連載小説
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田中さんと福引き
 買い物をして手に入れた一枚の福引き券、それで顔をあおぎながら田中さんと共に福引きの列に並びます、皆様暑いのによく並びますねぇ、私も人の事は言えませんが。
 福引きというモノはいまいち信用ができせん、だって金玉が入っているかなんて誰にも分からないんですから、しかしドドンと並べられた品々が、我が家に並ぶのを想像してしまうのは人間の性です。

「残念! はいティシュをどうぞー」

 赤いハッピを着た狸刑部さんが私の前にいる青年にポケットティッシュを一つ手渡し、狸刑部さんの赤いのは暑さのせいでしょうか……うん?

 目の錯覚でしょうか、狸刑部さんがポケットティッシュの中に紙切れを忍ばせたような………まぁ、気のせいでしょう。

 青年はうなだれて口が開いたポケットティッシュを取るといよいよ私の番が回ってきました、神様、私に幸運をー。

「はい、一枚ですね、では一回どうぞ!」

「サトウ、二等当ててくれー」

 田中さんはどうやら二等の『マグロ☆インパクト!4ダース』を狙っているようです、しかし私としては三等の『サイクロン扇風機』が欲しい……いや四等の『魔物の蜜』も捨てがたい…………まぁ、どうせ貰えるのはポケットティッシュでしょう。

「善処しまーす」

 名前が分からない八角形の箱の取っ手をつかんで、くるりくるりと回します、田中さんは両手を合わせて祈っています、その願いが通じるといいですね。
 そしてからんと玉が転がり、私は出た玉を見ます、どうせ白玉でしょう…………。

「………………え?」

 と、思っていた時期が私にもありました。

「お、お、お」

 コロコロとのんきに転がっているのは白玉ではなく。

「大当たりィ〜〜〜ッッッ!!!!」
 
 金玉でした。

「サトー、サトー」

 田中さんがぽけっとした声で私を呼びながら袖をくいくいと引っ張ります。

「なんでしょう、田中さん?」

 予想以上の現実にぶち当たると人間は真っ白になるようです。

「アレが……一等だってさ……」

「ええ、分かってますよ……」

「おめでとうございます!」

 何でアレが一等なのでしょうか? 

「『女郎印のそうめん10ダース』をどうぞ!!!」

 なぜ私は非常に低い確率を引き当ててしまうのでしょうか?
 狸刑部さんのとびっきりの笑顔にひきつった笑顔で応えて、片手に持っている買い物袋の中に、詰め込まれて待機する4袋のそうめん共に目をやります。
 …………これからは三食そうめんの日々を送る事になりますね。
15/06/22 12:38更新 / ミノスキー
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