act13・コント/バーテンダー@
ここは名もなき町の繁華街。
そのどこかに存在するという場末のバーの看板に明かりが灯る。
胸に秘めた何かを持つ男を、
胸に秘めた思い出を持つ女を、
気紛れに誘うように、いつでもあなたのためにドアを開いてくれる。
隠れるように存在する、その店の名は
『Bar テンダー』
その店名からわかっていただける通り、
この店のオーナーは娼館テンダーの現オーナー、ルゥ、その人である。
からん
「いらっしゃいませ。」
カウンターでグラスを磨くバーテンダーが愛想があるのかないのかわからない声で出迎える。
「ねぇ、アタシのイメージで何か…、作ってよ。」
泣いた跡が悲しい、セイレーンがゆらりとカウンターの椅子に座る。
すでにいくらか酒が入っているらしい彼女は力なくカウンターに突っ伏した。
バーテンダーは何も言わないまま頷くと、
ただ氷と酒をシェーカーに注ぎ、
小気味の良い音を店内に響かせ、シェーカーを振る。
さぁ、今日はどんなカクテルが出されるのか…。
「お待たせ致しました。メチルアルコールでございます。」
グラスに注がれたカクテルを、バーテンダーがセイレーンのルナに差し出した。
ルナは無言で受け取ると、そのままグイッと一気に飲み干した。
「ん〜〜〜〜〜〜くぅ〜〜〜!これこれ、やっぱ飲むんだったらこれくらいキく酒じゃなきゃ飲んだ気にならないよね〜♪ところでバーテンダーさん、どこかで会ったことなぁい?」
「さぁ……、私もこの町に住んでいますので、どこかで会ったかもしれませんが、私に似た人なんてどこにでもいますから…。ああ、セラエノ学園のセクシーでモテモテ美人女教師、バフォメットのイチゴ様でしたら、ずっと前にお客様から似ていると言われたことがありますよ。」
グラスを拭きながらバーテンダー………、むしろイチゴは答えた。
背が低くカウンターまで届かないのでミカン箱の上に立ち、ドリフ大爆笑に出ていたヒゲダンスの口髭を着け、口調を変えてまで彼女は他人に成りすます。
「あ〜ね〜。そういえば似てるよね〜。」
「酒は人をヴァカにしてしまうのぅ(ぼそ)。」
「え、何?」
「いえ、何でもありません。失礼ですが、何か悲しいことでもあったのですか?」
「……………わかっちゃうんだ。またね、フラれちゃった。合コンでイイ男を捕まえたぁ、なんて思っていたんだけど、駄目だったんだ。アタシみたいなヘヴィメタルの女は…、ついていけないんだってさ…。これで18連敗だよ。」
また何か作ってよ、そう言ってルナはイチゴにグラスを突き出す。
イチゴはまた何も言わずにグラスを受け取ると、今度はミキサーを取り出す。
エプロンのポケットからルゥから預かった最強メニューのレシピをこっそりと取り出し、ルナに見えないようにメモを見る。
「………唐辛子3本。」
ぼとっ
「……味噌大さじ1杯。」
ぼとっ
「………どぶろく適当。」
どぼぼぼぼぼぼぼぼぼ……
「…あ、一本入れてしまったのじゃ。まぁ、良いわ。次は玉子を5個。」
ぽいぽいぽいぽいぽい……
ベキベキパキベキ…
何を血迷ったのか玉子を殻ごと卵をミキサーに放り込むイチゴ。
明らかに失敗しているのだが、彼女は気にすることなく作業を続ける。
「………ジャガイモ1個。芽が生えておるが、食えんことはないじゃろう。」
(注意・ジャガイモの芽は毒です。)
ぽいっ
「……タバスコ、少々。」
ぴっ、ぴっ…
つるっ
「あ……。」
ぼちゃっ
……ぺきっ
どくどくどくどくどく
見る見るうちに真っ赤な液体がミキサーの中を占拠し、タバスコ独特の酸っぱくて辛い匂いが漂う。
「………内容物は一緒なのじゃ。えっと、最後に……。」
どんっ
18リットルのポリタンクをイチゴは取り出した。
「重油〜っと♪」
ボップボップボップボップ…
ポンプで吸い出されて、ミキサーの中を支配していく黒い液体。
そもそも飲み物ではない。
「よし、これで……、ポチッとなぁ〜〜!!」
ぽちっ
うぃ〜〜〜〜〜ん
がりがりがりがりがりがりがりがり…
…………………
…………
……
…
「お待たせしました。当店オリジナルカクテル、『娼婦の涙』でございます。」
どこをどうやればさっきのゲテモノから作られるのか理解出来ないが、カクテルグラスに注がれたのは淡いピンクの美しい液体。
「……綺麗。」
「そうですね。でも綺麗なだけが涙ではないのです。娼婦の涙は色々な嘘を、色々な悲しみを、ティースプーン1杯の小さな幸せを含んでいるのです。」
もちろん、ルゥのメモに書かれたカンペ読みである。
「…まるで、今のアタシみたいだね。」
ルナはグラスを傾ける。
「……………美味しい。」
美味しいのか!?
