第四十話〜これにて大団円?〜
〜冒険者ギルド 江戸崎支部 ロビー〜
江戸崎城を破壊後、顔を合わせて報告するために一度ギルドへと戻ると……
<ザザザザッ>
メンバー全員に物凄い勢いで引かれた。
目を合わせようとするとあっというまに目をそらされる。
「お、おい……そんなに怖がらなくてもいいだろうが……」
「いや、城一つ単身で完全破壊しておいて怖がるなって方が無理だと思うのだけれど。」
エミリアがバケモノでも見るような目で俺を見つめている。
地味に凹むぞ、これ。
「知っての通り江戸崎城は制圧……もとい完全破壊した。半蔵の死体の捜索は誰かがやってくれ。俺が頼まれたのは城の制圧だけだからな。」
半蔵の生死より気になることもあるしな。
「サフィアの具合はどうだ?見つけたときはかなり衰弱していたみたいだったんだが……」
「彼女ならこっちです。付いて来てください。」
プリシラが俺を奥へと案内する。おそらくはいつもサフィアが使っていた水槽だろう。
彼女は水槽の中で目を瞑りじっとしていた。
水槽の壁をノックしてやるとこちらに気がついたようだ。
「あ、アルテアさん……!生きてた……生きていてくれた……!」
水槽から身を乗り出してこちらに抱きつこうとするが、バランスを崩して倒れかける。
それを支えてやるとしっかりと腕を回して抱きついてきた。
「馬鹿です……なんで逃げなかったんですかぁ……」
「悪い……性分だからな。」
グズグズと泣いて俺に縋りつくサフィアの後頭部を撫でてやる。
まぁ、俺が無茶をして心配させたんだ。このぐらいはしなくちゃバチが当たるよな。
暫くするとようやくサフィアが泣き止んだ。
一旦彼女から離れようとして……失敗した。
ジャンパーを掴んで離してくれない。
「サフィア?」
「っ!」
強い力で水槽の中に引き込まれる。
衝撃で鵺が床に落ちて鈍い音を立てた。
「お、おい……」
「すみません……でも……」
顔を伏せて頬を染めて……
嫌な予感が……
「ずっとネックレスが外せなくて……魔力がなくなっちゃって……魔力補充の方法は分かるので……その……」
つまりアレか。しろってか。
『スリープモードに入ります。』
「あ〜……私は邪魔になるみたいなので向こうに行っていますね?終わったらロビーに来て下さい。」
ラプラスは早々に見なかった事に、プリシラは空気を読んでどこかに行ってしまった。
やれやれ……空気が読めるのはいいが露骨過ぎるのは問題だ。
サフィアとキスを交わし、彼女の体を後ろから抱きしめる。
昨日の事でも分かったが、彼女はどうもキスをされるのが好きみたいだ。
キス魔ではないがされると嬉しい、というレベルだろう。
「ん……はぁ……はむ……」
唇が触れる所が淡い光を放つ。多分これが補給方法とやらの一端なのだろう。
情熱的にキスを交わすたびに彼女の体温が上がっていく。水の中なのに彼女の体は燃えるように熱かった。
「触って……触ってくださぁい……切ないですよぉ……」
リクエスト通りに胸をまさぐり、秘部に手を這わせる。
柔らかいバストに指が沈みこみ、ぬかるんだ秘部は水ではないぬめりに覆われていた。
「キスだけでこれだけ興奮したのか。」
「そうなんです……嬉しくて、嬉しいと思ったら体が勝手に……」
刺激が弱いのかもどかしげに腰をくねらすサフィア。
このまま刺激を強めてあげてもいいが、ふとしたいたずら心が。
「強くして欲しいか?」
「はぃ……もっといっぱいしてください……」
「それならもっとはっきりとおねだりしてくれないか?」
その一言に彼女の顔が一気に赤くなる。
「あの、おねだりって言うのは……」
「自分で考えた事を言ってみてくれ。」
余程恥ずかしいのか口をもごもごと動かすだけで声が聞き取れない。
このままでは埒があかないので秘部を弱く刺激し続ける。
クリトリスには触れぬよう、外唇のみだ。
「あぅ……ぅん……いじわるです……」
「意地悪されて困っているサフィアが可愛いからな。」
そう言うとますます顔を赤くして俯いてしまった。
あぁ、もう。かわいいなぁこいつは!
