10月3日 絶世の美女に告白されましたがテンションが上がりません
今日も耳障りな目覚まし時計のアラームを手探りで止める。
朝の気温も徐々に冷え込む中、段々と布団から抜け出しにくくなってくる季節なのだけれど……僕にはまた別に起きにくい理由がある。
「(はぁ……どうやって顔を合わせればいいんだろ)」
文化祭のあの日。姉ちゃんに告白されてからまともに顔を見ることができない。
恥ずかしさとか後ろめたさとかで頭の中がグチャ混ぜになってしまってどういう表情をすればいいのかわからないのだ。
自然一緒に居合わせても姉ちゃんから顔をそむける日々が続いている。
そのたびに姉ちゃんは寂しそうな顔をするので、ここ最近の僕の罪悪感は常に満杯状態だ。今ならダムを後悔で満タンにできそうである。
「ヴぁ〜……おきたくない〜……」
寝起きはいい方だと自負していたけれど、ここ最近の僕は布団から出るまで10分近く掛かっている。故に毎日通学が駆け足状態だ。
「このままじゃ……いけないよね」
このまま放置しては精神衛生上良くない。姉ちゃんの為にも、僕の為にも、この問題を早々に解決しなければ。
「……よし、っと!起きよう!」
顔を両手で叩いて気合を入れ、手早く着替えを済ませてリビングへ……
「……あ」
「っ!」
と、自室のドアを開けた瞬間に姉ちゃんと鉢合わせしてしまった。
いくらなんでもまだ心の準備が……
「もう…………」
「……え?」
なんだか姉ちゃんが僕と顔を合わせた瞬間ぶつぶつと呟いている。
髪で顔が隠れてどのような表情をしているのかがわからないので地味に怖い。
「もう、我慢できないよぉぉおおおおお!」
「う、うわぁ!?」
ほぼ反応できないような速度で抱きつかれて壁に押し付けられ、顔が姉ちゃんの胸で押しつぶされる。息が、できない。
「よう君成分略してようぶん補給〜!ぎゅぅぅぅううう♪」
「─────!─────!」
じたばたともがいてみるものの後ろは壁、さらに窒息による酸欠で抵抗力がガリガリと奪われていく。
姉ちゃんはというと触れ合っているだけでご機嫌なようで、僕の様子には一切気づいていない。
あぁ、人間いつかは死ぬとは思っていたけど僕の死因は姉ちゃんの胸による窒息死かぁ……。
締まらない死に方だけどこれはこれで役得……
「何で朝っぱらから失神していたの?」
「姉ちゃんに絞め落とされた」
そんな朝です。
───────────────────────────────────────────────────────
姉ちゃんは面白そうなものはなんでも真似をしようとする。
『あ〜れ〜、ご無体な〜』
「うわぁ……」
なんだか目を輝かせて帯を引っ張られてくるくると回る例のアレをテレビでみている。
─10分後─
「よう君よう君!」
「……一応やりたい事はわかるけど何をしたいかだけ聞いておくよ」
「引っ張って引っ張って!」
「……はぁ」
そこには細長くたたんだシーツを体に巻きつけた姉ちゃんが鼻息を荒くして立っていた。
駄々をこねられても面倒なので端っこを持って引っ張ってあげると、姉ちゃんは嬉しそうにくるくると回り始めた。
「あ〜れ〜♪」
くるくると回って……
─カンッ!─
「〜〜〜〜〜〜〜!」
「痛そうだね……」
調子に乗って回っていたら手の甲をタンスにぶつけて悶絶する姉ちゃんがいましたとさ
───────────────────────────────────────────────────────
ジリジリと未だにその勢いを残す夏の太陽光線が天空から降り注ぐ。
グラウンドには僕を含めた全校生徒がじっと自分達の出番を待ち、運びだされた椅子に座っている。
じっとりと肌を流れる汗を拭いながら耐えていると、隣に座った悪友晴彦が放つ悪態が聞こえてきた。
「あ“っづ……。何も予行演習でも炎天下での待機はしなくていいだろうに……」
「それも含めて予行演習なんだよ。どうせ本番でも同じ目に遭うんだったら今慣れておいた方が楽だと思うけど」
「どうせ楽なら本番一回で済ませてほしいぜ……。────あ“、スポドリ切れた」
物欲しそうな目で僕の水筒を見てきたので押し付けてやると嬉々として飲み始めた。
