタウロスだ。
そう言えば以前この店に来た時も彼女が接客している姿は見かけた。当然の様にここの店員なのだろう。怪訝な顔をする俺達に、ホルスタウロスの少女は申し訳なさそうな表情を見せた。
「あ、いえ〜。わたしたちは嬉しいんですけれど…おきゃくさんがどうかと思いましてえ〜。」
私達？疑問に思う間もなく俺は周囲から妙にねばっこい視線を向けられている事に気が付いた。よく見ると…周りの席に座っている人魔のカップル達がぎらぎらした眼差しで俺達を見つめていた…。
中には『そこだやれ！押し倒せっ！』と声援を送る者や『私たちもしましょうよ…。』と番に催促する魔物達もいる………。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ！！」
俺と有妃は顔を真っ赤にして言葉にならないうめき声を上げてしまう。そうだ………先ほどからの一幕は全て彼らに観られていたのだ。全く、俺は何をやっているのだ…。なにがまだ人としての理性を捨ててはいない、だよ…。十分過ぎるほど恥ずかしい事をしてしまったではないか…。
俺達は慌てふためいてホルスタウロスの少女に詫びると、案内された席にそそくさと足を運んだ。恥ずかしさのあまり顔も上げられないが、なおも生暖かい視線はひしひしと感じている。
「佑人さん。………本当にごめんなさいっ。あんな事をさせてしまって………。」
顔を真っ赤にして俯く有妃が申し訳なさそうにしている。やれやれだ。まあでも俺も将来は魔物の価値観に染まる日が来る。いつかはたどる道だ。遅いか早いかの違いはあっても…。そう考えると気も楽になり可愛くも面目なさげな有妃を慰める。
「でも…有妃ちゃんのあられもない姿を堪能できたから良かったかな…。これはず〜っと、墓場までもっていかないとねっ！とっても可愛かった…。」
「も、もうっ！佑人さんったら…。でも……私達こんな人前でちゅーしちゃいましたね。これでもう名実ともに人魔の夫婦、って気がしませんか？」
有妃はますます顔を赤らめながらもはにかむ様にえへへっ、っと笑った。そんな蠱惑的な姿に俺はますます夢中になって行くのだった………
今はもう白蛇の魔力に完全に蝕まれている状態だ。その影響で週末の帰宅時になると切なさや満たされない思いが溢れ出そうになるのだ。
有妃自身は気を遣ってくれて、つらいなら気分を楽にしてあげるから遠慮しないで、と毎週の様に言ってくれる。ただ、我慢した後で抱きしめられる安らぎは言葉には言い表せないほどなので、それを味わいたくて少々無理してしまうだけの事だ。
でも、こんな事を求めてしまう俺ってやっぱりマゾなんだろうか…。少々自嘲的な思いを抱いていると、いつの間にか見慣れた店の前を通過した。有妃との馴れ初めの地、狸茶屋だ。この店には結婚してからも立ち寄る事が多く、一緒に街中に出かけた時はよくここでお茶を飲みながらのんびりするのだ。そうだ。そう言えば狸茶屋ではあんな事もあった………
「佑人さん。そろそろ一休みしましょうか？」
「そうだね。喉も乾いたし…。」
この日は休日と言う事もあり俺と有妃は久しぶりに街に買い物に出かけた。ファッションには全く関心が無い俺の為に有妃が服を選んでくれる事もあれば、本屋で一緒に欲しい本の品定めをする事もある。今回は後者だが、読書家でもある有妃のおすすめの本を読むことは、色々と興味深くてとても愉しい。
そんなまったりとした時間も半ばを過ぎ、俺達は休憩の為に手ごろな店を探していた。あちこち冷やかしながら歩いていると、ふと以前見かけた記憶のある店構えが目に入る。そうだ。この店は…。
「あ…。有妃ちゃん。ここって…。」
「そうですね。ここは私達にとって記念の場所ですよ…。」
なにかを懐かしむ様な眼差しをすると有妃は微笑んだ。そうだ。ここは狸茶屋じゃないか。忘れることが出来ない有妃との初対面の場所だ。たちまち胸が詰まる様な思いが甦る。あの時はとにかく有妃から逃げる事しか頭に無かった。魔物娘とはいえ女性と関わる事は面倒なだけだった。
