第三十話〜ぶらり漫遊ふたり旅〜
〜???〜
俺がベースの食堂で訓練後の朝食を摂っていると、おやっさんがニヤニヤと後ろ手で何かを隠しながらこちらへ近づいてきた。
「よう、ボウズ。相変わらずマズい飯食ってるか?」
「聞くだけ野暮ってもんだろ、おやっさん。この世の中にソイレント・グリーン(合成野戦食)よりマズい飯なんてそうそうないぜ?」
そうかそうかと頷きながら、おやっさんが俺の隣にドッカと腰を下ろした。
そして後ろでに持っていた何かを食堂のテーブルに置く。
それは……
「缶詰?……なんて読むんです?」
日本語で書かれているそれには鯖の味噌煮と書いてあった。
缶詰にされているからには食べ物なのだろうが……
「サバの味噌煮(みそに)だ。この間闇市をブラついていた時に偶然見つけてな。少々値は張ったが……缶詰とはいえモノホンの和食が食えるんだ。今から楽しみすぎて腹がなって仕方ねぇぜ。」
そう言いながらおやっさんが缶詰を開けて箸で中身をつまみ出す。
薄茶色のドロドロに塗れた青魚……らしきもの?(今現在は本物の魚などそうそう獲れる物ではないのでおそらく合成品)だった。
それを期待に震える手で口の中へ運ぶ。
運んだとたん、おやっさんが固まった。
「……どうしたんです?」
「いいから食ってみろ。」
差し出された缶詰の中身にフォークを突き立てて一欠片を口に運ぶ。
「う”………………」
うす甘いような、微妙なしょっぱさのようなドロドロが口の中に広がり、その妙な甘さが口の中にこびりつく。
合成品であろう魚はゴムみたいな食感で、噛んでも噛んでも噛み切れず、しかも噛むたびに石油のような匂いがした。
要するに……
「なんなんスかこのクソマズイ石油製品の塊は……」
「こんな筈じゃねぇんだ……本物の鯖味噌ってのはもっとこう……」
そう夢見るような表情で天井を見上げたおやっさんは、ふと何かに気づいたらしくポンと手を鳴らした。
「よし、アルテア、着いて来い!没入するぞ!」
「没入て……どこへ行くつもりですか?」
何も言わずに食堂を飛び出していくおやっさんについて行くと、そこはコンソールルーム(有線で没入する際に使用する操作盤付きの椅子が置いてある部屋)だった。
「没入したらここへ飛べ。天国を見せてやるよ。」
おやっさんがどこかのアドレスを送りつけてきた。ここは……
「アノニマスシティ(無名都市)……?」
俺が何か言う前におやっさんはコンソールに座って没入してしまった。
仕方無しに俺も没入する事にする。
<DIVE>
おやっさんに連れられて来たのは仮想空間の中にある家庭料理屋だった。
仮想空間と言ってもここは無名都市、リミッターなんて付いていないから感覚はリアルのそれと変わらない。
つまりここでは現実の味を寸分の狂いもなく再現できるということだ。
ある意味ではこれほど料理屋に適した環境もないだろう。
俺はそこで衝撃の出会いをする事になる。
―鯖の味噌煮―
そう、あの缶詰のまがい物など歯牙にも掛けない。
芳醇な甘み、そして味噌の風味、油の乗った鯖。
なぜ自分が日本人に生まれなかったのだろうと思えるぐらいにその魚料理は俺を圧倒した。
おやっさんに指摘されるまで涙を流していたことにも気付かなかったくらいだ。
俺は生涯、この味を忘れることは無いだろう。
その後、副業(運送業)をサボった事に対しておやっさんと一緒に姉さんに説教を食らっていたのは言うまでもない。
〜冒険者ギルド ロビー〜
「う〜む……。」
俺は今非常に悩んでいる。
なんと財布の中から出てきた物は風邪の時舐めていた飴玉の包み紙1枚きりだったからだ。
「風邪が長引いたからすっかり金欠だな……。」
『出費の原因は風邪だけではないでしょう。』
その通り。ティスの服やらアニスちゃんのパフェやらで結構な出費をした挙句、風邪で4日ほど寝こんでしまったのだ。
補助金込みでも治療費や動けない間の食費やらでサイフはすっからかんになっていた。
「肩慣らしに簡単なクエストをいくつか受けて生活費を稼ぐかな。」
「ところが、そうも行かないのよね。」
さぁ行くぞと立ち上がった所で、ミリアさんが話しかけてくる。
「アレ絡みの情報が来ているわ。被害はまだ殆ど出ていないけれど放置すれば必ず死者は出るでしょうね……。それに、今回は被害だけじゃないわ。」
「どういう事です?」
いつもののほほんと人を喰ったような口調ではなく、真剣な表情で告げる。
「出た怪物が大きすぎるのよ。その体を隠せないほどにね。もし、教会なんかに見つかって……無理でしょうけど捕まったりしたら大変なことになる。」
例のプロパガンダに利用されるのと、エクセルシアの悪用か。
『E-クリーチャーの体長は元になる生物が元々巨大だったり、強力な筋力などを持っていたりすると巨大化する傾向があります。ちなみに現世界で確認されている最大級のE-クリーチャーは全長5km。寄生前はシロナガスクジラでした。』
デカすぎだろ。
「単独で行くのは危険でしょうから誰かを連れて行きなさい。絶対に死んだりしちゃだめよ。」
「わかってますって。俺だってまだ死にたかないですから。」
〜クエスト開始〜
―山岳の霧に潜む巨人―
『ベルン山岳の頂上付近に巨大な人影を見たという情報が入ったわ。今のところ地元では山の神が怒ったとか言われて誰も近づいてはいないけど……噂を嗅ぎつけて教会が介入して来ないとも限らないわ。余計な犠牲を出さないためにも早急に調査、例のアレだった場合は速やかに無力化してちょうだい。__________________________________
________________モイライ冒険者ギルド支部 支部長 ミリア=フレンブルク』
「とは言ったものの……誰を連れて行ったものか……。」
「相手は凄く大きいんですよね?でしたら力自慢の人を連れていけばいいんじゃないんですか?」
軽く言ってくれる。
「相手は何もかもが規格外だ。中途半端な力自慢を連れて行っても足手まといになるだけだろうな。」
「でしたら、彼女なんてどうです?」
