龍姫のお婿様
「クックック……、待っておったぞ。勇者よ。」
龍魔神殿と呼ばれる宮殿の玉座に座る漆黒ドラゴンは嬉しそうに笑っていた。
俺、勇者ライディ……じゃなくて、紅牙を待ちかねていたと見えるドラゴンの姫君はゆったりとした動作で、優雅な物腰で玉座から立ち上がった。
「こうして顔を合わせるのは初めてだな。我が名は龍皇姫アルバ。我が部下たちを次々と打ち倒し、我が野望、人界魔界征服をたった一人で阻む男とは、どのような男なのか楽しみにしていたぞ。」
「お眼鏡に適ったかい？」
「それをこれから確かめよう。」
バチバチと龍皇姫アルバの手の平に漆黒の火花が弾けた。
暗黒の雷を使うと聞いたことがあったが、ただ立って微笑んでいるだけだというのに圧倒的な威圧感が俺を襲う。
気を抜いたら、それだけで教会に逆戻りしてしまいそうだ。
………え？
何で教会かって？
俺が知るかよ。
何度か死んだことがあるけど、目が覚めたらいつも教会にいるんだよ。
それで司祭が言いやがるんだ。
「おお、勇者よ。死んでしまうとは情けなぶるぎゃあー！！！」
まぁ、最後まで言わせねえけどな。
何もしないクセに文句ばかり言うやつには鉄拳制裁だと決めている。
「……どうした勇者よ？」
「あ、悪い。」
少し考え事をしていたら、何故かアルバが寂しそうに不安な顔をしていた。
そして不安な顔をしていたかと思えば、頬を膨らませてそっぽを向いて口を尖らせていた。
「こ、この無礼者め！貴様は龍皇姫の御前に立っているというのに、私のこと以外に何を考えていたというのだ！！べ、別に良いのだぞ。無理に私なんかと戦わなくたって…。」
腰に手を当てて、真っ赤になって悪態を吐く彼女。
何だろう、龍皇姫ってのはこんな可愛い生物だったのか？
「いや、すまない。ちょっとムカつく司祭とか、お前を退治してくれって頼み込んでおきながら、ヒノキの棒と５０zしかくれなかったケチな王様のことを思い出していた。」
「ヒ、ヒノキの…！？その者は私を舐めているのか！？」
俺もそう思う。
５０zなんて子供の小遣いより低いぞ…。
おかげで、今の剣を手に入れるまでヒノキの棒に釘を何本も突き刺して、勝手に攻撃力を底上げして戦い続けていたものだ。
そんな思い出話をアルバと話していると、同情してくれたのか、彼女は部下にお茶を持って来させて俺に勧めてくれた。
人のやさしさが身に染みる…。
人じゃないけど。
「そなたも大変だったのだなぁ…。」
「わかってくれる！？別に俺、世界を救うとかそんなこと目標にしていなかったんだよ！なのにさ、ちょっと強くなったと思ったらみんな過剰に期待して世界を救えとか、お前の侵略を一人で食い止めろとか好き勝手言いやがってさぁ。俺のことを何だと思っているんだよ…。俺は三国無双とか戦国無双みたいな一騎当千の無双武将じゃねえんだぞ！！」
レベルだって４０くらいなのに…。
「うん、うん。私もよ〜〜〜くわかるぞ。周りの過剰な期待にどれだけ傷付くか、私ならよくわかるぞ。力を付けて領土を広げて、魔王を倒して天下を奪い取れとか両親も親戚も期待しているしな。」
「わかる！わかるよ！！」
「飲もう！今日は龍皇姫だとか勇者とか忘れて、とことん飲もう！！おい、誰かあるか。酒だ、珍味だ、華が足らぬぞ。女たちに華やかな衣装を着せて酌をさせよ。今日はとことん飲み倒すぞ！無礼講である。部下たちを全員連れて参れ！！！」
戦いに来たはずが、夜通しドンチャン騒ぎが始まった。
そして――――――――
チュン、チュン、チュン……
「やっちまった…。」
二日酔いで頭がガンガンして目が覚めると、パンツ一枚穿いていない。
そして俺の胸を枕にするように頭を乗せているアルバも、スッポンポンで俺の右腕を大きな胸で完全に挟み込んで幸せそうに鼻歌を歌っていた。
「すごかった♪」
これって……、責任取るべきだよね？
俺もこいつがすごく可愛く感じるし。
こうして俺たちは夫婦になった。
勇者と龍皇姫の結婚は、俺の雇い主たちや彼女の近隣諸国に衝撃を与えたが、俺は彼女の侵攻を止めることが出来たし、近隣諸国も彼女の侵攻に怯えることがなくなったので万々歳だったりする。
―――――――――――――――――――――――
俺は龍皇姫の夫、紅牙。
と言っても俺に何の権力もなく、日夜家事の出来ないアルバに代わって家事をする専業主夫の元勇者。
今日もバッチリ、青空の下で洗濯物を干す。
真っ白に洗ったシーツが気持ちの良い風に吹かれている。
ベッドのシーツは毎日洗濯。
これが我が家の常識。
え？
