白蛇の毒
「ねえ、恭子。聞きたいことがあるんだけどいいかな。」
「はい?」
チャカチャカと軽快な音をたてて冬用の編み物を編んでいた手を止め、恭子がこちらを向きながら可愛らしく首を傾げた。凛とした大和美人が垣間見せる可憐さは何度見ても心に響く。
「旦那様が改まって私に聞きたいことだなんて、なんですか。」
「うーん、ちょっと変な質問だから怒らないでくれる?」
学生のころから長い間生活を共にしてきた最愛の妻にこんな馬鹿げた話をするべきかと言い淀む祐介の姿を可笑しそうに眺め、恭子は小さく笑みを零す。
「ふふ、旦那様の御知りになりたいことでしたら答えられる範囲で答えますのでどうぞおっしゃってみてください。むしろそう前置きされたらどんな質問をされるか楽しみですよ、私は。」
「あー…じゃあ聞くけど」
「はい。」
「恭子って例えば…牙とかに毒があったりする?」
「……え?」
さすがの恭子も予想しない内容だったのだろう、ぽかんとした表情で先ほどとは反対の方に首を傾げた。
「毒って、あの…毒ですか?」
「うん。」
そっと自身の口に手を当てながら、恭子はより疑問の色を濃くする。
「あの…旦那様はなんでそのような疑問をお持ちになったんですか?」
「ああ、実はね…」
きっかけは数日前に訪れた図書館での出来事に端を発している。
その日、仕事で必要な資料を集め終え、我が家に帰ろうとしたのだが、予報にない強めの雨が突然降り出し、勿論傘などない祐介は仕方なく雨が止むまで館内で時間を潰すことにした。
そして偶々目に入ったのが、魔物娘図鑑。
放浪の魔物学者が執筆したもので、祐介も一度ならず読んだことのあるものだった。良き隣人たちである魔物娘たちの特性などを学ぶ上でやはりこの本は有用であるらしく、多くの教育機関や図書館に置かれている。といっても恭子と結ばれて読んだことなどなかったし、読む必要性があったわけではない。白蛇である妻を持つ身。他の魔物娘の知識など興味はないし、知ったところで何になるわけでもないからだ。
だが、なんとなく、久しぶりに目を通したくなって手に取った。
ぱらぱらと頁をめくり真っ先にラミア属のあたりを開く。
数いるラミア属のその中に、探していた白蛇を紹介する頁があった。学者の調査に協力した白蛇の写真と共に、恭子と生活する中で実感を持って知っている白蛇の知識が羅列されている。
「まあ、恭子の方が断然美人だな。比べるまでもなく。」
漠然と内容を目で追いながら、ふと無意識に呟いてしまった。
これは魔物娘と結ばれた男なら誰だって思うことに違いない。例え魔王様相手であったとしても、誰よりも妻が一番美しく、大切な人なのだから。
ざあざあと降る雨の音を聞きながら、あっという間に白蛇のページを読み終える。
後に聞いた話では、近隣に住む稲荷が幼なじみの男性と結ばれたために降り出したというその雨は、まるで弱まる気配がなかった。
「さて、どうするか…。ん?」
図鑑を元あったところに戻そうかと思いながらなにげなく白蛇の一つ前のページを開くと、そこにはアポピスが紹介されていた。魔物娘の中でも希少な種類であり、肉眼で直接見たことは数えるほどしかない。惰性と微かに好奇心をくすぐられつらつらと読んでいると、ある描写に目が留まった。
『彼女たちは体内に強力かつ特殊な神経毒を持ち、噛みついて獲物の体内へと流し込む。』
ふと頭にある考えが浮かび、次の次、バジリスクの頁を開く。
『彼女たちは、その視線に晒されるだけで毒に蝕まれる、恐るべき蛇毒の魔眼を持つ。』
他にも血や言葉、爪、粘液、唾液、愛液…種類は違うが図鑑に掲載されたラミア種の多くが『毒』を有していることが気になった。
蛇は決まった種類しか毒を持っていない。
だが、ラミア属の魔物娘はどうなのだろうか。
