幕間〜大暴露大会〜
「という訳で!第一回大暴露大会を始めまーす!ドンドンパフパフ〜!」
「どういう訳だ。俺は聞いてないぜ?」
朝の冒険者ギルドのロビー。いつものテーブルで俺達はいつものように朝の時間を過ごしていた。
それを打ち破るようにニータが何かをおっぱじめたのだ。
「今回のテーマは……ジャン!実は私、〇〇なんです!」
「オイ聞けよ。勝手に話を進めるな」
「それじゃあ先ずは私ことニータから!」
無視か。無視なのか。無視なんですねコンチクショウ三段活用。
「実は私!」
耳を掴み、スポっと取り外し、尻尾を引き抜く。
「ラージマウスではなかったのです!」
「「「「な、なんだってー!?」」」」
「いやいやそれおかしいだろ。お前倉庫でおもいっきりラージマウスのリーダーやってたじゃねぇか」
「いやー、これ結構大変なんですよ。別にチーズが好きでもないのに毎回食べなきゃなりませんし役作りで幼年化する薬まで飲んでるんですよ?ぶっちゃけもう早く人間になりたい」
「やめて!これ以上夢を壊すのはやめて!」
「それじゃあ次はアタシだね」
「こらそこー!?あっさりと流すなー!?」
次に名乗りでたのはチャルニ。
確かに付き合いが短いから知らないことも多いかもしれない。
「実はアタシ……」
槍を自分の目の前に持ってくる。
鎧化するほどゴテゴテした装飾はない。
次の瞬間、槍がぐにゃりと折れ曲がった。
「の持っている槍。千歳飴なんだ」
「「「「な、なんだってー!?」」」」
「お前もう戦うな!飴なんかで戦うな!危ないからギルドに引っ込んでろ!」
「便利なんだよ、これ。非常食にもなるしぐにょーんと曲がって意外な方向から攻撃が」
「無いよ!ぶっちゃけ無茶苦茶使い辛いよ!第一まっすぐ戻すのにえらく手間がかかるじゃないか!」
「それでは次は私だな」
「え!?これさほど気にすることじゃないの!?俺がおかしいだけ!?」
次に立ち上がったのはフィーことフェルシア。
「実はだな……」
そう言うと少し離れた所に立つフィー。
次の瞬間、何かバキバキと割れるような音が聞こえてきた。
フィーの鱗はみるみるうちに巨大化&硬質化していき、甲殻を形作る。
尻尾は太くなり、力強い羽が生えてきた。これは……
「私はドラゴンだったのだ」
「「「「な、なんだってー!?」」」」
「ある意味納得だけどやっぱりおかしいよそれ!?つか羽はどこから出てきたんだよ!?」
「ドラゴンだとわかると尻込みして逃げ出す奴らが多いからな。仕方無しにリザードマンに偽装しているという訳だ。まぁ未だに私を倒せる奴はいないのだが……」
「そりゃドラゴンに勝てるようなバケモノなんて勇者ぐらいのもんだろ……」
「それじゃあ次は私ね♪」
「いや、これサラッと次に行くとこじゃないよね?ね!?」
「実は私」
服に手を掛けるミリアさん。まさか……脱ぐ気か!?脱いだら凄いんですネタは古すぎるぞ!
