僕と彼女のその後
あの日から彼女が笑わなくなった。
しかも、不自然なほどに。
僕の事は必ずと言っても良い程従う。
最近では、誰からか聞いたのか毎朝好物の料理を食卓に並べている。
でも、そこに昔のような笑顔は無く、どこか僕の機嫌を気にしながら接している。
僕が物音を立てると怯える様に反応して様子を伺う。
まるで、最初出会った頃に戻ったみたいだ。
この状況をどうしようかと悩んでいると、ある一人の少女が目に入った。
同じクラスのラミアの女子だ。彼女と同じラミア属なら相談もしやすいかもしれない。
「…で、ボクを夕焼けが差し込む空き教室に呼び込んだ挙句、長々と惚気話を聞かせて楽しいかい?」
尻尾の先を喉元に押し付けられた。どうしょう、この娘目が笑ってない。
「冗談はさておいて、簡単な話だよ。抱きしめて軽く愛の言葉でも囁いてあげれば良いんだ。こんな風に…ね!」
後ろに回り込まれて抱き付かれた。焦って引き離そうとするが、流石はラミア。力が強く引きはがすことが出来ない。
「…貴方たち何してるの?」
いつの間にか目の前には彼女が居た。
「……っ!」
多分一緒に帰ろうと、僕を探しに来てくれたんだろう。手に持っていた2人分のカバンを落とし、ものすごい速さで彼女は走り出した。
「あー…もしかしてあの子が?」
そんな申し訳なさそうな声にロクに返事をせず、すぐさま彼女の後を追う。
僕が追いかけていることに気付くと立ち止まり僕の方に体を向ける。
「なんで…なんで追っかけてくるのよ!!」
「さっきのラミアの娘とイチャイチャしてれば良いじゃん!迷惑だったんなら早く言ってよ!」
「お前なんか要らない、早く居なくなれってさ!なのに…っ」
「なのに…っ!なんで貴方は何も言わないの!?なんでいつもみたいに話しかけてくの!?」
「あんな事をしても翌日には平然としていて…だから、まだ貴方の隣に居て良いんだって、思ってたのに…っ!まだ貴方の事を好きで良いんだって!」
「本当…馬鹿みたい。勝手に自爆して、謝って、また舞い上がって……」
「…ねぇ、本当は私の事どう思っているの?ただの幼馴染?それとも面倒くさいイヤな女…?」
彼女の目からは大粒の涙がポロポロと零れてくる。
気付くと僕は彼女を抱きしめていた。
「……なんで、私を抱きしめてるの?止めて、お願いだから…もう貴方の事諦めさせて…」
腕の中で彼女が小刻みに震えている。胸が涙で湿ってくる。
…何かさ、勘違いしてない?あの娘はただのクラスメートでじゃれてただけだよ。
「…嘘」
…嘘じゃないさ。それに
…僕が好きなのは、君だよ。それは変わりようがないよ。
「……嘘」
…だから嘘じゃないって
「…じゃ、私にキスして。出来ないでしょ…だからささっと放しt…っん!?」
放して、その言葉を言い切らせない内に彼女にキスをする。一応夕焼けを背景だからムードはあるはず。
…っぷは。これでどう?信じてくれた?
「…………うん」
長い沈黙の後、夕焼けより赤くなった顔が僕を見つめる。
「で、でもさ、私嫉妬深いよ?」
…大丈夫だよ
「そ、それに結構構ってちゃんだよ?」
…いつもの事じゃん
「そ、それに!」
…えい
いつまでも自分を卑下し続ける口を塞ぐ様にもう一度キスをする。
今度は下を入れて念入りに彼女の舌を愛撫してやる。
「んんんん!?……んぁ、らめ…チューしちゃ……わ、私蕩けちゃ…んっあ……ちゅっ…ぷはっ」
何十秒も掛けてキスをした後、顔をゆっくりと話す。唾液が僕たちの口からアーチをかけて伸びていく。
…かなり遅くなったけど、貴方の事が好きです。僕と付き合ってください。
「…喜んで!」
彼女は満面の笑みでそう答え、僕を抱き返した。
Fin
15/08/17 02:52更新 / ツキシマ