「一口百円」
「ぶふっ!ちょ、たけぇ!?」
「冗談だよ」
やれやれ、脳天気でいい事だ。こっちは突然の姉ちゃんの告白で頭の中をかき乱されてナーバスになっているって言うのに。
「なんだか元気が無さそうだな。何か悩みがあるならお兄さんにいってみなさい」
とはいえ、何だかんだで友人の変調に敏感なのがこいつだっけ。
どうせなのでお言葉に甘えさせてもらおう。
「女子から告白された」
「なん……だと……」
どうしてそうも衝撃を隠そうとしないのかね。
「どうしたんだい?肉食系男子」
「いや、まぁうん……。それで、なんて答えたんだ?」
そう、それなのだ。僕はあの時……
「……逃げた」
「はい?」
姉ちゃんがかつて言っていた、別の世界……。それが怖くなってあの場から逃げ出してしまったのだ。
僕だって女心に完全に鈍いってワケじゃない。あの場の選択が最悪だったことぐらいはわかっている。
「なんだ、裸足で逃げ出すほど不細工だったのか?」
「ううん、ものすごい美人だよ」
「よし、一発殴らせろ」
息で湿らせたげんこつを片手で受け止めると(大体いつもの流れなので向こうも承知している)話を続ける。
「その子海外の子でね……一度承諾すると恋人から一気に結婚までストレートで行きそうで……選択権無しで海外移住に持ち込まれそうなんだ」
「随分重いな」
多分向こうの世界の話が無ければ一発で飛びついていたかもしれない。
第一姉ちゃんとはいえ便宜上な訳だし、血のつながりは一切無いのだから。
それに、うん、男子高校生垂涎というか、ね。
「僕もそれなりに日本の生活が気に入っているんだよ」
「その意見はわからんでもないけどねぇ……あ、わりぃ」
唐突に謝られて何かと思いながら彼の方を向くと……
「水筒の中身全部飲んじまった」
「割と本気で殴っていいかな?」
「ちょ、やめろ! お前の本気は地味に痛いから!」
───────────────────────────────────────────────────────
姉ちゃんは何故か猫に嫌われやすい
「ほれほれ〜」
そこいらで見つけた野良猫に猫じゃらしを振っていると……
「あいたっ!?」
何か人間とは違うものとわかっているのか、何かしらしっぺ返しを食らう。
猫にサマーソルトで蹴られる人なんて初めて見たよ。
───────────────────────────────────────────────────────
「財布〜財布っと」
晴彦に飲み干されてしまったスポーツドリンクの代わりを買うべく自分のロッカーを開けて財布から小銭を取り出す。
次の自分の競技の練習まではまだまだ時間がある。のんびり戻ったとしても十分間に合うはずだ。
「はっ……あん……んっ……」
ふと、微かにだが声が聞こえてくる。
基本今の時間は全学年体育祭の予行演習でグラウンドに出ているため、校舎内には誰もいない。
なのに、声が聞こえる。
「(誰か体調悪くなって休んでいるのかな?)」
発生源は……近い。というか、僕の教室の中からだ。
調子が悪いんだったら保健室に行くように薦めてみようかな……
苦しげな声が聞こえてくる教室の扉に手を掛けて開くと……
「はっ……はっ……ようくんのにおい……すー……はー……くんっ……!」
僕の椅子に座ってシャツを顔に押し付けながら自慰に耽る姉ちゃんがいた。
「ぁ……ようくんの椅子が私のでべちゃべちゃだ……。いいよね? 私の匂いいっぱい付けちゃっても……」
匂いを付けるなんてレベルではない。床にまで姉ちゃんの汁が飛び散って軽く水たまりを作ってしまっている。
教室の中にはむわりと女性が発する甘ったるいような酸っぱいような匂いが充満してしまっている。
「はぁ……はぁ……ようくん……ようくぅん……あ”」
しまった、バレた。
「い、いつからそこにいたの?」
「えと……姉ちゃんが僕のシャツに顔を押し当てながら……その……」
本当の姉弟だったなら気まずい事この上ないだろう。
しかし僕にとって姉ちゃんは義理どころか完全に他人だと自覚しているのだ。
しかもその……僕をオカズにしていたと思うと……うわぁ……うわぁ……!
