後篇
想いを伝えあった茜と洋輔はめでたくその場で結ばれ、他人の目など気にすることなく愛ある性行に精を出し……てはいなかった。
二人は現在、茜が根城にしているという場所へ向かっている。
てっきりその場で息つく暇もなく犯されてしまうと思っていた洋輔は拍子抜けしてしまったのだが、「確かに洋輔を犯して他人にその姿を見せつけるってのは魅力的だが、童貞のお前が初めてセックスをして、悶え震える姿を見ていいのは、ワタシだけだ。妻となるワタシだけが、その特権を持っているのさ。」と真顔で言われ、何も言えず耳まで真っ赤に赤面してしまった。
そんな気障なセリフを平気な顔で言い放つ茜は、移動しながら洋輔の唇にむしゃぶりつく。
「洋輔っ…ん、ちゅば、よう、すけ…むちゅ、んちゅ…」
「茜さん、激しい…ん、ぷ、ちゅぅ…落ち着いて、んちゅっ」
「それは…むちゅ、無理な…くちゅくちゅ、話だ。くくく、ようやく夫を手に入れたというのに落ち着いていられる魔物娘がいるかよ…んちゅくちゅ」
「ん、んむっ〜…んん!?」
もはやなんの遠慮もいらない。
そういわんばかりに茜は洋輔にせまり、キスをしてくる。一度火のついてしまった、体格でも性欲でも優るウシオニを止める術はなく、ひたすら彼女の行為を受け入れるしかない。茜は手始めに頬や首筋、耳など敏感な個所にねっとりと口づけを施した後、待たせたといわんばかりに洋輔の唇を味わっていく。唇を吸われ、熱い舌を絡め合う甘いキスも堪らなく気持ちいいが、敏感な場所に柔らかい彼女の唇が触れ、舌で舐められ、鼻から漏れる鼻息があたるのはなんともいえない快感を伴っていた。先ほどまでと違い、彼女の行為や愛を受け入れた今の洋輔にとってそれらの刺激は全てなんの抵抗もなく骨の髄まで浸み込んでいく。彼女から与えられる愉悦はまるで毒のように確実に心を蝕んでいき、より一層洋輔を魅了させていった。
「あ、茜さん…んちゅ、まってっ…むちゅ!?」
しかし、それでも未だに洋輔は無駄な抵抗をしている。
覆いかぶさるようにしてキスをしてくる茜の背中や蜘蛛の足を力の入らない手で弱弱しくぺちぺちと叩く様は、いかにも情けなく降伏する滑稽な姿なのだろうと思う。それでも抵抗せずにはいられない、理由があった。
「っちゅぷ、ぷはっ…さっきから何だ、そんなにワタシとキスをするのが嫌なのか?」
「んぷぅ…キスをするのは……嫌じゃないんだけど」
「ならなんの問題もない、続きをしようじゃ…」
「だ、だからキスはいいんだけど」
そう、キス自体はなんの問題もないのだが……
「僕を、下してくれないかな!?」
洋輔は現在、茜に横抱き…所謂“お姫様抱っこ”をされている。
茜は背中や足に回した太く強靭な二本の腕と、前方に生える他の足に比べるとやや短い二本の蜘蛛の足を使って器用に洋輔の体を支えつつ、少しの身動きもできないほど完全に洋輔の自由を奪っていた。漫画や映画などの映像作品で体格のいい男性が人間もしくは魔物娘の女性をそうやって抱きかかえているのを見たことはあるが、実際にそれをする側ではなくされる立場になって思う。これは想像以上に恥ずかしい。女性ならば男性の逞しさにうっとりとすればいいのかもしれないが、立場が逆転してしまった洋輔には彼女とのキスに集中できないほどの気恥ずかしさが募っていた。別に洋輔はアマゾネスが憤慨するような男女に対する差絶意識を持っているわけではないが、それでもそれまで生活してきた中で自然に形成した価値観に照らせば、どうしてもこの行為は男女が逆転しているとしか思えない。そんな既成概念が、洋輔をちくちくと苛んでいた。
「いやなこった。」
だが茜は解放してくれる気はないらしい。
少しだけ何故洋輔が恥ずかしがっているのか疑問に思うような素振りを見せたが、すぐにそれを意地悪い嗜虐的な微笑みに変えて否定の言葉を口にする。
「ワタシは…夫を手に入れたらずっとこうしたかったんだ。自分の大切なオスをこの腕の中に収めて、一心不乱にキスを堪能する。それはどれほど甘美で最高な瞬間なんだろうとずっと夢見てきたのさ。」
情欲をメラメラとその瞳に燃やしながら茜は熱く語る。
「むしろ何故お前はそんなに恥ずかしがるんだ?」
「へ?」
「ワタシは自分にできる、精いっぱいの愛をお前にぶつけ…お前はその愛を受け止める。それが他人と、世間と違うからと言ってそのことを何故恥じなければいけないんだと聞いてるんだよ。」
「………。」
「まあお前が何をいってもワタシの根城につくまでやめないから♪あきらめろ、洋輔…ちゅっちゅ♡」
「んぐっ、むぅんっ!?」
話はこれで終わり、煩い口は塞げといわんばかりに茜がキスを再開する。
彼女の言葉を聞き、何故今までそうまでして抵抗してきたのかわからなくなった。彼女はまっすぐに自分への愛を向けてくれているのに、自分はまたその気持ちに背いてしまっていると思うと先ほどまでとは違う羞恥心がこみ上げてきた。そうして脱力してしまった洋輔の口内に我儘顔で茜の舌が侵入してくる。彼女自身が興奮しているのか先ほどよりも熱さが増し、たっぷりと唾液を纏った肉厚の舌は縦横無尽に蠢く。頬肉や歯肉は自身の甘い唾液を浸み込ませるように優しくねっとりと舐めあげ、反対に舌にはまるで獲物を締め上げる蛇のように力強く絡みついてくる。そうして根元までしっかりとからめとった洋輔の舌を、口内に残る空気ごと吸い上げるような強い力ですすり上げる。口を塞がれ口内に残る空気さえも強烈な吸引で吸い取られ軽い酸欠状態に陥った洋輔の体は、茜の手の中で一段と情けなく脱力していく。しかしそれは先ほどまでの脱力とは違い彼女の意思を完全に受け入れるという、言葉を発することができない洋輔が茜に自分の意思を示した行動に違いなかった。
「さて、旦那様。ワタシたちの愛の園へ…ゆ〜っくりと行くとしようか♡」
茜はその様を、喜色で顔を歪ませつつ眺める。
そして甘く蕩けた声で囁きながら再び激しく唇を押し付け、羞恥心で否応なしに火をつけられた洋輔の心を、身体を、茜は底知れぬ悦楽で翻弄し心の底から楽しむように貪ったのだった。
………………………………………………………………………………………………
絶えず動いていた彼女の足がようやく止まり、身体を前方に向けられる。
「さあ、ここがワタシの寝床さ〜。」
「はぁ…はぁ、こ、こが…」