親の遺伝や個体差によって魔物娘は同じ種族であっても変化が生じることがあると聞いたことがある。だからこそ、馬鹿なことだと自分でも思いながら気になってしまった。
特に記載のない白蛇が毒を持つことはあるのだろうか、と。
「なるほど…そういう理由で。」
「変な質問でごめんよ。でも、気になっちゃって。」
「いえ、実を言うと…」
少しだけ恥ずかしそうに恭子が微笑んだ。
「私も幼いころに自分に特殊な部分がないか母様に尋ねたことがあるんですよ。その中には勿論毒のこともありました。」
「え、そうなの!?」
「はい。私たち白蛇はその身に水の魔力を宿し、種族的に魔物娘の中でもそれなりの力を身につけることができるじゃないですか。」
確かに彼女たち白蛇は水神と祀られる龍に仕えるものが多いが、白蛇自身が水神と祀られるほど力を保持する者たちもいる。現に彼女の母は地域で多くの信仰を集める存在である。
「だからこそ、自分に何ができて何ができないのか、ちゃんと知っておきたいと思ったんです。」
「なるほど、ね。」
「それに、もし自分にそんな毒があるならば、未来の旦那様を虜にするために使わない手はありませんからね♡」
ほんの一瞬、笑みと共に淫靡な雰囲気が溢れるが、さっと貞淑な妻の顔に戻り恭子は続ける。
「そして残念ですが、私に他の魔物娘が持っているような毒はありません。毒は…ね。」
「ん?」
妻の何気ない言い方が、気になった。毒“は”?
「毒はってことはそれ以外になにかあるの?」
「これは、あくまでも私独自の解釈ですので冗談半分に聞いてもらえると助かるのですが…」
そう言って恭子は、手に持っていた編み物をそっと机に置くと、真っ直ぐに祐介の瞳を見据え口を開いた。
「毒に似た、ある意味では毒以上に厄介なものを私たち白蛇は持っていると考えているんです。」
「毒以上に厄介なもの…?」
「はい。それはですね。」
目を細めにやりと怪しく微笑む恭子がゆっくりと右手を前に翳したかと思うと、手のひらにぼうっと
「私たちが身に宿している、水の魔力です。」
まるで火のような魔力の塊が出現する。
「っ!?」
その瞬間、どくりと体が意思に反して強く脈動した。
まるで情事の最中のように身体が急激に火照り、体から力が抜けてしまう。自分の体を制御できずただただ変化していくこの感覚はまさに…
「旦那様は私だけを見て、私だけを愛してくださるのでこの水の魔力を体に注入したことはありません。ですが共に暮らし、毎夜肌を重ねインキュバスとなられた旦那様は、私の持つ水の魔力に知らず知らずのうちどっぷりと染まっているのです。」
音もなく妻がゆっくりと近づく度、身体の甘い疼きが強くなった。
「だからこうして私が水の魔力を強く放出すると、旦那様は堪らないですよね?私を抱きしめたくて、心地よさと快楽を欲して♡」
今まで経験がないほど全身から強く放たれる彼女の水の魔力を感じるだけで、全身が甘い心地よさにうち震えた。
「だから私は思うんですよ、旦那様。嫉妬に狂い自分だけを見てもらうように注ぎ込む私たちの水の魔力とは…」
囁く恭子の声が“毒”で霞む脳内をじんわりと熱くする。
「他の魔物娘が操る毒と変わりないんじゃないかって♡」
「ところで、旦那様?」
「な、なんだい…」
「毒の有無を聞いて、どうしたかった…いえ、どうされたかったんですか?」
それまでの甘く色っぽい表情に、じんわりと嗜虐の色が滲む。
「え、それは」
「もし、私が毒を持っていたとしたら…魔物娘図鑑に書かれている餌食になった哀れな男性たちのように、毒に犯されながらセックスをしたかったのではないですか?」
図星を突く恭子の言葉にびくりと体が震えてしまう。
「だからこそ、私に質問した…違いますか?」
