前編
「あひっ、あはぁっ!♥ あぐぅ!♥ んへぇえ♥」
ノイズ混じりの映像は、どことも知れない薄暗い空間を表示している。
映された中心で白くぼんやりと浮かび上がっているのは、線の細い少女の裸体だ。
第二次性徴期が訪れたか否かという小さな身体が仰向けに、前後に激しく揺さぶられるたびに、甲高い嬌声がスピーカーやヘッドフォンを震わせる。
どうやら少女はこの映像を撮影している男に手酷く犯されているらしい。筋骨逞しい男体の下で、幼い女体には決して相応しくない太く長大なペニスが、華奢な下腹部の内側に深々と突き立てられていた。
「た、だすげっ♥ しぬっ♥ イきじぬぅっ♥ ぎもぢよしゅぎてぇ、あたまばくはつするぅっ!♥♥」
「ほら、また膣内(ナカ)に出すよ……っ! こないだ初潮が来たばかりのおまんこに種付けされながらアクメしまくってるトコ、画面の前の皆さんにじっくり見てもらおうねぇ……っ!」
「あははっ!♥ みてぇっ♥ だいしゅきなおにーひゃんにっ♥ こづくりされちゃうトコっ♥ いっぱいみてぇっ!♥♥」
火照りきった顔面をドロドロに蕩かせて、少女が叫ぶ。
乱暴に腰を突き動かしていた男は、少女の奥底を貫かんばかりに、一際強くペニスを打ち付けた。
「あぎゃぁっ♥ いぎゅ♥ いぎゅぅっ♥ いぎゅトコみられちゃぅうっ!♥ あはぁあっ!♥♥」
およそ女の子が出すものではない声を喉奥から絞り出しながら、少女は電撃でも流されたようにビクビクと痙攣し、そのままぐったりとベッドに沈み込んだ。否、どうやら本当に電撃が流れているらしく、どういう原理か少女の身体のあちこちから青白い筋がパチパチと弾けて、そのたびに小さな肢体を小刻みに跳ね上げていた。
「ひぅん……っ♥」
力なく広げられた股の間から、男の剛直がずるりと引き抜かれる。
そして間髪入れず、至近距離から映し出された少女の女性器は、荒い画質ながらも美しいサーモンピンクとして鮮やかに表示され……しかしその直後、ネバついた精液がおびただしい量を伴って膣口の奥から溢れてきて、美麗だったはずのそこは瞬く間に白濁色へと上書きされてしまった。
女性器のみならず、敷かれたシーツにも浅黒いシミをジワジワと広げていく。
そんな無慈悲な色合いにも似た、淡々とした男の声がマイク越しに投げかけられた。
「はぁっ、はぁっ……さて、今回の動画……『二時間耐久! 一度も抜かずにハメ倒し撮影会!』は、無事これにて終了となりますが……実はこのあと、ちょっとしたお知らせがあります。らいか、お願いね」
ぜぇぜぇと息を荒げ、陶然と虚空を見つめる少女の顔が、画面いっぱいに映された。
「ばちばちぃ……♥ しぇっくしゅぅ……♥ しゃいこぉ……♥」
「……ほら、アクメに浸るのはもうちょっと後にして。視聴者の皆さんになにか言うこと、あったよね?」
「…………ふぇ? ……なんかあったっけぇ?」
「おまんこパンパンされすぎて、頭のネジがぶっ飛んじゃったかな? ほら、次回予告だよ。じかいよこく」
「……あはぁっ♥」
男からの助言を受けて、少女は蕩けた表情をなおさらどろりと融けさせて。
「えっとぉ、次回はぁ……らいぶちゃっと? をやりたいと思いまぁす♥ ボクとおにーちゃんがいっぱいナマえっちするトコ、楽しみにまっててねぇ〜〜……♥」
「ということです。この動画の投稿から一週間後に配信する予定なので、どうぞお楽しみに。その他詳細はキャプションに記載されたブログの方で……よいしょっと」
男はおもむろに膝立ちになると、ベッドに沈む少女の顔の横へと移動した。
そのまま、いまだ硬く勃起したままのペニスを少女の口元へとさらけ出す。
すると少女はそうするのが当たり前とでも言うかのように、精液と愛液に塗れたそれを愛おしげにしゃぶり始めた。電撃がバチバチと、口元から涎のように弾けこぼれる。
「それじゃ改めて、動画を終わりにします。ほら、らいか。バイバーイって」