「……? はぁ〜……そっか♪」
何か合点が行ったような素振りをする姉ちゃん。
そして僕へ向けて手招きをしてくる。
「よう君、ちょっとこっちおいで?」
近づいてはいけないような気がする。
しかし、教室に充満する匂いが僕の理性をじわりと舐めとかしていく。
ふらふらと、まるで夢遊病かなにかのように足が勝手に動いて姉ちゃんへと体を運んでいく。
そして、ぽすりと姉ちゃんの胸の中に顔が埋もれてしまった。
体操服から立ち上ってくる姉ちゃんの汗とほのかに甘い香りを放つ体臭に包まれてぐらぐらと頭が揺れる。
「ふふっ……♪いい子いい子……」
頭の後ろを姉ちゃんに撫でられると、それだけで全身が多幸感に支配されてもっと身を委ねたくなってしまう。
「ちょっと、待っててね……んしょと」
姉ちゃんが足を折り曲げて何かゴソゴソとやっている。
でも、頭がぼーっとしてそれが一体何を意味するのかまでは頭がまわらない。
「はい、ここ。お姉ちゃんの膝の上に座って?」
「うん……」
手を引かれて僕の椅子に腰掛ける姉ちゃんの膝の上へ座って背中を預ける。
こうしてみると姉ちゃんは意外と高身長だという事がわかる。
僕を膝の上に乗せても僕の肩越しに顔を覗かせることができるぐらいだ。
「よう君のここ、もうパンパンだね。苦しいでしょ? 今脱がせてあげるからね〜」
ジャージの下の紐が緩められ、下着ごと脱がされると硬く張り詰めた僕のモノが鎌首をもたげるように飛び出して、軽く下腹部とぶつかる。
「ん、元気元気♪」
反り返るように立ち上がったそれを確認すると細く白い指を絡めて上下にしごいてくる。
溢れだしたカウパーを裏筋に塗りつけられて揉み上げられると腰が浮きそうな程に気持ちがいい。
背中には姉ちゃんの柔らかくて大きめな胸が押し当てられ、柔らかさと温かさで僕のモノはより硬く、太く勃起してしまう。
「今日はよう君にもっと特別なサービスしちゃおうかな♪」
すると、今まで片手で隠していた何かを僕の顔へと押し付けてくる。
白くて、所々レースが入っている薄い布の塊だ。そして、僕はこれをどこかで見たことがある。
「これ、何だと思う? いっぱい匂いを嗅いでみればわかるかなぁ?」
ろくな思考もできず、言われるがままにその薄布の匂いを吸ってみる。
ほんのりとシトラス系の香りが漂ってくる他、それとは正反対の甘酸っぱいような……生物のような匂いも混ざっている。
「これね、さっきまでお姉ちゃんが一人エッチしていた時に履いていたパンツなんだよ?」
その一言を聞いて、頭が理解した途端。ただでさえ反り返ったモノが痛みを覚えるぐらいに硬くなる。
姉ちゃんはそれに嬉々として指を絡めて優しくしごき上げてきた。
「すっごく硬くなったね……♥ お姉ちゃんのパンツでそこまで興奮した?」
もはや返事をする余裕すらない。
下半身を猛烈に襲う快感に翻弄されながらかろうじて何度か頷くと、嬉しそうに胸を背中へと押し付けてくる。
柔らかに形を返るそれに襲われて、もはやまともな思考能力は完全に砕け散ってしまった。
姉ちゃんへ体を全て預け、与えられる快楽を素直に受ける。
もう頭の中は『きもちいい』しか残っていなかった。
「よう君かわいいよ……あむ」
不意に、耳たぶを熱くぬめる何かが這いまわった。
ゾクゾクとした悪寒にも似た気持ちよさが背筋を駆け上がっていく。
姉ちゃんの顔の位置から推測するに耳たぶを唇で咥えられて舐め回されているのだと思う。
完全に捕食する側とされる側の構図なのだけれど、僕は……
「(しあわせぇ……)」
全てを投げ出してでもその快楽に浸っていたくなる程幸せを感じていた。
まるで全身を姉ちゃんの優しさに包まれているようで、さらに鼻腔から入ってくる姉ちゃんの香りは頭の中をドロドロに溶かしてしまいそうなほどいい匂いで……麻薬に近い何かが含まれているのではなかろうかと勘ぐってしまう程だ。