ゆっくりと力なく頷くと、恭子はにたりと満足気に笑みを零す。
「なら、その旦那様の希望を…たっぷりと叶えて差し上げます♡」
「あぁ、くぅ…ぁあ!?」
蜷局に囚われた祐介の二の腕を優しく撫でられた。
ただ撫でられたというのに、神経を直に熱せられたように強い快楽が走り抜ける。先ほど見せていた炎とは比べられないほど弱火、ほんのりと指先が光っている程度の魔力だというのに、祐介の体は強く反応し暴れ狂ってしまう。震える口から嬌声が漏れ、絡みつく愛妻の下半身の中で陸に打ち上げられた魚のようにびくびくと体を震わせた。
妻の言う、毒よりも厄介な魔力の威力は予想以上だった。
愛撫ですらない、ただ肌を撫でられただけだというのに全身が震え、男性器を硬く勃起させてしまう。そして心だけではなく体で理解した。こうなってしまっては、魔物娘図鑑の中に表記されている、毒の餌食になった男達のように体を貪られるほかないのだと。
望んでいたことだとはいえ、魔物娘である自身の妻を軽率に刺激してしまったことをこれから体で実感させられるのだと。
「ふふ…」
淫らに表情を歪め、口の端から涎を垂らし悦楽に翻弄される夫の姿を満足そうに見ながら、恭子はより敏感な部分へと魔力を込めた手を伸ばす。ぼんやりとした光を宿した指先の標的は…
さわ、さわ…こりっこり♡
愛する夫の胸。
乳輪をゆっくりと、その部分を意識させるように撫で上げるとたまらず甘い声が漏れ出した。それでもしばらく焦らすように撫で様子を見つつ、突如痛みを感じさせない絶妙な加減で乳首を指先で指圧する。
「はっああ、あぅ…ああ!?」
「可愛らしい声♡」
夫の嬌声をうっとりと聞きながら、より胸への愛撫に魔力をこめる。
「あっひ、きょ、恭子、だ、あだ…だめ!」
「あんな話をしたんですもの、こういうことをして欲しかったんですよね♡?」
「そ、だけ、ど!あぁ!?」
望んでおきながら素直になり切れていない祐介の乳首をぎゅっと摘まむと嬌声が迸り、大きく勃起した男根からどぷりと先走り液が吐き出された。
「あらあら、このままじゃあ乳首だけでお射精しちゃいそうですよぉ、旦那様♡?」
指の間でじんじんと脈打つ感触を楽しみながらじっと祐介の顔を覗き込む。
歯を食いしばり精液のお漏らしを堪え、快楽に顔を歪ませる夫を見ていると、恭子の体の中でずるりと加虐心が頭をもたげ始める。もっとこのオスを、最愛の夫を気持ちよくしてあげたくてしかたがなくなる。
「このまま乳首でイきたい…ですか?」
左手で変わらず乳首をねぶりながら、右手を熱く勃起した愛棒へと伸ばしていく。
うっすらと浮き出た肋骨を確かめるように優しく撫で、敏感で細かく痙攣する腹筋を通り過ぎ、先走り液でぐちゃぐちゃになった股間へとたどり着く。肉棒の根元には触れるが、竿や亀頭に触れずねっとりと撫でまわす。粘度の高い先走り液を掻きまわす度にぐちゃぐちゃと卑猥な水音が響き二人の熱を上げていく。
「それとも…」
顔を耳元へ寄せ、息たっぷりに囁いた。
「魔力をこめた私の手でおちんちんをしこしこされてイキたいですか♡?」
「はぁはぁっ…うぅ」
祐介は声にならない声をあげながら口をぱくぱくとしたかと思うと、蚊の鳴くような小さな声で懇願する。
「おちんちんを…さわって、恭子ぉ!!」
「分かりました、旦那様♡」
「あ、アァ…んぅっ!!」
指と手の平に魔力を込め、肉棒を握りしめた。
するとその瞬間、ぱんぱんに膨らんでいたペニスはまるで生き物のように手の中で痙攣し、びゅるりと一吹きザーメンを吐き出した。
「あら、握っただけなのに甘イキしちゃうなんて…♡」
鏡を見ずとも自身の口角がつり上がるのを理解できるほど、恭子の心の中で喜びが爆発する。