「……さい」
「ん?」
それでも炙られるような快感に耐えられなくなったのか彼女が口を開く。
「私の、お、お○んこ……もっといじってくださぃ……」
言い切ると額を俺の胸板に押し付けて顔が見えないようにしてしまった。
「あぁ……言っちゃいました……はしたない……ですぅ……」
精一杯のおねだりに思わず笑がこぼれてしまう。
あぁ、もう。かわ(ry
「よく言えたな。ご褒美だ。」
膣口に指を入れて抜き差ししながらクリトリスを優しく撫で回す。
それだけで彼女はビクビクと全身を震わせた。
「んはぁっ!や、やぁぁ……いい、いいです……」
可愛らしく口を半開きにして喘ぐ彼女。
口の端から一筋ヨダレが垂れていく。
「かわいいぞ、サフィア。」
「んや!?ふぁぁぁぁああああん!?♪」
不意打ち気味の囁きで一気に高まってしまったのか彼女の全身がビクビクと震える。
体中の力が抜けて俺の方へと体を預けてくる。
「はっ……はっ……ずるいですよぉ……♪」
「んなこと言ったってなぁ……」
彼女には何故かいい声で啼かせたくなるようなオーラが漂っているのだ。
その鈴の音のような声で嬌声をあげると高ぶってしまうというか……
「いい反応を返してくるサフィアが悪いんだぞ?」
「そ、そん……んぁ……お豆こりこりしないでぇ……」
反論させないように責めは継続する。
やんわりと嫌がりながらも彼女の顔は法悦にほころび、秘裂からは止めどなく愛液が溢れてくる。
嫌よ嫌よもなんとやら……って奴か?
「あ、あの……もう準備は出来てますから……その……」
「あ、あぁ、そうだな。楽しくてついつい弄り過ぎた。」
もぅ、と呆れながらもこちらに向き直って抱きついてくるサフィア。
ズボンの留め具を外してトランクスの中から俺のモノを取り出す。
「入れますよ……んっ……」
俺が支えたモノにゆっくりと腰を沈めてくる彼女。
だんだんと飲み込まれていき、根元まで入って彼女の奥へと当たった。
「はぁ……アルテアさんので一杯です……」
「ん……サフィアの中、気持ちいいぞ。」
ヒクヒクと震えるモノに合わせて彼女の膣が絞めつけてくる。
確かに動かさないでも具合がいいのだが、何時までもこのままという訳には行くまい。
「動かすぞ。」
「はい……来て下さい……」
彼女の体を支えて腰を突き上げる。水中なので体重による負荷はあまり気にしなくても良い。
あまり音が聞こえないというのは少し寂しい気もするが、そこは彼女の甘い声が耳元で聞こえてくるので問題は無い。
「あ、んぅ、んっ!ある、アルテア、さん!もっと、もっと突き上げてくださいぃ!」
「っ!あぁ、気が済むまで感じて……くれ!」
要望通り突き上げるスピードを上げる。といっても水中なので出せるスピードにも限界はあるが。
「ぁ、つよ、ん!おくに、コンコンって……ぁん」
「っ!さふぃあ、さふぃあぁ……!」
体位の関係上どうしても彼女の胸に顔を埋める形になってしまう。
彼女の甘い匂いがどこに顔を向けていても香ってきて頭の芯が熱くなっていく。
「も、出る!イきそうだ……!」
「いいですよ……ッ!イって……中に……一杯ください……!」
熱に浮かされるように彼女に腰を叩きつける。
彼女は俺の肩に顎を乗せて俺にしがみついている。
中に下さいって言っていたし引き抜く気は無いのだろうなぁ……
「っ……く……!ぁ……!」
「っは……ぁ……中で……ビクビクって……」
全身が快楽に震えて彼女の中に精を解き放つ。甘い恍惚感がクセになりそうだ……。
彼女の体全体がうす青く光り、やがて収まった。
「ふぅ……補給はできたか?」
「一応は……」
しかし、彼女は俺を離そうとしない。
「おい、サフィア?」
「え、えと……もう一回したいな〜……なんて思ったり……ダメ、ですか?」
そのはにかみながら上目遣いはやめてください。死んでしまいます。(理性的な意味で)
結局、もう一ラウンドすることになった。
「服がずぶ濡れだな……」
「あぅ……すみません……」
水槽の中に入っていたので当然全身ずぶ濡れだ。
今の季節が夏で良かった。
「服を着替えてくるわ。まだ体が本調子じゃなかったら休んでいるといい。」
「大丈夫です。一杯元気をもらいましたから……」
お腹撫でないでー!
宿舎に戻って予備の服に着替えてからギルドのロビーへと戻る。
妙に周囲の目線が生暖かい。
「……何だよ。」
「先程はお楽しみでしたね♪」
ティスがニヤニヤしながらこちらを見ている。やれやれ……冷やかす奴しかいねぇのかここは。
「そうねぇ……お楽しみだったわねぇ……」
いや、絶対零度の視線で見てくる奴が一人いた。
「ねぇ、手足を撃ち抜かれながらじわじわと嬲られるのと頭を撃ちぬいて一撃とどっちがいい?」
「ど、どっちも遠慮したいなぁ……ははは……」
アイシャが弓に矢をつがえながら殺気を放ってくる。
あれは本気(マジ)の目だ……!
