第八十九話・離間
―――――――――14年前
「私、これが良いな。」
それはファラ=アロンダイトがまだリトルとそう変わらない年齢だった頃。
そして堕天使ネヴィアが、まだ一地方騎士団の守護天使だった頃の話。
彼がフウム王国に所属する前、『沈黙の天使騎士団』の前身である『ガウェイン騎士団』のまだ小隊長だった頃のある夏の日。
ガウェイン騎士団の駐留する町は、祭りで賑わっていた。
この町の領主に待望の世継ぎが生まれ、領民に慕われる名君であったことから、世継ぎ誕生に領主のみならず領民まで総出で喜び、誕生を祝福する声はやがて賑やかな祭りへと発展していった。
そんな賑やかな雰囲気に、当時のガウェイン騎士団長も所属する騎士たちに休暇を与え、皆それぞれに一時の休息を楽しんでいたのである。
人々が賑わう出店が立ち並ぶ大広場。
祭りの雰囲気を感じてみたいと、珍しく我侭を言ったネヴィアの護衛として、騎士団内部で武力、人格共に急成長株と目されていたファラが付いて練り歩いていた。
ネヴィアは人々の楽しそうな顔、活気のある商人たち、そして天使という物珍しさで彼女に構って来る子供たちの姿に自然と微笑みを浮かべ、子供たちと談笑を楽しんでいた。
ファラの手を引いて踊りの輪に加わるなど、普段、大人しく厳粛な天使として、そして騎士団と共に戦場で弓を引く彼女の姿しか知らないファラは、今まで知らなかった一面に新鮮な心地でネヴィアの傍に就いていた。
「あ……、ごめんなさい。楽しくなかったですか…?」
踊りの輪から外れると、汗を掻いて赤くなった顔でネヴィアはファラに訪ねる。
「いや…、殺伐とした戦場から離れる時間なんて本当に何年ぶりかもわからなくて…。少しだけ戸惑っているんだ。教えてくれ、ネヴィア。俺は……、どんな表情を浮かべれば良い。」
この頃のファラ=アロンダイトは、ごく普通の喋り方をしていた。
ただ現在の彼よりもいくらか感情のコントロールが苦手で、戦場と騎士団の往復だけが彼の日常であり、この頃にはすでにリトル=アロンダイトを預けられてはいたものの、その生活に変化は乏しかった。
だが、リトルの存在は彼にとってありがたいものだった。
ただ目的もなく戦場に向かう、ということからリトルとの生活費を稼ぐこと、そして望まぬ出生という悲しい運命を背負ったリトルをこれ以上一人ぼっちにしてはならないという使命感が、この頃のファラには芽生えていた。
だが、それでもファラは正直にネヴィアに日常に溶け込めない戸惑いを答えた。
「……そう。確かに私たちは戦場に長くいすぎましたね。ねぇ、ファラ。あなたは今、この人たちの輪の中にいて、不快かしら?」
「いや、不快じゃない。よくわからないが……、気分が高揚している。」
「ふふふ、でしたら……♪」
くい、とネヴィアはファラの唇の両端を指で持ち上げた。
それは少々不恰好ではあったが、笑顔を作っている。
「笑いなさい。あなたが感じているのは、楽しいという感情なのです。駄目ですよ。笑うことはこの世界で生きる者すべてに与えられた特権なのですよ。せっかくの特権を行使しないなんて、そんなもったいない人生を送ってはいけませんよ。」
諭されて、ファラはネヴィアの言う通りに笑ってみせる。
やはりぎこちなかったが、ネヴィアはそんな彼に満足そうな表情を浮かべた。
「そうです。笑うことは心も身体も健康になるのですから♪さあ、今度はあの出店に行きましょう。グズグズしていると、お祭りも終わってしまいますよ♪」
「お、おい!?」
またファラはネヴィアに手を引かれて走り出す。
普段の貞淑とした彼女から想像も出来ない子供のようなはしゃぎように、ファラは戸惑ってはいたが、その握られた手が暖かくて、言い知れぬ安らぎを感じていた。
「いらっしゃ…ぬあ!?これはこれは、騎士団の方と天使様じゃないですか!いやいや、よくお越しくださいました。大したものを置いちゃいませんが、見て行ってくださいな。」
出店の親父は、愛想良く挨拶をした。
ネヴィアが足を止めたのは、雑貨の屋台。
出店の親父の言う通り、それはガラクタばかりで本当に大した品揃えではなかったのだが、その統一性のない品揃えが逆にネヴィアの目を引いたのであった。
もっとも、そのほとんどが子供向けの玩具が多い。
ネヴィアが興味心身で玩具を見ているので、俺も一緒になって手に取って見ることにした。
ふむ………、珍しいな。
これはブリキのアヒルか?