「んぶっ♥ まひゃ見へねっ♥ ぶぁいばぁいっ♥」
ペニスを口いっぱいに頬張ったまま、カメラ目線の少女がカラフルな『翼』をハサハサと振ったところで、映像は途切れた。
『サバト・チャンネル』。
魔物が出演するアダルトビデオ作品を中心とした、知る人ぞ知る動画配信サイト。
「魔物が身体を許すのは生涯一人の男性のみ」という彼女たちの性質上、配信される動画の全てが、仲睦まじい夫婦やカップルのまぐあいをそのまま写した純愛モノのAV、もしくは一般視聴者から投稿された自撮りモノ、個人撮影モノで構成されている。
裏表なく赤裸々に愛情を確かめ合う男女たちや、伴侶のいない寂しさを情欲のこもった自慰行為で紛らわす女性たちを映す動画群。それらは、利害と欺瞞に満ち満ちた従来のAVに辟易してしまった男性諸君、果ては、性行為の参考にと学習しにくる魔物各位の心までをも捉えて離さない。
なかでも、魔物たちの若く美しい女体と淫らな痴態をリアルタイムで鑑賞でき、かつ動画内のコメントという形で配信者とコミュニケーションがとれる『ライブチャット』……通称『サバト・ライブ』は、年々需要が高まりつつある同サイトでも特に人気のコンテンツだった。
サバト・チャンネルに魅了された一人である『あなた』は、『シロウト動画投稿所』にて目を付けていた一組のカップルが、ライブチャット配信に手を出すとの情報を聞きつけ、期待と興奮に引きずられるようにそのページを開いた。
怪しく仄かな色彩に染まるラブホテルと思しき一室が、四角く切り取られた写真のようにディスプレイの中央に映し出される。
そこそこ性能の良いカメラを使っているのだろう、映像は意外なほどに鮮明で、手ぶれ補正が効いているのか画面の揺れは少ない。が、撮影者はカメラの扱いがあまり得意ではないらしく、ときおり不自然なくらいにブレたりズレたりしている様子が、いかにもな素人臭さを醸し出していた。
部屋の中央に鎮座するダブルベッドの上には、小さな人影が一つ。
本来ヒトの腕があるべきはずの場所に、青や緑、黄色からなるカラフルな翼を生やし、硬い鱗に覆われた鳥脚を女の子座りの形にぺたりと折り畳んだ、幼い少女の姿があった。
見るからに溌剌(はつらつ)といった顔つきの少女は、しかし明らかに緊張した様子だった。
年端もいかぬ小柄な体躯をカチコチに強ばらせ、ただひたすら何もない空間を見つめ続けている。
そんな彼女に、カメラは一歩、また一歩と近づいていった。
翼と同じ少々派手めな髪色の奥、ややつり目がちな少女の瞳が、上目遣いにカメラを見上げた。
「ね、ねぇ……ホントにやんの……?」
「今さら何言ってんの。二週間前はあれだけ待ち遠しそうにしてたのに」
「うぁ、だ、だってぇ……いざとなると心の準備がぁ……」
「相変わらず本番に弱いなぁ、らいかは。でも、もう遅いよ。カメラも回っちゃってるし」
「ふえっ!? う、うそ!」
『らいか』と呼ばれた少女は身体に見合わぬ大きな翼をわさわさと振り回し、慌てて身だしなみを整え始めた。このあとどうせ乱れるのに……撮影者らしい男性のそんな呟きが微かに届いた。
「えー、ただいまカメラのテスト中、カメラのテスト中……らいか、イエーイってして、イエーイ」
「い、いえーい……?」
少女はおそるおそる、不器用に片翼を振り上げた。
幼さとあどけなさに満ち溢れた顔と声、そこに入り混じった恥じらいが絶妙なアクセントとなって、彼女の元来持つ可愛らしさを視聴者に印象付ける。
画面の端に映り込んだノートパソコンには、少女と同じ姿で同じポーズのミニチュアが、四角く切り取られて表示されていた。
「カメラとノートパソコンの同期再確認。……配信もとっくに始まってるから。もう後戻りできないよ? らいか」
「う、ぅう〜〜……♥」
目尻に涙を浮かべてうつむく少女。