受付嬢はロビー隅の箱に座っているちっこい奴を指し示す。
そいつは手持ち無沙汰に短い足をぶらぶらと振っていた。
「……メイか。」
確かにアイツの力は半端ではない。
機動性はともかく、パワー目的で連れていくのであれば間違いはないだろう。
「体重は軽いが……そうだな、いいかもしれん。」
俺はメイへ歩み寄っていく。
俺の気配に気づいたのか、いつものにへら笑いでこちらへ駆け寄ってきた。
「メイ、俺はこれから仕事で山まで行くんだが、着いて来る気はあるか?」
「おでかけ〜?」
表情も言動もぽわぽわしている……。
声をかけたのは失敗だっただろうか。
「いく〜♪」
「そ、そうか。それじゃあ支度は……大丈夫か?」
そう言えばこいつらが荷物らしい荷物を持っているのを見たことがない。
「だいじょうぶ〜。」
彼女は箱の蓋を開けると、中からバックパックを取り出す。
「それ、お前の私物入れだったのか……。」
「うん〜。」
いつの間にか増えたから一体誰が置いたのかと思ったらこいつだったのか。
俺はギルドの出口へ向かう途中、気になったことを受付に聞く。
「今回旅の館は使えるのか?」
「ギルドに登録しているのがアルテアさんだけですのでお連れさんは使えませんねぇ……。」
お前それがわかってて同行を提案したのかよ。
「今回も馬車を使ってください。」
「行程は?」
「3日ほどです。」
「結構長いな……。まぁ行ってくるよ。」
おれは改めてギルドの外へ向かおうとすると……。
「あの、アルテアさんの馬車代はギルドが負担するからいいんですが、メイちゃんの分までは出ませんしその間の諸費はどうするんですか?」
情けないとわかっていながらも、俺はアニスちゃんに借金する事になった。
〜ドラケン街道 シルヴァリアへの道〜
3日間を掛けていくつかの街で乗り継ぎ、ベルン山の近くのアタゴニアという街まで行く事になる。
馬車代はギルドが出してくれるとはいえ、途中の食事や宿代は流石に自費である。
借金を理由に結婚迫られたりしないよな……?
『電車や飛行機のない世界は不便ですね。』
「流石にここまで長い馬車旅は初めてだな。まぁ、馬車に揺られても眠れない理由はまた別にあるんだが……。」
「すぅ……。」
メイが俺の腕に抱きついて寝ている。当然俺の腕にはずっしりと柔らかいものが当たっている。
「これ、揉んだら絶対起きるよな。」
『ホブゴブリンの胸部の感覚は鋭敏ですから。』
この間と同じく、乗合の馬車だというのに同乗者が誰もいない。しかも今回は……。
「(御者の耳が聴こえないみたいなんだよな……。)」
この馬車に乗る前に、御者から筆談で耳が聞こえず、喋ることもできない旨を伝えられた。
別段耳が聞こえない程度で蔑視するほど俺は偏見に囚われている訳ではない。
「……。」
しかし、そうなるとこの馬車の中は半密室状態になるわけで……。
『スリープモードに入りますか?』
「お前変な気の使い方するなよ!」
無駄な空気の読み方をする相方に思わずツッコミを入れる。
「ん〜……?」
その音でメイが起きてしまった。
慌てて頭を撫でて寝かしつける。
「あぁ、スマン。まだ寝ていていいぞ。」
「……〜♪」
彼女は俺の腕に額を擦りつけると、また夢の中へと旅立っていった。
『寝ていたほうが都合が』
「やかましい。」
<ブツ>
アホな煽りをしまくるラプラスを強制的に落とす。
「まったく……」
俺は眠っているメイの頭を撫でてやる。平常心平常心。
<ぐにゅ>
平常心……平常心……。
<むにゅう>
へいじょ……おっぱ……へい……。
<ぽよん>
「〜〜〜〜〜〜!」
声にならない苦悶の声を上げて頭を押さえる俺。正直……我慢の限界です。
そんな気配を察してか、彼女がまた起きてしまう。
「あに〜……?」
「大丈夫だ、うん。何でもないから。」
彼女は暫く首をかしげていたが、何か合点がいったと言った風に頷く。
「どうした?」
彼女は俺の膝の上に向かい合うように座ると、胸を覆っている皮の胸当てをずり下げた。
戒めを解かれた二つの肉果がふるふると揺れている。
「ってじっくり観察している場合じゃないだろ。ほらほら、はしたないから早くしまいなさい。」
俺がずり下ろされた胸当てを元に戻そうとすると、手を掴まれて胸に押し当てられる。
あぁ、柔らかくて気持ちいい、ではなくて。
「一体何のつもりだい?兄に話してごらん。」
もう自分が誰かの兄替わりになることに抵抗を覚えないことに戦慄しつつ、訊いてみる。
「ミーアがこうしているのみた〜。」
「ミーアって……ミリアさん?」
「うん〜」
のんびりと頷くメイ。幼い子が何かを真似するのってよくあるよね〜。
「それは本当に大好きな人にしてもらいなさい。ね?」
「わかった〜♪」
「そうか、分かってくれたか……っておいぃ!?」
そう言うと彼女はさらに俺の手を押し付けてくる。振りほどこうとしても腕力が違いすぎる。
「あに〜……ん……だいすき〜……♪」
「大好きて……俺とお前ってそんなに接点あったっけ……。」
押し付けている手で刺激されて気持ちがいいのか、彼女の頬が上気して、息が荒くなり始める。
「あに〜、さわって……さわってぇ……。」
ふにふにと押し付けられる胸。幼くても色気づいた表情。媚びるような声色。
あぁ、理性の壁にビシビシとヒビが……。
「触る……だけだからな?それ以上はしないからな?」
俺は二つの膨らみに手を這わせて揉みしだく。
よほど敏感なのか、それだけで彼女はビクビクと全身を震わせる。
「んぁぁぁあああ!あにぃ、あにぃ!」
乳首も指の間で挟んでクニクニとすり潰す。あまりの快感に耐えられないらしく、あいた口が塞がらずに唾液を零している。
蕩けた瞳で俺の目を見つめてくるメイ。その目線が下へ降りていき……。
「あにぃ、これなぁに?」
突っ張ってしまった俺のズボン……の股間部分を指す。
「生理現象……だ。」
もう、諦めてしまおうか。でも最後の一線でロリコンではなく、ロリも好きということにしておきたい。……しておきたい……っ!