「待て!それはやめ……」
時既に遅し、彼女の服が宙を舞う。
しかし、その下に何かを着ていて、それは……
「なんじゃそりゃ……」
真っ黒いいかにもなドレス。禍々しいティアラに、赤い玉が連なったネックレス。
「魔王だったのです♪」
「「「「な、なんだってー!?」」」」
「それこそおかしいだろ!?もし本当だとしても魔界放り出して何やっちゃってんのあんた!?」
「旦那に飽きて浮気中」
「こらー!」
「それじゃ、次はわしかの?」
「聞けええええええええ!」
俺の意見を無視して進む暴露大会。頭が痛くなってきた。
「実はの……」
無駄に貯めるエルファ。お前は浅黒いクイズ番組の司会者か。
緊張が頂点に達したとき、彼女が口を開く。
「わし、9歳なんじゃ」
「「「「な、なんだってー!?」」」」
「逆に凄いな!?若干9歳でギルドマスターとサバトのリーダー兼任かよ!?ある意味世界初じゃねぇか!?」
「すごいでしょおにーちゃん♪」
「似合わねぇよ!鳥肌立つほど似合わねぇ!」
「えと……つぎはわたしかな……?」
次はアニスちゃんのようだ。流石に常識がひっくり返るような発言はしないだろう。
「え〜とね?おにいちゃんのへやにおにいちゃんのふくがあるよね?」
まあそりゃあるだろう。俺の部屋なんだし。
「それをね……こっそりもってかえっておにいちゃんのにおいをかいだりしているの」
確かに驚きだが……。
「それぐらいなら今までの奴らに比べればまだまだ……」
「あら?この子のすっごい秘密はもっと別の所にあるのよ?」
「あんたまた事態をかき混ぜるつもりか!?」
「実はこの子ね……」
やたら話を聞いてくれないのはなんでだろうね。
「本当の『初めて』はアルテア君じゃないのよ」
「…………は?」
「?」
意味が分からない。
「こう見えてもこの子って結構いろんな子とシててね。実はもう100人くらい食べちゃってる後なのよ」
「わたしだれをたべちゃったの〜?」
「え〜と、確か……」
「わ〜!わ〜!」
慌てて話を遮る。この話はいろんな意味で不味い。
『次は私が行きましょう』
ナイスカットラプラス!これで妙なことを言い出さなきゃ100点満点だ!
『実は私は……』
ひとりでに立ち上がる鵺。
「へ?」
テーブルの上に跳ね上がると、ガシャガシャと変形していく。
完全に変形が終わるとそこには二足歩行、漆黒のロボットが立っていた。
『トランスフォーマーだったのです』
「「「「な、なんだってー!?」」」」
「最上級に妙なこと言い出しやがったー!?ていうかお前らトランスフォーマー知ってるのかよ!?むしろ一番近くにいる俺が知らなかった事が一番驚きだよ!」
「私一人でも戦えるのでマスターはお役御免ですね」
「あっさりと主人公の存在意義否定しやがった!」
「さぁ、最後はアルだよ。ど〜んと言っちゃえ!ど〜んと!」
お鉢が俺に回ってきた訳だが……。
「暴露って言っても何かあったかな……」
正直殆どの記憶が消えている俺では暴露もクソも無いと思うのだが。
いや、これに乗じてネタにしてしまうか。
「実はな……俺……」
ある程度溜める。何を言い出すか分からないようにするのがミソだ。
「俺、ロリコンなんだ」
「知ってる」
「知っとるの」
「今さらね」
「ろりこんってなーに?」
「周知の事実だな」
「知らない人っていた?」
『皆わかっています』
「チクショオオオオオオオオ!」
〜冒険者ギルド宿舎 アルテア自室〜
「チクショオオオオオオオオ!……ッハ!?」
真っ暗な室内。時刻を確認すると、まだ夜中の3時だった。
『心拍数、脈拍数が通常の1.5倍です。どうかなさいましたか?マスター』
「いや、何でもない。変な夢を見ただけだ」
冗談にしては悪質すぎる夢だな……。心臓に悪すぎる。