「おお、騎士様。これはお目が高い!それは遥か砂漠を拠点に活動している商人ギルド、砂漠の兄弟社から流れてきたゼンマイで動く、東方の珍しいブリキの鷹ですよ。どうです、お一つ。お安くしておきますよ。」
……………アヒルではなかったのか。
鷹だとしたら、何と造形が悪いことか。
だが、このゼンマイ仕掛けというのは面白いかもしれない。
リトルが……、喜ぶかな?
「これを貰おう。悪いが、贈答用に包めるか?」
「はい、モチのロンでございます。」
…………何だ、それ?
呆気に取られているとネヴィアが肘で脇を突付いた。
「………あれはジョークを言っているのですよ。笑ってあげないと可哀想じゃないですか。」
俺にしか聞こえないようなヒソヒソ声。
あれが……、ジョークなのか?
「だとしたら笑えないな。才能の欠片もない。」
ザクッ
「うっ!?」
突然、出店の主が蹲る。
どうした、敵襲か!?
「……………き、聞こえたみたいですよ?」
「…………………す、すまん。」
お気になさらず、と言って店主は血の涙を流している。
どうやらジョークに相当な自信を持っていたらしい。
悪いことをしてしまった…。
「…ネヴィア、お前にも何か買おう。いつもリトルの世話をしてくれているし、俺たち騎士団もお前に世話になりっ放しだ。何か一つでも礼を返さねば、罰が当たる。」
俺にとって神なんてどうでも良い。
だが、俺はネヴィアに忠誠を誓い、ネヴィアという女神だけを信仰している。
だからここいらで何か恩返しをしておきたい、と俺は思った。
ただ財布の中身は結構軽め。
そう高いものは買ってあげられないと伝えると、彼女は笑った。
「ふふ、それでしたらう〜んと高いものをねだって、あなたを困らせようかしら。」
「………勘弁してくれ。」
「冗談ですよ。それでしたら……。」
商品をザッと見回して、ネヴィアはそれを一つ手に取った。
小さな赤い宝石の指輪。
もちろん、子供がママゴト遊びで使うような玩具だ。
値段もまるで捨て値のような価格。
「そんなもので…、良いのか?」
「ええ、私、これが良いな。」
店主に頼んで包んでもらおうとすると、ネヴィアはそれを断り、包装をしないままで受け取った。
そして大事そうにやさしく握り込むと突然、ネヴィアは俺の方を向き、真剣な顔で向き合った。
「…………騎士、ファラ=アロンダイト。」
「………はっ。」
俺は片膝を突いて、胸に手を当て跪いた。
「……今一度問います。あなたにとって信仰とは何ですか?」
「俺にとって、信仰とはお前だ。見たこともない神など、俺が戦う理由にはなり得ない。ただ、お前を守る。騎士団を守護するお前のために剣を振るう。例え、お前が敵を哀れんで涙を流そうと、俺はただお前を守るために、敵を切り裂く感情を持たぬ剣になりきる。」
何度目かの誓い。
ある時は礼拝堂で。
ある時は戦場で。
俺は何度でも彼女に同じ答えを返して来た。
「…………そうでしたね。騎士アロンダイト、私はあなたにお願いがあります。」
「出来る範囲のことでしたら、何なりと。」
「私のことを守ってください。ずっと……、あなたの時間をすべて使って…。出来ることなら、いつの日か……。」
何か言い難いのか、ネヴィアは深く息を吐いて空を見上げる。
「いつの日か……、いつの日か私を…、あなたの家族にしてください。リトルの義母として、あなたの………、妻として…。」
今度は俺が顔を上げる。