「これからたぁっぷり手コキしてあげますので、ザーメンどっぷり射精してくださいね♡」
じゅず、ぐちゅぐちゅ、ぐちゃじゅくぅ
恭子を虜にしてやまない精液を潤滑油にして、ペニスをねっとりとしごき上げる。
右手で血管が浮かび上がるほど固く勃起させた肉竿を握り、左手の掌でぱんぱんに膨らんだ亀頭をにゅるにゅると磨いた。大切な番の性器。火傷するほど熱く、心臓のように強く脈打つ肉棒は、恭子の魔力に犯され、あっという間に限界を迎える。
どびゅっるぅ♡びゅぶぅ、どぷ♡どぷぅ♡
奥歯を噛みしめ、くぐもって嬌声を漏らしながら射精する夫。
亀頭を刺激する左手の掌にべっとりと精液がこびりつく。PC筋を必死に収縮させ、一吹き一吹き全力でザーメンを吐き出すその様に堪らなく愛おしさを感じてしまう。先ほどまでの加虐的な原動ではなく、ただただ労わり射精を促すように右手は竿をしごき、左手で優しく雁首を撫で上げる。恭子のアシストを受け、ますますペニスは勢いを増して白濁液を吐き出していった。
「あはぁ♡」
下半身からむわりと香り立つ濃厚なオスの精臭、愛する男を絶頂させたという満足感と達成感が恭子の心を満たしていく。だが、一度火のついてしまった魔物娘の欲求はこんなものでは満たされるはずもなく。
「どうですかぁ旦那様、毒のような私の魔力に犯されイかされたご感想は♡?」
「ハァ…ハァ、す、すごかった…すごかったよ。」
恭子の蜷局の中で、射精の後の脱力に身を任せながら荒い息を吐く祐介は、まるで終わったかのような口ぶりで感想を口にする。
「ふふふ、旦那様♡」
「き、恭子?」
「もう終わったみたいにおっしゃいますが、まだまだ…」
射精後も固く勃起したペニスの先端を、愛撫している間中興奮しだらしなく愛液をこぼし続けたヴァギナへと導き
じゅぷぅ♡
「あぁ!?」
「これからですよぉ♡」
膣奥まで一気に飲み込んだ。
愛液に含まれる魔力がペニスを包み、絞り上げる膣の圧力に屈し、祐介がたまらず熱いザーメンを射精する。
胎内に広がる多幸感と精液の活力に恭子の体は一つぶるりと震えた。
「旦那様♡」
鼻がぶつかるほど顔を近づけ、目を覗きながらちろりと舌なめずりをする。
「旦那様の心行くまで、その身を私の魔力で刺激しますので…たぁっぷり愛し合いましょうねえ♡」
毒に犯された男と、毒で獲物を仕留めた魔物娘の性交は、まだ始まったばかりだ。
「はい?」
チャカチャカと軽快な音をたてて冬用の編み物を編んでいた手を止め、恭子がこちらを向きながら可愛らしく首を傾げた。凛とした大和美人が垣間見せる可憐さは何度見ても心に響く。
「旦那様が改まって私に聞きたいことだなんて、なんですか。」
「うーん、ちょっと変な質問だから怒らないでくれる?」
学生のころから長い間生活を共にしてきた最愛の妻にこんな馬鹿げた話をするべきかと言い淀む祐介の姿を可笑しそうに眺め、恭子は小さく笑みを零す。
「ふふ、旦那様の御知りになりたいことでしたら答えられる範囲で答えますのでどうぞおっしゃってみてください。むしろそう前置きされたらどんな質問をされるか楽しみですよ、私は。」
「あー…じゃあ聞くけど」
「はい。」
「恭子って例えば…牙とかに毒があったりする?」
「……え?」
さすがの恭子も予想しない内容だったのだろう、ぽかんとした表情で先ほどとは反対の方に首を傾げた。
「毒って、あの…毒ですか?」
「うん。」
そっと自身の口に手を当てながら、恭子はより疑問の色を濃くする。
「あの…旦那様はなんでそのような疑問をお持ちになったんですか?」
「ああ、実はね…」
きっかけは数日前に訪れた図書館での出来事に端を発している。
その日、仕事で必要な資料を集め終え、我が家に帰ろうとしたのだが、予報にない強めの雨が突然降り出し、勿論傘などない祐介は仕方なく雨が止むまで館内で時間を潰すことにした。
