2.身体を洗おう★
一面の野花と、青々しい草芽。蝶々がひらひら舞い飛んで。
その間を縫うように、さらさらと綺麗な小川が流れゆく…。
どこか幻想的な景色を前に、しばし見惚れてしまう僕。
まるでここは、御伽話で聞いた妖精の国みたいだ。
嫌になるほど自然豊かな場所だとは知っていたけれど、
まさか、こんな風景があるなんて思ってもみなかった。
ちょっと田舎を馬鹿にしていたかもしれない。素直に反省。
「わぁっ。素敵な場所です〜」
口振りからして、彼女もここに来るのは初めての様子。
お婆ちゃん作の地図によると、小川はここの他にも、
もうひとつ、南の方に流れていて、それらが下流で合流するらしい。
普段、牛たちを連れていっているのは、そちらの小川なのだろう。
考えてみれば、確かにここは景色が綺麗で良いところだけれど、
牛たちを連れてきてしまっては、地面がめちゃめちゃになってしまう。
それを知っていて、お婆ちゃんはこちらに来るのを避けていたのだろう。
「ご主人様〜。蝶々ですよ、蝶々〜♪」
とはいえ、今いる牛はもも一匹。
その心配をする必要はない。大人しいし。
さて、いつまでも景色に見とれていちゃいけない。
ここへ来た目的は、汚れた彼女を洗いに来たんだ。
どう洗えばいいからは分からないけれど、そんな時こそ、
お婆ちゃん直筆、牛の育て方マニュアルの出番というもの。
ページをめくり、牛の身体の洗い方を探す。
何も道具を持ってこなかったけれど、きっとブラシとかが必要だろうなぁ…
なんて思っていたら、やっぱりそうだった。マニュアルには、こう書かれていた。
◆◇◆◆◇◆牛の身体の洗い方◆◇◆◆◇◆
・用意するもの
バケツ、ブラシ、タオル
・洗い方
1.バケツいっぱいに水を汲む。
2.お尻から頭に向けて、水をかけていく。
(ゆっくりかけてあげないと驚くので注意)
3.背骨をてっぺんに、上から下へとブラシで磨く。
(磨く時も、お尻側から磨いていくこと)
4.最後に、全身をタオルで念入りに拭く。
(拭く時も、やはりお尻側から拭くこと)
※たまに背中のマッサージもするべし。
そうすることで、おいしいミルクが出る。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
バケツ、ブラシ、タオル…。
とりあえず、この3つを用意しないと話にならない。
一度家に戻って、これらの道具を探してこよう。
確認を終え、帳面を閉じ、振り返る。
そこには、人差し指を伸ばしながら、蝶々を誘うももの姿。
子供っぽいなと思いつつ、僕は彼女に、ここで待っているように告げた。
「わかりました〜。ここにいます〜」
そう言って、ちょこんとその場に座るもも。
助かる。普通の牛なら、こうはいかないだろう。
言葉が通じるっていうのは、とてもありがたいことだと思う。
そんな当たり前のことを考えながら。
彼女の笑顔と、バイバイする手に見送られつつ、
僕は駆け足でお婆ちゃんの家まで戻っていった。
……………
………
…
すごく今更なのだけれど。
僕はついさっきまで、重大なことを忘れていた。
気付いたのが、ブラシを見つけた瞬間。
彼女は今、牛じゃあない。
本当に、何を今更…と言われれば、その通りではあるけれど。
ブラシを手に取って、これでどこを磨くんだろう…なんて、
他人事みたいな考えと共に思い出した。なんて能天気。
さっきまで余裕そうに、仲良くおしゃべりなんてしていたのは、
今の状況がどれだけ大変なことか理解していなかったからだろう。
なんだかんだで、やっぱり混乱していたんだと思う…。
いや、反省は後でするとして、これからどうするかだ。
当然ながら、マニュアル通りにやるワケにはいかない。
そんなことをしたら、僕も恥ずかしいし、ももだって嫌がるだろう。
そう思って、僕は彼女に、水浴びのやり方を覚えてもらおうとした。
言葉は通じるのだから、教えるのはそう難しくないと考えたから。
が、物事はうまく運ばないもの。
彼女はなんと、僕に洗ってほしいと言うのだ。嫌がるどころか。
お婆ちゃんの洗い方がよっぽどお気に入りだったようで、
僕にも同じように、マニュアル通りの洗い方をしてほしい、と。
当然、僕は必死になって断った。
お婆ちゃんみたいに上手くできる自信がないし、何より恥ずかしい。
今のももの身体を洗うというのは、つまり、女性の身体を洗うのと同じだ。
どうして僕が、そんなことができるだろう。無理中の無理。不可能だ。
けれど…そう答えると、彼女はひどくしょんぼりとしてしまった。
耳と尻尾をペッタリ垂らして、あからさまに俯きな表情になって…。
まるで、楽しみにしていたオヤツが無くなった子供みたいに。
地面に座り込んで、のの字まで書き始める始末。
…そんなこんなで…。
「それじゃあ〜、ご主人様、お願いします〜♪」
結果、僕の方が折れた。
だって、だってしょうがないじゃあないか。
ずっとニコニコしている彼女の、あんな表情を見せられたら、
なんだかとても悪いことをしている気分になってしまうのだから。
それを無視できるほど、僕は忍耐強くない。心が弱い。
結局、僕が恥ずかしい思いを我慢して、彼女を洗うしかないのだ。
「んっしょ…」
そんな僕の気も知らず、洗ってもらう準備を始める彼女。
野花のベッドの上に、うつ伏せで寝転がって、準備完了。
楽なものである。彼女は横になっているだけでいいのだから。
気を落としつつも、僕は水の入ったバケツを手に取った。
言ってしまったものは、もうしょうがない。彼女だって喜んでくれている。
それでいいじゃないか。僕は精一杯、ももの身体を洗ってあげよう、うん。
「〜♪」
さて、マニュアル通りならば、まずお尻から順々に、頭まで水をかける。
お婆ちゃんのアドバイスによると、ザバーッとかけてはいけない。
身体に近付けて、流すようにしながら、身体を濡らしてあげる必要がある。
…お尻から…とあるけれど。
今の彼女の身体を考えると、つま先から流すべきだろうか。
牛にとっての後ろから前へというのは、人間に直すと、下から上へ…だと思うし。
とりあえず、やってみよう。
駄目そうなら、水浴びのやり方で洗えばいい。
「…きゃっ♪」
いざ、つま先に水をかけると、嬉しそうな声を上げる彼女。
その声に驚いて、僕は一度手を戻したものの…様子を見て、
大丈夫なのだろうと判断し、彼女の足全体を流していく…。
「ん〜っ…♪ 冷たくて、キモチイイです〜♪」
御機嫌な声。はためく尻尾。
どうやら、合っているみたいだ。
胸を撫で下ろし、僕は、改めて彼女の脚に目をやる。
黒いまだら模様が付いた白地の毛。水に濡れ、ペッタリと肌に張り付いて。
そこだけ見れば、普通の牛となんら変わりない。違うのは太さくらい。
やっぱり、彼女は牛なんだなぁ…と、しみじみ思ってしまう。
早く元の姿に戻してあげたいけれど…どうすればいいだろう…。
「…あっ、ご主人様、ごめんなさい〜」
不意に、2杯目の水をかけようとしたところで、彼女が立ち上がった。
ごめんなさい…と謝られたけれど、別に何かされた覚えはない。
彼女はいったい、何に対して謝っているのだろうか。
「脱がないと〜、濡れちゃいますよね〜」
あっけらかんに、そう言うと。
彼女は、おもむろにズボンを脱ぎ始めた。
突然のことに、一瞬固まる僕。
チャックを下げ、サスペンダーを取り外し、ズボンを下ろして…。
彼女の見えてはイケナイ場所が、チラリと見え始めたところで、
やっと理性が戻ってきた僕は、慌てふためいて彼女を止めた。
「…? どうしたんですか〜?」
どうしたって、むしろこっちが訊きたい。
いや、訊かなくても分かるけれど。僕だって水浴びの時は脱ぐけれど。
そのことに、今の今まで気付かなかった僕にも責任はあるけれど。
でも、それだけは。それだけはどうかやめてほしい。
とても僕が、恥ずかしさに耐えられない。同じ空間に居られない。
ももはもしかすると、僕の前で裸になっても平気なのかもしれない。
それほど僕を信頼してくれているのか。家族と見てくれているのか。
あるいは、牛だから、人前で裸でも平気なのか。分からないけれど。
もも、お願い。
僕の前で脱ごうとしないで…。
「でも〜…脱がないと、濡れちゃいますよ〜?」
そうだけれど。そうなのだけれど。
あぁ、もう、言葉は通じるのに。普通の牛より楽なはずなのに。
理由を言えないのがもどかしい。伝わらないのがもどかしい。
いったい何がどう間違って、こんな展開になっちゃったんだ。
「??? えっと〜…、ご主人様の前で脱いじゃ、ダメなんですか〜?」
そう。そうだよ、もも。そういうことなんだ。
よかった、やっと通じてくれた。これで一安心…。
「じゃあ〜、後ろを向いて脱ぎますね〜♪」
……………。
背を向け、鼻歌交じりに脱ぎ始める彼女に、僕はもう…掛ける言葉が見つからなかった。
ただ、目を逸らして、その光景を見ないようにするのが精一杯で…。
「〜♪」
とさ…と、草のクッションに何かが落ちる音。
視界の端に、彼女のズボンらしきものが映っている。
これでもう、ももの下半身を見るワケにはいかなくなった。
どうにかして、見ないようにしながら洗うしかない。
かといって、あんまりベタベタ触っていい場所じゃないし…。
…うん? 触る…? えっ、あっ!?
