連載小説
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後編
 さて、そんな訳でお楽しみの時間である。

 刹那は草で作られた寝床の上へと優しく寝かせられた。
 百代(はくたい)はこれから始まる情事が楽しみで仕方ないようだ。尻尾の先も、二本の触角も、妖しくゆらゆらと漂わせていて、その機嫌の良さをうかがわせる。
 一方の刹那は緊張した面持ちで、興奮の高められた胸をどうにかしようと小さく息を吐くのであった。

(あふぅ……やっぱり百代さんも妖怪だぁ……)

 どうにもこうにも“喰われる(性的な意味で)”といった印象の強い状況であり、いたしかたのない話ではあるのだが、その刹那の不安げな顔も、発情しきった百代にとっては興奮をそそるものでしかないらしい。
 喜色の浮かんだ顔は熱っぽく染まった人のものだが、立ち上っているのはご馳走を前にした肉食動物の気配そのものである。自分が捕食対象である事実を突きつけられ、刹那はまた少し胸に溜まったものを吐く。

「あ、あふぅ……」
「いけませんよ、刹那さん。そのような可愛らしい顔をされていては、百代の子宮がキュンと疼いてしまいます」
「お、お手柔らかにね……」
「ふふ、お任せくださいませ。まずは服を脱いでしまいましょうね……」
「あふぅ……」

 百代は蟲の脚を使って刹那を転がしながら、器用に服を一枚ずつ剥いでいく。
 脱がせられた着物は丁寧に折りたたまれ小脇に寄せられていく。まるで赤ん坊にでも戻った気分で眺めている他、何も刹那にできることはない。大百足の淫毒に侵された身体はそう簡単に動くようにはならないのだ。

「素敵です、刹那さん……立派で、大きくて、精の美味しそうな匂いがします……」
「そんなこと言わないで……恥ずかしいから……」

 着物を剥ぎ取られて姿を現した肉棒は立派な大人のそれであった。淫毒に侵され怒張したモノは雄々しくそそり立ち、先からは既に先走りをとめどなくあふれさせている。
 刹那の羞恥に呼応してビクビクと震える様子を見て、百代はうっとりと小さく息を吐いた。その呼気が棹に触れるだけで、むず痒いような快感が身体に伝わっていき、特に咬まれた首筋に甘い痺れを残す。

「恥ずかしがることはございませんよ。刹那さんの全てを、百代はお受け止めしますから……」
「あふぅ……嬉しいけど、やっぱり恥ずかしいものは……恥ずかしいって……」

 イヤイヤと首を横に振る刹那。嗜虐の微笑はますます深まっていく。
蟲の脚でしっかりと刹那の体を抱きとめ、白い肌を密着させるようにして覆いかぶさる百代。白くしなやかな両手を刹那の頬に伸ばし、もはや涙目になりつつある瞳をまっすぐに固定させると、チロリと舌を出してみせた。

「本当なら最初に、こちらでご奉仕をさせていただくところなんですが……」
「うぅ……あッ……!」

 指差した先は、赤い肉のぬらめく口の中。さらに百代は柔らかな胸やしこり立った乳首を、円を描いて刹那の身体に揉みこむように擦り合わせていく。触れられるだけで身体が快楽に灼かれ、刹那は堪えきれずに小さなうめき声を口から漏らした。

「申し訳ありません。はしたない百代は……もう我慢ができなくなってしまいました」

 上気した刹那の頬から首筋、腹を撫でるように指が滑っていき、最後に肉棒の先をなぞり上げていく。先端に触れられると一際大きく跳ねた肉棹を、百代の細くしなやかな指は小指からそっと捕らえていき、そして最後に残った親指が先走りを亀頭へと万遍なく塗りたくる。痛いほどに張り詰めたモノへの優しい愛撫。しかし穏やかなはずの愛撫も、今の刹那にとって脳を灼ききる強い刺激に他ならない。