何で毎日洗うのかって？
簡単さ、毎晩激しいから朝になる頃にはドロドロになっちゃうからさ。
おっと、今のは妻には内緒な。
気が付けば、アルバと夫婦になって２年が経っていた。
お互いのことは直接は知らなかったけど、お互いに戦うために情報収集をしていたことや、あの後結婚を反対した彼女のご両親を説得するために支え合って戦ったりしたことで急速に仲を深めていき、色んなイベント経て正式な夫婦となった。
本当に、色んなことやったよな…。
両親に頭下げたり、
王様に頭下げたり、
何だか正式に結婚するまでペコペコしてばかりしてたけど、二人で幸せ掴むためだったら何でもやってやるって感じで頑張ったなぁ。
まぁ、疲れていたり、落ち込んでいたりするとアルバが慰めてくれた。
もちろん精神的な意味と、性的な意味で。
昨日も激しかったなぁ…っと。
こんなことをやっている場合じゃない。
今日は特に忙しい日だった。
そろそろ準備しないといけないよな。
アルバが気持ち良く働けるように。
「「「龍皇姫アルバァーッ！！勇者御一行がご予約通りにやって来たぜぇー！！！」」」
夫と初めて出会った思い出の玉座の上で私は物思いに耽る。
懐かしい日々、そして愛される喜びを知った日々。
人界侵略は夫に頼まれて中断し、私たちは魔界にある自分たちの本拠地へと引っ込み平穏な日々を過ごしていたのだが、夫の雇い主の国とは別の国から次々と勇者と名乗る者たちが、私を倒そうと剣を携えて挑戦しに来る。
そのたびに夫と私で蹴散らしていたのだが、さすがに無秩序に来る襲撃者に私たち夫婦は疲れていた。
どうするべきか。
宮殿の警備をもっと厳重にするべきか。
そんなことを考えていたら、夫が突然とんでもないことを思い付いた。
「そうだ、予約制にすれば良いんじゃね！？」
「はぁん（゜Д ゜）？」
疲れが、正常な判断を鈍らせていたんだと思う。
気が付いたら私は、龍皇姫挑戦権予約センター開設を部下に命令し、正気に戻った時には予約センターは開設され、最初に１時間で１００件以上の予約が入ってしまっていた。
さすがに後悔しても遅かったが、予約という形を取ったため、私たちは急な襲撃者に神経を磨り減らす必要もなくなり、常に準備を整えてお客（自称勇者様御一行）を待ち構えることが出来るようになった。
それにしても、人間界というのは、ほんっとうにヒマなんだな。
真面目に予約を待つし。
でも………。
夫、紅牙程素敵な勇者は皆無だったなぁ♪
…………おっと。
自称勇者たちの気合入れの声が聞こえてきたな。
よし、今日も一丁揉んでやるか！
一方その頃、龍皇姫挑戦権予約受付コールセンターにて…。
じりりりりり…
じりりり…
予約センターの黒電話がけたたましい音を立てる。
「はい、お電話ありがとうございます。龍皇姫挑戦権予約受付センター担当のシュックリーでございます。」
コールは２回以内に取るべし。
これがこのセンターの掟である。
「はい……、はい…。４月１９日のご予約ですね…。少々お待ちください……、ああ……、申し訳ございません。４月１９日はすでに予約で一杯になっております。いつなら空いているか……、えぇ…、そうですね。少しだけ延びて２３日の午後４時枠でしたら…。ありがとうございます。ではこの時間に予約を入れさせていただきます。はい、はい…。セーブポイントでしたら、龍魔宮殿前の温泉旅館、龍泉館内にございます。ご予約いただいたお客様には様々なサービスが………。」
ちなみに、予約者へのサービスは
・宿泊料金６０％OFF
・各種生命保険加入出来る（死亡保険は２億円から）
・さらに家族割引あり
etc
と言ったラインナップである。
さらに楽しい死後の生活アドバイスや、ここでしか手に入らない最強の武具が龍皇との戦いが終わった後でプレゼントされるなど至れり尽くせり。
しかも龍皇姫は美人でナイスバディな人妻なので、マニアには堪らない。
「はい、ありがとうございました。ではご来宮をお待ちしております。」
チィン……
黒電話特有の重い音と共に受付のシュックリー（人間）は受話器を置いて一息吐いた。
だが、彼に安息の時間はない。
じりりりりり……
もう次の予約の電話がやってくるのだ。
お茶を飲んで喉を潤す暇もなく、彼は受話器を取る。
「はい、お電話ありがとうございます。龍皇姫挑戦権予約受付センター担当のシュックリーでございます。」
しかし、いつまで経っても相手の返事がない。
無言電話か、と彼は疑い出した。
「お、お客様？」
『モシモシ、ワタシ、りかチャンネー。今、バスにノッテるヨー。』