「ま、ちとぼろいが雨風はちゃんと防げるから安心してくれ。今日からここが、お前の新しい家だ♪」
彼女に捕えられた場所から、かなり山奥へ分け入っていた。
体感時間だから正確なことは分からないがおおよそ一時間、お姫様抱っこをされ息を整える暇もなくねっとりと濃厚なキスをされ続けた洋輔が荒い息を吐きながら前を見ると、目の前には堂のような建物が建てられていた。彼女が言うにはこの建物は近在の山々で修行を行う修験者たちが宿泊するために作ったものらしく、随分長い間使われていなかったものを彼女が少しずつ修繕しながら住んでいるのだそうだ。そう言われて改めて建物を見てみると、屋根や入り口などところどころに真新しい木材や瓦が使われている。大工仕事に詳しいわけではない完全に素人の感覚だが、その出来栄えは見事だと思った。そのことをたどたどしい口調ではあるが伝えると「いつか夫を迎えるってのに、あんまりにもみすぼらしい家じゃ申し訳ないからな。」と言ってくすぐったそうに彼女は笑った。
「さ、少しの時間も惜しい…」
だが洋輔がその笑みに見惚れる間もなくすぐに好色なそれに切り替え、茜は洋輔を抱えたまま器用に足で扉を開けて中に入っていく。室内は板張りになっており、炊事場らしき場所に置かれた鍋や皿、隅に畳まれた布団、壁に立てかけられた卓袱台などを見ると、長年放置されたという印象だけだったこの建物から急に彼女がここで暮らしているという生活臭を感じることができた。すると初めて身内以外の女性が生活をしている部屋に入ったことを無意識のうちに自覚してしまい、室内にいるだけで途端に鼓動が速くなり緊張で体が硬くなってしまう。一方の茜は機敏で少しの無駄もなく足や糸を使って床に布団をあっという間に敷き、洋輔を寝かせその上に跨っていった。
「早速、しようじゃあないか♪」
「え!?」
「なにを驚いているんだ、洋輔。ワタシの住処に着いたらやることは一つしかないだろ…セックスだよ。ここにお前の一物をぶち込むのさあ♡」
茜は上体を下げつつ、人間と蜘蛛の境目に手を当て美しい陰唇を開いていく。
そこからは決壊したかのように濃い愛液がどぽどぽと溢れ出し、彼女の体臭を濃縮したような甘い香りがあたりに満ちていく。流れ出した愛液がいやらしい淫水の流れを幾筋も作って下半身に垂れていく様や、ひくひくとわずかに蠢いている彼女の陰唇や生殖器の圧倒的な淫猥さに洋輔は釘づけになってしまう。散々キスによってじらされてきた体は彼女を求め昂ぶり、頭はこれからするであろう彼女とのセックスでいっぱいになり、男根はこれ以上ないほど海綿体が充血し痛みを感じるほど固く勃起してしまった。茜は自分の体を荒い息を吐きながら凝視し、びくびくと苦しげに脈動するペニスを満足げに見下ろしながら意地悪く質問してくる。
「それともそんなに驚くってことは…ワタシとセックスしたくないのか〜?」
「し、したい…」
「なんだって〜…今何か言ったかあ?」
「うぅ…」
「大きな声で言わないなら、このまま何もしなくたっていいんだぞ…」
「…茜さんと、茜さんとセックスがしたいです!!!」
自分でも驚くような大きな声で、洋輔は懇願する。
思い通りの台詞を言わせた茜は、洋輔の体に傷をつけないよう気を付けつつペニスの根元を優しくさすりながら一段と笑みを濃くする。
「ふふ、ふふふ♪そうまで言われちゃセックスするしかないねえ。ただし…」
「え、なにこれ…糸が!?」
彼女が意地悪い笑みを浮かべた瞬間、股間に強い違和感を覚えた。
洋輔が慌てて自身の下半身に目をやると、いつのまにかペニスの根元に茜が吐き出したであろう蜘蛛の糸がきつく巻き付けられていた。この糸の強靭さは先ほどの一件でよく知っている。それをふまえた上で、洋輔は瞬時に彼女の意図を理解した。
「そうだ。どんなに洋輔が泣き叫んでもワタシが許可するまで、一滴も精液を出させはしないから覚悟しておけよぉ♡」
つまりこの糸がある限り洋輔は射精のタイミングを茜に握られてしまったということだ。すぐに恐怖心が湧き上がり、糸を外そうと手を伸ばそうとするがそれを茜が見逃すはずもなく、呆気なく腕をつかまれ悪魔のような笑みを向けられる。
「おおっと。せっかく結んだんだから…そう簡単に外されるわけにはいかないよ。」
「そんな…な、なんでこんなことを!?」
「なんでってそりゃ…」
すると茜は少しだけ顔色を変える。
「ワタシの話を聞かずに、あんだけ必死になって逃げてくれたお前にお仕置きをするために決まっているじゃないか♪」
「え…?」
「いくら嫌われ者のウシオニさんとはいえ、一目惚れした男に血相を変えて本気で逃げられれば…それはそれは悲しいものさ。涙がちょちょぎれるかと思ったぜ。」
「……ぅ、だってそれは」
「だからそんな辛い記憶を忘れるくらい、射精できないもどかしさに震えるお前の姿を、快楽に歪む顔をた〜…っぷりと見させてもらおうと思ってな♡」
彼女の話も聞かず、一目散に逃げようとした自分の行動を思い心が痛んだ。
茜はわざとらしくおどけたような口調と行動でそこまで気にしていない風に言っていたが、本当はこちらが想像する以上に傷ついたのかもしれない。だからこそ茜にちゃんと謝らなければいけないし、できることがあればしなければいけないと強く思ったのだが……その気持ちを吹き飛ばしてしまうほど彼女の目に浮かぶ嗜虐の色の強さを見て、これからどれほど嬲られてしまうのか想像するだけで背中がうすら寒くなってしまった。
「さあ、射精を封じた理由は分かっただろう。それじゃあお互いに準備はいらないんだから早速本番といこうか〜」
ぱっくりと開いた陰唇にペニスの先端を合わせつつ、茜が腰を下ろしていった。
「ちょ、ちょっとまっ…」
ずちゅ、ぐちゅぅ…
「待たねえよ♪」
茜が勢いよく腰を下ろしていく。
いきり立った剛直は灼熱のように熱く火照る膣に飲み込まれていき、自分の大きく膨らんだ亀頭のカサは抵抗どころか歓迎するような襞の動きに導かれ、ずぶずぶと誰も入ったことのない蜜壺を押し広げていった。そして亀頭の先が彼女の純潔を守り通してきた薄い膜に到達する。
「ふふ、くくく…これでワタシは正真正銘…」
その感触を感じた茜は、低い声で笑いながらなんのためらいもなく体重をかけて一気に自身の処女膜を破り捨てる。
ズニュル……ぶちぃ…ぃ…ずんっ!!!