驚いて顔を上げると、ネヴィアは真っ赤になって恥ずかしそうに、はにかんでいたものの、真っ直ぐに俺を見詰めていた。
こんな時、何と言って良いのかわからなかった。
ただ、胸の奥の震えを俺はどう伝えて良いのかわからなくて、静かに頷いた。
それを見て、ネヴィアは嬉しそうに微笑んだ。
「約束ですよ♪」
微笑んだ目に薄っすら涙が浮かんでいた。
そして、いつの間にか……。
ネヴィアの左薬指に、さっき買ったばかりの玩具の指輪が光っていた。
そしてこの次の年。
ファラ=アロンダイトたちガウェイン騎士団が駐留していた町は、フウム王国の手によって滅び、ガウェイン騎士団もフウム王国に吸収される形で、召抱えられる。
そしてさらに1年後。
ネヴィア、堕天する。
ガウェイン騎士団は、魔物を隠匿した罪により、再びフウム王国の手によって滅ぼされ、ファラ=アロンダイトはリトルを人質に取られたために投降、その武力を惜しまれ死罪から減刑され、3年間の幽閉の刑に処された。
ファラ=アロンダイトは天使と信仰を失い、そして声を失った。
現在のファラの極端な無口具合。
それは一種の失語症。
こうして、『沈黙の天使騎士団』は生まれた。
ただ、彼の胸の中に天使の残光だけを残して……。
―――――――――――――――――――――――――
龍雅に渡されたものを手に、ファラ=アロンダイトは涙を零す。
それは紛れもなく若き日にネヴィアに買った玩具の指輪。
そして誰にも語らなかった過去の遺物は、ネヴィアしか知り得ないもの。
ファラはその小さな玩具に、ネヴィアが存命であることを確信した。
「…それを、俺に送ったお方はセラエノに滞在しておられる。本来はパンデモニウムなる場所におられるそうだが、此度の戦を聞きて単身、セラエノに参られた。おこととは並々ならぬ縁があるようだな。その箱の底に、あのお方からの手紙を隠してある。返事をしたためるのであれば、俺がセラエノに使者を送って届けさせるが……?」
馬上で涙を流すファラに、龍雅は訊ねる。
長い沈黙。
だが龍雅はファラを急かすことなく待ち続けた。
やがて、落ち着きを取り戻したファラは、涙を拭いて龍雅と向き合った。
「………………………ならば…………、言伝を……。」
「わかり申した。如何なる言葉を伝えれば良いか。」
「………………いつか、………約束を守る……と。」
それだけ言えば伝わる、とだけ龍雅に頼むとファラは背中を向け、必死に立ち上がろうとガクガク震える身体を起こすリトルに手を伸ばす。
「ち、義父上……。」
「……………帰ろう。………よく、…頑張ったな。」
「すみません、義父上…。僕が未熟なばかりに不甲斐ない戦を…。」
ファラは首を振る。
そして、やさしげな眼差しを向けて、リトルに言った。
「……お前は、…………俺と……ネヴィアの…誇りだ……。」
それだけ言うと、ファラはリトルを自分の馬に乗せ、自陣へと引き返した。
その顔は、息子が頼もしく成長していることを喜ぶ父親の顔と、少しだけ諦めていた恋人が生きていること知って喜ぶ男の顔の両方をしていたのであった。
アロンダイト親子の姿が見えなくなると、俺は大きく息を吐いた。
本当に危なかった…。
ある程度手加減はしていたのだが、あの父御が出て来なければ、あの少年を本当に斬らなければならなかった。
あの父御を誘い出すための、急拵えの策だったんだが……。
うまくいって本当に良かった!!