思わずナレーションが突っ込んでしまった…。
「……アタシね、元々はメタルなんかしてなかったんだ。今じゃ学園で音楽教えたりしてるけど、そもそもメタルに出会うまで音楽なんかやっちゃいなかったんだ…。アタシね、西の大都市生まれでね。ああ、もちろんどこかのお嬢様じゃないよ。アタシが生まれたのは貧民街のさらに向こう、犯罪が絶えないスラム街で生まれ育ったんだよ。悪いことならクスリ以外なら何でもやった。強盗、引ったくり、売春に殺人……。あっちじゃ何度も捕まったよ。そのたびに脱獄して、同じことを繰り返し…。」
イチゴがウィスキーをロックでルナの前に差し出す。
「ありがとう。アタシね、自分の人生ってさ、何のためにあるんだろうって塀の中で考えていたんだよ。でもさ、答えはいつも出ないの。母親なんかアタシを生んですぐに新しい男を見付けて出て行っちゃうし、父親は父親でアタシが物心付く頃には酒を飲んじゃ、アタシを殴って憂さを晴らしてたけど…、アタシが5つの時に酒飲んで寝たまま目を覚まさなくなっちゃってさ……。生きるのに必死だったよ。お金が欲しくて罪を犯したけど、結局答えなんか出なかった…。でも……、何度目かの脱獄かは覚えていないけど、逃走資金のために武器もないから売春して、手荒く稼いでやろうと思った街角で出会っちゃったんだ。アタシをアタシとして見てくれて、アタシに音楽を教えてくれた人にさ……。アタシの…、初恋の人…………。」
ウィスキーのグラスをグイッと飲み干すルナ。
そんなルナを見てイチゴは口を開いた。
「………オチは?」
「へ?」
「オチはないのかと聞いておるのじゃぁぁぁ!貴様、ギャグSSに出ておきながらオチもなく、初恋の話を延々と続けるおつもりですか、この雌鳥!!」
バッ
付け髭を外し、エプロンを脱ぎ捨てたイチゴが本来の姿を晒す。
「イ、イチゴちゃん!?全然気が付かなかった!!」
「ふっ、ワシの完璧な変装を見破れる者などこの世にはおらぬ。貴様の初恋話など、読者が許してもワシが許さん!しかもオチがなさそうな話をワシが許す訳がなかろう…。大人しくオヌシは面白いんだか面白くないんだかよくわからないバフォメット空間で彷徨い続け、微妙な作品に微妙な立ち位置で出演し続けるが良いのじゃー!!」
イチゴが大鎌を振り上げ、ルナに襲い掛かる。
バンッ
「待て、地獄将軍バフォメット!そのような狼藉、天が許そうと我が許さぬ!恋バナは乙女の大好物。それを取り上げるような、乙女の風上にも置けぬ極悪非道な振る舞い…、お面ライダー龍姫が許さぬ!!必殺、ドラゴンキィィーック!!!」
めこ☆
「たわば!」
「さぁ、悪は去った。ルナ殿、せっかく主役に納まったのだから存分に話すが良い。」
「うう……、何で僕が………。」
簀巻きにされたバフォメット先生の代わりに僕、サクラがカウンターの中に入るはめになった。
マイアさんとニャンニャンし終わってベッドの中でいちゃいちゃしていたんだけど、突然ダオラさんに連れ去られ何故かバーのカウンターに入っている。
帰ってから…、怖いなぁ…。
しかも普通に入ろうとしたら、何故かルナ先生とダオラさんに怒られて、1サイズ小さなタイトスカートの女性用制服を着せられて、ダオラさんとルナ先生にバッチリとメイクをされている。
つまりこの間は女体化、今日は女装…。
「サクラく〜ん、今夜一晩良い子にしていないと…、デジカメで撮ったこの写真がどこかに流れちゃうかも〜♪アタシとしてはぁ、この写真持って稲荷のむねちんに渡した方が良いお小遣いになるから、そっちの方が嬉しいなぁ〜?」
「………うう、わかりました。」
宗近さん、むねちんなんて呼ばれてるんだ。
「………………ねぇ、ダオラ。これは……、すごい破壊力だね。マイアとダオラが開発していなかったら、うっかりアタシのペットにお持ち帰りしていたかも…。」