「お前の女になるってわけだなあ、洋輔♡!!」
「ああああああっ!?」
茜の処女膜はまるでそれが必然のように簡単に貫通した。
破瓜の鮮血が二人の結合部を赤く染めていくそのことを心配する暇もなく、茜はそのまま勢いよく膣の最奥までペニスを飲み込み、一斉に襞を絡みつかせていく。その感触は、壮絶だった。女になったばかりだというのに子宮口はひくひくと蠢きながら亀頭の先にちゅぱちゅぱと吸い付き、粘度の高い愛液をたっぷりと纏った筋肉質でゴムのような、弾力と強い力で締め付けてくる襞の一つ一つは一斉に、けれど別々に動いてペニスを絞り上げる。それまで勿論女性経験などないから比較要素を持ち合わせてはいないが、この感触が他と比べ物にならないほどすさまじいことを直感で洋輔は理解し、ただただ情けない喘ぎ声を口から吐き出すしかなかった。
「(射精、射精したい!!出したい!!全部出したい!!!)」
その気持ちよさに、洋輔の射精欲は限界まで膨らんでいく。
海綿体により血液が集まり股間はどくどくと熱く鼓動を刻み、精巣はいつでも精液を吐き出せるようせり上がり、縮み上がってその瞬間を待っている。
だが当然、精液はその一滴すらも吐き出すことはできない。
「んん〜?亀頭がびくびく震えてるぞ…射精したいんだな♡」
「したい、出したい…だから、お願いだから糸を外して!!!」
「だめだね。これからお前のペニスをたっぷりと私が味わうんだから、洋輔はワタシの下でじっと我慢してな♪」
「ぅっそんな!!!」
「ほら、いくぞ♡」
極上の肉穴が縋り付くのをむりやり引きはがすように、茜が腰を振り始める。
左右に、縦に、円を描くようにとその動きは実に多彩で激しい。ただでさえ未知数の感覚に翻弄されている洋輔は、それらの動きから流し込まれる悦楽に、大きく口を開けて声にならない悲鳴を上げながら耐え忍ぶことしかできなかった。涙を一杯にためた目を見開き、うまく動かない体を何とか動かして彼女の足や腰をぺちぺちと叩くが、茜は一切腰を振ることを止めようとはしなかった。それどころかその動きさえも押しつぶすような強い腰使いでガシガシとお互いの体をぶつけていく。
「あぁ、これが…セックス。これが、セックス、か。洋輔の、ペニスがワタシの奥まで入って、気持ちいい♡」
茜は頬を真っ赤に染めながら自慰などでは決して得られない愉悦に身を震わせ、恍惚とした表情を浮かべ夢中になって洋輔を貪っていく。
「洋輔〜、お前はどうだ…初めていれたメスのまんこの感触はどうだい?」
「あひっ、もう、もぉ…ぎひぃ!?はぁぁぁぁっ…あ、あぁ!!!」
「あはは、声にもならないってか…嬉しいねえ♡むちゅぅ…ちゅぱっ」
「んぅ…うむぅ!!」
ダメ押しのように唇を吸われ、半ば呆けてしまっていた洋輔はなんとか意識を取り戻し、口を開いた。
「ぷはぁ……茜さん、あ、かねさん!!し、っしゃせいさせて!!!」
挿入した男根が溶けてしまうような、熱く滾る茜の膣に射精したくて洋輔は懇願する。
既に何度も空射精を繰り返してぶるぶると震える亀頭は奥まで飲み込まれるたびにざらざらとした突起のついた子宮口付近の膣肉がずりずりとこすりあげ、精子の代わりに先走り液を垂れ流す鈴口はぶちゅりと濃厚な接吻を子宮口に施され、経験したことがないほど広がる亀頭のカサやびきびきと血管の浮き出る幹は愛液を刷り込むように膣の襞で磨き上げられている。その強烈な刺激を受けただただ射精したいという一つの欲求に囚われた体は洋輔の意思から徐々に離れていき横隔膜が勝手に痙攣し、手足の指先が意思に反してびくびくと動いてしまう。まるで陸地に打ち上げられた魚のようだった。
「う〜ん、どう、しよう、かねっ!!」
「おねがい、だから、もう、あんなこと二度と、しないから!!しゃせい、させてっ!!!」
「ん、ふふふ〜♡」
外聞を気にする余裕もなくただひたすらに許しを請う洋輔姿を見て、一言ごとに大きく腰を振り下ろしていた彼女が大きくぶるりと体を震わせる。その目は爛々と光り、サディスティックな輝きで満ち満ちていた。
「情けない顔で、必死に射精を懇願するお前は…なんて可愛いんだ。もっと我慢させて嬲ってやりたくなっちまうよ…♡」
「…!!!」
茜の言葉を聞き、洋輔は言葉も出せず無言でぶんぶんと顔を横に振る。
「だけど、それ以上にワタシも昂ぶってしまってしょうがない…気を抜けば軽く達してしまいそうだ…」
膣内がさらに強くうねり始めたかと思うと、茜は洋輔の耳元に顔をよせ小さな、しかし心が震えるような甘く蕩けた声で囁いた。
「いいぞ、溜めに貯めたドロドロのザーメンをたぁっぷりとワタシの胎内に吐き出しちまえ♡」
「!!」
そして次の瞬間、根元に巻き付いていた蜘蛛の糸が外され、まるでマグマのようにペニスの根元で堰き止められていた白濁液が少しの間をあけることなく一気に爆発した。
びゅぐ…ぶぴゅ…ドクッ…ドクン…
「うあぁ…うぐぅあぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」
何度も空射精を繰り返されたペニスが、まるで歓喜の声を上げるように一斉に熱く滾った精液を吐き出していく。固形ではないかと勘違いしてしまうほどの粘度の高い白濁液が広がりきった射精管をさらに拡張していくかのようにびゅるびゅると押し広げ、鈴口から大量にはじけ飛んでいった。
ビュプ…びゅっビュ、どぷどぷ
「っあ、うく、ひくぅ…おっおっ…あ、ぁ…」
しかも射精は今までにないほど長く続く。
今まで一回の射精に出していた何倍もの精液が、まるで蛇口が壊れた水道のように洋輔の意思に反して次から次へと茜の体内へ吐き出されていった。その目もくらむような、頭の中が全て漂白されてしまったような強烈なエクスタシーで足腰はがくがくと震え、喉からは言葉にならない絶叫が響き、全ての理性や知性を捨て身体の全神経がこの瞬間は射精だけのことを考えているのではないかと思うほど、快楽に踊り狂った。
「きてる…なか、わたし、の♡なかにいっぱい♡わたしも、いく♡いっちゃうぅぅぅ♡」