『明日も依頼を受けるのであればお早めにお休みください』
「そうするよ……お休み」
気を取り直して、また眼を閉じる。今度は変な夢を見ませんように。
〜冒険者ギルド ロビー〜
「という夢を見たんだ」
いつもの朝、いつものギルドのロビー、いつものテーブルで、夕べ見た夢の話をした。
「この耳と尻尾は本物だよ〜……なんなら触って確かめてみる?」
心外だといった感じで自分の耳と尻尾を触るニータ。
まぁそりゃそうだ。実際に尻尾が動くところも見ているのだから。
「流石に飴で槍の柄は作らないよ……。むしろその発想に感心するけど」
自分の槍をさすっているチャルニ。
「俺も流石に本当だとは思わないさ……。本当だったらガチで引いただろうけど」
我ながらどういう思考回路をしているのだろうか。
「確かにドラゴンは強いが、私は私の種族に誇りを持っているからな。今更別の種族になりたいとは思わないよ」
「今でも十分強いのにドラゴンなんかになったらどうなんのさ……本当に最強生物になっちまうぞ」
そして一生旦那ができないのだろう。
「確かに今の魔王はサキュバスだけど、流石に毎日魔界にある城から離れていたらマズいでしょ」
あんたの人弄りスキルは既に魔王クラスだと思うがね。
「わ、わたしおにいちゃんのふくなんかもっていってないもん……」
顔が真っ赤なアニスちゃん。あぁ……ある意味清涼剤だ。
「りょうぼさんのてつだいでまくらかばーとりにきたときにかぐだけだもん……///」
さて、このセリフで何人ノックアウトされて何人鼻血を出しただろうか。
ちなみにミリア女史は今後ろを向いて鼻を抑えている。
『確かに私は現在自律行動できませんが、いつかはしてみたいと思っています』
一応願望はあったのか。
「ねぇ、さっきからエルちゃんが黙ったままなんだけど」
そういえば夢の内容に関して何も言ってこなかった気がする。
「まさか……怒ったりしたのか?」
「いや、そういうわけではなくての」
そう言うと、意外そうな顔で、
「割と当たらずとも遠からず……ということじゃ」
「どういうことよ?」
つまり見た目通りの年齢の可能性がある……ってことか?
「わし今年で18じゃ」
その時、ギルドに電撃走る。
「「「「「「「「うえええええええええええええ!?」」」」」」」」
「いやマジで!?ババ言葉だったから結構歳行ってるかと思ったんだが」
「なんてこと……アニスより年下なんて……」
さらに衝撃走る。
「えぇ!?アニスちゃんそれ以上!?ていうか知らなかったのか!?」
「先代の魔術師ギルドのマスターから娘だって紹介されただけで年齢は聞いてないわ。そしてアニスは今年で25よ」
「マジで!?俺より年上!?」
「うん♪にじゅうごさ〜い♪」
ありえん。
「じゃからの……兄様は名実ともにわしの兄様になれるんじゃよ?」
「意外すぎてまだ頭が衝撃から帰って来ないんだが……」
「無視されたのじゃ!?」
「結局見た目通りの年齢なのはあたしだけかぁ……」
ペタペタと自分の体を触って悲しそうに呟くニータ。君の成長は多分もうそこまでだ。
「そう言えばアルが何を暴露したのか言ってないよね?」
ぐ、気づかれた。
「うむ、気になるのぉ。一体何を言ったんじゃ?」
「わり、言おうとした瞬間目が覚めたんだ」
『ダウト』
即座にコールを掛けるAI。
本当に俺を追い詰めるような事しか言わない。
「おいこら、何言ってやがる」
『脈拍上昇、瞳孔の拡張を確認』
嘘発見器か己は。
「どうせだからここで暴露してもらおうかしら♪」
手をわきわきさせてにじり寄ってくるミリアさん。
顔も目も笑っている。明らかに俺を弄り倒すつもりだ……!
「好きな人の話だったりして〜♪」
遠巻きから適当なことを言う桃髪人魚……って誰だテメェ!?
