外伝〜VSデュラハンHARD〜
※この話は魔物娘が登場しない完全自己満足の話です。前回のバトルが物足りなかった方のみどうぞ。
〜うたたねの平原〜
非常にまずい事になった。
フィーが別のクエストに行ってしまって組むことができないのだ。
おまけにエルファも事務仕事が終わらないらしくひぃひぃ言っている。
というか声をかけられる奴が既にゼロになっていた。
「まぁいいさ。元々この任務は一人でやるはずだったしな。」
『強がりにも聞こえますね。大丈夫ですか?』
「問題ないさ。お前もいるしな。」
ペシペシと鵺を軽く叩く。いつでも最後に頼りになるのはこの相棒だけだ。
うららかな日差しの中、草原を歩きまわって手がかりを探す。
しかし、どうもおかしい。
「……静か過ぎないか?」
『というより誰もいない気がします。』
そう、誰もいないのだ。
放牧中の家畜はおろか、いつも惰眠を貪っているワーシープもホルスタウロスもいない。
鳥は空を飛んでおらず、立木でじっと身を潜めているようだ。
「気味が悪いな……」
『理由も無く身を潜めている訳ではなさそうです。後方より生体反応接近。数1、パターンE-クリーチャーです。』
一日目にしてビンゴか。運がいいのか悪いのか。
振り向くと無骨なフルプレートに身を包んだ首なしの騎士が仁王立ちしていた。
そいつはゆっくりと俺に向かって剣を構えた。
「登場するなり問答無用とはね……」
ラプラスが何も言わずにヴァイスリッパーを展開する。
おそらくこの重装甲、銃弾程度では傷すら付かないだろう。
「オーケー、来いよドンキホーテ!格の違いを見せてやる!」
『オープンコンバット』
俺のシャウトと同時に奴が仕掛けてきた。
それは剣による一閃ではなく……
「っく!タックルか!」
その重装甲と巨体を生かしたタックル攻撃だ。重量や突進力その他諸々を含めると非常に破壊力が高い。食らったが最後、バランスを崩しあの大剣で一刀両断にされるだろう。
「あら……よっと!」
俺は奴の動きに合わせてバックステップ。後ろに下がっておいたお陰で遠くまで吹き飛ばされたものの、ダメージはそう無い。
騎士はさらに踏み込み、大剣を振り下ろしてきた。
「大人しく食らってたまるか!」
『フェンリルクロー展開。』
展開したクローを横薙ぎに振りぬき、側面へと吹き飛ばす。
自分に当たらないようにインパクト直後に格納。バランスを崩した俺の体が石畳に叩きつけられる。
「ってぇ……でも痛み分け……」
平然と立ち上がる騎士。無論鎧には傷ひとつ付いていない。
『骨折り損ですね。』
「ドチクショウ!」
一足飛びにこちらへ跳びかかって剣を振り下ろしてくる。
ゴロゴロと転がって間一髪で躱す。破砕された石畳が散弾の如く俺の体を叩くが、無視。でも痛い。
「どうすんだ!あの重装甲じゃHHシステムも弾かれるぞ!なんとか装甲を打ち破らないと……」
ラプラスと相談する間にも騎士はこちらへ切りかかってくる。
それを避けながらも作戦会議。かつてここまでせわしない会議があっただろうか?いやない反語。
『パイルバンカー、もしくは単分子カッターであればフィールドを貫通して装甲を貫く、もしくは切断が可能と推測。無論、接近する必要がありますが。』
接近と言われてもパイルバンカーや単分子カッターの届く範囲は明らかにあいつの間合いの内だ。迂闊に踏み込めば骨が砕かれるか、なますぎりにされるかのどちらかだ。
「何かあいつを縫いつけておく方法は……そうだ、バインディングネットはどうだ?」
『悪くはありませんがもう一工夫ほしいですね。』
横薙ぎに振るわれた剣を上体を反らして回避。ミドルキックを体を回転させるように受け流し、こちらに向かってくる拳を横から拳で打ち据える事で軌道をそらす。
「さすがに……こう……ッ!何度も接近されちゃな!至近距離じゃ使えないだろ!?」
『それを話しながら捌くマスターもマスターだと思いますが。』
「一撃も与えられないんじゃっ!防戦と変わらねぇよ!」
回し蹴りをかがんでやり過ごし、バックステップで追撃の回し蹴りを回避。