その大量の精液を受け止めた茜も、恍惚の笑みを浮かべ無心で快楽に集中する。
あれだけ多くの、経験がないほど粘度の高い精液を射精したというのに、彼女の子宮はそれを一滴も逃すことなくちゅうちゅうと吸い取っていく。結合する膣からは透明な彼女の愛液だけが吐き出されるばかりで、一滴の白濁液もだれてはこない。その様子を見せつけられ、彼女の貪欲さや性欲の深さを改めて痛感する。だがその一方で顎を少し上げ、目を細めながら子宮があるあたりの下腹部を大きな手で愛おしそうになでつつ、数度びくびくと身を震わせている彼女もきっと絶頂に達したのだろう。その姿は許容範囲外の刺激を処理しきれず視界が霞む洋輔の目になによりも美しく、淫靡な光景として映った。それでもそこは底抜けに好色なウシオニ。経験したことのない初めての甘い刺激を楽しみつつすぐにその瞳に再び光を宿してゆっくりと顔を近づけキスをしてくる。
「んふふ〜…洋輔♡むちゅ、くちゅ…」
「あ、かねさん…んむぅ、んちゅ…」
先ほどまでと違い、甘えるような声で茜が求めてきた。
洋輔は震える口をなんとか開けて彼女の舌を受け入れ、絡めていく。そのキスは今までのように濃厚だったが、激しく舌を動かすことはなくただひたすらにお互いの舌を重ね合わせ、感覚や幸福感を共有するようなどこまでも甘いものだった。
「…ぷはぁ、洋輔。とっても、気持ちよかったぞ♡こんなにたっぷり出して、一発でワタシを孕ませるつもりか〜?」
「僕も、とても…よかった。だからあんなに、出ちゃった…」
ただそれにしても精液の量が異常だと思うと口にすると、彼女はその原因は破瓜の血、もっと正確にいえばウシオニの血にあると説明してくれた。彼女が言うにはウシオニの血液にはとてつもなく大量の魔力が混ざっていて、処女膜を破った際に出血した血液を敏感な粘膜である性器で触れたことによって瞬間的に洋輔の体に膨大な茜の魔力が吸収され、インキュバスのような精力を発揮したのではないかというのだ。
「そっか、自分の体が壊れちゃったかと…思ったよ。」
「くく、ウシオニの夫になるんだ。そうそう簡単に壊れてもらっちゃ困る。」
「…。」
「どうした、急に黙りこくって」
「ねえ、茜さん。僕は至らない夫、かもしれないけど、改めてこれから…よろしくね。」
「何を当たり前のことを言ってるんだよ。ワタシの夫はお前以外に考えられないんだ。これからどんな時も、洋輔を愛してやるから覚悟しておけよ♡」
恥じらうような、けれどどこか誇らしげに彼女は微笑む。
それがたまらなく可憐で、少しばかり落ち着いてきた胸の鼓動が急激に高まってしまう。セックスをしておいて今更だとはおもうが、なんだかその微笑みを見て初めて彼女と心が通じ合ったような、素の茜を見ることができたような気がして洋輔の心には喜びや嬉しさがじんわりと広がっていった。
だがその気持ちを告げようと口を開く前に、茜が行動を再開する。
ぬちゃぁ…ぐぷぅ、ぐちゅぎゅちゅ、びちゅん
「それじゃあお互いに体が温まったところでもっともっと気持ちよくなるために、続けてセックスをするとしようか♪」
「へ!?」
再び腰を激しく腰を振り乱し、あれだけ射精しても固く勃起するペニスを貪り始めた。
「今度は射精を封じてないんだし、楽しむ余裕があるんじゃあないか?」
「そんなわけ、うぁ…あぃ!!」
「うふふ〜、次もたっぷりと精液をだして可愛い妻を楽しませてくれよ♪」
「愛してるぞ、洋輔♡」
こうして昼夜もなく続く長い長い二人の初夜が幕を開けたのだった。
………………………………………………………………………………………………
茜と結ばれて、おおよそひと月が経とうとしていた。
あのあと人づてではあるが家族にも事情を説明することができ、なんの心配もなく彼女と一緒に暮らしている。彼女との生活は、幸せでいっぱいだ。
「ほいっと、五匹目〜。」
「え、本当!?」
「ああ、美味そうな岩魚だ♪」
そんな洋輔は、茜と共に釣りをしていた。
昔は趣味でしていたが、現在は食糧調達もかねて釣りを行っている。あの時河原に放置してしまった釣り道具は、この山に住んでいるという茜の友人が拾って保管していてくれたらしく、わざわざ届けてくれた。一度は失うことも覚悟していたので、それはとても嬉しいことだった。その時の謝罪の意味も込めて今は丁寧に手入れをして、大事に使っている。
「しかしワタシとセックスをするときは竿上手だってのに、釣りの時は竿を使うのが下手だなあ〜洋輔。おっとそうこう言ってる合間に六匹めっと。」
「それとこれとは全然違うよ。第一茜さんのは釣りじゃないじゃないか!!」
丸々と太った岩魚を自慢げに見せつける茜が無邪気な笑顔を浮かべる。
彼女は釣りというよりも網で漁をしているというのが正解だった。自分で作り出した頑丈な蜘蛛の糸を寄り合わせて川に流し、追い込んだ魚を捕獲する。まさに彼女だからできる方法だ。しかしそれをただの人間である洋輔がする釣りと同じにされては困る。
「ふふん、ワタシが床だけじゃなく釣りもうまいからってそう妬くなよ♪」
「だからそれは」
「それにお前という最高の獲物を釣り上げたワタシにしてみれば、魚なんて比べ物にならないほど釣るのは楽なものなのさ♡」
「う、またそうやって…恥ずかしいことを臆面もなく」
「くく、また惚れ直したか?」
「………うん。」
「そうかそうか。それじゃあその惚れ直したワタシの、小腹を満たすために協力してくれ♪」
「え、ここじゃ誰かに見られちゃうよ!!」
「いいじゃあないか、ワタシたちが愛し合っている様を、たっぷりと見せつけようぜぇ〜♡」
こうして今日も洋輔は鬼と戯れ、鬼を愛す。
心優しきウシオニと、彼女に魅了された男は誰よりも幸せにこの山で生きていく。
二人の嬌声があたり一面に響き渡り、山に住む者たちはまた始まったかと苦笑いしたのだった。
二人は現在、茜が根城にしているという場所へ向かっている。
てっきりその場で息つく暇もなく犯されてしまうと思っていた洋輔は拍子抜けしてしまったのだが、「確かに洋輔を犯して他人にその姿を見せつけるってのは魅力的だが、童貞のお前が初めてセックスをして、悶え震える姿を見ていいのは、ワタシだけだ。妻となるワタシだけが、その特権を持っているのさ。」と真顔で言われ、何も言えず耳まで真っ赤に赤面してしまった。
