江戸崎からモイライへと帰った後、ミリアさんに頼んで冒険者ギルドの宿舎に部屋を用意してもらった。
最初は怪訝そうな顔をしていたけれど、サラさんと距離を取りたいからと言うとさらに訝しげな表情を浮かべてきた。そんなにおかしなことを言っただろうか。

「喧嘩でもしたの？」
「え〜と……似たような物です。それに少しイメージを変えるためにいろいろしてみようかと。」

色々聞きたい事はあったみたいだけれど、彼女は何も言わずに部屋の鍵を渡してくれた。
部屋に荷物を置いて、ギルドのロビーへと戻る。
そうしてお目当ての人物を探し始めて……見つけた。
ロビーの隅、煙草を吹かして横柄な態度でテーブルに足を載せている中年の男。


アルバート＝ベンジャミン。


通称、嫌われ者のベンジャミン。
粗暴で横柄。金にがめつく、口より先に手が出るタイプの男。
一応公的機関を名乗っている冒険者ギルドがこの男を追い出さないのは、彼が口だけではないという理由から来ている。
その腕前は確かで、とある山で悪事を働く盗賊団３０名を無傷で討伐した程の実力を持つ。
普段の素行故に女性が一人も寄ってこない（それも魔物も含めてだ）ので、彼は常日頃から鬱憤が溜まっているらしい。
僕は彼が座っているテーブルへと歩み寄っていく。正直言って、足が震えそうなほどに怖い。