剣による突きを鵺で弾いて体を捻り、回転を加えることで反撃の一撃を与える。
まぁいくら殴った所で掠り傷一つ付かないのだが。
衝撃でよろめかす事くらいはできるか。
「硬い痛い重いの三重奏か。全く、まともに相手をしていたらキリがないな。スモッグでも焚いてみるか?」
『視界を奪えば逆転の目も見えてくるかもしれませんね。AN―M8煙幕弾展開。』
斜め下へ向けてトリガーを引くと煙幕弾が射出。
地面に付いた直後に真っ白な煙を大量に吐き出し始めた。
あとは心音センサーを頼りに相手の懐へ潜り込むだけ……
『警告。巨大な動体反応出現。注意してください。』
「はい?」
ゾクリと背筋が凍る。
反射的に屈み込むと、真上を巨大な何かが通過していった。
「何だ今の!?」
『解析結果報告。巨大な板状の物体と判明。形状から言いますと、刃渡り10メートル程の巨大なグレートソードのようです。』
斬艦刀!?
またも背筋が凍る。慌てて横っ飛びに転がり出ると今しがた立っていた場所に巨剣が振り下ろされた。
破砕された石畳の破片がまたも俺を打ち据える。
「だークソ!でかけりゃ良いってもんじゃねぇぞ!」
『実際有効打を与えられているので強くは言えませんけどね。』
そうこうしているうちに煙幕が晴れてきてしまった。
屋外では煙幕もすぐに吹き流される。
「……ぁ!……っ!」
それは剣と言うにはあまりにも大きすぎた。
大きく、分厚く、そして大雑把すぎた。
それは、まさに鉄塊だった。
ベルセルクか。
『あれに叩き潰されれば骨折じゃ済みませんね。ミンチです。』
「認識の再確認ありがとう……おかげで倍ぐらい逃げ出したくなったよ。」
俺の姿を認めた奴が鉄塊を振りかぶり、俺目がけて叩き付ける。
今度は先程より正確だ。
「ファイトォー!」
『何を叫んでいるのですか。』
それを見て俺は奴目がけて猛然と走りだした。目指すは奴の足元だ。
「いっぱぁーつ!」
完全に振り下ろされる前に地面へと体を投げ出す。
巨剣は俺を叩き潰す……
<ドゴォォォォオオオン!>
事無く倒れた俺の上で止まる。
そう、あれだけ長い巨剣なのだ。使い手に近ければ近いほど剣と地面の隙間は大きくなる。
避けられたからと言って休む暇は無い。横へ体を転がして立ち上がり、再び騎士へ向かって駆け出す。
先端重量、という物を知っているだろうか?
物の先端が重ければ重いほど、長ければ長いほど振り回すのに大きな力が必要なのだ。
当然このクラスの巨剣であればその先端重量は計り知れないものがある。
ということは……
「一旦振り下ろせば次振り回せるまでに若干のタイムラグがあるって事だ!」
走りながらバインディングネットを展開。
軽く照準を合わせて発射すると、相手の全身に拘束網が纏わり付く。
引き千切るにしても時間がかかる。そう、これは時間稼ぎだ。
「っらぁぁぁぁあああ!」
スキャンで割り出したエクセルシアの位置―腹部―に標準装備のパイルバンカーを叩き付け、トリガーを引く。フィールドごと装甲をぶち抜き、エクセルシアを露出させた。
色は血のような赤色。
「まだぁ!」
フェンリルクローを展開。狙うのは足元。
足元を掬うように爪を走らせ、転倒させる。金属がぶつかり合う音と共に騎士は地面へと倒れてもがき始める。しかし、網が絡みついて上手く動くことができない。
「ラプラス!」
『HHシステム展開。フィールド干渉率100%ボルトショットシークエンス省略。』
鵺の先端から出てきた純白の杭が必勝の光を放つ。
俺はそれを腹部のエクセルシア目がけて突き刺した。
杭の先端が解け、エクセルシアへと巻きつく。
「ふんぬっ!……っく!」
しかし、思った以上に硬い。抜けない。もたもたしていると反撃が……
そう思った時ほど来るものだ。騎士は足を上手く俺と自分の体の間に割り込ませると、そのまま蹴り上げた。肋骨がミシミシと音をたて、内蔵が悲鳴を上げる。
「っ!がぁぁぁぁあああ!」
しかし俺も離す訳にはいかない。
しっかりと鵺にしがみつき、蹴りに耐える。
騎士が一際力を溜め、懇親の蹴りを放つ。さすがにこれはまずい!