そんな気障なセリフを平気な顔で言い放つ茜は、移動しながら洋輔の唇にむしゃぶりつく。
「洋輔っ…ん、ちゅば、よう、すけ…むちゅ、んちゅ…」
「茜さん、激しい…ん、ぷ、ちゅぅ…落ち着いて、んちゅっ」
「それは…むちゅ、無理な…くちゅくちゅ、話だ。くくく、ようやく夫を手に入れたというのに落ち着いていられる魔物娘がいるかよ…んちゅくちゅ」
「ん、んむっ〜…んん!?」
もはやなんの遠慮もいらない。
そういわんばかりに茜は洋輔にせまり、キスをしてくる。一度火のついてしまった、体格でも性欲でも優るウシオニを止める術はなく、ひたすら彼女の行為を受け入れるしかない。茜は手始めに頬や首筋、耳など敏感な個所にねっとりと口づけを施した後、待たせたといわんばかりに洋輔の唇を味わっていく。唇を吸われ、熱い舌を絡め合う甘いキスも堪らなく気持ちいいが、敏感な場所に柔らかい彼女の唇が触れ、舌で舐められ、鼻から漏れる鼻息があたるのはなんともいえない快感を伴っていた。先ほどまでと違い、彼女の行為や愛を受け入れた今の洋輔にとってそれらの刺激は全てなんの抵抗もなく骨の髄まで浸み込んでいく。彼女から与えられる愉悦はまるで毒のように確実に心を蝕んでいき、より一層洋輔を魅了させていった。
「あ、茜さん…んちゅ、まってっ…むちゅ!?」
しかし、それでも未だに洋輔は無駄な抵抗をしている。
覆いかぶさるようにしてキスをしてくる茜の背中や蜘蛛の足を力の入らない手で弱弱しくぺちぺちと叩く様は、いかにも情けなく降伏する滑稽な姿なのだろうと思う。それでも抵抗せずにはいられない、理由があった。
「っちゅぷ、ぷはっ…さっきから何だ、そんなにワタシとキスをするのが嫌なのか?」
「んぷぅ…キスをするのは……嫌じゃないんだけど」
「ならなんの問題もない、続きをしようじゃ…」
「だ、だからキスはいいんだけど」
そう、キス自体はなんの問題もないのだが……
「僕を、下してくれないかな!?」
洋輔は現在、茜に横抱き…所謂“お姫様抱っこ”をされている。
茜は背中や足に回した太く強靭な二本の腕と、前方に生える他の足に比べるとやや短い二本の蜘蛛の足を使って器用に洋輔の体を支えつつ、少しの身動きもできないほど完全に洋輔の自由を奪っていた。漫画や映画などの映像作品で体格のいい男性が人間もしくは魔物娘の女性をそうやって抱きかかえているのを見たことはあるが、実際にそれをする側ではなくされる立場になって思う。これは想像以上に恥ずかしい。女性ならば男性の逞しさにうっとりとすればいいのかもしれないが、立場が逆転してしまった洋輔には彼女とのキスに集中できないほどの気恥ずかしさが募っていた。別に洋輔はアマゾネスが憤慨するような男女に対する差絶意識を持っているわけではないが、それでもそれまで生活してきた中で自然に形成した価値観に照らせば、どうしてもこの行為は男女が逆転しているとしか思えない。そんな既成概念が、洋輔をちくちくと苛んでいた。
「いやなこった。」
だが茜は解放してくれる気はないらしい。
少しだけ何故洋輔が恥ずかしがっているのか疑問に思うような素振りを見せたが、すぐにそれを意地悪い嗜虐的な微笑みに変えて否定の言葉を口にする。
「ワタシは…夫を手に入れたらずっとこうしたかったんだ。自分の大切なオスをこの腕の中に収めて、一心不乱にキスを堪能する。それはどれほど甘美で最高な瞬間なんだろうとずっと夢見てきたのさ。」
情欲をメラメラとその瞳に燃やしながら茜は熱く語る。
「むしろ何故お前はそんなに恥ずかしがるんだ?」
「へ?」
「ワタシは自分にできる、精いっぱいの愛をお前にぶつけ…お前はその愛を受け止める。それが他人と、世間と違うからと言ってそのことを何故恥じなければいけないんだと聞いてるんだよ。」
「………。」
「まあお前が何をいってもワタシの根城につくまでやめないから♪あきらめろ、洋輔…ちゅっちゅ♡」
「んぐっ、むぅんっ!?」
話はこれで終わり、煩い口は塞げといわんばかりに茜がキスを再開する。
彼女の言葉を聞き、何故今までそうまでして抵抗してきたのかわからなくなった。彼女はまっすぐに自分への愛を向けてくれているのに、自分はまたその気持ちに背いてしまっていると思うと先ほどまでとは違う羞恥心がこみ上げてきた。そうして脱力してしまった洋輔の口内に我儘顔で茜の舌が侵入してくる。彼女自身が興奮しているのか先ほどよりも熱さが増し、たっぷりと唾液を纏った肉厚の舌は縦横無尽に蠢く。頬肉や歯肉は自身の甘い唾液を浸み込ませるように優しくねっとりと舐めあげ、反対に舌にはまるで獲物を締め上げる蛇のように力強く絡みついてくる。そうして根元までしっかりとからめとった洋輔の舌を、口内に残る空気ごと吸い上げるような強い力ですすり上げる。口を塞がれ口内に残る空気さえも強烈な吸引で吸い取られ軽い酸欠状態に陥った洋輔の体は、茜の手の中で一段と情けなく脱力していく。しかしそれは先ほどまでの脱力とは違い彼女の意思を完全に受け入れるという、言葉を発することができない洋輔が茜に自分の意思を示した行動に違いなかった。
「さて、旦那様。ワタシたちの愛の園へ…ゆ〜っくりと行くとしようか♡」
茜はその様を、喜色で顔を歪ませつつ眺める。
そして甘く蕩けた声で囁きながら再び激しく唇を押し付け、羞恥心で否応なしに火をつけられた洋輔の心を、身体を、茜は底知れぬ悦楽で翻弄し心の底から楽しむように貪ったのだった。
………………………………………………………………………………………………
絶えず動いていた彼女の足がようやく止まり、身体を前方に向けられる。
「さあ、ここがワタシの寝床さ〜。」
「はぁ…はぁ、こ、こが…」
「ま、ちとぼろいが雨風はちゃんと防げるから安心してくれ。今日からここが、お前の新しい家だ♪」
彼女に捕えられた場所から、かなり山奥へ分け入っていた。