姉ちゃんの指が裏筋をにゅるりと撫でる度、姉ちゃんの下着の匂いが鼻に飛び込んでくる度、そして豊満な胸が背中に押し付けられる度にモノの根元が締め付けられるような圧迫感を覚える。
「よう君のおちんちんビクビクしてきたよ? もうすぐ出そうなのかなぁ?」
姉ちゃんの問いかけに夢中になって頷く。
頭のなかは既に出したい、射精したいでうめつくされてしまった。
口からは言葉にならないようなうめき声が情けなく漏れ出している。
そして、どうしようもなく自覚してしまう自分の気持ち。
下手をしたら口をついて出てしまいそうなその言葉。
「(好きぃ……姉ちゃん大好きぃ……)」
気持ちよさでまともに口が動かないのが幸いしたのか……はたまた口まで下着で押さえられていたことが良かったのか、その言葉は姉ちゃんに耳に届くことはなかった。
「っ……〜〜〜〜〜!!!」
「んっ……あったかぁい……よう君のいっぱい出てるよ?」
全身がガクガクと震え、下半身が痙攣して自分の意志とは全く関係無しに腰が前後に揺さぶられる。
目の前がチカチカと点滅して頭の中が真っ白だ。
射精した後も姉ちゃんの手はくすぐったくならない程度にゆっくりと僕のモノを愛撫し続けていて、それがこの上なく心地いい。
もしその人の気持ちや思っていることを視覚化できる道具があれば、多分僕の周りには無数のハートマークが踊っているような気がする。
「よう君、左向いて?」
「ん……」
左を向くとそこには姉ちゃんの顔があり、ほぼ間髪入れずにキスで唇を塞がれる。
まるで別の生き物のようにお互いの下がぬめりを持った唾液を交えて絡み合う。
姉ちゃんと口だけでも繋がれるのが嬉しくて、夢中で彼女の口の中を貪った。
「気持よかった?」
「……うん」
何だかもう顔が合わせられない。というか、顔が熱い。炎とか出てないよね?顔面ファイヤー努力マンとか。
「もう……よう君可愛すぎだよ。途中でお姉ちゃんの手をきゅって握ってくるし……心臓壊れちゃうかと思ったよ?」
「あぅ……」
全然自覚がなかったけれど、どうやら姉ちゃんの手にすがりついていたらしい。快感て怖い。
「ね、よう君」
「な、何?」
ほとんど気付かれないうちに詰め寄られ、腕を掴まれていた。
僕を見つめる姉ちゃんの目はいつになく真剣だ。
「この間の返事、もらえないかな……。このままだとお姉ちゃん、我慢できなくてよう君を無理やり押し倒しちゃうかもしれない……」
「それ、は……」
どうしよう。今度は腕も掴まれているから……逃げられそうにない。
それに、今の精神状態じゃ断ることなんてできそうもない。
あまりにも姉ちゃんの事が好きになりすぎて……うっかり口を開けば後戻りできなさそうな言葉が出てしまいそう。
『只今より、学年別対抗、綱引きが、行われます。各学年は、所定の位置に、集合してください。繰り返します』
その時、グラウンドから放送で次の種目の放送が流れてきた。
学年別……ってまずい!
「姉ちゃん、次の種目僕も姉ちゃんも出るんだからこんな所にいたらまずいよ! 早く戻らなきゃ!」
「え、えぇ!? まだ返事を……」
「言ってる場合じゃないよ! 後で散々文句を言われるのは僕らなんだからね!?」
換気の為に教室の窓を全開にし、姉ちゃんの手を取って走り出す。
姉ちゃんはほとほと困り果てながらも僕に手を引かれて一緒に走りだしてくれた。
ごめんね、姉ちゃん。今はまだ……僕の心の整理が付いていないから。
でも、いつか必ず言ってみせるよ。
僕も、姉ちゃんの事が大好きなんだって。
〜おまけ〜
なんとか綱引きの練習にも間に合い、一息ついて飲み物を自販機まで買いに行った時の事だ。
小銭を入れてあるポケットをまさぐると、小銭に硬い感触意外に妙に柔らかい手触りも感じた。まるで布か何かのようだ。
「なんだ……ろ……!?!?!?!?」
ポケットからそれを引っ張りだした僕の頭が一気にパニック状態に陥る。
引っ張りだしたそのひらひらとした白い布の塊は……。
「な……ななななな!?」
姉ちゃんの……パンツ……!?
