連載小説
[TOP][目次]
act24・絶叫!パワフル草野球2011 B
ゲスト解説者、クレイネルさんが諸事情によりお帰りになりましたので、まだ1回の裏ではありますが、二人目のゲスト解説者として、居酒屋フラン軒経営者、元ボクシング魔界フェザー級チャンピオンのアケミさんをお迎えしています。
本日はよろしくおねがぶぎゃべ!?

アケミ
「体重がばれちゃうから階級は言わないでくださいと念を押しませんでした?」

すんません!
カンペを丸読みしてしまいました!
だから、メリケンサックはしまってください!!

アケミ
「……まぁ、良いわ。今後私のボクシングの階級と、あっちの階級に触れなければ許してあげましょう。ところで、あなた本当に作者?ゾンビともスケルトンとも付かないくらいに朽ち果ててますけど?」

ああ、これですか。
ちょっとクレイネルさんに完全に食われちゃいまして、はっはっは。

アケミ
「まぁ、結局あなたが悪さしたんでしょうね、きっと。良かったらウチの店から修復士を呼んで来ましょうか?さっきから喋るたびに色んなとこから、色んな液が飛び散って醜いったらありゃしません。」

ありがとうございます。
では修復されるまではお見苦しいかと思いますが、本日もお付き合いくださいませ。
さぁ、1回の表が終了して1対0。
チーム志雄のリードで攻撃を終えました。
クック選手の珍プレイやウェールズ選手の先頭打者ホームランで客席はすでに大盛り上がりです。
チーム雷紅狼は一体どんな展開を見せてくれるのか非常に楽しみです。
では、チーム志雄の先発ピッチャー、コーネリア=マストーラ選手がマウンド上で投球練習を始めました。
アケミさん、今日の彼の調子をどう思いますか?

アケミ
「なかなか良いんじゃないかしら。肩の回転も良いようですし、腰の肉付きや肌のハリから考えて、まず絶好調と言って良いのではないでしょうか。」

そうですねぇ、アケミさん。
チーム志雄の右腕、コーネリア選手の資料によりますと、彼の最速は160キロ。
45歳という年齢からストレートの球速は5キロから6キロ程落ちてしまったとのことですが、凄まじい高速スライダーのキレは未だ健在。
右バッターから見れば外へ消えていき、左バッターから見れば自分の手元に抉り込むような高速スライダーは今シーズン、155キロという変化球最速記録を出しており、三振の山を築いたとのことです。

アケミ
「でもコントロールに問題があるようですね。今日の課題は如何に四球を出さずに、相手を苦しめれるかということになるでしょうね。事実、資料を見れば彼の負けパターンは四球を出しすぎて自滅、ですからね。」

そうですねぇ、アケミさん。
さぁ、投球練習が終わり、主審が試合を開始。
1回の裏、チーム雷紅狼の攻撃です。



―――――――――――――――――――――――



ヒロ
(……ですから、初球はストレートをきわどいところに投げて、様子を見ましょうと言っているんです!いきなりど真ん中というのはあまりに危険。いくら素人だからって舐めてかかってはいけないとあれ程…!!)

コーネリア
(こんなガキにワシの球が打てるかってんだ。なぁに、今日のワシは絶好調。こんなに身体が軽いのは久し振りよ。もしかしたら全盛期の投球が出来るかもしれん。お前が本編でいくらワシの上司だからとて、こっちまで従う気はない。お前はワシの球を受けるだけ、リードはワシが出す!)

ヒロ
(………わかりました。勝手になさい。)



チーム雷紅狼は1番バッター、サイガからの攻撃。
サイガ選手は今シーズンを通して、不動の1番としてチームを引っ張りました。
今シーズンの成績は打率3割3分3厘、本塁打12本。
盗塁は39個と大健闘したシーズンでした。
さぁ、サイガ選手が左打席に立ちまして、構え……おーっと!?
サイガ選手、バットをスタンドに向けました!!
これは珍しい!
サイガ選手、コーネリア選手に対し予告ホームランという挑発です!



コーネリア
「この…、クソガキ!!」

ヒロ
(コーネリア、落ち着きなさい…。)

サイガ
「早いだけじゃ、俺を抑え切れねえよ。それにさ、サクラに負けた漢に出来て、あいつのライバルを自負してる俺が出来ないんじゃ、カッコ付かねえじゃん?」

コーネリア
「な、舐めてんじゃねえ!!!」



サイガ選手の挑発にコーネリア選手怒り心頭!
ピッチャー怒りをそのままに、大きく振り被る。
第一球、オーバーハンドで……投げた!