『どうせならば○○○を撃ちぬいてみては如何でしょうか。これ以上盛らないように。』
「いいわね、それ。四肢ももげば完璧かしら。」
「お前物騒過ぎだろ!てかラプラス、お前も煽るな!」
俺らがギャーギャーと言い争っていると不意にズボンが何かに引っ張られる感触がする。
下を見るとタマが俺のズボンの裾を引っ張っていた。
「どうした、タマ。」
「仔鵺と虎牙鎚はどうしたのさ。」
「あぁ、それならホルスターに……」
腰のホルスターから仔鵺と虎牙鎚を引き抜く……
「…………」
「……………………(滝汗)」
仔鵺も虎牙鎚も、途中から先が無くなっていた。
「そういえば……両断されていたんだっけか……」
「……アルテア……?」
声に感情が無いタマ。彼女の目のハイライトが消えて死んだ魚の如き目が俺を凝視している。
あぁ、死んだ。
「仔鵺と虎牙鎚、しめて金貨450枚ね。」
経済的に。
〜一週間後〜
「っ……くっ……はぁ……はぁ……み、見つけたぞ!」
ジパングのとある山中。姫様にもらった古地図を頼りに穴を掘る。
穴の中からは壺が出てきて、中には古銭が入っていた。
「これでいくらだ!?」
『現在価値で金貨30枚と言ったところでしょうか。』
俺はその場にどうと倒れる。
「っはは……ざまぁみやがれ……金貨450枚分……稼ぎきってやったぞ……」
『お疲れさまでした。これでようやく帰れますね。』
タマから膨大な量の金貨を請求されてから今日で一週間。今までに様々なクエストを受けた。
「内紛地帯の単身制圧……わがまま姫の宝探し……奇声を上げて暴れまわるウシオニの鎮圧……旅行しに来て魔力が暴走したエキドナの無力化……伝説の妖刀探索……Sクラスの依頼ばっか……」
おかげで弾薬、精神、体力、時間、様々な物を消費してしまった。
「しかし……これで心残りは無くなったな。」
『そうですね。ジパングの地でやるべき事はもうほとんど無いでしょう。』
あの江戸崎城崩壊で、色々なものが変わった。
事件の首謀者である佐間半蔵は城の残骸の中でほぼミンチになった状態で発見された。
一緒に落ちていた銀のロザリオがシーフギルドの報告にあった物と一致し、皮肉にも彼の身元特定に繋がったようだ。
俺が破壊した江戸崎城は「もうあんな危険な所に住めん!」との栄之助氏の娘……つまり先程の姫様の一言で特にお咎めは無かった。
今現在も江戸崎城はジャイアントアントの助けを借りながら再建中だ。
そしてその事件での一番の功労者……つまり、冒険者ギルドは再評価されることとなり、冒険者を目指す浪人や侍が増えた。これで人手不足に悩まされることは無いだろう。
同じく、その事件で暴れまわった俺が使っていた武器を見て、タマの工房へ武器制作の依頼が数多く舞い込んでくる事になった。今も嬉しい悲鳴をあげていることだろう。
……そんなに儲かっているなら少しぐらい割引してくれてもいいだろうに。
変わったと言えば瑠璃も劇的に変わってしまった。
なんというか「物凄く大人しくなった」のだ。
俺に対して丁寧に話す彼女は見ているこちらが気味悪くなるぐらいだ。
どうにも彼女は母親に人には言えないような事をされたらしい。
その時の事を訊こうとすると必ず真っ青になってガタガタと震え始めるのだ。
そういえば彼女は江戸崎の冒険者ギルドのギルドマスターの娘だそうだ。
どうりであんな態度でも辞めさせられない訳である。
そして江戸崎の冒険者ギルドに新たな顔が加わった。
あの辰之助である。
江戸崎城攻略戦の際に嫁さんを連れて街中を逃げ回っていたそうだが、その際にガーディアン相手に大立ち回りをして妖怪達を守っていた俺を見て入る決意をしたらしい。
「自分は家内を守るだけで精一杯だった。自分の未熟さを恥じ、貴殿のように様々な者を護れるぐらいに腕を磨き、見聞を広めたい」
というのは彼の談。
事件の翌日、新たなギルド通信網用の宝箱が冒険者ギルドに届き、それを使ってミリアさんに江戸崎支部の人手不足が解消した事と、大きなツケができたので暫く帰れなくなった事を伝えた。
ミリアさんは了承してくれたが、アニスちゃんが寂しがっているという「早く帰ってこい」的な返事を返してきた。
そういや帰ってきたら驚くようなニュースがあるとか言っていたな。一体なんだろう。
風の噂では冒険者養成施設に桔梗の姿を見たという話があった。
おそらく、俺を追いかけるために本格的に鍛錬を始めたのだろう。
彼女ならば、俺に追いつくぐらいはすぐにやってのけそうだ。