「ふっふっふ、であろう?我も最近、サクリストの気持ちがわかってきたところである。ああ、サクラ。一人称は『僕』ではなく『ボク』と言え。そしてもっと恥ずかしそうに身体を隠そうと必死に努力しろ。出来ることなら涙目のまま顔を背け気味に真っ赤になって、我らの接客をせよ。キチンと出来たら、後でマイアと共に可愛がって進ぜよう。主にベッドの上で、性的な意味で。」
「…わ、わかりましたよ。」
どうせ逃げられないんだ。
そうわかっているのに、マイアさんとダオラさんに苛められる自分を想像すると、興奮して分身を大きくしまう卑しい自分に情けなくなってしまう。
うう……、ピチピチのスカートに擦れて…。
「……さて、話すが良い。そうでなければ勝手にサクラを襲って食べてしまうぞ。」
「アタシが一応主役なんだから遠慮してよ〜。まぁ、話したげる。アタシの初恋…。あれはアタシが街角で…………。」
こうしてルナ先生は語りだした。
「次回へ続く!」
「……サクラ、どうしたのだ?最近責めがきつくて、疲れておるのか?それならば今夜は我らを存分に責めるが良い。そなたのどんな責め苦にも我もマイアも身を捩じらせつつも耐えてみせようぞ。むしろ明日の朝、立ちあがれない程責めてくれるのを所望する。」
「次回へ続くー!!」
「…サクラくん、疲れてるんだね。アタシが1杯奢ったげるよ。」
……ありがとう、ございます。
――――――――――――――――――――
次回予告
ついに語られるルナの過去。
初恋の男とは何者なのか。
そもそも指名手配はされていないのか。
次回、更なる謎が名探偵サクラを襲う。
次回『風雲!セラエノ学園』第14話
『君が追いかけた季節』
真実はいつも一つ、じっちゃんの名にかけて!
「……もう、悲しい嘘はやめましょうよ。」
そのどこかに存在するという場末のバーの看板に明かりが灯る。
胸に秘めた何かを持つ男を、
胸に秘めた思い出を持つ女を、
気紛れに誘うように、いつでもあなたのためにドアを開いてくれる。
隠れるように存在する、その店の名は
『Bar テンダー』
その店名からわかっていただける通り、
この店のオーナーは娼館テンダーの現オーナー、ルゥ、その人である。
からん
「いらっしゃいませ。」
カウンターでグラスを磨くバーテンダーが愛想があるのかないのかわからない声で出迎える。
「ねぇ、アタシのイメージで何か…、作ってよ。」
泣いた跡が悲しい、セイレーンがゆらりとカウンターの椅子に座る。
すでにいくらか酒が入っているらしい彼女は力なくカウンターに突っ伏した。
バーテンダーは何も言わないまま頷くと、
ただ氷と酒をシェーカーに注ぎ、
小気味の良い音を店内に響かせ、シェーカーを振る。
さぁ、今日はどんなカクテルが出されるのか…。
「お待たせ致しました。メチルアルコールでございます。」
グラスに注がれたカクテルを、バーテンダーがセイレーンのルナに差し出した。
ルナは無言で受け取ると、そのままグイッと一気に飲み干した。
「ん〜〜〜〜〜〜くぅ〜〜〜!これこれ、やっぱ飲むんだったらこれくらいキく酒じゃなきゃ飲んだ気にならないよね〜♪ところでバーテンダーさん、どこかで会ったことなぁい?」
「さぁ……、私もこの町に住んでいますので、どこかで会ったかもしれませんが、私に似た人なんてどこにでもいますから…。ああ、セラエノ学園のセクシーでモテモテ美人女教師、バフォメットのイチゴ様でしたら、ずっと前にお客様から似ていると言われたことがありますよ。」
グラスを拭きながらバーテンダー………、むしろイチゴは答えた。
背が低くカウンターまで届かないのでミカン箱の上に立ち、ドリフ大爆笑に出ていたヒゲダンスの口髭を着け、口調を変えてまで彼女は他人に成りすます。
「あ〜ね〜。そういえば似てるよね〜。」
「酒は人をヴァカにしてしまうのぅ(ぼそ)。」
「え、何?」
「いえ、何でもありません。失礼ですが、何か悲しいことでもあったのですか?」
「……………わかっちゃうんだ。またね、フラれちゃった。合コンでイイ男を捕まえたぁ、なんて思っていたんだけど、駄目だったんだ。アタシみたいなヘヴィメタルの女は…、ついていけないんだってさ…。これで18連敗だよ。」