<ドガッ>
<ブヂィッ!>
幸いなことに蹴りの衝撃でエクセルシアが抜けたようだ。しかし……
「っぐ……がは……ぁ……!」
何度も蹴りを入れられた上、最後の蹴りが止めになったようだ。
衝撃は心臓まで達し、ショックで軽い心室細動を起こしていた。
「ぁ……が……ぅぐ……ぁ……ぅ……は……ふ……」
『危険です。心室細動発症中。即座にAEDを。』
無論この世界にそんなものがあるわけがない。
ぼやける意識で非殺傷兵器群からテイザーを呼び出す。
鵺の側面からワイヤー付きのスタンガンが展開。それを自身に向ける。
『マスター。やめ……』
「ぅ……せ……」
トリガーを引くと、胸の所にテイザーが突き刺さり、電流が流れる。全身に走る衝撃。
激痛。
電流が止まった後も頭がグラグラし、吐き気がする。
しかし、極端な胸部の苦しさは無くなっていた。
「はぁッ!はぁっ!し、死ぬかと思ったぞ……」
『死んで当然です。馬鹿ですかマスターは。』
電気ショックの後遺症で立つことすらままならない。
手足が痺れ、蹴られた場所は鈍痛を訴えてくる。
しかし、生きている。生き残っている。
「生き残ったぞコンチクショー!ざまぁみやがれ!っはははははは!」
『痛みのあまりにマスターが壊れてしまったのですがどうしましょう。』
しらんがな。
〜うたたねの平原〜
非常にまずい事になった。
フィーが別のクエストに行ってしまって組むことができないのだ。
おまけにエルファも事務仕事が終わらないらしくひぃひぃ言っている。
というか声をかけられる奴が既にゼロになっていた。
「まぁいいさ。元々この任務は一人でやるはずだったしな。」
『強がりにも聞こえますね。大丈夫ですか?』
「問題ないさ。お前もいるしな。」
ペシペシと鵺を軽く叩く。いつでも最後に頼りになるのはこの相棒だけだ。
うららかな日差しの中、草原を歩きまわって手がかりを探す。
しかし、どうもおかしい。
「……静か過ぎないか?」
『というより誰もいない気がします。』
そう、誰もいないのだ。
放牧中の家畜はおろか、いつも惰眠を貪っているワーシープもホルスタウロスもいない。
鳥は空を飛んでおらず、立木でじっと身を潜めているようだ。
「気味が悪いな……」
『理由も無く身を潜めている訳ではなさそうです。後方より生体反応接近。数1、パターンE-クリーチャーです。』
一日目にしてビンゴか。運がいいのか悪いのか。
振り向くと無骨なフルプレートに身を包んだ首なしの騎士が仁王立ちしていた。
そいつはゆっくりと俺に向かって剣を構えた。
「登場するなり問答無用とはね……」
ラプラスが何も言わずにヴァイスリッパーを展開する。
おそらくこの重装甲、銃弾程度では傷すら付かないだろう。
「オーケー、来いよドンキホーテ!格の違いを見せてやる!」
『オープンコンバット』
俺のシャウトと同時に奴が仕掛けてきた。
それは剣による一閃ではなく……
「っく!タックルか!」
その重装甲と巨体を生かしたタックル攻撃だ。重量や突進力その他諸々を含めると非常に破壊力が高い。食らったが最後、バランスを崩しあの大剣で一刀両断にされるだろう。
「あら……よっと!」
俺は奴の動きに合わせてバックステップ。後ろに下がっておいたお陰で遠くまで吹き飛ばされたものの、ダメージはそう無い。
騎士はさらに踏み込み、大剣を振り下ろしてきた。
「大人しく食らってたまるか!」
『フェンリルクロー展開。』
展開したクローを横薙ぎに振りぬき、側面へと吹き飛ばす。
自分に当たらないようにインパクト直後に格納。バランスを崩した俺の体が石畳に叩きつけられる。
「ってぇ……でも痛み分け……」
平然と立ち上がる騎士。無論鎧には傷ひとつ付いていない。
『骨折り損ですね。』
「ドチクショウ!」