――パサリ――

 百代の羽織っていた着物が背後の蟲体の上に落ちる。至高の芸術品のような艶かしい肉体が背筋を伸ばして晒された。
 潤んだ瞳の中は完全に情欲の炎に燃え盛り、白くキメ細やかだった肌はほんのりと赤く色づいている。控えめながらも刹那を快感で焦がした胸、そして首筋から刺青のように刻まれた毒腺が、乱れた呼吸に合わせて波を打っていく。男を虜にする淫毒を蓄えた文様は、左右対称にわき腹を通ってへその下に向かい、そしてある一箇所に収束していた。
 最後の一線。人と蟲の狭間に張り付いた札のようなものが、百代の一撫でによって取り払われる。

「刹那さぁん……百代のここを、刹那さんのモノでお慰めください……」

 刹那を眼下に見下ろしながら、百代が自分の秘所を押し広げた。

「ここも寂しくて泣いているんです……刹那さんにお慰めいただかないと、泣き止むことができません……」

 白い指によって左右に開かれた陰唇。ぱっくりと開いた秘裂の中には鮮やかな桃色をした肉の丘が覗いており、百代の呼吸に合わせて妖しくヒクつくたびに、粘性の高い液体がこぷりこぷりと湧いていた。愛液でしとどに濡れた陰部を見せ付けられ、刹那はごくりとつばを呑み込む。先程までの緊張も理性と一緒に粉々に打ち砕かれていた。彼女とつながりたい、一つになりたい。そんな単純な獣欲が刹那の頭を支配する。

「刹那さぁん……いきますね……」

 百代の動く姿が刹那の目には非常にもどかしく、緩慢に見えていた。
 蟲の半身が足元から刹那を巻きつけていき、そして肉棒の先端が彼女の秘所にあてがわれる。くちゅり、と粘り気のある音がするのと同時に、熱い柔肉が触れて愛液と先走りが塗りあわされた。
 一度、二度、三度。位置を確かめるように秘裂に肉棒をなすり付けると、彼女の腰が少しずつ降ろされていく。入り口を貫こうとする亀頭に感じる、狭い肉の膜の抵抗感。だが切なげに顔をしかめながらも、百代がより強く腰を押し当てていくことで、肉棒は処女地を引き裂いてぬるりと呑み込まれていった。

「あぁ……ッ! 入りましたぁ、刹那さぁん……!」

 おびただしい量の愛液と混じって、純潔の証であった破瓜の血が刹那の分身に垂れていく。だが愛する男を受け入れた悦びは、処女膜を破られた痛みも全く別のものへと変換しているらしい。百代は歓喜の表情を浮かべて快楽に酔いしれていた。

「くぅ……あぁ……ッ!」

 カリ首まで膣口に咥え込まれると、たちまちに百代の膣肉は愛しい男の侵入を歓迎し、先から手当たり次第に絡みついた。奥へ奥へと引き込むような動きも合わさることによって、肉棹はほぐれた柔肉を容易にかき分けて突き進んでいく。膣の中腹を過ぎた頃にはもう刹那の腰から射精感が込み上げてきてしまい、凶暴な熱を蓄えた肉棒がさらに硬さと大きさを増して膨らんだ。

「あぁん……ッ! 刹那さんのが……大きくなって……ッ!」
「これ……ヤバい、すぐ出ちゃう……ッ!」

 歯を食いしばって暴発を耐えようとする刹那だったが、その抵抗にもあっけなく止めが刺された。百代の身体がさらに深く沈みこみ、遂に肉棒の先が子宮口までたどり着いたのだ。コリっとした独特の弾力を持った箇所に鈴口が口付けた途端、棹の全体を揉み解すように蠢動していた膣肉が思い切り締め付けを強め、たまらずに刹那は下腹部に溜め込んでいた快楽を放ってしまった。