ギルドのメンバーが増え、人手不足が解消した事によりクエスト解決のスペシャルチームは解散。
各々自分が所属するギルドへと帰っていった。
尤も、アイシャは最後の最後まで帰るのを渋っていたが。
サフィアは少し前に江戸崎を去った。
彼女曰く、長居しすぎたとの事。
最後の思い出にと求められて応じた結果、アイシャに追い掛け回される羽目になったのは言うまでもない。
ティスはと言うとタマという腕利きの鍛冶屋を見つけたことで念願の愛剣を手に入れたらしい。
剣に頬ずりしているサキュバスというのは中々異質だったとここに付け加えておく。
ほとんど関わりが無かったため忘れていたが、あの楓が修行のため山篭りをし始めたという噂もあった。
今度こそ実戦で役立つ神通力を身につけるのだ、と意気込んでいるらしい。
「これにて一先ず大団円!ツケも返せて街も平和になった。江戸崎の冒険者ギルドはこれからも続くだろうし、誘拐事件の黒幕もいなくなった。後は帰ってギルドの皆を安心させてやるだけだ。」
『ですね。この古銭でとりあえず黒字にもなりましたので資金の心配も無くなりました。マスターの当初の目的も達成できたようで幸いです。』
そういえば金欠で出張していたのをすっかり忘れていた。
「仔鵺と虎牙鎚が壊れてなきゃ今頃モイライのギルドに帰っているか金貨450枚+αでホクホク状態か……本当に惜しいことをしたなぁ。」
『世の中そう簡単には行かないという事です。』
「AIの癖に世間を語るなっつの。」
〜江戸崎 冒険者ギルド〜
「荷物はこんなもんかな。」
「ですね。私の方も準備は整いました。」
自室の引き払いが済み、モイライの冒険者ギルドへこれから帰る旨をしたためた手紙を通信網で送った後、プリシラと俺は茶を飲みながら一息付いていた。
「味わってみればこの緑茶も結構いけますね。」
「だろ?紅茶なんかには無い甘みがいいんだよ。」
どの道帰るのは旅の館なので、さほど焦る必要は無い……と思っていると唐突にプリシラが立ち上がった。
「さて、そろそろ時間ですし行きましょうか。」
「うん?旅の館に利用時間なんて関係あるのか?」
「いえ、帰りはのんびりと船旅でも〜と思ってチケットを用意していたんですよ。二人分。」
……二人分?
「それってもしかしなくて俺も乗るのか?」
「私一人で行かせるつもりですか?帰るのが一日二日遅れたぐらいじゃミリアさんは何も言いませんよ。だったら旅は道連れでアルテアさんも一緒に来てくださいよ。」
「そうは言うがなぁ……」
『私からも船旅を提案します。この一週間はハードスケジュールでしたからマスターは少し休養が必要です。』
二人に説得されてまで曲げないほど俺の意思は硬くない。
確かに疲れが取れないのも事実だしな。
「そういう事ならお供させてもらうか。」
「はい、それでは行きましょうか♪」
〜数時間後〜
「失礼します!アルテアさんはいますか!?」
緊迫した面持ちで宝箱からシアが飛び出してきた。
天真爛漫な彼女にしては珍しく焦りの表情を浮かべている。
「彼なら既にここを立ちましたよ。今頃は船の中ではないでしょうか。」
そんなシアに対して桔梗が冷静沈着に対応する。
この数日で彼女の接客スキルは大幅に上がっていた。
「そ、そんな……今大陸へ帰ったら大変なことになるのに……!」
「……何があったのですか?」
〜???〜
「何故……だ……!お前は……モイライの……冒険者ギルドの……!」
「………………」
男の頭を砲弾が貫通する。
脳髄をまき散らして男は息絶えた。
辺りには男の仲間と思わしき魔物や人間も倒れている。
『ミッション完遂。帰還しましょう、マスター』
「了解……」
白いコートを着た男は森の暗がりの中に姿を消していく。
彼の手には、黒光りする巨大な銃が握られていた。
〜大陸行き連絡船〜
ここは大陸へと行く連絡船の甲板の上だ。
順風満帆、船は駆けるように海上を進んでいく。
「潮風が気持ちいいですね〜。あ、カモメさん!」
「あまり身を乗り出すなよ。落ちるぞ。」
プリシラは歳相応の少女のようにはしゃいでいる。
今も甲板に設置された餌売り場からカモメの餌を買いに行って、それを放り投げて餌を与えている。
あれで二十歳越えていた筈なんだがなぁ……。
俺はというと船の縁に寄りかかってのんびりと空を見上げていた。
時折空をハーピーが通り過ぎる。
時が極めてゆったりと流れる中、自然とあくびが漏れた。
「くぁ……あむ……平和だな。」
『得難いものです。退屈だと嫌う人もいますが、骨を休めるにはこれ以上の物はありません』