がちゃっ
つー、つー、つー、つー
何故か警察２４時とかに出て来そうな、不法入国して不法就労しているフィリピンパブのお姉ちゃんのようなカタコトの日本語で電話の向こうの人物は喋ると、一方的に電話を切った。
「…………なんだ？」
不思議そうな顔をしてシュックリーが受話器を置くと、再び電話が鳴る。
また悪戯電話なのかと疑いつつも、もしもちゃんとしたお客だとしたら出ないのは不味いと、シュックリーはいつも通りに電話に出た。
「はい、お電話ありがとうございます。龍皇姫挑戦権予約受付センター担当のシュックリーでございます。」
『モシモシ、ワタシ、りかチャンヨー。今、オ城の前ノバス停だヨー。』
がちゃっ
つー、つー、つー、つー
「イタ電？」
さすがに不気味に感じたシュックリーではあったが、それ以上に段々とこの悪戯電話に怒りが湧いてきていた。
「今度、来たら文句言ってやる！」
じりりりりりり…
タイミングバッチリ、と言わんばかりに電話がなる。
「はい、お電話ありがとうございます。龍皇姫挑戦権予約受付センター担当のシュックリーでございます。」
『モシモシ、ワタシ、りかチャンネー。』
「あんたいい加減にしろよ！こんなくだらん悪戯、今時流行らねえんだよ！！」
一瞬の沈黙。
そして電話の向こうの声は、軽そうなカタコト日本語ではなく重苦しいくらいにドスの利いた声で、寒気を引き連れて声を出した。
「……今、お前の後ろにいるの。」
それは、電話の向こうではなく、シュックリーの耳元で聞こえた。
振り向いてはいけない。
だけど振り向いて確認しなければならない。
シュックリーは震えながら、勢い良く振り向いた。
そこには…………。
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああ……！」
―――――――――――――――――――――――
「良くぞ参った、本日２組目の勇者たちよ。」
龍皇アルバの御前に３人の戦士たちが立っている。
アルバはひどく退屈そうに玉座に腰を下ろしたまま。
「そなたたち、まだ名を聞いておらんかったな。名を名乗られよ。私の眼鏡に適えば、記憶の片隅に残してやらんでもない。」
その言葉を聞いて、勇者御一行を率いる男が声を荒げた。
「なんと無礼な。それが戦士に対する礼か！我が名は勇者アドルフでございます。本日はよろしくお願いしますですはい。」
だが、その声とは正反対に勇者の腰は非常に低く、ついには土下座して挨拶する始末であった。
そしてそれに釣られるように、仲間の戦士と魔法使いが丁寧に土下座をして名乗った。
「戦士スターリンです。」
「魔法使いムッソリーニです。」
また独裁者かよ！！
アルバも作者も心の中でツッコんだ。
だがアルバに至っては龍皇姫としての体面があるために、パッと見冷静な風を装っていた。
「………では独さゲフンゲフン、失礼。勇者アドルフ一行よ。わかっておろうな。そなたたちが私に挑むには百年早い。まず、武器を調えろ。何故、龍皇たる私に挑むというのに銅の剣とナイフで来る。それにレベルが低い！冒険開始早々で何で挑んでくるかな…。私を舐めるのも大概にしろ。ぶち殺すぞ、ヒューマン！」
アルバの的確な助言に、勇者アドルフは高笑いをする。
「愚かなり、龍皇姫！」
「何だと！？馬鹿のクセに！」
馬鹿に愚かと言われてアルバはむきになる。
だが勇者たちは何故か自信満々で腕組みをして立ち上がる。
「確かに我ら、一人一人は弱くとも。」
「３つの心を１つになれば。」
「１つの力は１００万パワーだ！！！」
どこかで聞いたフレーズを口走る３バカトリオ。
アルバはそんな馬鹿３人の相手に頭が痛くなったのか、コメカミを押さえた。
「……馬鹿の相手は疲れる。」
アルバはさらにやる気がなくなって、玉座で悩み始めていた。
どうやってこいつらを黙らせようかと…。
「あ、馬鹿って言ったな！？馬鹿って言ったやつが馬鹿なんだって死んだご先祖様が言っていたような気がするぞ。」
「許せんぬー！」
「よーし、見せてやろうぜ。俺たちの友情パワー。秘められた真の力を！」
「「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！！！！」」」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「な、何だ！？この凄まじいプレッシャーは！？」
玉座の間を揺るがす光の力を解放した３人にアルバは驚愕の声を上げた。