体感時間だから正確なことは分からないがおおよそ一時間、お姫様抱っこをされ息を整える暇もなくねっとりと濃厚なキスをされ続けた洋輔が荒い息を吐きながら前を見ると、目の前には堂のような建物が建てられていた。彼女が言うにはこの建物は近在の山々で修行を行う修験者たちが宿泊するために作ったものらしく、随分長い間使われていなかったものを彼女が少しずつ修繕しながら住んでいるのだそうだ。そう言われて改めて建物を見てみると、屋根や入り口などところどころに真新しい木材や瓦が使われている。大工仕事に詳しいわけではない完全に素人の感覚だが、その出来栄えは見事だと思った。そのことをたどたどしい口調ではあるが伝えると「いつか夫を迎えるってのに、あんまりにもみすぼらしい家じゃ申し訳ないからな。」と言ってくすぐったそうに彼女は笑った。
「さ、少しの時間も惜しい…」
だが洋輔がその笑みに見惚れる間もなくすぐに好色なそれに切り替え、茜は洋輔を抱えたまま器用に足で扉を開けて中に入っていく。室内は板張りになっており、炊事場らしき場所に置かれた鍋や皿、隅に畳まれた布団、壁に立てかけられた卓袱台などを見ると、長年放置されたという印象だけだったこの建物から急に彼女がここで暮らしているという生活臭を感じることができた。すると初めて身内以外の女性が生活をしている部屋に入ったことを無意識のうちに自覚してしまい、室内にいるだけで途端に鼓動が速くなり緊張で体が硬くなってしまう。一方の茜は機敏で少しの無駄もなく足や糸を使って床に布団をあっという間に敷き、洋輔を寝かせその上に跨っていった。
「早速、しようじゃあないか♪」
「え!?」
「なにを驚いているんだ、洋輔。ワタシの住処に着いたらやることは一つしかないだろ…セックスだよ。ここにお前の一物をぶち込むのさあ♡」
茜は上体を下げつつ、人間と蜘蛛の境目に手を当て美しい陰唇を開いていく。
そこからは決壊したかのように濃い愛液がどぽどぽと溢れ出し、彼女の体臭を濃縮したような甘い香りがあたりに満ちていく。流れ出した愛液がいやらしい淫水の流れを幾筋も作って下半身に垂れていく様や、ひくひくとわずかに蠢いている彼女の陰唇や生殖器の圧倒的な淫猥さに洋輔は釘づけになってしまう。散々キスによってじらされてきた体は彼女を求め昂ぶり、頭はこれからするであろう彼女とのセックスでいっぱいになり、男根はこれ以上ないほど海綿体が充血し痛みを感じるほど固く勃起してしまった。茜は自分の体を荒い息を吐きながら凝視し、びくびくと苦しげに脈動するペニスを満足げに見下ろしながら意地悪く質問してくる。
「それともそんなに驚くってことは…ワタシとセックスしたくないのか〜?」
「し、したい…」
「なんだって〜…今何か言ったかあ?」
「うぅ…」
「大きな声で言わないなら、このまま何もしなくたっていいんだぞ…」
「…茜さんと、茜さんとセックスがしたいです!!!」
自分でも驚くような大きな声で、洋輔は懇願する。
思い通りの台詞を言わせた茜は、洋輔の体に傷をつけないよう気を付けつつペニスの根元を優しくさすりながら一段と笑みを濃くする。
「ふふ、ふふふ♪そうまで言われちゃセックスするしかないねえ。ただし…」
「え、なにこれ…糸が!?」
彼女が意地悪い笑みを浮かべた瞬間、股間に強い違和感を覚えた。
洋輔が慌てて自身の下半身に目をやると、いつのまにかペニスの根元に茜が吐き出したであろう蜘蛛の糸がきつく巻き付けられていた。この糸の強靭さは先ほどの一件でよく知っている。それをふまえた上で、洋輔は瞬時に彼女の意図を理解した。
「そうだ。どんなに洋輔が泣き叫んでもワタシが許可するまで、一滴も精液を出させはしないから覚悟しておけよぉ♡」
つまりこの糸がある限り洋輔は射精のタイミングを茜に握られてしまったということだ。すぐに恐怖心が湧き上がり、糸を外そうと手を伸ばそうとするがそれを茜が見逃すはずもなく、呆気なく腕をつかまれ悪魔のような笑みを向けられる。
「おおっと。せっかく結んだんだから…そう簡単に外されるわけにはいかないよ。」
「そんな…な、なんでこんなことを!?」
「なんでってそりゃ…」
すると茜は少しだけ顔色を変える。
「ワタシの話を聞かずに、あんだけ必死になって逃げてくれたお前にお仕置きをするために決まっているじゃないか♪」
「え…?」
「いくら嫌われ者のウシオニさんとはいえ、一目惚れした男に血相を変えて本気で逃げられれば…それはそれは悲しいものさ。涙がちょちょぎれるかと思ったぜ。」
「……ぅ、だってそれは」
「だからそんな辛い記憶を忘れるくらい、射精できないもどかしさに震えるお前の姿を、快楽に歪む顔をた〜…っぷりと見させてもらおうと思ってな♡」
彼女の話も聞かず、一目散に逃げようとした自分の行動を思い心が痛んだ。
茜はわざとらしくおどけたような口調と行動でそこまで気にしていない風に言っていたが、本当はこちらが想像する以上に傷ついたのかもしれない。だからこそ茜にちゃんと謝らなければいけないし、できることがあればしなければいけないと強く思ったのだが……その気持ちを吹き飛ばしてしまうほど彼女の目に浮かぶ嗜虐の色の強さを見て、これからどれほど嬲られてしまうのか想像するだけで背中がうすら寒くなってしまった。
「さあ、射精を封じた理由は分かっただろう。それじゃあお互いに準備はいらないんだから早速本番といこうか〜」
ぱっくりと開いた陰唇にペニスの先端を合わせつつ、茜が腰を下ろしていった。
「ちょ、ちょっとまっ…」
ずちゅ、ぐちゅぅ…
「待たねえよ♪」
茜が勢いよく腰を下ろしていく。
いきり立った剛直は灼熱のように熱く火照る膣に飲み込まれていき、自分の大きく膨らんだ亀頭のカサは抵抗どころか歓迎するような襞の動きに導かれ、ずぶずぶと誰も入ったことのない蜜壺を押し広げていった。そして亀頭の先が彼女の純潔を守り通してきた薄い膜に到達する。
「ふふ、くくく…これでワタシは正真正銘…」
その感触を感じた茜は、低い声で笑いながらなんのためらいもなく体重をかけて一気に自身の処女膜を破り捨てる。
ズニュル……ぶちぃ…ぃ…ずんっ!!!