「うああぁぁ……ッ!」
「んんああああぁぁぁぁッ! ひゃああぁぁ、ひゃああんッ! あぁ、熱いのぉ、来てますぅ……ッ!」

 腰から痺れるような快感が肉棹を経由し精液となって発射されていく。搾るような膣壁の動き、先に吸い付くような子宮口が刹那にかつてないほどの量の射精を強要して止むことがない。肉棒が脈動をするたびに、尿道口から放たれたドロドロの熱は百代の子宮口を何度も叩いていき、その度に百代は全身を絶頂で震わせた。
 初めて女性に欲望を吐き出す快楽と、初めて男性の欲望を受け止める快楽。背筋を反らしていた百代がくたりと刹那に身体を預けると、射精の余韻が退いてきた刹那はあっけなく精を漏らしてしまったことから、決まりの悪そうな顔を百代へと向けた。

「あふぅ……ごめん、百代さん……もう、出しちゃった……」
「んん……お気になさらないでください……百代も刹那さんの子種で……イッてしまいましたから……いやらしい女で、申し訳ありません……」

 刹那の体の上で百代が優しげな微笑を見せる。時々その身体がわずかに痙攣していることから、イッてしまったのは本当らしい。尻尾の先まで身悶えてさせて微笑むその姿は酷く妖艶だ。

「えっと……百代さんが気持ちよかったなら、俺は嬉しいけど……」
「ふふ……それでは今度は二人でもっと、気持ちよくなりましょうね……」

 そう耳元で囁いた百代は刹那の首筋に顔を寄せると、その顎肢を肌に深く突き立てた。

「あっつ……ッ! んっぐぅ……ぅぁああ……ッ!」

 再び流し込まれた猛毒は刹那の全身を蝕んでいき、業火となって神経までを灼き始めていく。地獄の苦痛と極楽の快楽をない交ぜにしたような、想像を絶する快感の灼熱。その中で彼の分身だけは血を滾らせて怒張し、再び百代の中で存在を大きく主張し始めていた。

「刹那さぁん……ずっと一緒に、百代と……刹那さんは百代のものですよ……」
「うん……ぁ、くあぁ……ッ!」

 百代は刹那の首にそっと口付けをすると、再び蟲の肢体をくねらせてゆっくりと腰の動きを再開し始めた。百代の腰使いから生まれるのは激しさのない、だがねっとりと絡みつく愛の交わりだ。トロトロにほぐれきった膣壁は刹那の肉棒をやわやわとしごき上げている。

「百代さん……うぅ……あぅ……ッ!」
「んん、刹那さぁん……! ん、ふぅ、あん……ふぁ、んあぁ……ッ!」

 奥からとめどなく蜜を溢れさせる肉壺が刹那の分身を呑み込んでいく。肉棒はぞりぞりと膣肉をこそぎ落とすように中を進んでいき、そして返しではカリ首が膣壁をめくり上げて擦りたてる。自分の身体の味を刹那に染み込ませるように、百代は刹那を拘束したまま夢中になって腰を揺すり続けた。

「あぁ……はぁん、ぁあ……ああん、あんっ……ん、ぅ……ッ!」

――ぐちゅ、ずりゅ、ぐちゅ、ずりゅ――

 ろくに動かせない視界の先では百代が蕩けた表情で頬を染めている。
 耳に届くのはその熱っぽい喘ぎ声や、接合部から絶えず生まれてくる粘っこい水音。
 彼女の身体を包む甘い香りに混じって、むわっとした蠱惑的な淫臭が嗅覚を刺激する。
 百代の柔らかな胸、硬くしこりを持った乳首が押し当て擦られ、さらに繋がった部分は熔かされたような熱さを刹那に感じさせた。

「あぁん……ッ! 刹那さぁん、どうですかぁ……? んっ……百代の、中の……お味は……?」
「ぅぁ……気持ちよすぎて……何が何だか……ッ!」
「ふふふっ……良いんですよ……? 百代以外の……何も考えられなくなるぐらいに……んぅ……犯して、差し上げます……ッ!」
「うぁあっ……ッ!」
「もっと、啼いてください……ッ! ぅぁん、刹那さん、もっと……おかしくなって……ぐちゃぐちゃに、啼いて良いですから……ッ!」