「今時、友情パワーとはどうかと思うが何と言うパワーなんだ！！」
「これぞ人類最強の英知！まさにおばあちゃんの知恵袋！！人類最後の希望の輝き！！！そう、このパワー、名付けてぇぇぇぇーっ！！！！」
ボーイズ・ラブ！！！
「ま、待て待て待て待て！！そなたたち、英語の使い方を間違っているぞ！！ラブは友情ではなく愛情……いやむしろそれで良いのか、そなたたち！？」
「「「当たり前じゃん？」」」
当然のことなのに何を言っているんですかコイツ、と言いたげに勇者一行は哀れんだ目でアルバを見下していた。
ムカ付いたので殴りたい衝動に駆られたアルバではあったが、こんな馬鹿相手に本気になってしまっては周辺諸国の諸王たちに笑われてしまう、と何度も自分に言い聞かせて必死になって自分を抑え込んだ。
「そうか………、色々と障害もあるだろうが、頑張れよ。その愛、貫くが良い。」
思いがけない龍皇姫の言葉に勇者たちは驚いた。
「応援、してくれるのか！？ 」（アドルフ）
「あんたって、実は良い人だったんだな。」（ムッソリーニ）
「はっはっは、俺は二人に貫かれちまったけどな♪」（スターリン）
明るく爽やかな３人とは対照的に、アルバは疲れ切っていた。
やはり会話の通じない相手は疲れるのである。
「「「じゃあな、龍皇姫！俺たち、これから愛の逃避行に出るぜ♪」」」
そして彼らは本来の目的を忘れ、カミングアウトと格好を付けるだけで龍魔宮殿を後にして、何処かへと走り去って行った。
多大な迷惑と、倦怠感だけをアルバに残して。
―――――――――――――――――――――――
「もう嫌ぁー。」
思いっ切り疲れて、部屋に帰って来るなり妻・アルバはキングサイズのベッドに、ぼふん、という音を出してうつ伏せに飛び込んだ。
「あー、お日様の匂い〜♪癒される〜。」
「アルバ、お疲れ様。晩御飯はどうするかい？」
太陽の匂いを吸い込んだ枕に顔を埋めて、彼女は首を振る。
今は食べたくないという意思表示だが、尻尾がご機嫌な時の動きをしているから不快な思いをしている訳ではなさそうだ。
俺は妻のために、彼女の好きな紅茶を淹れることにした。
結婚当初は駄目出しされてしまっていたが、今では俺が淹れないと彼女はカップに口を付けようともしなくなってしまった。
元武人の成れの果てが、これである。
「酷い話よ。最初の勇者御一行なんて何故かパーティー全員が遊び人だし、次に来たのはカミングアウトに来ただけのガチホモたちだし、最後の組なんて子供ばかりのパーティーだったんだよ。子供たちには記念品上げて、龍魔宮殿見学ツアーをしてあげてから帰ってもらったんだけど、どうして最近正統派勇者が来なくなったんだ！！」
俺は知ってる。
最近は、うちみたいな魔界の辺境勢力よりも、もっと中央で勢力を伸ばしつつあるバフォメットや、親玉である魔王に直接挑んだりする命知らずな連中が増えているらしい。
むしろ人間界ではそれがブームになっているらしく、魔界中央部で戦ったというだけで箔が付いて、就職にも結婚にも有利になるらしい。
お茶の蒸らし時間を計っていると、急に後ろから抱き締められた。
抱き締めているのは、もちろんアルバで、自己主張激しい胸が背中で押し潰されている。
「懐かしいな、そなたみたいな漢が昔は大勢いたというのに。」
「まあ、良いじゃないの。俺たちは俺たちなりに今を楽しもう。ほら、離れてくれないと最高の時間の紅茶が出せなくなるよ。」
「それは嫌だね。」
軽くキスをする。
もっとも、軽く、とは言いながらネットリと舌を絡め、お互いの唾液を交換し、荒い息で唇を貪り合う。
軽くないじゃん？
わかっていないな。
本格的なキスをすると、このまま即エッチに発展するんだよ。
でもそうならないように、お互いにここまでって我慢のラインを決めている。
そう、続きはあくまでベッドの中で。
「なぁ、紅牙……。」
やっと唇を解放してくれたアルバは、トロンとした目で俺を見詰めると、荒い息のままで、鼻にかかるような甘い声で俺に囁いた。
「紅茶も…………、晩御飯も……、後回しで良いから…。」
スイッチが入ってしまったらしい。
無言で、彼女の唇を奪う。
それが二人のOKのサイン。
「……………………♪」
結局、俺たちが食事をしたのは翌朝になってからだった。
いつも通り。
ろくに眠らず、一晩中愛し合って、シーツはドロドロ。
ファブリーズ、今日もやっておかなきゃ…。
こうして今日も忙しい一日が始まるのであった。
「栄養補給、魔力補給完了♪紅牙、今日も家事をよろしく♪」