そして偶々目に入ったのが、魔物娘図鑑。
放浪の魔物学者が執筆したもので、祐介も一度ならず読んだことのあるものだった。良き隣人たちである魔物娘たちの特性などを学ぶ上でやはりこの本は有用であるらしく、多くの教育機関や図書館に置かれている。といっても恭子と結ばれて読んだことなどなかったし、読む必要性があったわけではない。白蛇である妻を持つ身。他の魔物娘の知識など興味はないし、知ったところで何になるわけでもないからだ。
だが、なんとなく、久しぶりに目を通したくなって手に取った。
ぱらぱらと頁をめくり真っ先にラミア属のあたりを開く。
数いるラミア属のその中に、探していた白蛇を紹介する頁があった。学者の調査に協力した白蛇の写真と共に、恭子と生活する中で実感を持って知っている白蛇の知識が羅列されている。
「まあ、恭子の方が断然美人だな。比べるまでもなく。」
漠然と内容を目で追いながら、ふと無意識に呟いてしまった。
これは魔物娘と結ばれた男なら誰だって思うことに違いない。例え魔王様相手であったとしても、誰よりも妻が一番美しく、大切な人なのだから。
ざあざあと降る雨の音を聞きながら、あっという間に白蛇のページを読み終える。
後に聞いた話では、近隣に住む稲荷が幼なじみの男性と結ばれたために降り出したというその雨は、まるで弱まる気配がなかった。
「さて、どうするか…。ん?」
図鑑を元あったところに戻そうかと思いながらなにげなく白蛇の一つ前のページを開くと、そこにはアポピスが紹介されていた。魔物娘の中でも希少な種類であり、肉眼で直接見たことは数えるほどしかない。惰性と微かに好奇心をくすぐられつらつらと読んでいると、ある描写に目が留まった。
『彼女たちは体内に強力かつ特殊な神経毒を持ち、噛みついて獲物の体内へと流し込む。』
ふと頭にある考えが浮かび、次の次、バジリスクの頁を開く。
『彼女たちは、その視線に晒されるだけで毒に蝕まれる、恐るべき蛇毒の魔眼を持つ。』
他にも血や言葉、爪、粘液、唾液、愛液…種類は違うが図鑑に掲載されたラミア種の多くが『毒』を有していることが気になった。
蛇は決まった種類しか毒を持っていない。
だが、ラミア属の魔物娘はどうなのだろうか。
親の遺伝や個体差によって魔物娘は同じ種族であっても変化が生じることがあると聞いたことがある。だからこそ、馬鹿なことだと自分でも思いながら気になってしまった。
特に記載のない白蛇が毒を持つことはあるのだろうか、と。
「なるほど…そういう理由で。」
「変な質問でごめんよ。でも、気になっちゃって。」
「いえ、実を言うと…」
少しだけ恥ずかしそうに恭子が微笑んだ。
「私も幼いころに自分に特殊な部分がないか母様に尋ねたことがあるんですよ。その中には勿論毒のこともありました。」
「え、そうなの!?」
「はい。私たち白蛇はその身に水の魔力を宿し、種族的に魔物娘の中でもそれなりの力を身につけることができるじゃないですか。」
確かに彼女たち白蛇は水神と祀られる龍に仕えるものが多いが、白蛇自身が水神と祀られるほど力を保持する者たちもいる。現に彼女の母は地域で多くの信仰を集める存在である。
「だからこそ、自分に何ができて何ができないのか、ちゃんと知っておきたいと思ったんです。」
「なるほど、ね。」
「それに、もし自分にそんな毒があるならば、未来の旦那様を虜にするために使わない手はありませんからね♡」
ほんの一瞬、笑みと共に淫靡な雰囲気が溢れるが、さっと貞淑な妻の顔に戻り恭子は続ける。
「そして残念ですが、私に他の魔物娘が持っているような毒はありません。毒は…ね。」
「ん?」
妻の何気ない言い方が、気になった。毒“は”?