そ、そうだ! 触らなきゃいけないんじゃないか!
彼女の裸を見ないように、ってことばっかりを考えていたけれど、
洗うってことは、その…デリケートな部分にも触れるってことで…。
あぁ…。女性の肌に触れるってことは分かっていたけれど。
そこまで考えがいってなかった…。まただ。また、当然のことを忘れて…。
「ご主人様〜。脱ぎ終わりました〜っ」
どんどん落ち込んでいく僕の耳に、彼女の明るい声が届く。
…もう。もう、いい。開き直ろう。
僕だって、男なんだ。いつか女の人の裸を見る時が来る。
触ったり…エッチなことをして、子供を作る時が来るんだ。
遅かれ早かれ、恥ずかしい想いはしなきゃいけないんだ。
なら、今見ちゃおう。見て、散々恥ずかしい想いをしよう。
そうすれば、ちょっとは慣れるかもしれない。耐性が付いて。
幸い、相手はもも…僕の牛。言わば、僕の家族なんだ。
そう考えれば、恥ずかしさもちょっとは薄れる…気がする。
よし…、よしっ、頑張れ、僕。
いざっ!
「えへへ…♥ ちょっと恥ずかしいです〜♥」
……………ぅ、ゎ……。
僕の視界に飛び込んできたのは…ものすごく大きなオッパイだった。
プルンッと揺れる、弾けんばかりのお乳。それがふたつも。
もう、胸元の模様が毛じゃなかったことに対する驚きなんて、
たぷたぷ揺れるダブルの衝撃に、軽くすっ飛んでしまった。
まさか、胸まで人間と同じものだったなんて…。
僕の予想は、やっぱり甘かった。
予想外の彼女の姿に、顔がかぁっと熱くなって…。
「んしょっ…。ご主人様〜」
そんな僕を気にも留めず。
ごろんと横になり、催促する彼女。
「冷たいお水、いっぱいかけてください〜♪」
…いや。いや。いや!
ハッキリ言って、のんびり水なんてかけていられる状況じゃない。
だって、彼女の胸が、お尻が、丸見えになっているこの状況で。
地面に押し潰して、ムギュッとなった胸を。プリンッと弧を描くお尻を。
どうして見ずにいられるだろう。無理だ。僕にはとても無理だ。
水を汲むために、一瞬目を逸らす時間さえ惜しい。目が離せない。
彼女は牛なのに。人間じゃない。僕の飼っている、牛なのに…。
「〜♪」
楽しげに鼻歌を奏でる彼女。
その姿を前に……僕は、自分の気持ちを抑えきれず……。
「…きゃんっ!?」
欲望に押されるまま、彼女のお尻を鷲掴みした。
「ご…、ご主人様〜っ…?」
驚き、振り返ろうとするもも。
僕は咄嗟に、震える声で叫ぶ。
マッサージするね…と。
「ふぇっ? ま、マッサージ…ですか〜?」
そう、マッサージ。これはマッサージ。
自分に言い聞かせるように…僕はもう一度彼女に、
今していることは、ただのマッサージであることを伝える。
もちろん、ウソだ。彼女のお尻を触りたいがために、飛び出たウソ。
マニュアルに載っていた件を引っ張ってきて、都合良く使っているだけだ。
「………」
罪悪感で胸がいっぱいだけれど。
それすら抑え込んでしまうほど、顕わになる欲。
そんな僕が、今、卑しくも思うことは。
どうか彼女が、僕の嘘に騙されてほしいということだけ。
そうなることで、もっと彼女のお尻を触ることができるから。
マッサージという大義名分を振りかざし、好きなだけ…。
「…ご主人様〜」
お願い、もも…。後でいっぱい、謝るから。
下心があったこと、ちゃんと謝るから…。
だから、今だけはっ…!
「…急に触られると、びっくりしちゃうので〜…」
「今度は…優しく触ってくださいね〜♪」
…まるで、聖母のように。
彼女は、苦し紛れのウソに、何の疑いも抱かず。
僕の言葉を信じて…再びリラックスした体勢をとった。
「…♥」
………ワザと、なのだろうか…。
信じてくれた彼女を疑うのは、最低だとは分かっていても。
あの無茶な言い訳を、手放しに信じてくれたとは思えない。
でも、どちらにせよ。
僕が彼女の良心に、つけこんでいることに変わりはない。
それは人として、やっちゃいけないことだ。悪人のすること。
神様が、空の上から、ちゃあんと僕のことを見ているんだ。
僕はいつか、このことに対して罰を受ける日が来るだろう。
…それでも。それでも僕は、この気持ちを抑えられない。
彼女のいやらしい身体。背徳が心を蝕み、惹き込まれて…。
「…ひゃっ…♥」
ムニッ…と、僕の手の中で、お肉が歪む。
彼女の、毛に覆われた大きなお尻。
張りがあって、柔らかくも弾力がある。霜降り肉みたいだ。
僕のお尻とは全然違う。大きさも、形も、触った感触も。
なんて言うか…もものお尻は、安定感…いや、安心感…?
