早石田〜初心者殺し〜
空は晴れ渡り元気のいい子供の声が良く響く、そんな村の外れにある古い小屋の中、心地よい暖かさのせいでうつらうつらとするツミカ、いつもならころりと寝そべっている所だが今日はそれはできない。
「んぅ、そろそろだな」
丸い耳をぴんと立たせて背伸びをするが、直ぐにあくびが漏れる。
「よし、今日は出来るだけ早く詰むか」
「おーい、せめて本人のいない時に言ってくれ」
そう言って戸を開けたコウ、その頬はピクピクとひきつっている。
「これは失礼した、しかし早くキミの飛車を私の穴熊に突っ込んでほぐして欲しいのだよ、だから私は」
「あーあー分かった、分かったから早くやるぞ」
「中々積極的だな、良いだろう濡れてるから好きな頃合いに突っ込んでくれ」
「勝負に決まってんだろ!」
「火を付けておいて焦らすとは……作戦か?作戦なのか!」
「あぁ、もう盤はどこだ!」
目を蕩けさせて妙なため息をつくツミカを横目に、手早く駒を並べて振り駒をするコウ、またコウが後手番となりツミカが先手番となった。
「ふ……ふふふ今日も先手か、運がいいなぁ」
対局が始まる、両者角道をあけてツミカの手番、その変化は起きた。
(へ、そのまま来るの?)
ツミカは角道をあける為に突いた歩をもう一度突いた。
(え……と、三間飛車って奴かな?取り敢えず飛車先進めてっと)
コウは知らなかった、早石田という物を。
(ん、飛車来た、角頭がら空きじゃん、もう一回突いてと……王が上がった……守らないのか?よし好機だいくぞ)
開戦、8六歩に対してツミカは同歩で応える、コウは鼻息を荒くして同飛と駒を進めた。
(さて、歩を打ち込むかとっ……今になって飛車先交換?まぁいいか、取らないとと金作られるし)
ツミカの7四歩を同歩で応えた、その手を見てツミカは笑う、獲物が罠にはまった事を喜ぶような笑み。
何の迷いも無く白い指先が2ニ角と動かす、駒台に置かれる角。
(突っ込んできたな……荒らされたら厄介だし、取るか)
同銀と応えた、そして気付いた。
(あれ?これって……不味い……)
「王手」
たんっ、と軽やかに降臨する、9五角、喜色満面の笑みで続けて言う。
「飛車取りっ!」
コウは参りましたと言いそうになるのをグッと飲み込んで4二玉と避けた。
そして手が進み終盤、玉の頭に打たれる金、守りの駒は無い。
「詰み、だねぇ」
クククと喉を鳴らすように笑うツミカ。
「いやぁ、王手飛車取りなんて久し振りだよ、気持ちいいね!」
「何で……取ってしまったんだ、馬鹿野郎次は……引っ掛からん、絶対に、絶対に」
部屋の隅に向かって胡座をかき、ぶつぶつと後悔と反省をするコウ、その背後には怪しく目を光らせた狸、ツミカは一気に覆い被さり耳元に口を寄せた。
「さぁさぁ、お支払いの時間ですよ?」
「あ、あのツミカさんや?」
「なんですかな、コウ君や?」
「その変なキノコは何ですか?」
「んー、食べれば分かるよきっと」
「いや待て押し込むなやめ、んぐっ」
キノコを口移しでコウに飲ませると目を細めて耳まで真っ赤になったツミカは、息を荒らくしてコウを引き倒すと馬乗りなった。
「今日は一杯、一杯ハメて欲しいなっ!」
村の外れでは午後から翌朝にかけて嬌声が良く響いたらしい。
「んぅ、そろそろだな」
丸い耳をぴんと立たせて背伸びをするが、直ぐにあくびが漏れる。
「よし、今日は出来るだけ早く詰むか」
「おーい、せめて本人のいない時に言ってくれ」
そう言って戸を開けたコウ、その頬はピクピクとひきつっている。
「これは失礼した、しかし早くキミの飛車を私の穴熊に突っ込んでほぐして欲しいのだよ、だから私は」
「あーあー分かった、分かったから早くやるぞ」
「中々積極的だな、良いだろう濡れてるから好きな頃合いに突っ込んでくれ」
「勝負に決まってんだろ!」
「火を付けておいて焦らすとは……作戦か?作戦なのか!」
「あぁ、もう盤はどこだ!」
目を蕩けさせて妙なため息をつくツミカを横目に、手早く駒を並べて振り駒をするコウ、またコウが後手番となりツミカが先手番となった。
「ふ……ふふふ今日も先手か、運がいいなぁ」
対局が始まる、両者角道をあけてツミカの手番、その変化は起きた。
(へ、そのまま来るの?)
ツミカは角道をあける為に突いた歩をもう一度突いた。
(え……と、三間飛車って奴かな?取り敢えず飛車先進めてっと)
コウは知らなかった、早石田という物を。
(ん、飛車来た、角頭がら空きじゃん、もう一回突いてと……王が上がった……守らないのか?よし好機だいくぞ)
開戦、8六歩に対してツミカは同歩で応える、コウは鼻息を荒くして同飛と駒を進めた。
(さて、歩を打ち込むかとっ……今になって飛車先交換?まぁいいか、取らないとと金作られるし)
ツミカの7四歩を同歩で応えた、その手を見てツミカは笑う、獲物が罠にはまった事を喜ぶような笑み。
何の迷いも無く白い指先が2ニ角と動かす、駒台に置かれる角。
(突っ込んできたな……荒らされたら厄介だし、取るか)
同銀と応えた、そして気付いた。
(あれ?これって……不味い……)
「王手」
たんっ、と軽やかに降臨する、9五角、喜色満面の笑みで続けて言う。
「飛車取りっ!」
コウは参りましたと言いそうになるのをグッと飲み込んで4二玉と避けた。
そして手が進み終盤、玉の頭に打たれる金、守りの駒は無い。
「詰み、だねぇ」
クククと喉を鳴らすように笑うツミカ。
「いやぁ、王手飛車取りなんて久し振りだよ、気持ちいいね!」
「何で……取ってしまったんだ、馬鹿野郎次は……引っ掛からん、絶対に、絶対に」
部屋の隅に向かって胡座をかき、ぶつぶつと後悔と反省をするコウ、その背後には怪しく目を光らせた狸、ツミカは一気に覆い被さり耳元に口を寄せた。
「さぁさぁ、お支払いの時間ですよ?」
「あ、あのツミカさんや?」
「なんですかな、コウ君や?」
「その変なキノコは何ですか?」
「んー、食べれば分かるよきっと」
「いや待て押し込むなやめ、んぐっ」
キノコを口移しでコウに飲ませると目を細めて耳まで真っ赤になったツミカは、息を荒らくしてコウを引き倒すと馬乗りなった。
「今日は一杯、一杯ハメて欲しいなっ!」
村の外れでは午後から翌朝にかけて嬌声が良く響いたらしい。
15/03/20 09:23更新 / ミノスキー
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