ズドンッ……!


主審
「ストライック!」

コーネリア
「どうだ!ピクリとも動けなかろうがっ!!」



出ました、本日最速の157キロ!!
重そうな速球がズバリ、真ん中低目に決まりました!
いやぁ、凄い速球ですねぇ、アケミさん。

アケミ
「確かに凄い速球でしたが、棒球…、ですね。」

え、そうなんですか?

アケミ
「ええ、サイガ君の挑発で身体の筋肉が緊張し切ってしまいました。さっきまでの絶好調とも言える身体の流れも硬くなってしまって、非常にバランスが悪い状態に陥ってしまいましたね。球速があって、重い球質のようですから大惨事には至らないとは思いますが、私としては非常に残念です。」



ヒロ
(……駄目だ。球が死んでる。)

サイガ
「〜〜〜♪」



さぁ、サイン交換も早々にコーネリア選手。
第二球を……、投げました。


シュッ…


パカァーンッ!


コーネリア
「ゲェッ!?」




サイガ選手、打ったぁーっ!
打球はライナーでレフト線に飛んでいく…!
フェアか、ファールか…、惜しい、ファール!!!
後10cm内側でしたら長打コースでした。
おっと、今の打球を受けてヒロ選手がコーネリア選手の下へ駆け寄ります。
アケミさん、このバッテリーは慎重ですね。

アケミ
「まぁ、当然じゃないですか?今の二球は全部が不用意な球が多かったですからね。それにストレートに対応出来ているサイガ君に、真ん中中心の投球では危険だと…、おそらくキャッチャーの彼の方が感じたんだと思いますよ。コーネリア選手、コントロールはあまり良くないみたいですしね。」

そうですねぇ、アケミさん。
さぁ、打ち合わせが終わったバッテリー。
キャッチャー、ヒロ選手がマスクを被り直し構えました。
ピッチャー、コーネリア選手。
三球目は一体何を投げるのでしょうか。
ピッチャー、大きく振り被って……投げた、ボール!
アウトコースに大きく外れるボール球。

アケミ
「おそらくヒロ選手としては、ギリギリを狙って欲しかったのだと思いますが、今度は逆に腕が縮んでしまいましたね。あれでは速度も出ないし、コントロールも付け難い。何やら悪いパターンになってきましたね。」

そうですねぇ、アケミさん。
さぁ、チームメイトで同じ騎士団所属のリオン選手、フレイヤ選手が溜息を吐く中、サインが決まったようです。
コーネリア選手、第四球を……、投げた!



サイガ
「………あ。」

コーネリア・ヒロ
「「…げ!?」」


バキィッ…!!!



デ、デッドボォォォォール!!!
コーネリア選手の投じたスライダーが高目に浮き、サイガ選手の顔面を直撃しましたぁー!!
サイガ選手、ピクリとも動けない!
ギャグSSだから死なないとは言え、これは痛い!!
チームメイトのサクラ選手が真っ先に駆け寄ります。



サクラ
「サ、サイガ!大丈夫…、うわぁ!?大変だ、顔色が生物としてなっちゃいけないくらいに極彩色に染まって面白いことになってる!!」

サイガ
「か…………。」

サクラ
「か?」

サイガ
「カユ…………、ウマ……(がくっ)。」

サクラ
「サイガ!?サ……………、サイガァァァァァァァ!!!!」

―――――――――――――――――――――――


サイガ選手は病院に担ぎ込まれ、全治1週間の診断を受けました。
しかし、試合はまだ続いています。
コーネリア選手、サイガ選手に投じたデッドボールですっかりペースを乱されてしまったのか、2番、3番と連続で四球を出し、ノーアウト満塁のピンチを迎えております。
デッドボールで負傷退場したサイガ選手の代走として急遽、フラン軒従業員、元男のゾンビで、キャサリン嬢(?)が3塁上にいます。
……むしろ彼女(?)走れるんですか?

アケミ
「大丈夫ですよ。足の骨が折れたって、下半身が千切れたって、上半身だけで這ってでもホームに突撃出来るくらいにはガッツがあの子にはありましからね♪」

それをやられたら相手チームも逃げますよ。
さぁ、ここで左バッターボックスに4番指名打者のダオラ選手を迎えます。
先程お伝えした通り、今シーズン序盤は出遅れてしまい2軍で調整を続けていた彼女ですが、シーズン中盤から今まで出られなかった鬱憤を晴らすように打ちまくり、今シーズン開眼したと自信たっぷりに語る一本足打法で打率2割9分、本塁打37本と堂々たる成績。
ダオラ選手の性格を現すように非常にストレートに強いバッター。
コーネリア選手との相性は良いと分析されています。
アケミさんはこの対戦、どう思われますか?