正直なことを言えば、あの少年にあの品が有効かどうかわからなかった。
何故ならネヴィア殿は、少年の父親に渡してくれとわざわざ書いていたんだからな…。
おそらくあれは、父御と彼女の思い出の品。
あの少年では効果は薄いかもしれぬ…。
「……とどめを刺さないとは、おやさしいのですね。」
ガシャ、ガシャ、と重そうな音を立てて、馬に乗った騎馬武者が近寄ってくる。
巨大な盾、そして見たことのない……ありゃ錐(きり)か?
馬鹿でかい錐のような剣とも槍とも付かない武器を持った重装備の騎馬武者。
それは先程の少年とは桁違いの強さを秘めた男。
名をヒロ=ハイル。
「別にやさしくはないさ。むしろ生かして帰した方が、俺や帝国にも都合が良い。」
「都合が……、良い…?」
ヒロ将軍は何のことだかわからない顔をしていた。
なるほど、こちらの世界では軍学はあまり盛んではないようだな。
いや、むしろ人の心の隙間を突くような策は、あまり歓迎されずに自然淘汰されたものなのか…。
この世界では、長くないせいか今一つ判断に迷うな。
「では一つ、教授しようか。一応、俺たちもそちら側の兵たちに間者を潜り込ませている。お前たちにしたって、うちの兵に化けた間者を放っているだろうから、そのあたりはお相子だな。その間者の一人が教えてくれた。ファラ=アロンダイトは連合軍上層部と折り合いが悪いとな。もしも、その折り合いが悪く、印象も悪い男が生きて帰って、しかも敵将の俺から何か受け取ってしまっていたとしたら……。さて、上層部のお偉い方々は何を思うかな?」
「…………!?……しまっ…!」
「もう遅い。彼は帰ってしまった。そして、お前も帰る訳にはいかないぞ。お前にしても、軍上層部とは折り合いが悪いそうだしな。」
大太刀を構える。
するとヒロ将軍も、盾を構え、巨大な錐をしっかりと脇に構えた。
……ふむ、どうやら槍と同じ使い方らしいな。
「悲しいな。それ程の実力を持ちながら、それに相応しくない地位で無能に傅(かしず)かなければならないとはな。どうだい、将軍。お前は俺の宿題の答えを見付けられたか?」
俺が課した宿題。
彼の中の神の姿を描け。
幾度か戦場で顔を合わせてはいたが、なかなか答えを聞く機会に巡り合えなかった。
ヒロ将軍は、以前の動揺した様子はなく、静かに、それでいてハッキリと答えた。
「私の中に…、未だ神の姿を見出すことは出来ません。神に忠実に生きてきたにも関わらず、信仰心未熟故に私はこれからも神の姿を探していかなければならないでしょう。ですが……!」
俺がリトル少年にしたように、錐槍の切っ先を俺に向けてヒロ将軍は叫んだ。
「守らねばならない民がいる!私を信じる部下がいる!!そして、自分の答えを見付けて旅に出た友にいつの日か報いるためにも、私は私を信じる者たち、すべてのためにこの剣で道を開き、このランスで彼らのために突き進むのみ!!!」
迷いは、完全に吹っ切れていた。
真っ直ぐに、堂々としたヒロには最早意地の悪い問いかけなど無用だと感じた。
「そうだ、それで良い。いや、そうでなければならない。お前はたかが使われる駒であってはならない。お前は、ただ己の武勇を示す程度の小さな駒では、いつかお前の器の中で溺死してしまうところだったぞ。」
そうだ、あいつも言っていたじゃないか。
ヒロ=ハイルを見定めろ。
次の時代を担えるだけの器であるかどうか、この大太刀で見定めろと…。
………ん?