とにかく、揉んでいると、どこかほんわかとした気持ちになれる。
「んっ…♥ ぁ……♥ ゃっ…♥」
揉む度に、細かな毛が手を撫でてきて、ちょっぴりくすぐったい。
さらさらとした、触り心地の好い毛並み。シルクみたいに。
前にお婆ちゃんが、元気な牛は毛並みで分かるって言っていたけれど、
この肌触りこそ、健康の証なんだろう。優しくて、温かくて…おひさまみたいな。
「はっ……♥ ん…♥ んぅ…っ♥」
鳥の囀りよりも静かに、エッチな声を漏らすもも。
感じている…のかもしれない。お尻を揉む悪戯な手に。
それは、僕も同じ。
とっくに大きく膨れ上がったオチンチン。痛いほど大きく。
下着の中で、ここから出せと言わんばかりに、存在を主張している。
「やっ…ぁ…♥ ご主人様っ…♥ キモチイイ…ですぅ…♥」
ふと、ももが僕に告げる。気持ちいいと。
その言葉は、何を意味するのだろう。
…気付けば、彼女の股の間。
むっちりとした太腿に挟まれた部分の毛が、何故だろう、
他の部分と比べて、絡まり合ってカピカピになっている。
僕がかけた水が原因…というワケではなさそうだ。
よく見れば、糸を引いていて…何か粘ついたものが…。
「ふぁっ…♥」
喘ぎ声と共に、体勢を崩し、僅かに足を開く彼女。
僕は…それによって、気付いてしまった。
何故、彼女の股の毛だけが汚れているのかを。
「ぁ…♥」
女性の秘部。そこから流れる…愛液。
それによって、アソコの毛だけが汚れていたのだ。
少し考えれば分かる、当然なこと。
でも、下半身は毛で覆われているだけと思っていた僕は、
そんなことにすら驚いて、目を丸くしてしまった。
繰り返す、自らの勝手な思い込み。
その度に、恥ずかしい思いをして。心を大きく乱して。
それが招く結果は…そう、先の通り…。
「ひゃんっ!?」
再び、僕は後先考えない行動に出た。
今にもはち切れそうなオチンチンを、下着の中から解放し、
あろうことか…彼女の湿った股の間に、無理矢理挿入したのだ。
蒸れた恥部と、肉厚な太腿に挟まれて。
僕は、呻く声も飲み込めないほどの快感を得た。
気を抜けば、今に射精してしまう気持ちよさ。しかし、代償は安くない。
こちらへ振り返るももに対し…、僕は言い訳を返す必要があった。
「っ…ご、ご主人様ぁ〜…♥」
さすがに、これは…。
どうあっても、言い逃れできそうにない。
いっそ、開き直ろうかとも考えた。
彼女だって、満更じゃあなさそうだし…もし反抗してきたら、
主人としての権力を振りかざして、無理矢理してしまおう、と。
だって、彼女は今、僕のものなんだ。僕が自由にしていいはずだから。
…でも、それを実行できる勇気が、僕にはなかった。
もし、そんなことをして、彼女があの寂しそうな顔を浮かべたら…。
つまり僕は、現状と、自分の心を誤魔化していたかった。
今自分がしていることは、悪いことじゃあない。
彼女も、僕にされていることを、嫌だと思っていない。
その嘘の空間を、ずっと保っていたかった。彼女を騙すことで。
「あの…♥ おマタに、何か〜…♥」
………僕は、混乱する頭で悩んだ挙句。
ブラシで洗っている、と答えた。
「えっ…?」
……………。
「ぶ、ブラシって〜…」
……………。
「…ぁ……」
……………。
「………」
……………。
「……ふふっ♥ わかりました〜♥」
っ…!?
「ブラシでいっぱい…ゴシゴシしてくださいね〜♥」
……信じて、くれた。
信じてくれた。あんな苦しい言い訳を。
まさか、もも、本当に? 本当に、気付いていないんじゃ…。
「ご主人様〜、早くぅ〜…♥」
………いや。
違う。ももはもう…気付いている。
気付いていて、わざと知らんぷりをしているんだ。
いくら彼女がおっとりしているからって、気付かないワケがない。
お尻ばっかり揉まれて。股の間に、オチンチンを入れられて…。
きっと、僕が主人だから。
主人である僕との関係を、気まずいものにしたくないから。
だから追及してこない。そうすれば、僕達の関係は元のまま。
数分前の、出会った時の関係から、変わらないでいられる。
彼女も誤魔化そうとしているんだ。現状と、自分の心を。
「…? ご主人様〜…?」
なんて…。なんて情けない主人だろう。
性欲の捌け口に、彼女を使うなんて。嘘を吐いてまで。
あまつさえ、その相手から気を遣われている始末。
…泣いていた。僕は、いつの間にか…ボロボロと涙を流していた。
本当に情けない。こんな格好で。主人としても、男としても、人としても。
そんな惨めな姿のまま、僕は彼女に……謝った。
嘘を吐いていたこと。エッチな気持ちがあったこと。
嗚咽し、汚い欲望を、全て吐き出した。包み隠さずに。
「………」
彼女は、振り返り、じっと僕を見ながら…黙っていた。
怒っているのかもしれない。怒って、当然だと思う。
僕はそれほどひどいことを、彼女にしていたのだから。
強姦魔と変わりない。騙して、エッチなことをするなんて。
あるいは、困っているのかもしれない。
二人の関係を崩さぬようにと、自分を誤魔化して耐えてきたのに、
僕の方から折れたことで、その意味が無くなってしまった。
結局は、気まずい間柄になってしまう。今がまさに、それだ。
彼女にとって、一番望ましくない展開になっていると思う。
全ては僕のせいだ。
僕が、ももに疚しい気持ちを抱いたから。
気持ちを抑えられず、エッチなことをしてしまったから。
「………」
謝った。何度も、何度も、何度も…。
言い訳のひとつもできず、ごめんなさい…と繰り返した。
一言毎に、甦ってくる良心。合わせて、鮮明になる悪罪。
謝罪を重ねる度に、咎が深く僕の胸に刺さりゆく。
「…ご主人様〜」
…どれほど同じ言葉を連ねただろう。
いくつもの謝罪を言い終えた後に、彼女は…。
「大丈夫ですよ〜っ♪」
ももは…にっこりと微笑んだ。
「ご主人様とは〜、今日お会いしたばかりですけれど〜…」
「もものお願い、ご主人様は聞いてくれました〜」
「だから〜、私、ご主人様のことが大好きです〜♪」
お願い…。身体を洗ってあげる件だろうか。
でも、僕はそれで、ももに酷いことを……。
「身体…洗ってくれるんですよね〜?」
えっ…。
「えへへ…♥ ご主人様〜、綺麗に洗ってください〜♥」
少し恥ずかしそうに、頬を染めながら。
彼女は前に向き直って、僕へと、その身体を預けた。
ドキッ、と高鳴る胸。
つまり…ももは、僕を許してくれるだけではなく。
それどころか、自分の身体を自由にしていいと……。
………ももっ!