「毒はってことはそれ以外になにかあるの?」
「これは、あくまでも私独自の解釈ですので冗談半分に聞いてもらえると助かるのですが…」
そう言って恭子は、手に持っていた編み物をそっと机に置くと、真っ直ぐに祐介の瞳を見据え口を開いた。
「毒に似た、ある意味では毒以上に厄介なものを私たち白蛇は持っていると考えているんです。」
「毒以上に厄介なもの…?」
「はい。それはですね。」
目を細めにやりと怪しく微笑む恭子がゆっくりと右手を前に翳したかと思うと、手のひらにぼうっと
「私たちが身に宿している、水の魔力です。」
まるで火のような魔力の塊が出現する。
「っ!?」
その瞬間、どくりと体が意思に反して強く脈動した。
まるで情事の最中のように身体が急激に火照り、体から力が抜けてしまう。自分の体を制御できずただただ変化していくこの感覚はまさに…
「旦那様は私だけを見て、私だけを愛してくださるのでこの水の魔力を体に注入したことはありません。ですが共に暮らし、毎夜肌を重ねインキュバスとなられた旦那様は、私の持つ水の魔力に知らず知らずのうちどっぷりと染まっているのです。」
音もなく妻がゆっくりと近づく度、身体の甘い疼きが強くなった。
「だからこうして私が水の魔力を強く放出すると、旦那様は堪らないですよね?私を抱きしめたくて、心地よさと快楽を欲して♡」
今まで経験がないほど全身から強く放たれる彼女の水の魔力を感じるだけで、全身が甘い心地よさにうち震えた。
「だから私は思うんですよ、旦那様。嫉妬に狂い自分だけを見てもらうように注ぎ込む私たちの水の魔力とは…」
囁く恭子の声が“毒”で霞む脳内をじんわりと熱くする。
「他の魔物娘が操る毒と変わりないんじゃないかって♡」
「ところで、旦那様?」
「な、なんだい…」
「毒の有無を聞いて、どうしたかった…いえ、どうされたかったんですか?」
それまでの甘く色っぽい表情に、じんわりと嗜虐の色が滲む。
「え、それは」
「もし、私が毒を持っていたとしたら…魔物娘図鑑に書かれている餌食になった哀れな男性たちのように、毒に犯されながらセックスをしたかったのではないですか?」
図星を突く恭子の言葉にびくりと体が震えてしまう。
「だからこそ、私に質問した…違いますか?」
ゆっくりと力なく頷くと、恭子はにたりと満足気に笑みを零す。
「なら、その旦那様の希望を…たっぷりと叶えて差し上げます♡」
「あぁ、くぅ…ぁあ!?」
蜷局に囚われた祐介の二の腕を優しく撫でられた。
ただ撫でられたというのに、神経を直に熱せられたように強い快楽が走り抜ける。先ほど見せていた炎とは比べられないほど弱火、ほんのりと指先が光っている程度の魔力だというのに、祐介の体は強く反応し暴れ狂ってしまう。震える口から嬌声が漏れ、絡みつく愛妻の下半身の中で陸に打ち上げられた魚のようにびくびくと体を震わせた。
妻の言う、毒よりも厄介な魔力の威力は予想以上だった。
愛撫ですらない、ただ肌を撫でられただけだというのに全身が震え、男性器を硬く勃起させてしまう。そして心だけではなく体で理解した。こうなってしまっては、魔物娘図鑑の中に表記されている、毒の餌食になった男達のように体を貪られるほかないのだと。
望んでいたことだとはいえ、魔物娘である自身の妻を軽率に刺激してしまったことをこれから体で実感させられるのだと。
「ふふ…」
淫らに表情を歪め、口の端から涎を垂らし悦楽に翻弄される夫の姿を満足そうに見ながら、恭子はより敏感な部分へと魔力を込めた手を伸ばす。ぼんやりとした光を宿した指先の標的は…
さわ、さわ…こりっこり♡
愛する夫の胸。
乳輪をゆっくりと、その部分を意識させるように撫で上げるとたまらず甘い声が漏れ出した。それでもしばらく焦らすように撫で様子を見つつ、突如痛みを感じさせない絶妙な加減で乳首を指先で指圧する。
「はっああ、あぅ…ああ!?」
「可愛らしい声♡」
夫の嬌声をうっとりと聞きながら、より胸への愛撫に魔力をこめる。
「あっひ、きょ、恭子、だ、あだ…だめ!」
「あんな話をしたんですもの、こういうことをして欲しかったんですよね♡?」
「そ、だけ、ど!あぁ!?」
望んでおきながら素直になり切れていない祐介の乳首をぎゅっと摘まむと嬌声が迸り、大きく勃起した男根からどぷりと先走り液が吐き出された。
