第四十八記 -サイクロプス-
…鉄の扉を開くと……その魔物は、私を見るなり驚き……そして、満面の笑顔になった。
「ソラ!」
持っていた鎚も放り出して…ちからいっぱい抱きしめてくれる、ぷーさん。
鼻をくすぐる、懐かしい……鉄の焼ける臭いと、ぷーさんの匂い。
「…よかった。無事で…」
大きい瞳に、うっすら涙が浮かぶ。
それほど心配を掛けてしまったことに、申し訳無さを覚えつつも、
それほど心配してくれたことに、嬉しさを覚える私の心。
私も、ちからいっぱい、ぷーさんを抱き返す。
「…ソラ。髪、色が…」
ふと、ぷーさんが目の前の異変に気付き、不思議そうな顔でそれを見る。
笑って、後で話すね、と返事をし…身体を離した。
「…うん…。座って…」
促された席に座り、お土産を机の上に置いて、ひとやすみ。
お土産の中身は、魔界名物ノーム蒸しパン。ふんわりほこほこ、とってもおいしい。
『ノーパン発売中!』の文字に釣られたメディちゃんが偶然見つけたんだけれど、
これが大当たりで、自分達の分も含めて、ついついいっぱい買っちゃった。
「…はい」
差し出される、お砂糖3個を添えたコーヒー。
その手…薬指に光る、ハート型の宝石が付いた指輪に気付く。
すぐさま、ぷーさんに問う。
「…指輪。私と、彼の…」
「…ソラがくれた…オリハルコンで作った、指輪」
ということは……ぷーさん、告白したんだ!
彼の…っていうことは、例の騎士さんが指輪を受け取ってくれた、ってことだもんね?
やった! やったね! おめでとう、ぷーさんっ!
「…でも、今、喧嘩中…」
……あれ? 喧嘩って……何かあったのかな…。
…もしかして…騎士さんが浮気、とか?
ぷーさんから指輪を貰って、少しもしない内に浮気?
……いやいや、でも騎士が浮気は、騎士道に反しそうだし…違うかな?
うーん……ぷーさんに原因があるとは思えないし……。
「………」
「…ソラ」
何? ぷーさん。
仲直りの相談なら、いくらでも聞いちゃうよっ。
「…これ」
目の前に差し出された手…。その上に、指輪が二つ。
デザインは、ぷーさんが付けている指輪と同じだけれど…
ハートの部分が、薄いオリハルコンに覆われた…赤い宝石になっている。
「…あの日、渡そうとして……でも、渡せなかった」
「…遅れて、ごめん」
私の手を取って…その中に指輪を入れる、ぷーさん。
…この指輪、私にくれる……ってこと…?
どうして? 別に私、ぷーさんからお礼されるようなことなんて…。
あの日、ぷーさんが家に来ていたのは、ももちゃんから聞いたけれど…。
この指輪を、私に届けに…?
「…本当は、3個しか作れなかった」
「…でも、そうやって表面を覆うだけなら…」
「…1個分で2個、作ることが出来た」
そういえば前に、渡したオリハルコンから作れるのは、
指輪が3個くらいだろう…って、確かにぷーさんの口から聞いた。
そっか、この指輪は余りの1個分で作られたものだったんだ。
だとしたら…この赤い宝石は?
「…オリハルコンで覆った、赤い宝石…」
「…ガーネット。『真実の愛』の象徴」
真実の愛…。
「…でも、傷付き易く、混じり易い宝石」
「…空気に触れるだけで…劣化する」
…そんなに繊細なんだ…。
「…オリハルコンが、ガーネットを守る」
「…絶対に、穢されない」
指輪を持った手を…優しく握りしめる、ぷーさん。
「…ソラ」
「…いつか、ソラが…私と同じ様になった時…」
「…相手に、渡してあげて」
…今まで見た……誰のものよりも…穏やかな、瞳。
「………」
「…私」
「…3ヶ月後…彼と、式を上げる」
えっ!? 式、って……結婚式!?
「…出席者、少ないけれど…」
「…ソラにも、来てほしい」
「…私の…一番の友達として…」
「…代表で…スピーチしてほしい…」
す、す、スピーチッ!?
う…嬉しいけれど、噛むよ!? 私、緊張して、絶対噛むよ!?