「アルバートさん……ですよね？」
「あん……？何だボウズ。何か用か？」

胡乱な目で見据えられた。まるでというよりはまさにチンピラだ。

「僕はクロアと言います。少し、お話をよろしいでしょうか？」
「……ッチ」

なぜか舌打ちをされる。そんなに無礼な態度は取っていない筈なのだけれど……。
特に何も言われなかったので、隣の席に座る……

途端、世界がひっくり返って側頭部に強い衝撃を受けた。

テーブルに顔を押し付けられていると気づいたのは中身がこぼれているコップを見てからだった。

「誰が相手をしてやるって言った？あぁ？」
「す、すみません……」

手を上げて謝罪すると舌打ちをしながらも離してくれた。
そして椅子に座ろうとした瞬間、その椅子を蹴飛ばされて尻餅をついてしまった。

「何調子に乗ってんだコラ。喧嘩売ってんのか？」
「……っ！話だけでも聞いてもらえませんか？」

その僕の態度が気に入らなかったらしく、胸ぐらを掴まれて引っ張り上げられた。
襟が締まって息苦しい……

「少しシメりゃあマシになるか？あ？」

その時、彼の背後に誰かが立って手の平を突きつける。
その手の平の中には炎の玉が渦巻いていた。

「そこまでにしなさい、ベンジャミン。いくら貴方とは言えそれ以上は許容できないわ。」

ミリアさんだった。
さらに背後には各々の得物に手を掛けているギルドのメンバー達。

「……ふん。」

気に入らなそうに鼻を鳴らして手を放すベンジャミン。
なんだか教えを請いたくなくなってきた……。

「クロア、私が言うのもアレだけど彼と無理に関わる必要は無いわ。」
「でも……必要なんです。自分を変えなくちゃ……。」

それで彼女は大体の理由を察してくれたようだ。
彼に向き直って口を開く。

「ベンジャミン、これから暫くはクロアとペアを組んで依頼をこなして頂戴。これは命令よ。」

ミリアさんがギルドマスターとして誰かに命令を下すのは珍しい。
周囲も驚きが隠せないみたいだ。

「何でだよ。こんなションベン臭いガキのお守りをしろってか？」
「あら、少なくとも彼はお守りをされるほど足手まといにはならないはずよ。ねぇ？」

確かに度重なる鍛錬によって一人前程度の力量は付いている筈。
力になる事はあっても足を引っ張る事は無いはずだ。

「僕からもお願いします。少しの間だけでいいので組んでいただけませんか？」
「……ッチ、わかったよ。だがな、１つだけ条件がある。」

そう言うと彼は人差指を立ててこう言った。

「その馬鹿丁寧な話し方をやめろ。虫酸が走る。」
「わかり……わかった。」

図らずも目的に一歩近づく事ができた。
隣ではミリアさんが周囲に見えないようにこちらへウィンクしている。本当にこの人にだけは逆らえない気がするな。



「しかしまぁなんだ、その格好。新米冒険者丸出しじゃねぇか。」
「え〜と……何か問題が？」

僕の現在の装備は綿のズボンにTシャツ、あとは使い古しの革鎧といった体だ。
確かに言われてみればグレイプルやミタク・ナハトとは合わない気がする。

「先ずは格好からだな。行くぞ。」

先に立ってズカズカと進んでいくベンジャミン。
慌てて後を追いかけ、入って行ったのはブティックだった。



「ふむ……ほれ、これなんかイカすんじゃねぇか？」
「うぇ……？えっと……。」

中に入って服を物色し、渡してきたのは真っ赤なコートと黒いデニムパンツだった。

「えと……シャツとかは……」
「そんなもんいらねぇだろ。ほれ、さっさと着てこい。」

ズボンを履き替え、シャツを脱いで上半身裸の上にコートを羽織る。
なんだか凄く変態っぽい……。

「ふむ……少しはマシになったじゃねぇか。あとは……もう一押し欲しい所だな。そいつは別の所で見るか。」

元々来ていた服をバックパックへと入れて、会計を済ませる。
お金は彼が払ってくれた。
実は結構いい人なのかもしれない。



「次は……こいつだな。好きなのを選べ。」

今度は露天商の銀細工アクセサリーだった。
それにしてもデザインがおどろおどろしい物しか無い……。

「好きなのって……う〜ん……」

どれもこれも身につけるには派手すぎる気がする……
そんな時、一つのアクセサリーに目が行った。


髑髏に十字架が突き刺さっているペンダント。


なんだかそれが今の自分を体現しているかのようで妙な親近感を覚えた。
手にとってじっくりと眺め回していると、ベンジャミンさんに覗き込まれる。

「元の性格の割には随分とおどろおどろしい物を選ぶじゃねぇか。」
「ん……なんだか気になってね。」

彼が店主に代金分の銀貨を渡していた。買ってくれる……という事だろうか。
もしかしたらなんだかんだで世話焼きなのかもしれない。

「行くぜ。」
「あ、ありがとう。ベンジャミンさ……」

全部言い切る前に口を押さえられた。殴られたり凄まれたりしていた最初から比べたら進歩したのかな……？

「そのさん付けはやめろ。ベンでいい。」
「わかったよ、ベン。」

僕がそう言うと満足気に頷いて口から手を話した。
不器用ながらにも気遣いができる彼に少しずつだが興味と親近感が湧いてきた。
もしかしたら……嫌われ者っていうのはただのポーズなのかもしれない。



〜数日後　山賊拠点〜

あれから俺はベンと共に幾つかのクエストをこなしていた。
喋り方も大分真似られてきたと思う。中身の方は……まだまだ追いついてはいないが。

「これで最後か？」
「あぁ、最後……っだ！」

ヴァーダントで残党の頭を叩き割る。彼と行動しているうちに血生臭いのにも慣れてしまった。
今までは相手が死なないように手加減をしながら戦っていたのだが、だんだんとそれがきつくなってきた。彼は周りに気を使いながら戦うタイプではないので、こちらのフォローなんかはしない。そのあたりがサラさんと組んでた時の違いだ。
彼女はピンチになれば助けてくれたが、彼はそうではないので自力で、しかも全力で戦わざるを得なくなったのだ。
結果的に相手を殺す事に耐性が付いてしまった。本当は……良く無いことなのだろうけど。

「う〜し……さっさと帰るか。」
「あ、待った兄貴。確か身代金目的で拐われたワーラビットが一人、ここに捕まっていた筈だ。」
「それを先に言え。金蔓を見過ごす所だったじゃねぇか。」