アケミ
「ストライクに球を置きに来てしまったら地獄ですね。すでにチーム志雄も次のピッチャーをブルペンで急いで作っているという情報がありますし。このまま本編での彼の活躍の通りに、早々と消えてしまうのか。私としてはそこに注目していますね。」

そうですねぇ、アケミさん。
コーネリア選手も、1番バッターのサイガ選手に放った気合がすでに薄れてしまっているのが、放送席からでもわかりますからね。
サインが決まったようです。
コーネリア選手、ダオラ選手に対して第一球目を……、投げた、ボール!
セットポジションから投げたストレートはワンバウンド。
動揺は隠し切れていません!



ヒロ
(……これは失点を覚悟するしかないようですね。まだ、中継ぎ投手の肩が出来上がっていない以上は、彼で何とか試合を進めなければなりませんが、せっかくウェールズがもぎ取った先制点を手放さなければならないとは…。この後の展開に影を落とさねば良いのですが。)



コーネリア選手、セットポジション。
第二球を投げました。



ヒロ
(これは…!)


バシッ…!


主審
「ボール、ツー!」



これは危ない!
ヒロ選手、ジャンピングキャッチであわや暴投になる高目の球をキャッチ!
コーネリア選手、ヒロ選手のファインプレイに救われました。
しかしこれでツーボール。
そろそろストライクが欲しいところです。
ここまでのコーネリア選手の投球数は29球。
まだ1回の裏だというのに、これは多い球数ではないでしょうか。

アケミ
「コントロールの甘さはわかっていたことですが、終わってみればサイガ君の作戦勝ちでしたね。彼自身は負傷退場してしまいましたが、コーネリア選手の調子の良さを挑発で崩し、完全にペースを乱されたコーネリア選手はその後も2番アスティア、3番サクラ君に粘られ四球で塁に出してしまいました。このペースで行けば、おそらく3回には交代ではないでしょうか。もっとも、この回を無事に終わらせられればという条件付きですけど…。」



ヒロ
(危なかった…。これを取れなかったら、全体の士気に影響を与えてしまうところでした。しかし、すでにサインを無視し続けている彼をリードすることが出来ない以上、やはり無意味だったのでしょうか…。)

コーネリア
「……ゼェ、…ゼェ…!!」

ヒロ
(もう肩で息をし始めている。ここで変化球を混ぜてかく乱していきたい、とは思いますが、1番に与えたデッドボールの影響でスライダーをインコースに投げられない…。望むのなら、ここでもう一球だけボール球を投げてほしいもの。押し出しの1点くらいは…、という覚悟はないでしょうね。)



コーネリア選手、セットポジションに構えました。
第三球……、投げました。


シュッ…



ヒロ
(…置きに、来てしまった!)

ダオラ
「ほぅ、ど真ん中とはサービス精神が旺盛であるな。」


カキィィーンッ…!!!!



打ったぁぁぁぁぁー!!!!
クック=ケインズの放った打球のように力強い打球が、
センターバックスクリーンに伸びていくぅーっ!!
センター、リオン=ファウスト、走る!
打球を追ってフェンスに向かって走るが……、諦めた!!
打球はバックスクリーンを遥かに越えていく!!!
逆転!
満塁ホームラン!!
取られたら取り返す!
それを思い知らされる一発が生まれましたぁーっ!!!



ダオラ
「ふむ、さすがに少々詰まってしまったが上々。さて一周するか…。なぁ、そなた。あの男では最早抑え切れぬだろうよ。代えるなら早めにした方が良い。そうでなければ、初回で試合を決めてしまうぞ…、ふふふ。」



ダオラ選手、打球を確認してからゆっくりと走り出します。
まるで1回の表、クック選手の打球を再現するかのようなホームラン。
そしてクック選手のチョンボを繰り返さないと言いたげに、確実にベースを踏んで走ります。
まさに龍姫の名に相応しい、堂々としたベースランニング。
歓声に手を振り応えて、今ホームイン!
1対4。
あっという間にチーム雷紅狼、逆転しました!

