SS『天夜かぐやは静かに暮らしたかった』
「……………………なによ、これ?」
私こと天夜 かぐや(あまや かぐや)が目を覚まして、第一声がそれだった。
え?なに? ここ、どこなのよ?
石造りの真っ白で巨大な室内、無駄に広い部屋の中央に描かれた円陣の上に私はいた。
周囲を見回すと偉そうな人達に囲まれて、さらに偉そうなおじさんが巨大で豪華な椅子に座っているのが見えた。
えーと、映画のセット?撮影? いや、でもカメラは見当たらないし………
あ、なんかあれ王様っぽい。 てゆーかアレ誰よ?
「ほう、今回の召喚されし者は女であるか」
わ、王様が喋った。 見た目がバリバリの外人なのに日本語ができるんだ。
まぁ、それはそれとして………………
………………召喚?
今、この人そう言った? え?なによそれ?
いや、言葉の意味はわかるわよ。 でもね、それって日常で聞く言葉じゃないでしょ?
RPGとかアニメとかなんかそーゆーのでしか聞かない言葉なんですけど。
「えと、どーゆーことか説明してもらえるかしら?」
とりあえず、わからないことは聞くしかない。
王様の様子だと私がここにいる理由とか知ってそうだし。
「うむ、よいであろう。 お主も召喚されたばかりであるし理解の不足も致し方あるまい。
なに、恥じることはないぞ。 お主でもわかるように丁寧に教えてやるのでな」
ムカッ、なによコイツ。
なんで初対面のおじさんに残念な子みたいに言われなきゃなんないのよ。
確かに現状の把握はできてないけど、私は悪くないもん。
こんな非現実的な状況を咄嗟に理解できる奴なんていないわよ。
「……教えるって言うんならさっさと教えてくれないかしら」
口調に自然と苛立ちが混じる。
まったく、どうしてこんなことになったのよ………
王様は語り出した。
国のこと、魔物のこと、魔王のこと、召喚のこと、そして勇者のことを………
「……と言うわけだ。 召喚されし者よ、理解したかね?」
「ええ、非常に不本意ながらね」
……冗談じゃないわよ。
昨日まで女子高生だったのに私が勇者ですって?
なんで国の問題を女子高生に丸投げすんのよ。 ……あんた達、頭おかしいでしょ。
とにかく、一言言ってやんなきゃ。
「言っておくけど……… 私、勇者なんてやらないわよ」
私の放った一言に、この場の空気が凍りつく。
「勇者よ……… 今、なんと申した?」
「わかんなかった? 勇者なんてやりたくないって言ったのよ」
室内がざわめき立つ。
なによ、元々あんた達の問題でしょ?
勝手に私を巻き込まないでよ。
「とにかく!私はやんないからね!!! さっさと私を家に帰してちょうだい!!!」
「な、何故だ! 勇者よ、お主は使命を放棄するというのか!」
「使命?唯の女子高生に…… 唯の一般人に魔王の討伐なんてできるわけないでしょ!!!」
「そ、それなら大丈夫だ! お主には戦う為の力があるはずだ!!!」
「……力? なにそれ、どーゆーことよ?」
コイツ、まだ話してない事があったのね。
ふざけたこと言ったら承知しないんだから。
「うむ、では被召喚者に対する能力付与について話そう。
お主も感じているのであろうが、この世界はお主のいた世界とは違う世界なのだ。
………ここまでは理解できておるな?」
「ええ、一応ね」
「では何故住む世界が文字通りに違う我らと言葉が通じるのかわかるか?」
「え?だってあんた達が喋ってるの、日本語でしょう?」
「違うな、我の言葉はこの大陸の共用語だ。
異界の住人であるお主がこうして我らと言葉を交わせるのは、
世界を渡る際に、お主が加護を受けた為だ」
「……加護?なによそれ?」
「うむ、説明しよう。
加護とは異界の存在であるお主がこの世界に適応できるように、
異界の神がお主に与えた、この世界で生きる為の力の事だ」
「神様って本当にいたんだ……… まぁ、いいわ。それで、生きる力って?」
「うむ、話を続けるぞ。 被召喚者が得る加護は二つ。
現地の住人……つまり我らと意志の疎通ができるようになること。
そしてもう一つ。 身を守る為の………戦う為の能力だ」
「能力ねぇ…… そう言われても実感が湧かないんだけど………」
「なに、初めは皆そういうのだ。
だが、これで理解できただろう? お主には魔王と戦う為の力があるのだ」
なるほど……… 要するに、私にも何らかの主人公補正がかかるのね。
つまり、女子高生の私にもふざけたファンタジーの世界で勇者になることはできるってことか。
まぁ、だとしてもね………
「話は理解したわ、でも私は勇者になんてならないわよ」
「な、何故だ!」
「いや、だってね。 これってあんた達の国の問題でしょ?