「きゃあっ♥」
迸る感情。恋慕、欲情、熱愛、甘求、貪淫。
溢れ出て、止まらない。彼女への想いが止まらない。
「ひゃっ…ぁっ♥ いきなり〜…♥」
嬉しかった。救われた気持ち。
彼女の優しい言葉が、僕を包み込んで、癒してくれた。
僕のエッチな想いまで、まるごと受け止めてくれたもも。
それはもう、僕にとって、愛の告白となんら変わらない。
彼女を騙してまで欲望を満たそうとした僕を、好きと言ってくれた。
そんな言葉を掛けられて、平気でいられるワケがない。
彼女を恋する想いが、僕の全てを一気に塗り替えていく。
もっと彼女とおしゃべりしたい。彼女の笑顔を見ていたい。
キスをしたい。愛を囁き合って。そして、エッチなことも…。
止め処なく溢れる、ももへの想い。したいこと。
それは僕の身体を突き動かす。欲望に押されゆく。
繰り返し…。でも、さっきまでとは、少しだけ違う。
今の僕には、何の誤魔化しもない。嘘も無い。
正直な想い。余すところなく、彼女に伝えようと…。
「んんっ…♥」
彼女の広い背に覆い被さり、両手で胸を揉みしだく。
手からこぼれ落ちそうなほどの、彼女のオッパイ。
指が埋まって、とても支えることのできない柔らかさ。
それでも、モチモチとした肌がぴったりと手に吸い付いてきて。
僕は息を荒げながら、ももの胸の優しい感触を味わう。
「やぁんっ♥ 手つきがいやらしいです〜…♥ ひゃうっ♥」
先刻と比べて、あからさまになる喘ぎ声。
ますます昂る、エッチな気持ち。僕も、彼女も。
タプタプと元気良く跳ねる、大きなお乳を揉みながら、
僕は指先を滑らせて、ツンと尖る、彼女の乳首を弄んだ。
指先で撫でたり、引っ掻いたり…。その感触を、確認するように。
「きゃうっ♥ やっ…♥ さ、さきっぽは〜…ぁっ♥」
より一層高い声を上げ、身体をくねらせるもも。
もしかしたら、乳首が弱いのかもしれない。追撃する僕。
人差し指と親指で摘まんで、ゴシゴシと擦り上げる。
「ひぁぁっ♥ それっ……だめ…ぇ…っ♥」
もちろん、乳首を責める間も、胸を揉む手は止めない。
余った指で、丁寧にいやらしく揉みしだき、彼女の興奮を誘う。
…少しずつ熱くなってくる、彼女の身体。火照り、染まる肌。
珠のような汗が、悩ましげなラインに沿い、つぅ…と流れ落ちていく。
鼻に届く彼女の匂いは、むせ返るほどに甘い香り。ミルクの匂い。
「やぁっ…♥ ご主人様っ♥ ご主人様ぁ〜…っ♥」
可愛い。乱れる彼女が、どうしようもなく可愛い。
もっと乱れさせたい。僕の手で。彼女を、もっとエッチな姿に…。
「ぁ…♥」
腰を引き…濡れた秘部に、硬いペニスを擦り付ける。
ぞわぞわと背筋を駆ける、刺激の波。例えようのない快楽。
自分だけでは味わえない気持ちよさを、彼女と交わることで得る。
改めて、ふたり、身体を交えている事実が、実感として湧いてくる。
「んっ…♥ ご主人様のが…♥」
深く、長い呼吸を吐きながら…眩むような悦楽を越えて…。
先端が、太腿の間から顔を出そうとしたことろで、腰を前に出す。
ニチャッ…という音と共に、再び襲い来る、甘い痺れ。
彼女の恥丘と太腿に、互いの愛液を絡めるように。
腰を引いて、出して…という前後運動を、ひたすら繰り返す。
「ご主人様〜♥ もものおマタ…キモチイイですか〜?♥」
彼女の問いに、必死に頷き応える。
膨れ上がったオチンチンは、今にも破裂してしまいそう。
ヒクヒクと蠢いて、おもらしみたいに愛液を垂れ流している。
その一因として、彼女の脚の動き。
彼女は、閉じた脚をもぞもぞと動かしながら、
オチンチンを左右から擦り潰してくるのだ。
むっちりとした太腿の感触はもちろん、細かな毛が、
くすぐるようにして亀頭や雁首を撫でるものだから…。
「えへへ…♥ オチンチンが生えたみたいです…♥」
不意に、彼女はそう呟いて。
太腿から僅かに飛び出た先端に、そっと指先を添えてきた。
瞬間、何かが、引き返せないラインを越えて。
「あっ♥ 今…プクーッて、おっきく…♥」
無邪気な彼女を前に…動きを止め、硬直する僕。
…出る、と直感した。射精してしまう、と。
これ以上触れなくとも、出てしまうところまで精液が上ってきている。
あとは時間の問題。遅かれ、早かれ。もう射精を止めることはできない。
「…出そう、なんですか〜?♥」
問い掛けに…僕は、答えられなかった。
恥ずかしさと、まだ終わってほしくないという気持ちから。
もっと彼女を感じていたい。
もう終わってしまうなんて、嫌だ。まだ、したい。
ずっと…ずっと彼女と、エッチなことをしていたい。
「ふふっ…♥ …ごしごし、ごしごし〜♥」
そんな僕の気持ちも知らず、更なる刺激を与えてくるもも。
太腿の擦り合わせに加え、先端を指で摘まんで、擦り潰してくる。
それは、僕が彼女の乳首を弄った時のように。ゴシゴシと…。
「ご主人様〜♥ い〜っぱい、ピュッピュしてくださいね〜♥」
誘惑する言葉。逆らえない。どんどん精液が上ってくる。
苦しく呼吸を吐いて、頭に浮かぶ名前を、何度も呼ぶ。
もも…。ももっ…。
「はい、ご主人様〜♥」
悪戯な指先は止まらない。
くちくちと水音を立て、野花へ粘液を撒き散らす。
裏筋や雁首まで撫でて。その瞬間が訪れるまで、ずっと。
優しく、そして、愛おしく。
まるで彼女の心を表しているかのよう。
「…あっ♥」
その蜜時も、永遠ではなく。
訪れる、終わりの導。
吐き出される直前、僕は、ぎゅうっと彼女を抱き締めた。
この想いが伝わるように。彼女の存在を感じるように。
………もも……っ!
「ご主人さ……きゃっ!?♥♥♥ あ……♥ わぁっ…♥」
………………。
…弾け…彼女の手のひらを打つ、精子の塊。
とても受け切れず、ボタボタと地面に垂れ落ちていく。
自分でも信じられない量が流れてゆく、尿道の中。
それに合わせて、長く響く絶頂。いつまでも、いつまでも…。
「ご主人様のミルク…♥ ドロドロしていて、いっぱいです〜…♥」
足を開き…受け止めていた手で、オチンチンを摘む彼女。
先端の向きを、空いた手に合わせて、皮ごとクニクニと擦る。
促しに応え、吐き出される精液。それを受け止める、小さな手皿。
たちまち器はいっぱいになり、彼女はその手を自分の鼻先に近付けた。
「…クン、クン…♥ …あはっ♥ ご主人様のニオイ〜…♥」
そして、彼女は。
「…んっ♥ ごくっ…♥ ぢゅるっ、ごくん…♥ ちゅぅっ…♥」
飲んだ。何の躊躇もなく、僕の精液を。
ゴクゴクと咽を鳴らして…口の端から、少しこぼしながら。
僕は、そんな彼女を、ぼぅっ…と眺め。
まだ残る射精の余韻に、身も、心も、預けきっていた…。
「ちゅるっ……こくん…♥ はぁ〜…っ♥」
もも……。
「ご主人様〜…♥」
お互いの、蕩けた瞳を見つめ合って。
僕らは…初めて、唇を重ねた。
……………
………
…
「ご主人様〜っ、ありがとうございました〜♪」
ピッカピカの身体で、ペコリとお辞儀する彼女。
あの後、僕は彼女の身体をこれでもかと洗った。
洗う前は、それこそ野良みたいな汚れ方だったけれど、
今ではもう、どこに出しても恥ずかしくない、身の綺麗さ。
肌はツヤツヤ、蹄はキラキラ、毛は尻尾の先までサラッサラ。
まるでどこかのお嬢様みたいだ。洗った甲斐があるというもの。
「ご主人様の洗い方、とっても気持ちよかったです〜♪」
それはもう、彼女の様子を逐一窺いながら洗っていたのだから。
お婆ちゃんと比べて、気持ちよくなかった〜なんて言われないために。
それに…彼女にはやっぱり、綺麗でいてほしいから。
だからこそ、洗う手にも力が入った。念入りに、念入りにと。
角も、耳も、蹄も、尻尾も。ひとつひとつ、丹精込めて。
それが僕なりの、彼女への愛し方。
「えへへ…♪」
笑顔を浮かべながら、傍らに立つもも。
そして、そっと…僕の頭を撫でる。
「ご主人様〜♥」
…なんだか、子供扱いされている気がしないでもない。
確かに、僕の方が背は低いし、年下に見えるとはいえ。
でも、まぁ、我慢しよう。お礼のつもりかもしれないし。
少し恥ずかしいけれど、彼女に悪いことをしちゃったから、これくらいは。
「…あ、帰るんですか〜?」
僕は、頭を撫でる彼女の手を取り、家に向かって歩き出した。
並んで、一緒に歩き始める彼女。ここに来る時と同じ様に。
「〜♪」
でも、違う。来る時とは、少しだけ違う。
僕達の距離が近くなっている。身体の、じゃあなくて。
それは僕にとって、恥ずかしい傷跡でもあるけれど。
失くしたくない、彼女とのひとつめの思い出でもある。
「あっ。ご主人様〜、鳥ですよ〜」
彼女の指さす先。
青く澄み渡る大空を、二羽の鳥が飛んでいる。
くるくると円を描きながら。互いの様子を確かめ合うように。
…あんな風になれたらいいな…と、僕は胸の中で呟いた。
「つがいでしょうか〜?」
うん。きっと、つがいだ。そうならいいな。
「仲良しですね〜♪」
本当に。
本当に…。
その間を縫うように、さらさらと綺麗な小川が流れゆく…。
どこか幻想的な景色を前に、しばし見惚れてしまう僕。