しかし、うつむく前のほんの一瞬……その顔に張り付く不安の表情に、ほんの僅かな期待の色が含まれているように見えたのは……果たして、気のせいだったのだろうか。
男の改まった声が聞こえてくる。
「さて、画面の前の皆さん。はじめましての方もそうでない方も、本日はお忙しいなか、貴重な時間を僕たちの動画に割いてくださりありがとうございます。いつもは『シロウト投稿所』の方に僕とらいかの動画を投稿しているのですが、本日は数々の希望もありまして、こちらの『サバト・ライブ』をやってみることに致しました。改めてよろしくお願いします」
『よろしく〜〜!』
『ナマ配信までの二週間、全裸待機余裕でしたw』
『いつもみたいにらいかたんがバチバチしてるとこを早く見たいのじゃ^^;フーフー』
男の儀礼的な台詞に続き、いくつものコメントが画面上を流れていく。
「みんな、らいかのエッチなトコを早く見たいってさ」
「そ、そんなのっ! ボク知らないもん!」
「へぇえ〜〜、今更そんなこと言っちゃうんだ。おまんこハメすぎて全身トロトロのバチバチになってる姿、もう何十回もみなさんに見られちゃってるのにね?」
「ふあぁっ!?」
「くっちゃくちゃのハメ顔に、とろっとろのイキ顔に、可愛らしく勃起した乳首に、ザーメン塗れの事後まんこに……もしかしたら、お尻の穴のシワの数まで、覚えられちゃってるかもしれないね?」
「や、やぁだぁ……っ!♥」
みるみるうちに真っ赤に染まった顔を、両翼で覆い隠す少女。
恍惚に満ちた溜息をついた男は、それを置いて話を続ける。
「ホントは一週間前には始める予定だったのですが、前回の動画のすぐあと、おまんこされすぎてバカになっちゃったらいかにバチバチされて、お古のカメラがショートしてしまい……」
バックアップ取っておいて良かった、とぼそりと一言。
「……でもいい機会だったので、ついに買っちゃいました。S○NYのハンディカムの新型。こいつでらいかのカラダをいつもより綺麗に、隅々まで撮ってやれることを思うと、今から楽しみです」
「……おにーちゃんの、ばぁか。ドへんたい」
「はい、馬鹿でド変態なお兄ちゃんでごめんね。……さーて、それじゃあ、らいかちゃん? 打ち合わせのとおり、自己紹介をお願いします」
少女は翼から目だけを覗かせる。
稲妻色の虹彩が、不安いっぱいに揺れていた。
「……ホントのホントにやんなきゃ、だめ?」
「……うーん、そこまでイヤなら、ここで撮影終わりにしてあげてもいいけども。でもそれだと、画面の向こうの皆さんを裏切ることになっちゃうよ? せっかく、らいかの可愛くてエッチなライブを二週間も前から楽しみに待っていてくれたのに」
「だ、だけどぉ……ただの動画ならまだしも、さすがにナマ放送は恥ずかしすぎ」
「ああ、それにね?」
男は少女の言葉を遮って。やや小声になって。
「僕も早く、らいかのおまんこでバチバチしたいから。ね?」
細く尖った少女の耳が、ぴくりと跳ねた。
「………………ばぁか」
相変わらず紅潮した顔を不服そうにしかめさせて。
しかしどこか嬉しそうに口の端を緩ませる複雑な表情を浮かべながら、少女は顔を隠す翼を下ろした。
『鬼畜兄』『らいかちゃんチョロイw』『儂も早くらいかたんのおまんこみたいのじゃ^^;フーフー』。
コメントが流れていく。
「それじゃ、らいか。お願いね」
「うー……っ」
ニマニマと笑みを浮かべているのがありありと分かる声色で、男は少女を促す。
少女は悔しそうに唸り声を上げるが、しかしついに観念した様子で、カメラを見据えて自己紹介をはじめた。
「え、えっと……み、皆さんこんにちは。ボクの名前は、らいかっていいます。えーっと、種族は見てのとおりサンダーバードで、年齢は……JS4、です、えへ……♥」
やや舌っ足らずな声音がたどたどしくカメラのマイク部を透過する。
画面の端に、ソファに置かれた赤くて分厚い背負いカバンが一瞬映り込み、すぐに画面外に消えた。