 二人で食事をしていた時にはおよそ想像できなかったであろうほど、百代は大百足の本性を露にして刹那を嬲り、そして自分も同時に乱れていた。
 刹那も互いの心が通じ合ったことによる交わりに心の底から悦びを感じている。しかし、百代の膣から与えられる快楽に心身を蝕まれては、ただ彼女に組み敷かれて咽ぶ他なかった。

「もっと……もっと、ください……ッ! 刹那さんの、んぅ、子種……ッ! もっとたくさん、百代に、出して……百代を、んあっ……孕ませてください……ッ! 愛しています、刹那さん……ッ!」
「俺も……百代さん、大好きだ……ッ! 愛してる……ッ!」
「刹那さぁん! んぅッ……ちゅ、ん……ッ!」
「んぐぅッ、ん、ちゅ……」

 情熱的な睦言に感極まった様子で、百代は刹那の唇に吸い付き舌をねじ込んだ。
 侵入してきた舌に刹那の口内もまた強引に犯され、熱い唾液が何度も送り込まれていく。足りなくなった酸素が頭を眩ませながらも、必死に百代に付いて行こうと刹那は舌を絡ませては唾液を飲み干し、今度はお返しになるようにと自分も唾液を口内にため、百代の口内へと受け渡した。コク、コクと百代の白いノドが鳴り、恍惚とした表情を刹那に向ける。

「――ひぅ……ッ! あ、ああ、んあああああああああああああああんッ!」

 そして幾度かの体液交換を終えたとき、百代の身体がビクリと大きく跳ねた。さらに絶頂を迎えて小刻みな痙攣。銀色の橋を伝わらせながらも唇を離し、絶叫にも近い声で百代が啼いた。

「うあああッ、うあああああああッ!」
「イくうううううううううッ! んあああんッ、んああああああああああッ!」

 刹那を優しく抱きしめていた腕や蟲の脚が急に力を強め、しがみ付くと言っても過言でないほどに身体を密着させる。それと連動するように、柔らかく刹那を舐っていたはずの肉筒が容赦なく刹那を締め付けた。その刺激に耐え切れずに、二回目の精が彼女の中へと放たれてしまう。

「はぁ、はぁ……はくた……うああああ、百代さん、とめ、とめて……ッ!」
「だめです……ッ! こし、とまらなくて……ッ! やあああああんッ! んん、ああああああッ!」

 突然の反応の変化に驚き、そして二度目の射精による虚脱感に喘ぐ刹那を、百代は容赦なく腰を大きく振ることで責めたてた。淫毒に侵された状態の肉棒は萎えることなく硬さを保ち、乱暴に腰を振りたくる百代に呑み込まれては、彼女の中を深く抉っていく。

「はひゅッ、ふぁあッ! あああッ、んあああッ、やぁんッ! ひぁああんッ!」

 百代は刹那の首に腕を回して全身を押し付けた。もはや理性の欠片も残されていないらしい。虚ろな瞳から涙を流し、口の端からは涎をこぼし、秘部からぐちゃぐちゃと音を立てて、あさましく刹那の肉体を貪っている。許容量をとっくに越えたらしい快感に顔を歪めて、舌を突き出して淫靡な嬌声を上げ、しかし腰の動きだけは一向に収まる気配を見せない。

「あぐぅ……ッ! うぅ、ぁあ……ッ!」

 その下で刹那は言葉にならない声を上げて、暴力的な快感を必死に堪えていた。奥まで咥えこまれた剛直が円を描くように腰と一緒に回され、そしてどちゅどちゅと淫猥な音を立ててまた最奥へと呑み込まれ、子宮口が貪欲に口づけを求めていく。気をやらないようにと全神経を集中させていても、肉と肉がぶつかって弾けるような音を立てるたびに、意識は遥か彼方に持って行かれそうであった。