まるでここは、御伽話で聞いた妖精の国みたいだ。
嫌になるほど自然豊かな場所だとは知っていたけれど、
まさか、こんな風景があるなんて思ってもみなかった。
ちょっと田舎を馬鹿にしていたかもしれない。素直に反省。
「わぁっ。素敵な場所です〜」
口振りからして、彼女もここに来るのは初めての様子。
お婆ちゃん作の地図によると、小川はここの他にも、
もうひとつ、南の方に流れていて、それらが下流で合流するらしい。
普段、牛たちを連れていっているのは、そちらの小川なのだろう。
考えてみれば、確かにここは景色が綺麗で良いところだけれど、
牛たちを連れてきてしまっては、地面がめちゃめちゃになってしまう。
それを知っていて、お婆ちゃんはこちらに来るのを避けていたのだろう。
「ご主人様〜。蝶々ですよ、蝶々〜♪」
とはいえ、今いる牛はもも一匹。
その心配をする必要はない。大人しいし。
さて、いつまでも景色に見とれていちゃいけない。
ここへ来た目的は、汚れた彼女を洗いに来たんだ。
どう洗えばいいからは分からないけれど、そんな時こそ、
お婆ちゃん直筆、牛の育て方マニュアルの出番というもの。
ページをめくり、牛の身体の洗い方を探す。
何も道具を持ってこなかったけれど、きっとブラシとかが必要だろうなぁ…
なんて思っていたら、やっぱりそうだった。マニュアルには、こう書かれていた。
◆◇◆◆◇◆牛の身体の洗い方◆◇◆◆◇◆
・用意するもの
バケツ、ブラシ、タオル
・洗い方
1.バケツいっぱいに水を汲む。
2.お尻から頭に向けて、水をかけていく。
(ゆっくりかけてあげないと驚くので注意)
3.背骨をてっぺんに、上から下へとブラシで磨く。
(磨く時も、お尻側から磨いていくこと)
4.最後に、全身をタオルで念入りに拭く。
(拭く時も、やはりお尻側から拭くこと)
※たまに背中のマッサージもするべし。
そうすることで、おいしいミルクが出る。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
バケツ、ブラシ、タオル…。
とりあえず、この3つを用意しないと話にならない。
一度家に戻って、これらの道具を探してこよう。
確認を終え、帳面を閉じ、振り返る。
そこには、人差し指を伸ばしながら、蝶々を誘うももの姿。
子供っぽいなと思いつつ、僕は彼女に、ここで待っているように告げた。
「わかりました〜。ここにいます〜」
そう言って、ちょこんとその場に座るもも。
助かる。普通の牛なら、こうはいかないだろう。
言葉が通じるっていうのは、とてもありがたいことだと思う。
そんな当たり前のことを考えながら。
彼女の笑顔と、バイバイする手に見送られつつ、
僕は駆け足でお婆ちゃんの家まで戻っていった。
……………
………
…
すごく今更なのだけれど。
僕はついさっきまで、重大なことを忘れていた。
気付いたのが、ブラシを見つけた瞬間。
彼女は今、牛じゃあない。
本当に、何を今更…と言われれば、その通りではあるけれど。
ブラシを手に取って、これでどこを磨くんだろう…なんて、
他人事みたいな考えと共に思い出した。なんて能天気。
さっきまで余裕そうに、仲良くおしゃべりなんてしていたのは、
今の状況がどれだけ大変なことか理解していなかったからだろう。
なんだかんだで、やっぱり混乱していたんだと思う…。
いや、反省は後でするとして、これからどうするかだ。
当然ながら、マニュアル通りにやるワケにはいかない。
そんなことをしたら、僕も恥ずかしいし、ももだって嫌がるだろう。
そう思って、僕は彼女に、水浴びのやり方を覚えてもらおうとした。
言葉は通じるのだから、教えるのはそう難しくないと考えたから。
が、物事はうまく運ばないもの。
彼女はなんと、僕に洗ってほしいと言うのだ。嫌がるどころか。
お婆ちゃんの洗い方がよっぽどお気に入りだったようで、
僕にも同じように、マニュアル通りの洗い方をしてほしい、と。
当然、僕は必死になって断った。
お婆ちゃんみたいに上手くできる自信がないし、何より恥ずかしい。
今のももの身体を洗うというのは、つまり、女性の身体を洗うのと同じだ。
どうして僕が、そんなことができるだろう。無理中の無理。不可能だ。
けれど…そう答えると、彼女はひどくしょんぼりとしてしまった。
耳と尻尾をペッタリ垂らして、あからさまに俯きな表情になって…。
まるで、楽しみにしていたオヤツが無くなった子供みたいに。
地面に座り込んで、のの字まで書き始める始末。
…そんなこんなで…。
「それじゃあ〜、ご主人様、お願いします〜♪」
結果、僕の方が折れた。
だって、だってしょうがないじゃあないか。
ずっとニコニコしている彼女の、あんな表情を見せられたら、
なんだかとても悪いことをしている気分になってしまうのだから。
それを無視できるほど、僕は忍耐強くない。心が弱い。
結局、僕が恥ずかしい思いを我慢して、彼女を洗うしかないのだ。
「んっしょ…」
そんな僕の気も知らず、洗ってもらう準備を始める彼女。
野花のベッドの上に、うつ伏せで寝転がって、準備完了。
楽なものである。彼女は横になっているだけでいいのだから。
気を落としつつも、僕は水の入ったバケツを手に取った。
言ってしまったものは、もうしょうがない。彼女だって喜んでくれている。
それでいいじゃないか。僕は精一杯、ももの身体を洗ってあげよう、うん。
「〜♪」
さて、マニュアル通りならば、まずお尻から順々に、頭まで水をかける。
お婆ちゃんのアドバイスによると、ザバーッとかけてはいけない。
身体に近付けて、流すようにしながら、身体を濡らしてあげる必要がある。
…お尻から…とあるけれど。
今の彼女の身体を考えると、つま先から流すべきだろうか。
牛にとっての後ろから前へというのは、人間に直すと、下から上へ…だと思うし。
とりあえず、やってみよう。
駄目そうなら、水浴びのやり方で洗えばいい。
「…きゃっ♪」
いざ、つま先に水をかけると、嬉しそうな声を上げる彼女。
その声に驚いて、僕は一度手を戻したものの…様子を見て、
大丈夫なのだろうと判断し、彼女の足全体を流していく…。
「ん〜っ…♪ 冷たくて、キモチイイです〜♪」
御機嫌な声。はためく尻尾。
どうやら、合っているみたいだ。
胸を撫で下ろし、僕は、改めて彼女の脚に目をやる。
黒いまだら模様が付いた白地の毛。水に濡れ、ペッタリと肌に張り付いて。
そこだけ見れば、普通の牛となんら変わりない。違うのは太さくらい。
やっぱり、彼女は牛なんだなぁ…と、しみじみ思ってしまう。
早く元の姿に戻してあげたいけれど…どうすればいいだろう…。
「…あっ、ご主人様、ごめんなさい〜」
不意に、2杯目の水をかけようとしたところで、彼女が立ち上がった。
ごめんなさい…と謝られたけれど、別に何かされた覚えはない。
彼女はいったい、何に対して謝っているのだろうか。
「脱がないと〜、濡れちゃいますよね〜」
あっけらかんに、そう言うと。
彼女は、おもむろにズボンを脱ぎ始めた。
突然のことに、一瞬固まる僕。
チャックを下げ、サスペンダーを取り外し、ズボンを下ろして…。
彼女の見えてはイケナイ場所が、チラリと見え始めたところで、
やっと理性が戻ってきた僕は、慌てふためいて彼女を止めた。
「…? どうしたんですか〜?」
どうしたって、むしろこっちが訊きたい。
いや、訊かなくても分かるけれど。僕だって水浴びの時は脱ぐけれど。
そのことに、今の今まで気付かなかった僕にも責任はあるけれど。
でも、それだけは。それだけはどうかやめてほしい。
とても僕が、恥ずかしさに耐えられない。同じ空間に居られない。
ももはもしかすると、僕の前で裸になっても平気なのかもしれない。
それほど僕を信頼してくれているのか。家族と見てくれているのか。
あるいは、牛だから、人前で裸でも平気なのか。分からないけれど。
もも、お願い。
僕の前で脱ごうとしないで…。
「でも〜…脱がないと、濡れちゃいますよ〜?」
そうだけれど。そうなのだけれど。
あぁ、もう、言葉は通じるのに。普通の牛より楽なはずなのに。
理由を言えないのがもどかしい。伝わらないのがもどかしい。
いったい何がどう間違って、こんな展開になっちゃったんだ。
「??? えっと〜…、ご主人様の前で脱いじゃ、ダメなんですか〜?」
そう。そうだよ、もも。そういうことなんだ。
よかった、やっと通じてくれた。これで一安心…。
「じゃあ〜、後ろを向いて脱ぎますね〜♪」
……………。
背を向け、鼻歌交じりに脱ぎ始める彼女に、僕はもう…掛ける言葉が見つからなかった。
ただ、目を逸らして、その光景を見ないようにするのが精一杯で…。
「〜♪」
とさ…と、草のクッションに何かが落ちる音。
視界の端に、彼女のズボンらしきものが映っている。
これでもう、ももの下半身を見るワケにはいかなくなった。
どうにかして、見ないようにしながら洗うしかない。
かといって、あんまりベタベタ触っていい場所じゃないし…。
…うん? 触る…? えっ、あっ!?