慌ててジャージのポケットの中に突っ込むと、ひらりと何かが足元に落ちる。どうやら折りたたんだメモのようだ。
拾い上げて広げてみると、見覚えのある筆跡でこう書かれていた。
『このパンツはよう君にあげるね♪ どう使うかは……おまかせ〜 byお姉ちゃん』
どう使うかって……いや、それ以前に……。
「今の……姉ちゃんは……」
履 い て な い
「……あ、鼻血鼻血……」
朝の気温も徐々に冷え込む中、段々と布団から抜け出しにくくなってくる季節なのだけれど……僕にはまた別に起きにくい理由がある。
「(はぁ……どうやって顔を合わせればいいんだろ)」
文化祭のあの日。姉ちゃんに告白されてからまともに顔を見ることができない。
恥ずかしさとか後ろめたさとかで頭の中がグチャ混ぜになってしまってどういう表情をすればいいのかわからないのだ。
自然一緒に居合わせても姉ちゃんから顔をそむける日々が続いている。
そのたびに姉ちゃんは寂しそうな顔をするので、ここ最近の僕の罪悪感は常に満杯状態だ。今ならダムを後悔で満タンにできそうである。
「ヴぁ〜……おきたくない〜……」
寝起きはいい方だと自負していたけれど、ここ最近の僕は布団から出るまで10分近く掛かっている。故に毎日通学が駆け足状態だ。
「このままじゃ……いけないよね」
このまま放置しては精神衛生上良くない。姉ちゃんの為にも、僕の為にも、この問題を早々に解決しなければ。
「……よし、っと!起きよう!」
顔を両手で叩いて気合を入れ、手早く着替えを済ませてリビングへ……
「……あ」
「っ!」
と、自室のドアを開けた瞬間に姉ちゃんと鉢合わせしてしまった。
いくらなんでもまだ心の準備が……
「もう…………」
「……え?」
なんだか姉ちゃんが僕と顔を合わせた瞬間ぶつぶつと呟いている。
髪で顔が隠れてどのような表情をしているのかがわからないので地味に怖い。
「もう、我慢できないよぉぉおおおおお!」
「う、うわぁ!?」
ほぼ反応できないような速度で抱きつかれて壁に押し付けられ、顔が姉ちゃんの胸で押しつぶされる。息が、できない。
「よう君成分略してようぶん補給〜!ぎゅぅぅぅううう♪」
「─────!─────!」
じたばたともがいてみるものの後ろは壁、さらに窒息による酸欠で抵抗力がガリガリと奪われていく。
姉ちゃんはというと触れ合っているだけでご機嫌なようで、僕の様子には一切気づいていない。
あぁ、人間いつかは死ぬとは思っていたけど僕の死因は姉ちゃんの胸による窒息死かぁ……。
締まらない死に方だけどこれはこれで役得……
「何で朝っぱらから失神していたの?」
「姉ちゃんに絞め落とされた」
そんな朝です。
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姉ちゃんは面白そうなものはなんでも真似をしようとする。
『あ〜れ〜、ご無体な〜』
「うわぁ……」
なんだか目を輝かせて帯を引っ張られてくるくると回る例のアレをテレビでみている。
─10分後─
「よう君よう君!」
「……一応やりたい事はわかるけど何をしたいかだけ聞いておくよ」
「引っ張って引っ張って!」
「……はぁ」
そこには細長くたたんだシーツを体に巻きつけた姉ちゃんが鼻息を荒くして立っていた。
駄々をこねられても面倒なので端っこを持って引っ張ってあげると、姉ちゃんは嬉しそうにくるくると回り始めた。
「あ〜れ〜♪」
くるくると回って……
─カンッ!─
「〜〜〜〜〜〜〜!」
「痛そうだね……」
調子に乗って回っていたら手の甲をタンスにぶつけて悶絶する姉ちゃんがいましたとさ
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ジリジリと未だにその勢いを残す夏の太陽光線が天空から降り注ぐ。
グラウンドには僕を含めた全校生徒がじっと自分達の出番を待ち、運びだされた椅子に座っている。
じっとりと肌を流れる汗を拭いながら耐えていると、隣に座った悪友晴彦が放つ悪態が聞こえてきた。
「あ“っづ……。何も予行演習でも炎天下での待機はしなくていいだろうに……」
「それも含めて予行演習なんだよ。どうせ本番でも同じ目に遭うんだったら今慣れておいた方が楽だと思うけど」