また何か作ってよ、そう言ってルナはイチゴにグラスを突き出す。
イチゴはまた何も言わずにグラスを受け取ると、今度はミキサーを取り出す。
エプロンのポケットからルゥから預かった最強メニューのレシピをこっそりと取り出し、ルナに見えないようにメモを見る。
「………唐辛子3本。」
ぼとっ
「……味噌大さじ1杯。」
ぼとっ
「………どぶろく適当。」
どぼぼぼぼぼぼぼぼぼ……
「…あ、一本入れてしまったのじゃ。まぁ、良いわ。次は玉子を5個。」
ぽいぽいぽいぽいぽい……
ベキベキパキベキ…
何を血迷ったのか玉子を殻ごと卵をミキサーに放り込むイチゴ。
明らかに失敗しているのだが、彼女は気にすることなく作業を続ける。
「………ジャガイモ1個。芽が生えておるが、食えんことはないじゃろう。」
(注意・ジャガイモの芽は毒です。)
ぽいっ
「……タバスコ、少々。」
ぴっ、ぴっ…
つるっ
「あ……。」
ぼちゃっ
……ぺきっ
どくどくどくどくどく
見る見るうちに真っ赤な液体がミキサーの中を占拠し、タバスコ独特の酸っぱくて辛い匂いが漂う。
「………内容物は一緒なのじゃ。えっと、最後に……。」
どんっ
18リットルのポリタンクをイチゴは取り出した。
「重油〜っと♪」
ボップボップボップボップ…
ポンプで吸い出されて、ミキサーの中を支配していく黒い液体。
そもそも飲み物ではない。
「よし、これで……、ポチッとなぁ〜〜!!」
ぽちっ
うぃ〜〜〜〜〜ん
がりがりがりがりがりがりがりがり…
…………………
…………
……
…
「お待たせしました。当店オリジナルカクテル、『娼婦の涙』でございます。」
どこをどうやればさっきのゲテモノから作られるのか理解出来ないが、カクテルグラスに注がれたのは淡いピンクの美しい液体。
「……綺麗。」
「そうですね。でも綺麗なだけが涙ではないのです。娼婦の涙は色々な嘘を、色々な悲しみを、ティースプーン1杯の小さな幸せを含んでいるのです。」
もちろん、ルゥのメモに書かれたカンペ読みである。
「…まるで、今のアタシみたいだね。」
ルナはグラスを傾ける。
「……………美味しい。」
美味しいのか!?
思わずナレーションが突っ込んでしまった…。
「……アタシね、元々はメタルなんかしてなかったんだ。今じゃ学園で音楽教えたりしてるけど、そもそもメタルに出会うまで音楽なんかやっちゃいなかったんだ…。アタシね、西の大都市生まれでね。ああ、もちろんどこかのお嬢様じゃないよ。アタシが生まれたのは貧民街のさらに向こう、犯罪が絶えないスラム街で生まれ育ったんだよ。悪いことならクスリ以外なら何でもやった。強盗、引ったくり、売春に殺人……。あっちじゃ何度も捕まったよ。そのたびに脱獄して、同じことを繰り返し…。」
イチゴがウィスキーをロックでルナの前に差し出す。
「ありがとう。アタシね、自分の人生ってさ、何のためにあるんだろうって塀の中で考えていたんだよ。でもさ、答えはいつも出ないの。母親なんかアタシを生んですぐに新しい男を見付けて出て行っちゃうし、父親は父親でアタシが物心付く頃には酒を飲んじゃ、アタシを殴って憂さを晴らしてたけど…、アタシが5つの時に酒飲んで寝たまま目を覚まさなくなっちゃってさ……。生きるのに必死だったよ。お金が欲しくて罪を犯したけど、結局答えなんか出なかった…。でも……、何度目かの脱獄かは覚えていないけど、逃走資金のために武器もないから売春して、手荒く稼いでやろうと思った街角で出会っちゃったんだ。アタシをアタシとして見てくれて、アタシに音楽を教えてくれた人にさ……。アタシの…、初恋の人…………。」
ウィスキーのグラスをグイッと飲み干すルナ。
そんなルナを見てイチゴは口を開いた。
「………オチは?」
「へ?」
「オチはないのかと聞いておるのじゃぁぁぁ!貴様、ギャグSSに出ておきながらオチもなく、初恋の話を延々と続けるおつもりですか、この雌鳥!!」
バッ
付け髭を外し、エプロンを脱ぎ捨てたイチゴが本来の姿を晒す。