そ、そうだ! 触らなきゃいけないんじゃないか!
彼女の裸を見ないように、ってことばっかりを考えていたけれど、
洗うってことは、その…デリケートな部分にも触れるってことで…。
あぁ…。女性の肌に触れるってことは分かっていたけれど。
そこまで考えがいってなかった…。まただ。また、当然のことを忘れて…。
「ご主人様〜。脱ぎ終わりました〜っ」
どんどん落ち込んでいく僕の耳に、彼女の明るい声が届く。
…もう。もう、いい。開き直ろう。
僕だって、男なんだ。いつか女の人の裸を見る時が来る。
触ったり…エッチなことをして、子供を作る時が来るんだ。
遅かれ早かれ、恥ずかしい想いはしなきゃいけないんだ。
なら、今見ちゃおう。見て、散々恥ずかしい想いをしよう。
そうすれば、ちょっとは慣れるかもしれない。耐性が付いて。
幸い、相手はもも…僕の牛。言わば、僕の家族なんだ。
そう考えれば、恥ずかしさもちょっとは薄れる…気がする。
よし…、よしっ、頑張れ、僕。
いざっ!
「えへへ…♥ ちょっと恥ずかしいです〜♥」
……………ぅ、ゎ……。
僕の視界に飛び込んできたのは…ものすごく大きなオッパイだった。
プルンッと揺れる、弾けんばかりのお乳。それがふたつも。
もう、胸元の模様が毛じゃなかったことに対する驚きなんて、
たぷたぷ揺れるダブルの衝撃に、軽くすっ飛んでしまった。
まさか、胸まで人間と同じものだったなんて…。
僕の予想は、やっぱり甘かった。
予想外の彼女の姿に、顔がかぁっと熱くなって…。
「んしょっ…。ご主人様〜」
そんな僕を気にも留めず。
ごろんと横になり、催促する彼女。
「冷たいお水、いっぱいかけてください〜♪」
…いや。いや。いや!
ハッキリ言って、のんびり水なんてかけていられる状況じゃない。
だって、彼女の胸が、お尻が、丸見えになっているこの状況で。
地面に押し潰して、ムギュッとなった胸を。プリンッと弧を描くお尻を。
どうして見ずにいられるだろう。無理だ。僕にはとても無理だ。
水を汲むために、一瞬目を逸らす時間さえ惜しい。目が離せない。
彼女は牛なのに。人間じゃない。僕の飼っている、牛なのに…。
「〜♪」
楽しげに鼻歌を奏でる彼女。
その姿を前に……僕は、自分の気持ちを抑えきれず……。
「…きゃんっ!?」
欲望に押されるまま、彼女のお尻を鷲掴みした。
「ご…、ご主人様〜っ…?」
驚き、振り返ろうとするもも。
僕は咄嗟に、震える声で叫ぶ。
マッサージするね…と。
「ふぇっ? ま、マッサージ…ですか〜?」
そう、マッサージ。これはマッサージ。
自分に言い聞かせるように…僕はもう一度彼女に、
今していることは、ただのマッサージであることを伝える。
もちろん、ウソだ。彼女のお尻を触りたいがために、飛び出たウソ。
マニュアルに載っていた件を引っ張ってきて、都合良く使っているだけだ。
「………」
罪悪感で胸がいっぱいだけれど。
それすら抑え込んでしまうほど、顕わになる欲。
そんな僕が、今、卑しくも思うことは。
どうか彼女が、僕の嘘に騙されてほしいということだけ。
そうなることで、もっと彼女のお尻を触ることができるから。
マッサージという大義名分を振りかざし、好きなだけ…。
「…ご主人様〜」
お願い、もも…。後でいっぱい、謝るから。
下心があったこと、ちゃんと謝るから…。
だから、今だけはっ…!
「…急に触られると、びっくりしちゃうので〜…」
「今度は…優しく触ってくださいね〜♪」
…まるで、聖母のように。
彼女は、苦し紛れのウソに、何の疑いも抱かず。
僕の言葉を信じて…再びリラックスした体勢をとった。
「…♥」
………ワザと、なのだろうか…。
信じてくれた彼女を疑うのは、最低だとは分かっていても。
あの無茶な言い訳を、手放しに信じてくれたとは思えない。
でも、どちらにせよ。
僕が彼女の良心に、つけこんでいることに変わりはない。
それは人として、やっちゃいけないことだ。悪人のすること。
神様が、空の上から、ちゃあんと僕のことを見ているんだ。
僕はいつか、このことに対して罰を受ける日が来るだろう。
…それでも。それでも僕は、この気持ちを抑えられない。
彼女のいやらしい身体。背徳が心を蝕み、惹き込まれて…。
「…ひゃっ…♥」
ムニッ…と、僕の手の中で、お肉が歪む。
彼女の、毛に覆われた大きなお尻。
張りがあって、柔らかくも弾力がある。霜降り肉みたいだ。
僕のお尻とは全然違う。大きさも、形も、触った感触も。
なんて言うか…もものお尻は、安定感…いや、安心感…?