「あらあら、このままじゃあ乳首だけでお射精しちゃいそうですよぉ、旦那様♡?」
指の間でじんじんと脈打つ感触を楽しみながらじっと祐介の顔を覗き込む。
歯を食いしばり精液のお漏らしを堪え、快楽に顔を歪ませる夫を見ていると、恭子の体の中でずるりと加虐心が頭をもたげ始める。もっとこのオスを、最愛の夫を気持ちよくしてあげたくてしかたがなくなる。
「このまま乳首でイきたい…ですか?」
左手で変わらず乳首をねぶりながら、右手を熱く勃起した愛棒へと伸ばしていく。
うっすらと浮き出た肋骨を確かめるように優しく撫で、敏感で細かく痙攣する腹筋を通り過ぎ、先走り液でぐちゃぐちゃになった股間へとたどり着く。肉棒の根元には触れるが、竿や亀頭に触れずねっとりと撫でまわす。粘度の高い先走り液を掻きまわす度にぐちゃぐちゃと卑猥な水音が響き二人の熱を上げていく。
「それとも…」
顔を耳元へ寄せ、息たっぷりに囁いた。
「魔力をこめた私の手でおちんちんをしこしこされてイキたいですか♡?」
「はぁはぁっ…うぅ」
祐介は声にならない声をあげながら口をぱくぱくとしたかと思うと、蚊の鳴くような小さな声で懇願する。
「おちんちんを…さわって、恭子ぉ!!」
「分かりました、旦那様♡」
「あ、アァ…んぅっ!!」
指と手の平に魔力を込め、肉棒を握りしめた。
するとその瞬間、ぱんぱんに膨らんでいたペニスはまるで生き物のように手の中で痙攣し、びゅるりと一吹きザーメンを吐き出した。
「あら、握っただけなのに甘イキしちゃうなんて…♡」
鏡を見ずとも自身の口角がつり上がるのを理解できるほど、恭子の心の中で喜びが爆発する。
「これからたぁっぷり手コキしてあげますので、ザーメンどっぷり射精してくださいね♡」
じゅず、ぐちゅぐちゅ、ぐちゃじゅくぅ
恭子を虜にしてやまない精液を潤滑油にして、ペニスをねっとりとしごき上げる。
右手で血管が浮かび上がるほど固く勃起させた肉竿を握り、左手の掌でぱんぱんに膨らんだ亀頭をにゅるにゅると磨いた。大切な番の性器。火傷するほど熱く、心臓のように強く脈打つ肉棒は、恭子の魔力に犯され、あっという間に限界を迎える。
どびゅっるぅ♡びゅぶぅ、どぷ♡どぷぅ♡
奥歯を噛みしめ、くぐもって嬌声を漏らしながら射精する夫。
亀頭を刺激する左手の掌にべっとりと精液がこびりつく。PC筋を必死に収縮させ、一吹き一吹き全力でザーメンを吐き出すその様に堪らなく愛おしさを感じてしまう。先ほどまでの加虐的な原動ではなく、ただただ労わり射精を促すように右手は竿をしごき、左手で優しく雁首を撫で上げる。恭子のアシストを受け、ますますペニスは勢いを増して白濁液を吐き出していった。
「あはぁ♡」
下半身からむわりと香り立つ濃厚なオスの精臭、愛する男を絶頂させたという満足感と達成感が恭子の心を満たしていく。だが、一度火のついてしまった魔物娘の欲求はこんなものでは満たされるはずもなく。
「どうですかぁ旦那様、毒のような私の魔力に犯されイかされたご感想は♡?」
「ハァ…ハァ、す、すごかった…すごかったよ。」
恭子の蜷局の中で、射精の後の脱力に身を任せながら荒い息を吐く祐介は、まるで終わったかのような口ぶりで感想を口にする。
「ふふふ、旦那様♡」
「き、恭子?」
「もう終わったみたいにおっしゃいますが、まだまだ…」
射精後も固く勃起したペニスの先端を、愛撫している間中興奮しだらしなく愛液をこぼし続けたヴァギナへと導き
じゅぷぅ♡
「あぁ!?」
「これからですよぉ♡」
膣奥まで一気に飲み込んだ。
愛液に含まれる魔力がペニスを包み、絞り上げる膣の圧力に屈し、祐介がたまらず熱いザーメンを射精する。
胎内に広がる多幸感と精液の活力に恭子の体は一つぶるりと震えた。
「旦那様♡」
鼻がぶつかるほど顔を近づけ、目を覗きながらちろりと舌なめずりをする。
「旦那様の心行くまで、その身を私の魔力で刺激しますので…たぁっぷり愛し合いましょうねえ♡」
毒に犯された男と、毒で獲物を仕留めた魔物娘の性交は、まだ始まったばかりだ。
20/11/01 09:00更新 / 松崎 ノス
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