「どうせ楽なら本番一回で済ませてほしいぜ……。────あ“、スポドリ切れた」
物欲しそうな目で僕の水筒を見てきたので押し付けてやると嬉々として飲み始めた。
「一口百円」
「ぶふっ!ちょ、たけぇ!?」
「冗談だよ」
やれやれ、脳天気でいい事だ。こっちは突然の姉ちゃんの告白で頭の中をかき乱されてナーバスになっているって言うのに。
「なんだか元気が無さそうだな。何か悩みがあるならお兄さんにいってみなさい」
とはいえ、何だかんだで友人の変調に敏感なのがこいつだっけ。
どうせなのでお言葉に甘えさせてもらおう。
「女子から告白された」
「なん……だと……」
どうしてそうも衝撃を隠そうとしないのかね。
「どうしたんだい?肉食系男子」
「いや、まぁうん……。それで、なんて答えたんだ?」
そう、それなのだ。僕はあの時……
「……逃げた」
「はい?」
姉ちゃんがかつて言っていた、別の世界……。それが怖くなってあの場から逃げ出してしまったのだ。
僕だって女心に完全に鈍いってワケじゃない。あの場の選択が最悪だったことぐらいはわかっている。
「なんだ、裸足で逃げ出すほど不細工だったのか?」
「ううん、ものすごい美人だよ」
「よし、一発殴らせろ」
息で湿らせたげんこつを片手で受け止めると(大体いつもの流れなので向こうも承知している)話を続ける。
「その子海外の子でね……一度承諾すると恋人から一気に結婚までストレートで行きそうで……選択権無しで海外移住に持ち込まれそうなんだ」
「随分重いな」
多分向こうの世界の話が無ければ一発で飛びついていたかもしれない。
第一姉ちゃんとはいえ便宜上な訳だし、血のつながりは一切無いのだから。
それに、うん、男子高校生垂涎というか、ね。
「僕もそれなりに日本の生活が気に入っているんだよ」
「その意見はわからんでもないけどねぇ……あ、わりぃ」
唐突に謝られて何かと思いながら彼の方を向くと……
「水筒の中身全部飲んじまった」
「割と本気で殴っていいかな?」
「ちょ、やめろ! お前の本気は地味に痛いから!」
───────────────────────────────────────────────────────
姉ちゃんは何故か猫に嫌われやすい
「ほれほれ〜」
そこいらで見つけた野良猫に猫じゃらしを振っていると……
「あいたっ!?」
何か人間とは違うものとわかっているのか、何かしらしっぺ返しを食らう。
猫にサマーソルトで蹴られる人なんて初めて見たよ。
───────────────────────────────────────────────────────
「財布〜財布っと」
晴彦に飲み干されてしまったスポーツドリンクの代わりを買うべく自分のロッカーを開けて財布から小銭を取り出す。
次の自分の競技の練習まではまだまだ時間がある。のんびり戻ったとしても十分間に合うはずだ。
「はっ……あん……んっ……」
ふと、微かにだが声が聞こえてくる。
基本今の時間は全学年体育祭の予行演習でグラウンドに出ているため、校舎内には誰もいない。
なのに、声が聞こえる。
「(誰か体調悪くなって休んでいるのかな?)」
発生源は……近い。というか、僕の教室の中からだ。
調子が悪いんだったら保健室に行くように薦めてみようかな……
苦しげな声が聞こえてくる教室の扉に手を掛けて開くと……
「はっ……はっ……ようくんのにおい……すー……はー……くんっ……!」
僕の椅子に座ってシャツを顔に押し付けながら自慰に耽る姉ちゃんがいた。
「ぁ……ようくんの椅子が私のでべちゃべちゃだ……。いいよね? 私の匂いいっぱい付けちゃっても……」
匂いを付けるなんてレベルではない。床にまで姉ちゃんの汁が飛び散って軽く水たまりを作ってしまっている。
教室の中にはむわりと女性が発する甘ったるいような酸っぱいような匂いが充満してしまっている。
「はぁ……はぁ……ようくん……ようくぅん……あ”」
しまった、バレた。
「い、いつからそこにいたの?」
「えと……姉ちゃんが僕のシャツに顔を押し当てながら……その……」
本当の姉弟だったなら気まずい事この上ないだろう。
しかし僕にとって姉ちゃんは義理どころか完全に他人だと自覚しているのだ。
しかもその……僕をオカズにしていたと思うと……うわぁ……うわぁ……!