とにかく、揉んでいると、どこかほんわかとした気持ちになれる。
「んっ…♥ ぁ……♥ ゃっ…♥」
揉む度に、細かな毛が手を撫でてきて、ちょっぴりくすぐったい。
さらさらとした、触り心地の好い毛並み。シルクみたいに。
前にお婆ちゃんが、元気な牛は毛並みで分かるって言っていたけれど、
この肌触りこそ、健康の証なんだろう。優しくて、温かくて…おひさまみたいな。
「はっ……♥ ん…♥ んぅ…っ♥」
鳥の囀りよりも静かに、エッチな声を漏らすもも。
感じている…のかもしれない。お尻を揉む悪戯な手に。
それは、僕も同じ。
とっくに大きく膨れ上がったオチンチン。痛いほど大きく。
下着の中で、ここから出せと言わんばかりに、存在を主張している。
「やっ…ぁ…♥ ご主人様っ…♥ キモチイイ…ですぅ…♥」
ふと、ももが僕に告げる。気持ちいいと。
その言葉は、何を意味するのだろう。
…気付けば、彼女の股の間。
むっちりとした太腿に挟まれた部分の毛が、何故だろう、
他の部分と比べて、絡まり合ってカピカピになっている。
僕がかけた水が原因…というワケではなさそうだ。
よく見れば、糸を引いていて…何か粘ついたものが…。
「ふぁっ…♥」
喘ぎ声と共に、体勢を崩し、僅かに足を開く彼女。
僕は…それによって、気付いてしまった。
何故、彼女の股の毛だけが汚れているのかを。
「ぁ…♥」
女性の秘部。そこから流れる…愛液。
それによって、アソコの毛だけが汚れていたのだ。
少し考えれば分かる、当然なこと。
でも、下半身は毛で覆われているだけと思っていた僕は、
そんなことにすら驚いて、目を丸くしてしまった。
繰り返す、自らの勝手な思い込み。
その度に、恥ずかしい思いをして。心を大きく乱して。
それが招く結果は…そう、先の通り…。
「ひゃんっ!?」
再び、僕は後先考えない行動に出た。
今にもはち切れそうなオチンチンを、下着の中から解放し、
あろうことか…彼女の湿った股の間に、無理矢理挿入したのだ。
蒸れた恥部と、肉厚な太腿に挟まれて。
僕は、呻く声も飲み込めないほどの快感を得た。
気を抜けば、今に射精してしまう気持ちよさ。しかし、代償は安くない。
こちらへ振り返るももに対し…、僕は言い訳を返す必要があった。
「っ…ご、ご主人様ぁ〜…♥」
さすがに、これは…。
どうあっても、言い逃れできそうにない。
いっそ、開き直ろうかとも考えた。
彼女だって、満更じゃあなさそうだし…もし反抗してきたら、
主人としての権力を振りかざして、無理矢理してしまおう、と。
だって、彼女は今、僕のものなんだ。僕が自由にしていいはずだから。
…でも、それを実行できる勇気が、僕にはなかった。
もし、そんなことをして、彼女があの寂しそうな顔を浮かべたら…。
つまり僕は、現状と、自分の心を誤魔化していたかった。
今自分がしていることは、悪いことじゃあない。
彼女も、僕にされていることを、嫌だと思っていない。
その嘘の空間を、ずっと保っていたかった。彼女を騙すことで。
「あの…♥ おマタに、何か〜…♥」
………僕は、混乱する頭で悩んだ挙句。
ブラシで洗っている、と答えた。
「えっ…?」
……………。
「ぶ、ブラシって〜…」
……………。
「…ぁ……」
……………。
「………」
……………。
「……ふふっ♥ わかりました〜♥」
っ…!?
「ブラシでいっぱい…ゴシゴシしてくださいね〜♥」
……信じて、くれた。
信じてくれた。あんな苦しい言い訳を。
まさか、もも、本当に? 本当に、気付いていないんじゃ…。
「ご主人様〜、早くぅ〜…♥」
………いや。
違う。ももはもう…気付いている。
気付いていて、わざと知らんぷりをしているんだ。
いくら彼女がおっとりしているからって、気付かないワケがない。
お尻ばっかり揉まれて。股の間に、オチンチンを入れられて…。
きっと、僕が主人だから。
主人である僕との関係を、気まずいものにしたくないから。
だから追及してこない。そうすれば、僕達の関係は元のまま。
数分前の、出会った時の関係から、変わらないでいられる。
彼女も誤魔化そうとしているんだ。現状と、自分の心を。
「…? ご主人様〜…?」
なんて…。なんて情けない主人だろう。
性欲の捌け口に、彼女を使うなんて。嘘を吐いてまで。
あまつさえ、その相手から気を遣われている始末。
…泣いていた。僕は、いつの間にか…ボロボロと涙を流していた。
本当に情けない。こんな格好で。主人としても、男としても、人としても。
そんな惨めな姿のまま、僕は彼女に……謝った。
嘘を吐いていたこと。エッチな気持ちがあったこと。
嗚咽し、汚い欲望を、全て吐き出した。包み隠さずに。
「………」
彼女は、振り返り、じっと僕を見ながら…黙っていた。
怒っているのかもしれない。怒って、当然だと思う。
僕はそれほどひどいことを、彼女にしていたのだから。
強姦魔と変わりない。騙して、エッチなことをするなんて。
あるいは、困っているのかもしれない。
二人の関係を崩さぬようにと、自分を誤魔化して耐えてきたのに、
僕の方から折れたことで、その意味が無くなってしまった。
結局は、気まずい間柄になってしまう。今がまさに、それだ。
彼女にとって、一番望ましくない展開になっていると思う。
全ては僕のせいだ。
僕が、ももに疚しい気持ちを抱いたから。
気持ちを抑えられず、エッチなことをしてしまったから。
「………」
謝った。何度も、何度も、何度も…。
言い訳のひとつもできず、ごめんなさい…と繰り返した。
一言毎に、甦ってくる良心。合わせて、鮮明になる悪罪。
謝罪を重ねる度に、咎が深く僕の胸に刺さりゆく。
「…ご主人様〜」
…どれほど同じ言葉を連ねただろう。
いくつもの謝罪を言い終えた後に、彼女は…。
「大丈夫ですよ〜っ♪」
ももは…にっこりと微笑んだ。
「ご主人様とは〜、今日お会いしたばかりですけれど〜…」
「もものお願い、ご主人様は聞いてくれました〜」
「だから〜、私、ご主人様のことが大好きです〜♪」
お願い…。身体を洗ってあげる件だろうか。
でも、僕はそれで、ももに酷いことを……。
「身体…洗ってくれるんですよね〜?」
えっ…。
「えへへ…♥ ご主人様〜、綺麗に洗ってください〜♥」
少し恥ずかしそうに、頬を染めながら。
彼女は前に向き直って、僕へと、その身体を預けた。
ドキッ、と高鳴る胸。
つまり…ももは、僕を許してくれるだけではなく。
それどころか、自分の身体を自由にしていいと……。
………ももっ!