一足飛びにこちらへ跳びかかって剣を振り下ろしてくる。
ゴロゴロと転がって間一髪で躱す。破砕された石畳が散弾の如く俺の体を叩くが、無視。でも痛い。
「どうすんだ!あの重装甲じゃHHシステムも弾かれるぞ!なんとか装甲を打ち破らないと……」
ラプラスと相談する間にも騎士はこちらへ切りかかってくる。
それを避けながらも作戦会議。かつてここまでせわしない会議があっただろうか?いやない反語。
『パイルバンカー、もしくは単分子カッターであればフィールドを貫通して装甲を貫く、もしくは切断が可能と推測。無論、接近する必要がありますが。』
接近と言われてもパイルバンカーや単分子カッターの届く範囲は明らかにあいつの間合いの内だ。迂闊に踏み込めば骨が砕かれるか、なますぎりにされるかのどちらかだ。
「何かあいつを縫いつけておく方法は……そうだ、バインディングネットはどうだ?」
『悪くはありませんがもう一工夫ほしいですね。』
横薙ぎに振るわれた剣を上体を反らして回避。ミドルキックを体を回転させるように受け流し、こちらに向かってくる拳を横から拳で打ち据える事で軌道をそらす。
「さすがに……こう……ッ!何度も接近されちゃな!至近距離じゃ使えないだろ!?」
『それを話しながら捌くマスターもマスターだと思いますが。』
「一撃も与えられないんじゃっ!防戦と変わらねぇよ!」
回し蹴りをかがんでやり過ごし、バックステップで追撃の回し蹴りを回避。
剣による突きを鵺で弾いて体を捻り、回転を加えることで反撃の一撃を与える。
まぁいくら殴った所で掠り傷一つ付かないのだが。
衝撃でよろめかす事くらいはできるか。
「硬い痛い重いの三重奏か。全く、まともに相手をしていたらキリがないな。スモッグでも焚いてみるか?」
『視界を奪えば逆転の目も見えてくるかもしれませんね。AN―M8煙幕弾展開。』
斜め下へ向けてトリガーを引くと煙幕弾が射出。
地面に付いた直後に真っ白な煙を大量に吐き出し始めた。
あとは心音センサーを頼りに相手の懐へ潜り込むだけ……
『警告。巨大な動体反応出現。注意してください。』
「はい?」
ゾクリと背筋が凍る。
反射的に屈み込むと、真上を巨大な何かが通過していった。
「何だ今の!?」
『解析結果報告。巨大な板状の物体と判明。形状から言いますと、刃渡り10メートル程の巨大なグレートソードのようです。』
斬艦刀!?
またも背筋が凍る。慌てて横っ飛びに転がり出ると今しがた立っていた場所に巨剣が振り下ろされた。
破砕された石畳の破片がまたも俺を打ち据える。
「だークソ!でかけりゃ良いってもんじゃねぇぞ!」
『実際有効打を与えられているので強くは言えませんけどね。』
そうこうしているうちに煙幕が晴れてきてしまった。
屋外では煙幕もすぐに吹き流される。
「……ぁ!……っ!」
それは剣と言うにはあまりにも大きすぎた。
大きく、分厚く、そして大雑把すぎた。
それは、まさに鉄塊だった。
ベルセルクか。
『あれに叩き潰されれば骨折じゃ済みませんね。ミンチです。』
「認識の再確認ありがとう……おかげで倍ぐらい逃げ出したくなったよ。」
俺の姿を認めた奴が鉄塊を振りかぶり、俺目がけて叩き付ける。
今度は先程より正確だ。
「ファイトォー!」
『何を叫んでいるのですか。』
それを見て俺は奴目がけて猛然と走りだした。目指すは奴の足元だ。
「いっぱぁーつ!」
完全に振り下ろされる前に地面へと体を投げ出す。
巨剣は俺を叩き潰す……
<ドゴォォォォオオオン!>
事無く倒れた俺の上で止まる。
そう、あれだけ長い巨剣なのだ。使い手に近ければ近いほど剣と地面の隙間は大きくなる。
避けられたからと言って休む暇は無い。横へ体を転がして立ち上がり、再び騎士へ向かって駆け出す。
先端重量、という物を知っているだろうか?