「だな。戦争を生業にする俺が言うのも何だけど。」
俺は暫しそのぬるま湯のような平和の中でやすらぐ時間を過ごす。
ここの所修羅場ばかりだったのだ。このぐらいの贅沢をしてもバチは当たらないだろう。
「アルテアさん、アルテアさん!一緒にカモメにごはんをあげませんか?」
「……ま、休むばかりが骨休めの仕方じゃないよな。」
それから暫くの間、俺はプリシラと共にカモメに餌を放り投げていた。
こういう休み方もアリと言えばアリか。
そう思いながら俺は船旅を満喫するのであった。
江戸崎城を破壊後、顔を合わせて報告するために一度ギルドへと戻ると……
<ザザザザッ>
メンバー全員に物凄い勢いで引かれた。
目を合わせようとするとあっというまに目をそらされる。
「お、おい……そんなに怖がらなくてもいいだろうが……」
「いや、城一つ単身で完全破壊しておいて怖がるなって方が無理だと思うのだけれど。」
エミリアがバケモノでも見るような目で俺を見つめている。
地味に凹むぞ、これ。
「知っての通り江戸崎城は制圧……もとい完全破壊した。半蔵の死体の捜索は誰かがやってくれ。俺が頼まれたのは城の制圧だけだからな。」
半蔵の生死より気になることもあるしな。
「サフィアの具合はどうだ?見つけたときはかなり衰弱していたみたいだったんだが……」
「彼女ならこっちです。付いて来てください。」
プリシラが俺を奥へと案内する。おそらくはいつもサフィアが使っていた水槽だろう。
彼女は水槽の中で目を瞑りじっとしていた。
水槽の壁をノックしてやるとこちらに気がついたようだ。
「あ、アルテアさん……!生きてた……生きていてくれた……!」
水槽から身を乗り出してこちらに抱きつこうとするが、バランスを崩して倒れかける。
それを支えてやるとしっかりと腕を回して抱きついてきた。
「馬鹿です……なんで逃げなかったんですかぁ……」
「悪い……性分だからな。」
グズグズと泣いて俺に縋りつくサフィアの後頭部を撫でてやる。
まぁ、俺が無茶をして心配させたんだ。このぐらいはしなくちゃバチが当たるよな。
暫くするとようやくサフィアが泣き止んだ。
一旦彼女から離れようとして……失敗した。
ジャンパーを掴んで離してくれない。
「サフィア?」
「っ!」
強い力で水槽の中に引き込まれる。
衝撃で鵺が床に落ちて鈍い音を立てた。
「お、おい……」
「すみません……でも……」
顔を伏せて頬を染めて……
嫌な予感が……
「ずっとネックレスが外せなくて……魔力がなくなっちゃって……魔力補充の方法は分かるので……その……」
つまりアレか。しろってか。
『スリープモードに入ります。』
「あ〜……私は邪魔になるみたいなので向こうに行っていますね?終わったらロビーに来て下さい。」
ラプラスは早々に見なかった事に、プリシラは空気を読んでどこかに行ってしまった。
やれやれ……空気が読めるのはいいが露骨過ぎるのは問題だ。
サフィアとキスを交わし、彼女の体を後ろから抱きしめる。
昨日の事でも分かったが、彼女はどうもキスをされるのが好きみたいだ。
キス魔ではないがされると嬉しい、というレベルだろう。
「ん……はぁ……はむ……」
唇が触れる所が淡い光を放つ。多分これが補給方法とやらの一端なのだろう。
情熱的にキスを交わすたびに彼女の体温が上がっていく。水の中なのに彼女の体は燃えるように熱かった。
「触って……触ってくださぁい……切ないですよぉ……」
リクエスト通りに胸をまさぐり、秘部に手を這わせる。
柔らかいバストに指が沈みこみ、ぬかるんだ秘部は水ではないぬめりに覆われていた。
「キスだけでこれだけ興奮したのか。」
「そうなんです……嬉しくて、嬉しいと思ったら体が勝手に……」
刺激が弱いのかもどかしげに腰をくねらすサフィア。
このまま刺激を強めてあげてもいいが、ふとしたいたずら心が。
「強くして欲しいか?」
「はぃ……もっといっぱいしてください……」
「それならもっとはっきりとおねだりしてくれないか?」
その一言に彼女の顔が一気に赤くなる。
「あの、おねだりって言うのは……」
「自分で考えた事を言ってみてくれ。」
余程恥ずかしいのか口をもごもごと動かすだけで声が聞き取れない。
このままでは埒があかないので秘部を弱く刺激し続ける。
クリトリスには触れぬよう、外唇のみだ。
「あぅ……ぅん……いじわるです……」
「意地悪されて困っているサフィアが可愛いからな。」
そう言うとますます顔を赤くして俯いてしまった。
あぁ、もう。かわいいなぁこいつは!