「……? はぁ〜……そっか♪」
何か合点が行ったような素振りをする姉ちゃん。
そして僕へ向けて手招きをしてくる。
「よう君、ちょっとこっちおいで?」
近づいてはいけないような気がする。
しかし、教室に充満する匂いが僕の理性をじわりと舐めとかしていく。
ふらふらと、まるで夢遊病かなにかのように足が勝手に動いて姉ちゃんへと体を運んでいく。
そして、ぽすりと姉ちゃんの胸の中に顔が埋もれてしまった。
体操服から立ち上ってくる姉ちゃんの汗とほのかに甘い香りを放つ体臭に包まれてぐらぐらと頭が揺れる。
「ふふっ……♪いい子いい子……」
頭の後ろを姉ちゃんに撫でられると、それだけで全身が多幸感に支配されてもっと身を委ねたくなってしまう。
「ちょっと、待っててね……んしょと」
姉ちゃんが足を折り曲げて何かゴソゴソとやっている。
でも、頭がぼーっとしてそれが一体何を意味するのかまでは頭がまわらない。
「はい、ここ。お姉ちゃんの膝の上に座って?」
「うん……」
手を引かれて僕の椅子に腰掛ける姉ちゃんの膝の上へ座って背中を預ける。
こうしてみると姉ちゃんは意外と高身長だという事がわかる。
僕を膝の上に乗せても僕の肩越しに顔を覗かせることができるぐらいだ。
「よう君のここ、もうパンパンだね。苦しいでしょ? 今脱がせてあげるからね〜」
ジャージの下の紐が緩められ、下着ごと脱がされると硬く張り詰めた僕のモノが鎌首をもたげるように飛び出して、軽く下腹部とぶつかる。
「ん、元気元気♪」
反り返るように立ち上がったそれを確認すると細く白い指を絡めて上下にしごいてくる。
溢れだしたカウパーを裏筋に塗りつけられて揉み上げられると腰が浮きそうな程に気持ちがいい。
背中には姉ちゃんの柔らかくて大きめな胸が押し当てられ、柔らかさと温かさで僕のモノはより硬く、太く勃起してしまう。
「今日はよう君にもっと特別なサービスしちゃおうかな♪」
すると、今まで片手で隠していた何かを僕の顔へと押し付けてくる。
白くて、所々レースが入っている薄い布の塊だ。そして、僕はこれをどこかで見たことがある。
「これ、何だと思う? いっぱい匂いを嗅いでみればわかるかなぁ?」
ろくな思考もできず、言われるがままにその薄布の匂いを吸ってみる。
ほんのりとシトラス系の香りが漂ってくる他、それとは正反対の甘酸っぱいような……生物のような匂いも混ざっている。
「これね、さっきまでお姉ちゃんが一人エッチしていた時に履いていたパンツなんだよ?」
その一言を聞いて、頭が理解した途端。ただでさえ反り返ったモノが痛みを覚えるぐらいに硬くなる。
姉ちゃんはそれに嬉々として指を絡めて優しくしごき上げてきた。
「すっごく硬くなったね……♥ お姉ちゃんのパンツでそこまで興奮した?」
もはや返事をする余裕すらない。
下半身を猛烈に襲う快感に翻弄されながらかろうじて何度か頷くと、嬉しそうに胸を背中へと押し付けてくる。
柔らかに形を返るそれに襲われて、もはやまともな思考能力は完全に砕け散ってしまった。
姉ちゃんへ体を全て預け、与えられる快楽を素直に受ける。
もう頭の中は『きもちいい』しか残っていなかった。
「よう君かわいいよ……あむ」
不意に、耳たぶを熱くぬめる何かが這いまわった。
ゾクゾクとした悪寒にも似た気持ちよさが背筋を駆け上がっていく。
姉ちゃんの顔の位置から推測するに耳たぶを唇で咥えられて舐め回されているのだと思う。
完全に捕食する側とされる側の構図なのだけれど、僕は……
「(しあわせぇ……)」
全てを投げ出してでもその快楽に浸っていたくなる程幸せを感じていた。
まるで全身を姉ちゃんの優しさに包まれているようで、さらに鼻腔から入ってくる姉ちゃんの香りは頭の中をドロドロに溶かしてしまいそうなほどいい匂いで……麻薬に近い何かが含まれているのではなかろうかと勘ぐってしまう程だ。
姉ちゃんの指が裏筋をにゅるりと撫でる度、姉ちゃんの下着の匂いが鼻に飛び込んでくる度、そして豊満な胸が背中に押し付けられる度にモノの根元が締め付けられるような圧迫感を覚える。
「よう君のおちんちんビクビクしてきたよ? もうすぐ出そうなのかなぁ?」
姉ちゃんの問いかけに夢中になって頷く。
頭のなかは既に出したい、射精したいでうめつくされてしまった。