「…そこで…」
「…その指輪を付けた…ソラと、もう一人…」
「…見られたら……いいな…」
「………」
「……ふふっ」
「…ありがとう、ソラ」
心から幸せな、笑顔。
「…ソラのおかげで…私、幸せになれた」
「…ソラ。愛してる」
……………。
……あれ…。なんで、だろう…。
おかしいよ…。すごく……すっごく嬉しいはずなのに…。
「……ソラ…」
ごめんね、ぷーさん…。ごめんね。
嬉しいのに。ごめんね。すごく嬉しいよ。
あったかいのに。ぷーさんの腕の中、こんなにあったかいのに…。
「…ありがとう」
ごめんね。ごめんね…。止まらないの…。
ぷーさん、ごめん…。ごめんね、おかしいね…。
ぷーさんのこと、大好きだよ。なのに、ごめんね…。
「…愛してる」
ごめんね…。
……………
………
…
「ソラ!」
持っていた鎚も放り出して…ちからいっぱい抱きしめてくれる、ぷーさん。
鼻をくすぐる、懐かしい……鉄の焼ける臭いと、ぷーさんの匂い。
「…よかった。無事で…」
大きい瞳に、うっすら涙が浮かぶ。
それほど心配を掛けてしまったことに、申し訳無さを覚えつつも、
それほど心配してくれたことに、嬉しさを覚える私の心。
私も、ちからいっぱい、ぷーさんを抱き返す。
「…ソラ。髪、色が…」
ふと、ぷーさんが目の前の異変に気付き、不思議そうな顔でそれを見る。
笑って、後で話すね、と返事をし…身体を離した。
「…うん…。座って…」
促された席に座り、お土産を机の上に置いて、ひとやすみ。
お土産の中身は、魔界名物ノーム蒸しパン。ふんわりほこほこ、とってもおいしい。
『ノーパン発売中!』の文字に釣られたメディちゃんが偶然見つけたんだけれど、
これが大当たりで、自分達の分も含めて、ついついいっぱい買っちゃった。
「…はい」
差し出される、お砂糖3個を添えたコーヒー。
その手…薬指に光る、ハート型の宝石が付いた指輪に気付く。
すぐさま、ぷーさんに問う。
「…指輪。私と、彼の…」
「…ソラがくれた…オリハルコンで作った、指輪」
ということは……ぷーさん、告白したんだ!
彼の…っていうことは、例の騎士さんが指輪を受け取ってくれた、ってことだもんね?
やった! やったね! おめでとう、ぷーさんっ!
「…でも、今、喧嘩中…」
……あれ? 喧嘩って……何かあったのかな…。
…もしかして…騎士さんが浮気、とか?
ぷーさんから指輪を貰って、少しもしない内に浮気?
……いやいや、でも騎士が浮気は、騎士道に反しそうだし…違うかな?
うーん……ぷーさんに原因があるとは思えないし……。
「………」
「…ソラ」
何? ぷーさん。
仲直りの相談なら、いくらでも聞いちゃうよっ。
「…これ」
目の前に差し出された手…。その上に、指輪が二つ。
デザインは、ぷーさんが付けている指輪と同じだけれど…
ハートの部分が、薄いオリハルコンに覆われた…赤い宝石になっている。
「…あの日、渡そうとして……でも、渡せなかった」
「…遅れて、ごめん」
私の手を取って…その中に指輪を入れる、ぷーさん。
…この指輪、私にくれる……ってこと…?
どうして? 別に私、ぷーさんからお礼されるようなことなんて…。
あの日、ぷーさんが家に来ていたのは、ももちゃんから聞いたけれど…。
この指輪を、私に届けに…?
「…本当は、3個しか作れなかった」
「…でも、そうやって表面を覆うだけなら…」
「…1個分で2個、作ることが出来た」
そういえば前に、渡したオリハルコンから作れるのは、
指輪が3個くらいだろう…って、確かにぷーさんの口から聞いた。
そっか、この指輪は余りの1個分で作られたものだったんだ。
だとしたら…この赤い宝石は?
「…オリハルコンで覆った、赤い宝石…」
「…ガーネット。『真実の愛』の象徴」
真実の愛…。
「…でも、傷付き易く、混じり易い宝石」
「…空気に触れるだけで…劣化する」
…そんなに繊細なんだ…。
「…オリハルコンが、ガーネットを守る」
「…絶対に、穢されない」
指輪を持った手を…優しく握りしめる、ぷーさん。
「…ソラ」
「…いつか、ソラが…私と同じ様になった時…」
「…相手に、渡してあげて」
…今まで見た……誰のものよりも…穏やかな、瞳。
「………」
「…私」
「…3ヶ月後…彼と、式を上げる」
えっ!? 式、って……結婚式!?
「…出席者、少ないけれど…」
「…ソラにも、来てほしい」
「…私の…一番の友達として…」
「…代表で…スピーチしてほしい…」
す、す、スピーチッ!?
う…嬉しいけれど、噛むよ!? 私、緊張して、絶対噛むよ!?
「…そこで…」
「…その指輪を付けた…ソラと、もう一人…」
「…見られたら……いいな…」
「………」
「……ふふっ」
「…ありがとう、ソラ」
心から幸せな、笑顔。
「…ソラのおかげで…私、幸せになれた」
「…ソラ。愛してる」
……………。
……あれ…。なんで、だろう…。
おかしいよ…。すごく……すっごく嬉しいはずなのに…。
「……ソラ…」
ごめんね、ぷーさん…。ごめんね。
嬉しいのに。ごめんね。すごく嬉しいよ。
あったかいのに。ぷーさんの腕の中、こんなにあったかいのに…。
「…ありがとう」
ごめんね。ごめんね…。止まらないの…。
ぷーさん、ごめん…。ごめんね、おかしいね…。
ぷーさんのこと、大好きだよ。なのに、ごめんね…。
「…愛してる」
ごめんね…。
……………
………
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12/04/17 00:03更新 / コジコジ
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