幕間〜お前らお見舞いの意味を履き違えているだろ〜
〜キサラギ医院 治療室〜
「で、勝手に突っ込んで、勝手に戦って、勝手に怪我だらけになったんだ」
「面目ない……」
「一声掛けてくれれば手伝ったのにのぉ……」
「面目ない……」
「依頼にもなってないから一銭の得にもならないのにねぇ……」
「面目ない……」
「おにいちゃんのばか……」
「面目ない……」
『最低ですね』
お前は共犯だ。
俺はベッドの上にありながらも、針の筵というなかなかできないレア体験をしている。
日本人は希少な物が好きだろ?誰か代わってくれないか?
「ほらほら、彼は一応怪我人なんだからあまり弄らないでくれよ?」
こういう時は医者のヒロトが頼もしかった。
「「「ヘタレ医者はだまって(て)(なさい♪)(おれ)」」」
「……はい……」
訂正。全然役に立たねぇ。
「ま、これからは無茶しないって言うなら許してあげるよ」
「次はわしも行くのじゃ!」
「今度はあなたの追っている怪物の討伐依頼が出るまでおとなしくしなさいね?」
「いなくなったりしちゃやだよ?」
「わかりました……ゴメンナサイ」
なじられるのは堪えるが、心配されるのは悪い気はしない。
「……ふふっ……」
隣のベッドから声が聞こえる。
「いいね、あんた……そんなに心配してくれる人がいてさ……」
ホーネットの女性が体を起こしてこちらを見ていた。
「起きても大丈夫なのか?傷口が開かないように休んでおいたほうがいいぞ?」
「大丈夫よ。これでも魔物だもの」
彼女は眩しそうに微笑んでいる。
「ていうかさ、また新しい顔が増えるよね」
ニータがジト目でこちらを睨んでくる。
「あら、甲斐性があっていいじゃない。これだけの女性に好かれるって事はそれだけ魅力的って事なんだから。♪」
相変わらず燃料の投下しかしねぇなあんたは。
「このようなバインバインよりつるぺたのの方が好きじゃろ?兄様は」
自分の胸をペタペタ触っているエルファ。別につるぺたオンリーと言った覚えはない。
「おねえちゃんもぼうけんしゃになるの?」
アニスちゃん、ここでの良心は君だけだ。
「そうね、それもいいかもね……」
そう言って視線を彷徨わせる。何かを探しているのだろうか?
「そういえば随分と前に槍を無くしていたわね。新しいのを作らなくちゃ」
そりゃ化物状態じゃ槍は持てないだろ。
「さて、アルの暴走に関しては許したけど……」
ニータの目が光る。
「あちこち手を出したことへのお仕置きはまだだよねぇ……♪」
「おい、ニータ……?なんか目が怖いぞ?」
「道具ならズラっと持ってきておるのじゃ♪」
鞄から小道具を取り出すエルファ。その手には羽根、刷毛、筆、ねこじゃらしなどが握られていた。
「何に使うつもりだよその道具は!?」
「あら、楽しそうね?私も混ざろうかしら♪」
鬼!悪魔!あ、悪魔だった。
「えと、えと……え……え……?」
アニスちゃんだけが事態が理解出来ていない様子。
「それじゃ、お仕置きタ〜イム♪」
ニータとエルファが手に道具を取り、俺に飛び掛る。ミリア女史は手にねこじゃらしを持って俺の足側に……ってちょっと待て!
「お前ら!何をするつもりだ!やめ……アッーーーーーー!」
筋肉痛の時って大笑いすると物凄く痛いよね。危うく死にかけたよ。
『私には筋肉が無いのでわかりません』
お前には言ってない。
パッポー〜十分後〜パッポー
「……(ピクピク)」
「あ〜スッキリした♪」
「悶える兄様も可愛いのじゃ♪」
「若いっていいわぁ……♪」
散々くすぐられ、俺は虫の息になっていた。
ヒデェ事しやがる……オレノカラダハボドボドダ!
「だいじょうぶ?おにいちゃん……」
心配そうに覗き込んでくるアニスちゃん。マジ天使。
「でも……わたしもすこしやってみたかったかも……♪」
アニスちゃんマジ悪魔。
「おいあんた……覚えておけ……」
首だけ動かして隣のベッドへ向かって言う。
「仲間が増えるってことはこう言うのもまとめて増えるって事だ。気を付けろよ」
「……ック……」
彼女は顔を伏せている。地雷でも踏んだか?