それが今ではすっかり変わってしまった。有妃は絶対に離れられない大切な人になったし、俺自身の心の持ちようも大きく変化があった。
有妃と付き合う前は街中で見かけるカップルに対して、相当暗い思いを抱いてしまうのを抑えきれなかった。それが今では微笑ましい気持ちで彼らを見ることが出来る。今日も何組ものカップルを見かけたが、みんな幸せそうでなによりだな。と温かい思いが心に溢れてきた。
本当に立場が変われば人の気持ちも簡単に変わってしまうんだなあ…。そんな思いにふけっていると有妃が俺の顔を覗き込んできた。
「どうでしょう？ここで一休みしませんか？」
「えっ？俺は構わないけれど……本当にここでいいの？」
思いもかけぬ言葉につい怪訝な様子で問いかけてしまった。なぜならばここは独り者の魔物が婿探しに入り浸る場でもある。いくら俺が有妃のものになっているからとはいえ、万が一のトラブルが起きないとも限らないからだ。そんな俺の疑問を察したかの様に有妃は朗らかに笑う。
「はい。普段はまあ…あまり好ましくない場所ですが、今日は心配しなくても大丈夫でしょう。」
そう言って有妃はドアに張り付けてある髪を指差した。ええと…何々？『インキュバスさんお披露目パーティー。〜カップル限定DAY〜』とあるが…。
「有妃ちゃん。これって…」
「はい。今日はカップル限定の様ですので特に問題は無いでしょう。」
「ああ。成るほどね…。でも、それはわかるけどインキュバスさんお披露目って…」
まだ疑問が消えない俺は有妃に問いかけた。
「ふふっ…。どうやら新たに魔物の彼氏や旦那さんになった男の方を皆さんにお披露目する、という趣旨の様ですね。」
「て、いうとまさか…。」
俺はまじまじと有妃の顔を見つめた。そう…以前にも述べたが、伴侶になった男と交わっている姿を他人に見せつける、というアマゾネスの風習。これが多くの魔物の間に広まっている事もあり、乱交パーティーじみた行為が魔物達の間でもよく行われるようになったという噂だ。無論あくまでもいたすのは自分の夫だけであろうから『乱交』とは違うのだが…
まさかこんな身近な所でも行われていようとは…まあでもこの店ならあり得るか…。でも、そんな場所に俺を連れ込もうとするなんて、有妃も俺とのセックスを他人に見せつけたいのだろうか。そう思うと急激に羞恥心が心に湧き起こってきた。いや…それは駄目だ！まだ俺はそんな恥ずかしい事に耐えられるほど人の理性を捨ててはいない！慌てた俺は有妃に訴えかける
「だ、駄目だよ！いくら有妃ちゃんの言う事でもそれは絶対に駄目だから！いくらなんでも恥ずかしいよ……」
しどろもどろになって哀願する俺を見て有妃は戯れるような笑みを見せた。そして優しく宥めてくれる。
「大丈夫ですよ！わかっておりますから…。佑人さんが嫌がる様な事は絶対に致しません！ですのでそんなに慌てないで下さいね。」
俺はなおも疑うような眼差しをしていたのだろう。有妃は気持ちを落ち着かせる様に頭をいい子いい子と撫でてくれた。
「もう…。佑人さんが嫌がる事を私が無理強いする訳がないじゃないですか…。でも、他の皆さんがシテいる所を見られるなんて…なんか興奮しませんか？今後のプレイの参考にもなるでしょうし。」
「でも…有妃ちゃん俺がよその女を見るといつもおしおきするじゃないか…」
俺も露骨に態度に出したりする訳では無い。でも、たとえばＴＶのニュースの女子アナを見て『この子可愛いな…』と思う気持までは抑えきれない。
有妃はそんな心の揺れに恐ろしく敏感で、気持ちを察知するたびに仕方がないなあ、と言わんばかりにため息をつく。そしてにっこりと笑ってこう言うのだ。『欲求不満ならそう言ってくださればいいのに…私が存分に解消してあげますので。』と…
実際その後は甘く激しい責めを受けて、いつもより相当余分に精を搾り取られる事になるのだ。当然の様に疲れて有妃の蛇体に包まれながら眠りにつく事になるが、そんな俺を愛情深くも若干の優越感を感じさせる眼差しで見つめる有妃がまた素敵なのだ…