「きゃあっ♥」
迸る感情。恋慕、欲情、熱愛、甘求、貪淫。
溢れ出て、止まらない。彼女への想いが止まらない。
「ひゃっ…ぁっ♥ いきなり〜…♥」
嬉しかった。救われた気持ち。
彼女の優しい言葉が、僕を包み込んで、癒してくれた。
僕のエッチな想いまで、まるごと受け止めてくれたもも。
それはもう、僕にとって、愛の告白となんら変わらない。
彼女を騙してまで欲望を満たそうとした僕を、好きと言ってくれた。
そんな言葉を掛けられて、平気でいられるワケがない。
彼女を恋する想いが、僕の全てを一気に塗り替えていく。
もっと彼女とおしゃべりしたい。彼女の笑顔を見ていたい。
キスをしたい。愛を囁き合って。そして、エッチなことも…。
止め処なく溢れる、ももへの想い。したいこと。
それは僕の身体を突き動かす。欲望に押されゆく。
繰り返し…。でも、さっきまでとは、少しだけ違う。
今の僕には、何の誤魔化しもない。嘘も無い。
正直な想い。余すところなく、彼女に伝えようと…。
「んんっ…♥」
彼女の広い背に覆い被さり、両手で胸を揉みしだく。
手からこぼれ落ちそうなほどの、彼女のオッパイ。
指が埋まって、とても支えることのできない柔らかさ。
それでも、モチモチとした肌がぴったりと手に吸い付いてきて。
僕は息を荒げながら、ももの胸の優しい感触を味わう。
「やぁんっ♥ 手つきがいやらしいです〜…♥ ひゃうっ♥」
先刻と比べて、あからさまになる喘ぎ声。
ますます昂る、エッチな気持ち。僕も、彼女も。
タプタプと元気良く跳ねる、大きなお乳を揉みながら、
僕は指先を滑らせて、ツンと尖る、彼女の乳首を弄んだ。
指先で撫でたり、引っ掻いたり…。その感触を、確認するように。
「きゃうっ♥ やっ…♥ さ、さきっぽは〜…ぁっ♥」
より一層高い声を上げ、身体をくねらせるもも。
もしかしたら、乳首が弱いのかもしれない。追撃する僕。
人差し指と親指で摘まんで、ゴシゴシと擦り上げる。
「ひぁぁっ♥ それっ……だめ…ぇ…っ♥」
もちろん、乳首を責める間も、胸を揉む手は止めない。
余った指で、丁寧にいやらしく揉みしだき、彼女の興奮を誘う。
…少しずつ熱くなってくる、彼女の身体。火照り、染まる肌。
珠のような汗が、悩ましげなラインに沿い、つぅ…と流れ落ちていく。
鼻に届く彼女の匂いは、むせ返るほどに甘い香り。ミルクの匂い。
「やぁっ…♥ ご主人様っ♥ ご主人様ぁ〜…っ♥」
可愛い。乱れる彼女が、どうしようもなく可愛い。
もっと乱れさせたい。僕の手で。彼女を、もっとエッチな姿に…。
「ぁ…♥」
腰を引き…濡れた秘部に、硬いペニスを擦り付ける。
ぞわぞわと背筋を駆ける、刺激の波。例えようのない快楽。
自分だけでは味わえない気持ちよさを、彼女と交わることで得る。
改めて、ふたり、身体を交えている事実が、実感として湧いてくる。
「んっ…♥ ご主人様のが…♥」
深く、長い呼吸を吐きながら…眩むような悦楽を越えて…。
先端が、太腿の間から顔を出そうとしたことろで、腰を前に出す。
ニチャッ…という音と共に、再び襲い来る、甘い痺れ。
彼女の恥丘と太腿に、互いの愛液を絡めるように。
腰を引いて、出して…という前後運動を、ひたすら繰り返す。
「ご主人様〜♥ もものおマタ…キモチイイですか〜?♥」
彼女の問いに、必死に頷き応える。
膨れ上がったオチンチンは、今にも破裂してしまいそう。
ヒクヒクと蠢いて、おもらしみたいに愛液を垂れ流している。
その一因として、彼女の脚の動き。
彼女は、閉じた脚をもぞもぞと動かしながら、
オチンチンを左右から擦り潰してくるのだ。
むっちりとした太腿の感触はもちろん、細かな毛が、
くすぐるようにして亀頭や雁首を撫でるものだから…。
「えへへ…♥ オチンチンが生えたみたいです…♥」
不意に、彼女はそう呟いて。
太腿から僅かに飛び出た先端に、そっと指先を添えてきた。
瞬間、何かが、引き返せないラインを越えて。
「あっ♥ 今…プクーッて、おっきく…♥」
無邪気な彼女を前に…動きを止め、硬直する僕。
…出る、と直感した。射精してしまう、と。
これ以上触れなくとも、出てしまうところまで精液が上ってきている。
あとは時間の問題。遅かれ、早かれ。もう射精を止めることはできない。
「…出そう、なんですか〜?♥」
問い掛けに…僕は、答えられなかった。
恥ずかしさと、まだ終わってほしくないという気持ちから。
もっと彼女を感じていたい。
もう終わってしまうなんて、嫌だ。まだ、したい。
ずっと…ずっと彼女と、エッチなことをしていたい。
「ふふっ…♥ …ごしごし、ごしごし〜♥」
そんな僕の気持ちも知らず、更なる刺激を与えてくるもも。
太腿の擦り合わせに加え、先端を指で摘まんで、擦り潰してくる。
それは、僕が彼女の乳首を弄った時のように。ゴシゴシと…。
「ご主人様〜♥ い〜っぱい、ピュッピュしてくださいね〜♥」
誘惑する言葉。逆らえない。どんどん精液が上ってくる。
苦しく呼吸を吐いて、頭に浮かぶ名前を、何度も呼ぶ。
もも…。ももっ…。
「はい、ご主人様〜♥」
悪戯な指先は止まらない。
くちくちと水音を立て、野花へ粘液を撒き散らす。
裏筋や雁首まで撫でて。その瞬間が訪れるまで、ずっと。
優しく、そして、愛おしく。
まるで彼女の心を表しているかのよう。
「…あっ♥」
その蜜時も、永遠ではなく。
訪れる、終わりの導。
吐き出される直前、僕は、ぎゅうっと彼女を抱き締めた。
この想いが伝わるように。彼女の存在を感じるように。
………もも……っ!
「ご主人さ……きゃっ!?♥♥♥ あ……♥ わぁっ…♥」
………………。
…弾け…彼女の手のひらを打つ、精子の塊。
とても受け切れず、ボタボタと地面に垂れ落ちていく。
自分でも信じられない量が流れてゆく、尿道の中。
それに合わせて、長く響く絶頂。いつまでも、いつまでも…。
「ご主人様のミルク…♥ ドロドロしていて、いっぱいです〜…♥」
足を開き…受け止めていた手で、オチンチンを摘む彼女。
先端の向きを、空いた手に合わせて、皮ごとクニクニと擦る。
促しに応え、吐き出される精液。それを受け止める、小さな手皿。
たちまち器はいっぱいになり、彼女はその手を自分の鼻先に近付けた。
「…クン、クン…♥ …あはっ♥ ご主人様のニオイ〜…♥」
そして、彼女は。
「…んっ♥ ごくっ…♥ ぢゅるっ、ごくん…♥ ちゅぅっ…♥」
飲んだ。何の躊躇もなく、僕の精液を。
ゴクゴクと咽を鳴らして…口の端から、少しこぼしながら。
僕は、そんな彼女を、ぼぅっ…と眺め。
まだ残る射精の余韻に、身も、心も、預けきっていた…。
「ちゅるっ……こくん…♥ はぁ〜…っ♥」
もも……。
「ご主人様〜…♥」
お互いの、蕩けた瞳を見つめ合って。
僕らは…初めて、唇を重ねた。
……………
………
…
「ご主人様〜っ、ありがとうございました〜♪」
ピッカピカの身体で、ペコリとお辞儀する彼女。
あの後、僕は彼女の身体をこれでもかと洗った。
洗う前は、それこそ野良みたいな汚れ方だったけれど、
今ではもう、どこに出しても恥ずかしくない、身の綺麗さ。
肌はツヤツヤ、蹄はキラキラ、毛は尻尾の先までサラッサラ。
まるでどこかのお嬢様みたいだ。洗った甲斐があるというもの。
「ご主人様の洗い方、とっても気持ちよかったです〜♪」
それはもう、彼女の様子を逐一窺いながら洗っていたのだから。
お婆ちゃんと比べて、気持ちよくなかった〜なんて言われないために。
それに…彼女にはやっぱり、綺麗でいてほしいから。
だからこそ、洗う手にも力が入った。念入りに、念入りにと。
角も、耳も、蹄も、尻尾も。ひとつひとつ、丹精込めて。
それが僕なりの、彼女への愛し方。
「えへへ…♪」
笑顔を浮かべながら、傍らに立つもも。
そして、そっと…僕の頭を撫でる。
「ご主人様〜♥」
…なんだか、子供扱いされている気がしないでもない。
確かに、僕の方が背は低いし、年下に見えるとはいえ。
でも、まぁ、我慢しよう。お礼のつもりかもしれないし。
少し恥ずかしいけれど、彼女に悪いことをしちゃったから、これくらいは。
「…あ、帰るんですか〜?」
僕は、頭を撫でる彼女の手を取り、家に向かって歩き出した。
並んで、一緒に歩き始める彼女。ここに来る時と同じ様に。
「〜♪」
でも、違う。来る時とは、少しだけ違う。
僕達の距離が近くなっている。身体の、じゃあなくて。
それは僕にとって、恥ずかしい傷跡でもあるけれど。
失くしたくない、彼女とのひとつめの思い出でもある。
「あっ。ご主人様〜、鳥ですよ〜」
彼女の指さす先。
青く澄み渡る大空を、二羽の鳥が飛んでいる。
くるくると円を描きながら。互いの様子を確かめ合うように。
…あんな風になれたらいいな…と、僕は胸の中で呟いた。
「つがいでしょうか〜?」
うん。きっと、つがいだ。そうならいいな。
「仲良しですね〜♪」
本当に。
本当に…。
12/07/08 01:48更新 / コジコジ
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