「お前の女になるってわけだなあ、洋輔♡!!」
「ああああああっ!?」
茜の処女膜はまるでそれが必然のように簡単に貫通した。
破瓜の鮮血が二人の結合部を赤く染めていくそのことを心配する暇もなく、茜はそのまま勢いよく膣の最奥までペニスを飲み込み、一斉に襞を絡みつかせていく。その感触は、壮絶だった。女になったばかりだというのに子宮口はひくひくと蠢きながら亀頭の先にちゅぱちゅぱと吸い付き、粘度の高い愛液をたっぷりと纏った筋肉質でゴムのような、弾力と強い力で締め付けてくる襞の一つ一つは一斉に、けれど別々に動いてペニスを絞り上げる。それまで勿論女性経験などないから比較要素を持ち合わせてはいないが、この感触が他と比べ物にならないほどすさまじいことを直感で洋輔は理解し、ただただ情けない喘ぎ声を口から吐き出すしかなかった。
「(射精、射精したい!!出したい!!全部出したい!!!)」
その気持ちよさに、洋輔の射精欲は限界まで膨らんでいく。
海綿体により血液が集まり股間はどくどくと熱く鼓動を刻み、精巣はいつでも精液を吐き出せるようせり上がり、縮み上がってその瞬間を待っている。
だが当然、精液はその一滴すらも吐き出すことはできない。
「んん〜?亀頭がびくびく震えてるぞ…射精したいんだな♡」
「したい、出したい…だから、お願いだから糸を外して!!!」
「だめだね。これからお前のペニスをたっぷりと私が味わうんだから、洋輔はワタシの下でじっと我慢してな♪」
「ぅっそんな!!!」
「ほら、いくぞ♡」
極上の肉穴が縋り付くのをむりやり引きはがすように、茜が腰を振り始める。
左右に、縦に、円を描くようにとその動きは実に多彩で激しい。ただでさえ未知数の感覚に翻弄されている洋輔は、それらの動きから流し込まれる悦楽に、大きく口を開けて声にならない悲鳴を上げながら耐え忍ぶことしかできなかった。涙を一杯にためた目を見開き、うまく動かない体を何とか動かして彼女の足や腰をぺちぺちと叩くが、茜は一切腰を振ることを止めようとはしなかった。それどころかその動きさえも押しつぶすような強い腰使いでガシガシとお互いの体をぶつけていく。
「あぁ、これが…セックス。これが、セックス、か。洋輔の、ペニスがワタシの奥まで入って、気持ちいい♡」
茜は頬を真っ赤に染めながら自慰などでは決して得られない愉悦に身を震わせ、恍惚とした表情を浮かべ夢中になって洋輔を貪っていく。
「洋輔〜、お前はどうだ…初めていれたメスのまんこの感触はどうだい?」
「あひっ、もう、もぉ…ぎひぃ!?はぁぁぁぁっ…あ、あぁ!!!」
「あはは、声にもならないってか…嬉しいねえ♡むちゅぅ…ちゅぱっ」
「んぅ…うむぅ!!」
ダメ押しのように唇を吸われ、半ば呆けてしまっていた洋輔はなんとか意識を取り戻し、口を開いた。
「ぷはぁ……茜さん、あ、かねさん!!し、っしゃせいさせて!!!」
挿入した男根が溶けてしまうような、熱く滾る茜の膣に射精したくて洋輔は懇願する。
既に何度も空射精を繰り返してぶるぶると震える亀頭は奥まで飲み込まれるたびにざらざらとした突起のついた子宮口付近の膣肉がずりずりとこすりあげ、精子の代わりに先走り液を垂れ流す鈴口はぶちゅりと濃厚な接吻を子宮口に施され、経験したことがないほど広がる亀頭のカサやびきびきと血管の浮き出る幹は愛液を刷り込むように膣の襞で磨き上げられている。その強烈な刺激を受けただただ射精したいという一つの欲求に囚われた体は洋輔の意思から徐々に離れていき横隔膜が勝手に痙攣し、手足の指先が意思に反してびくびくと動いてしまう。まるで陸地に打ち上げられた魚のようだった。
「う〜ん、どう、しよう、かねっ!!」
「おねがい、だから、もう、あんなこと二度と、しないから!!しゃせい、させてっ!!!」
「ん、ふふふ〜♡」
外聞を気にする余裕もなくただひたすらに許しを請う洋輔姿を見て、一言ごとに大きく腰を振り下ろしていた彼女が大きくぶるりと体を震わせる。その目は爛々と光り、サディスティックな輝きで満ち満ちていた。
「情けない顔で、必死に射精を懇願するお前は…なんて可愛いんだ。もっと我慢させて嬲ってやりたくなっちまうよ…♡」
「…!!!」
茜の言葉を聞き、洋輔は言葉も出せず無言でぶんぶんと顔を横に振る。
「だけど、それ以上にワタシも昂ぶってしまってしょうがない…気を抜けば軽く達してしまいそうだ…」
膣内がさらに強くうねり始めたかと思うと、茜は洋輔の耳元に顔をよせ小さな、しかし心が震えるような甘く蕩けた声で囁いた。
「いいぞ、溜めに貯めたドロドロのザーメンをたぁっぷりとワタシの胎内に吐き出しちまえ♡」
「!!」
そして次の瞬間、根元に巻き付いていた蜘蛛の糸が外され、まるでマグマのようにペニスの根元で堰き止められていた白濁液が少しの間をあけることなく一気に爆発した。
びゅぐ…ぶぴゅ…ドクッ…ドクン…
「うあぁ…うぐぅあぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」
何度も空射精を繰り返されたペニスが、まるで歓喜の声を上げるように一斉に熱く滾った精液を吐き出していく。固形ではないかと勘違いしてしまうほどの粘度の高い白濁液が広がりきった射精管をさらに拡張していくかのようにびゅるびゅると押し広げ、鈴口から大量にはじけ飛んでいった。
ビュプ…びゅっビュ、どぷどぷ
「っあ、うく、ひくぅ…おっおっ…あ、ぁ…」
しかも射精は今までにないほど長く続く。
今まで一回の射精に出していた何倍もの精液が、まるで蛇口が壊れた水道のように洋輔の意思に反して次から次へと茜の体内へ吐き出されていった。その目もくらむような、頭の中が全て漂白されてしまったような強烈なエクスタシーで足腰はがくがくと震え、喉からは言葉にならない絶叫が響き、全ての理性や知性を捨て身体の全神経がこの瞬間は射精だけのことを考えているのではないかと思うほど、快楽に踊り狂った。
「きてる…なか、わたし、の♡なかにいっぱい♡わたしも、いく♡いっちゃうぅぅぅ♡」