普段でさえこうなのだから、よその魔物夫婦の淫らな交わりを見て気持ちを昂らせた日にはどうなる事か想像もつかない。それなのにいったい何を言っているのだろう…。幾分非難めいた俺の口調に有妃は悪戯っぽく笑う。
「まあっ！おしおきだなんて人聞きの悪い。私は変なモノが溜まった佑人さんにすっきりして頂いているだけじゃないですか…。」
「でも…」
「あの…それとも嫌…でしたか…。もしかして、つらかったですか…」
なおも不満そうな俺を見て有妃は急に不安げな口調になった。気は付けばいつも通りの優しく気遣う様な眼差しだ。俺は慌てて否定する。
「いやいやそんな事無いから！大丈夫だから！」
たしかにたっぷりと精を捧げる事にはなるのだが、もちろん俺の体調をちゃんと気遣った上での搾精だ。いつも安心して有妃の与えてくれる快楽に浸ることが出来る。本当は有妃が『欲求不満を解消してあげる』と言ってくれるのを心待ちにしているぐらいなのだ。
「嫌なんかじゃ無いよ…。いつも有妃ちゃんにはとっても気持ち良くしてもらっているし…。」
「本当ですか？もし嫌なら…」
「ううん…。正直言うとまたして欲しい…って思っているぐらいなんだよ。」
幾分の羞恥心を込めてぼそぼそ呟く俺を見て有妃はほっとした様にため息をつく。
「良かった…。でも私こそ佑人さんには有難く思っているんですよ。だって、いつもこんなにも私に溺れてくれて…魔物としてこれほど嬉しい事はありませんから。」
「…ん。有妃ちゃん。」
有妃は俺を抱きしめた。いつの間にか蛇体も優しく巻き付き、その心地よい圧迫感に酔いしれる。毎日の事なのだが全く飽きる事のない至福の拘束だ。全身を弛緩させて身を委ねる俺を有妃は慈愛深く見守っていてくれる。
そんな安らかなひと時だったが……ちょっと待てよ…。ここは家の中じゃないんだぞ…。往来で堂々と抱き合うなんて少々恥ずかしいじゃないか…。ふと我に返って慌てて有妃に訴える。
「ちょっと有妃ちゃん。ここじゃまずいよ…。」
「あ……そ、そうですよね…。ごめんなさい…。」
気が付いた有妃も幾分狼狽したかのように拘束を解いた。公道で過激な事をしている人魔のカップルなど珍しくも無いが、まだ俺はそこまで魔に染まっていないのだ。ここはとりあえず店の中に入ろう。俺はそっと有妃の手を取った。
「それじゃあ、ここで一休みしようか…。」
「はい…佑人さん…。」
有妃は顔を赤らめてうなずいた。
店のドアを開けると以前と全く変わらぬ光景が目に入ってきた。明るく落ち着ける空気感だが、あのときの事を思いだして懐かしい。ただ今日はカップル限定日というだけの事はあり、店内は人魔の番しか見当たらない。これならまあ独身の魔物に絡まれる事も無いだろう…。そんな思いを抱いていると、どこからか聞き覚えのある声で呼びかけられた。
「え……。君は…？まあ！久しぶりじゃない！」
振り向いた俺の目に入ってきたのは、人を象っている濃い紫色の液体だった。美しい少女の姿のそれは、華やかな笑みを浮かべると嬉しそうに近づいてきた。そうだ…彼女はダークスライムのエレンだ。
相変らず天真爛漫な雰囲気を纏っている彼女を見ていると、あの時の事が一気に思い出されてしばし追憶に浸る。エレンには独り者の魔物娘がどの様な存在であるか色々教えられた気がする。大げさに言えば魔の世界の入り口で道案内をしてくれたともいえる人だ。
「お久しぶりですエレンさん。あの時はお世話になりました。」
久し振りに会えた嬉しさで俺も笑顔を浮かべて挨拶した。
「もぉ〜。そんな堅苦しい挨拶はやめてよ〜。それで…今日はどうしてここに？」
はしゃいだ様子でなおも俺に近寄ろうとするエレンだったが、その時目にもとまらぬ早さで白い影が割り込んできた。有妃だ…。突然の事であっけにとられるエレンを前に、有妃はにこやかな笑みを浮かべると慇懃に頭を下げた。
「お会い致しますのはこれで２度目になりますが…。このたび森宮の妻になりました有妃でございます。先だっては主人が大変お世話になりました。本日はそのお礼とご報告もかねてご挨拶に伺いました。」