「そこッ、そこッ! きもちいいですッ! ふぁ、でますッ、でちゃいますッ! ああああああああんッ!」

 百代が陰部を擦り付けるように前後させて自身の淫核を刺激する。さらにお腹側の浅い箇所、少しざらつく部分を亀頭が摩擦するようにと体を滑らせていくと、ぷしゅ、ぷしゅ、と百代の秘所からは断続的に潮が吹き出した。身体を濡らす熱い淫液を吹きかけられ、刹那は早くも三度目の高まりを見せ始める。

「もうだめです……ッ! はくたい、イきっぱなしで……ッ! せつなさん、はくたい、またイッちゃいます……ッ!」
「百代さん……ッ! 俺も、また出ちゃう……ッ! 駄目……うぁ……ッ!」
「ください……せつなさんのこだねぇ……ッ! はくたいのなかに、たくさんだしてください……ッ! あかちゃんつくりますからぁ……ッ! たくさんうみますからぁッ! はくたいとぉ、せつなさんのあかちゃんッ! くださいいいいッ!」

 絶頂の終点に目掛け、最後の一押しとばかりに百代は腰を振り乱した。二人の体液で艶かし体液で身体を濡らし、愛しい女性が甘い嬌声で種付けをねだっている。
 その痴態に心底から当てられた刹那の分身は、一層硬く大きく膨らんでいき、百代の中を抉り続けた。射精の時が近いことを察しているのか、百代の中も根元から先端へ絞り上げるような蠕動を見せ、早く精液を出してとばかりにきゅうきゅうと締まりを強める。

「――出るッ! くああああああああッ!」

 互いの心身が相手を求め合う。
 二人の身体が一つに溶けて混じり合い、境界線が取り払われたような感覚。
 そして最奥に鈴口が勢い良く叩き込まれたその時、遂に刹那の肉棒は限界を迎えた。

――ビュクビュクビュクビュクッ!

「――あひゅ、あああああああああああんッ! ひああああああああああああああああああああああああッ!」

 三度目ながらその日一番多いであろう量の精液が百代の胎内に吐き出された。射精の勢いは止まることを知らず、幾度も百代の中を犯していく。

「あつい、あついこだねぇッ! せつなさんのあついこだねぇッ! べちょべちょってきてますううううう! んあああああああ、まだでてますううううううう!」

 百代の膣口は棹の根元をキツく咥え込んで固定し、刹那の精液を一滴も残すまいと搾るように蠢き、子宮口がそれを余さず飲み込んでいく。

「はひゅ……ひぃ……ッ! ん、ぁぁ……ッ! せつなさぁん……はくたいはまた、なかにだされて……イってしまいましたぁ……ッ!」

 長い長い射精も終わりを迎えるときが来る。淫毒に侵されたことによる強烈な快感の反動ゆえか、刹那はもう一声も発することが発することの出来なかった。その身体にしがみ付きながら、百代はガクガクと全身を痙攣させ、まだ引かない快感の余韻に浸っている。

「ん、ぁ……せつな、さん……きもち……よかった、です……」

 まさしく精も根も尽き果て、百代の声に答えることのできない刹那。そんな刹那の様子に気付いたのか、胸を上下させながらまだ荒い息を整えつつ、百代は刹那の頬へとそっと手を伸ばす。

「――あいしています……刹那さん――」

 薄れゆく刹那の意識には最後に、百代の柔らかな指の感触と声、そして優しい微笑みが届いていた。

◇◆◇

「ふふふ……はい、刹那さん。あ〜んしてください」
「ぅぁ、あ、あ〜ん……」
「今日の食事も、お口に合いますでしょうか?」
「んぐ……ん、え、えっと、今日のご飯も本当に美味しいよ、百代さん」
「ふふっ、それは良かったです。百代もがんばった甲斐がありました」
「う、うん……ありがとう」
「刹那さん……百代にもあ〜んしていただけますか……?」
「あ、うん……は、はい、百代さん。あ〜ん」
「はぁい、あ〜ん……ふふふっ……」
「あ、あふぅ……」