「イ、イチゴちゃん!?全然気が付かなかった!!」
「ふっ、ワシの完璧な変装を見破れる者などこの世にはおらぬ。貴様の初恋話など、読者が許してもワシが許さん!しかもオチがなさそうな話をワシが許す訳がなかろう…。大人しくオヌシは面白いんだか面白くないんだかよくわからないバフォメット空間で彷徨い続け、微妙な作品に微妙な立ち位置で出演し続けるが良いのじゃー!!」
イチゴが大鎌を振り上げ、ルナに襲い掛かる。
バンッ
「待て、地獄将軍バフォメット!そのような狼藉、天が許そうと我が許さぬ!恋バナは乙女の大好物。それを取り上げるような、乙女の風上にも置けぬ極悪非道な振る舞い…、お面ライダー龍姫が許さぬ!!必殺、ドラゴンキィィーック!!!」
めこ☆
「たわば!」
「さぁ、悪は去った。ルナ殿、せっかく主役に納まったのだから存分に話すが良い。」
「うう……、何で僕が………。」
簀巻きにされたバフォメット先生の代わりに僕、サクラがカウンターの中に入るはめになった。
マイアさんとニャンニャンし終わってベッドの中でいちゃいちゃしていたんだけど、突然ダオラさんに連れ去られ何故かバーのカウンターに入っている。
帰ってから…、怖いなぁ…。
しかも普通に入ろうとしたら、何故かルナ先生とダオラさんに怒られて、1サイズ小さなタイトスカートの女性用制服を着せられて、ダオラさんとルナ先生にバッチリとメイクをされている。
つまりこの間は女体化、今日は女装…。
「サクラく〜ん、今夜一晩良い子にしていないと…、デジカメで撮ったこの写真がどこかに流れちゃうかも〜♪アタシとしてはぁ、この写真持って稲荷のむねちんに渡した方が良いお小遣いになるから、そっちの方が嬉しいなぁ〜?」
「………うう、わかりました。」
宗近さん、むねちんなんて呼ばれてるんだ。
「………………ねぇ、ダオラ。これは……、すごい破壊力だね。マイアとダオラが開発していなかったら、うっかりアタシのペットにお持ち帰りしていたかも…。」
「ふっふっふ、であろう?我も最近、サクリストの気持ちがわかってきたところである。ああ、サクラ。一人称は『僕』ではなく『ボク』と言え。そしてもっと恥ずかしそうに身体を隠そうと必死に努力しろ。出来ることなら涙目のまま顔を背け気味に真っ赤になって、我らの接客をせよ。キチンと出来たら、後でマイアと共に可愛がって進ぜよう。主にベッドの上で、性的な意味で。」
「…わ、わかりましたよ。」
どうせ逃げられないんだ。
そうわかっているのに、マイアさんとダオラさんに苛められる自分を想像すると、興奮して分身を大きくしまう卑しい自分に情けなくなってしまう。
うう……、ピチピチのスカートに擦れて…。
「……さて、話すが良い。そうでなければ勝手にサクラを襲って食べてしまうぞ。」
「アタシが一応主役なんだから遠慮してよ〜。まぁ、話したげる。アタシの初恋…。あれはアタシが街角で…………。」
こうしてルナ先生は語りだした。
「次回へ続く!」
「……サクラ、どうしたのだ?最近責めがきつくて、疲れておるのか?それならば今夜は我らを存分に責めるが良い。そなたのどんな責め苦にも我もマイアも身を捩じらせつつも耐えてみせようぞ。むしろ明日の朝、立ちあがれない程責めてくれるのを所望する。」
「次回へ続くー!!」
「…サクラくん、疲れてるんだね。アタシが1杯奢ったげるよ。」
……ありがとう、ございます。
――――――――――――――――――――
次回予告
ついに語られるルナの過去。
初恋の男とは何者なのか。
そもそも指名手配はされていないのか。
次回、更なる謎が名探偵サクラを襲う。
次回『風雲!セラエノ学園』第14話
『君が追いかけた季節』
真実はいつも一つ、じっちゃんの名にかけて!
「……もう、悲しい嘘はやめましょうよ。」
10/12/20 22:51更新 / 宿利京祐
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