「別に放っておけば治る……っておい、まさか……。」
彼女は膝から降りると、ズボンのチャックを開けようと悪戦苦闘し始めた。本能的にこれが何かをわかっているのだろうか。
「あにぃ……これちょうだい……」
NOと言ってもやり続けるんだろうなぁ、これは。
仕方無しにズボンのチャックを開けてモノを取り出してやる。
理性?そんなもんドブに捨てたよハッハッハ。
「ぉ〜……」
見慣れない物を見てびっくりしているのだろうか。先をつんつんとつついている。
「それを、手で擦ったり舐めたりするんだ。できるか?」
そう言うと、彼女は座席の間に降りておずおずとモノを握りしめて来た。
「力を入れすぎないようにな。痛いから。」
本当は引きちぎられるぐらいに力があるのだが、それを指摘したら現実になりそうなので伏せておく。
「こう〜?」
彼女が恐る恐る手を上下に動かし始める。
技巧も何もあったものじゃないのは仕方がない。
「もう少し強くても大丈夫だ。余裕があったらその先の方も舐めてみてくれ。」
「あい〜……えろ……はむ、ちゅう……」
ゆっくりと、さほど強くもない鈍い快感が伝わってくる。
もどかしいが、嫌いじゃない。
いろいろ開発されているなぁ……俺。
「焦って早くする必要はないからな。ゆっくりでも十分気持ちがいいから。」
「むぅ、ん、ちゅう……くぷ、じゅる、はぷ」
じわじわと炙られるように高められていく官能。
しかも相手は中身も外見も10以上年下である。
「(色んな意味でギリギリだぁ!)」
認識した途端に迫り来る射精感。この場合どうしたものか……。
「タオル、タオル……。」
隣に置いてあったバックパックからタオルを取り出そうとすると、
「じゅううううううううう!」
「!?ちょ、メイ、やめ!」
バキュームなんて何処で覚えてくるんですかこの子は!
「あぐ、ぁぁぁぁぁ……」
焦らしに焦らされてからの吸引で、俺は抵抗する間もなく射精してしまった。
「ぶふ……んぐ……んく……。けほ」
射精を受け止めるには口が小さすぎたらしく、少し漏れてしまったようだ。
それでも零れた分を舐めとっていく。小さな舌と大きな胸に白い物が絡み付いている……。
「っ!」
それを見ただけでまた活力が戻ってきた。やめて!俺の精神ポイントはもう0だ!
「あにぃ、もっとするぅ……」
そう言うと、彼女は自分の胸で俺のモノを挟みこんでくる。
「だからお前はどこでこういう事を覚えてくるんだ?」
「ミーアがやってた〜。」
今度あの人には部屋の戸締りを徹底させよう。
彼女の唾液と俺の精液で、潤滑は十分。彼女はもたつきながらも胸を押さえて上下に動かしてきた。
「はぁ……あにぃ、これ、これぇ……」
「っ……コレは……ヤバ……!」
快感自体は大したことはない。
「はふ……ん、あ、あ」
しかし、小さい子に奉仕をさせているという背徳感と、不釣合に巨大な胸で挟まれているというのに加え、蕩けるように甘い声を出しながら自分のモノで気持ちよくなっているという四重奏は相当来るものがあった。
「ぐ……ぅ……!」
あまりに呆気無く出してしまうのは情けなかったのでどうにか我慢するが……。
「あにぃ、だして、だしてぇ……!」
こんな声で懇願されて我慢ができるほど俺の息子は我慢強くなかった。
「で、出るぞ、ぐ、ぁぁぁあああ!」
ダクダクと吹き出す白濁に、彼女は真っ白に染まる。
顔に、胸に、手に、白い謎物体が絡みついて非常にいやらしい。
「でたぁ……あにぃのしろいの……」
それを指ですくってぺろぺろと舐めている。
本能だろう、本能だと思う、本能だと言ってください三段活用!
ていうか見せないでまた立っちゃう!
俺は慌てて目を逸らし、深呼吸。以前は戦場を思い浮かべて失敗した。ならば別のことを考えるまで!
「(俺は今、勃起したナニをギロチンにかけられている。あのロウソクがロープの所まで溶けて焼き切られればギロチンは落下!俺は一生竿なしに……)」
情景を想像し、息子に幻痛走る。
「うぉぉぉぉおおおおお……」
オーケー。一気に萎えた。
「あに〜?」
「大丈夫だ、大丈夫。ちゃんと付いているから」
「?」
分からなくてもいいのです。
〜御者台〜
「(物凄く気まずいぞ……これは。)」
実はこの男、耳が聴こえないというのは全くの嘘で、シーフギルドのメンバーが情報収集のために耳が聴こえないフリをして御者をしているのだ。
公には明かされていないが、世界中の至る所でこうしたシーフギルドの目が光っている。
それゆえにシーフに知らない事はないなどと裏では言われている。
「(この状態で俺はどうしろって言うんだよぉ……!)」
しかしこの場合、耳が聴こえないフリをしたのが仇となったようだが。
〜大地の交差点 シルヴァリア〜
乗合馬車は中継点の街へと到着した。辺りはもう夕暮れ近い。
俺は御者に運賃を払うと、宿を探すためにメイと共に歩き出す。
「結構人通りが多いな。モイライといい勝負だ。」
『ここは大地の交差点とも言われていますから。人が集まる場所には自然と大きな街ができるということです。』
俺はメイとはぐれないようにぎゅっと手を握る。
「メイ、はぐれるなよ。お前を見失ったら後が大変だ。」
「あ〜、何か勘違いしているようだけどあたしゃメイとかっていう嬢ちゃんじゃないよ?」
手を繋いだ先を見ると……。
「うわ!メイの角がなくなってちんちくりんになってやがる!」
「だから人違いだって言ってるだろ!?よく見ろ!」
妙にちびっこくなっていると思ったらドワーフだった。
「あに〜!」
