僕の名前はジャック＝オルレアン。
童顔に悩む娼館『テンダー』の店長代理、２７歳です。
妻は前店長で、サキュバスのルゥさん。
歳の差はわかっていますけど、やっぱり愛ですね。
それにあの人はいつまでも若いから、僕のほうがいつもリードされてばかりで。
僕の仕事ですか？
えっとですね、まずは朝、日が昇ると同時に起床ですね。
お店は昼から何ですけど、ルゥさんのお仕事の都合もありますので、まずは彼女を起こすことが最初の仕事です。
ルゥさんのお仕事は、作家さんです。
先日、お友達の話をモデルに脚本を書いたら、お芝居で大当たりしたらしくて、にわかに売れっ子作家さんですよ。気の早いことに劇場の支配人さんが次回作の脚本の依頼をしてしまったので、今ではお店で娼婦をするのは引退してます。
…でも実際には僕と結婚してからお店には出ていなかったんですよね。
「あ、おはようございまーす。」
はい、おはようございます。
あ、今のはうちの�ｂPのディオーレさんです。
彼女、３年前にレッサーサキュバスからサキュバスに転生して、また魅力に磨きがかかりまして。ここだけの話ですけど、彼女、まだレッサーサキュバスだった頃に激しい失恋をしたことがあるらしいんですよ。
失恋すると、女の子は綺麗になるっていうけど本当ですね。
ああ、僕の仕事ですね。
朝は彼女を起こした後は朝食を作ります。
時々お店の女の子が、店に泊まって夜明かしするので彼女たちの分も用意することがありますが…、朝食の後は僕が奥さんに食べられちゃう訳で。
そして開店までにベッドメイクをしたり、プレイ道具のチェックですね。
特にうちはルゥさんのお友達で…、あ、知ってます？
そうです、ロウガさんの影響で色んな種族の女の子が在籍していますので、準備が大変ですよ。例えば蛇の半身持ってる女の子とか、お客様の上を這いずり回るのに女の子の肌とお客様の肌が擦り切れたりしないように、ローションの備蓄はいつだって欠かせませんし。
開店してからはお客様のプレイが終わった後の掃除にベッドメイク、女の子の労いですね。これはきっちりやっておかないと、次のお客様に不快感を与えてしまいますから気を抜けません。女の子の労いも店長としては当然です。
閉店後は、最後に徹底的に掃除をして、売り上げの計算ですね。
女の子の送迎はロウガさんの奥さんの紹介で、リザードマンの自警団の方々と契約を結んでいますので、世界で一番安心できます。
これで、僕の仕事は終わりなんですが…、その後はルゥさんのお相手です。
おわかりと思いますが、僕の睡眠時間はほとんどありません。
でも不満はありません。
今日もこれ、ホルスタウロス印の『疲れをぶっ飛ばす神のドリンク』を飲んで頑張ります。
ちょっと、失礼。
（べき、べき、べき、かしゅかしゅかしゅ…ごきゅごきゅごきゅ！）
ぷはー。
ごめんなさい、今日、これで３徹なんで（笑）。
あ、今日は取材ありがとうございましたー。
もしよろしければ、いつでもご利用なさってください。
うち、娼館だけじゃなくて、希望があればラブホテルとして部屋を貸し出したりしてますので…、恋人と一緒にご利用してくださいねー。


――――――――


１６年前、僕はまだ１１歳の子供だった。
父がギルドの郵便配達員だったけど、その日たまたまぎっくり腰で倒れて僕が父の代わりにギルドの更新情報を配達していた。
あの日まで、僕の人生は平凡に終わるのだろうと思っていた。
あの人に出会わなければ……。

「あ、あの、こんにちは…。」
全裸の紳士が店先で気迫をぶちまけていたので怖かった。
全裸の紳士がいなくなったのを見計らって、僕はおずおずと娼館のドアを開けた。
「あら、可愛いお客様ね。駄目よ、まだボクみたいなお子様がこんなところに来ちゃ。もう少し大きくなってから、ね？」
そこにいたのは美人なお姉さんだった。
手元で何か書類を分けていたけど、その手を止めて、僕の鼻先を人差し指でピンッと一押しして、ウインクして僕を諭した。
胸がドキドキする。
「え、あの、ぼ、僕、ギルドの連絡員でして…。今日は父の代わりに…！」
緊張してうまく喋れない。
「あら、可愛い連絡員さんね…って、え？あの郵便配達の爺さんがお父さん?」
「は、はい。」
「あ、あれがお父さんって、ボク、あの人、何歳なの？」
父は７８歳。
１０人の妻がいて、僕の母は７人目の妻。
そして僕は３６人の子供の中で２９番目の子供。
「はー、人は見かけによらないわ…ってギルドの郵便配達ってそんなに儲かるの？」
「いえ、郵便配達自体は儲からないんですけど、お父さんは副業として色々な事業に手を出していまして、いつかケーザイの裏から世界をギュージってやるって言っていました。」
意味はよくわかりません。
「そ、そうなの…。ところで。」