「あは……あはははははは!」
唐突に笑い出したよこの子。
「いた……お腹……おなかいたいぃぃ……!」
そりゃ大笑いすりゃ腹に響くだろう。
「いいね、うん。すごくいいよ……」
痛みなのか笑いで出たのか、出た涙を拭く。
「あはは……ホント、何やってたんだろ、アタシ。勝手に独りになって、勝手に壁作って、勝手に悲壮感に浸って……ホント……馬鹿みたい」
涙を拭きながら、安堵の涙を流す。
「でも、これからは独りじゃない」
「うん、独りじゃない」
見つめ合う瞳。二人だけの世界。
「む〜……」
そしてほっぺたを膨らませるアニスちゃん……。
「アニスちゃん?君は俺に馬乗りになって何をしようとしているんでせうか?」
冷や汗どころか脂汗までが滝のように流れ落ちているのがわかる。
「おしおき」
「おしおきって……」
「おしおき」
「あの……アニスちゃん?」
「おしおきだもん」
「待って!そのハケ何に使うつもり!?」
「えい♪」
「きゃあああああああ!?」
この件で幼女恐怖症にならなかった俺を誰か褒めてください。マジで。
「災難だったねぇ」
まだ顔が引き攣っている彼女。俺から貰い笑いをして彼女も割と苦しんだらしい。
「死ぬより辛い事がこの世にあるなんて思わなかったぜ……」
幼女三人衆+快楽主義者のサキュバスは様子を見に来たマロンに叩き出されていた。
残された俺達は互いに息を整えて、何とか笑撃と激痛から解放された。
「そういえば」
「ん?」
「あんたってアタシの名前、知らないよね?」
そういやそうだった。
「アタシが元居た巣っていうのは変わった風習でね、基本的に個人名ってのは無いんだ」
それが一塊からの離脱って事態を引き起こした原因の一つか。
「だからアタシが巣から出たときに、アタシはアタシの名前を自分で付けたんだ。チャルニ。それがアタシの名前だよ」
それが、唯一の自分の象徴だというように、誇らしげに語る。
「黒……か」
「黒?」
「俺の知っている国の言語で黒を指し示す言葉だよ。黒は何色にも染まらない。何に溶かしてもその色で在り続ける」
「偶然とはいえ、面白い名前を付けたもんだね」
「そうだな……不思議なことだ」
夕日で紅く染まる病室。
「疲れたな……寝るか」
「そうだね……寝よっか」
笑撃で破壊された全身の筋肉を癒すべく、俺は目を閉じた。
「で、勝手に突っ込んで、勝手に戦って、勝手に怪我だらけになったんだ」
「面目ない……」
「一声掛けてくれれば手伝ったのにのぉ……」
「面目ない……」
「依頼にもなってないから一銭の得にもならないのにねぇ……」
「面目ない……」
「おにいちゃんのばか……」
「面目ない……」
『最低ですね』
お前は共犯だ。
俺はベッドの上にありながらも、針の筵というなかなかできないレア体験をしている。
日本人は希少な物が好きだろ?誰か代わってくれないか?
「ほらほら、彼は一応怪我人なんだからあまり弄らないでくれよ?」
こういう時は医者のヒロトが頼もしかった。
「「「ヘタレ医者はだまって(て)(なさい♪)(おれ)」」」
「……はい……」
訂正。全然役に立たねぇ。
「ま、これからは無茶しないって言うなら許してあげるよ」
「次はわしも行くのじゃ!」
「今度はあなたの追っている怪物の討伐依頼が出るまでおとなしくしなさいね?」
「いなくなったりしちゃやだよ?」
「わかりました……ゴメンナサイ」
なじられるのは堪えるが、心配されるのは悪い気はしない。
「……ふふっ……」
隣のベッドから声が聞こえる。
「いいね、あんた……そんなに心配してくれる人がいてさ……」
ホーネットの女性が体を起こしてこちらを見ていた。
「起きても大丈夫なのか?傷口が開かないように休んでおいたほうがいいぞ?」
「大丈夫よ。これでも魔物だもの」
彼女は眩しそうに微笑んでいる。
「ていうかさ、また新しい顔が増えるよね」
ニータがジト目でこちらを睨んでくる。
「あら、甲斐性があっていいじゃない。これだけの女性に好かれるって事はそれだけ魅力的って事なんだから。♪」
相変わらず燃料の投下しかしねぇなあんたは。
「このようなバインバインよりつるぺたのの方が好きじゃろ?兄様は」
自分の胸をペタペタ触っているエルファ。別につるぺたオンリーと言った覚えはない。
「おねえちゃんもぼうけんしゃになるの?」
アニスちゃん、ここでの良心は君だけだ。
「そうね、それもいいかもね……」
そう言って視線を彷徨わせる。何かを探しているのだろうか?