龍魔神殿と呼ばれる宮殿の玉座に座る漆黒ドラゴンは嬉しそうに笑っていた。
俺、勇者ライディ……じゃなくて、紅牙を待ちかねていたと見えるドラゴンの姫君はゆったりとした動作で、優雅な物腰で玉座から立ち上がった。
「こうして顔を合わせるのは初めてだな。我が名は龍皇姫アルバ。我が部下たちを次々と打ち倒し、我が野望、人界魔界征服をたった一人で阻む男とは、どのような男なのか楽しみにしていたぞ。」
「お眼鏡に適ったかい？」
「それをこれから確かめよう。」
バチバチと龍皇姫アルバの手の平に漆黒の火花が弾けた。
暗黒の雷を使うと聞いたことがあったが、ただ立って微笑んでいるだけだというのに圧倒的な威圧感が俺を襲う。
気を抜いたら、それだけで教会に逆戻りしてしまいそうだ。
………え？
何で教会かって？
俺が知るかよ。
何度か死んだことがあるけど、目が覚めたらいつも教会にいるんだよ。
それで司祭が言いやがるんだ。
「おお、勇者よ。死んでしまうとは情けなぶるぎゃあー！！！」
まぁ、最後まで言わせねえけどな。
何もしないクセに文句ばかり言うやつには鉄拳制裁だと決めている。
「……どうした勇者よ？」
「あ、悪い。」
少し考え事をしていたら、何故かアルバが寂しそうに不安な顔をしていた。
そして不安な顔をしていたかと思えば、頬を膨らませてそっぽを向いて口を尖らせていた。
「こ、この無礼者め！貴様は龍皇姫の御前に立っているというのに、私のこと以外に何を考えていたというのだ！！べ、別に良いのだぞ。無理に私なんかと戦わなくたって…。」
腰に手を当てて、真っ赤になって悪態を吐く彼女。
何だろう、龍皇姫ってのはこんな可愛い生物だったのか？
「いや、すまない。ちょっとムカつく司祭とか、お前を退治してくれって頼み込んでおきながら、ヒノキの棒と５０zしかくれなかったケチな王様のことを思い出していた。」
「ヒ、ヒノキの…！？その者は私を舐めているのか！？」
俺もそう思う。
５０zなんて子供の小遣いより低いぞ…。
おかげで、今の剣を手に入れるまでヒノキの棒に釘を何本も突き刺して、勝手に攻撃力を底上げして戦い続けていたものだ。
そんな思い出話をアルバと話していると、同情してくれたのか、彼女は部下にお茶を持って来させて俺に勧めてくれた。
人のやさしさが身に染みる…。
人じゃないけど。
「そなたも大変だったのだなぁ…。」
「わかってくれる！？別に俺、世界を救うとかそんなこと目標にしていなかったんだよ！なのにさ、ちょっと強くなったと思ったらみんな過剰に期待して世界を救えとか、お前の侵略を一人で食い止めろとか好き勝手言いやがってさぁ。俺のことを何だと思っているんだよ…。俺は三国無双とか戦国無双みたいな一騎当千の無双武将じゃねえんだぞ！！」
レベルだって４０くらいなのに…。
「うん、うん。私もよ〜〜〜くわかるぞ。周りの過剰な期待にどれだけ傷付くか、私ならよくわかるぞ。力を付けて領土を広げて、魔王を倒して天下を奪い取れとか両親も親戚も期待しているしな。」
「わかる！わかるよ！！」
「飲もう！今日は龍皇姫だとか勇者とか忘れて、とことん飲もう！！おい、誰かあるか。酒だ、珍味だ、華が足らぬぞ。女たちに華やかな衣装を着せて酌をさせよ。今日はとことん飲み倒すぞ！無礼講である。部下たちを全員連れて参れ！！！」
戦いに来たはずが、夜通しドンチャン騒ぎが始まった。
そして――――――――
チュン、チュン、チュン……
「やっちまった…。」
二日酔いで頭がガンガンして目が覚めると、パンツ一枚穿いていない。
そして俺の胸を枕にするように頭を乗せているアルバも、スッポンポンで俺の右腕を大きな胸で完全に挟み込んで幸せそうに鼻歌を歌っていた。
「すごかった♪」
これって……、責任取るべきだよね？
俺もこいつがすごく可愛く感じるし。
こうして俺たちは夫婦になった。
勇者と龍皇姫の結婚は、俺の雇い主たちや彼女の近隣諸国に衝撃を与えたが、俺は彼女の侵攻を止めることが出来たし、近隣諸国も彼女の侵攻に怯えることがなくなったので万々歳だったりする。
―――――――――――――――――――――――
俺は龍皇姫の夫、紅牙。
と言っても俺に何の権力もなく、日夜家事の出来ないアルバに代わって家事をする専業主夫の元勇者。
今日もバッチリ、青空の下で洗濯物を干す。
真っ白に洗ったシーツが気持ちの良い風に吹かれている。
ベッドのシーツは毎日洗濯。
これが我が家の常識。
え？
何で毎日洗うのかって？