ギラリン

お姉さんの目が怪しく光った。
背中とか足元から、ゴゴゴゴゴとかドドドドドドって音が聞こえてきそうな雰囲気です。ああ、腰とか関節に厳しいポーズを取ってます！心なしか顔とか身体の線に濃い陰影がぁ〜〜〜！！
「ボクの『お名前』は『何んて』言うのかなぁぁ？」
「ぼ、僕の名前、ですか？」
「質問に質問を返してはいけないわ。立派な紳士になれなくてよ？」
「ひぃ！ごめんなさい。」
「おかしいわ、私は『謝罪』を要求した覚えはなくってよ。」
「ぼ、ぼ、僕の名前は…ジャ、ジャック…オルレアンです！」
不思議な雰囲気だ。
まるでお姉さんの背中から何かが出て来そうな勢いだ。
だが、僕がきちんと名乗るとお姉さんは、またさっきのやさしい微笑みに戻った。
「はい、よく言えました。それじゃあ、ジャック君。お手伝いのご褒美に暖かいお茶を用意するわ。今日は寒いのによく頑張ったわね。おいしいクッキーも用意してあげるから、私のお部屋にいらっしゃい。ここでは他のお客様にもご迷惑にありますから、ね。」
「え、あ、はい！いただきます！」
僕はこの時、父の言葉を完全に忘れていた。
『いいか、息子よ。今日は最後にあの娼館に配達をしなきゃいけないが、これだけは絶対忘れてはいけない。あの女狐には気を付けろ。良いか、絶対に忘れるなよぉぉぉぉ。』
もし忘れていなければ…、僕は退屈な日常の中で今も生きていたのだから。


後にルゥさんは語る。
『あの時の心境？そうね…。
　良かったのかい、ホイホイ着いてきて。
　私は年端もいかない精通してない男の子だって
　構わず喰っちゃうようなサキュバスなのよ。
　……って感じかしら？』


出されたクッキーは最高だった。
外はサクサク、中はしっとり。その上にお姉さんの手作りの色々な果物のジャムを乗せて食べた。お姉さんが出してくれたお茶も、寒い中配達を続けた冷えた身体にホッと安らぐ温もりをくれた。
「どうかしら？」
「最高です！」
夢中で食べた。
それが…、彼女の罠だとも知らずに。
「あら、やだ…。」
「どうしたんですか？」
「首飾りが取れてしまったの…、良かったら取ってくれない？」
「えっと…、どこ……に……？」
ココ、と指差されたのはお姉さんの豊かな胸の奥。
ドレスの隙間から綺麗な胸の谷間がこんにちわしている。
まだ、僕はそういう事をしたことはなくても、興味はある。
そしてそこがすごく恥ずかしいことを知っている。
「取ってくれないと……、お姉さん、ちょっと気持ち悪いかも〜？」
そうだ、お姉さんが頼んだから僕はそこに手を突っ込むんだ。
そうだ、それだけなんだ。
心臓がバクバクする。鼓動に合わせて身体中が膨れ上がるような気がして、顔が熱くて、考えがうまくまとまらない。
真っ白になりそうな頭で、僕はお姉さんの谷間に手を突っ込む。
うわでっかいマシュマロが両腕挟んでプニプニしてスベスベして頭が真っ白になりそうとかそんなレベルじゃない。
レベルが…、違いすぎる！
頭の中のブレーキを総動員して僕はお姉さんの谷間を抜け、結局お姉さんのドレスの真ん中、おへその辺りで首飾りを手に取る。
うわ往復で引き抜くのにまたプニプニとスベスベが押し寄せてくる。
「お、お姉さん…、取れました。」
「ありがとう♪じゃあ…。」
クルリとお姉さんが後ろを向く。
「今度は付けてくれない？」
髪を持ち上げて、お姉さんが振り返りながら笑みを浮かべる。
白い首筋とか綺麗なうなじとか、背中ががら空きのドレスから見えるスベスベしてそうな肌と翼が綺麗で直視出来ない！
荒くなりそうな息を抑えて、僕はお姉さんに首飾りを付けてあげる。
指がガクガク震えてうまく付けられない。
何とかしっかりと首飾りの金具をはめ、お姉さんから少し離れる。
うう…、おっきしちゃって…まともに立てない。
「子供には効き目が早いわねぇ、この媚薬。」
「えっ。」
「苦しいでしょう？さっきね、あなたが飲んだお茶の中にほんの数滴だけ媚薬を入れたのよ。本来は、お店でエッチなことするお客様が急に勃たなくなってしまった時のための物なんだけど、若い子って良いわ♪」
「ううう…。」
「泣きそうな可愛い顔して…、アラ、そっちも随分と立派ね。」
お姉さんは大きく足を開いて、足を組み替える。
この時の状況を正確に言えば、蛇に睨まれた蛙。
いや、違うな…。
そう、エマニエルの前の童貞！
そのまんまだ…。
「どうする？そのまま帰る？そ・れ・と・も…。」
お姉さんが耳にフッと息を吹きかける。
もう…僕の選択肢はないと思った。
するとお姉さんは僕をやさしく抱きしめてくれた。
やさしくて、やわらかくて、暖かくて、甘い香水のいい匂いがする。
「良いのよ、怖がらなくて…。いらっしゃい…。」
そして、僕は押し倒されて…、
ずっと彼女にすがり付くように、ただただ快楽に身を委ねていった。




「いやー、今思い出しても思わずおっきしちゃうなー。」
３徹継続中で疲労困憊なのに。
「あら…、そんなに良かった？」
「うん、良かった…ってルゥさん！お仕事はいいの！？」
「もうクライマックスで詰まっちゃって、ストレス発散しようと思ってね。」
「えーっと、僕、今日で３日徹夜なんですけど…？」
だめ？と目で訴える。
「ダ・メ♪」
「ですよねー。」
今でも僕に主導権はない。
閉店になった後のプレイルーム、ルゥさんの艶声と僕の悲鳴が店中に響いたとか響かなかったとか…。（ちゃんちゃん）

■作者メッセージ
やっち…まった。
一日三本は危険だと思います。
そんなわけでサービスデー直前、
微エロ設定でルゥとジャックの馴れ初めを書いてみましたが、
いかがでしたでしょうか？

次回はいよいよサービスデー。
ご要望にはなるべく応えていきたいと思いますので
奮ってご予約をお待ちしております。
という訳でほぼ一日空けてから書きますので
お時間、いただきますのであしからず。

ここまで読んでいただきありがとうございました。