俺の話を聞いて彼がそこらじゅうのテントの中を探し始める。ちなみに兄貴というのはなんとなく自分から言い出した事だ。彼も案外気に入っているらしい。
それにしても金蔓って……帰した時に謝礼でももらうつもりなのだろうか。

「お〜ぅ、いたいた。どっこらせ……っと。」

一つのテントの中に彼女を見つけたらしい。
何か重たそうに持ち上げたかと思うと、そのままテントから出てきた。ワーラビットは、縛り上げたまま。

「何で縄を解かないんだ？自分の足で歩かせたほうが楽だろうに。」

そして、彼の一言で俺も彼女も凍りつく。



「何言ってんだ。縛り上げとかなきゃ売る時に暴れられるだろうが。」



「……兄貴、何を言っているんだ？一応依頼の中にも書いてあっただろ？拐われた女性を見つけたら保護することって……。」
「ばっかお前、ただ帰しただけじゃ報酬が二束三文増えるだけだろうが。それなら殺されていたって事にして奴隷商にでも売ったほうが儲かるぜ？」

この人は、何を言っているんだ？

「〜〜〜〜〜！〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ！」
「ダァ〜、うるせぇな！ちったぁ静かにしてろ！」

縛り上げられている彼女の腹に兄貴の膝が突き刺さる。
彼女は二、三度ビクビクと体を震わせておとなしくなった。

「おら、行くぞ。こいつらを卸せる市場ってのは夜中しか開いていないんだ。グダグダしてると夜が明けちまう。」

……ここで、俺が彼のやることを見て見ぬふりをすれば、間違いなく犯罪者だ。
そして、ここで彼を止めてギルドに突き出せば間違いなく彼は永遠に冒険者として活動できなくなるだろう。
それどころか、一生牢獄暮らしになるかもしれない。それほどまでに、奴隷売買というのは罪が重い。

「クロア、ぼさっとしていると置いてくぞ！」

彼女の濁った眼と俺の眼が合ってしまった。



もし、彼女をここで助けると、どうなるだろうか。



俺に感謝した彼女は一生俺につきまとうだろうか。
もしかしたら、無理矢理でも体を重ねられてしまうかもしれない。そうなれば……彼女に待つのは死だけだ。

「（そうだ……俺の手にかかって死ぬぐらいなら奴隷としてでも生きたほうが幸せなはずだ。少なくとも……生きていればいずれ助かる日も……）」

そして、見てしまった。
猿轡をかまされていて上手く読み取れなかったが、彼女の口が動くのを。



たすけて、と。



「……っと！？……おい、どういうつもりだ。」
「……ホント、どういうつもりなんだろうな。」

気がつけば、ヴァーダントを引き抜いて兄貴に切りかかっていた。
いち早く殺気に気がついたのか、上手く躱されてしまったが。

「そいつを助ければ付きまとわれるのは俺だって分かり切ってんのに……ホント、バカだよなぁ、俺。そのまま奴隷として売っちまえば面倒くさくない上に金まで手に入る。良い事尽くめじゃねぇか。」
「それがわかっていて……何故俺に剣を向ける？なぁ、兄弟。」

彼も得物である大斧を背中から引き抜き、俺に向けて構えた。
気迫、殺気共に非常に鋭く、大きく、強い。しかし……

「わりぃ、兄貴。やっぱ、それは納得できねぇよ。……誰かが泣くのは、やっぱり見たくねぇよ。」
「そうかい……んじゃ、お前とはここまでだ。残念だが報告書にはお前は賊にやられて死亡とでも書いとくわ。」

同時に、兄貴が鋭く踏み込んで俺の懐まで入ってくる。
大斧というのは別に相手の脳天をかち割る事しかできないという訳ではない。短く持った柄の方を突き出し、相手に打撃を与えることもできる。それでひるんだ相手を頭から叩き割る……というのがいつもの兄貴の戦法だ。