簡単さ、毎晩激しいから朝になる頃にはドロドロになっちゃうからさ。
おっと、今のは妻には内緒な。
気が付けば、アルバと夫婦になって２年が経っていた。
お互いのことは直接は知らなかったけど、お互いに戦うために情報収集をしていたことや、あの後結婚を反対した彼女のご両親を説得するために支え合って戦ったりしたことで急速に仲を深めていき、色んなイベント経て正式な夫婦となった。
本当に、色んなことやったよな…。
両親に頭下げたり、
王様に頭下げたり、
何だか正式に結婚するまでペコペコしてばかりしてたけど、二人で幸せ掴むためだったら何でもやってやるって感じで頑張ったなぁ。
まぁ、疲れていたり、落ち込んでいたりするとアルバが慰めてくれた。
もちろん精神的な意味と、性的な意味で。
昨日も激しかったなぁ…っと。
こんなことをやっている場合じゃない。
今日は特に忙しい日だった。
そろそろ準備しないといけないよな。
アルバが気持ち良く働けるように。
「「「龍皇姫アルバァーッ！！勇者御一行がご予約通りにやって来たぜぇー！！！」」」
夫と初めて出会った思い出の玉座の上で私は物思いに耽る。
懐かしい日々、そして愛される喜びを知った日々。
人界侵略は夫に頼まれて中断し、私たちは魔界にある自分たちの本拠地へと引っ込み平穏な日々を過ごしていたのだが、夫の雇い主の国とは別の国から次々と勇者と名乗る者たちが、私を倒そうと剣を携えて挑戦しに来る。
そのたびに夫と私で蹴散らしていたのだが、さすがに無秩序に来る襲撃者に私たち夫婦は疲れていた。
どうするべきか。
宮殿の警備をもっと厳重にするべきか。
そんなことを考えていたら、夫が突然とんでもないことを思い付いた。
「そうだ、予約制にすれば良いんじゃね！？」
「はぁん（゜Д ゜）？」
疲れが、正常な判断を鈍らせていたんだと思う。
気が付いたら私は、龍皇姫挑戦権予約センター開設を部下に命令し、正気に戻った時には予約センターは開設され、最初に１時間で１００件以上の予約が入ってしまっていた。
さすがに後悔しても遅かったが、予約という形を取ったため、私たちは急な襲撃者に神経を磨り減らす必要もなくなり、常に準備を整えてお客（自称勇者様御一行）を待ち構えることが出来るようになった。
それにしても、人間界というのは、ほんっとうにヒマなんだな。
真面目に予約を待つし。
でも………。
夫、紅牙程素敵な勇者は皆無だったなぁ♪
…………おっと。
自称勇者たちの気合入れの声が聞こえてきたな。
よし、今日も一丁揉んでやるか！
一方その頃、龍皇姫挑戦権予約受付コールセンターにて…。
じりりりりり…
じりりり…
予約センターの黒電話がけたたましい音を立てる。
「はい、お電話ありがとうございます。龍皇姫挑戦権予約受付センター担当のシュックリーでございます。」
コールは２回以内に取るべし。
これがこのセンターの掟である。
「はい……、はい…。４月１９日のご予約ですね…。少々お待ちください……、ああ……、申し訳ございません。４月１９日はすでに予約で一杯になっております。いつなら空いているか……、えぇ…、そうですね。少しだけ延びて２３日の午後４時枠でしたら…。ありがとうございます。ではこの時間に予約を入れさせていただきます。はい、はい…。セーブポイントでしたら、龍魔宮殿前の温泉旅館、龍泉館内にございます。ご予約いただいたお客様には様々なサービスが………。」
ちなみに、予約者へのサービスは
・宿泊料金６０％OFF
・各種生命保険加入出来る（死亡保険は２億円から）
・さらに家族割引あり
etc
と言ったラインナップである。
さらに楽しい死後の生活アドバイスや、ここでしか手に入らない最強の武具が龍皇との戦いが終わった後でプレゼントされるなど至れり尽くせり。
しかも龍皇姫は美人でナイスバディな人妻なので、マニアには堪らない。
「はい、ありがとうございました。ではご来宮をお待ちしております。」
チィン……
黒電話特有の重い音と共に受付のシュックリー（人間）は受話器を置いて一息吐いた。
だが、彼に安息の時間はない。
じりりりりり……
もう次の予約の電話がやってくるのだ。
お茶を飲んで喉を潤す暇もなく、彼は受話器を取る。
「はい、お電話ありがとうございます。龍皇姫挑戦権予約受付センター担当のシュックリーでございます。」
しかし、いつまで経っても相手の返事がない。
無言電話か、と彼は疑い出した。
「お、お客様？」
『モシモシ、ワタシ、りかチャンネー。今、バスにノッテるヨー。』
がちゃっ
つー、つー、つー、つー