ズゴゴゴとか音を立てながら何かを引きずってメイがこちらへ駆けてくる。
「連れが見つかったみたいだね。それじゃあたしゃ行くよ。」
「あぁ、すまなかったな。」
「いいって。連れを大事にしてやりなよ?」
そう言うとドワーフは去っていった。ちっこいのに格好いいなぁ、あいつ。
メイの引きずっているものは、巨大な棍棒だった。そういやこいつの棍棒は俺が真っ二つにしちまったんだっけ。
「あたらしいのつくってきた〜」
「作ってきたのはいいがまだ馬車に乗るんだから意味ないぞ?そんな重い物乗せたら別料金取られるだろうし。」
がっくりと肩を落とすメイ。まぁ、仕方がないよな。
「う〜……。すててくる……」
「はぐれたら危ないから俺も行こう。街から少し出たところでいいよな。」
しかし、警備兵に見つかってもっと遠くへ捨ててこいということになり、結局町外れの森の中まで捨てに行くことに。当然日が暮れて辺りは真っ暗に。
「今更戻っても宿は無いだろうな……。戻ったら飯だけ食ってどこかで野宿するか。」
「のじゅく〜のじゅく〜♪」
コイツは今の状況が解っているのだろうか。
〜食事処『万国旗』〜
「和食だ……和食がある……。」
入った食事処にジパングの料理が置いてあった。
『どうやら多国籍料理の店のようですね。モイライクラスの交易ポイントだけあって様々な食材が手に入るのでしょう。』
ラプラスが何かうんちくを垂れていたが、もう耳に入らない。
「大将!この鯖味噌定食を!ライス大盛りで!」
「あいよ!嬢ちゃんは何にするんだい?」
メイはメニューを見ながら首をかしげている。
「よめない〜。」
そっちかい。
「肉がいいか?魚がいいか?」
「おにく〜。」
俺はメニューにざっと目を走らせ、調度よさそうな物を見つける。
「じゃあコイツには豚の生姜焼き定食で。」
「まいど!ちょっくら待っていてくれや。」
ヤバい、ワクワクが止まらない。
おやっさんと食べた和風の合成食料と仮想空間での味を思い出す。
おそらく味はそれ以上だろう。しかも本物の魚である。
「あにぃ、たのしそう。」
「あぁ、正直テンションMAXだ。今なら魔王でも倒せそうな気がする。」
後ろのテーブルで黒っぽい女の人が水を吹き出したが、それすら気にならない。
「へいお待ち!」
大将がお盆を二つ持ってくる。乗せてあるのは甘辛い匂いが食欲をそそる豚の生姜焼き定食と、味噌で煮込んだ薫り高い鯖の味噌煮定食だ。
「いただきます!」
「ます〜♪」
鯖を箸で一欠片取って、ご飯と共に口の中に放り込む。
味噌の甘辛い味と脂の乗った鯖の味が口の中に広がり、ご飯でその味がまろやかになりハーモニーを……。あぁ、面倒くさい!ウメェ!マジウメェ!
「ぉぉぉおおお……鯖だ。本物の鯖だ……。」
「あにぃ、なんでないてるの?」
俺は鯖を一欠片切り取ってメイの口先へ持っていく。彼女はそれをパクリ。
「うん、おいしいね〜……でもなんでないているの?」
そう言えばこの世界の人は普通にこういうもん食っているんでしたね。
「モイライの食事も美味しかったけどさ……こういう味付けが全然無かったんだよ。俺にとってこの味は物凄く思い入れがあってな。俺の故郷で食べたのって偽物だったからあまり美味しくなかったんだけど……。本物ってここまで美味くできるんだな……」
涙を流しながら語る俺を見て大将までもらい泣きしてるよ。
「バーローィ!聞いてたらこっちまで目から汗が出てきたじゃねぇか!さっきから美味い美味いってベタ褒めしやがって!こいつも食ってけ!」
大将は鍋の中からゴロゴロしたものを器によそるとテーブルへ持ってきた。
「こ、これは……!肉じゃが!?」
「ジャガイモはどうしても大陸産の物しか手に入らねぇが醤油もカツ節もジパング産だ!食ってけバーロー!」
俺は恐る恐るジャガイモを口に運び……。
「ぁ……ぁぁぁ……」
(思考暴走中。しばらくお待ちください)
「いやぁ大将、本当に旨かったよ。また食べに来てもいいかい?」
俺は涙を拭いながら大将にお礼を言う。
「あぁ、いつでも来やがれ!今度はもっとうめぇもん用意しているからよ!」
俺は手を振りながらその場を後にする。背を向けたままではなく、顔を店に向けながらというのがいつもと違ったが。
「(あにぃがすこしこわかった……)」
『あの暴走状態はいただけません。』
「さて、寝床の確保なのだが。」
『これだけ人の行き交いが激しい街でこの時間ではどこも空いているわけがありませんね。』
まったくもってその通りである。
「スラム街なんかはどこにでもあるだろうが、そんな所で寝るなんて命知らずなことはしたくない。」
『翌日丸裸が目に見えていますね。』
「そこで、だ。一旦街を出てどこか木の下で野宿する。」
『食事を取る前に言っていましたね。』
確認だ、確認。
「あぁ、夜になったら門からは出られないよ。最近は治安も悪いしね。」
門前払いならぬ門内払いにされた。
「街の中で野宿は自殺行為だよな。」
『少なくとも寝ることができて安全な場所を探す必要がありそうですね。』
「あぁ、そりゃ満員だよな。うん。」
「はい……申し訳ありません。」
ダメもとでこの街の冒険者ギルドの宿舎を当たってみたが、満員だった。
「いいさ、他を当たるよ。」
「なかなか無いもんだなぁ……。」
「ないねぇ〜」
とぼとぼと泊まれそうなところを探して歩く二人。
しかし宿屋は全て満室。ギルドの宿舎は言わずもがな。
「どうすっかな……。最悪橋の下で夜を明かすか……。」
『報告。二時方向100に空間の歪を検知。』
突然のアラート。こんな町中に空間の歪……?