だったら私には関係ないもん」
そう、私には関係のないことだ。
私は見知らぬ誰かさんの為に命を張れる程お人好しじゃない。
「ま、そういうわけだからさ。 さっさと家に帰してくんない?」
「それはできぬ」
「……へぇ〜、一度痛い目を見ないとわからないんだ?
できるんでしょ?だったらやんなさいよ」
私は拳を握りながら王様と交渉する。
脅迫? 違うよ、あくまで交渉だよ。
「勇者よ、勘違いをしているようだから言っておくぞ。
我が王家には確かに召喚の為の術はある。 だが送還術の研究はされていないのだ」
………………今、コイツなんて言った?
「……よく聞こえなかったわ。 もう一回言いなさい」
「送還はできぬ。 これは事実だ
だが、お主が魔王を倒した暁には送還の研究をや――――――――
「ふざけんなああああああああああああああ!!!」
―――――――くそぶううううううううううううううううううううううッ!!!!!!」
王様の鳩尾を私の『爆裂正拳』が貫く。
そして、鳩尾にめり込んだ私の拳は―――――
ドッッッグオォォォォォン!!!
―――――爆炎と共に王様を椅子ごと吹き飛ばし、壁へと叩きつけた。
なによ、コレ? ……………ああ、加護ってヤツか。
てゆーか、この状況ってまずくない?
「だ、誰かその不届き者を捕えよ!!!」
ああ、やっぱりそうなるよね。
とにかく、この場はなんとか逃げないと!
出口は…… ダメ、兵士が固めてる!
他に突破口は……… ええい、こうなったらやけくそだッ!!!
私は兵士が一人もいない、壁のある方へと一直線に駆けていき―――――
奥義『爆裂正拳連撃』
連続で放たれる爆裂正拳(+謎の爆発)で分厚い壁を打ち抜いた。 壁の向こうは外のようだ。
……ホントにできるとは思ってなかったんですけど。
まぁ、その、ええと…… と、とにかく退路の確保はできた。
「え〜と、その…… 兵士の皆さん、こうなりたく無かったら追ってこないでね」
私は打ち抜かれた壁を指差し、兵士達にお願いをする。
流石の私も人間がこんなふうに爆砕されるのは見たくない。
こうして、私はなんとか脱出することに成功した。
兵士が追ってくる様子はない。 ……まぁ、誰だって爆殺されたくはないよね。
こうして、異世界へと召喚された私の行くあてのない旅が始まるのだった。
……まぁ、なんとかなるよね。 うん、なるなる。
私こと天夜 かぐや(あまや かぐや)が目を覚まして、第一声がそれだった。
え?なに? ここ、どこなのよ?
石造りの真っ白で巨大な室内、無駄に広い部屋の中央に描かれた円陣の上に私はいた。
周囲を見回すと偉そうな人達に囲まれて、さらに偉そうなおじさんが巨大で豪華な椅子に座っているのが見えた。
えーと、映画のセット?撮影? いや、でもカメラは見当たらないし………
あ、なんかあれ王様っぽい。 てゆーかアレ誰よ?
「ほう、今回の召喚されし者は女であるか」
わ、王様が喋った。 見た目がバリバリの外人なのに日本語ができるんだ。
まぁ、それはそれとして………………
………………召喚?
今、この人そう言った? え?なによそれ?
いや、言葉の意味はわかるわよ。 でもね、それって日常で聞く言葉じゃないでしょ?
RPGとかアニメとかなんかそーゆーのでしか聞かない言葉なんですけど。
「えと、どーゆーことか説明してもらえるかしら?」
とりあえず、わからないことは聞くしかない。
王様の様子だと私がここにいる理由とか知ってそうだし。
「うむ、よいであろう。 お主も召喚されたばかりであるし理解の不足も致し方あるまい。
なに、恥じることはないぞ。 お主でもわかるように丁寧に教えてやるのでな」
ムカッ、なによコイツ。
なんで初対面のおじさんに残念な子みたいに言われなきゃなんないのよ。
確かに現状の把握はできてないけど、私は悪くないもん。
こんな非現実的な状況を咄嗟に理解できる奴なんていないわよ。
「……教えるって言うんならさっさと教えてくれないかしら」
口調に自然と苛立ちが混じる。
まったく、どうしてこんなことになったのよ………
王様は語り出した。
国のこと、魔物のこと、魔王のこと、召喚のこと、そして勇者のことを………
「……と言うわけだ。 召喚されし者よ、理解したかね?」
「ええ、非常に不本意ながらね」
……冗談じゃないわよ。
昨日まで女子高生だったのに私が勇者ですって?
なんで国の問題を女子高生に丸投げすんのよ。 ……あんた達、頭おかしいでしょ。
とにかく、一言言ってやんなきゃ。
「言っておくけど……… 私、勇者なんてやらないわよ」
私の放った一言に、この場の空気が凍りつく。
「勇者よ……… 今、なんと申した?」
「わかんなかった? 勇者なんてやりたくないって言ったのよ」
室内がざわめき立つ。
なによ、元々あんた達の問題でしょ?