口からは言葉にならないようなうめき声が情けなく漏れ出している。
そして、どうしようもなく自覚してしまう自分の気持ち。
下手をしたら口をついて出てしまいそうなその言葉。
「(好きぃ……姉ちゃん大好きぃ……)」
気持ちよさでまともに口が動かないのが幸いしたのか……はたまた口まで下着で押さえられていたことが良かったのか、その言葉は姉ちゃんに耳に届くことはなかった。
「っ……〜〜〜〜〜!!!」
「んっ……あったかぁい……よう君のいっぱい出てるよ?」
全身がガクガクと震え、下半身が痙攣して自分の意志とは全く関係無しに腰が前後に揺さぶられる。
目の前がチカチカと点滅して頭の中が真っ白だ。
射精した後も姉ちゃんの手はくすぐったくならない程度にゆっくりと僕のモノを愛撫し続けていて、それがこの上なく心地いい。
もしその人の気持ちや思っていることを視覚化できる道具があれば、多分僕の周りには無数のハートマークが踊っているような気がする。
「よう君、左向いて?」
「ん……」
左を向くとそこには姉ちゃんの顔があり、ほぼ間髪入れずにキスで唇を塞がれる。
まるで別の生き物のようにお互いの下がぬめりを持った唾液を交えて絡み合う。
姉ちゃんと口だけでも繋がれるのが嬉しくて、夢中で彼女の口の中を貪った。
「気持よかった?」
「……うん」
何だかもう顔が合わせられない。というか、顔が熱い。炎とか出てないよね?顔面ファイヤー努力マンとか。
「もう……よう君可愛すぎだよ。途中でお姉ちゃんの手をきゅって握ってくるし……心臓壊れちゃうかと思ったよ?」
「あぅ……」
全然自覚がなかったけれど、どうやら姉ちゃんの手にすがりついていたらしい。快感て怖い。
「ね、よう君」
「な、何?」
ほとんど気付かれないうちに詰め寄られ、腕を掴まれていた。
僕を見つめる姉ちゃんの目はいつになく真剣だ。
「この間の返事、もらえないかな……。このままだとお姉ちゃん、我慢できなくてよう君を無理やり押し倒しちゃうかもしれない……」
「それ、は……」
どうしよう。今度は腕も掴まれているから……逃げられそうにない。
それに、今の精神状態じゃ断ることなんてできそうもない。
あまりにも姉ちゃんの事が好きになりすぎて……うっかり口を開けば後戻りできなさそうな言葉が出てしまいそう。
『只今より、学年別対抗、綱引きが、行われます。各学年は、所定の位置に、集合してください。繰り返します』
その時、グラウンドから放送で次の種目の放送が流れてきた。
学年別……ってまずい!
「姉ちゃん、次の種目僕も姉ちゃんも出るんだからこんな所にいたらまずいよ! 早く戻らなきゃ!」
「え、えぇ!? まだ返事を……」
「言ってる場合じゃないよ! 後で散々文句を言われるのは僕らなんだからね!?」
換気の為に教室の窓を全開にし、姉ちゃんの手を取って走り出す。
姉ちゃんはほとほと困り果てながらも僕に手を引かれて一緒に走りだしてくれた。
ごめんね、姉ちゃん。今はまだ……僕の心の整理が付いていないから。
でも、いつか必ず言ってみせるよ。
僕も、姉ちゃんの事が大好きなんだって。
〜おまけ〜
なんとか綱引きの練習にも間に合い、一息ついて飲み物を自販機まで買いに行った時の事だ。
小銭を入れてあるポケットをまさぐると、小銭に硬い感触意外に妙に柔らかい手触りも感じた。まるで布か何かのようだ。
「なんだ……ろ……!?!?!?!?」
ポケットからそれを引っ張りだした僕の頭が一気にパニック状態に陥る。
引っ張りだしたそのひらひらとした白い布の塊は……。
「な……ななななな!?」
姉ちゃんの……パンツ……!?
慌ててジャージのポケットの中に突っ込むと、ひらりと何かが足元に落ちる。どうやら折りたたんだメモのようだ。
拾い上げて広げてみると、見覚えのある筆跡でこう書かれていた。
『このパンツはよう君にあげるね♪ どう使うかは……おまかせ〜 byお姉ちゃん』
どう使うかって……いや、それ以前に……。
「今の……姉ちゃんは……」
履 い て な い
「……あ、鼻血鼻血……」
14/03/05 15:28更新 / テラー
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