「へぇ、それは是非聞かせてもらわないと」
飛びかかろうと体勢を整えるチャルニ。
「私としても気になるな。聞かせて貰おう」
さらに間合いを計ってこちらを伺うフィー。
「……はぁ」
ため息を付き、仕方がないというふうにうなだれる。
ふと、何かに気づいたようにロビーの奥のほうを見る。
すると、釣られて皆がその方向を見た。
「戦略的撤退!」
隙をついてギルドから飛び出す。
「あぁ!?逃げた!」
気づいたときにはもう遅い。あっという間に裏路地へ転がり込み、通りの死角へ。
追いかけに来た輩を全てやり過ごす。
「今日はヒロトんところで一日時間潰すかな」
俺は隠れながら、今日も閑古鳥が鳴くキサラギ医院を目指すのだった。
「どういう訳だ。俺は聞いてないぜ?」
朝の冒険者ギルドのロビー。いつものテーブルで俺達はいつものように朝の時間を過ごしていた。
それを打ち破るようにニータが何かをおっぱじめたのだ。
「今回のテーマは……ジャン!実は私、〇〇なんです!」
「オイ聞けよ。勝手に話を進めるな」
「それじゃあ先ずは私ことニータから!」
無視か。無視なのか。無視なんですねコンチクショウ三段活用。
「実は私!」
耳を掴み、スポっと取り外し、尻尾を引き抜く。
「ラージマウスではなかったのです!」
「「「「な、なんだってー!?」」」」
「いやいやそれおかしいだろ。お前倉庫でおもいっきりラージマウスのリーダーやってたじゃねぇか」
「いやー、これ結構大変なんですよ。別にチーズが好きでもないのに毎回食べなきゃなりませんし役作りで幼年化する薬まで飲んでるんですよ?ぶっちゃけもう早く人間になりたい」
「やめて!これ以上夢を壊すのはやめて!」
「それじゃあ次はアタシだね」
「こらそこー!?あっさりと流すなー!?」
次に名乗りでたのはチャルニ。
確かに付き合いが短いから知らないことも多いかもしれない。
「実はアタシ……」
槍を自分の目の前に持ってくる。
鎧化するほどゴテゴテした装飾はない。
次の瞬間、槍がぐにゃりと折れ曲がった。
「の持っている槍。千歳飴なんだ」
「「「「な、なんだってー!?」」」」
「お前もう戦うな!飴なんかで戦うな!危ないからギルドに引っ込んでろ!」
「便利なんだよ、これ。非常食にもなるしぐにょーんと曲がって意外な方向から攻撃が」
「無いよ!ぶっちゃけ無茶苦茶使い辛いよ!第一まっすぐ戻すのにえらく手間がかかるじゃないか!」
「それでは次は私だな」
「え!?これさほど気にすることじゃないの!?俺がおかしいだけ!?」
次に立ち上がったのはフィーことフェルシア。
「実はだな……」
そう言うと少し離れた所に立つフィー。
次の瞬間、何かバキバキと割れるような音が聞こえてきた。
フィーの鱗はみるみるうちに巨大化&硬質化していき、甲殻を形作る。
尻尾は太くなり、力強い羽が生えてきた。これは……
「私はドラゴンだったのだ」
「「「「な、なんだってー!?」」」」
「ある意味納得だけどやっぱりおかしいよそれ!?つか羽はどこから出てきたんだよ!?」
「ドラゴンだとわかると尻込みして逃げ出す奴らが多いからな。仕方無しにリザードマンに偽装しているという訳だ。まぁ未だに私を倒せる奴はいないのだが……」
「そりゃドラゴンに勝てるようなバケモノなんて勇者ぐらいのもんだろ……」
「それじゃあ次は私ね♪」
「いや、これサラッと次に行くとこじゃないよね?ね!?」
「実は私」
服に手を掛けるミリアさん。まさか……脱ぐ気か!?脱いだら凄いんですネタは古すぎるぞ!