勝手に私を巻き込まないでよ。
「とにかく!私はやんないからね!!! さっさと私を家に帰してちょうだい!!!」
「な、何故だ! 勇者よ、お主は使命を放棄するというのか!」
「使命?唯の女子高生に…… 唯の一般人に魔王の討伐なんてできるわけないでしょ!!!」
「そ、それなら大丈夫だ! お主には戦う為の力があるはずだ!!!」
「……力? なにそれ、どーゆーことよ?」
コイツ、まだ話してない事があったのね。
ふざけたこと言ったら承知しないんだから。
「うむ、では被召喚者に対する能力付与について話そう。
お主も感じているのであろうが、この世界はお主のいた世界とは違う世界なのだ。
………ここまでは理解できておるな?」
「ええ、一応ね」
「では何故住む世界が文字通りに違う我らと言葉が通じるのかわかるか?」
「え?だってあんた達が喋ってるの、日本語でしょう?」
「違うな、我の言葉はこの大陸の共用語だ。
異界の住人であるお主がこうして我らと言葉を交わせるのは、
世界を渡る際に、お主が加護を受けた為だ」
「……加護?なによそれ?」
「うむ、説明しよう。
加護とは異界の存在であるお主がこの世界に適応できるように、
異界の神がお主に与えた、この世界で生きる為の力の事だ」
「神様って本当にいたんだ……… まぁ、いいわ。それで、生きる力って?」
「うむ、話を続けるぞ。 被召喚者が得る加護は二つ。
現地の住人……つまり我らと意志の疎通ができるようになること。
そしてもう一つ。 身を守る為の………戦う為の能力だ」
「能力ねぇ…… そう言われても実感が湧かないんだけど………」
「なに、初めは皆そういうのだ。
だが、これで理解できただろう? お主には魔王と戦う為の力があるのだ」
なるほど……… 要するに、私にも何らかの主人公補正がかかるのね。
つまり、女子高生の私にもふざけたファンタジーの世界で勇者になることはできるってことか。
まぁ、だとしてもね………
「話は理解したわ、でも私は勇者になんてならないわよ」
「な、何故だ!」
「いや、だってね。 これってあんた達の国の問題でしょ?
だったら私には関係ないもん」
そう、私には関係のないことだ。
私は見知らぬ誰かさんの為に命を張れる程お人好しじゃない。
「ま、そういうわけだからさ。 さっさと家に帰してくんない?」
「それはできぬ」
「……へぇ〜、一度痛い目を見ないとわからないんだ?
できるんでしょ?だったらやんなさいよ」
私は拳を握りながら王様と交渉する。
脅迫? 違うよ、あくまで交渉だよ。
「勇者よ、勘違いをしているようだから言っておくぞ。
我が王家には確かに召喚の為の術はある。 だが送還術の研究はされていないのだ」
………………今、コイツなんて言った?
「……よく聞こえなかったわ。 もう一回言いなさい」
「送還はできぬ。 これは事実だ
だが、お主が魔王を倒した暁には送還の研究をや――――――――
「ふざけんなああああああああああああああ!!!」
―――――――くそぶううううううううううううううううううううううッ!!!!!!」
王様の鳩尾を私の『爆裂正拳』が貫く。
そして、鳩尾にめり込んだ私の拳は―――――
ドッッッグオォォォォォン!!!
―――――爆炎と共に王様を椅子ごと吹き飛ばし、壁へと叩きつけた。
なによ、コレ? ……………ああ、加護ってヤツか。
てゆーか、この状況ってまずくない?
「だ、誰かその不届き者を捕えよ!!!」
ああ、やっぱりそうなるよね。
とにかく、この場はなんとか逃げないと!
出口は…… ダメ、兵士が固めてる!
他に突破口は……… ええい、こうなったらやけくそだッ!!!
私は兵士が一人もいない、壁のある方へと一直線に駆けていき―――――
奥義『爆裂正拳連撃』
連続で放たれる爆裂正拳(+謎の爆発)で分厚い壁を打ち抜いた。 壁の向こうは外のようだ。
……ホントにできるとは思ってなかったんですけど。
まぁ、その、ええと…… と、とにかく退路の確保はできた。
「え〜と、その…… 兵士の皆さん、こうなりたく無かったら追ってこないでね」
私は打ち抜かれた壁を指差し、兵士達にお願いをする。
流石の私も人間がこんなふうに爆砕されるのは見たくない。
こうして、私はなんとか脱出することに成功した。
兵士が追ってくる様子はない。 ……まぁ、誰だって爆殺されたくはないよね。
こうして、異世界へと召喚された私の行くあてのない旅が始まるのだった。
……まぁ、なんとかなるよね。 うん、なるなる。
10/12/20 03:22更新 / 植木鉢
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