 刹那が百代と出会ってから、早くも三ヶ月が過ぎようとしていた。
 結局初めての交わりは繋がりっぱなしで三日間。目が覚めては淫毒を注入されて気絶するまで中に出し、また目が覚めては噛まれて中に出しという快楽地獄。刹那は干物になるのではと思うぐらいにカラッカラに搾り取られた。
 最後に気絶してから意識が戻るまでに丸一日。まともに動けるようには更に三日を要したのだから驚きである。刹那にとって、大百足が“怪物”と称される理由が身に沁みた事態となった。
 
 町の衆には大百足と結婚するという事を説明すると、思いの外あっさりと受け入れてもらえた。流石に町に住むという話になれば困るものの、伴侶が見つかったのならば、そのまま山で暮らしている分には問題がないとのことだ。刹那も山で生きることになんら不満はないため、今はそのまま百代と二人、彼女の住処であった洞窟で暮らしている。

(あふぅ……甘々幸せ恥ずかし過ぎて虫歯になりそう……)

 刹那の体躯には百足の半身がギチギチと巻きついていて身動きがあまり取れない。自由の利く首と右腕は、傍でべったりとくっ付く百代と一緒に、お互いの口に食事を運ばせ合うことに使われている。
 生活の万事がこの調子であった。百代は刹那から身を離す時がほとんど存在しない。常に刹那に寄り添って甘え、逆に甘えられ、この世の天国とばかりに毎日うっとりと目を細めているのである。次の春になり寺の住職や仲間たちに挨拶へ出向くまで、おそらく二人でずっとこの生活を続けることであろう。

(本当に幸せだなぁ……幸せなんだけどなぁ……)

 非常に喜ばしいことであるのだが、しかし刹那にとってはちょっとした問題もあった。刹那はまだ魔物との性生活に耐えられる体にはなってないのだ。とりわけ百代の種族は大百足。性欲もまさに“怪物級”である。
 毎回体を重ね合わせるごとに得られる、天国と地獄をいっぺんに味わうような快楽の極み。
 そして肉食獣に思う存分しゃぶりねぶり尽くされた後の干物状態。
 早いところ魔力によって体質が変化してしまえば良いのだが、そのためには二人で交じり合うことが必要。どっちにしろヤることに変わりはないのである。

「ごちそうさまでした……あの、百代さん、聞いてくれる……?」
「はぁい、刹那さぁん……何でしょうか……?」
「その……食事したばっかりだし、だからこの後は少し優しく……してくれると――」

――にやぁり――

「――あふううううぅ……」

 いつの間にか見慣れてしまった嗜虐的な笑みに、刹那は深く息を吐いた。
 まるで身体に纏わりつくような、百代の優しくもねばっこい声色。
 その紫の瞳はもう既に、この後の情事への期待で潤みきっている。

「ご安心ください、刹那さん。今日も百代が一所懸命にご奉仕して、たくさん気持ち良くして差し上げますから……」
「あは、あはは、あははははは……あふぅ……」
「愛しています、刹那さん……ふふふ、いただきまぁす……」
「俺も愛してる、百代さん……どうぞ召し上がってくださぁい……」

 暗くてじっとり、しかしねっとりと甘ったるい生活。
 一目惚れした男女同士、刹那と百代はとても幸せであった。
13/05/17 17:25更新 / まわりの客
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■作者メッセージ
書き始めてからようやく『大百足さんとのえっちって制約がかなり多い』ってことに気付いたんです、はい。それで途中で投げ出しました。
結局のところ自分の力量ではこれが限界。エロって難しいですね。

それでは皆様、また何か投稿したさいにはよしくお願いいたします。

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