笑顔を崩さず全く隙のない丁寧な様子が逆に慇懃無礼という印象を抱く。そして幾分『妻』と言う言葉を強調しているのが気になる。思わず有妃の表情を伺うと妙に視線が強い。もしかして…これは…威嚇しているのか？
俺たちの馴れ初めの日、あの時エレンがダークスライムゼリーをこっそり俺に食べさそうとした事は有妃も知っている。桃里社長に止められなければ、今頃俺の奥さんは有妃では無くてエレンだったかもしれないのだ。
有妃からすれば横合いから獲物を攫おうとしたエレンは面白くない存在だろう。とすると今日は警告するつもりでこの店に来たのか？この男は私のものになったのだから手を出すな、という…。理由はともかく争いごとを見るのは嫌だ…。俺は有妃の手を握って制止しようとする。
すると有妃は俺の方を振り向くと優しい笑みを浮かべてかぶりを振った。そして心配しないでいいですよと言わんばかりにぎゅっと抱きしめると、蛇体を絡めて何度も額にキスしてくれた。正直人前でする事ではないのだが、全身を包む有妃の匂いと唇の柔らかさに気持ちが落ち着く。
傍から見れば所有権を誇示する様ないちゃいちゃぶりだったのだろう…。そんな様子を終始無言で見つめていたエレンだったが、呆れたように薄く笑った。
「え〜と……。随分とラブラブで結構な事ですねっ…。まあ…おめでとうございますっ！死ぬまでお幸せにっ！」
祝福してくれたが言葉尻には棘がある。一応笑顔を浮かべてはいたが、先ほど俺に見せた自然な様子とは打って変わった作り笑いだ。エレンは何か言いたそうな様子で俺達を眺めていたが、ぷいと顔をそむけると振り向きもしないで去って行った。
有妃は俺をぐるぐる巻きにしながらエレンを見送った。瞳の奥に攻撃的な光を宿す笑顔であるのは変わらない。彼女からすれば確かにエレンには一言言って置きたいだろう。その気持ちは分からないでもない。でも、別に当時の俺は誰とも付き合っていなかった。エレンが魅了する様な事をしても問題がある訳では無い。それにあの時一回だけの事であり、その後しつこく誘惑された訳では全く無いのだ。
それなのにわざわざエレン本人を前にあそこまでしなくても良いのではないか…。正直言って少し疑問に思う。
「有妃ちゃん…。」
「ええ…。わかっておりますよ佑人さん。」
俺は幾分困惑したような眼差しだったのだろう。有妃は視線を避ける様に俯くと深いため息をついた。
「自分でもこういう所は嫌になるんですけれどね…。でも、佑人さんを横取りしようとした方を前にしたら気持ちが…。」
「ねえ…。」
「あの方は独身の魔物として当然の事をしただけなんです。もちろんその事はわかっているんですよ…。でも…。」
「もしかして今日ここに来たのは…。」
そっと問いかける俺に対して有妃は慌てたように首を何度も降った。切ないような、苦しいような輝きを放っている紅い瞳が俺をじっと捕える。
「いいえ！それは誤解です…。あの方に私達の事をアピールしようとか、そんなつもりで来たわけではありません！このお店に来たのは本当に偶然です。でも…」
有妃はつらそうな眼差しで俺を見ると儚げに笑った。
「ごめんなさい…私ってこんなに浅ましい女なんですよ…。でも、我慢できないんです…。佑人さんが私以外のものになっていたかもしれないと思うと…もう我を忘れてしまいそうで。」
「有妃ちゃん…」
もちろんラミア属の嫉妬深さと言うのは知っていた。当然有妃本人からもその事は打ち明けられており、彼女の情念の強さが伺える場面は何度か目にしている。でもよその女に対して今回の様な露骨な態度を示したのはこれが初めてだ。
全く驚かなかったと言えば嘘になるのだが…。でも、そうだ。これがラミアの…白蛇の女の子と一緒に住むという事なのだろう。嫉妬深さも独占欲の強さも含めて有妃の素敵な一面なのだ。俺は自然に納得する事ができた。
「お願いです佑人さん！もし不愉快だったのならお詫びします。ですからどうか…。」