何故か警察２４時とかに出て来そうな、不法入国して不法就労しているフィリピンパブのお姉ちゃんのようなカタコトの日本語で電話の向こうの人物は喋ると、一方的に電話を切った。
「…………なんだ？」
不思議そうな顔をしてシュックリーが受話器を置くと、再び電話が鳴る。
また悪戯電話なのかと疑いつつも、もしもちゃんとしたお客だとしたら出ないのは不味いと、シュックリーはいつも通りに電話に出た。
「はい、お電話ありがとうございます。龍皇姫挑戦権予約受付センター担当のシュックリーでございます。」
『モシモシ、ワタシ、りかチャンヨー。今、オ城の前ノバス停だヨー。』
がちゃっ
つー、つー、つー、つー
「イタ電？」
さすがに不気味に感じたシュックリーではあったが、それ以上に段々とこの悪戯電話に怒りが湧いてきていた。
「今度、来たら文句言ってやる！」
じりりりりりり…
タイミングバッチリ、と言わんばかりに電話がなる。
「はい、お電話ありがとうございます。龍皇姫挑戦権予約受付センター担当のシュックリーでございます。」
『モシモシ、ワタシ、りかチャンネー。』
「あんたいい加減にしろよ！こんなくだらん悪戯、今時流行らねえんだよ！！」
一瞬の沈黙。
そして電話の向こうの声は、軽そうなカタコト日本語ではなく重苦しいくらいにドスの利いた声で、寒気を引き連れて声を出した。
「……今、お前の後ろにいるの。」
それは、電話の向こうではなく、シュックリーの耳元で聞こえた。
振り向いてはいけない。
だけど振り向いて確認しなければならない。
シュックリーは震えながら、勢い良く振り向いた。
そこには…………。
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああ……！」
―――――――――――――――――――――――
「良くぞ参った、本日２組目の勇者たちよ。」
龍皇アルバの御前に３人の戦士たちが立っている。
アルバはひどく退屈そうに玉座に腰を下ろしたまま。
「そなたたち、まだ名を聞いておらんかったな。名を名乗られよ。私の眼鏡に適えば、記憶の片隅に残してやらんでもない。」
その言葉を聞いて、勇者御一行を率いる男が声を荒げた。
「なんと無礼な。それが戦士に対する礼か！我が名は勇者アドルフでございます。本日はよろしくお願いしますですはい。」
だが、その声とは正反対に勇者の腰は非常に低く、ついには土下座して挨拶する始末であった。
そしてそれに釣られるように、仲間の戦士と魔法使いが丁寧に土下座をして名乗った。
「戦士スターリンです。」
「魔法使いムッソリーニです。」
また独裁者かよ！！
アルバも作者も心の中でツッコんだ。
だがアルバに至っては龍皇姫としての体面があるために、パッと見冷静な風を装っていた。
「………では独さゲフンゲフン、失礼。勇者アドルフ一行よ。わかっておろうな。そなたたちが私に挑むには百年早い。まず、武器を調えろ。何故、龍皇たる私に挑むというのに銅の剣とナイフで来る。それにレベルが低い！冒険開始早々で何で挑んでくるかな…。私を舐めるのも大概にしろ。ぶち殺すぞ、ヒューマン！」
アルバの的確な助言に、勇者アドルフは高笑いをする。
「愚かなり、龍皇姫！」
「何だと！？馬鹿のクセに！」
馬鹿に愚かと言われてアルバはむきになる。
だが勇者たちは何故か自信満々で腕組みをして立ち上がる。
「確かに我ら、一人一人は弱くとも。」
「３つの心を１つになれば。」
「１つの力は１００万パワーだ！！！」
どこかで聞いたフレーズを口走る３バカトリオ。
アルバはそんな馬鹿３人の相手に頭が痛くなったのか、コメカミを押さえた。
「……馬鹿の相手は疲れる。」
アルバはさらにやる気がなくなって、玉座で悩み始めていた。
どうやってこいつらを黙らせようかと…。
「あ、馬鹿って言ったな！？馬鹿って言ったやつが馬鹿なんだって死んだご先祖様が言っていたような気がするぞ。」
「許せんぬー！」
「よーし、見せてやろうぜ。俺たちの友情パワー。秘められた真の力を！」
「「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！！！！」」」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「な、何だ！？この凄まじいプレッシャーは！？」
玉座の間を揺るがす光の力を解放した３人にアルバは驚愕の声を上げた。
「今時、友情パワーとはどうかと思うが何と言うパワーなんだ！！」