尤も、何度も見ているのでその辺は熟知しているのだが。


「っ！？」

勢い良く突出された柄を片手で受け止め、動きを止めた隙に金的へ膝蹴り。
呻いて体を折った所でもう一度膝蹴り、今度は額だ。

「っがぁ！？」

握力が弱まった隙を突いて大斧を奪い取り、体を逆回転させて大斧の背で殴り飛ばす。
近くのテントに突っ込んだのを確認し、ナハトを引きぬく。
モードはペネトレーション。３発全てを布の中でもがいている兄貴に向けて叩きこむ。

「ぁぁぁぁあああああああﾞあﾞあﾞあﾞあﾞあﾞ！」

どこに当たったかはわからない。
しかし、まともに動けるような状況じゃない筈だ。
赤く染まった幌布をどけると、傷口を手で抑えて悶えている兄貴がそこにいた。

「っはぁ……っはぁ……殺す……か……？」
「……奴隷売買は……重罪だ。ここで兄貴を殺さなきゃ……待っているのは見世物のようにされる公開処刑だけだ。」

ヴァーダントを背中側へと回し、振り下ろすための力を溜める。
こいつは、殺さなきゃいけない。|殺したくない！

「ま、いつかは……こうなるだろうとは……思ってたさ……ぐふっ！」

兄貴が咳き込んで吐血する。口元と胸元が赤黒い血で染まった。
赦しては、いけない。｜いやだ！これ以上……親しい人を失いたくない！

「いいか……坊主……悪事ってのはな……麻薬なんだ……」

殆ど目も見えていないだろうに、俺に何かを伝えんと語りかけてくる。
こいつは……犯罪者だ。｜冗談だって……冗談だっていってくれよ兄貴！

「最初の一回ぐらいは……なんて……考えていると……ぐぶっ！段々と……蝕まれる……」

彼が、震える手を前へと伸ばしていく。

「お前は……染まるな……。俺を裁くことで……『悪』と決別……しろ……。」

無意識に、俺の手が彼の手へと伸びた。
空いている方の手で、彼の手を握る。

「裁き……続けろ……。お前が思い浮かべる……悪を……赦すな……。」

そして、彼がその手を離す。
彼の手は力なく幌布の中へと沈み込んだ。

「さぁ……裁け……。そして……往け……お前の……道を……」

片手の剣は、既に振り下ろせる状態だ。あとは、彼の脳天目掛けて振り下ろすだけ。
俺は、その手を｜もう……嫌だ……



振り下ろした。｜兄貴……！



………………
…………
……

縛り上げられていたワーラビットの縄をほどいてやる。

「兄貴が……済まなかったな。」
「いえ……辛かったでしょう？」

彼女は真っ赤に染まった幌布へと目線を向ける。
彼の遺体は見えないように幌布で包んであった。

「街までは送ろう。その後は自宅に戻るなりなんなりすればいい。後の事は俺がやっておく。」
「はい、有難うございます……」

よろめく彼女に肩を貸しながら街へと歩き出す。
結局、モイライまで着いたのは夜明けにもなろうかという時刻だった。



〜交易都市モイライ　東側通用門〜

「あの、本当にありがとうございました。」
「もういい。仕事のついでだ。」

彼女は送り届けた。
ここまで来ればあとはもう大丈夫だろう。魔物ということもあり体力の回復も早いので置いて行っても問題ない。
俺は振り返ること無くギルドへの道を行く。
しかし、数歩も行かぬうちにコートの裾に抵抗を感じ、歩みが止まった。
ワーラビットの女性が、俺のコートを摘んでいた。

「あの……良かったらでいいんですけれど……お礼を……。」

あぁ……そうだ……。分かり切っていた事じゃないか……。
彼女を助ければこういう事になるって。
ふと、兄貴の顔が思い浮かぶ。
また一つ、背負ったものが増えた。そんな気がした。