「危険なものか?」
『不明。詳しい情報は調査の必要あり。』
泊まるところを探しているとはいえ、目の前に異変があるのに見て見ぬふりをすることは……できないな。
「少し見てみるか。行くぞ、メイ。」
「あ〜い♪」
俺達は反応があった路地裏へと入っていく。一体何があるのやら……。
俺がベースの食堂で訓練後の朝食を摂っていると、おやっさんがニヤニヤと後ろ手で何かを隠しながらこちらへ近づいてきた。
「よう、ボウズ。相変わらずマズい飯食ってるか?」
「聞くだけ野暮ってもんだろ、おやっさん。この世の中にソイレント・グリーン(合成野戦食)よりマズい飯なんてそうそうないぜ?」
そうかそうかと頷きながら、おやっさんが俺の隣にドッカと腰を下ろした。
そして後ろでに持っていた何かを食堂のテーブルに置く。
それは……
「缶詰?……なんて読むんです?」
日本語で書かれているそれには鯖の味噌煮と書いてあった。
缶詰にされているからには食べ物なのだろうが……
「サバの味噌煮(みそに)だ。この間闇市をブラついていた時に偶然見つけてな。少々値は張ったが……缶詰とはいえモノホンの和食が食えるんだ。今から楽しみすぎて腹がなって仕方ねぇぜ。」
そう言いながらおやっさんが缶詰を開けて箸で中身をつまみ出す。
薄茶色のドロドロに塗れた青魚……らしきもの?(今現在は本物の魚などそうそう獲れる物ではないのでおそらく合成品)だった。
それを期待に震える手で口の中へ運ぶ。
運んだとたん、おやっさんが固まった。
「……どうしたんです?」
「いいから食ってみろ。」
差し出された缶詰の中身にフォークを突き立てて一欠片を口に運ぶ。
「う”………………」
うす甘いような、微妙なしょっぱさのようなドロドロが口の中に広がり、その妙な甘さが口の中にこびりつく。
合成品であろう魚はゴムみたいな食感で、噛んでも噛んでも噛み切れず、しかも噛むたびに石油のような匂いがした。
要するに……
「なんなんスかこのクソマズイ石油製品の塊は……」
「こんな筈じゃねぇんだ……本物の鯖味噌ってのはもっとこう……」
そう夢見るような表情で天井を見上げたおやっさんは、ふと何かに気づいたらしくポンと手を鳴らした。
「よし、アルテア、着いて来い!没入するぞ!」
「没入て……どこへ行くつもりですか?」
何も言わずに食堂を飛び出していくおやっさんについて行くと、そこはコンソールルーム(有線で没入する際に使用する操作盤付きの椅子が置いてある部屋)だった。
「没入したらここへ飛べ。天国を見せてやるよ。」
おやっさんがどこかのアドレスを送りつけてきた。ここは……
「アノニマスシティ(無名都市)……?」
俺が何か言う前におやっさんはコンソールに座って没入してしまった。
仕方無しに俺も没入する事にする。
<DIVE>
おやっさんに連れられて来たのは仮想空間の中にある家庭料理屋だった。
仮想空間と言ってもここは無名都市、リミッターなんて付いていないから感覚はリアルのそれと変わらない。
つまりここでは現実の味を寸分の狂いもなく再現できるということだ。
ある意味ではこれほど料理屋に適した環境もないだろう。
俺はそこで衝撃の出会いをする事になる。
―鯖の味噌煮―
そう、あの缶詰のまがい物など歯牙にも掛けない。
芳醇な甘み、そして味噌の風味、油の乗った鯖。
なぜ自分が日本人に生まれなかったのだろうと思えるぐらいにその魚料理は俺を圧倒した。
おやっさんに指摘されるまで涙を流していたことにも気付かなかったくらいだ。
俺は生涯、この味を忘れることは無いだろう。
その後、副業(運送業)をサボった事に対しておやっさんと一緒に姉さんに説教を食らっていたのは言うまでもない。
〜冒険者ギルド ロビー〜
「う〜む……。」
俺は今非常に悩んでいる。
なんと財布の中から出てきた物は風邪の時舐めていた飴玉の包み紙1枚きりだったからだ。
「風邪が長引いたからすっかり金欠だな……。」
『出費の原因は風邪だけではないでしょう。』
その通り。ティスの服やらアニスちゃんのパフェやらで結構な出費をした挙句、風邪で4日ほど寝こんでしまったのだ。
補助金込みでも治療費や動けない間の食費やらでサイフはすっからかんになっていた。
「肩慣らしに簡単なクエストをいくつか受けて生活費を稼ぐかな。」
「ところが、そうも行かないのよね。」
さぁ行くぞと立ち上がった所で、ミリアさんが話しかけてくる。
「アレ絡みの情報が来ているわ。被害はまだ殆ど出ていないけれど放置すれば必ず死者は出るでしょうね……。それに、今回は被害だけじゃないわ。」
「どういう事です?」
いつもののほほんと人を喰ったような口調ではなく、真剣な表情で告げる。
「出た怪物が大きすぎるのよ。その体を隠せないほどにね。もし、教会なんかに見つかって……無理でしょうけど捕まったりしたら大変なことになる。」
例のプロパガンダに利用されるのと、エクセルシアの悪用か。
『E-クリーチャーの体長は元になる生物が元々巨大だったり、強力な筋力などを持っていたりすると巨大化する傾向があります。ちなみに現世界で確認されている最大級のE-クリーチャーは全長5km。寄生前はシロナガスクジラでした。』
デカすぎだろ。
「単独で行くのは危険でしょうから誰かを連れて行きなさい。絶対に死んだりしちゃだめよ。」
「わかってますって。俺だってまだ死にたかないですから。」
〜クエスト開始〜
―山岳の霧に潜む巨人―
『ベルン山岳の頂上付近に巨大な人影を見たという情報が入ったわ。今のところ地元では山の神が怒ったとか言われて誰も近づいてはいないけど……噂を嗅ぎつけて教会が介入して来ないとも限らないわ。余計な犠牲を出さないためにも早急に調査、例のアレだった場合は速やかに無力化してちょうだい。__________________________________
________________モイライ冒険者ギルド支部 支部長 ミリア=フレンブルク』
「とは言ったものの……誰を連れて行ったものか……。」
「相手は凄く大きいんですよね?でしたら力自慢の人を連れていけばいいんじゃないんですか?」
軽く言ってくれる。