あいつって……、誰のことだっけ…。
「私は、駒で十分です。ただ神の駒でありさえすれば…。」
「ヒロ将軍、それは矛盾というものだよ。ただの宗教者であれば、ただ神の慈悲なるものに縋り、絶対の服従を誓い、ただ使われるだけの駒であれば良かろうよ。だが、先程のお前の答えはそれとは道を反するものだ。教会騎士だから、多少武辺的な考えが混ざるんだと思っているのかもしれんが、お前のそれは宗教者としてでも、戦士としての志でもない。俺はそういう人間を一人知っているから、お前にも同じ器があると見ているんだぜ。」
「紅将軍、決闘の前に一体何を仰って…!?」
「民を守り、仁と信を以って友や部下に報いるは騎士の本分に非ず!しかもお前には義の心がある。ヒロ=ハイルよ、お前は騎士に非ず!!お前の本質は、騎士なんて駒ではなく、民を守り、仁、信、義、勇を知る者よ。お前の本質は、王であるぞ!!」
―――――――――――――――――――――――――
ヒロ=ハイルの予感は的中していた。
兵卒たちはリトル=アロンダイトの帰還に喜び、ファラ=アロンダイトの紅龍雅を退けた武勇を褒め称え、歓喜に湧きかえっていた。
だが、それはあくまで名もなく、身分もない兵卒たちの話。
ヴァルハリア・旧フウム王国連合軍上層部を支配する貴族たちや高位聖職者たちのような奸臣や佞臣は、フィリップ王やユリアス大司教へアロンダイト親子への讒言を囁いていた。
「あそこまで追い詰められたのに見逃されるとは、どうもおかしい。」
「お気を付けなさいませ。あの親子、おそらく恐れ多くも国王陛下や大司教猊下の首魁を手土産に裏切る算段をしております故。」
ありもしない噂話が彼らの頭上を飛び交っていた。
ただでさえ、アロンダイト親子率いる沈黙の天使騎士団は忠誠心が低かったこともあり、クゥジュロ草原で後継者と見なしていた次男カールを見殺しにされたと思い込んでいたフィリップ王は疑心暗鬼を加速させることになる。
軍上層部に広まりつつある不安を一層現実のものにするべく、連合軍作戦参謀として籍を置くハインケル=ゼファーは、すでに部下に命じて手を打っていた。
「アロンダイト親子は、その実力を以って連合軍を破り、辺境に新たな第三勢力を築き上げるつもりらしい。すでに神敵やルオゥム帝国とも手を組み、着々と準備を進めているそうだ。」
そんな噂が兵卒たちの間から湧くように仕向けていたのである。
リトルが破れ、ファラが助けることを見通していたのか。
それとも初めからセラエノ軍とそういう連携を取っていたのか、明確な文書や記録が残っていないために、不明な点が多いのだが、一つだけわかっているのは、それがハインケル=ゼファーの打った彼の人生でもっとも手抜きで、もっとも効果的な策であったということだけである。
兵卒たちは口が軽い。
しかも、上級騎兵大将ヒロ=ハイル同様にこの一騎討ちで人気の高まったアロンダイト親子のそんな噂を誰もが好ましく話していたために、彼らに好意的でない上層部は、アロンダイト親子を危険分子として、常に監視の目を光らせるようになるのであった。
だが、それは元々ひび割れた大岩に例えられる連合軍に、修復不可能な程の亀裂を生じさせるのには十分すぎる効果を生んだ。
アロンダイト親子が裏切った、という心理はすぐに他の諸将にも広まった。
あいつも裏切っているんじゃないか。
こいつも寝返るんじゃないだろうか。
もしかしたら、命惜しさに王ですら……。
そんな人間の心理を、嘲笑うかのような疑心暗鬼を生んだ策であった。
ヒロ=ハイルの一騎討ちが始まる頃、
そして一騎討ちを終えた頃にはすでに噂の一部は飛び交っていたのである。
11/04/19 00:16更新 / 宿利京祐
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