「待て!それはやめ……」
時既に遅し、彼女の服が宙を舞う。
しかし、その下に何かを着ていて、それは……
「なんじゃそりゃ……」
真っ黒いいかにもなドレス。禍々しいティアラに、赤い玉が連なったネックレス。
「魔王だったのです♪」
「「「「な、なんだってー!?」」」」
「それこそおかしいだろ!?もし本当だとしても魔界放り出して何やっちゃってんのあんた!?」
「旦那に飽きて浮気中」
「こらー!」
「それじゃ、次はわしかの?」
「聞けええええええええ!」
俺の意見を無視して進む暴露大会。頭が痛くなってきた。
「実はの……」
無駄に貯めるエルファ。お前は浅黒いクイズ番組の司会者か。
緊張が頂点に達したとき、彼女が口を開く。
「わし、9歳なんじゃ」
「「「「な、なんだってー!?」」」」
「逆に凄いな!?若干9歳でギルドマスターとサバトのリーダー兼任かよ!?ある意味世界初じゃねぇか!?」
「すごいでしょおにーちゃん♪」
「似合わねぇよ!鳥肌立つほど似合わねぇ!」
「えと……つぎはわたしかな……?」
次はアニスちゃんのようだ。流石に常識がひっくり返るような発言はしないだろう。
「え〜とね?おにいちゃんのへやにおにいちゃんのふくがあるよね?」
まあそりゃあるだろう。俺の部屋なんだし。
「それをね……こっそりもってかえっておにいちゃんのにおいをかいだりしているの」
確かに驚きだが……。
「それぐらいなら今までの奴らに比べればまだまだ……」
「あら?この子のすっごい秘密はもっと別の所にあるのよ?」
「あんたまた事態をかき混ぜるつもりか!?」
「実はこの子ね……」
やたら話を聞いてくれないのはなんでだろうね。
「本当の『初めて』はアルテア君じゃないのよ」
「…………は?」
「?」
意味が分からない。
「こう見えてもこの子って結構いろんな子とシててね。実はもう100人くらい食べちゃってる後なのよ」
「わたしだれをたべちゃったの〜?」
「え〜と、確か……」
「わ〜!わ〜!」
慌てて話を遮る。この話はいろんな意味で不味い。
『次は私が行きましょう』
ナイスカットラプラス!これで妙なことを言い出さなきゃ100点満点だ!
『実は私は……』
ひとりでに立ち上がる鵺。
「へ?」
テーブルの上に跳ね上がると、ガシャガシャと変形していく。
完全に変形が終わるとそこには二足歩行、漆黒のロボットが立っていた。
『トランスフォーマーだったのです』
「「「「な、なんだってー!?」」」」
「最上級に妙なこと言い出しやがったー!?ていうかお前らトランスフォーマー知ってるのかよ!?むしろ一番近くにいる俺が知らなかった事が一番驚きだよ!」
「私一人でも戦えるのでマスターはお役御免ですね」
「あっさりと主人公の存在意義否定しやがった!」
「さぁ、最後はアルだよ。ど〜んと言っちゃえ!ど〜んと!」
お鉢が俺に回ってきた訳だが……。
「暴露って言っても何かあったかな……」
正直殆どの記憶が消えている俺では暴露もクソも無いと思うのだが。
いや、これに乗じてネタにしてしまうか。
「実はな……俺……」
ある程度溜める。何を言い出すか分からないようにするのがミソだ。
「俺、ロリコンなんだ」
「知ってる」
「知っとるの」
「今さらね」
「ろりこんってなーに?」
「周知の事実だな」
「知らない人っていた?」
『皆わかっています』
「チクショオオオオオオオオ!」
〜冒険者ギルド宿舎 アルテア自室〜
「チクショオオオオオオオオ!……ッハ!?」
真っ暗な室内。時刻を確認すると、まだ夜中の3時だった。
『心拍数、脈拍数が通常の1.5倍です。どうかなさいましたか?マスター』
「いや、何でもない。変な夢を見ただけだ」
冗談にしては悪質すぎる夢だな……。心臓に悪すぎる。
『明日も依頼を受けるのであればお早めにお休みください』
「そうするよ……お休み」
気を取り直して、また眼を閉じる。今度は変な夢を見ませんように。
〜冒険者ギルド ロビー〜
「という夢を見たんだ」
いつもの朝、いつものギルドのロビー、いつものテーブルで、夕べ見た夢の話をした。
「この耳と尻尾は本物だよ〜……なんなら触って確かめてみる?」
心外だといった感じで自分の耳と尻尾を触るニータ。