「相手は何もかもが規格外だ。中途半端な力自慢を連れて行っても足手まといになるだけだろうな。」
「でしたら、彼女なんてどうです?」
受付嬢はロビー隅の箱に座っているちっこい奴を指し示す。
そいつは手持ち無沙汰に短い足をぶらぶらと振っていた。
「……メイか。」
確かにアイツの力は半端ではない。
機動性はともかく、パワー目的で連れていくのであれば間違いはないだろう。
「体重は軽いが……そうだな、いいかもしれん。」
俺はメイへ歩み寄っていく。
俺の気配に気づいたのか、いつものにへら笑いでこちらへ駆け寄ってきた。
「メイ、俺はこれから仕事で山まで行くんだが、着いて来る気はあるか?」
「おでかけ〜?」
表情も言動もぽわぽわしている……。
声をかけたのは失敗だっただろうか。
「いく〜♪」
「そ、そうか。それじゃあ支度は……大丈夫か?」
そう言えばこいつらが荷物らしい荷物を持っているのを見たことがない。
「だいじょうぶ〜。」
彼女は箱の蓋を開けると、中からバックパックを取り出す。
「それ、お前の私物入れだったのか……。」
「うん〜。」
いつの間にか増えたから一体誰が置いたのかと思ったらこいつだったのか。
俺はギルドの出口へ向かう途中、気になったことを受付に聞く。
「今回旅の館は使えるのか?」
「ギルドに登録しているのがアルテアさんだけですのでお連れさんは使えませんねぇ……。」
お前それがわかってて同行を提案したのかよ。
「今回も馬車を使ってください。」
「行程は?」
「3日ほどです。」
「結構長いな……。まぁ行ってくるよ。」
おれは改めてギルドの外へ向かおうとすると……。
「あの、アルテアさんの馬車代はギルドが負担するからいいんですが、メイちゃんの分までは出ませんしその間の諸費はどうするんですか?」
情けないとわかっていながらも、俺はアニスちゃんに借金する事になった。
〜ドラケン街道 シルヴァリアへの道〜
3日間を掛けていくつかの街で乗り継ぎ、ベルン山の近くのアタゴニアという街まで行く事になる。
馬車代はギルドが出してくれるとはいえ、途中の食事や宿代は流石に自費である。
借金を理由に結婚迫られたりしないよな……?
『電車や飛行機のない世界は不便ですね。』
「流石にここまで長い馬車旅は初めてだな。まぁ、馬車に揺られても眠れない理由はまた別にあるんだが……。」
「すぅ……。」
メイが俺の腕に抱きついて寝ている。当然俺の腕にはずっしりと柔らかいものが当たっている。
「これ、揉んだら絶対起きるよな。」
『ホブゴブリンの胸部の感覚は鋭敏ですから。』
この間と同じく、乗合の馬車だというのに同乗者が誰もいない。しかも今回は……。
「(御者の耳が聴こえないみたいなんだよな……。)」
この馬車に乗る前に、御者から筆談で耳が聞こえず、喋ることもできない旨を伝えられた。
別段耳が聞こえない程度で蔑視するほど俺は偏見に囚われている訳ではない。
「……。」
しかし、そうなるとこの馬車の中は半密室状態になるわけで……。
『スリープモードに入りますか?』
「お前変な気の使い方するなよ!」
無駄な空気の読み方をする相方に思わずツッコミを入れる。
「ん〜……?」
その音でメイが起きてしまった。
慌てて頭を撫でて寝かしつける。
「あぁ、スマン。まだ寝ていていいぞ。」
「……〜♪」
彼女は俺の腕に額を擦りつけると、また夢の中へと旅立っていった。
『寝ていたほうが都合が』
「やかましい。」
<ブツ>
アホな煽りをしまくるラプラスを強制的に落とす。
「まったく……」
俺は眠っているメイの頭を撫でてやる。平常心平常心。
<ぐにゅ>
平常心……平常心……。
<むにゅう>
へいじょ……おっぱ……へい……。
<ぽよん>
「〜〜〜〜〜〜!」
声にならない苦悶の声を上げて頭を押さえる俺。正直……我慢の限界です。
そんな気配を察してか、彼女がまた起きてしまう。
「あに〜……?」
「大丈夫だ、うん。何でもないから。」
彼女は暫く首をかしげていたが、何か合点がいったと言った風に頷く。
「どうした?」
彼女は俺の膝の上に向かい合うように座ると、胸を覆っている皮の胸当てをずり下げた。
戒めを解かれた二つの肉果がふるふると揺れている。
「ってじっくり観察している場合じゃないだろ。ほらほら、はしたないから早くしまいなさい。」
俺がずり下ろされた胸当てを元に戻そうとすると、手を掴まれて胸に押し当てられる。
あぁ、柔らかくて気持ちいい、ではなくて。
「一体何のつもりだい?兄に話してごらん。」
もう自分が誰かの兄替わりになることに抵抗を覚えないことに戦慄しつつ、訊いてみる。
「ミーアがこうしているのみた〜。」
「ミーアって……ミリアさん?」
「うん〜」
のんびりと頷くメイ。幼い子が何かを真似するのってよくあるよね〜。
「それは本当に大好きな人にしてもらいなさい。ね?」
「わかった〜♪」
「そうか、分かってくれたか……っておいぃ!?」
そう言うと彼女はさらに俺の手を押し付けてくる。振りほどこうとしても腕力が違いすぎる。
「あに〜……ん……だいすき〜……♪」
「大好きて……俺とお前ってそんなに接点あったっけ……。」
押し付けている手で刺激されて気持ちがいいのか、彼女の頬が上気して、息が荒くなり始める。
「あに〜、さわって……さわってぇ……。」
ふにふにと押し付けられる胸。幼くても色気づいた表情。媚びるような声色。
あぁ、理性の壁にビシビシとヒビが……。
「触る……だけだからな?それ以上はしないからな?」
俺は二つの膨らみに手を這わせて揉みしだく。
よほど敏感なのか、それだけで彼女はビクビクと全身を震わせる。
「んぁぁぁあああ!あにぃ、あにぃ!」
乳首も指の間で挟んでクニクニとすり潰す。あまりの快感に耐えられないらしく、あいた口が塞がらずに唾液を零している。
蕩けた瞳で俺の目を見つめてくるメイ。その目線が下へ降りていき……。
「あにぃ、これなぁに?」
突っ張ってしまった俺のズボン……の股間部分を指す。
「生理現象……だ。」
もう、諦めてしまおうか。でも最後の一線でロリコンではなく、ロリも好きということにしておきたい。……しておきたい……っ!