俺はホルスターからミタクを引き抜き、すがり付いてくる彼女の額に押し当てた。


「ぇ……」
「消えろ……」

ミタクの引き金を引く。
しかし、弾丸が抉り取ったのは彼女の脳髄ではなく若干離れた場所の地面の土だった。
それを見て彼女がガタガタと震えだす。

「一刻も早く、俺の目の前から消え失せろ。気が変わって脳天を撃ちぬかれない内に。」
「ぁ……ぅ……」

彼女の目から大粒の涙がボロボロと零れ落ちる。
漸く登ってきた朝日が彼女の顔を照らし出した。
心が痛むが、これでいい。

「ぅ……ぅぁぁぁぁぁああああああ！」

そして、彼女は朝日が照らし出すモイライの通りを走って逃げていった。
そう、これでいい。



何者も寄せ付ける事が無かった兄貴。
自分が持つ服が新米っぽいと言って服や装飾品を買い与えてくれた。
その兄貴が、犯罪者という烙印を捺されて忘れ去られようとしている。

なら、せめて俺一人でも覚えていてあげなきゃ……あまりにも寂しいじゃないか。

だから、俺は彼の生き様を背負って生きる事にする。
彼の後ろ暗い部分……過去の罪は俺が裁いた。だから、背負っていく分は彼の生き方だけで十分。彼の仲間に対する思いは誰にも汚させはしない。



〜冒険者ギルド　モイライ支部　ロビー〜

「……そう、死んだのね……彼。」
「あぁ……捕まっていたワーラビットを売り飛ばそうとしていたから止めた。結果、戦闘になって殺害。」

ギルドに帰って早々、俺は今回の事を報告書にまとめた。
ミリアさんは既に起きていた。……なぜか少し青臭い匂いを漂わせて。

「あまり悲しまないんだな。」
「まぁ……色々とね。彼が何か後ろ暗い事をしていたのは気づいていたし……。」

そう言いながら彼女は兄貴の登録書類に任務中死亡の印を捺す。
その顔は悲しんでいるでもなく、怒りに震えるでもなく、どこか複雑そうな表情だった。

「彼もね……多分誰かに止めてもらいたかったんだと思うわ。私も彼を止めてあげたかった。今回の貴方はまさに渡りに船だったって訳。」
「……」

大人の世界にどこかやるせない物を感じてしまうのは……やはり俺がまだ子供だからなのだろうか。

「ごめんなさいね……貴方に汚れ役を押し付けてしまって。」
「いや……いずれ誰かがやっていただろう。それがたまたま俺だったってだけの話だ。それに……」

胸から下がっている十字架と髑髏のペンダントを指で弄ぶ。
これは、俺と兄貴の義兄弟の証……そう、言われていた。

「少なくとも、兄貴は俺に止めを刺されて幸せだったと思う。漸く心を許せる奴ができたって……言ってたしさ。」
「……そう。」

書類をファイルへと挟むとそれを棚へと戻し、彼女は尻尾をうねらせながら奥へと引っ込んでいく。

「どこへ？」
「ちょっと夜に励み過ぎちゃってね……寝直すのよ。」

静まり返ったギルドの中へ取り残される俺。
恐らくもう口調や性格の改善はいらないだろう。
今の俺は既に兄貴の言動を真似切っている。その上、彼の生き方も背負っているのだ。
今の俺なら……生半可な誘惑だったら文字通り一発で振りきれる。
俺はもう毒餌などではない。

ギルド宿舎に戻り、引き払うために荷物をまとめた。後は退寮の書類に署名をして管理人の部屋の前のポストに入れておくだけだ。

「（そう言えば……サラは大丈夫か？）」

あの人はあれで家事はそこまで得意な方ではない。
というより、一緒に住んでいる間はほぼ全てと言っていい程家事は俺がやっていた。
そして、別々に暮らし始めてもう４日は経っている……

「ヤバい……！家が全焼していても不思議じゃねぇ！」

この辺までは頭が回らなかった。
急いで家に駆け戻り、扉を開けた先に待っていたのは、荒れ果てた部屋の中で何か血文字のようなもので『ゴハン』と書いて倒れ伏している彼女の姿だった。



一応、極度の空腹状態だっただけで命に別状はなかったが。

■作者メッセージ
〜あとがき〜
いやぁ……なんだかもうこのサイトの趣旨から外れまくっています。
なにせ魔物がSSの２割も出てこない。しかもこれで色々と端折った状態なのだから余計にたちが悪い。これだから中二病は（ｒｙ