「……さい」
「ん?」
それでも炙られるような快感に耐えられなくなったのか彼女が口を開く。
「私の、お、お○んこ……もっといじってくださぃ……」
言い切ると額を俺の胸板に押し付けて顔が見えないようにしてしまった。
「あぁ……言っちゃいました……はしたない……ですぅ……」
精一杯のおねだりに思わず笑がこぼれてしまう。
あぁ、もう。かわ(ry
「よく言えたな。ご褒美だ。」
膣口に指を入れて抜き差ししながらクリトリスを優しく撫で回す。
それだけで彼女はビクビクと全身を震わせた。
「んはぁっ!や、やぁぁ……いい、いいです……」
可愛らしく口を半開きにして喘ぐ彼女。
口の端から一筋ヨダレが垂れていく。
「かわいいぞ、サフィア。」
「んや!?ふぁぁぁぁああああん!?♪」
不意打ち気味の囁きで一気に高まってしまったのか彼女の全身がビクビクと震える。
体中の力が抜けて俺の方へと体を預けてくる。
「はっ……はっ……ずるいですよぉ……♪」
「んなこと言ったってなぁ……」
彼女には何故かいい声で啼かせたくなるようなオーラが漂っているのだ。
その鈴の音のような声で嬌声をあげると高ぶってしまうというか……
「いい反応を返してくるサフィアが悪いんだぞ?」
「そ、そん……んぁ……お豆こりこりしないでぇ……」
反論させないように責めは継続する。
やんわりと嫌がりながらも彼女の顔は法悦にほころび、秘裂からは止めどなく愛液が溢れてくる。
嫌よ嫌よもなんとやら……って奴か?
「あ、あの……もう準備は出来てますから……その……」
「あ、あぁ、そうだな。楽しくてついつい弄り過ぎた。」
もぅ、と呆れながらもこちらに向き直って抱きついてくるサフィア。
ズボンの留め具を外してトランクスの中から俺のモノを取り出す。
「入れますよ……んっ……」
俺が支えたモノにゆっくりと腰を沈めてくる彼女。
だんだんと飲み込まれていき、根元まで入って彼女の奥へと当たった。
「はぁ……アルテアさんので一杯です……」
「ん……サフィアの中、気持ちいいぞ。」
ヒクヒクと震えるモノに合わせて彼女の膣が絞めつけてくる。
確かに動かさないでも具合がいいのだが、何時までもこのままという訳には行くまい。
「動かすぞ。」
「はい……来て下さい……」
彼女の体を支えて腰を突き上げる。水中なので体重による負荷はあまり気にしなくても良い。
あまり音が聞こえないというのは少し寂しい気もするが、そこは彼女の甘い声が耳元で聞こえてくるので問題は無い。
「あ、んぅ、んっ!ある、アルテア、さん!もっと、もっと突き上げてくださいぃ!」
「っ!あぁ、気が済むまで感じて……くれ!」
要望通り突き上げるスピードを上げる。といっても水中なので出せるスピードにも限界はあるが。
「ぁ、つよ、ん!おくに、コンコンって……ぁん」
「っ!さふぃあ、さふぃあぁ……!」
体位の関係上どうしても彼女の胸に顔を埋める形になってしまう。
彼女の甘い匂いがどこに顔を向けていても香ってきて頭の芯が熱くなっていく。
「も、出る!イきそうだ……!」
「いいですよ……ッ!イって……中に……一杯ください……!」
熱に浮かされるように彼女に腰を叩きつける。
彼女は俺の肩に顎を乗せて俺にしがみついている。
中に下さいって言っていたし引き抜く気は無いのだろうなぁ……
「っ……く……!ぁ……!」
「っは……ぁ……中で……ビクビクって……」
全身が快楽に震えて彼女の中に精を解き放つ。甘い恍惚感がクセになりそうだ……。
彼女の体全体がうす青く光り、やがて収まった。
「ふぅ……補給はできたか?」
「一応は……」
しかし、彼女は俺を離そうとしない。
「おい、サフィア?」
「え、えと……もう一回したいな〜……なんて思ったり……ダメ、ですか?」
そのはにかみながら上目遣いはやめてください。死んでしまいます。(理性的な意味で)
結局、もう一ラウンドすることになった。
「服がずぶ濡れだな……」
「あぅ……すみません……」
水槽の中に入っていたので当然全身ずぶ濡れだ。
今の季節が夏で良かった。
「服を着替えてくるわ。まだ体が本調子じゃなかったら休んでいるといい。」
「大丈夫です。一杯元気をもらいましたから……」
お腹撫でないでー!
宿舎に戻って予備の服に着替えてからギルドのロビーへと戻る。
妙に周囲の目線が生暖かい。
「……何だよ。」
「先程はお楽しみでしたね♪」
ティスがニヤニヤしながらこちらを見ている。やれやれ……冷やかす奴しかいねぇのかここは。
「そうねぇ……お楽しみだったわねぇ……」
いや、絶対零度の視線で見てくる奴が一人いた。
「ねぇ、手足を撃ち抜かれながらじわじわと嬲られるのと頭を撃ちぬいて一撃とどっちがいい?」
「ど、どっちも遠慮したいなぁ……ははは……」
アイシャが弓に矢をつがえながら殺気を放ってくる。
あれは本気(マジ)の目だ……!