「おにーちゃんとはご近所さんで、イトコどうしです。お向かいのおばさんには『仲の良い兄妹みたいね』ってよく言われるけど、おにーちゃんはお兄ちゃんじゃなくって、えと、その……恋人、です……♥」
羞恥が極まりつつあるのか、もじもじと身体をくねらせる。
「今日は学校帰りにおにーちゃんと買い物したあと、まっすぐココに来ました。……学校でお勉強したり、いっぱい歩いたりしてとても疲れたので、こ、このあとたくさん、おにーちゃんにいやしてもらおうと思っています。えと、みなさん、ボクのこと、最後までじっくり見ていってください、ね……♥ ……ぅうー、やっぱハズいよぅ……」
少女は再び、翼の陰に顔を隠した。
画面が一瞬、感激するようにぶるりと震えた。
「……よく、できました。……さて、自己紹介も終わったところで、ここからは待望のリクエストタイムにしたいと思います。らいかにシて欲しいことを先着三名様、早いもの勝ちっ!」
「え、ちょっ! おにーちゃん、リクエストなんてボク聞いてな……っ!」
「あ、ほららいか! さっそくリクエスト来たよ! パソコン見てみて!」
「ふぇええっ!?」
『らいかちゃんが脱衣するとこみたいです!』
『らいかちゃんのおっぱい間近で見たい』
『らいかたんのオナニーが見たいのじゃ^^;フーフー』
バチリ、と。
コメントを見た少女の頭頂から、青白い電撃がほとばしった。
愕然と目を見開いた表情が、湯気を出さんばかりに赤らんでいく。
「……想像して、興奮しちゃった?」
「……ッ!? な、し、してないもんっ!」
「嘘だね」
男はきっぱりと否定する。
「今、電気がバチッていったじゃん。視聴者の前で裸になって、小振りで可愛らしいおっぱい見せつけて、ちっちゃなロリまんこいじくってるドエロい自分を観察されてるトコ想像して……ドキドキしちゃってるんでしょ?」
「ち、ちがぁ……っ! 何勝手なこと言って……!」
「えー、視聴者の方にご説明しますと、らいかはドエロいこと考えるとバチッと頭に電撃が走るんですよ。ホント、こんな生理始まったばかりのガチロリのくせして、とんだ変態ですよね」
「きゃあぁぁあッ!? で、デタラメを言うなぁっ!!」
「全然デタラメじゃないでしょ? それに、僕はらいかのそういう変態なトコ、大好きだけどな」
「う、ぅう〜〜っ!!」
立て続けの男の口撃に、もはやどうしていいのか分からなくなったらしい。
屈辱と羞恥と歓喜がない交ぜになった顔に、涙を滲ませる少女。
男はくすりと一つ笑うと、手持ちのカメラをベッド脇のテーブルに置いた。
筋肉質で体格の良い男と、それとは不釣り合いに小柄な少女のツーショットをカメラは写す。ベッド際に片膝をつき、少女の頬に前触れなく片手を添えた男は……唐突すぎる行動に呆気に取られている彼女の唇へと、自分の唇を近づけていき。
触れ合わせるだけの、キスをした。
ゆっくりと離れていく男の顔を、少女は茫然自失としてただただ見届ける。
「お願いね、らいか」
男はにこりと、一見好青年らしい笑顔を振りまいた。
はっと我に返った少女は、口元をわなわなと震わせて。
しかし何も言うべきことを見つけられなかった様子で、一つぽつりと憎まれ口を叩くのだった。
「……おにーちゃんはそのうち、地獄にでも堕ちちゃうんじゃないかな!」
「そりゃあありえないよ。僕はらいかと一緒に天国に行くんだから」
「……ばぁか」
しかしあっさりと反撃されて、少女は多分に悔しそうに、けれども幾分嬉しそうに頬を染めて、唇をつんと尖らせた。
こんなに可愛い彼女を他人に見せびらかさないとか、冗談だろ。
そんな呟きが、聞こえた気がした。
16/09/08 14:23更新 / 気紛れな旅人
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