その大量の精液を受け止めた茜も、恍惚の笑みを浮かべ無心で快楽に集中する。
あれだけ多くの、経験がないほど粘度の高い精液を射精したというのに、彼女の子宮はそれを一滴も逃すことなくちゅうちゅうと吸い取っていく。結合する膣からは透明な彼女の愛液だけが吐き出されるばかりで、一滴の白濁液もだれてはこない。その様子を見せつけられ、彼女の貪欲さや性欲の深さを改めて痛感する。だがその一方で顎を少し上げ、目を細めながら子宮があるあたりの下腹部を大きな手で愛おしそうになでつつ、数度びくびくと身を震わせている彼女もきっと絶頂に達したのだろう。その姿は許容範囲外の刺激を処理しきれず視界が霞む洋輔の目になによりも美しく、淫靡な光景として映った。それでもそこは底抜けに好色なウシオニ。経験したことのない初めての甘い刺激を楽しみつつすぐにその瞳に再び光を宿してゆっくりと顔を近づけキスをしてくる。
「んふふ〜…洋輔♡むちゅ、くちゅ…」
「あ、かねさん…んむぅ、んちゅ…」
先ほどまでと違い、甘えるような声で茜が求めてきた。
洋輔は震える口をなんとか開けて彼女の舌を受け入れ、絡めていく。そのキスは今までのように濃厚だったが、激しく舌を動かすことはなくただひたすらにお互いの舌を重ね合わせ、感覚や幸福感を共有するようなどこまでも甘いものだった。
「…ぷはぁ、洋輔。とっても、気持ちよかったぞ♡こんなにたっぷり出して、一発でワタシを孕ませるつもりか〜?」
「僕も、とても…よかった。だからあんなに、出ちゃった…」
ただそれにしても精液の量が異常だと思うと口にすると、彼女はその原因は破瓜の血、もっと正確にいえばウシオニの血にあると説明してくれた。彼女が言うにはウシオニの血液にはとてつもなく大量の魔力が混ざっていて、処女膜を破った際に出血した血液を敏感な粘膜である性器で触れたことによって瞬間的に洋輔の体に膨大な茜の魔力が吸収され、インキュバスのような精力を発揮したのではないかというのだ。
「そっか、自分の体が壊れちゃったかと…思ったよ。」
「くく、ウシオニの夫になるんだ。そうそう簡単に壊れてもらっちゃ困る。」
「…。」
「どうした、急に黙りこくって」
「ねえ、茜さん。僕は至らない夫、かもしれないけど、改めてこれから…よろしくね。」
「何を当たり前のことを言ってるんだよ。ワタシの夫はお前以外に考えられないんだ。これからどんな時も、洋輔を愛してやるから覚悟しておけよ♡」
恥じらうような、けれどどこか誇らしげに彼女は微笑む。
それがたまらなく可憐で、少しばかり落ち着いてきた胸の鼓動が急激に高まってしまう。セックスをしておいて今更だとはおもうが、なんだかその微笑みを見て初めて彼女と心が通じ合ったような、素の茜を見ることができたような気がして洋輔の心には喜びや嬉しさがじんわりと広がっていった。
だがその気持ちを告げようと口を開く前に、茜が行動を再開する。
ぬちゃぁ…ぐぷぅ、ぐちゅぎゅちゅ、びちゅん
「それじゃあお互いに体が温まったところでもっともっと気持ちよくなるために、続けてセックスをするとしようか♪」
「へ!?」
再び腰を激しく腰を振り乱し、あれだけ射精しても固く勃起するペニスを貪り始めた。
「今度は射精を封じてないんだし、楽しむ余裕があるんじゃあないか?」
「そんなわけ、うぁ…あぃ!!」
「うふふ〜、次もたっぷりと精液をだして可愛い妻を楽しませてくれよ♪」
「愛してるぞ、洋輔♡」
こうして昼夜もなく続く長い長い二人の初夜が幕を開けたのだった。
………………………………………………………………………………………………
茜と結ばれて、おおよそひと月が経とうとしていた。
あのあと人づてではあるが家族にも事情を説明することができ、なんの心配もなく彼女と一緒に暮らしている。彼女との生活は、幸せでいっぱいだ。
「ほいっと、五匹目〜。」
「え、本当!?」
「ああ、美味そうな岩魚だ♪」
そんな洋輔は、茜と共に釣りをしていた。
昔は趣味でしていたが、現在は食糧調達もかねて釣りを行っている。あの時河原に放置してしまった釣り道具は、この山に住んでいるという茜の友人が拾って保管していてくれたらしく、わざわざ届けてくれた。一度は失うことも覚悟していたので、それはとても嬉しいことだった。その時の謝罪の意味も込めて今は丁寧に手入れをして、大事に使っている。
「しかしワタシとセックスをするときは竿上手だってのに、釣りの時は竿を使うのが下手だなあ〜洋輔。おっとそうこう言ってる合間に六匹めっと。」
「それとこれとは全然違うよ。第一茜さんのは釣りじゃないじゃないか!!」
丸々と太った岩魚を自慢げに見せつける茜が無邪気な笑顔を浮かべる。
彼女は釣りというよりも網で漁をしているというのが正解だった。自分で作り出した頑丈な蜘蛛の糸を寄り合わせて川に流し、追い込んだ魚を捕獲する。まさに彼女だからできる方法だ。しかしそれをただの人間である洋輔がする釣りと同じにされては困る。
「ふふん、ワタシが床だけじゃなく釣りもうまいからってそう妬くなよ♪」
「だからそれは」
「それにお前という最高の獲物を釣り上げたワタシにしてみれば、魚なんて比べ物にならないほど釣るのは楽なものなのさ♡」
「う、またそうやって…恥ずかしいことを臆面もなく」
「くく、また惚れ直したか?」
「………うん。」
「そうかそうか。それじゃあその惚れ直したワタシの、小腹を満たすために協力してくれ♪」
「え、ここじゃ誰かに見られちゃうよ!!」
「いいじゃあないか、ワタシたちが愛し合っている様を、たっぷりと見せつけようぜぇ〜♡」
こうして今日も洋輔は鬼と戯れ、鬼を愛す。
心優しきウシオニと、彼女に魅了された男は誰よりも幸せにこの山で生きていく。
二人の嬌声があたり一面に響き渡り、山に住む者たちはまた始まったかと苦笑いしたのだった。
14/09/30 21:30更新 / 松崎 ノス
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