「そういえば随分と前に槍を無くしていたわね。新しいのを作らなくちゃ」
そりゃ化物状態じゃ槍は持てないだろ。
「さて、アルの暴走に関しては許したけど……」
ニータの目が光る。
「あちこち手を出したことへのお仕置きはまだだよねぇ……♪」
「おい、ニータ……?なんか目が怖いぞ?」
「道具ならズラっと持ってきておるのじゃ♪」
鞄から小道具を取り出すエルファ。その手には羽根、刷毛、筆、ねこじゃらしなどが握られていた。
「何に使うつもりだよその道具は!?」
「あら、楽しそうね?私も混ざろうかしら♪」
鬼!悪魔!あ、悪魔だった。
「えと、えと……え……え……?」
アニスちゃんだけが事態が理解出来ていない様子。
「それじゃ、お仕置きタ〜イム♪」
ニータとエルファが手に道具を取り、俺に飛び掛る。ミリア女史は手にねこじゃらしを持って俺の足側に……ってちょっと待て!
「お前ら!何をするつもりだ!やめ……アッーーーーーー!」
筋肉痛の時って大笑いすると物凄く痛いよね。危うく死にかけたよ。
『私には筋肉が無いのでわかりません』
お前には言ってない。
パッポー〜十分後〜パッポー
「……(ピクピク)」
「あ〜スッキリした♪」
「悶える兄様も可愛いのじゃ♪」
「若いっていいわぁ……♪」
散々くすぐられ、俺は虫の息になっていた。
ヒデェ事しやがる……オレノカラダハボドボドダ!
「だいじょうぶ?おにいちゃん……」
心配そうに覗き込んでくるアニスちゃん。マジ天使。
「でも……わたしもすこしやってみたかったかも……♪」
アニスちゃんマジ悪魔。
「おいあんた……覚えておけ……」
首だけ動かして隣のベッドへ向かって言う。
「仲間が増えるってことはこう言うのもまとめて増えるって事だ。気を付けろよ」
「……ック……」
彼女は顔を伏せている。地雷でも踏んだか?
「あは……あはははははは!」
唐突に笑い出したよこの子。
「いた……お腹……おなかいたいぃぃ……!」
そりゃ大笑いすりゃ腹に響くだろう。
「いいね、うん。すごくいいよ……」
痛みなのか笑いで出たのか、出た涙を拭く。
「あはは……ホント、何やってたんだろ、アタシ。勝手に独りになって、勝手に壁作って、勝手に悲壮感に浸って……ホント……馬鹿みたい」
涙を拭きながら、安堵の涙を流す。
「でも、これからは独りじゃない」
「うん、独りじゃない」
見つめ合う瞳。二人だけの世界。
「む〜……」
そしてほっぺたを膨らませるアニスちゃん……。
「アニスちゃん?君は俺に馬乗りになって何をしようとしているんでせうか?」
冷や汗どころか脂汗までが滝のように流れ落ちているのがわかる。
「おしおき」
「おしおきって……」
「おしおき」
「あの……アニスちゃん?」
「おしおきだもん」
「待って!そのハケ何に使うつもり!?」
「えい♪」
「きゃあああああああ!?」
この件で幼女恐怖症にならなかった俺を誰か褒めてください。マジで。
「災難だったねぇ」
まだ顔が引き攣っている彼女。俺から貰い笑いをして彼女も割と苦しんだらしい。
「死ぬより辛い事がこの世にあるなんて思わなかったぜ……」
幼女三人衆+快楽主義者のサキュバスは様子を見に来たマロンに叩き出されていた。
残された俺達は互いに息を整えて、何とか笑撃と激痛から解放された。
「そういえば」
「ん?」
「あんたってアタシの名前、知らないよね?」
そういやそうだった。
「アタシが元居た巣っていうのは変わった風習でね、基本的に個人名ってのは無いんだ」
それが一塊からの離脱って事態を引き起こした原因の一つか。
「だからアタシが巣から出たときに、アタシはアタシの名前を自分で付けたんだ。チャルニ。それがアタシの名前だよ」
それが、唯一の自分の象徴だというように、誇らしげに語る。
「黒……か」
「黒?」
「俺の知っている国の言語で黒を指し示す言葉だよ。黒は何色にも染まらない。何に溶かしてもその色で在り続ける」
「偶然とはいえ、面白い名前を付けたもんだね」
「そうだな……不思議なことだ」
夕日で紅く染まる病室。
「疲れたな……寝るか」
「そうだね……寝よっか」
笑撃で破壊された全身の筋肉を癒すべく、俺は目を閉じた。
12/03/06 11:54更新 / テラー
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