「これぞ人類最強の英知！まさにおばあちゃんの知恵袋！！人類最後の希望の輝き！！！そう、このパワー、名付けてぇぇぇぇーっ！！！！」
ボーイズ・ラブ！！！
「ま、待て待て待て待て！！そなたたち、英語の使い方を間違っているぞ！！ラブは友情ではなく愛情……いやむしろそれで良いのか、そなたたち！？」
「「「当たり前じゃん？」」」
当然のことなのに何を言っているんですかコイツ、と言いたげに勇者一行は哀れんだ目でアルバを見下していた。
ムカ付いたので殴りたい衝動に駆られたアルバではあったが、こんな馬鹿相手に本気になってしまっては周辺諸国の諸王たちに笑われてしまう、と何度も自分に言い聞かせて必死になって自分を抑え込んだ。
「そうか………、色々と障害もあるだろうが、頑張れよ。その愛、貫くが良い。」
思いがけない龍皇姫の言葉に勇者たちは驚いた。
「応援、してくれるのか！？ 」（アドルフ）
「あんたって、実は良い人だったんだな。」（ムッソリーニ）
「はっはっは、俺は二人に貫かれちまったけどな♪」（スターリン）
明るく爽やかな３人とは対照的に、アルバは疲れ切っていた。
やはり会話の通じない相手は疲れるのである。
「「「じゃあな、龍皇姫！俺たち、これから愛の逃避行に出るぜ♪」」」
そして彼らは本来の目的を忘れ、カミングアウトと格好を付けるだけで龍魔宮殿を後にして、何処かへと走り去って行った。
多大な迷惑と、倦怠感だけをアルバに残して。
―――――――――――――――――――――――
「もう嫌ぁー。」
思いっ切り疲れて、部屋に帰って来るなり妻・アルバはキングサイズのベッドに、ぼふん、という音を出してうつ伏せに飛び込んだ。
「あー、お日様の匂い〜♪癒される〜。」
「アルバ、お疲れ様。晩御飯はどうするかい？」
太陽の匂いを吸い込んだ枕に顔を埋めて、彼女は首を振る。
今は食べたくないという意思表示だが、尻尾がご機嫌な時の動きをしているから不快な思いをしている訳ではなさそうだ。
俺は妻のために、彼女の好きな紅茶を淹れることにした。
結婚当初は駄目出しされてしまっていたが、今では俺が淹れないと彼女はカップに口を付けようともしなくなってしまった。
元武人の成れの果てが、これである。
「酷い話よ。最初の勇者御一行なんて何故かパーティー全員が遊び人だし、次に来たのはカミングアウトに来ただけのガチホモたちだし、最後の組なんて子供ばかりのパーティーだったんだよ。子供たちには記念品上げて、龍魔宮殿見学ツアーをしてあげてから帰ってもらったんだけど、どうして最近正統派勇者が来なくなったんだ！！」
俺は知ってる。
最近は、うちみたいな魔界の辺境勢力よりも、もっと中央で勢力を伸ばしつつあるバフォメットや、親玉である魔王に直接挑んだりする命知らずな連中が増えているらしい。
むしろ人間界ではそれがブームになっているらしく、魔界中央部で戦ったというだけで箔が付いて、就職にも結婚にも有利になるらしい。
お茶の蒸らし時間を計っていると、急に後ろから抱き締められた。
抱き締めているのは、もちろんアルバで、自己主張激しい胸が背中で押し潰されている。
「懐かしいな、そなたみたいな漢が昔は大勢いたというのに。」
「まあ、良いじゃないの。俺たちは俺たちなりに今を楽しもう。ほら、離れてくれないと最高の時間の紅茶が出せなくなるよ。」
「それは嫌だね。」
軽くキスをする。
もっとも、軽く、とは言いながらネットリと舌を絡め、お互いの唾液を交換し、荒い息で唇を貪り合う。
軽くないじゃん？
わかっていないな。
本格的なキスをすると、このまま即エッチに発展するんだよ。
でもそうならないように、お互いにここまでって我慢のラインを決めている。
そう、続きはあくまでベッドの中で。
「なぁ、紅牙……。」
やっと唇を解放してくれたアルバは、トロンとした目で俺を見詰めると、荒い息のままで、鼻にかかるような甘い声で俺に囁いた。
「紅茶も…………、晩御飯も……、後回しで良いから…。」
スイッチが入ってしまったらしい。
無言で、彼女の唇を奪う。
それが二人のOKのサイン。
「……………………♪」
結局、俺たちが食事をしたのは翌朝になってからだった。
いつも通り。
ろくに眠らず、一晩中愛し合って、シーツはドロドロ。
ファブリーズ、今日もやっておかなきゃ…。
こうして今日も忙しい一日が始まるのであった。
「栄養補給、魔力補給完了♪紅牙、今日も家事をよろしく♪」
11/04/07 06:54更新 / 宿利京祐