まぁそりゃそうだ。実際に尻尾が動くところも見ているのだから。
「流石に飴で槍の柄は作らないよ……。むしろその発想に感心するけど」
自分の槍をさすっているチャルニ。
「俺も流石に本当だとは思わないさ……。本当だったらガチで引いただろうけど」
我ながらどういう思考回路をしているのだろうか。
「確かにドラゴンは強いが、私は私の種族に誇りを持っているからな。今更別の種族になりたいとは思わないよ」
「今でも十分強いのにドラゴンなんかになったらどうなんのさ……本当に最強生物になっちまうぞ」
そして一生旦那ができないのだろう。
「確かに今の魔王はサキュバスだけど、流石に毎日魔界にある城から離れていたらマズいでしょ」
あんたの人弄りスキルは既に魔王クラスだと思うがね。
「わ、わたしおにいちゃんのふくなんかもっていってないもん……」
顔が真っ赤なアニスちゃん。あぁ……ある意味清涼剤だ。
「りょうぼさんのてつだいでまくらかばーとりにきたときにかぐだけだもん……///」
さて、このセリフで何人ノックアウトされて何人鼻血を出しただろうか。
ちなみにミリア女史は今後ろを向いて鼻を抑えている。
『確かに私は現在自律行動できませんが、いつかはしてみたいと思っています』
一応願望はあったのか。
「ねぇ、さっきからエルちゃんが黙ったままなんだけど」
そういえば夢の内容に関して何も言ってこなかった気がする。
「まさか……怒ったりしたのか?」
「いや、そういうわけではなくての」
そう言うと、意外そうな顔で、
「割と当たらずとも遠からず……ということじゃ」
「どういうことよ?」
つまり見た目通りの年齢の可能性がある……ってことか?
「わし今年で18じゃ」
その時、ギルドに電撃走る。
「「「「「「「「うえええええええええええええ!?」」」」」」」」
「いやマジで!?ババ言葉だったから結構歳行ってるかと思ったんだが」
「なんてこと……アニスより年下なんて……」
さらに衝撃走る。
「えぇ!?アニスちゃんそれ以上!?ていうか知らなかったのか!?」
「先代の魔術師ギルドのマスターから娘だって紹介されただけで年齢は聞いてないわ。そしてアニスは今年で25よ」
「マジで!?俺より年上!?」
「うん♪にじゅうごさ〜い♪」
ありえん。
「じゃからの……兄様は名実ともにわしの兄様になれるんじゃよ?」
「意外すぎてまだ頭が衝撃から帰って来ないんだが……」
「無視されたのじゃ!?」
「結局見た目通りの年齢なのはあたしだけかぁ……」
ペタペタと自分の体を触って悲しそうに呟くニータ。君の成長は多分もうそこまでだ。
「そう言えばアルが何を暴露したのか言ってないよね?」
ぐ、気づかれた。
「うむ、気になるのぉ。一体何を言ったんじゃ?」
「わり、言おうとした瞬間目が覚めたんだ」
『ダウト』
即座にコールを掛けるAI。
本当に俺を追い詰めるような事しか言わない。
「おいこら、何言ってやがる」
『脈拍上昇、瞳孔の拡張を確認』
嘘発見器か己は。
「どうせだからここで暴露してもらおうかしら♪」
手をわきわきさせてにじり寄ってくるミリアさん。
顔も目も笑っている。明らかに俺を弄り倒すつもりだ……!
「好きな人の話だったりして〜♪」
遠巻きから適当なことを言う桃髪人魚……って誰だテメェ!?
「へぇ、それは是非聞かせてもらわないと」
飛びかかろうと体勢を整えるチャルニ。
「私としても気になるな。聞かせて貰おう」
さらに間合いを計ってこちらを伺うフィー。
「……はぁ」
ため息を付き、仕方がないというふうにうなだれる。
ふと、何かに気づいたようにロビーの奥のほうを見る。
すると、釣られて皆がその方向を見た。
「戦略的撤退!」
隙をついてギルドから飛び出す。
「あぁ!?逃げた!」
気づいたときにはもう遅い。あっという間に裏路地へ転がり込み、通りの死角へ。
追いかけに来た輩を全てやり過ごす。
「今日はヒロトんところで一日時間潰すかな」
俺は隠れながら、今日も閑古鳥が鳴くキサラギ医院を目指すのだった。
12/03/06 12:00更新 / テラー
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