「別に放っておけば治る……っておい、まさか……。」
彼女は膝から降りると、ズボンのチャックを開けようと悪戦苦闘し始めた。本能的にこれが何かをわかっているのだろうか。
「あにぃ……これちょうだい……」
NOと言ってもやり続けるんだろうなぁ、これは。
仕方無しにズボンのチャックを開けてモノを取り出してやる。
理性?そんなもんドブに捨てたよハッハッハ。
「ぉ〜……」
見慣れない物を見てびっくりしているのだろうか。先をつんつんとつついている。
「それを、手で擦ったり舐めたりするんだ。できるか?」
そう言うと、彼女は座席の間に降りておずおずとモノを握りしめて来た。
「力を入れすぎないようにな。痛いから。」
本当は引きちぎられるぐらいに力があるのだが、それを指摘したら現実になりそうなので伏せておく。
「こう〜?」
彼女が恐る恐る手を上下に動かし始める。
技巧も何もあったものじゃないのは仕方がない。
「もう少し強くても大丈夫だ。余裕があったらその先の方も舐めてみてくれ。」
「あい〜……えろ……はむ、ちゅう……」
ゆっくりと、さほど強くもない鈍い快感が伝わってくる。
もどかしいが、嫌いじゃない。
いろいろ開発されているなぁ……俺。
「焦って早くする必要はないからな。ゆっくりでも十分気持ちがいいから。」
「むぅ、ん、ちゅう……くぷ、じゅる、はぷ」
じわじわと炙られるように高められていく官能。
しかも相手は中身も外見も10以上年下である。
「(色んな意味でギリギリだぁ!)」
認識した途端に迫り来る射精感。この場合どうしたものか……。
「タオル、タオル……。」
隣に置いてあったバックパックからタオルを取り出そうとすると、
「じゅううううううううう!」
「!?ちょ、メイ、やめ!」
バキュームなんて何処で覚えてくるんですかこの子は!
「あぐ、ぁぁぁぁぁ……」
焦らしに焦らされてからの吸引で、俺は抵抗する間もなく射精してしまった。
「ぶふ……んぐ……んく……。けほ」
射精を受け止めるには口が小さすぎたらしく、少し漏れてしまったようだ。
それでも零れた分を舐めとっていく。小さな舌と大きな胸に白い物が絡み付いている……。
「っ!」
それを見ただけでまた活力が戻ってきた。やめて!俺の精神ポイントはもう0だ!
「あにぃ、もっとするぅ……」
そう言うと、彼女は自分の胸で俺のモノを挟みこんでくる。
「だからお前はどこでこういう事を覚えてくるんだ?」
「ミーアがやってた〜。」
今度あの人には部屋の戸締りを徹底させよう。
彼女の唾液と俺の精液で、潤滑は十分。彼女はもたつきながらも胸を押さえて上下に動かしてきた。
「はぁ……あにぃ、これ、これぇ……」
「っ……コレは……ヤバ……!」
快感自体は大したことはない。
「はふ……ん、あ、あ」
しかし、小さい子に奉仕をさせているという背徳感と、不釣合に巨大な胸で挟まれているというのに加え、蕩けるように甘い声を出しながら自分のモノで気持ちよくなっているという四重奏は相当来るものがあった。
「ぐ……ぅ……!」
あまりに呆気無く出してしまうのは情けなかったのでどうにか我慢するが……。
「あにぃ、だして、だしてぇ……!」
こんな声で懇願されて我慢ができるほど俺の息子は我慢強くなかった。
「で、出るぞ、ぐ、ぁぁぁあああ!」
ダクダクと吹き出す白濁に、彼女は真っ白に染まる。
顔に、胸に、手に、白い謎物体が絡みついて非常にいやらしい。
「でたぁ……あにぃのしろいの……」
それを指ですくってぺろぺろと舐めている。
本能だろう、本能だと思う、本能だと言ってください三段活用!
ていうか見せないでまた立っちゃう!
俺は慌てて目を逸らし、深呼吸。以前は戦場を思い浮かべて失敗した。ならば別のことを考えるまで!
「(俺は今、勃起したナニをギロチンにかけられている。あのロウソクがロープの所まで溶けて焼き切られればギロチンは落下!俺は一生竿なしに……)」
情景を想像し、息子に幻痛走る。
「うぉぉぉぉおおおおお……」
オーケー。一気に萎えた。
「あに〜?」
「大丈夫だ、大丈夫。ちゃんと付いているから」
「?」
分からなくてもいいのです。
〜御者台〜
「(物凄く気まずいぞ……これは。)」
実はこの男、耳が聴こえないというのは全くの嘘で、シーフギルドのメンバーが情報収集のために耳が聴こえないフリをして御者をしているのだ。
公には明かされていないが、世界中の至る所でこうしたシーフギルドの目が光っている。
それゆえにシーフに知らない事はないなどと裏では言われている。
「(この状態で俺はどうしろって言うんだよぉ……!)」
しかしこの場合、耳が聴こえないフリをしたのが仇となったようだが。
〜大地の交差点 シルヴァリア〜
乗合馬車は中継点の街へと到着した。辺りはもう夕暮れ近い。
俺は御者に運賃を払うと、宿を探すためにメイと共に歩き出す。
「結構人通りが多いな。モイライといい勝負だ。」
『ここは大地の交差点とも言われていますから。人が集まる場所には自然と大きな街ができるということです。』
俺はメイとはぐれないようにぎゅっと手を握る。
「メイ、はぐれるなよ。お前を見失ったら後が大変だ。」
「あ〜、何か勘違いしているようだけどあたしゃメイとかっていう嬢ちゃんじゃないよ?」
手を繋いだ先を見ると……。
「うわ!メイの角がなくなってちんちくりんになってやがる!」
「だから人違いだって言ってるだろ!?よく見ろ!」
妙にちびっこくなっていると思ったらドワーフだった。
「あに〜!」
ズゴゴゴとか音を立てながら何かを引きずってメイがこちらへ駆けてくる。
「連れが見つかったみたいだね。それじゃあたしゃ行くよ。」
「あぁ、すまなかったな。」
「いいって。連れを大事にしてやりなよ?」
そう言うとドワーフは去っていった。ちっこいのに格好いいなぁ、あいつ。