『どうせならば○○○を撃ちぬいてみては如何でしょうか。これ以上盛らないように。』
「いいわね、それ。四肢ももげば完璧かしら。」
「お前物騒過ぎだろ!てかラプラス、お前も煽るな!」
俺らがギャーギャーと言い争っていると不意にズボンが何かに引っ張られる感触がする。
下を見るとタマが俺のズボンの裾を引っ張っていた。
「どうした、タマ。」
「仔鵺と虎牙鎚はどうしたのさ。」
「あぁ、それならホルスターに……」
腰のホルスターから仔鵺と虎牙鎚を引き抜く……
「…………」
「……………………(滝汗)」
仔鵺も虎牙鎚も、途中から先が無くなっていた。
「そういえば……両断されていたんだっけか……」
「……アルテア……?」
声に感情が無いタマ。彼女の目のハイライトが消えて死んだ魚の如き目が俺を凝視している。
あぁ、死んだ。
「仔鵺と虎牙鎚、しめて金貨450枚ね。」
経済的に。
〜一週間後〜
「っ……くっ……はぁ……はぁ……み、見つけたぞ!」
ジパングのとある山中。姫様にもらった古地図を頼りに穴を掘る。
穴の中からは壺が出てきて、中には古銭が入っていた。
「これでいくらだ!?」
『現在価値で金貨30枚と言ったところでしょうか。』
俺はその場にどうと倒れる。
「っはは……ざまぁみやがれ……金貨450枚分……稼ぎきってやったぞ……」
『お疲れさまでした。これでようやく帰れますね。』
タマから膨大な量の金貨を請求されてから今日で一週間。今までに様々なクエストを受けた。
「内紛地帯の単身制圧……わがまま姫の宝探し……奇声を上げて暴れまわるウシオニの鎮圧……旅行しに来て魔力が暴走したエキドナの無力化……伝説の妖刀探索……Sクラスの依頼ばっか……」
おかげで弾薬、精神、体力、時間、様々な物を消費してしまった。
「しかし……これで心残りは無くなったな。」
『そうですね。ジパングの地でやるべき事はもうほとんど無いでしょう。』
あの江戸崎城崩壊で、色々なものが変わった。
事件の首謀者である佐間半蔵は城の残骸の中でほぼミンチになった状態で発見された。
一緒に落ちていた銀のロザリオがシーフギルドの報告にあった物と一致し、皮肉にも彼の身元特定に繋がったようだ。
俺が破壊した江戸崎城は「もうあんな危険な所に住めん!」との栄之助氏の娘……つまり先程の姫様の一言で特にお咎めは無かった。
今現在も江戸崎城はジャイアントアントの助けを借りながら再建中だ。
そしてその事件での一番の功労者……つまり、冒険者ギルドは再評価されることとなり、冒険者を目指す浪人や侍が増えた。これで人手不足に悩まされることは無いだろう。
同じく、その事件で暴れまわった俺が使っていた武器を見て、タマの工房へ武器制作の依頼が数多く舞い込んでくる事になった。今も嬉しい悲鳴をあげていることだろう。
……そんなに儲かっているなら少しぐらい割引してくれてもいいだろうに。
変わったと言えば瑠璃も劇的に変わってしまった。
なんというか「物凄く大人しくなった」のだ。
俺に対して丁寧に話す彼女は見ているこちらが気味悪くなるぐらいだ。
どうにも彼女は母親に人には言えないような事をされたらしい。
その時の事を訊こうとすると必ず真っ青になってガタガタと震え始めるのだ。
そういえば彼女は江戸崎の冒険者ギルドのギルドマスターの娘だそうだ。
どうりであんな態度でも辞めさせられない訳である。
そして江戸崎の冒険者ギルドに新たな顔が加わった。
あの辰之助である。
江戸崎城攻略戦の際に嫁さんを連れて街中を逃げ回っていたそうだが、その際にガーディアン相手に大立ち回りをして妖怪達を守っていた俺を見て入る決意をしたらしい。
「自分は家内を守るだけで精一杯だった。自分の未熟さを恥じ、貴殿のように様々な者を護れるぐらいに腕を磨き、見聞を広めたい」
というのは彼の談。
事件の翌日、新たなギルド通信網用の宝箱が冒険者ギルドに届き、それを使ってミリアさんに江戸崎支部の人手不足が解消した事と、大きなツケができたので暫く帰れなくなった事を伝えた。
ミリアさんは了承してくれたが、アニスちゃんが寂しがっているという「早く帰ってこい」的な返事を返してきた。
そういや帰ってきたら驚くようなニュースがあるとか言っていたな。一体なんだろう。
風の噂では冒険者養成施設に桔梗の姿を見たという話があった。
おそらく、俺を追いかけるために本格的に鍛錬を始めたのだろう。
彼女ならば、俺に追いつくぐらいはすぐにやってのけそうだ。
ギルドのメンバーが増え、人手不足が解消した事によりクエスト解決のスペシャルチームは解散。
各々自分が所属するギルドへと帰っていった。
尤も、アイシャは最後の最後まで帰るのを渋っていたが。
サフィアは少し前に江戸崎を去った。
彼女曰く、長居しすぎたとの事。
最後の思い出にと求められて応じた結果、アイシャに追い掛け回される羽目になったのは言うまでもない。