有妃は哀願する様な眼差しで何度も頭を下げている。いまでは見慣れた焦燥感溢れる様子もまた可愛い妻の一面だ。そんな姿を見ていると、有妃に対する愛おしさが際限なく溢れ出して自然と言葉となった。
「大丈夫だって…。何も気にしないで。ね…。俺は嬉しいんだよ。これって有妃ちゃんが俺の事をいつも気にかけてくれているって事でもあるよね…。
俺だってもう有妃ちゃんと一緒じゃないと耐えられないんだよ…。絶対に離れたくない。だから、こちらこそお願い。これからもこうして見守っていてほしい…。」
いつも有妃がしてくれているように俺は彼女の頭を胸に抱いて何度も撫でる。白く輝くさらさらの長髪がとても良い手触りだ。いつしか髪から良い匂いが立ち上ってきて蕩ける様な心持になっていった。
何も出来なくてエレンには少し申し訳ない気もするが、彼女なら良い旦那さんを見つけることが出来るだろう…。そう思うしかない…。
有妃は静かに顔を上げ泣き笑いのような表情を見せた。と、思う間もなく唇を合わせてきた。俺はごく自然にそれを受け入れ、柔らかく瑞々しい唇とぬるぬるした長い舌を存分に味わう。
「ゆうとさん。嬉しいです…。私こそ良い奥さんになりますから…よろしくお願いしますね…。」
互いの唇絶を満足するまで堪能すると有妃は照れたように微笑んだ。そんな彼女の愛らしい姿に我慢できずに俺はもう一度抱きしめようとしたが、その時ふいに声を掛けられた。妙に間延びしているが愛らしい声だ。
「あの〜。おきゃくさん〜。どうでしょう〜。お楽しみは席に着いてから…と言う事では〜？」
驚いて振り向くと、そこには牛の様な二本の角を持つ少女の姿があった。黒と白のストライプの髪と愛らしいつぶらな瞳、そして何よりも大変立派な胸を持つ少女…。ホルスタウロスだ。
そう言えば以前この店に来た時も彼女が接客している姿は見かけた。当然の様にここの店員なのだろう。怪訝な顔をする俺達に、ホルスタウロスの少女は申し訳なさそうな表情を見せた。
「あ、いえ〜。わたしたちは嬉しいんですけれど…おきゃくさんがどうかと思いましてえ〜。」
私達？疑問に思う間もなく俺は周囲から妙にねばっこい視線を向けられている事に気が付いた。よく見ると…周りの席に座っている人魔のカップル達がぎらぎらした眼差しで俺達を見つめていた…。
中には『そこだやれ！押し倒せっ！』と声援を送る者や『私たちもしましょうよ…。』と番に催促する魔物達もいる………。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ！！」
俺と有妃は顔を真っ赤にして言葉にならないうめき声を上げてしまう。そうだ………先ほどからの一幕は全て彼らに観られていたのだ。全く、俺は何をやっているのだ…。なにがまだ人としての理性を捨ててはいない、だよ…。十分過ぎるほど恥ずかしい事をしてしまったではないか…。
俺達は慌てふためいてホルスタウロスの少女に詫びると、案内された席にそそくさと足を運んだ。恥ずかしさのあまり顔も上げられないが、なおも生暖かい視線はひしひしと感じている。
「佑人さん。………本当にごめんなさいっ。あんな事をさせてしまって………。」
顔を真っ赤にして俯く有妃が申し訳なさそうにしている。やれやれだ。まあでも俺も将来は魔物の価値観に染まる日が来る。いつかはたどる道だ。遅いか早いかの違いはあっても…。そう考えると気も楽になり可愛くも面目なさげな有妃を慰める。
「でも…有妃ちゃんのあられもない姿を堪能できたから良かったかな…。これはず〜っと、墓場までもっていかないとねっ！とっても可愛かった…。」
「も、もうっ！佑人さんったら…。でも……私達こんな人前でちゅーしちゃいましたね。これでもう名実ともに人魔の夫婦、って気がしませんか？」
有妃はますます顔を赤らめながらもはにかむ様にえへへっ、っと笑った。そんな蠱惑的な姿に俺はますます夢中になって行くのだった………
17/03/12 21:48更新 / 近藤無内
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