アケミ
「ここでピッチャー交代のようですね。ある意味当然のような気もしますが、ここまで精神的にも崩れてしまっては立て直しようがないものですから。私も若い頃、一度敗れた軍勢を立て直すのにどれだけ苦労をしたことか…っと、何でもないわ、おほほほほほほ♪」

私は何も聞きませんでした。
さぁ、マウンドからコーネリア選手が降りていきます。
果たしてブルペンから誰が出てくるのでしょうか…。

ルナ
「チーム志雄の選手交代をお知らせ致します。
 ピッチャー、コーネリアに代わりまして…
 ピッチャー、アルヴァロス。
 ピッチャー、アルヴァロス。」

驚きました。
中継ぎとして登場したのは現役の魔王軍中将、アルヴァロスです!
ゲストとして『風雲!セラエノ学園』act・5において名前が登場しなかった、あの中将閣下がまさかの中継ぎ、二番手として登板です!
今シーズンの成績はなし。
チーム雷紅狼のネフェルティータ選手と同じく、今日まで一切登板がありません。
一体どのような投球を見せてくれるのか、非常に楽しみです。
しかし、チームは初回3点差で未だノーアウト。
守護神としてこのピンチをどう乗り切るのでしょうか…って、アケミさん?
何で顔を隠しているんですか?

アケミ
「い、いえ…、ちょっと…。」
(言える訳ないじゃないの!まったく、まさか私の後輩がここに出るなんて思ってもいなかったわ…。魔王軍にいた頃に何度か顔を合わせたことがあるだけに、さっさと元帥の称号捨てて出て行っちゃった私があの子に顔を出せる訳ないじゃないのよ!)


―――――――――――――――――――――――

ヒロ
「すみません、ゲームを作り切れませんでした…。」

アルヴァロス
「予想よりも出番が早かったが問題ない。肩が出来上がってはいないのは、あいつらへのハンデとして調度良いだろう。何、色々問題だが問題はない。」

ヒロ
「助かります。リードは…。」

アルヴァロス
「任せよう。俺も熱くなりやすい性格だから、お前みたいに冷静に作戦を立てられるやつに任せておいた方が、この準備不足の状態で傷が広がらなくて済む。」

ヒロ
「わかりました。ではバックを頼みとするリードを心掛けましょう。」

アルヴァロス
「よろしくたの……。」


バフォ姉
兄殿ぉーっ!!!ユニホーム姿も素敵じゃぞぉー♪


アルヴァロス
「……みます、うちの嫁が本当に緊張感なくってごめんなさい、いやマジで。」

ヒロ
「ま、まあ良いじゃないですか。こっちの応援団って女性が少なくて野太い声援ばかりでしたから、あれくらいの声援くらいなら…。」


バフォ姉
今夜はそのユニホームでわらわを天国に連れてってぇー♪


アルヴァロス
「すまん、本当にすまん!空気読まない嫁で本当に申し訳ない!!」



ピッチャー、アルヴァロス。
ステップの小さな、特徴のあるアンダースローで投球練習を開始しております。
球速掲示板は今のところ、135キロ前後の速球を記録しています。
手元の資料によりますと、本来のアルヴァロス選手の球速は146キロとなっております。
明らかに準備不足だと思われますが、アケミさんはどう見ますか?

アケミ
「そ、そうね…。確かに準備不足はあるでしょうけど、投球練習を見る限り、何か速球以上に武器なる変化球があるのではないかしらね…?そうでなければこの状況で自信満々な顔が出来ないものですよ。」

そうですねぇ、アケミさん。
投球練習が終わり、審判がプレイ再開を宣言しました。
アルヴァロス選手は、どんな投球を見せてくれるのでしょうか!
ではここでCMです。

アケミ
「こ、この状況で次回に続く!?」

次回放送をお楽しみに。




11/04/03 14:26更新 / 宿利京祐
戻る 次へ

■作者メッセージ
そうですねぇ、○○さんは仕様です。
おはようございます、宿利です。
今回はコーネリア氏が本編そのままあっさり降板。
そしてアルヴァロス兄様が登板したところで終わりです。
本当に九回まで書くのか、という心配をされていますが、
ある程度詳しく書いたら、ダイジェスト風に何か動きがあったところだけを
ピックアップして書いていこうと思います。
………5回目で終わらないような気がしているのはいつも通りですw

では最後になりましたが
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
サラマンダーが追加されましたね。
サラマンダーSSも書きたいなぁー、と思う私でした。
次回もお楽しみに〜。

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33