ティスはと言うとタマという腕利きの鍛冶屋を見つけたことで念願の愛剣を手に入れたらしい。
剣に頬ずりしているサキュバスというのは中々異質だったとここに付け加えておく。
ほとんど関わりが無かったため忘れていたが、あの楓が修行のため山篭りをし始めたという噂もあった。
今度こそ実戦で役立つ神通力を身につけるのだ、と意気込んでいるらしい。
「これにて一先ず大団円!ツケも返せて街も平和になった。江戸崎の冒険者ギルドはこれからも続くだろうし、誘拐事件の黒幕もいなくなった。後は帰ってギルドの皆を安心させてやるだけだ。」
『ですね。この古銭でとりあえず黒字にもなりましたので資金の心配も無くなりました。マスターの当初の目的も達成できたようで幸いです。』
そういえば金欠で出張していたのをすっかり忘れていた。
「仔鵺と虎牙鎚が壊れてなきゃ今頃モイライのギルドに帰っているか金貨450枚+αでホクホク状態か……本当に惜しいことをしたなぁ。」
『世の中そう簡単には行かないという事です。』
「AIの癖に世間を語るなっつの。」
〜江戸崎 冒険者ギルド〜
「荷物はこんなもんかな。」
「ですね。私の方も準備は整いました。」
自室の引き払いが済み、モイライの冒険者ギルドへこれから帰る旨をしたためた手紙を通信網で送った後、プリシラと俺は茶を飲みながら一息付いていた。
「味わってみればこの緑茶も結構いけますね。」
「だろ?紅茶なんかには無い甘みがいいんだよ。」
どの道帰るのは旅の館なので、さほど焦る必要は無い……と思っていると唐突にプリシラが立ち上がった。
「さて、そろそろ時間ですし行きましょうか。」
「うん?旅の館に利用時間なんて関係あるのか?」
「いえ、帰りはのんびりと船旅でも〜と思ってチケットを用意していたんですよ。二人分。」
……二人分?
「それってもしかしなくて俺も乗るのか?」
「私一人で行かせるつもりですか?帰るのが一日二日遅れたぐらいじゃミリアさんは何も言いませんよ。だったら旅は道連れでアルテアさんも一緒に来てくださいよ。」
「そうは言うがなぁ……」
『私からも船旅を提案します。この一週間はハードスケジュールでしたからマスターは少し休養が必要です。』
二人に説得されてまで曲げないほど俺の意思は硬くない。
確かに疲れが取れないのも事実だしな。
「そういう事ならお供させてもらうか。」
「はい、それでは行きましょうか♪」
〜数時間後〜
「失礼します!アルテアさんはいますか!?」
緊迫した面持ちで宝箱からシアが飛び出してきた。
天真爛漫な彼女にしては珍しく焦りの表情を浮かべている。
「彼なら既にここを立ちましたよ。今頃は船の中ではないでしょうか。」
そんなシアに対して桔梗が冷静沈着に対応する。
この数日で彼女の接客スキルは大幅に上がっていた。
「そ、そんな……今大陸へ帰ったら大変なことになるのに……!」
「……何があったのですか?」
〜???〜
「何故……だ……!お前は……モイライの……冒険者ギルドの……!」
「………………」
男の頭を砲弾が貫通する。
脳髄をまき散らして男は息絶えた。
辺りには男の仲間と思わしき魔物や人間も倒れている。
『ミッション完遂。帰還しましょう、マスター』
「了解……」
白いコートを着た男は森の暗がりの中に姿を消していく。
彼の手には、黒光りする巨大な銃が握られていた。
〜大陸行き連絡船〜
ここは大陸へと行く連絡船の甲板の上だ。
順風満帆、船は駆けるように海上を進んでいく。
「潮風が気持ちいいですね〜。あ、カモメさん!」
「あまり身を乗り出すなよ。落ちるぞ。」
プリシラは歳相応の少女のようにはしゃいでいる。
今も甲板に設置された餌売り場からカモメの餌を買いに行って、それを放り投げて餌を与えている。
あれで二十歳越えていた筈なんだがなぁ……。
俺はというと船の縁に寄りかかってのんびりと空を見上げていた。
時折空をハーピーが通り過ぎる。
時が極めてゆったりと流れる中、自然とあくびが漏れた。
「くぁ……あむ……平和だな。」
『得難いものです。退屈だと嫌う人もいますが、骨を休めるにはこれ以上の物はありません』
「だな。戦争を生業にする俺が言うのも何だけど。」
俺は暫しそのぬるま湯のような平和の中でやすらぐ時間を過ごす。
ここの所修羅場ばかりだったのだ。このぐらいの贅沢をしてもバチは当たらないだろう。
「アルテアさん、アルテアさん!一緒にカモメにごはんをあげませんか?」
「……ま、休むばかりが骨休めの仕方じゃないよな。」
それから暫くの間、俺はプリシラと共にカモメに餌を放り投げていた。
こういう休み方もアリと言えばアリか。
そう思いながら俺は船旅を満喫するのであった。
12/01/16 21:07更新 / テラー
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