メイの引きずっているものは、巨大な棍棒だった。そういやこいつの棍棒は俺が真っ二つにしちまったんだっけ。
「あたらしいのつくってきた〜」
「作ってきたのはいいがまだ馬車に乗るんだから意味ないぞ?そんな重い物乗せたら別料金取られるだろうし。」
がっくりと肩を落とすメイ。まぁ、仕方がないよな。
「う〜……。すててくる……」
「はぐれたら危ないから俺も行こう。街から少し出たところでいいよな。」
しかし、警備兵に見つかってもっと遠くへ捨ててこいということになり、結局町外れの森の中まで捨てに行くことに。当然日が暮れて辺りは真っ暗に。
「今更戻っても宿は無いだろうな……。戻ったら飯だけ食ってどこかで野宿するか。」
「のじゅく〜のじゅく〜♪」
コイツは今の状況が解っているのだろうか。
〜食事処『万国旗』〜
「和食だ……和食がある……。」
入った食事処にジパングの料理が置いてあった。
『どうやら多国籍料理の店のようですね。モイライクラスの交易ポイントだけあって様々な食材が手に入るのでしょう。』
ラプラスが何かうんちくを垂れていたが、もう耳に入らない。
「大将!この鯖味噌定食を!ライス大盛りで!」
「あいよ!嬢ちゃんは何にするんだい?」
メイはメニューを見ながら首をかしげている。
「よめない〜。」
そっちかい。
「肉がいいか?魚がいいか?」
「おにく〜。」
俺はメニューにざっと目を走らせ、調度よさそうな物を見つける。
「じゃあコイツには豚の生姜焼き定食で。」
「まいど!ちょっくら待っていてくれや。」
ヤバい、ワクワクが止まらない。
おやっさんと食べた和風の合成食料と仮想空間での味を思い出す。
おそらく味はそれ以上だろう。しかも本物の魚である。
「あにぃ、たのしそう。」
「あぁ、正直テンションMAXだ。今なら魔王でも倒せそうな気がする。」
後ろのテーブルで黒っぽい女の人が水を吹き出したが、それすら気にならない。
「へいお待ち!」
大将がお盆を二つ持ってくる。乗せてあるのは甘辛い匂いが食欲をそそる豚の生姜焼き定食と、味噌で煮込んだ薫り高い鯖の味噌煮定食だ。
「いただきます!」
「ます〜♪」
鯖を箸で一欠片取って、ご飯と共に口の中に放り込む。
味噌の甘辛い味と脂の乗った鯖の味が口の中に広がり、ご飯でその味がまろやかになりハーモニーを……。あぁ、面倒くさい!ウメェ!マジウメェ!
「ぉぉぉおおお……鯖だ。本物の鯖だ……。」
「あにぃ、なんでないてるの?」
俺は鯖を一欠片切り取ってメイの口先へ持っていく。彼女はそれをパクリ。
「うん、おいしいね〜……でもなんでないているの?」
そう言えばこの世界の人は普通にこういうもん食っているんでしたね。
「モイライの食事も美味しかったけどさ……こういう味付けが全然無かったんだよ。俺にとってこの味は物凄く思い入れがあってな。俺の故郷で食べたのって偽物だったからあまり美味しくなかったんだけど……。本物ってここまで美味くできるんだな……」
涙を流しながら語る俺を見て大将までもらい泣きしてるよ。
「バーローィ!聞いてたらこっちまで目から汗が出てきたじゃねぇか!さっきから美味い美味いってベタ褒めしやがって!こいつも食ってけ!」
大将は鍋の中からゴロゴロしたものを器によそるとテーブルへ持ってきた。
「こ、これは……!肉じゃが!?」
「ジャガイモはどうしても大陸産の物しか手に入らねぇが醤油もカツ節もジパング産だ!食ってけバーロー!」
俺は恐る恐るジャガイモを口に運び……。
「ぁ……ぁぁぁ……」
(思考暴走中。しばらくお待ちください)
「いやぁ大将、本当に旨かったよ。また食べに来てもいいかい?」
俺は涙を拭いながら大将にお礼を言う。
「あぁ、いつでも来やがれ!今度はもっとうめぇもん用意しているからよ!」
俺は手を振りながらその場を後にする。背を向けたままではなく、顔を店に向けながらというのがいつもと違ったが。
「(あにぃがすこしこわかった……)」
『あの暴走状態はいただけません。』
「さて、寝床の確保なのだが。」
『これだけ人の行き交いが激しい街でこの時間ではどこも空いているわけがありませんね。』
まったくもってその通りである。
「スラム街なんかはどこにでもあるだろうが、そんな所で寝るなんて命知らずなことはしたくない。」
『翌日丸裸が目に見えていますね。』
「そこで、だ。一旦街を出てどこか木の下で野宿する。」
『食事を取る前に言っていましたね。』
確認だ、確認。
「あぁ、夜になったら門からは出られないよ。最近は治安も悪いしね。」
門前払いならぬ門内払いにされた。
「街の中で野宿は自殺行為だよな。」
『少なくとも寝ることができて安全な場所を探す必要がありそうですね。』
「あぁ、そりゃ満員だよな。うん。」
「はい……申し訳ありません。」
ダメもとでこの街の冒険者ギルドの宿舎を当たってみたが、満員だった。
「いいさ、他を当たるよ。」
「なかなか無いもんだなぁ……。」
「ないねぇ〜」
とぼとぼと泊まれそうなところを探して歩く二人。
しかし宿屋は全て満室。ギルドの宿舎は言わずもがな。
「どうすっかな……。最悪橋の下で夜を明かすか……。」
『報告。二時方向100に空間の歪を検知。』
突然のアラート。こんな町中に空間の歪……?
「危険なものか?」
『不明。詳しい情報は調査の必要あり。』
泊まるところを探しているとはいえ、目の前に異変があるのに見て見ぬふりをすることは……できないな。
「少し見てみるか。行くぞ、メイ。」
「あ〜い♪」
俺達は反応があった路地裏へと入っていく。一体何があるのやら……。
11/07/16 08:52更新 / テラー
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