物の先端が重ければ重いほど、長ければ長いほど振り回すのに大きな力が必要なのだ。
当然このクラスの巨剣であればその先端重量は計り知れないものがある。
ということは……
「一旦振り下ろせば次振り回せるまでに若干のタイムラグがあるって事だ!」
走りながらバインディングネットを展開。
軽く照準を合わせて発射すると、相手の全身に拘束網が纏わり付く。
引き千切るにしても時間がかかる。そう、これは時間稼ぎだ。
「っらぁぁぁぁあああ!」
スキャンで割り出したエクセルシアの位置―腹部―に標準装備のパイルバンカーを叩き付け、トリガーを引く。フィールドごと装甲をぶち抜き、エクセルシアを露出させた。
色は血のような赤色。
「まだぁ!」
フェンリルクローを展開。狙うのは足元。
足元を掬うように爪を走らせ、転倒させる。金属がぶつかり合う音と共に騎士は地面へと倒れてもがき始める。しかし、網が絡みついて上手く動くことができない。
「ラプラス!」
『HHシステム展開。フィールド干渉率100%ボルトショットシークエンス省略。』
鵺の先端から出てきた純白の杭が必勝の光を放つ。
俺はそれを腹部のエクセルシア目がけて突き刺した。
杭の先端が解け、エクセルシアへと巻きつく。
「ふんぬっ!……っく!」
しかし、思った以上に硬い。抜けない。もたもたしていると反撃が……
そう思った時ほど来るものだ。騎士は足を上手く俺と自分の体の間に割り込ませると、そのまま蹴り上げた。肋骨がミシミシと音をたて、内蔵が悲鳴を上げる。
「っ!がぁぁぁぁあああ!」
しかし俺も離す訳にはいかない。
しっかりと鵺にしがみつき、蹴りに耐える。
騎士が一際力を溜め、懇親の蹴りを放つ。さすがにこれはまずい!
<ドガッ>
<ブヂィッ!>
幸いなことに蹴りの衝撃でエクセルシアが抜けたようだ。しかし……
「っぐ……がは……ぁ……!」
何度も蹴りを入れられた上、最後の蹴りが止めになったようだ。
衝撃は心臓まで達し、ショックで軽い心室細動を起こしていた。
「ぁ……が……ぅぐ……ぁ……ぅ……は……ふ……」
『危険です。心室細動発症中。即座にAEDを。』
無論この世界にそんなものがあるわけがない。
ぼやける意識で非殺傷兵器群からテイザーを呼び出す。
鵺の側面からワイヤー付きのスタンガンが展開。それを自身に向ける。
『マスター。やめ……』
「ぅ……せ……」
トリガーを引くと、胸の所にテイザーが突き刺さり、電流が流れる。全身に走る衝撃。
激痛。
電流が止まった後も頭がグラグラし、吐き気がする。
しかし、極端な胸部の苦しさは無くなっていた。
「はぁッ!はぁっ!し、死ぬかと思ったぞ……」
『死んで当然です。馬鹿ですかマスターは。』
電気ショックの後遺症で立つことすらままならない。
手足が痺れ、蹴られた場所は鈍痛を訴えてくる。
しかし、生きている。生き残っている。
「生き残ったぞコンチクショー!ざまぁみやがれ!っはははははは!」
『痛みのあまりにマスターが壊れてしまったのですがどうしましょう。』
しらんがな。
11/06/19 10:10更新 / テラー
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